始める事より、終わらせることの方が困難だ
分かり易くいえば、散らかすのは簡単だが、片付けるのは面倒ということ
果たして英雄と凡人達は、流血の清算をすることができるのだろうか?
■ 葛藤 ■
こんかいは思ったより楽できたなぁ~
後ろで地道に戦力の逐次投入をするだけで良かったからな
まぁ、それはいいとして、これから起るであろうヤン暗殺をどうするかだ
正直、後のこと考えるとヤンには死んで貰ったほうが良いんだと思う。
下手に長生きされたら、碌なことが無さそうだし
なんだか、ヤンは俺にとって鬼門のような気がする
ちょっと前の回廊外会戦とかでは殺されそうになったし
うん、見殺しにしよう!相手は敵だし、未来の安全のためなら仕方ない!
・・・と思ったんだが、ユリアン君やポプランにコーネフ、アッテンボロー
イゼルローンであいつらと友達になるんじゃなかったな
あいつらの為にならヤンを助けてもいいかもっておもっちまう
まったく、保身主義と分かれる気はまだないんだけど
ここ最近、ずっと疎遠になってる気がする
■お見舞い■
ヒルダから『キルヒアイスに争うのを止めろと言われた』と
ラインハルトに話されたと伝えられたヘインは
『大丈夫かアイツ?熱で脳の中がお花畑になってるんじゃないか?』と
不敬罪全開の発言をしつつ、ラインハルトの病室に入っていた。
その後ろ姿をヒルダは『言いたいことの言える関係って、いいなぁ・・』と
ちょっとずれた感想を持ちながら見つめていた。
■
『よぉ、死損ない!思ったより顔色良いじゃないか?』
「ふっ・・減らず口は相変わらずだなヘイン、それで何のようだ?」
いつものように気安くラインハルトの部屋を訪れたヘインは、
ヤンとの会談に当たって、自分がヤンを要塞まで迎えに行くと告げた
「おまえも、オーベルシュタインのように死間となってでもヤンを討つつもりか?」
このヘインの提案を聞いたラインハルトは、つい先日に軍務尚書が提案してきたのと同じ
ヤンを誘き出すための重臣を人質に送り、騙されのこのこと出てきたヤンを謀殺する策を
ヘインが自分に提案し、その人質の役を買って出ようと申し出てきたのかと勘違いした
『違うわ!!!ちょっとした知り合いが、あの要塞に何人かいるから
ヤンを迎えに行くついでに、そいつらとも会って来ようってだけだ』
それを聞くとラインハルトは頷き『何か考えがあってのことだな、行ってこい』と
イゼルローン行きを快く認めた。ヘインに対する深い信頼の現れであろう
『お前は帰ってくるまでベッドで大人しくしてろよ!』と言い残し、ヘインは病室を後にした。
■ 岐路 ■
圧倒的な帝国に対し、軍事上の成功を得る事によって
皇帝から何かしらの譲歩を得て、民主共和制の芽を次代に繋いでいく
このささやかだが、遠大な目的を達成するためにも
帝国からの会談の申し入れは、『ヤン達』には魅力的な物であったし
それを、跳ね除けるデメリットは全く無かった・・・・
だが、イゼルローン要塞には主義主張を別にする者も当然存在する
その最たるものが正統政府系の旧帝国と旧フェザ-ン陣営であろう。
この両者にとって、皇帝とヤンが仲良く歩み寄ることは
余り好ましくない未来を呼び込みそうであった。
前者は新帝国にとって打破すべきゴールデンバウム王朝の象徴である
この帝国臣民が憎むべき旧体制に皇帝が手を差し伸べるとは考えにくい
また、後者も前者ほどではないが、すでに新帝国の中心となりつつあるフェザーンを
再び自治領として主権復活させようという考えは、荒唐無稽そのものであり
皇帝ラインハルトも当然耳を貸すことはないであろう。
皇帝との会談によって得る者と、失う者・・・
共に強大な敵と戦い、苦楽を共にした戦友という一見して強固に思えた結束は
新帝国という圧倒的な存在から差し伸べられた手によって、
早くも砂上の楼閣と化していた。
■
軍首脳部が集まった要塞中央司令室では
勝利したとは思えない・・・深刻な空気に覆われているようであった。
『会見や講和を口実に、ヤン提督を誘き出して謀殺するつもりではないか?』
この思い空気を断ち切るように発言したのは、やはりムライであった。
彼は敢えて、旧帝国・フェザーン陣営にある問題に言及せず、
事を帝国からの提案の審議に絞る事によって、
沈黙によって、徐々に重くなり始めた空気の流れを変える事を選択した
『その可能性は薄いだろう。『ヘインと違って』あのプライドの高い金髪の坊やが
お得意の戦争で勝てないからといって、謀殺という手段を採るとは考え難いな』
『つまり、あくまでも主体が皇帝だったらという話でしょ?中将のあげた奴のように
プライドなど微塵も持たない奴や、異なる価値観を持った幕僚連中もいるでしょうよ
恐怖心や未来の保身に目が眩んだ小心者がことに及ぶ可能性も十分ありえると思いますね』
シェーンコップは皇帝の高潔さを一応評価しており、謀殺の可能性を薄く見たが
ポプランはそれを理解しつつも、周辺の人物も同じ行動原理なのか?と疑問を呈した
もちろん、先の主張の発言者が違えば、このような意見を述べたか疑問ではあるが・・・
ただ、両者に共通しているのは発言にヘインの名を出したり、匂わす事によって
場の雰囲気を多少なりとも、和ませようとしている点であろう。
彼等の前には討議が始まって以後、一言もその口から紡ぎだしていない
ランズベルク伯アルフレッドが、黙然と座していた・・・
■
ヤンは討議をどこか他人事のように見つめながら悩んでいた・・・
もちろん皇帝との会談を受けるかどうかを悩んでいたのではない
自分はアルフレッド達を切り捨てることが出来るのか?と苦悩していた
戦力惜しさに共闘しておきながら、事が終われば用なしとばかり切り捨てる
必要なこととは言え、そこまで悪辣なことは許されるのかと・・・・
ヤンが意を決し、口を開こうとすると
同じく沈黙を保っていた男が、それをやぶる・・・・
『銀河帝国正統政府及びフェザーン解放軍は、イゼルローン要塞を離脱する事を決定した。
皇帝陛下及びハウサーの後任にも既に了解を取っており、この決定を覆すことはない。
離脱に同行しない者については除籍処分とする。尚、陛下の御身については
ヤン艦隊顧問のメルカッツ提督にお任せしたい。勝手を言って心苦しいが了承して頂きたい』
メルカッツが何も言わず頷くのを見てアルフレッドは
言いたい事を言ったとばかりに、颯爽と席を立ち振り返る事無く部屋を後にする
ゴールデンバウム王朝最後の貴族は誰よりも貴族であった。
翌朝、658人の旧帝国人とフェザーン人を乗せた一隻の戦艦が姿を消す
■
フェザ-ンの小覇王と呼ばれた男がイゼルローン要塞を去った後、
多くの者達が約束の地を目指し、要塞と別れを告げていく
彼等の向かった先はどこなのか漏れるようなことはないだろう。
行き先を知るのは黄金の誇りを持った者達だけなのだから・・・・
■今いくよくるな■
5月21日早朝、ヤン・ウェンリーよりラインハルトとの
二度目の会談に応じる返答が帝国軍に届く
同日正午、帝国軍より帝国宰相ブジン大公を出迎えとして要塞へ派遣する事を通知
同日18時、ヤン・ウェンリーより出迎え固辞の通信届く
同日23時、帝国軍本営及び要塞中間点にて合流する案を再提案
翌22日早朝、ヤン・ウェンリーより申出受諾と一応の謝意を告げる通信が届く
■来客の多い部屋■
ヤンの窮地を救い、ユリアン達との友誼に報いるため
ヘインは、出航の準備に追われてはいなかった。全部アンスバッハに丸投げである。
ヘインは暇を満喫するため、出立の日まででダラダラと過ごそうとしていた。
だが、一応敵地へと赴く彼の身を何だかんだで案じる人々が
頻繁に部屋を訪れたため、彼の望むマッタリタイムは短縮を余儀なくされた
ふたりはいつも一緒の、種なし垂らしの双璧コンビが酒を土産に訪ねて来るに始まって
黒猪がヤンへの頭突きの仕方を伝授し、和平の決裂させようと嗾けるわ
アイゼンナッハが無言でインターホンを押し続けて、ヘインを怯えさせるなど
ヘインの部屋は千客万来で、軍高官の溜まり場状態であった
■■
まったく、どいつもこいつも・・・ちっとは遠慮しろよな!
勝手に冷蔵庫を開けて食い始める奴はいるし、便所に鉄壁の守りで篭城とかマジで勘弁だぞ!
帝国宰相様に対する敬意が足らんと思う。
結局、出発予定日までどんちゃん騒ぎしかできなかったぜ
まぁ、こんな日々も悪くないかな?俺自身も何だかんだで楽しんでたし・・
■■
なんだ、食詰めか・・わざわざ呼びに来てくれたのか?
『そんなところだ。しかし、本当にお前が行く必要があるのか?
まぁ、お前のことだ・・・わざわざ出向くだけの事情があるのだろう』
そんなところだ。じゃぁ、ちょっくら行って来るわ。
いつもの如く留守の艦隊を頼むぜ!
『全く、留守じゃなくても殆ど任せきりだろう。帰ったら何か驕れよ』
そうだな、帰ったら元帥府のメンバーで旨いもんでも食いにいくか?
『楽しみにしておこう。アンスバッハとナカノ上等兵をあまり困らすなよ』
■
5月25日、ファーレンハイトを始めとする多くの人々に見送られながら
ヘインはヤンを出迎えるため、回廊の奥へと飛び立つ
また、この日ヤンも自身に迫る危機を当然予知する事無く
ロムスキー医師を代表する政府高官と僅かな随員を引連れて
皇帝との会談を実現するために要塞を後にしていた
■狂信と狡知■
『貴方は本気で上手くいくと思ってるの?』
「なんのことだ、対象を限定しない質問は解答をもとめないのと同義だぞ?」
『じゃぁ、地球教に奇術師と道化師が消せると思ってるのと聞けば満足?』
情婦の少し棘のある問いを気にした風でも無く
かつてフェザーンを統治していた陰謀家は淡々と答えを告げた
「ヤンならば成功の可能性はあるが、ブジン大公は無理だろうな」
ルビンスキーはヘイン陰謀家としての実力を必要以上に高く評価していた
そう、オーベルシュタイン以上の陰謀家と目していたのだ
『ふ~ん、今回はヤン暗殺の成功が、貴方にとって満足する結果ってこと』
「ドミニク、お前は頭の回転が速い故に、結論を急ぐのが欠点になっている
私はあくまで地球教如きでは、ブジン大公を殺せないだろうと言っただけだ」
銀河一で最も優れた者が自分であると確信している傲岸不遜な男を
一瞥しながらドミニクは部屋を後にした。冷笑と影を引連れながら・・・
■
殺す、殺す、殺す・・・・私こそが自由と民主主義の守護者たる英雄の地位に相応しい
帝国と講和しようなどという裏切り者のヤンを討つ、そう私は英雄だ!!!
精神的盲目のアンドリュー・フォークを精神病院から連れ出し
ヤンを討つための手駒へと作り変えた地球教大主教ド・ヴィリエは
グラスを傾けながら皮肉の笑みを浮かべていた。
どんな英雄も殺すだけなら実に簡単ではないかと
既に暗殺を成功させた気になって、今後の未来に思いを馳せていた。
■一輪のバラ■
『綺麗なバラね☆誰かからの贈り物?』
「贈り物・・・確かに、旦那様からお嬢様に贈られた物には違いないですね」
食卓に飾られた一輪のバラを見て、エルフリーデはそれを飾ったであろう人物に
率直な感想と疑問を投げ掛けていた。
飾られたバラは、ヘインが初めてサビーネに贈った皇帝のバラであった
オーディンの屋敷で挿木にして育てたものを、フェザーンの屋敷へ移植したのだ
それだけ、彼女にとって大切な物だったということであろう
もっとも、贈った張本人は贈ったことすら覚えていないが
金色の髪をした少女は、大切な人がいるであろう星空を眺めていた
流れ星にヘインの無事と一日でも早い再会を願いながら
将星が堕ちる不吉さに全く気付く事無く・・・
■忍び寄る影■
『親不孝号』の船長ボリスと事務長マリーネがイゼルローンに到着したのは
ヤンが要塞を発ってから3日後のことであった
彼らはヤンと故ハウサーの依頼によって情報収集と軍費集めの為に駆け回っていたのだが
帝国軍の索敵の目を掻い潜り、回廊を通りぬけてきた彼らは、要塞との通信が繋がると
「ヤンに会いたい。ヤンは生きているか?あとはヘインの奴はどうしている」
『ちょっと、心配だから来ただけよ!勘違いしないでね!!』
『お前さん等の冗談が水準以上だったことはないが、今回はヘイン以下のレベルだな
あいにくと二人の死神はハネムーンらしくて、元帥もヘインものうのうと生きてるよ』
通信スクリーンに出て応じたポプランは嫌味を二人に返していたが、
ボリス達のもたらした不吉で不愉快な情報によって、
ポプラン以外の艦隊首脳も大きく慌てさせられることになる
精神病院を抜け出したフォークがヤンを暗殺しようとしている
その情報を恐らくヘインが掴んでいるかもしれない
そんなとんでもない情報を聞いて悠然としていられる幹部達ではない
アッテンボローはフォ-クを罵倒し、
シェーンコップは超えられない相手は消すしかないと
あの低能はようやく気付いたかと皮肉な感想を述べた
『直ぐにヤン提督を追いかけて連れ戻せ、ヘインが既に情報を得ている状況もまずい
敢えて暗殺者の暴挙を見逃すどころか、目に見えぬ手助けをしてヤン提督を消すかもしれん』
『そんな、ヘインさんがそんな事をするなんて・・・』
『いいか、ユリアン!あいつはお前が思うように良い奴かもしれんが、
今はまだ敵だ、そこらへんを勘違いするなよ?とにかくヤン提督を追うぞ』
ヘインがヤンの暗殺を幇助することも視野に入れた発言に反発するユリアンを制すると
シェーンコップは帝国軍にいらぬ疑惑を持たせぬように
ユリアン以下の少数でヤンを救出に向かうという急場の決断を下す。
■
こうして、不安と混乱の治まらぬ中でユリシーズを始めとする6隻が
ヤン救出のためイゼルローン要塞を後にする
留守居役の中でも厄介な問題を抱える者も僅かながら存在した
残されたキャゼルヌ中将は病床にあったため、
ヤンと同行しなかった彼の副官兼妻のフレデリカに、
この事実をどうやって隠し通すかと頭を悩ませる役を押し付けられていた。
■一人じゃないよ・・・■
一応ヤンを救出する気になったヘインは回廊奥深くをひたすら目指していた
『閣下、間に合うのでしょうか?』
「なに、心配ないさ・・・こっちは地球教の動きを完璧に読んでるからな」
ヤンがヘインの要請を断り、要塞を出てからの合流になったことによる、
当初の計画との若干のずれからくる懸念を、一応アンスバッハは述べたが
ヘインが返したように、それは大した問題ではなかった
事実、ヘインがフォーク対策のために編成した部隊は
この時点でフォーク等暗殺者が乗る艦の特定に成功しており、
ヤンとの接触前に捕縛は若しくは撃破が可能である状態になっていた
ヤン艦隊首脳陣の心配を余所に、あっさりとヤン救出作戦は
ヘインの手によって為されていたのだ
■
ボリスがヤンの窮地を告げていた頃、
ヤンとの合流を目指す帝国軍の前に一隻の駆逐艦が姿を現した
通信兵がヤンの乗艦かと確認の通信を送ると、程なく返信として
ヤンより使わされた先遣隊として護衛に来た旨等が伝えられた。
申出の理由はフォークの脱走が判明し、
会談を妨害するテロが起きる可能性が浮上し
それを防ぐために、ヤン提督の命令により護衛として派遣されたという
至極真っ当な理由であったためか、
『ヤン提督の下へご案内する前に、是非直接の挨拶をしたい』という提案も
すんなりと受容れるという返答を得る事となり、両者の艦は接舷される
そこに、どんな罠が仕掛けられているかなど全く気付かずに・・・
■■
『フヒヒッヒ、スミマセン・・・』
同盟の駆逐艦から乗り込もうとする男達は、ヤンの命令を受けた護衛ではなく
内乱終結後、精神に異常をきたして入院していた病院を脱走した
理屈倒れのシュターデンに率いられたヘイン暗殺部隊だった
艦の扉が開かれた瞬間、間抜けなヘイン一味を皆殺しにせんと船内に突入した
■
武装した狂人達が大挙して艦内へと侵入してくる
その瞬間、来客を歓迎する為、扉の前に待つオストマルクの乗員は
狂騒と流血のパニックに陥ることは必死であったろう。
『残念、ここはベルリンだ』
その一言が終わると同時に、
装甲服に身を包んだ帝国兵がもつ凶器トマホークによって
狂信者の首と生命が同時に刈り取られた。
完全に相手を術中に嵌めたと思い込んでいた狂信者と
理屈通りに事を運べなかった理屈家の運命は悲惨なものであった
噴出するゼッフル粒子と共に瞬く間に、自分達の乗艦に押し戻され
防戦一方という、当初の予想とはかけ離れた結果を突きつけられる
彼等に残された選択肢は二つ、殺されるか、尋問が終わるまで生かされるか
旗艦オストマルクに擬装された戦艦ベルリンから始まった
流血のダンスパ-ティーは、僅か3時間でお開きとなる
■ 凡人還らず ■
ベルリンからの制圧報告をオストマルクの指揮卓で受けたヘインは
生きのこった捕虜に対する徹底的な尋問を厳命する。
どんな手法を使ってでも首謀者の名を自白させろと
いつに無く苛烈なヘインの命令は、報告者に驚きを感じさせたが
それだけシルヴァーベルヒを失った喪失感が大きかったのであろう
『しかし、ヤン元帥だけでなく閣下御自身に対する地球教の策謀を予見し
旗艦に擬装した艦を利用して生み出したリスクのない囮を用い、地球教の一味を
捕らえるなど、閣下の先見とそれを生かす神算鬼謀に、臣は感服いたしました』
『ほんと、ヘインさんってなんでも分かっちゃう凄い人なんですね!』
アンスバッハとナカノ上等兵に絶賛され、ヘインは得意満面であった
もっとも、地球教の動きを完璧に読めたのはケスラーやフェルナーといった
諜報活動に長けた者達に地球教を徹底的に調べろと命じたお陰であったが
その上、最初、自分も暗殺対象になっていると知った時に
ガクブルしていたことなど、頭から完全に抜け落ちている
まぁ、同型艦のベルリンを使ってオストマルクに擬装する方法を思いつき
地球教の捕虜を大量に手に入れることが出来た点については、
多少評価されてもいいかもしれない。
ありきたりな手法でも結果が出せたことには違いないのだから
何はともあれ、ヘインはヤンと自身の身に降りかかる
地球教の凶弾を払いのけることに成功した
一連の結果に満足したヘインは、いつものようにアンスバッハに後の事を任せると
少しだけ遅めの昼食を取るために、一人艦橋をあとにする。
■■
さて、多分ヤンも助かっただろうから、今回の目的はなんとか果たせたな
今回捕まえた地球教徒から出た情報で、教団を完全壊滅に持ち込めるといいんだけどな
まぁ、そこら辺はロリコンやフェルナーとかに頼むか
対テロ教団戦なんかなにすればいいかなんて、俺は全く分からんからなぁ
そんじゃ、遅めの飯でも食堂にいって食うかな
『ヘインさん食事ですか?わたしもまだなんで、一緒に行きませんか?』
かわいい女の子のお誘いなら喜んでうけるぜ!
もうちょっと大きくなった後だと、更に嬉しいけどな
『もう、あんまり変なこと言ってると奥さんに言っちゃいますよ?』
へいへい、それじゃお嬢さんには口止め料にオムライスでもご馳走しよう
■
『でも、ヘインさんって凄いですね・・帝国宰相で帝国軍最高司令官
その上、どんな陰謀も見抜いて完璧に防いじゃったりできるなんて』
いや~、嬉しいこといってくれるじゃないマコちゃん
そうだ、いいこと思いついた!デザート好きなのどれでも頼んでいいぞ
『ほんとですか?でも、残念です・・・その言葉は昨日に聞きたかったかな』
なんだ、ダイエットでも始めたのか?そんなの明日からにしちゃぇ痛っぅ!
『だって、あなたはここで私に殺されちゃうんだから・・・』
えっ!?ありのままに今おこったことをって長いし、熱くってしゃべってらんねぇ!!!
とりあえずナカ上等兵にわき腹刺されたんだよな
やっぱり、ヴェスターラントのこと・・か、いやリッテンハイムの・・ぐぅっ・・
『あれ、知ってたんだ?私があそこの出身で、父はリッテンハイムに殺された兵士
お母さんが貴方達に見殺しにされて、ブラウンシュバイクに焼かれたことも全部』
俺は・・・物知りさん、だからな
『同情して従卒として拾って面倒でも見てるつもりだったの?そんなことで・・・
許せるはずない!あいつ等の娘を助けて幸せにして・・・あなたはみんなに好かれて
あなたなら止めれたはずなのにっ!!許せないよ!わたしは許しちゃいけないの!!』
まぁ、泣くな・ょ・・・、いっしょにぃ・・めしを・・・くぃに・・
『わたし・・このままじゃ殺せなくなっちゃうから・・だから・・・』
■
焦点の定まらぬ目で手に持った短刀を見詰め続ける上等兵と
血塗れになりながら、壁にもたれかかりながら座る凡人
食事時以外では人通りの少ない廊下で
普段なら仲の良い兄妹に見える二人は、静かに座り続けていた
その異様な光景を不審に思った乗員が殺到してするまで・・・
■エピローグは突然に■
凡人との係わりによって違う歴史のぺージを開いた
3人の男女について記していこうと思う。
【アーダルベルト・フォン・ファーレンハイト】
アスターテ会戦以後、ヘインと親交を持つようになる。
リップシュタット戦役においては敵味方に分かれて戦う事になるが
敗戦後、ブジン元帥府のメンバーに名を連ね、烈将の名に相応しい武勲を重ねる。
軍としての最高位でもある元帥にまで上り詰め、
帝国軍最高副司令官に同司令部付幕僚総監、統帥本部総長と要職を歴任する
また、ブジン大公夫人付きの侍女との結婚以後
食い詰めるようなことは無くなったらしい。
【サビーネ・フォン・ブジン】
アスターテ会戦以後のパーティ会場にてヘインとの運命的な出会いを果たし
密婚という形ではあるが、リップシュタット戦役開戦直前に結ばれる。
先天性異常からくる感情の起伏の激しさもあって、幼少期から少女期の前半まで
信頼する侍女と従姉妹にしか心を開かない不遇な時代を過ごすが、
また、ヘインと出会い以後、彼女の世界は大きく広がりをみせ
女性としてだけでなく、夫を狙った不遇な少女を許すなど人としての成長を見せた。
しかし、夫に対する独占欲の強さだけは生涯変わることはなかったらしい。
【アルフレッド・フォン・ランズベルク】
えせ詩人からフェザーンの小覇王、最後の貴族などと呼ばれ
門閥貴族から亡命貴族として没落して以後が、彼の本当の人生であった。
彼に付き従うシューマッハを始めとした部下の多くは彼の気高さに心酔しており、
その集団は同盟衰退期から帝国軍を悩ませ続ける存在と化していた。
亡命前はヘイン、亡命以後はフェザーン解放軍のハウサーと深い親交を持っていた。
なお、幼帝救出時に得た彼の伴侶とのラブストーリは余りにも有名であり、
後世、演劇や映画に小説等、様々な形で商品化されることとなる。
■
その他にも、エイザベートやエルフリーデにアンスバッハやミュラー
彼等のようにヘインと共に過ごした家族や直接の部下達だけでなく、
ラインハルトやヒルダ、双璧や黒猪と言った人物達に
ユリアンを始めとする別勢力の人々も併せて見ていくと
多くの英雄が、凡人としか思えないヘインによって
少なくない影響を受けている事に気が付き驚かされる。
さて、彼等が今後綴っていく銀河の歴史は
きっと非常に色鮮やかなものになるのであろう。
彼らこそが伝説を作る・・・銀河の英雄なのだから
ヘイン・フォン・ブジン大公・・・銀河の小物はもう一粒も無い・・・・・
~END~
未完