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No.2215の一覧
[0] 銀凡伝[あ](2006/10/09 21:10)
[1] 銀凡伝(苦痛篇)[あ](2006/10/09 23:26)
[2] 銀凡伝(錯綜篇)[あ](2006/10/11 06:57)
[3] 銀凡伝(呆然篇)[あ](2006/10/20 22:34)
[4] 銀凡伝(逆流篇)[あ](2006/10/25 22:29)
[5] 銀凡伝(悔恨篇)[あ](2006/11/04 00:37)
[6] 銀凡伝(文通篇)[あ](2006/11/05 23:38)
[7] 銀凡伝(決別篇)[あ](2006/11/12 20:26)
[8] 銀凡伝(決断篇)[あ](2006/11/26 21:19)
[9] 銀凡伝(窃盗篇)[あ](2007/01/02 19:14)
[10] 銀凡伝(同衾篇)[あ](2006/12/29 22:27)
[11] 銀凡伝(怠惰篇)[あ](2007/01/02 19:15)
[12] 銀凡伝(帰郷篇)[あ](2007/01/04 20:15)
[13] 銀凡伝(失恋篇)[あ](2007/01/08 18:37)
[14] 銀凡伝(面会篇)[あ](2007/01/28 17:57)
[15] 銀凡伝(日記篇)[あ](2007/01/28 18:04)
[16] 銀凡伝(邂逅篇)[あ](2007/02/24 21:05)
[17] 銀凡伝(密婚篇)[あ](2007/02/25 17:26)
[18] 銀凡伝(会議篇)[あ](2007/03/03 18:47)
[19] 銀凡伝(新婚篇)[あ](2007/03/04 22:45)
[20] 銀凡伝(早弁篇)[あ](2007/03/17 23:28)
[21] 銀凡伝(脱糞篇)[あ](2007/03/21 20:15)
[22] 銀凡伝(決戦篇)[あ](2007/03/25 14:17)
[23] 銀凡伝(惜別篇)[あ](2007/05/06 20:50)
[24] 銀凡伝(誘惑篇)[あ](2007/05/13 23:00)
[25] 銀凡伝(通院篇)[あ](2007/05/27 16:31)
[26] 銀凡伝(激務篇)[あ](2007/06/03 19:49)
[27] 銀凡伝(過労篇)[あ](2007/08/06 21:54)
[28] 銀凡伝(休暇篇)[あ](2007/08/13 23:11)
[29] 銀凡伝(捨石篇)[あ](2007/08/18 23:29)
[30] 銀凡伝(帰還篇)[あ](2007/09/09 21:54)
[31] 銀凡伝(潜入篇)[あ](2007/09/23 22:26)
[32] 銀凡伝(転機篇)[あ](2007/10/14 12:29)
[33] 銀凡伝(借金篇)[あ](2007/10/15 23:43)
[34] 銀凡伝(開幕篇)[あ](2007/10/16 00:07)
[35] 銀凡伝(退屈篇)[あ](2007/10/22 22:24)
[36] 銀凡伝(演説篇)[あ](2007/11/04 11:55)
[37] 銀凡伝(泥酔篇)[あ](2007/11/24 17:30)
[38] 銀凡伝(終幕篇)[あ](2007/12/09 17:32)
[39] 銀凡伝(嫉妬篇)[あ](2007/12/22 20:10)
[40] 銀凡伝(芝居篇)[あ](2007/12/30 13:25)
[41] 銀凡伝(刺客篇)[あ](2008/01/01 22:50)
[42] 銀凡伝(議論篇)[あ](2008/01/05 22:31)
[43] 銀凡伝(親書篇)[あ](2008/02/02 20:51)
[44] 銀凡伝(発狂篇)[あ](2008/02/10 18:46)
[45] 銀凡伝(尋問篇)[あ](2008/02/19 20:52)
[46] 銀凡伝(脱走篇)[あ](2008/02/24 23:06)
[47] 銀凡伝(傍観篇)[あ](2008/03/02 16:49)
[48] 銀凡伝(未還篇)[あ](2008/03/09 15:11)
[49] 銀凡伝(国葬篇)[あ](2008/03/10 20:59)
[50] 銀凡伝(蛇足篇)[あ](2008/03/16 23:57)
[51] 銀凡伝(合婚篇)[あ](2008/03/30 20:17)
[52] 銀凡伝(反動篇)[あ](2008/04/20 17:57)
[53] 銀凡伝(叛乱篇)[あ](2008/04/30 17:25)
[54] 銀凡伝(煽動篇)[あ](2008/05/02 21:51)
[55] 銀凡伝(戴冠篇)[あ](2008/05/25 21:24)
[56] 銀凡伝(梵天篇)[あ](2008/06/08 14:48)
[57] 銀凡伝(詭計篇)[あ](2008/06/22 21:48)
[58] 銀凡伝(師弟篇)[あ](2008/07/05 20:24)
[59] 銀凡伝(退位篇)[あ](2008/07/06 21:31)
[60] 銀凡伝(誕生篇)[あ](2008/07/13 00:25)
[61] 銀凡伝(不安篇)[あ](2008/07/19 21:16)
[62] 銀凡伝(惜日篇)[あ](2008/07/27 21:58)
[63] 銀凡伝(終焉篇)[あ](2008/08/03 11:46)
[64] 銀凡伝(酔狂篇)[あ](2008/08/07 22:24)
[65] 銀凡伝(落夢篇)[あ](2008/08/15 20:16)
[66] 銀凡伝外伝(始動篇)[あ](2010/02/13 18:32)
[67] 銀凡伝外伝(就任篇)[あ](2010/02/10 23:42)
[68] 銀凡伝外伝(欠勤篇)[あ](2010/02/10 21:35)
[69] 銀凡伝外伝(散歩篇)[あ](2010/02/14 18:03)
[70] 銀凡伝外伝(対決篇)[あ](2011/05/22 23:05)
[71] 銀凡伝外伝(完結篇)[あ](2018/11/01 23:29)
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[2215] 銀凡伝(終幕篇)
Name: あ◆2cc3b8c7 ID:1ac158fb 前を表示する / 次を表示する
Date: 2007/12/09 17:32
先勝に浮かれていた帝国軍は、次第にその表情を暗くしていく事になる
ウルヴァシーを根拠地とするためイゼルローン回廊から物資を運ぶ輸送船団に対する
ヤン艦隊の攻撃が同盟の反撃の狼煙となり、帝国軍に不愉快な未来像を見せ始めたのだ


■酒もってこい!!■

度重なる輸送船団に対する攻撃に対してラインハルトの決断は早かった
傘下の艦隊を用いてヤン艦隊の補足に動いたのだ
残念な事に、原作通りシュタインメッツ、レンネンカンプ、ワ-レンの尽くが
ヤン艦隊の前に敗れ去り、ワインやビール等の嗜好品が滞り始める

ここに至り、沈黙を守っていたヘインが動いた
イゼルローンからの輸送物資の護衛にアイゼンナッハ艦隊を用い
代わりにルッツ艦隊を新たな防衛艦隊として派遣するついでに航路の哨戒を行わせる

ヤン艦隊への備えには雪辱に燃えるシュタインメッツ・ワ-レン・レンネンカンプの
三個艦隊を派遣させることをラインハルトに上申し、裁可を得ると即実行に移した




ヘインの提案は一応の成功を得る。イゼルローン経由の輸送艦隊は
アイゼンナッハ艦隊に守られ無事到着することに成功した

だが、レンネンカンプ艦隊がまたもやヤン艦隊に襲撃を受け
手痛い敗北を喫したため、いささか後味の悪い結末となった

しかし、補給作戦は成功したため嗜好品の価格高騰はおさまり
ヘインは大満足であったし、兵站の維持を第一とする姿勢と周りに取られ
戦略家としての高評価も引き続き維持することとなった

ただ、安酒の確保のために5個艦隊を動かしたなどとという真実には
当然の如く、誰も到達することは出来なった。
それがヘインにとって幸せなことなのかは分からないが


■ウェンリーを探せ!■

『まいったな、ヤンは同盟領それ自体を基地としているようだ』

水色の瞳を困惑の影で濁らせながらファーレンハイトは呟いた
ヤンが同盟領に点在する84箇所の補給基地を渡り歩き
帝国軍の名将達を次々と各個撃破するゲリラ戦法の見事さに心底参っているようであった

『烈将らしくもない弱気だな。チョロチョロ動くヤンなど我が黒色槍騎兵艦隊によって
正面から撃ち下してくれる。所詮は一個艦隊に過ぎないではないか、何ほどのものか!』

気勢をあげるビッテンフェルトに対して首肯する提督も少なくはなかったが
ミッターマイヤーにその一個艦隊によって『帝国軍の一個艦隊』が何度苦杯を舐めさせられたと
冷静に問い返されると言葉を返すものはいなくなった

そんな空気を断ち切るように発言したのはやはりヘインであった。

「別にヤンにこだわる必要はないだろう?首都を攻略しておしまいじゃないか?」

原作での双璧の首都攻略後の降伏勧告から終戦の流れを知っていたヘインは
この場で、ヤンを無視した首都攻略作戦さえ採ればバーミリオン会戦は起らず
楽に終戦を向かえることができると考えていた。
そのため、地味提督達の敗北には目を瞑っていたもとい、怠けていたのだ

ヘインの提案は当然正解ではあった。だが、それが受容れられる時期ではなかった
双璧がヒルダの進言を受容れる状況と、現在の状況が同じではなかったからだ

この時点で原作ではヘインと同じような提案をした人物がいる
その人物の名はビッテンフェルトである

つまり、ヘインの発言が却下されるのは確実であった!そうコーラを飲んだry

『ヘイン、それでは首都を攻略して我等の大半が帝国本土に帰還した後に
 無傷のヤン艦隊が現れて首都を奪還し、同盟を再興させるだけだろう?』

ミッターマイヤーに反論されたヘインは
『何で?おまえヒルダちゃんの提案にはウンっていったじゃん!』と思ったが
名将を相手に対して、原作知識以外の力で説得できないことを知っていたので
考える事を止めた。まぁ、考えた所で結果は同じだったろうが

今の時点での帝国軍提督達の認識は、やはりヤン=同盟であったのだ
そのため、ヤン艦隊を殲滅せずに首都を攻略しても無駄というのが
ヤンの性格を当然知らない帝国軍幹部の常識になっていた

こうして、ヘインが真っ白になっている中
義眼の男によって、提督達の不毛な討議を終了させられた
総司令官ラインハルトが作戦を定め、全提督を招集したことを告げに来たのだ


■■

なんか、金髪に呼び出されたと思ったら急に金髪の野郎が叫び始めた
相変わらずテンションが高い奴だ。

なんか、ヤンの名声をあげる為だけに来たのかとか言ってる
正直、種無しに『ヤン無視して首都をどっか~ん!作戦』が
却下されると思ってもいなかった俺はsage、sageな気分だ
いつもの如くやる気はゼロだし、早く部屋に戻ってごろごろしたい。

あ~あ、原作通りにロイエンタールとか提督達に本拠から離れる命令を出し始めたよ
『これは擬態だ』とか得意げに言ってるし、もう見てらんないね!
おまえ名に得意げに『擬態』とか言ってんのと説教しようと思ったら
横の鉄壁が『自ら囮となられるのですか?』とか抜かし始めるし
どうしようもないねこりゃ~、完全バーミリオン一直線かよ


『ヘイン、卿には旗艦にて私がヤンに勝利する瞬間を見て貰おうと思う』
     はぁ?ギリギリ助かった旗艦に乗れですと???


NOです閣下.NOですわ閣下、ああ、ちっともうれしくないぜ
って言いいてェエ~!!なんで一番危ないとこにいかなきゃ駄目なんだよ!

「いや、俺は自分の師団の指揮とかもあるしさぁ」
『何を言っているのだヘイン?卿の指揮下の艦隊も各星域に派遣すると言ったら
 うんうん頷いていたではないか?それに約束を果たす場に卿が居なくてどうする?
ヤンを屠り、同盟を滅ぼして銀河を手に入れる。キルヒアイスとの約束だ・・・・』

あひゃっうひゃひゃ♪なんか金髪はあっちの世界に逝ってるYO♪
赤髪が手招きしてるのが見えてきた♪もう、ヘインちゃん困っちゃう♪


■混成艦隊■

ヘインがアヒャっている頃、首都ハイネセンでは最終編成を終えていた
銀河帝国正統政府軍及びフェザーン解放軍混成艦隊、通称『メルカッツ艦隊』が
最終決戦に向け、ヤン艦隊と合流すべくハイネセンから出征しようとしていた。

艦隊司令には正統政府軍三長官を兼ねるメルカッツ元帥
副司令官にはランズベルク上級大将、参謀長にはシューマッハ中将
主席副官シュナイダー大佐がそれぞれ任に付く

分艦隊司令官にはアイディアマンで敵の裏をかくのが得意な
フェザーン解放軍のハウサー提督が任に付いた。

この混成艦隊は同盟の旧式艦艇も加えたため、
総数は約11,000隻と数だけは一個艦隊クラスではあったが
その戦力については未知数であり、同盟軍内部からも最後の破れかぶれと揶揄される
しかし、ほかに戦力もなかったので、編成及び出征に表立って反対する者はいなかった

つまり、バーミリオン会戦におけるジョーカーと呼ばれるほどの活躍をすると
この時点で予想していた者は、当の艦隊将兵を含めて皆無に近かった


■決戦準備■

結局、私はローエングラム公にヤンとの正面対決を避けさせることが出来なった
彼が自分の進言を退けるだろうということが分かってはいたが
何故か、それをしないと言う選択肢を選ぶことはできなかった

更に残念なことは、彼は私に基地に残るよう父の名を使ってまで説得を行ってきたのだ
少し反発したくなったが、彼が私の身を案じてくれたのを思うと嬉しくも感じていた
そんな、なんとも言い現せない感情と共にあてもなく歩いている時に
私は決戦を前にした軍人とは思えないほど陽気な声に呼び止められた


『ヒルダちゃん~ちょっと付き合ってよ!』


振り返ると、軍の重鎮にはとても見えないブジン公が笑顔で手招きをしていた
なんだか、その笑顔で私の心は瞬く間に軽くなったような気がした

最初はブジン公が、また取り止めのない話でもしてくるのかと思っていたが
彼はローエングラム公に退けられた私の進言について言及し、
自分が思うようにやればいいと背中を押してくれた。

彼は全てを分かった上で、迷っている自分に一歩を踏み出す勇気をくれた
そこまでされたら、自分は期待に応えるために突き進むしかない
敬愛するブジン公を失望させるわけにはいかない




ヘインはちゃんとヒルダが原作通り動くか確認したあと
自分の傘下の艦隊提督を集めて、少しでも命の危険が減るよう足掻いていた

原作通りの流れなら囮のラインハルト本隊から遠く離れた艦隊提督達が反転して
ヤン艦隊を包囲殲滅する前に、ヤン艦隊の艦砲がラインハルトに届く寸前までいっていた
もしも、同盟政府の停戦命令が届くのが、少しでも遅れたら・・・・

ヘインはファーレンハイトにはどんな犠牲を払ってでも首都ハイネセンを落とせと
ミュラーとアイゼンナッハには反転予定ポイントの遥か手前で反転するよう指示した
これにヤンが気付いて囮の本隊に食いつかなくても構わない
死ぬよりはマシだという考えに基いた指示であった。もちろん口には出さなかったが

しかし、これは明らかに総司令官ラインハルトの命令を無視する行為であったため
ミュラーに『大丈夫でしょうか?』と不安げな顔で問い返されるが
「問題ない!」「そんなの関係ねぇ!」とヘインは必死の形相で押し切りにかかった

最初は、そんな無茶苦茶ですよと常識人らしい反応をしていたミュラーであったが
ファーレンハイトがあっさりヘインの提案を了解し、
アイゼンナッハも何も言わないので、不安を覚えながらもヘインの押しに屈した

もし、同盟に原作通りの戦力しか残っていなければ
このヘインの動きによって帝国軍の大勝となっていたかもしれない
しかし、異分子が入った事によって歴史のぺージは書き換えられてしまっていた
不幸な事に、ヘインはその事実に気付けるほどの才覚を持ち合わせていなかった

彼の介入によって史実以上に凄惨な戦いが幕を開けることとなる


■ 開戦 ■

バーミリオン星域会戦がいつ始まったのか、それを確定するのは容易ではない
先の地味3提督の敗北を第一幕とするか、ヘイン主導の補給作戦を開戦とみるか
後世の歴史学者の間でも意見が分かれることとなる

だが、この時代に生きる者達にとって、そんなことはどうでも良かった
目の前に敵軍が現れたら討つか討たれるかだけなのだから

宇宙暦799年、帝国暦490年4月22日、史実より2日ばかり早く
帝国軍本隊22,357隻とヤン艦隊19,626隻は激突した

■■

はぁ、何でこんな破目になったんだ。正直、シャトル強奪して逃げ出したい
初日からトゥルナイゼンの馬鹿が猪突しやがったときに
トイレ行く振りして逃げるべきだったと本気で思う

今の所ぺらぺら紙みたいな陣を上手くスライドさせたりして
ヤン艦隊の一点集中砲火を利用した突破を凌いでるけど
いつまで持つことやら、そのうちユリアンに見破られるんだよなぁ
まぁ、4日も同じ攻防を繰り返してたらおかしいと思うわな

『どうしたヘイン?浮かない顔をしてお前らしくないな』
「いや、そろそろこっちのカラクリがばれるんじゃないかと思ってな」

        『同盟艦隊が前進を停止しました!』

まったく、嫌な予感というか外れて欲しい未来っていうのは当たるんだよな
ヤンが艦隊を分けるのまで原作通りかよ、正直どっちが囮か良く覚えてないが
義眼の奴が本隊って言った方が囮だった様な気がする。

『閣下、故意に見せ付けるように動き、囮と思わせているあたり、案外あれこそが
本隊かもしれません?いずれにせよ兵力を分散させるべきではないかと?』
      『ヘイン!お前はどちらが本隊だと思う?』

う~ん、義眼の逆が正解だったはずだが、相手は魔術師ヤンだしなぁ
正直なところ自信がないぜ!なんたっておれは天才じゃない!

「とりあえず、後退して様子を見ないか?待って援軍に期待しようよ」
『いや、消極策を取って敵に攻勢を許せば短期決戦を狙う奴らの思う壺だ
 囮と見せかけた部隊が敵主力だ!全軍左翼の敵に向けて進軍せよ!!』

もう嫌だ・・・なんでこういう時だけ原作通りに進むんだよ
いちかばちかで義眼の意見の逆が本隊だって言っとくべきだったか?
とりあえず、もう付き合いきれん!いったんオストマルクに戻る準備をしよう
アンスバッハに頼んで戦場を離脱させて貰うしかない。

■ 激戦 ■

どうやらローエングラム公を罠にかける事に成功したらしいと
ヤンは安堵すると同時に主力艦隊に命じて帝国軍の後背に猛然と襲いかからせた

これに慌てた帝国軍は反転してヤン艦隊主力部隊にあたるが
囮部隊を主力と偽装するために牽引した隕石を打ち込まれ、
激しい砲火による追撃も受けて大きな損害を出していた
しかし、旗艦を討たれるわけにはいかないので必死で振り切っていた

「どうやら混戦に持ち込めたようだ。ここにきてようやく勝率五分といった所かな?
 少佐、ポプランとコーネフに連絡してくれ、ようやく空戦隊の出番が来たぞとね」

開戦以後、偶発的な接近戦程度しかなく、活躍の場が殆ど無かった空戦隊が
指揮官の命令と共に獲物を貪らんと次々に宙空に飛び出していった

『ヤン提督、このまま上手くいくでしょうか?帝国軍の識別にオストマルクがありました
 たぶんヘインさんもこの戦場にいます。何かとんでもない事を考えているかもしれません』

ユリアンの予想はある意味あたっていたが、ベクトルは完全に逆方向であった
そのころヘインは本格的に敵前逃亡を考えていたのだから

ヤンはユリアンの危惧に一応頷きはしたが、不確定な敵将の考えを読むより
眼前の敵を包囲の罠に落としこむほうに全力を費やしすことにした

副司令のフィッシャーにフレデリカを通じて指示を出すと
艦隊は誰が見ても帝国の反攻勢によって突き崩されるような艦列に変化していた
ヤン艦隊は反転してきた帝国軍の突進に併せて艦列の中央部後退させ
両翼を前進させる事によって完全に半包囲下に置いたのだ

反転した帝国軍は同盟本隊を分断するどころか、追撃してきた囮部隊にも追いつかれ
完全に包囲下に置かれ虐殺の嵐に巻き込まれることになった
この時点で、両軍の残存艦艇数は開戦前と逆転した

囮部隊から反転して駆けつけた艦隊の内
ブラウンヒッチ、アルトリンゲンの両艦隊はほぼ壊滅状態
カルナップ、トゥルナイゼン艦隊も半壊という絶望的な状況に合った

ラインハルトは敗北を覚悟した独語を漏らす中
シュトライトはシャトルによる脱出を主君に薦めたが
ラインハルトが拒否するよりも早く「よし!先に行ってるからな」と
ヘインは一声かけると、一目散に艦橋を飛び出して
内緒で準備していたシャトルの乗り場へ駆けた。全力で・・・

その光景に義眼すら思考を停止している中、
帝国全軍が待ち望んだ報せが届いた『ミュラー艦隊来援』と


■ 援軍 ■

ヘインの『密命』を受けていたミュラーは命令無視を不安に思いつつも
予定の反転地点よりかなり手前で引き返してきていた
そのため、原作と変わらぬ半個艦隊ではあったが、
二日早く始まった会戦に間に合うことが出来た

事情はどうあれ8000隻程度の援軍を得た帝国軍は
沈みかけた士気をおおきくあげることに成功する
このままいけば同様に反転してきた援軍が次々と駆けつけるのだから

一方、新たな敵を変わらぬ戦力で相手をしなければならないヤン艦隊は大変である
しかし、ヤンの指揮は揺るがず逆により一層の冴えを見せ始めていた
増援に呼応して包囲を突破しようとする艦隊にわざと逃げ道をつくってやったのだ

そう、増援のミュラーが横撃を加えているポイントに
降って湧いたような包囲の穴に当然帝国軍は殺到し、
出口にいるミュラー艦隊は救援の為にその穴に同じく殺到した

結果、増援艦隊と包囲下にあった艦隊は狭い宙域でごった返し、混乱状態に陥る
更に、その混乱に乗じたヤン艦隊の砲撃によって、混乱はより酷い恐慌状態になる
この混戦状態に際中、ミュラーは激しい逆襲を同盟軍から受けた
旗艦が被弾すること数回、一回の戦闘中に旗艦を四度変えるほどの攻勢を受けたのだ

ヤンをして『良将』と言わしめたミュラーの奮戦振りも
ヤン艦隊の攻勢を押し止めることはできなかった。
ヤンはミュラーと言う新たな障害を取り除き、
ついに、ラインハルト命運をその手に捕らえようとしていた

だが、魔術師の奇術を邪魔する無粋な乱入者が現れる
新たな増援『沈黙提督』ことアイゼンナッハの艦隊が増援として現れたのだ
強行軍のためミュラーと同じく艦艇数は8000隻程度と
半個艦隊での参戦であったが、ここに来ての増援は決定的だった

さすがのヤンもこれはお手上げだと、ベレー帽を半ばヤケクソ気味に放り投げあと
増援に来たのがブジン元帥府のメンバーと言う事に気がつき
傍らにいるユリアンに「お前の予想が当たってしまった様だ」と呟いていた

その苦しそうで悔しそうな声を聞いたユリアンは『提督・・』と返すことしか出来なかった
そんなユリアンに気が付いたヤンは申し訳なさそうな声で
「まぁ、なんとか年金を貰うためにもう一頑張りするさ」と軍人らしくない台詞を吐いて
新たな増援によって崩壊しかけた戦線の維持に取りかかかった
保護者が被保護者を不安にさせては、沽券に関わるとヤンが思ったかどうかは定かではないが

しかし、増援に乗じて一挙に戦線からの離脱を企む
ヘイン率いる2000隻の分艦隊とアイゼンナッハ艦隊による攻勢は
疲弊しきったヤン艦隊をズタズタに切り裂こうとしていた

同盟軍から帝国軍へ勝利の杯が移ろうとしたとき
新たな艦影がバーミリオンに現れた。会戦を飾る最後の主役の登場であった

最初艦影を見て、安堵したのは帝国軍、絶望したのは敗戦を覚悟した同盟軍であった
だが、その来援した艦隊が新たな帝国軍の増援では無く
メルカッツ艦隊であると知れ渡ると、両者の感情は激しく入れ替わることとなった。


■ 極限 ■

このメルカッツ艦隊に来援によって最も衝撃を受けた人物は誰であろう?
勝利を手に出来たと思ったラインハルト?それとも敗北を覚悟していたヤンだろうか?

答えは否、真に驚愕をしたのはヘインであると断言できる
ようやく数多の死線を逃れ戦線を離脱し、命の尊さを噛みしめんとしていたときに
目の前に自軍の5倍を超える名将メルカッツ元帥率いる艦隊が突進してきたのである
彼の絶望の大きさは筆舌に尽くしがたい物であったろう

なんたって、敵前逃亡を敵軍分断行動に上手く見せかけて誤魔化したつもりが、
味方の窮地を救うために、寡兵で巨大な敵兵に立向かう英雄になってしまったのだから


■■

俺は敵を分断して安全宙域に逃げたと思ったら
目の前に5倍以上の敵が現れて突っ込んできた。
とりあえず、頭がどうにかなりそうなのでアンスバッハになんとかして貰おう!

アンスバッハ中将!キミの意見を聞こう!!!
『閣下、こうなってはブジン公爵家の名に恥じぬ戦いを見せるのみ!』

あれ、アンスバッハ?ちょっとキルヒアイス殺ったとき以上にヤバイ目してるんですけど
そう例えるなら、ねずみにビックリして地球破○爆弾をだしたどら○もんみたいだぞ

『突撃!突撃!』『帝国万歳!』『ブジン公万歳!!』『ジークヘイン!!』

おいおい、どこの新興宗教だよ!なに突っ込んでるんだよ!にげろよ
おい、そこのお前!死にたくないだろう?逃げても良いんだぞ!!

『閣下!お気遣いは無用です!もとより閣下一人を死なせるつもりはありません!』

おいおいおいおいおいおいおぉ~い!!!俺が死ぬのは決定事項かよ
お前の心配じゃなくて、俺の命を心配してるんだよこのKY!!
いや、この状況だと俺が空気読めてない側なのか???




ヘイン率いる分艦隊が興奮の最高潮の中、果敢にメルカッツ艦隊に突撃するのを
間近で見た帝国軍将兵達はブジン公に続けとばかりに、メルカッツ艦隊に攻勢をかけた

それに対するメルカッツも老練な指揮能力を発揮して、黒色槍騎兵艦隊以上の突撃を
決して正面から受ける事無く、横撃を加えるようして進軍速度を遅らせていた
だが、逆から見るとメルカッツ艦隊の前進が止められたと言うことでもある
それは、ヘイン率いる分艦隊の突撃に追従した艦艇が
帝国軍の増援、本隊を問わず多数存在していたことを同時に証明していた

一方、メルカッツ艦隊の来援によって戦線崩壊を免れたヤン艦隊は再攻勢に出ていた
皮肉な事にヘインに続く者達の突撃によってメルカッツ艦隊という
新しい脅威は取り除かれたが、ヤン艦隊という脅威を蘇らせってしまったのだ


    ヤンは再びラインハルトを射程に捕らえようとしていた
       
        最早、ラインハルトの前にはミュラーやアイゼンナッハ          
          そして、信頼する友ヘインも傍にはいなかった


          若き独裁者の命脈は遂に尽きようとしていた・・・

           
■ 講和 ■

バーミリオンから遥か同盟領奥深くのハイネセン上空に
帝国軍の三個艦隊が方を並べて待機していた。

バーミリオンに向け反転するのではなく、首都を急襲して同盟を降伏させ
ヤンに停戦命令を政府に出せるべきだと主張したヒルダに賛同した
ミッタ-マイヤと彼に誘われたロイエンタールに
ヘインに同様な事を頼まれたファレーンハイトの艦隊であった

彼らは同盟政府に対して連盟で全面講和を要求し、
全ての軍事行動の停止と武装解除を要求した。
もし、拒否した場合は無差別攻撃を加えると恫喝を加えてではあるが

同盟政府や軍部の中でも気骨のある者は、ヤン艦隊が必ず勝利を掴むとして
講和に反対する者もいたが、帝国侵攻後、公式の場から姿を消していた
トリューニヒト議長率いる武装した地球教に抑えられ、全面講和を受容れることとなった

そして、軍事行動の停止命令が遠く離れた最前線のバーミリオンに届けられた



同盟から講和を受容れると言う返答を得た三人の男と一人の女は
一種の失望を感じていた。もちろんその失望の内容までは同じではなかったが

『しかし、ヘインとフロイラインの智謀は一個艦隊に勝るものですな
 ヘインと共にその智謀でローエングラム公を助けていただきたいですな』

「おそれいります。三提督のご助力あってこその成功ですわ。またブジン公が
 開戦前に私の背中を押しくれた結果だとも思っております。どうか今後も
 ブジン公と共に三提督にはローエングラム公を支えて頂きたいと思います。」

ヒルダの願いはどちらかと言うと、ロイエンタールや
ラインハルトではなくヘインに忠誠を誓っている節がある
ファーレンハイトに向けたものだった

自由惑星同盟の終焉をもたらした四人は、
それぞれの思いを胸にハイネセンを見詰め続けていた・・・

■ 停戦 ■

今まさにラインハルトを宇宙の塵とする寸前のヤン艦隊に
停戦命令が首都から届いたのは5月5日のことであった

その命令を受けた同盟軍兵士は等しく政府に対する怒りを爆発させていた
そして、司令官が敵を討ち果たせと言う命令を下すのを期待していた

もちろんワルター・フォン・シェーンコップも例外ではなかった
彼は司令官に詰め寄り、ラインハルトを討ち果たし、反す刀でヘインを討って
宇宙と未来の歴史を手に入れろと焚きつけた。

だが、ヤンはしばらくの無言の後、フレデリカに全軍を後退させる指示を出させた




「メルカッツ提督、どうやら同盟政府には『誇り』が残っていなかったようだ」

同盟軍に対する停戦命令はメルカッツ艦隊首脳陣にも届いていた
彼らは同盟軍ではないので停戦する必要は当然なかったが
共闘している同盟軍が停戦した今、勝機も当然少なかった

このまま意地を貫いても、あとは全滅するだけである。
メルカッツは思想的にも実質的にも指導者と言える立場にあるアルフレッドに意見を求めた

「ふむ、このまま攻勢をかければヘインの首ぐらいは取れるかもしれん
 だが、所詮は負け犬の悪足掻きに過ぎん。我々の道連れにするにも少々人数が多すぎる
 『黄金樹の誇り』を持つ者は陛下と共に野に下ろう。それ以外の者は停戦を受ければよい」

『ランズベルク伯の意見を取るのが一番良いでしょう。実のところ私には再起の『アテ』が
 ないこともない。とにかく離脱するなら早いほうが良い。直ぐに準備に取りかかるとしよう』

メルカッツはアルフレッドの意見をいれ、離脱者の選別を終えると
バーミリオン星域を離脱した。離脱艦艇の総数は4000隻を超えていた

当然、帝国軍はその妨害を考えたが、疲弊は激しく
彼らを追撃する余力は既に残されていなかった。
帝国軍は悠々と離脱するメルカッツ艦隊を見送るだけであった




突然の停戦に当然ラインハルトも驚愕していた
また、停戦経緯の報告をオーベルシュタインから受けた
ラインハルトはより一層、自尊心を傷つけられていた。

「私は勝利を目前にした同盟軍から、乞食のように勝利を譲ってもらったというのか?
 何度と無く私を窮地から救い、命を賭けて私を守ってくれたヘインになんと詫びれば良い!」

若き主君の感情の爆発が収まるのを待ち、冷淡ともいえる声で
オーベルシュタインはラインハルトを諭した

『閣下、結果として勝利したのは閣下です。勝者はヤン・ウェンリーでも無く、
 ブジン公でもありません。貴方が勝者であり、宇宙を統治していく義務があります』

さして自分の言葉が主君に響いていない事を感じながら
オーベルシュタインは別の事を考えていた。覇者が遠慮する存在はやはり危険だと
ブジン公の功績、権力、実力に裏付けられた存在感はあまりにも大きすぎる

巨大な敵を倒すという共通目的があるときはまだ良い
だが、同盟という曲がりなりにも宇宙の半数を征していた存在が消えた今
来るべきローエングラム朝の安定に最大の障害となるのは
やはり、ブジン公ではないかとオーベルシュタインはより一層危惧を深めていた


■■

はひぁれれ?終わった、おわったんか?俺生きてるし、俺生きてるよ
左右の盾艦が吹っ飛んだ時はもう駄目かと思ったけど
やっぱり、オストマルクを旗艦にしてよかった。やっぱ丈夫な艦が一番だね!

『閣下、残存艦艇を纏め、本隊と合流しようと思いますが?』

ああ、いいよいいよアンスバッハ!もう全部やちゃってくれ
俺はもう燃え尽きたよ。今はもうベッドでゆっくり眠りたいね



ヘインは停戦後、命を永らえた事を喜びはしゃぐと
残務をすべてアンスバッハに押し付けもとい任せて
自室のふかふかベッドで深い眠りついた。
極限の戦いの中、ヘインも例外ではなく疲弊していたのだ

本隊から離脱行動以後、最初に2000隻程度あった艦定数は
メルカッツ艦隊との交戦によって旗艦を含め100隻以下まで討ち減らされていた

ヘインが助かったのはオストマルクの防御力のお陰だけでなく
彼についている強力な守護天使の加護によるものと言っても良かった
つまり、死んでいてもおかしくない戦場に立ち続けていた訳である。

もっとも、他の艦隊や分艦隊の死傷率も似たようなものでは合った
バーミリオン星域会戦においての両軍の参加兵力は

帝国軍が艦艇3万8756隻、メルカッツ艦隊を含めた同盟軍は3万0376隻
帝国軍で完全破壊された艦は2万4310隻、損傷を受けた艦は9856隻
同盟軍で完全破壊された艦は1万5820隻、損傷を受けた艦は8675隻

  両軍共に損傷率が80%を超えるまさしく激戦であった
       そして、多くの犠牲者と遺族を生み出していた


■ 会見 ■

ラインハルトとヤンの会談が実現したのは停戦からきっちり24時間たった後であった。
その頃には会戦に間に合わなかったワーレンやシュタインメッツ等の艦隊も
バーミリオンに終結し、ヤン艦隊を完全に包囲していた。

会談に当たってヤンを迎えたのはミュラーであった。
二人はブリュンヒルトのラインハルトの私室に着くまで
お互いの健闘を讃えあい。その人柄と力量を認め合っていた。
その光景は、つい先刻まで殺し合いをしていた当事者とは思えないほどおだやかであった。

ラインハルトの私室に着くと元から部屋にいたキスリングと
案内をしたミュラーは部屋を出てヤンとラインハルトのみの会談が行われた

その場にはヘインも誘われていたのだが、疲労を理由に辞退していた
正直なところを言うと、生命賛歌の宴会騒ぎで酔いつぶれ、
とても人前に出る状態ではなかったためである。

ヤンとラインハルトの初の会見は、ラインハルトがヤンを部下に望む事から始まり
続いて、ヤンが非礼にならないようにそれを断るといった流れで進んだ
その後は、民主主義について深刻な議論を交わした後、
今後について問われたヤンは短く退役すると告げ、
ラインハルトはそれに頷き、両者の短い会見は終わった。


■ 終戦 ■

ハイネセンに降り立ったラインハルトやヘインは
先に到着していた四人の男女の出迎えを受け、最高評議会ビルを共に目指した

その道中では、彼らを警備する将兵から大きな歓声が沸きあがっていた
『ジーク、カイザー!ジーク、ライヒ!』『ジーク、ヘイン!』と
余りの熱狂振りに、目的地への到着は大幅に遅れることとなる。

ビルの会議室に入った帝国軍首脳陣達と随行した行政専門官の間で
この同盟侵攻作戦をいかにして終わらせるかが協議され
オーベルシュタインによって帝国の覇権を最も効率的に維持する
終戦方法が纏められることになった。

彼の卓越した行政手腕によって纏め上げられた終戦協定は
『バラートの和約』と呼ばれ、同盟に帝国に対して莫大な安全保障費を払わせる、
イゼルローン及びフェザーン回廊に隣接する星域を帝国に割譲させるなど
軍事的にも財政的にも、重いによって同盟を縛り付けるような内容が盛り込まれていた

また、同盟は主権としての軍備は認められたものの、大きな制限をかけられ
思想面でも反帝国的な活動を取り締まる法律が制定されるなど
軍事的にも思想的にも抵抗する牙を折られることとなる。

これらの内容を盛り込んだ和約をラインハルト共にみたヘインは
意見を求められたが『別に・・・』『特にない』と答え、異議を唱えなかった
これはラインハルトも同様であったため、和約は完成報告後、
直ぐに同盟の国家元首トリューニヒトとの間に結ばれることとなる


■ 人選 ■

和約には帝国主権者の代理人として同盟首都に
高等弁務官を置くことが盛り込まれていた。

その人選に当たって、ラインハルトは最初、軍政官としての識見、能力
人望や功績といった者がずば抜けているヘインを候補者として考えた

更に後々、同盟を併呑したあとの新領土総督としても考えていたが
オーベルシュタインがブジン公は帝国内に在って、
内政・軍政面を統括しなければならないと強行に反対したため、
ヘインの高等弁務官就任は見送られる事となった。

しかし、オーベルシュタインは後にフェルナーにのみ反対した真の理由を告げた

『ブジン公は巨星だ、遠方に置けばおくほどその存在感と求心力の強さが際立つ
 統一した秩序を構築する上で大きな障害となる。だが、近くに置いたところで
 その巨大な引力で全てを引きずり込み、新星など容易く飲み込んでしまうだろう』

ヘインの存在に対するオーベルシュタインの危惧の大きさを良く現していたが
これは後世の創作とする説も根強い。オーベルシュタインにしては
比喩的表現が強すぎ、虚飾を嫌う彼らしからぬ発言であったためである

いずれにしてもヘインは人選から漏れることとなり、
あらたな候補者としてレンネンカンプがその任に当たることとなった

これにはオーベルシュタインとヘインが揃って反対したが
ラインハルトに『失敗したらレンネンカンプを切り捨て、それを利用し同盟を完全に潰す』
と説明を受けると前者は諒解し、後者はしぶしぶ引き下がらざるを得なかった。
なぜなら、対案を出す能力を生憎ヘインは持ち合わせていなかったからだ

これは同盟政府だけでなく、選ばれた本人にとっても不幸な人選となる
   

■ 戴冠 ■

帝国領内に凱旋したラインハルトは、すぐさま帝国領内の統治に取組み
活発な行動を内外でしめし、それに一段落をつけると
傀儡として即位させた女帝を退位させ、ローエングラム朝の皇帝として即位した。

これによって銀河の過半を支配したゴールデンバウム王朝は過去の遺物となった
これからの歴史は新王朝によって紡がれていくこととなる・・・


   そして、その中心から不本意ながら離れられない男は
    新無憂宮の黒真珠の間で開かれる戴冠式の最前列で
   いつものように、アホ面を引っ提げてボーと立っていた。


      『帝国宰相、ヘイン・フォン・ブジン大公!!!』





      ひとりの凡人は臣下として頂点を極め      
         ここで物語は一旦終幕を迎える

          第二部までの僅かな幕間・・・
        彼は平穏無事な生活を送れるだろうか        


   ヘイン・フォン・ブジン大公・・・銀河の小物が最後の一粒・・・・・


               ~END~



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