スラスターが噴かされ一気に加速した超大型ヒートサーベルがガンタンクに振り下ろされた。そしてそれはガンタンクの頭部コックピットを粉砕し、胴体半ばまでめり込んだ。
敵機が胴体半ばまで刺さったヒートサーベルを引き抜こうとしたが引き抜けず、一瞬だけ迷うがそのままヒートサーベルごとガンタンクをホワイトベースから蹴り落とした。直後、ガンタンクはホワイトベース上から落下し、途中で大爆発を起こした。その一連の出来事を、プロトガンダムに搭乗するエドワードは呆然としながら見ていた。
「グリュード・・・お前まで逝っちまったのか」
だが戦場でそんな余所見は命取りだ。迫り来る30cm砲弾に気付き慌てて回避運動を取るが完全には避けきれず、右肩に直撃しビームライフルを持っていた腕ごと吹き飛んだ。
「っつぅ・・・ライフルが吹っ飛んだ上に、傷口が開きやがった。本気でやばいな」
そう、前に低空からの奇襲攻撃を受けた祭に負傷した傷がその衝撃で開き、傷口から血が滲み出していた。それは操縦に支障が出て、動きが鈍くなると言うことに繋がった。
「ふむ、そろそろ黒いのは限界のようだな。だが、追い込んだ敵は慎重に殺せ。それが、戦場での鉄則だ」
「ですがソンネン隊長、可能ならば鹵獲せよとの命令ですが・・・」
「・・・んなことは知っている。俺が言いたいのは油断するなってことだ」
「・・・・・・今の間は」
「変な想像しただけだ、気にするな(・・・・・・なぜだか突進したヒルドルブがぶん回された挙句、吹っ飛ばされる光景が浮かんじまった。疲れているのか?)」
そんな些細なことは置いといて、周囲から放たれた30cm砲の砲撃を受け、プロトガンダムは命中こそしなかったものの、無数の至近弾を浴びた結果、遂に地に倒れ付した。この時、一部を除くケーニッヒス・パンツァーの面々は勝利を確信していた。
「・・・やったか?」
「警戒を怠るな、油断すると死を招くぞ」
だが、前者の発した言葉は死亡フラグ並(場合によっては死亡フラグそのもの)に危険なセリフだ。直後地面に倒れ伏していたプロトガンダムはブースターを噴かし、その強力な推進力で一気に加速。そのまま比較的近くにいた量産型ヒルドルブに体当たりをかまし、頭部バルカンを至近距離から乱射しつつビームサーベルで切りつけた。
「うわ! こちらハンス、機体大破、脱出します!」
泡を食ったのは4号車の搭乗員だ。幸いコックピットと核融合炉には被害が及ばなかったものの、機体のダメージは致命的だった。しかも今砲撃すれば4号車まで巻き込んでしまう為他の機体は攻撃できない。
そしてプロトガンダムはそのまま向きを変え再びスラスターを噴かす。だが、その向かった先はヒルドルブではなかった。
・
「連邦の白い奴、中々やる!」
「くそ、シャアめ・・・」
シャア少佐のドムはガンダムに接近戦を挑んでいた。が、意外なことにシャア少佐が苦戦していた。なぜなら機体の特性がこれまでシャア少佐が搭乗していた機体とは全く異なるからだ。
これまでシャア少佐の乗っていたヅダイェーガーは小回りがよく聞く機体だったが、今現在乗っているドムの場合ホバー推進によって小回りが効きにくいという欠点を持っていた。勿論従来機にできない高速での横滑り等ができるが、機種転換したてのシャア少佐はどうしても従来機の運動をしようとしてしまう。
話を戻すが、ガンダムの武装はルナチタニウムを使用したシェルショットを発射するショットガンによってサーベル以外はほぼ無力化されており、飛び道具は頭部60mmバルカンが少し残っている程度しかなかった。
仮にシャア少佐が後2~3日慣熟運転をしていれば、結果はもっと早くシャア少佐の勝利で終了していただろう。機体の操作はできてもそれに慣れるということは意外と難しいのだ。
だが、赤い彗星の異名はダテではない。スラスターを全快にして空中に飛び上がり、太陽を背にビームライフルをガンダムに向ける。ビームかく乱幕の密度が薄くなった現状では、一撃が致命傷になるのは容易に想像がつく。
当然アムロも黙ってみているわけではない。頭部バルカンで迎撃しつつサーベルでビームライフルを切り落とそうと飛び上がる。
60mmバルカンはドムの重装甲の前に効果はほぼ無かったがビームサーベルを投擲することでビームライフルを撃破できた。
が、ビームライフルを破壊したのは良かったが、それは大きな隙をみせることとなる。シャアは左手のビームライフルを囮にして、本命であるビームサーベルを叩き込む機会を待っていた。ビームサーベルの光は太陽光によって見えにくくなっており、アムロが気がついた時にはシャアのドムはスラスターを一気に噴かし、ビームサーベルが突き出されようとする瞬間だった。
そして突き出されたビームサーベルは、何も無ければアムロのガンダムを貫いていただろう。そう、何も無ければ。その時二人にとって予想外なことが起きたのだ。
「これ以上仲間をやらせるか!」
そう言ってスラスターを全力で噴かしてドムとガンダムの間にエドワードのプロトガンダムが割って入ったのだ。
「何だと!?」
「エドワードさん!?」
突き出されたドムのビームサーベルは、二人の戦闘に割って入ったプロトガンダムの胴体を、コックピットブロックを貫いた。そしてプロトガンダムは直後に大爆発を起こし、両者を吹き飛ばした。エドワードの生存は誰がどう見ても絶望的だった。
「く・・・シャア、よくもエドワードさんを!」
敵討ちといわんばかりにビームサーベルを構えて突貫しようとするアムロだたが、ホワイトベースからの通信にアムロは戦闘をやめざるをえなくなった。
「アムロ、武器を置いて!」
「セイラさん!? でもどうして・・・」
まだガンダムは戦闘可能でありアムロにとっては当然の疑問だったが、次にセイラが発した言葉をアムロが理解するまで、若干のタイムラグが発生した。
「ホワイトベースは・・・私たちは、ジオン軍に降伏したわ」
・
話は少し遡る。プロトガンダムが割ってはいる少し前に、木馬への刺客は訪れた。それは高度1000mを飛行してくる6機の編隊。ただし、その編隊は普通の戦闘機等ではなく、対地爆撃機のドダイの上にモビルスーツが載っていた。
スカイキッド、通称蒼空の狙撃者と呼ばれるVFの誇る対艦部隊だ。モビルスーツを搭載可能な対地攻撃機であるドダイと、それに乗るヅダイェーガーからなる部隊で、特にヅダイェーガーはビーム兵器の運用が可能なMS-04Sj ヅダイェーガー・カスタム、連邦のジムスナイパーⅡに相当する機体に仕上がっていた。色々改修した為に機動性はオリジナルよりも低下したが、ドダイに乗るのならば問題ないと判断された機体で、それが6機。内3機は135mm対艦狙撃ライフルを、残り3機は試作型の狙撃用ビームライフルを装備していた。ちなみにこの狙撃用ビームライフルは初期に開発されたもので、エネルギーCAPを外付けにした野心的なものだった。おかげで威力は戦艦を一撃で破壊できるほどなのだが、エネルギーを馬鹿食いし一撃でエネルギーCAPを空にする上に一度照射すると30秒近くの冷却時間が必要という代物だった。しかも接続部分に問題があり、5発以上はいつ自爆してもおかしくないというものだ。だが逆に言えば4発までは発射可能ということで、このライフルを使用してスカイキッドは、かつて行われたミッドウェー海戦では複数の巡洋艦や駆逐艦、更に空母1隻を撃沈する戦果を上げている。
ぶっちゃけた話、この部隊だけで木馬の撃墜は可能だった。が、乗っているドダイは様々な改修が行われた結果、オリジナルの対地攻撃機仕様のドダイよりも速度や運動性、機動性が低下し、容易に対空火器に捕捉されるという代物となった。つまり、木馬の対空機銃やガンタンク等の砲撃を食らったら一撃で叩き落とされる為に、陸上部隊と一緒に運用しないと危険という代物だったのだ。この問題点を解決する為にドダイを全面的に再設計し、モビルスーツ搭載能力と機動・運動性を向上させたドダイⅡが量産されつつあったが、生産ラインのずれ込みによってスカイキッドにはまだ配備されていなかった。
「スカイキッド1より各機へ、我々が遅れたせいで友軍に被害が出ている。きっちり仕事をするぞ」
「アイ、コマンダー。左舷の防衛が薄いようですが」
「というよりも対空砲火は皆無に近いです」
「いや、予定通り左舷はビームで、右舷は135mmでするぞ。対空砲火は友軍が犠牲になって低下しているんだ、この機を逃すな。各機照準を合わせろ」
「「「「「ラジャ!」」」」」
「レディ~・・・ファイア!!」
その言葉と同時にトリガーを引く。上空から木馬に致命傷を与えるビームと弾丸が降り注いだ。いくら大気圏突入が可能なほど装甲が厚くてもビームには関係ない。一撃で木馬の左舷エンジンは大破し、右舷のエンジンも大爆発した。
・・・・・・まぁこの大爆発はエンジン上部に置かれていたミサイル発射管の誘爆だったのだが、結果的にエンジンが損傷し出力を下げることには成功した。そして推力が低下し飛行が出来なくなった木馬はそのまま地面に墜落した。
・
「うおおおお!」
「きゃああああ!」
ホワイトベースの艦橋にいた者は墜落の衝撃で倒れていた。
「ううう、ブライト、何が起きたんだ!」
「・・・報告します、左舷エンジンが爆発し全損、エンジンルームでの生存者は皆無のようです。右舷エンジン損傷、出力低下。後部ミサイル発射管が誘爆したようです」
「両方のエンジンが損傷した性で浮上できません、航行不能よブライト」
「だそうですリード中尉、本艦は航行不能です」
「なんだと! どう責任を取るんだねブライト! そもそも君が・・・」
「きゃああ!」
不毛な議論に移るかと思いきや、その場はフラウの上げた悲鳴で終わりを告げた。窓の外には両肩のガトリング砲をこちらに向けたドムの姿があった。
『こちらはVF所属ブラックナイト隊長のリカルドだ。木馬へ告げる、直ちに降伏せよ。無駄な殺生は好まん、人道的な扱いをすることは約束しよう』
「・・・ホワイトベース艦長代理のリード中尉だ。降伏するから殺さないでくれ」
「中尉!」
「じゃあこの場を切り抜けるいい方法があるのかブライト! 私は死にたくないんだ!」
「・・・くっ、了解・・・しました・・・」
『・・・貴官の懸命な判断に感謝する。全員に戦闘中止を伝達してもらおう』
こうして、ホワイトベースを巡る戦いは終結した。史実には無い、木馬の鹵獲という形で・・・・・・
・
・
ガウ攻撃空母
ガルマと今後のことについて話していた時、通信が入電した。
「VF部隊から入電、『我が方の被害甚大なれども作戦は成功す。木馬及び搭載されていた3種類のモビルスーツの分析に移る』以上です」
「・・・・・・とりあえず被害が怖いですが、鹵獲できたってことですか。連邦の技術、利用させてもらいますよ」
「嬉しそうだなエルトラン」
「そりゃもう。だってガルマ、木馬は連邦の最新技術の結晶、未知の技術の宝箱だよ。設計思想や運用方法とか、連邦がどんな方法をとるのかもわかる貴重な資料だ」
「それもそうか。連邦のV作戦の詳細なデータが手に入る事を考えれば、君の喜び様も理解できるな」
そこまで言ったところで通信が入った。
「ガルマ、エルトラン、聞こえているか?」
「お、噂をすれば・・・お疲れさん、ドムの調子はどうだった?」
「ビームライフルと高速移動は魅力的だが、スラスターを噴かして滞空することが難しいな。障害物の多い地形では活躍できるか分からんな」
「う、やっぱりそれがネックか」
「うむ、後は反応速度と小回りがどうしても馴染まん」
「まぁホバーだからそこはしょうがないけどね。装甲の厚さと速度が生かせる電撃戦や機動戦以外では、ぶっちゃけドムの価値は半減しちゃうし」
「言うのもなんだが、ヅダイェーガーの方が私には合っている」
「・・・・・・よし、そこまで言うなら装甲は薄いが高機動高運動性を誇るうちの次世代主力機を用意してやる! 11月中にはその機体をまわしてやろうじゃないか。せいぜいその機体に乗ってみて絶賛するがいい」
「ほう、言ってくれるな。楽しみにしておこう」
「ところでキャ・・・シャア、エルトランとドムについて話すだけで通信してきたのではないのだろう? 何かあったのか?」
「ああガルマ、例の木馬なのだがどうもサイド7の避難民を多く乗船させているらしい。しかもその中でも若者は機体パイロット等をしているようでな。軍属として扱うべきか迷っているのだ」
「避難民を兵士として扱っていたのか!? 連邦の新兵器を開発していたサイド7の避難民か・・・よし、軍属として扱おう」
「ああ、ガルマ。それならそのパイロットも含めてサイド7からの避難民として登録して欲しいんだがいいかな?」
「ん? どういうことだエルトラン」
「いやね。避難民扱いならうち(ツィマッド社)で勧誘できるかなと思って」
「・・・・・・お前らしいといえばそれまでだが、理由は?」
「パイロットをしていたほどの人材だよ? 本土と地球で募集してるけど、一人前のパイロットにするにはやたらお金が掛かるんだ。即戦力の人材は喉から手が出るほど欲しいんだ」
「で、他の理由は?」
「連邦に渡したくないって事。避難民ってことにすればこれからどこで生活していくかって問題が出てくるわけだ。そこをうちが勧誘できたらいいなぁと・・・・・・まぁ最終的に実戦を経験した連中を連邦に渡さなければそれでいいんだし」
「その為には避難民として扱ったほうがいいのか・・・よしわかった。シャア、正規の軍人以外は臨時徴用した避難民ということで話を進めてくれ」
「分かった」
「それじゃこれから私は今回の事後処理があるからそろそろ帰らせてもらうよ」
「気をつけて帰りたまえ。後、例の件だが来月中にでも父上に話すつもりだ」
「ああ、よろしく頼むよ。それじゃあまた」
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キャリフォルニアベース
VF司令部の大会議室で、エルトランは報告書を見て顔色を青ざめさせた。
「おっかしいな。仕事をしすぎたせいか幻覚が見える。今度まとまった休暇でも取るか」
「残念ですが社長、それは現実です」
「・・・・・・ああ、そうか。ようやく分かったよ」
「そうです、それが現実です。では会議を始め・・・」
「疲れてるんならあのラストエリクシャーを一気に飲めばいいんじゃないか。こんな幻覚一発で吹き飛ばしてくれるに違いない。 ・・・そぉい!」
「って、何ヤバげな液体ラッパ飲みしてるんですか!?」
「・・・・・・ウボォ!!」
「うわ汚え! って血も混じってる!? メディック、メディ~~ク!!」
・
ただいま場が混乱しております。しばらくそのままでお待ちください。
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「うん、ちょっと河原で石積んでみないかって変なのに誘われたよ」
「それ三途の川では? とりあえず現実に戻られて何よりです。それとこれが終わったら人間ドックに行ってください、予約無理言ってとっておきましたから」
「で、認めたくないがこの報告書は本当なのかい?」
「事実です。廃棄処分扱いも含めて戦闘機6機、戦闘ヘリ27機、モビルスーツ19機・・・」
「新型とはいえたった1隻の新型艦と搭載機で?」
「これに加え量産型ヒルドルブを含む損傷した機体の修理や消費した物資の穴埋め、死者に対する保証金の問題もありますね」
「・・・・・・あれだけの部隊と物資を注ぎ込んだのに結果がこれか!? 最終的に最低限の目標は達したからいいものの・・・」
「まぁ対艦攻撃の要だったスカイキッドがエンジントラブルで出撃が遅れましたからね。それが痛かったですな。おかげで作戦がなし崩し的にずれ込みましたし」
「後、試作された新型ドムが派手に大破したおかげでイメージが少し微妙な事に。降伏勧告をした機体とシャア少佐のドムのおかげで総評は若干プラスになっていますが、当該機には乗りたくないとの声も」
「あははははは・・・・・・整備班長!」
そう言われ立ち上がったのは眼鏡をかけた初老の男性だった。
「整備班長のニトロ博士、事情を説明してもらおうか」
「いま少し時間と予算をいただければ」
「弁解は罪悪だと知りたまえ」
「ですが、実際時間と予算が欲しい状況です。それに今回のトラブルですがその責任は社長にもありますぞ」
「・・・ほう? どういうことだい」
「はい、VFは正規軍よりも比較的後方の人員が充実していますので、予定通りでしたら整備に問題は起きませんでした。ですが当時、試作機及び試作兵器が数種類持ち込まれた性で、整備員はまずその整備マニュアルを理解しなければなりませんでした。当然作業時間は減りますし、完全に覚えれた者以外はマニュアル片手に整備するので整備効率も低下します」
「む・・・確かにそうだな」
「更に、試作機という予定外の機体が加わった為、1機辺り担当する整備員の数が減少。結果整備に手間取ることになりました。この結果整備員がオーバーワークとなり・・・」
「・・・・・・たしかに私のミスだな。すまない」
「まだVFはマシです。酷いところでは後方人員の苦労もしらないで勝手なことを言いますからな」
「それで社長、鹵獲した木馬の乗組員及び確認されたサイド7の難民ですが、予定通りキャリフォルニアベースまで移送します」
「ああ、当然だとは思うが軍事機密は見せないようにね」
「それは大丈夫です。目隠しをしたバスに乗せますので」
「分かった。それでデータの方は?」
「現地に派遣した研究員の話では、木馬の方は応急修理でなんとか浮上させることは可能だそうです。よって、修理完了次第浮上させここまで曳航する予定です。なおモビルスーツの方は既に輸送機に乗せてこちらへ空輸中です。特にモビルスーツの方は研究素材としても素晴らしいとのことです」
「データは吸い出せるだけ吸い出してくれ。機体自体は本国の研究機関に持っていかれちゃうから」
「ええ、研究員達には出かける前に言った為、吸出し作業が凄まじい勢いで進んでいるそうですよ」
「連邦の最新技術の塊ですからね。気合の入れ方が違いますよ」
「分かりました。いい結果を待っていますよ」
「は、ご期待に沿える結果をたたき出して見せます」
「ああ、それとアクシズに通信をお願いします。例のことについて話をしたいと伝えてください」
「了解しました。それでは今回の会議はここまでにします。それでは解散」
全員が退出した後、一人残ったエルトランはボソリと呟き、部屋へと戻った。
「最大の問題は取り払われた。そろそろ動くとするか」
・
部屋に戻ったエルトランは極秘回線を開き、相手と話し始めた
「・・・久しぶりだね常務、頼みたいことができた。彼に会談したいと伝えてくれ。場所は中立地帯が望ましいがそちらにお任せすると伝えてくれ」
「・・・・・・」
「ああ、分かった。対価は大気圏内での連邦製モビルスーツの各種データでいいかい?」
「・・・・・・」
「ああ、ありがとう。それじゃあまた」
そう言って回線を閉じるエルトランの口元は、僅かに歪んでいた。
「さぁ、革命開始の鐘は既に鳴った。オーストラリアに展開したライノサラスと量産型モビルアーマー部隊、あれの活躍次第で彼との交渉の主導権・・・いや、今後の未来が決まる。さぁ、運命の女神は誰に微笑むかな? クックック、フゥハハアハハハハハ!!」
この後、人間ドックの予約時間になっても来ないエルトラン社長に業を煮やした病院関係者が、キャリフォルニアベース内の病院にエルトラン社長を強制移送したのは言うまでも無い。