昔話ならお姫様は王子様と結婚したらおしまい
でも王子様とお姫様は生まれてくる子供を養い、育てなければいけない
兄や弟がいれば後継者レースに勝たないといけないかもしれない
『末永く幸せに暮らしました』にするためには、
それ相応の努力と苦労が必要なのである・・・・
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ヘインと野獣の密婚がささやかながら行われている間にも
貴族連合との対決の準備は着々と進められていた
疾風怒涛の季節の到来である・・・・
迅速に首都の騒乱を治めたラインハルト陣営は軍部人事の刷新を行った
まず、拘束した軍務尚書と統帥本部総長の地位をラインハルトが兼任したのだ
そのうえ金髪は帝国軍三長官の座を独占するだけでは満足せず、
皇帝から帝国軍最高司令官に己を任命させ、軍権を一手に握ることとなった
そしてもう一方の主役である貴族連合軍も
ガイエスブルク要塞への集結をほぼ完了していた。
軍事面での決定権を一応持っている総司令官メルカッツの
孤独で絶望的な戦いの幕も、既に切って落とされていたのだ。
■ガイエスブルク要塞■
ガイエスブルク要塞では終結した貴族・軍人が一同に会し
今後の戦略について討議を行っていた・・・・
まず、最初に口火を切った盟主は、本拠地までの道筋に軍事拠点を9つ設け
大規模な部隊を配置し、ラインハルト軍の疲弊を誘ったところで
ガイエスブルク要塞から一気に打って出て撃破するというものであった
これに対してメルカッツ提督は、各拠点をいちいち攻略せずに通信と補給線を遮断し、
各拠点を無力化したうえで、直進して本拠地を突かれたら全く意味が無い
また、兵力分散の愚を犯す事になると反論を述べ、公の戦略を全否定した。
その答えを聞いたブラウンシュバイク公の顔は真っ赤になり
まるで茹蛸のようであった。あまり美味しそうではないが・・・
しばらくすると、公は一応盟主の節度を何とか保って、
どうすればいいかメルカッツに尋ねることができた。
これに対して、メルカッツは公の内心などに意に止めた様子も無く
九ヶ所の拠点は放棄する必要は無いが、用途を監視と偵察にとどめ
実戦機能をガイエスブルクに集中するべきだと説いた。
これに対し、公は遠征による疲労のピークを狙って敵を撃つことかと
一応は納得して見せ、まるきり用兵に無知でない事を証明した。
それにメルカッツが『その通りです』と答えたときに
この会議の真の主役が声をあげた!!
「フヒヒヒヒ、さらに有効な策がありましィヒヒヒ・・・」
そう、ヘインに与えられた精神的苦痛を乗り越えた?
理屈倒れのシュターデン大将だ!!!
完全に目が逝ってるが、多分大丈夫だ、性能に問題は無い
メルカッツに促されて理屈家が語った作戦は原作と同じで
ガイエスブルクへ敵をひきつける間に、大規模な別働隊で首都を落とすという物だ
当然これを言えば、あいつは黙ってられない!!
「すばらしい!!!ランズベルク伯アルフレッド感嘆の極み!!!」
そう、片方の玉を失い微妙に斜めに傾いている玉無し詩人である
「で、だれが別働隊を率いて、首都を奪還するのでしょうか?
大変な名誉と責任ではあると思いますが?」
彼が無邪気に体を傾けながら質問をすると、室内が静まり返った
その長い沈黙のなかアルフレッドの傾きは限界点を越え、
顔が地面に付くスレスレまで傾いている。こいつも突き抜けてしまっているようだ
そして、沈黙が終わると多くの者が別働隊の指揮を俺がやると騒ぎ始めた
なぜなら首都を押さえ皇帝を手にすれば、その巨大な武勲を背景にした
勅命出し放題で次期権力者が約束されたような物だからだ
こうなると盟主、副盟主共にメルカッツの作戦を強硬までに支持した
他の奴に権力を掠め取られるわけには行かないからだ。
作戦会議は理屈家のお陰で、内部の不和をまざまざと見せ付ける
政争の舞台に変化させられてしまった。
こうなることが分かっていったから、メルカッツは有効な作戦であっても
提案する事無く黙っていたのだ。まさに台無しである
「フヒヒヒヒ・・・スミマセン・・・・」
■食詰め■
これほど趣味の悪い脚本は見たことが無いぞ
見込み違いで旗頭となる男はいないどころか、敵に回る始末
おまけに平衡感覚を失った哀れな詩人に
どこかに逝ってしまった戦略の専門家と艦首を並べて戦うとはな
さて、演じる側でなければ笑って見ていれば良いのだが、どうしたものか・・・
あいつが横に居ればこの状況も、存外面白いものになったかもしれんが
まぁいい・・・一度あいつとは砲火を交えてみたかったことも事実
武人の本懐たる、大敵との激闘に精々励まさせて貰おう・・・
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ガイエスブルク要塞で総司令官メルカッツ上級大将の苦悩している中、
イゼルローン要塞の司令官も頭を抱えていた。
自由惑星同盟でも銀河帝国と同じように騒乱の時代が訪れていたのだ
首都ハイネセンではクブルスリー大将が逝ってるフォーク准将に撃たれ
ジャガイモ士官が統合作戦本部長代理に就任し、
辺境星域では叛乱が続発し、首都でクーデターが起こる始末
帝国から送り込まれたリンチが原作どおり仕事をやって見せたのだ。
グリーンヒル大将以下、救国軍事会議とヤン艦隊の戦いが始まろうとしていた。
銀河の騒乱はピークを迎えようとしていた・・・
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貴族連合が不毛な議論を行う少し前にラインハルト陣営は臨戦態勢を整え
首都にモルト中将以下少数の防衛部隊を残し、
賊軍討伐のため進軍を始めた・・・・
本隊はラインハルトを総司令官とし、
総参謀長ヘイン元帥と副参謀長オーベルシュタインが参謀チームを運営する
実戦部隊として双璧や黒猪にケンプやミュラー等が付き従う
辺境星域の平定には宇宙艦隊副司令官キルヒアイスがあたり
自艦隊にワーレン、ルッツを傘下に加えて別働隊として
本隊に先駆けて首都オーディンを出発した
ヘインは新妻との短い新婚生活に別れを告げ、
部屋に匿っている野獣が見つからない事を祈りながら
激動の渦に身を任せようとしていた
ヘイン・フォン・ブジン公・・・銀河の小物がまた一粒・・・・・
~END~