歴史の胎動が始まるとき、古き者は静かに消え、新しき者が刹那の光を放つ
才ある者が芽吹き、冬の平穏が乱されようとしていた。
大将に中将、少将と旗艦に将官勢揃い、まさに壮観そのものだなぁ~と
ぼーとしていたら、今にも反転しそうなエルラッハ少将に睨まれた…
やっぱ、参謀長として発言しないとまずいんか、いっちょやるか?
「参謀長閣下、意見具申を許可していただきたいが?よろしいでしょうか?」
ちょっまてまてまて~、人がせっかくやる気だして発言しようとしてたのに、トリップマン唯一の活躍の場を邪魔しちゃいかんだろっ!
その上、こいつの話はイメ-ジしていた以上に長いから、正直あんまり喋らせたくない。
「うむ、発言を許可しよう。」
私は彼の熱意に打たれたので、胸を逸らしつつ大仰に発言を許可し、部下に耳を傾ける度量の広さを見せる事にした。
別にこいつの視線にびびって仰け反った分けではない。
斯くして、食い詰め貴族が冷めた目で見つめるなか、理屈屋の、理屈による、理屈のための長~い演説が始まった…
長いっ!ほんとに長い。正直、原作で5、6ぺージぐらいだったからすぐ終わると思ってた俺が甘かった。本当にごめんなさいだ
もう!既に!更に!シュターデン中将閣下の独演会が30分以上続いている。一向に終わる気配が無い。本当の地獄です!!
斜め前にいるメルカッツ大将なんか眠たそうというより、ホントに寝ているような気がしてきた。
もう、限界です…どこまで進んでるか知らんが、なんか言って終わらせるしかない!!!
「いや、その理屈はおかしい!」
ローエングラム伯の示した戦術は、老将たちには考えも付かないものだった。やはり、ただの孺子ではないらしい。
だが、より興味を引いたのはブジン伯のほうだ…、
絶妙のタイミングで、発言許可を与えたシュターデンをつぶし、司令官の反論に繋げる
あの辛辣な弁論術でしてやられたシュターデン中将はしばらくは立ち直れんだろう…
ただの、門閥貴族のお坊ちゃまに出来ることではないな…
どうやら、老将達には面白くない時代が来ているようだ
なんか急に大人しくなった理屈屋を放置して、あとのこと全部『金髪』がやってくれました…
とりあえず、俺の力では理屈を止めるだけで精一杯だったので後は傍観
三方から来る敵は2倍でも、兵力は分散しているから一つ一つの艦隊で見ればこちらが有利、各個撃破の好機…
金髪が役者さながらにすらすらと戦術構想を謳いあげていく…
展開さえ知らなければ、驚きと好奇心で胸が躍ったのだろうか?それとも理解できず、いまと同じようにぽげ~としてたのかな?
どうでもいいことを考えながら、俺は分かりきった説明が終わるまでぬぼーと立ち尽くしていた
居並ぶ諸将の敵意を一身に受けながらも、臆する事無く必勝の作戦を説くラインハルト様を間近に見つめていると、
内容を事前に知っている私ですら興奮を覚える、ラインハルト様自身も些か高揚していらっしゃるように見えた
だが、僚友のヘイン伯には好意も敵意も見えなかった。いや、私では何も読み取ることはできなかった…
ただ、何を当たり前のことをと詰まらなさそうに佇んでいる様にしか見えなかった
彼の底はどこまで深いのだろうか、もし、彼がラインハルト様の道を阻む側に立ったら…私はラインハルト様を護れるのだろうか?
私はヘインの底知れぬ才幹に恐怖すると共に、僅かながらの嫉妬を覚え自己を嫌悪することになった。
五人の提督は去った。そして俺の唯一の活躍の場も去った…
三人だけになると、赤髪が金髪の諸将への傲慢な態度を諌め、天邪鬼の金髪は「お前は心配性だな」とからかったりし始めた。
俺も話しに入るかと「お前、禿げるな♪」と笑顔で言ったら、満面の笑みを浮かべた赤髪に思いっきり張り倒されました。
横の金パーが『相変わらず、仲がよいな」とか抜かしているが、これはどうみてもいじめだ…
正直、殺してやりたいと思った。でも、絶対に勝てないと分かってるので考えるのをやめ、俺も笑った…
そう、俺に出来るのは金髪の410年製逸品ワインを、奴らより一滴でも多くがぶ飲みすることだけさ。
まったく、今宵の酒は目に沁みるぜ!!
・・・ヘイン・フォン・ブジン伯・・・銀河の小物がまた一粒・・・・・
~END~