恋に生き、愛に斃れる・・・・
ただひたすら真っ直ぐに追い求めた事によって
彼女が得たものは、宝石でも奇麗なドレスでもなく
平凡な男だった・・・
■金髪のお嫁さん■
う~ん、べットの横にいるダーリンは・・・・
って、新妻を置き去りにしてささっと起きて行くなんて!
全く、朝起きてお互い顔を赤くしながら『おはよう』ってのが
新婚初夜明けのお決まりイベントじゃないの!!!
でも、ほんとに結婚しちゃったんだ。
自分でもちょと無理やり過ぎたってことは分かってる
だから、同情や勢いで彼は結婚してくれたんだと思う
考えると凹むけど、多分私のことそんなに好きじゃないんじゃないかな?
それでも、私はあきらめない・・・
うん、がんばってヘインを私に夢中にさせてしまえばいいのよ
かわいいお嫁さんを演じれば男なんていちころと
カーセも言ってたし、何とかなるはずよ!
よしッ!絶対にヘインを落として見せるわ!
覚悟しなさい♪私のヘイン・・・・
■
新たな決意を胸に抱いた金髪の野獣の攻勢は
ヤン艦隊の集中砲火以上の猛威を奮っていた
かわいらしい服や少し背伸びした格好でヘインに迫ったり
手料理攻撃といった古典的なものを用いたり
自分の孤立無援の危機的状況を利用して
実は強がっているだけで、本当は不安でしょうがない
か弱い女性を演じて庇護欲を掻き立てる作戦で攻めるなど
多種多様な攻撃をヘインに加えていた
その戦果はというと、どんなカッコでもぬぎゃ同じだろ?の
生粋の女好きである凡人には目立った効果は無かった
本人曰く『ちょっと興奮するぐらい?』といったとこらしい
また、手料理攻撃についても『料理より女が喰いたい』と
広言して憚らない男なので、やはり効果は少なかった
蛇足だが、もし彼がそう言った女性が引くような発言を控えていたら
彼はそのステータスに相応しい女性関係を持てていたかもしれない
そして、最後の薄幸の儚げ美少女作戦は、本人の前科のためか
元気一杯の説明のせいかは分からないが、やはり効果は薄かった。
そもそもヘインにとって他人の不幸より、己の保身の方が大事なため
同情作戦など、最初から効果など望むべくも無いのだが・・・
まぁ、一応奥さんだから、義眼にばれない様に匿おうとはしている様ではある
ほんとにやばくなったら放り出さないか心配ではあるが
凡人から悪人に落ちるのは存外簡単なので注意して貰いたい物だ
■
さて、結論から言うとサビーネの攻撃は尽く空振りに終わった
しかし、彼の近場にクリーンヒットした人間もいるようだった・・・
そう、何を隠そうこの作戦を示唆した侍女のカーセだ!
彼女はビデオ片手に一生懸命へインを篭絡しようとする
サビーネの姿をひたすら覗き続けていた・・鼻血を垂らしながらだ
この一部始終は『侍女は見た』のなかで、激しい感情に任せて書き綴られている
『これほど、一生懸命なお嬢様は滅多に見れるものではなくてですね!
適当な作戦を薦めた私が言うのもアレではありますが興奮した!大興奮です!
だって、ほんとにかわいいんですよ!!もう、いじらしくていじらしくて・・』
どうでもいいが、両方の鼻穴から盛大に鼻血を垂流す姿は、
たとえ美人であっても、間抜け以外の何者にも見えなかった
■■
まったく、我侭な野獣ちゃんはお疲れでお休みか・・・
急に積極的になるし、喰いきれないくらい飯を作るわ
おまけに気持ち悪いぐらいブリッコ(死語?)する始末
またなんかのスイッチが入ったのか?
こっちは義眼にバレたら処分されるかも?と頭を悩ませてるってのに
はぁ、どうしたもんかね?正直に『俺さぁ、結婚したんだよ』って
金赤に報告した方がいいのか?
いや駄目だ、正直に言って『賊軍と通じるとは!!』と責められて
義眼やパウルとかオーベルシュタインに大逆罪で消されたらたまらん
何とかほとぼりが冷める内乱終結まで家で隠し通そう
問題という物は、解決する能力が無ければ先送りにするしかないのだ
一応、もっと手っ取り早くて楽な解決方法はあるんだが・・・
さすがに、敵の旗頭を捕らえたぞって突き出すような
鬼みたいなことはちょっと出来ないしなぁ・・・
こいつもぶっ飛んだ奴だけど、そんなに悪い奴じゃないからな
それに、こいつも結構かわいそうな部分もあるにはある
さっき聞いたサビーネの話を簡単に纏めると、
親には欠陥持ちってことで不遇な扱いをされていた
周りが認めるこいつの価値は、家と血だけしかなかったとのこと
そして、結論は『かわいそうな私をかわいがってください』だそうだ
まぁ、ストレートで分かり易い要求は嫌いではないが
庇護欲を掻き立てるんなら、元気一杯に力説しちゃ駄目だと思うぞ?
更に本人がかわいそうだからかわいがってくれって普通要求するか?
いや、こいつに普通を求めること事態が非常識だったな
まぁ、一応かわいい奥さんとして出来る範囲でかわいがってやるかね
俺なんかに捨てられないように一生懸命なお嬢さんは、
広い銀河を探しても、そうはいなさそうだからな・・・・
別に冷たくしたら侍女に何されるか分からないからとか
侍女にビビッて大事にするわけじゃないぞ!
心優しいヘイン様の大人のやさしさってやつだからな?!
■
サビーネの演技や作戦はヘインにそれほど効果は無かったが
彼女が持つ前向きな性格や、元気で明るい天真爛漫な性格等
彼女本来の魅力によって、ヘインは少しずつ落とされていた
もし、彼がその事を他者に指摘されたら全力で否定し
それを聞いた金髪のお嬢さんにナイフで刺されたりするだろうが
端からみても、概ね幸せそうな新婚生活に見えるので問題ないだろう
問題があるとすれば、この事実が既にある人物に握られていることだろう
ある人物は憲兵や独自の調査チームだけでなく、
新たに傘下に加えたフェルナーの持つ貴族連合内のパイプを利用して、
リッテンハイム家令嬢が消息不明という情報を掴んでいたのだ・・・
彼はその情報を掴むと、フェルナーに単独でヘイン家を内偵するよう指示を出した
そして、己の望む、予想した通りの結果を新参の部下から得ることとなった
彼はフェルナーに対して、この事実を他言しないように厳命すると、
新参の部下が、今後どうするのか?とどんなに問いただしても
口を閉ざし冷ややかな視線を投げ掛けるのみであった・・・
■
さて、己の知らぬところで、最も知られてはいけない人物に
事実を知られてしまった凡人は、どのような目に遭うのだろうか?
事実を知るもう一人の人物フェルナー大佐は一日千秋の思いで、
自らの調査結果が用いられる日を待つこととなる・・・
ヘイン・フォン・ブジン公・・・銀河の小物がまた一粒・・・・・
~END~