フリードリヒ4世崩御…遂に黄金樹の枯木が落ちた
神聖不可侵の新皇帝の座を巡り、策謀の嵐が吹き荒れる中
渦中の最も近くにいる凡人の代表は
「テ○東みたいにムー○ンとかアニメ放映する局は無いのかよ」
と、リモコンと格闘していた。
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ライハンルトの元帥府に属する将官が一同に会していた。
次期皇帝を推す誰につくかを決定するために
会議は当初の予想に反し、すぐ散会することとなる。
ブジン候が開口一番に、推すと予想されていたサビーネではなく、
リヒテンラ-デ候の担ぐヨーゼフ2世を皇帝にと積極的に発言し、
ラインハルト以下の将官がすべて賛同したためである。
このブジン候の姿勢は、本人にもさることながら
ブジン家を確実に取込もうとするリヒテンラーデ候によって大いに喧伝された。
当然それを伝え聞いたリッテンハイム候は、怒りに身を震わせることになる
だが、ヘインが期待した婚儀の約束を反故にする連絡は届かなかった。
しかし、ブジン家とリッテンハイム家の蜜月は終わった事に変わりは無く
ローエングラム伯にブジン侯爵とリヒテンラーデ候の枢軸と
ブランシュバイク公とリッテンハイム候の門閥連合の対決構造が
エルフィン・ヨーゼフ二世の即位によって完成することとなる。
そして、新帝側についたローエングラム元帥府の中には
アムリッツァ会戦の功績以上の恩賞にあずかる者がいた
新たに公爵へ階位を薦めた、帝国宰相リヒテンラーデの引き立によって
ラインハルトは伯から候へ階位を進め、宇宙艦隊司令長官に就任し
キルヒアイスはその副司令長官に就任し、一気に上級大将に昇進する
また、オーベルシュタインも昇進し、元帥府事務総長兼、宇宙艦隊副総参謀長に付く
そして、凡人も公爵へ階位を進め、元帥に昇進するだけに留まらず
宇宙艦隊総参謀長及び幕僚総監に就任した。
赤髪が危惧する金髪と凡人の同格化が、宰相の手によって更に加速する事となった
また、この枢軸の中核をになう者たちの栄達に
憤懣やるかたない門閥貴族達は不穏な動きを加速させることとなる…
■■
いや~、ここまで大盤振る舞いの出世は予想外だったけど
やっぱうれしいね~、何がおいしいかと言ったら
元帥になったお陰で、終身年金がたんまり貰える
さらに、大逆罪以外では刑罰に問われない!!
つまり、電気屋でアイロンとか金払わずに持って帰っても捕まらないって事だ
まぁ、民事の関係で金は後でとられるとは思うが、
まぁ、細かいことはいい。とにかく目出度い!
久しぶりに領地に帰ったら、故郷に錦を飾るって奴だな。
きっと空港とかでも熱烈歓迎で、黄色い声援とかもありそうだ
もう、領地にハーレムでも勢いで作っちゃおうかな、ビバッ!酒池肉林!!
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身に余る地位や権威で舞い上がった小人は、
第二の故郷である領地への思いを馳せていた。
そのため、職務を義眼に全部任せるもとい、丸投げする事にしたが
さすがに、『なんかやらんと怒られるかも』と小心な考えに至り、
義眼に対して指示を残し、休暇願いを書いてから帰郷する事にした
・近い将来ラインハルトが同盟でクーデター起させる際に、
同盟に送り込む謀略の実行者には、リンチ辺りが適任と候補を挙げる
・また、そのために行うであろう捕虜交換式には赤髪を代表にして送る
自分も補佐として一応付いていくかもしれん
以上の2点を金髪に伝えて、準備を整えるようにしろと義眼に伝えた
そして、それ以外は全て任すといって足早に執務室を去っていった。
ヘインの指示を聞いたオーベルシュタインは
『閣下の慧眼には畏れ入りました。仔細の手筈は直ちに整えさせましょう。』
とだけ返答し、全ての下準備を整えさせた。
後日、その顛末を義眼から聞いた金髪は『へインは私の心をよく知っている』
と満足気に頷き、同盟に対する謀議を着々と進めていった。
■宇宙港■
なんとか、何事も無く無事に宇宙港まで着いたな…
門閥貴族と縁切りするため、幼帝擁立を声高に叫びすぎたのが不味かったか?
いまや、貴族連合達の殺したいランキング一位に堂々のランクインだ
特に、リッテンハイム候は冗談抜きで俺を殺そうとしているらしい。
まぁ、それを理由にして野獣のうちにも行ってないし、電話や手紙も無視して
徹底的にフェードアウトできるから結果オーライだ。
あとは、さっさと領地に引きこもったりして、自分の身の安全を図り
内乱が始まるまでやり過ごすだけだ。楽勝楽勝♪
おっと、もうそろそろ搭乗時間、荷物を持っていくかな
しかし、自前の航空会社のVIP席に座れるなんて夢のようだ
それもこれもブラッケやリヒター、シルヴァーベルヒにブルックドルフ
おまけにマインホフやグルックを登用し、領内の発展に努めた結果だな
そうだ!帰ったらリヒター達にお願いして、
お小遣い制から、自由に財産を使える形に変えてもらおう
もう充分に民衆は豊かになっているし、多少の酒池肉林ぐらいは
許してもらえるはずだ。かわいい嫁さん5、6人位は許容範囲だろう
ヘインは間近に迫った危機に露ほども気付かず
ただ、幸せな妄想でニタニタしていた。
■ブジン星系改革記■
ヘインは幼少の金髪にこう語っている
『平民が肥えれば養って貰う王様は贅沢できて、平穏無事に過ごせるんだよ』
彼は12歳で当主にたった後、その言葉通りの領地経営を行ってきた。
正確には、原作でラインハルトに登用された優秀な官僚達を使ってだが
ヘインは先ず、門閥貴族らしい凶悪な税制を、まともな税制に変更し、
上記の優秀な未来の官僚達を、三顧の礼さながらの鄭重さで勧誘する
詳しく言うと、地面に這い蹲っての懇願や泣きの一手、
何でもいうこと聞くから、一生のお願い!等、見苦しい方法であったが
(この時、ヘインはお小遣い制を大人になるまで守ると約束する)
このヘインの低姿勢か税制改革、どちらが評価されたのかは分からないが
勧誘された者はみなブジン領に来ることを(快く?) 了承した
また、ヘインは広大なブジン宮殿を庁舎や議場、図書館・博物館として
最大限に有効活用し、自身は敷地内の守衛用の一戸建てに移り住んだ
この事は、招聘した官僚達には、改革の意思が本物であると確信させ
また、民衆には税制改革と合わさって、
ヘインが庶民の味方という認識を強く植えつけさせる事となる。
実際は、でかすぎる屋敷で一人だと落ち着かないヘインが
己の身の丈にあった新居に移っただけなのだが
こうして、名君ヘインが誕生するわけだが、
領内で時々、街の飲み屋で酔いつぶれたり、
女性に言い寄っては手酷く振られる等の醜態を晒しており
親しみを持たれてはいるが、あまり尊敬はされていなかった。
だが、領民のほぼ全てがヘインに対して、深い感謝の念を持っていた
なぜなら、驕った貴族に比べれば、ヘインは十分マシな統治者であったから
■無賃乗車■
さぁ、搭乗するかと思ってシャトルに乗ったら
何でこいつらが乗ってるんだ!?VIP席は他の客はいないはずだろ?
そこの乗務員!!『悪りぃ』て感じの手サイン出してるんじゃない!
『偶には休暇をとって遠出をするのも悪くないと思ってな。チケットなら持ってるぞ?』
食詰め!!!なに得意げに出してんだ!!それは見送り人用の入場券だボケ!!
『ヘイン様、ご友人と友情を深めるのも大変結構なことですが、
婚約者であるお嬢様との親睦を深める事も、大事ではありませんか?』
いや、カーセさん入場券を握りつぶしながら、笑顔で言われたら怖いです…
『約束の日は守らない、電話には出ないし、手紙の返事は一度も帰ってこない
色々、事情があるのだって分かる。でも事情ぐらい聞かせてよ!婚約者でしょ?』
くそ、野獣の癖に涙目+上目遣い攻撃だと?本性バレバレなんだから無駄だ!!
今日こそ、はっきりいってやるぞ!もともとお前なんかと結婚する気は無ッ
「ヴッゴァォ」『私に嫌われるようなこと、わざと言わないでいいんだよ?』
この女、笑顔で肋折りやがった・・・
いつも通り、都合の悪いことも聞く気がないみたいだ
まずい、非常にまずいぞ!誰でも良いから助けを求めないと
おい、勝手に座ってる食詰めじゃなくて、アーダルベルト様!!お願い助けて!!!
って、新聞で顔隠して見てない振りするな!!薄情者!!
『どうしたのかな?ダーリン♪事情聞かせてくれるよね?』
下手なことを言えば、奴の手で塵屑と化した入場券と同じ運命・・・
やっぱり、完全ブッチしたのが此処に来て裏目に出たか?
マジ切れしてやがる。もう誤魔化しは効きそうにもない
だが、俺も公爵位に帝国元帥の地位は伊達じゃない!
もう一度、はっきり断ってや・
・・れる訳ありませんでした。
俺は、多分死んだような魚の目をして、金髪・宰相の枢軸側なので
貴族連合側のサビーネと立場上付き合う訳には行かないと説明しました。
『うんうん、家同士の争いで、引き裂かれそうになる
愛し合う二人、まるでロビンとフッドの悲恋みたいね!』
ああ、おまえなら悪代官を倒すどころか、リンゴも片手で握りつぶせるさ
アハッハハ・・ハハハ…、ハァ…
■
仲良く旅する、不愉快なヘインと愉快な仲間達
なんだかんだでヘインの隣の席が嬉しく、ご機嫌な家出娘
それを見て満足気に頷く、家出幇助の侍女
さて、どちらについたものか?と思案する食詰め提督
乗客の様々な思いを乗せ、シャトルは静かに星海をゆく・・・
ヘイン・フォン・ブジン候・・・銀河の小物がまた一粒・・・・・
~END~