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No.2215の一覧
[0] 銀凡伝[あ](2006/10/09 21:10)
[1] 銀凡伝(苦痛篇)[あ](2006/10/09 23:26)
[2] 銀凡伝(錯綜篇)[あ](2006/10/11 06:57)
[3] 銀凡伝(呆然篇)[あ](2006/10/20 22:34)
[4] 銀凡伝(逆流篇)[あ](2006/10/25 22:29)
[5] 銀凡伝(悔恨篇)[あ](2006/11/04 00:37)
[6] 銀凡伝(文通篇)[あ](2006/11/05 23:38)
[7] 銀凡伝(決別篇)[あ](2006/11/12 20:26)
[8] 銀凡伝(決断篇)[あ](2006/11/26 21:19)
[9] 銀凡伝(窃盗篇)[あ](2007/01/02 19:14)
[10] 銀凡伝(同衾篇)[あ](2006/12/29 22:27)
[11] 銀凡伝(怠惰篇)[あ](2007/01/02 19:15)
[12] 銀凡伝(帰郷篇)[あ](2007/01/04 20:15)
[13] 銀凡伝(失恋篇)[あ](2007/01/08 18:37)
[14] 銀凡伝(面会篇)[あ](2007/01/28 17:57)
[15] 銀凡伝(日記篇)[あ](2007/01/28 18:04)
[16] 銀凡伝(邂逅篇)[あ](2007/02/24 21:05)
[17] 銀凡伝(密婚篇)[あ](2007/02/25 17:26)
[18] 銀凡伝(会議篇)[あ](2007/03/03 18:47)
[19] 銀凡伝(新婚篇)[あ](2007/03/04 22:45)
[20] 銀凡伝(早弁篇)[あ](2007/03/17 23:28)
[21] 銀凡伝(脱糞篇)[あ](2007/03/21 20:15)
[22] 銀凡伝(決戦篇)[あ](2007/03/25 14:17)
[23] 銀凡伝(惜別篇)[あ](2007/05/06 20:50)
[24] 銀凡伝(誘惑篇)[あ](2007/05/13 23:00)
[25] 銀凡伝(通院篇)[あ](2007/05/27 16:31)
[26] 銀凡伝(激務篇)[あ](2007/06/03 19:49)
[27] 銀凡伝(過労篇)[あ](2007/08/06 21:54)
[28] 銀凡伝(休暇篇)[あ](2007/08/13 23:11)
[29] 銀凡伝(捨石篇)[あ](2007/08/18 23:29)
[30] 銀凡伝(帰還篇)[あ](2007/09/09 21:54)
[31] 銀凡伝(潜入篇)[あ](2007/09/23 22:26)
[32] 銀凡伝(転機篇)[あ](2007/10/14 12:29)
[33] 銀凡伝(借金篇)[あ](2007/10/15 23:43)
[34] 銀凡伝(開幕篇)[あ](2007/10/16 00:07)
[35] 銀凡伝(退屈篇)[あ](2007/10/22 22:24)
[36] 銀凡伝(演説篇)[あ](2007/11/04 11:55)
[37] 銀凡伝(泥酔篇)[あ](2007/11/24 17:30)
[38] 銀凡伝(終幕篇)[あ](2007/12/09 17:32)
[39] 銀凡伝(嫉妬篇)[あ](2007/12/22 20:10)
[40] 銀凡伝(芝居篇)[あ](2007/12/30 13:25)
[41] 銀凡伝(刺客篇)[あ](2008/01/01 22:50)
[42] 銀凡伝(議論篇)[あ](2008/01/05 22:31)
[43] 銀凡伝(親書篇)[あ](2008/02/02 20:51)
[44] 銀凡伝(発狂篇)[あ](2008/02/10 18:46)
[45] 銀凡伝(尋問篇)[あ](2008/02/19 20:52)
[46] 銀凡伝(脱走篇)[あ](2008/02/24 23:06)
[47] 銀凡伝(傍観篇)[あ](2008/03/02 16:49)
[48] 銀凡伝(未還篇)[あ](2008/03/09 15:11)
[49] 銀凡伝(国葬篇)[あ](2008/03/10 20:59)
[50] 銀凡伝(蛇足篇)[あ](2008/03/16 23:57)
[51] 銀凡伝(合婚篇)[あ](2008/03/30 20:17)
[52] 銀凡伝(反動篇)[あ](2008/04/20 17:57)
[53] 銀凡伝(叛乱篇)[あ](2008/04/30 17:25)
[54] 銀凡伝(煽動篇)[あ](2008/05/02 21:51)
[55] 銀凡伝(戴冠篇)[あ](2008/05/25 21:24)
[56] 銀凡伝(梵天篇)[あ](2008/06/08 14:48)
[57] 銀凡伝(詭計篇)[あ](2008/06/22 21:48)
[58] 銀凡伝(師弟篇)[あ](2008/07/05 20:24)
[59] 銀凡伝(退位篇)[あ](2008/07/06 21:31)
[60] 銀凡伝(誕生篇)[あ](2008/07/13 00:25)
[61] 銀凡伝(不安篇)[あ](2008/07/19 21:16)
[62] 銀凡伝(惜日篇)[あ](2008/07/27 21:58)
[63] 銀凡伝(終焉篇)[あ](2008/08/03 11:46)
[64] 銀凡伝(酔狂篇)[あ](2008/08/07 22:24)
[65] 銀凡伝(落夢篇)[あ](2008/08/15 20:16)
[66] 銀凡伝外伝(始動篇)[あ](2010/02/13 18:32)
[67] 銀凡伝外伝(就任篇)[あ](2010/02/10 23:42)
[68] 銀凡伝外伝(欠勤篇)[あ](2010/02/10 21:35)
[69] 銀凡伝外伝(散歩篇)[あ](2010/02/14 18:03)
[70] 銀凡伝外伝(対決篇)[あ](2011/05/22 23:05)
[71] 銀凡伝外伝(完結篇)[あ](2018/11/01 23:29)
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[2215] 銀凡伝(反動篇)
Name: あ◆2cc3b8c7 ID:ac9866c1 前を表示する / 次を表示する
Date: 2008/04/20 17:57

銀河帝国・自由惑星同盟・フェザーンは過去の存在となり、
ローエングラム朝によって銀河は再び統一される・・・

民衆は期待と願望だけでなく、至極現実的な目でそう予測していた。
乱世は必ず鎮まり、治世に取って代わられる物なのだから



■ 懐妊 ■

新帝国暦002年9月、エルゴン星系から全銀河にむけて
大公妃懐妊という吉報が発信される。

最初、もじもじする妻から事実を告げられたヘインは
椅子からずり落ちつつも、素早く立ち上がって妻を抱きしめる事に成功する

サビーネにとって、ヘインからの最高の誕生日プレゼントであった。





「あいつもついに人の親か、さて、どんな子が生まれてくるか」
『あら、お嬢さまの子ですもの、きっとかわいらしい子に違いありません』


吉報をいち早く受取ったファーレンハイトは、
美しい妻の鼻血をやさしく拭いながら、生まれてくる親友の子に想いを馳せていた


同じく報せ受けたミュラー夫妻やアイゼンナッハ、アンスバッハに
若干悔しそうな顔をするナカノ上等兵などを加えたヘイン師団の面々も
思い思いの祝いの品を持ってブジン邸を訪れ、お決まりの宴会が始まる。



■ 会談へ ■


ヘイン暗殺未遂事件によって延期された皇帝とヤンとの会談が
10月に実施することが決定したのは、
大公妃懐妊の報がラインハルトに届いて間もない御前会議の場であった


大切な友人の慶事に気を良くしたラインハルトは
ヤンとの会談前にエルゴン星系へ立ち寄り、ヘインと再会するだけでなく
会談の終了後、新領土行幸に随伴させるつもりだと列席者に述べた。


これに対し、異論を真っ先に述べたのはやはり軍務尚書オーベルシュタインであった

わざわざ圧倒的に有利な立場にある帝国側が、
なぜヤン一党の根拠地付近まで出向かねばならないのか

また、9月1日にハイネセンで起きた暴動の余波が治まり切らぬ中
揃って皇帝と帝国宰相が行幸に赴くなど、軽率に過ぎると
皇帝の意思に痛烈な批判を浴びせて再考を促した。


さらにロイエンタールがいないのを良い事に会議に列席していた
内務省次官兼内国安全保障局長ハイドリッヒ・ラングが、
不穏な噂を元に重ねて皇帝の再考を促す発言を行った。


その不穏な噂とはラインハルトにとって非常に不快な内容であった

『新領土総督ロイエンタールが皇帝に叛意を抱き、策謀を巡らしている』
『ロイエンタールは軍事力で皇帝と宰相に抗し得ない事を知っており
 両名を新領土視察のためと行幸を促し、ハイネセンにて両名の暗殺を企てている』


『新総督は両名暗殺後、イゼルローンからヨーゼフ二世を招聘し、
 ゴールデンバウム王朝復権せしめて、自らは宰相として大権を握るだろう』


また、その噂に怯えてロイエンタールから行幸の依頼が届いたにも関わらず
皇帝は新領土に入ることが出来ないのだといった噂も同時に流れていた。
この屈辱的な内容の噂がラインハルトの行動を決定付けた。


「予はロイエンタールを疑いなどせぬ。怖れもせぬ!
    卿らは下らぬ世迷言で予と重臣の間を裂くつもりか!』


この後は、皇帝にせめて一個艦隊を引連れてはと注進する義眼の意見は跳ね除けられ

僅かな随員を伴ってヤンとの会談に向かうだけでなく
併せてヘインと共に新領土への行幸を行うことが決定される。

もし、この会議にエルゴン星系で浮かれる迂闊なヘインが会議に参加しているか
ヤンとの決戦で大打撃を受けた宇宙艦隊の再編のため動けない
ミッターマイヤーが皇帝の新領土行に随行することができていれば


ルビンスキーとラングと言う内部の共犯者によって実行される
悪辣な姦計は防がれていたかもしれない

だが、彼らも当然全能ではなく、その後に起きる災厄をすべて見通すなど不可能であった


9月15日、不穏空気に気付く事無く皇帝はルッツとワーレン達を引きつれ
ヤンとの会談と新領土の視察を行うため、フェザーンを飛び立つ



■乱世の梟雄■


『閣下、なぜこのような時期に皇帝の行幸など願い出たのですか?
 万が一何かが起これば、反逆者に仕立て上げられる怖れもあります』


心底不安な顔で上官の真意を問うベルゲングリューンに対して返された
ロイエンタールの回答は予想外の物であった。


「それも良いな・・その時はヘインでも担いで皇帝と覇を競うのも一興か・・」

『閣下!!冗談にもほどが過ぎますぞ!』


やや、直情的に過ぎる面がある腹心に悪い冗談だったと謝罪しつつも
ロイエンタールは、冗談と言いつつも心の中のどこかで
そうなる事を望む二面性が自分にある事をよく理解していた。


もちろん、このときの彼は自らが叛乱者に為る未来図を本気で描いてない
皇帝の行幸を願い出たのは皇帝の脇に居る軍務尚書やラングなどといった
噂を利用して自身を積極的に失脚させようと動く輩を牽制するためである


彼は自身が反逆者に堕ちる危険より、皇帝が軍務尚書やラング如きの木偶になりさがり
彼等の讒訴に唯諾々と従うようになる未来図の方を怖れていたのだ





逆らうにしろ、従うにしろ皇帝ラインハルトには高みに居て貰わなければならない
一人執務室でグラスを傾けつつ、屈折した思考と偉才を持つ男は静かに眠りにおちる

彼の寝顔はめずらしく安らかな物であったが、
ナイフを持った少女が彼の元を訪れた際には、既に目覚めており
彼女は残念なことに、寝顔を拝むことも寝首を掻く事もかなわなかった。


 「またお前か、物好きな女だ・・・まぁ良い、少し付き合わないか?」


だが、少しだけ孤独な男の懐に近づくことには成功したようである



■ウルヴァーシ事件■


先の回廊の戦いでヤンと約した会談の実施と
皇帝が義眼やラング木偶に成り下がったか確かめるために
ロイエンタールが贈った招聘書に端を発したラインハルトの新領土行、


最初の目的地は、惑星ウルヴァーシであった


ここで一旦補給を行うと共に、大親征での戦没者慰霊を行うのを滞在の目的としており、
一行は何事も無ければ二日程度で、ヘインの待つエルゴン星系へ発つ予定であった。





このラインハルトの新領土行の主だった随員は
特に任についておらず暇を持て余していたワーレンにルッツの両上級大将

もっとも、ルッツにはハイネセンにいる妹の夫に会うことと
エルゴンにいるヘインを一発殴るために随行するという私的な目的があった
イゼルローン失陥後、幸か不幸かルッツとヘインは再会を果たしていなかったのだ


その他の主な随員は、シュトライト中将、キスリング准将、
リュッケ少佐に従卒のエミールと言った所で、過少な随員しか引連れていない


彼らはウルヴァーシに着くとそれぞれの任につくか、休息していたが

警備兵に不穏動きがある事をルッツが察知したあたりから
事態は急変することとなる、それも悪い方に・・・大きく!!





『陛下、ルッツ提督とワーレン提督が至急にお伝えしたいことがあると
 隣室で控えていらっしゃいますが、お通ししてもよろしいでしょうか?』


従卒の言に許可を与えるや否やというタイミングで
両上級大将はラインハルトの居室に現れた。

ルッツは警備兵の不審な動きを報告し
両目に藤色の彩りを持たせながら急な出立を皇帝に促した。


ラインハルトは信頼する臣下への労を労うと共に
事態の概要について尋ねたが、二人も詳しいことは分からず
兵が慌しく動き、TV電話が通じないなど異常が見受けられるため
大事をとってブリュンヒルトに帰還することを提案したようであった。


ラインハルトは彼等の判断を是とし、すぐさま僅かな随員を連れ
一路、ブリュンヒルトを目指す決断を下す。





旗艦を目指すラインハルト達の移動は困難を極めた
次から次へと逆賊と化した帝国軍兵卒に襲われたためである

また、各地でゼッフル粒子を利用した爆発テロが散発しており
思うように皇帝を警護する兵も集めることが出来ず、
また、反逆者かどうかの区別を行うのが容易でないことも
それに拍車をかけており、随員のみでの移動を余儀なくされる


一人、二人と随員が逆賊達の手に掛かる中、
ルッツとワーレンの両上級大将の活躍は凄まじい物であった

故キルヒアイス元帥以上の射撃の腕を持つルッツが
敵の射線の5分の1でそれに倍する戦果をあげ、
それを掻い潜って近接戦を挑む者達をワーレンの鋼の豪腕が捻じ伏せる


『俺の腕の疼きを貴様ら逆賊の血で鎮めてくれるわっ!!』
『我が鋼鉄の義手はッァアア!!帝国科学の粋を込められ銀河イチィイィイ!!』


特に最高にハイってやつになったワーレンの活躍ぶりは凄まじく
往年のオフレッサー上級大将を見るようだったと殺戮の目撃者は後に語る事になるが、

彼ら両名の活躍によっても、窮地を脱したとは到底いえない状況が続いていた。



■無為無策■


惑星ウルヴァーシの変事をほぼロイエンタールと
同時期に知ったヘインは頭を抱えながら、
無い知恵を絞って対応策を捻り出そうとしていた

ヘインの認識では原作のロイエンタールの叛乱は
ヤンが死んだことが起因になっていると認識していた

そのため、今回も原作展開の焼き直しで、地球教は会談の妨害を図り、
ヤン若しくは自分を暗殺して、銀河帝国皇帝ラインハルトを唯一の権力者に押し上げ

その後、ロイエンタ-ルの叛乱のような主従の反目を誘発して
帝国を疲弊させて影から帝国を牛耳る展開を狙うだろうと思いこみ
自身の警護の強化に注力するのみであった。


ヤンやラインハルトでさえ完全に読めない歴史の流れを
ヘインが読もうとするのはやはり無理だったのであろう

宰相ヘインは変事の防止を怠り、不作為を貫き意図的に見過ごし
敢えて火を燃え上がらせて、状況を利用しようとしたのではと
後世の歴史家達は稀代の陰謀家に疑いの目を向ける事になるが



それは、凡人に対して余りにも過大な評価であろう


■■


おいおい、なんでここでウルヴァーシ事件が起きるんだよ
普通はヤンの後にロイエンタールだろ!
というか俺が暗殺対象になったのだって予想外だったのに


まぁいい、指数を見て落ち着こう・・銀河運輸指数も落ち着いている
俺のポートフェリオは今日も真っ黒で気分は上々だ!!


ってそんなもん見てる場合じゃないぞ!
このまま、ロイエンタールが叛乱しちゃったら

エルゴンにいる俺たちはロイエンタール率いる新領土軍と
イゼルローンに篭る魔術師率いるヤン艦隊に挟み撃ちされかねんぞ


考えろ、考えろ、原作知識を応用、転用して
たった一つの真実に辿り着くんだ!


やっぱ無理、わからん。こうなったら他力本願だ
食詰めとかみんなを集めよう。だれかが何とかしてくれるだろう



■果たされぬ誓い■


ワーレンの義手がついに黒煙をあげてその動きを止めた
もはや基地全体が皇帝一行を屠らんとするかのように動いていた
それを、ワーレンが指摘するとラインハルトは苦々しげに
ロイエンタールが叛いたとでも言うのかと吐き捨てたが


現実は新領土において新領土総督の指揮する基地で
自分達は命を狙われ窮地に陥っている事実
ラインハルトの否定は力強さを欠いていたと言わざるを得ない。


不毛な会話に幕を閉じると、皇帝たちは無様な逃避行を再会した
今は、自身の身の安全を確立することが最優先であり

何らかの責を持つべきロイエンタールに対する詮議は
この際、後回しにするべき問題であった。





リュッケ達と合流し、ようやくブリュンヒルトへの帰還が現実味を帯びてきた中
反逆者の攻勢は更に激しさをましていた。

また、旗艦に戻ってもロイエンタールの艦隊が衛星軌道上に駐留し
彼らが網に掛かるのを待っている可能性を考えると表情は明るくなりようがなかった

ロイエンタールに叛意ありという流言は、この非常時に彼等へ暗い影を落としていた。


『皇帝陛下万歳!』「皇帝を殺せ!!」「皆殺しにしろ!!」


反逆者との間の火線の応酬が益々激しくなる中、ルッツは決意を持って口を開いた



「ここで、わたしがのこって敵を食い止めよう。卿らは皇帝を守って先に行け」
『ばかなことをいうなルッツ!卿には残してきた婚約者がいるのだろう?俺が残る!』

「いや、卿には子供いるし、その壊れた鋼鉄の義手では敵を食い止めれまい」


ワーレンはジークフリード・キルヒアイスの副将として共に歩んできた頃より
常に正しい判断を下してきた僚友の正しさを認めざるを得なかった。


『ルッツ、予は死後に卿を元帥にする気はない。遅れても良い必ず後から来いよ』

「陛下、勿論です。私は死んで元帥杖を受ける気はありません
 それにアイツ、ヘインには返したい大きな借りがありますから」


茶目っ気たっぷりの笑顔で皇帝に言葉を返したルッツは
キスリングらの申出をはねつけて、変わりに銃のエネルギーカプセルを受取る


『ルッツ、銃が撃てなくなったら降伏せよ。ロイエンタールは
 勇者の遇し方を知っている。ヘインへの借りを必ず返すのだろう?』


ルッツはラインハルトの言葉に頷くと踵を返し、最良の射撃ポイントへと移動する。
皇帝一行も後ろ髪を引かれる思いを断ち切り、ブリュンヒルトを目指し駆ける





何人の反逆者を討ち果たしただろうか、最初の一個小隊を尽く射線の餌食にしてから
既に1時間以上は経過しているようにルッツには思われた。


予備のカプセルと入れ替えながら、更に迫る反逆者へと射線を走らせる
4人目の眉間に風穴を開けると同時に、ルッツの左鎖骨の下に白い光が突き刺さった
だが、ルッツはそれを一瞬見やるだけで、二度引き金を引き戦死者を更に積み上げる


軍服の胸部が更に黒ずみ、不快な粘着感がもたらされる中
再度、引き金を引いて不逞な反逆者に死のダンスを躍らせるが

先ほどと同じ白い光がルッツの腹部を貫き、彼を地面に座り込ませた。


『陛下の命を守れぬどころか、あいつを一発殴ることもできんとは・・』


木を背に座り込んだルッツが離さずに持つ銃を怖れ
反逆者が彼の死を確認したのは、死後30分以上の後のことであった
不屈の勇将は死してなおも主君のために敵の足を止めたのだ


コルネリアス・ルッツ・・・果たされぬ命と誓いを持って天上へ逝く・・・


■矜持と叛乱■


ヘインがウルヴァーシの変事でパニックに陥る中
同じく報せをハイネセンの総督府で受けたロイエンタールは
僅かに自失したのみで、それを表に出す事は無く、
沈着に事態の処理に当たろうとしていた。

とにもかくにも皇帝を救い、現地の治安を回復する
彼に残された選択肢はこれ位しかないのだから

皇帝が一度フェザーンに戻ってしまえば弁明も議論もできず
反逆者として罪人扱いで処断される羽目になるだろう


そのような無様な事態をロイエンタールは甘受する気には到底為り得なかった


また、現地へ派遣される命を受けたグリルパルツァーに対しては
治安の回復だけでなく、事態の真相を追究するという重大な任も課せられる。


この人選が、両者にどうのような結末をもたらすのか
命じる方も命じられた方も、現状では当然知る由もなかった





          「ルッツが、死んだだと!」



変事に対する一通りの指示を出し終えたロイエンタールに届いた
数少ない報せの中で、最悪なものはルッツという僚友の死であった。


この報せを受けたロイエンタールもさすがに声を漏らさずにはいられなかった
もはや、誤解を解いて和解へと至る道は永遠に閉ざされたのだと彼は自覚した。



『総督閣下・・・いかがなさいますか?』



剛直を持って為る軍事査閲総監もさすがに血の気が失せた表情を見せている。


『卿も分かっておろう。俺はローエングラム王朝における最初の叛逆者になったらしい』


この上官の言葉に対して、ベルゲングリューンは無駄だとは思いつつも
皇帝に事情を説明すればと再考を促したが、
ロイエンタールは一顧だにせず、どうにもならんよと跳ね除けた


彼は無実であったのだ。だからこそ卑屈に弁明することができない
軍務尚書やラングなどといった者達に膝を屈することなどありえないのだ
ヘインが終生無縁であった矜持の高さが、ロイエンタールの行動の重い枷となってしまう


もし、このときの総督がヘインであったら、恥も外聞もなく卑屈に謝罪し
皇帝の寛恕を請い、皇帝との長年の深い友誼で事なきを得たであろう。




   だが、このときの新領土総督は他の誰でもない

       オスカー・フォン・ロイエンタール元帥

 皇帝と同等か、それ以上の矜持の高さを持つ英雄であった




ヘイン・フォン・ブジン大公・・・銀河の小物がもう一粒・・・・・



             ~END~


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