ツィマッド社特別試験部隊、通称VFは地球上では主に北米、オーストラリア大陸を中心に活動を行っている。
そしてその中の部隊の一つ、ケーニッヒス・パンツァーは北米のとある連邦軍野戦基地を襲撃していた。これはミデア輸送機によって送り込まれた連邦のゲリラ部隊の拠点のひとつだった。
「ソンネンより各車へ、目標を捕らえているか?」
「こちら2号車、射撃準備完了」
「3号車、準備完了」
「4号車いつでもOKです」
「5号車、砲撃体勢を取りました」
「こちら6号車、目標はまだ気がついていません」
「よ~し、戦争を教えてやれ。砲撃開始!」
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数分後、連邦軍の基地は30cm砲を大量に叩き込まれ燃え盛っていた。
「案外あっけなかったですね大尉」
「クルツ、油断はするなよ。気を抜いたときに敵さんはやってくるもんだ・・・こんな風にな!!」
そう言って30cm砲を発砲する量産型ヒルドルブ、その数秒後には茂みの中に隠れていたXT-79駆逐戦車が直撃を受けて茂みごと吹き飛ばされた。
「こちら2号車、潜んでいた駆逐戦車撃破! これよりポイントを移動します。 ・・・マイヤー、作戦エリアγ-17へ移動してくれ」
「こちらマイヤー、了解しました」
「さすがだなシュトライバー、すまんが3、4号車を率いてポイントΣ-97に移動してくれ」
「ソンネン少佐、なぜですか?」
「どうもその地点で連邦の輸送機を見たと言う地元住民からの連絡があった。連邦のコマンド部隊の可能性が高い」
「こりずに来ますね連邦の部隊も・・・」
「俺と5号車は残敵掃討をしてから向かう。お前さんはもし敵を発見したら殲滅しろ」
「了解しました。3号車、4号車聞いていたな? これよりポイントΣ-97に向かう」
「こちら3号車、ポイントは山間部ですね。このデカブツで侵入できますか?」
「4号車です、万一足場が崩壊して転落って事態になったら洒落になりませんよ」
「シュルツ、ハンス、言いたいことはわかる。だがそんなことにはならん。ミデアが着陸できそうなポイントは限られているから、現地に展開している部隊と協力して偵察すればいい。おしゃべりはここまでだ、パンツァー・フォー」
「「ヤボール」」
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現地に着いた量産型ヒルドルブは現地で偵察を行っていた歩兵部隊と合流、現状の把握を行っていた。
「つまりこの山間部の渓谷に着陸したと?」
「ええ、地元の猟師が目撃したそうです。我々が調べたところ、ここの地盤はミデアの簡易滑走路として十分な耐久力を持っています。猟師には報奨金を既に渡しておきました」
「敵戦力は?」
「我々がここに来たときには確認できませんでした。輸送機2機分とのことですが、おそらく既に移動したものと思われます」
「・・・渓谷沿いに移動するとしても、通常車両では難しい。となると輸送機が運んできた物は歩兵、あるいは・・・」
「モビルスーツ、ですか?」
「ああ、モビルスーツならこの渓谷沿いに移動できる。しかも渓谷の上流には我軍の補給基地があるし、下流には水力発電所があるな」
「・・・この基地と発電所の防衛戦力は?」
「たしか・・・発電所にはマゼラアタック1個小隊が、補給基地の方は作業用の旧ザク2機しかいません。旧ザクの方はハンドガンを携帯しているはずですが・・・」
「戦力的に当てにできないか・・・」
「・・・あれ? この補給基地、3日前に新兵器が搬入されたと記述がありますが?」
「ああ、なんでもエルデンファウストという武装だそうです。実戦テストの為運び込まれたとか」
「どんなものなんだそれは?」
「詳しくは・・・ただシュツルムファウストに似ているとしか」
「とりあえず2号車はこの補給基地に向かう。3号車は発電所へ、4号車はこの場で待機し臨機応変に対応しろ」
そして別れる3両の量産型ヒルドルブ、だが分かれて十数分後に補給基地から敵襲との報が入った。
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「補給基地まであとどのくらいだ?」
「およそ10分です。補給基地が呼び出しに答えなくなって既に9分経過しています」
「しかしこの補給基地、渓谷に作られている為北と南が通路、東と西を崖に囲まれています。よって補給基地のある窪地に侵入したら使える武装がマシンガンだけになります」
「マシンガンはともかく、30cm砲が命中したらほぼ確実に崖崩れが起きます。つまりマシンガンくらいしか我々には有効な武器がないということですね」
「まぁこういうケースもあるだろう。マシンガンでも十分通用する相手なのだろう?」
「はい、最後の通信で敵の戦力はおおまかですが判明しています。旧ザク2機とザニー1機です。こちらのマシンガンが旧式の120mmマシンガンといえど、十分通用する敵です」
「まぁ3号車は発電所に待機させているが、4号車はこちらに向かっているらしいからもしマシンガンがやられても十分手はある」
「陽動の可能性もありますからね」
「そうだ、まぁ万が一に備えるというやつだ」
そんなこんなで話をしている間にも補給基地との距離は詰まっていき、基地から黒煙と炎が立ち上るのを視認する距離まで近づいた。
「センサーを赤外線とレーダー重視に変更、ソナーは爆発音でかき消されているから最小限でいい。・・・・・・よし、敵を発見した。前方の崖の影に1機、その奥の崖上に1機だ。まずは突進し一気に距離を詰めろ!」
その命令と共に一気に量産型ヒルドルブは加速し、崖の影に隠れている敵機目掛けて突進する。これに慌てたのか影から旧ザクが飛び出し、この補給基地の備品と思われるMMP-80 90mmマシンガンを連射してきた。
「MMP-80マシンガンは通常のザクマシンガンよりも貫通力を強化されているといえど、こいつの正面装甲を貫通することはまずない。落ち着いて狙って撃破しろ」
「目を瞑っても当てれますよ。落ちろ!」
その言葉と共に両手に装備された120mmザクマシンガンが火を噴き、真っ直ぐ旧ザクの正面装甲に直撃し穴だらけにしていった。流石に量産型ヒルドルブのような化け物を相手にするとは考えていなかったのだろう。動揺したのか崖上に展開していたザニーが手に持っているシュツルムファウストらしきものを発射してきたが、それと同時に120mmマシンガンをザニーに叩き込んだ。飛翔したシュツルムファウストは量産型ヒルドルブの頭上で炸裂、千個近い子弾頭に分裂し量産型ヒルドルブを子弾頭の炸裂が襲った。
「くっ・・・やってくれる。モビルスーツサイズのクラスター爆弾がエルデンファウストの正体というわけか。都市部の制圧に役立ちそうだな」
「シャイセ!! 120mmマシンガン両方破損! 30cm砲も損傷したようです!」
その言葉と同時に燃え盛る補給基地の残骸に偽装していた最後の旧ザクがヒートホークを構えて飛び出してきた。相手と距離はある程度離れてはいるものの、相手はこちらに損傷を負わせることのできるヒートホークを構え、こちらの射撃装備は皆無となっていた。普通の指揮官なら後退し距離をとって、その後に増援と共に攻撃するだろう。だがシュトライバーが下した結論は違った。
「マイヤー、旋回し敵に向かって突撃しろ!」
「はい!? 本気ですか!」
「距離をすぐ詰められるぞ、急げ!」
そして旋回し、急ザクに向かって量産型ヒルドルブは突進した。距離も詰まっていたこともあり、旧ザクは量産型ヒルドルブの車体にぶつかりヒートホークを取り落とし、くの字の姿勢のまま崖に激突し真っ二つになった。
「見ろ、これが敵の死だ!」
「・・・大尉、むちゃくちゃしますね」
「今更すぎるぞクルツ、大尉の無茶は昔からだ」
その後、この地域に展開した連邦軍部隊は全滅したと判断しケーニッヒス・パンツァーのヒルドルブ部隊は撤退した。
このようなジオン占領下での小競り合いは連邦の地上兵力の4割近くが動員されたオデッサ作戦が終了し、結果的に正面戦力が不足しゲリラ戦をする余裕が一時的に無くなった連邦が一時中断するまで続くこととなる。
あとがき(連絡事項含)
12時間くらいで作った作品なんで荒いかと重いますが、今回はホワイトベースが北米に降下するまでに起った戦闘の一つといったシーンです。実際にはモビルスーツ対戦車や歩兵といったこともありますがまた閑話もしくは本編の大規模戦闘の中で書こうと思ってます。で、今回のびっくりどっきりメカ(違)は前に感想で頂いたこいつです!
・エルデンファウスト
対地掃討用のMS用使い捨てロケット弾。発射後、千個近い子弾頭に分裂し数百mの範囲を攻撃する。主に対歩兵、軽装甲車両を攻撃するための装備なので子弾頭1発の威力はそれほどでもない(別バージョンとして対戦車地雷散布タイプなども存在する)。広範囲に散布するためにはある程度の距離が必要なため水平発射するとただのロケット弾と変わらなくなる欠点がある。対MS用ロケット弾であるシュツルムファウストとサイズ的には同じなのでウェポンラッチに共通して装備可能。
上記が頂いたアイデアで、付け加えるならシュツルムファウストより弾頭部が大きく、射程は短いが市街戦での歩兵によるゲリラ攻撃用に開発された広域攻撃兵器といった設定で登場させました。
なお連絡事項ですが、感想は感想掲示板のほうにお願いします。理由ですが荒しが出ても対処できるのではないかと思っているからです。
あと・・・新年明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。
・・・戦車兵の名前ですが、いいキャラ思い浮かばんかったからパンフロからゲスト出演ということで(超新星爆)