アルビオン艦橋
「ふ・・・ふふふふふ・・・ふぅははははははぁ!!」
「社長、落ち着いてください。部下が怯えています(汗)」
「ははははは、これは一種の悪い夢ですか艦長? これが現実とは到底認めたくないのですが」
「・・・社長、自分が言うのもなんですが、現実とは時に酷く過酷なものなんです」
「HAHAHAHAHA! この恨みはらさずにいられるか・・・今ザビ家から嫌がらせされたらマジギレしてズムシティーに核ミサイル撃ち込んでしまいそうなくらい私はストレスが溜まってるんですよ。これは目の前の木馬に、元凶にすべての恨みを当てるべきという神の声ですかそうですか。アルビオンと同じ被害を木馬にも味合わせてやりましょうそうしましょう!!」
「・・・(社長がご乱心だ。この空気をなんとかできる勇者はいないのか?(泣))」
そう思い艦長は辺りを見るが、艦橋に詰めている要員は即座に皆アイコンタクトで返事を返してきた。すなわち・・・
「(無理っす!!)」
・・・ご丁寧にも全員涙目だ。
「(・・・そりゃそうか。艦長の私にできなくて部下にできると考える私のほうがダメか。社長が落ち着くまで待つしかないのか)」
そんなわけでアルビオンの艦橋は凄まじくカオスな空気になっていた。こんなことになった理由、それは数時間前にさかのぼる。
・
・
ルナツー付近
「よくもこんなくたびれた船が現役でいられるものだな」
「そういうなよシャア。パプアは確かに10年以上前に就役した船だが、船と言う物は大事に使えば20年以上使えるものだぞ。それにパプアはコロニーと地球間の物資輸送任務に多くが従事しているから、そこだけみてもパプア級が全て退役したらジオンの戦略は根底から覆え、状況によっては地球の拠点を全て放棄しなければならなくなるかもしれないんだ。それに輸送任務も責任重大な仕事だぞ。前線で戦っていられるのも後方でせっせと物資を運んできてくれている輸送部隊あってだからな」
「ふむ、たしかに失言だったな。だがパゾク級はどうしたんだ?」
「艦隊専属の補給艦として結構な数が取られているからな。それに連邦と張り合う為にパゾク等の補給艦ではなく正面装備のムサイを優先して量産したから絶対数ではパプアのほうがパゾクよりも遥かに多いのが実情だからね」
「なるほど・・・ところでひとつ聞いていいかね?」
「なんだい?」
「・・・エルトラン、君の乗っているその新造艦がやたら私の追っている木馬と似ているのは気のせいか?」
「・・・う~ん、一応このアルビオンは木馬、連邦で言うところのペガサス級だけど、その前身の設計図をベースに大幅に発展改良させた艦だからある意味木馬の親戚ともいえるね。ちなみにどうやって入手したかは裏取引があったとでも思ってくれればいいよ」
「裏取引か・・・何と何を取引したのか気になるが、それよりも木馬の前身とは何だね?」
「こっちが手に入れた資料だとSCV、宇宙空母としてらしいけどたぶん没になった案じゃないかと思ってる。でなきゃ裏取引とはいえ新造艦のデータなんて渡すはずが無いしね。事実木馬の全長は250mを超えているけど、手に入れた資料には200m前後と書かれているし、ここら辺は他の案を採用し建造途中でMS搭載能力を付け加えたんじゃないかと思うよ」
「ふむ・・・つまり木馬はそのアルビオンの性能と同等と考えていいのか?」
「う~ん・・・難しいとこだね。原点は宇宙戦闘機母艦でそれからアルビオンと木馬双方が派生するわけだけど、アルビオンは高速MS母艦、木馬は見た感じだとMS搭載型の強襲揚陸艦かな? もし木馬が強襲揚陸艦だとすると、コンセプトが違うからアルビオンよりも装甲は厚いだろうし近距離用の武装も充実している可能性が高い。もちろんアルビオンも装甲はそれなりに厚いし武装も充実してるけど向こうのほうがこちらよりも上と考えたほうが無難だと思うね」
「そうか・・・そろそろ補給準備にかかるか。ドレン少尉、パプアへ映像通信を開け」
「・・・赤い彗星が補給を欲しがるとはな。ドジをやったのか?」
「ガデム、敵は目の前だ。一刻を争う」
「わかっているよ、わしがそんなにのろまかね?歳の割にはすばやいはずだ」
「ドレン少尉、ハッチ開け。コンベアパイプドッキングを急がせろ」
「シャア、それにガデム大尉。補給中の護衛はアルビオンと護衛に来てくれたムサイ、それに搭載しているモビルスーツ隊がするから安心してくれ」
「おお、それは助かる。モビルスーツに武器弾薬、他にも日常品等の受け渡しがあるから最低でも30分はかかるからな」
「すまんなエルトラン。ドレン少尉、メインエンジンのパワーをあまり落としすぎるなよ」
「了解です。いつでも戦闘できるよう戦闘配置につかせておきます」
・
アルビオン格納庫
「おまえら出撃準備だ! パプアとファルメルが補給を行う。その間2隻は無防備になるのでその護衛に出撃するぞ!」
「隊長、装備は対艦装備ですか?」
「いや、対艦戦闘なら護衛のムサイとこの艦の主砲で迎撃できるからな。我々は対モビルスーツを意識した装備にしろということだ」
「対モビルスーツですか・・・といってもあまりこっちの装備は変わらないですけどね」
「まぁなにはともあれ、いつも通り交戦規定は一つだけでしょ?」
「ああ・・・生き残れ、それだけだ」
「まぁ俺達一人一人は弱いですし、生き残るように努力しないとVFのパイロットがいなくなっちまう」
「準備はいいな? アルフヘイム隊出撃するぞ!」
・
一方その頃、エルトラン社長は一つのモニターに釘付けだった。それはサイド7に潜入したザクが送ってきた映像で、白いモビルスーツ、ガンダムに撃破されるまでの戦闘記録でもあった。だがそこに映し出されている映像、特に前半部にエルトランは冷や汗を出しながら見ていた。そこに映し出されていたのは、エレベーターで港湾部、おそらくホワイトベースが入港しているところへ運ばれていく分解されたモビルスーツ等だ。だが問題はそこではない。映像はガンキャノンとガンタンクの胴体部分が港湾部へと運ばれたシーンから始まっており、映像が始まってから2回目にエレベーターで運ばれたのはその2機の下半身、そして3回目にガンキャノンが運ばれようとしたときにジーンが暴走、分解されたモビルスーツと研究施設、それに小型戦闘機へ攻撃を開始するシーンになっていた。
「(最低でもガンキャノンとガンタンクは運び込まれているってことだが・・・この後何機運び込まれたかが問題だな。後はコアファイターを何機か破壊したみたいだが・・・まるっきり残っている戦力が分からん。最低でも史実編成+プロトガンダムってことになるんだろうけど気をつけないと危険か)」
「社長? エルトラン社長~?」
「あ、なんですか艦長? どうも深いところで考えてたみたいで」
「いえ、アルフヘイム隊出撃完了しました。ムサイのほうもザク3機が出撃しましたがこれは自身の護衛用だそうです」
「まぁ妥当なところですね。太陽のほうを警戒して置いてください。そちらからだと目視しにくいので」
「了解しました、伝えておきます。後本艦も戦闘準備に入りますので指揮系統の確認だけ・・・」
「前にも言いましたが私はお飾りだと思っててください。この艦の最高責任者は艦長、あなたです。お手並み拝見っと・・・」
「・・・了解しました。それでは戦闘配置につかせます。全員ノーマルスーツを着用せよ」
しばらくすると第1戦闘配置の警報が鳴り響き、辺りが忙しくなるのが感じられた。
・
「モビルスーツ隊、全機カタパルトへの接続を確認。連続射出用意よし!」
「護衛対象がすぐそばだからカタパルトを使う必要はないがいい訓練だ。順次射出せよ!」
「了解、モビルスーツ隊、発進!」
そう言って左右に突き出した艦首からモビルスーツが交互に射出されていく。ジオン型のカタパルト(モビルスーツベッドと呼ばれている代物)をアルビオンは採用しており、射出した機体の速度こそ連邦の、例を出せばホワイトベース等よりも劣る物の、連続射出能力では勝っていた。機体を放り出したカタパルトはすぐにカタパルト上のロックをはずされ角度を90度変えて横の壁に立てられ再度自動で固定、後方に移動する。そしてカタパルトがクリアになったらすぐに次の台座ごとモビルスーツが射出、これの繰り返しである。当然ホワイトベースのような現在のカタパルトの延長線上のものよりも工程は複雑になり故障の原因になりやすいが、短時間で多くの機体を緊急発進できるというメリットがありその結果採用された代物だった。
「社長、本艦のモビルスーツ隊は全て発進完了しました」
「ご苦労様です。 ・・・何もなければいいんだが」
「たしかに、補給中何も無ければいいですね。本艦はいまだ慣熟航海中ですから少し不安が残ってますし」
「ん? あ、ああ。そうだな・・・(そっちじゃなくホワイトベースの搭載機が増えていなければいいって意味だったんだがな。まさか歴史が少し早まっているなんて思ってなかったからモビルスーツ用ビームライフルを搭載していないってのが気になるけどまぁいいか)」
だがそのしばらく後にエルトラン社長はバタフライ効果というものを身をもって知ることになった。
・
「・・・ん? 隊長、ミノフスキー粒子の濃度が徐々に上がってきています」
「何? ・・・連邦の新型艦は本艦と同様にミノフスキークラフトを使っている公算大と報告書にはあったな。敵さんのお出ましか?」
「隊長、一応母艦に警戒を知らせておきます」
「頼んだ。アルフヘイム隊各員へ、付近に敵がいる可能性が高い。警戒を怠るなよ」
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「アルフヘイム隊から報告! 付近のミノフスキー粒子濃度が上昇中とのことです。敵の可能性あり、警戒されたし」
「社長、どうやら何も無ければ・・・とはいかないようですね」
「・・・シャア、ガデム大尉に通信をいれてくれ。付近のミノフスキー粒子が上昇中、敵がきている可能性があるので注意されたしと通信してくれ。後護衛のムサイに念の為モビルスーツ隊の援護を頼んでくれ」
「了解、通信します」
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「・・・! こちらアルフヘイム7、敵機発見! 白と黒の機体が2機、急速接近中!」
「こちらアルフヘイム1、偶数番号機はアローフォーメーションで援護、奇数番号機はブイフォーメーションで迎え撃て!」
上空に上がっていた2機のリックドムと、着地していた6機のヅダはその命令を受け一気に2機の連邦モビルスーツの前に立ちふさがった。相手側からは上空にいた2機しか見えていなかったので、6機のヅダがいきなり現れたのに驚いたのか一瞬動きが鈍った。その隙は小さなものだが、アルフヘイム隊が無事合流できるだけの隙であった。
そうして合流した最新型の90mmマシンガンであるMMP-80を装備したリックドムとヅダは2編隊に散開し、2機の連邦モビルスーツに襲い掛かった。アルフヘイム隊の面々は個人ごとに見ると技量はそれほどたいしたことはない。それこそ新兵のジーンやスレンダーと同じ程度だ。だがそれでもそれを補って余りある、ある特徴がこの隊にはあった。
それは集団戦法による連携戦闘だった。数が多いことを最大に活かし複数の機体が相互に連携を取りながら戦い、常に射撃を目標に途絶えることなく浴びせ続けるのがアルフヘイム隊の戦い方だった。その戦い方でシミュレーター上とはいえあのジョニー・ライデンと互角以上に渡り合った実績を持つ。
・・・ただし本当はライデンではなくシャアのデータと戦いたかったらしいが機体カラーの見間違いで選んだらしく、データ上、それに難易度が低く設定されていたとはいえシャア少佐に勝ったと浮かれた隊員に微妙な感傷を抱かせ、更にその場に偶然ライデン本人(補給の為ソロモンに立ち寄っていた)がいて一連の流れを見ていた為リアル模擬戦に発展しかけ、事態を重く見たソロモン司令部が山のような書類を捌ききって仮眠を取っていたエルトランに緊急通信をして叩き起こし、交渉の末新型機が出たらライデンに優先的にまわすと約束することで決着がついたのはどうでもいい話だ。
散開した編隊の内、奇数番号の部隊が最初にガンダム2機と接触した。マシンガンと左腕のシールドの内側に搭載された、本来グフ用に開発された3連装35mmガトリング砲が火を噴いた。4機の機体は2機が相互に支援しつつ集中砲火の目標にした黒い機体、プロトガンダムに銃弾を浴びせかける。プロトガンダムの表面装甲に大量の弾丸が命中し、普通のモビルスーツならこの瞬間に決着がついていたことだろう。
・・・だが流石にルナチタニウムの前には貫通力に優れた最新型マシンガンの集中砲火でもきつかったらしい。
マシンガンの弾幕を抜けたプロトガンダムは頭部バルカンで牽制しつつ、ビームサーベルを抜いて向かっていく。幸いビームライフルをマシンガンの弾幕で破壊できたことがアルフヘイム隊にとって幸運だっただろう。これで警戒すべきはバズーカを持つガンダムのみに絞られたからだ。もちろんプロトガンダムも頭部バルカンでザクやヅダを破壊することが可能なので警戒は必要だが、一定以上の間合いを取れば問題は無かった。そしてバズーカは弾速が比較的遅く、対艦ならともかくモビルスーツを狙うには難しかった。それにアルフヘイム隊は常に弾幕を張っているのも相手にとってたちが悪かっただろう。1機を狙って急接近しようものなら正面以外からの支援射撃によって防御を余儀なくされるからだ。さすがにガンダムといえどマシンガンがスラスター等に命中したら洒落にならない。
「・・・白い機体の方は動きが素人くさいな。どういうことだ?」
「わからん、もしかしたら初心者なのかもな。だが機体は脅威だ」
「映像データを見てはいましたけど、これほどとは・・・」
「だが連携してないのか? 相互支援どころか、完全にバラけてるぞ?」
「・・・こちらアルフヘイム1、六面体へシフトし各機シュツルム・ファウストで黒い機体を攻撃せよ。1機づつ確実に仕留めるぞ」
「六面体了解!」
「了解、ポジションにつきます」
六面体、敵機を中心にサイコロの角の位置に展開する全方位包囲陣形のことで、この隊がエース相手に戦果を上げた戦法でもある。多数対多数では各個撃破されかねない陣形だが、敵機が1機のみだと牢屋として機能する陣形だった。更にその状況での攻撃にはある特殊な狙いになっていた。
「発射! 発射!」
「さぁ避けろ!」
その言葉と同時にシュツルム・ファウストが放たれ、同時に敵機も回避運動を取った。普通に狙っていれば外れていたかもしれない。だが真っ直ぐ進んだシュツルム・ファウストの内1発が回避行動をとっていたプロトガンダムに命中した。
・・・あらかじめ目標となる機体から少し射線をずらして放たれた1発が命中した。
そう、この陣形をとった時の射撃に関しては相手が回避することを前提に、そして友軍同士の誤射を避けるためあらかじめ射線をずらして発射されるのだ。当然回避を行わなかったら命中はしないだろうが、回避行動の為に機体を動かすとどれかに当たるという仕組みだ。たちの悪いことにロックオンをしている為狙われている機体には全方位からのロックオン警報が鳴り響く為、そこで攻撃されたらまず誰もが回避を行うだろう。つまりこれはある種の心理戦でもあった。そして爆発した瞬間に包囲していた8機はマシンガンを叩き込み一気に散開、距離をとった。
「・・・糞! シールドを破壊しただけか!」
「運がいいなあの機体。 っと、4番機支援する!」
「おわ! ・・・わりぃ、助かった」
「油断は禁物だ! 先程通信がきたが護衛のムサイが援護に来てくれるそうだ。後シャア少佐がこちらに向かっている。作戦を変更し足止めに徹するぞ! 各機機動戦闘に移れ」
「こちらアルフヘイム2、了解! じゃあ偶数番号機は対艦攻撃能力を持っている白い奴を狙うぞ」
「バズーカを狙え! 誘爆させれたらなおいい!」
「こちら8、攻撃します」
そういってガンダムに向かって攻撃を開始する4機。その攻撃は巧妙でガンダムが反撃しようとしたらすぐに違う方向から攻撃を加え注意をそらし、狙われた機体はその隙にすぐ離脱する。ビームライフルならともかくバズーカ装備のガンダムでは高速で動き回る機体を捕らえるのは困難、一方マシンガンやガトリング砲は弾幕をはれるので回避運動をとっても数発は当たる。バズーカに当たったら誘爆しかねないからガンダムは避け続けなければならない。プロトガンダムがガンダムを助ける為ビームサーベルを持って白兵戦を挑んでくるが、リックドムとヅダ3機の射撃によって中断させられる。だがその攻防が崩れることが起きた。
「・・・こちら7番機、35mmの残弾がもうありません。マシンガンの残弾も今装填しているので最後になりました、指示を請います」
「こちら5番機、同じく残弾0。マシンガンの方も予備マガジン1つのみです」
「・・・こちらアルフヘイム1、各機残弾知らせ」
そう、弾切れである。マシンガンは速射性能が高いためあっという間に弾を使い果たしてしまう。その為全ての機体がマシンガンの弾がもうほとんどない状態で、35mmガトリング砲に至ってはほとんどの機が弾切れを起こしていた。
「・・・硬すぎだな。並みのモビルスーツ相手なら何回も撃墜できるだけの量を叩き込んでるはずなのに・・・」
「対艦装備もってくりゃよかったな」
「ですがセンサー等は破壊できるはずで・・・きゃああああ!?」
そう言って回避運動を取りつつマシンガンを乱射していた8番機のヅダにガンダムの60mmバルカンが命中した。違う機体を狙った一撃が偶然命中したのだが、胴体下部から脚部に掛けて被弾、損傷してしまった。
「な!? 8番機被害を報告せよ!」
「こちら8番機、右脚部が破損しました。他にも損傷があり、被害は中破と判断します。後退の許可を」
「・・・了解した、護衛に7番機をつける。残りは引き続き足止めをするぞ」
「こちら7番機、了解しました。これより護衛に移ります」
「2番機了解、足止めを継続する。 ・・・糞! 偶数番号と奇数番号の紅一点が双方撤退かよ。残ったのは男ばかり、華がねえ・・・」
「・・・2番機、まじめにしろ」
そう言っても2機抜けた穴は大きかった。最初にも言ったがアルフヘイム隊は個人の技量はそれほど高くない。そしてそれを補っていたのが多数の友軍機との連携攻撃だ。当然友軍機が被弾・撃墜される事態を想定してのフォーメーションもあるが、残弾不足ということもあり徐々に押されていく。救いなのはガンダム2機とも頭部バルカンが弾切れのようだということくらいか。
ここでなぜアルフヘイム隊は白兵戦闘を行わないのかという疑問が出てくる。白兵戦闘なら弾薬は消費しないのだからもっと積極的に使ったらどうかという意見があるだろう。だが使わない理由は簡単だ。
・・・技量が未熟で、腕の差が出やすい白兵戦闘では撃墜される可能性が高くなるからだ。
飛び道具で遠くから撃つのと近くでヒートホーク等で叩き切るのとではわけが違う。エースパイロットや熟練パイロットなら白兵戦闘で勝つ可能性は高いが、新米や素人にやらせてもそれは攻撃が単純になり、動きを読まれ逆にカウンターをもらうことになるからだ。特にアルフヘイム隊では射撃と連携の練習がメインだった為、白兵戦闘は滅法弱い。近づかれる前に牽制し距離をとるというのがメインだからだ。そして更に彼らの連携を崩す出来事が起こった。
「・・・ん? な、なんでムサイがこっちに向かってきてるんだ!?」
「はい!? モビルスーツの援護だけじゃなかったのか! 対艦装備の機体がいるのに、いい的だぞ!」
「いかん、すぐに下がらせろ! 敵モビルスーツは対艦装備、急いで後退されたしと伝え・・・」
「ああ! 白いのに突破されました!」
注意がムサイのほうに向いたからだろう。一瞬の連携の隙をつかれプロトガンダムの援護のもとバズーカを持ったガンダムが包囲を突破、そのまま艦隊のほうへと、もっと言うならアルフヘイム隊の援護に来たムサイ級に向かっていった。これに慌てたのはアルフヘイム隊だった。敵は新型といえど僅か2機、こっちは8機で時間稼ぎをしていたのだ。それが2機後退させられ、更に突破されたとなると洒落にならない。最悪の場合、無能の烙印が押される可能性もある。社長のエルトランはガンダムの馬鹿みたいな戦闘能力を知っているからそんなことはしないだろうが、周囲の目は確実に厳しくなる。たった2機の、それも新型を含む8機で挑んで突破された無能な隊・・・そういう未来が想像できる為、どこか急いでいたところがあったのだろう。
突破しムサイに急接近したガンダムは、護衛のザク3機を無視してバズーカをムサイに向かって連続発射した。計3発放たれたバズーカは2発がムサイの回避行動によって外れたが、1発が右エンジンに直撃、爆発した。幸いエンジンが艦本体と独立したつくりのムサイ級な為、艦本体には目立った損害は無かったがエンジンを片方失った事で一気に機動力が低下した。このままでは狙い撃ちされ撃沈されてしまう。
だが幸い、彼らが稼いだ時間は無駄ではなかった。追撃を仕掛けようとしたガンダムに対し急速に距離を詰める赤い機体があったからだ。 ・・・そう、シャア少佐のヅダであった。
「アルフヘイム隊か・・・個人ごとの技量は未熟だが連携はうまいな。 ・・・私は白いモビルスーツをやる! 不慣れなパイロットめ、行くぞ!」
そう言って一気に距離を詰めるシャア専用ヅダ。それに気がついたガンダムはバズーカを撃ってくるが、そんな弾速が遅い物が当たるわけが無かった。そして弾が切れたのか、いきなりガンダムはバズーカを投げつけてきた。だがシャアの操るヅダは軽々とその攻撃をガードし、右肩につけられたスパイクアーマー(ザクの肩についているスパイク)でショルダータックルをした。そしてそれを見てシールドで防ごうとするガンダムだったが・・・
「フフ、甘いな。モビルスーツの性能の違いが戦力の決定的差ではないということを教えてやる!」
シャアのヅダはそのままシールド越しにショルダータックルをし、ガンダムを弾き飛ばした。体勢を立て直そうとするガンダムにシャアのヅダは更に追撃をかけるべく急接近する。その急接近に慌てたのかガンダムは頭部バルカンを乱射するが、それをかわして胴体にミドルキックを、そしてバクテンの要領で機体を回し、下部からシールドについている白兵戦用ピックを胴体に叩きつけた。並のモビルスーツなら、重装甲のドムシリーズでも破壊を免れないこの一連の攻撃だったが、ガンダムは撃破されていなかった。
「ええい! 連邦のモビルスーツは化け物か!!」
・
一方その頃、艦隊の方では・・・
アルビオンCIC内
「・・・モビルスーツ2機の他に敵影はありますか?」
「いえ、捕捉していません。ただしミノフスキー粒子が濃い為に、地表スレスレを飛行または移動してるのであれば探知は難しいかと・・・」
「社長、迎撃に出た部隊の報告ではシャア少佐のおかげで防衛線を突破した機体はいないそうです。心配することはないかと」
「・・・そうですかね? なんだか嫌な予感がするんですが・・・気のせいであってほしいものですね」
そう言って無理矢理笑顔を作るエルトラン。だが・・・
(・・・たしか原作じゃガンダムとコアファイターの2機で襲撃したんだよな。ってことはプロトガンダムのほうはリュウ・・・だっけ? カーゴ爆弾に特攻した奴。そいつが乗ってるってことと考えれば・・・? なんか見落としている気がする。しかもとんでもないことを・・・)
「・・・・・・!! 緊急、敵艦がこちらに向けて急速接近中です!」
「な・・・偵察はどうしていたんだ!?」
「申し訳ありません、敵モビルスーツ部隊の逆方向から来てたので発見が遅れました!」
「挟撃を狙っていたということか・・・数は?」
「確認できるのは1隻のみ、木馬かと思われます」
「たった1隻でこのアルビオンとファルメルを沈める気か? いや、狙いはパプアか。パプア周囲にビームかく乱幕を発射せよ! メガ粒子砲、レールガン射撃用意急げ! 本艦はこれより敵艦との砲撃戦に入る、気合入れていけ!」
「大丈夫ですか? 慣熟航行中に大損害を受けしばらくドック入りってのは勘弁して欲しいのですが・・・」
「大丈夫でしょう。ファルメルも砲撃準備をしているらしく、1分以内に砲撃を行うそうです」
「そうですか・・・(確か原作だとホワイトベースからの砲撃はなかったんだっけ? たしかパプアを沈めたのはガンタンクの砲撃・・・・・・ん? なんでホワイトベース砲撃しなかったんだっけ? たしかリュウのコアファイターが無線を切っていて・・・あ゛!?)」
そう、見落としていた何かをエルトランはようやく気がついた。原作ではリュウのコアファイターが無線を切っており砲撃の邪魔だったのだが、今回コアファイターは飛んでおらず、ガンダムは違う場所で戦闘中。つまり・・・
「! 敵艦発砲しました、ビーム及びミサイル接近!」
「回避! ミサイルは当たるコースの奴のみ弾幕を張って迎撃しろ!」
そう、バカスカ撃ってくるということだ。幸いパプアを狙ったメガ粒子砲はかく乱幕でノーダメージ、ミサイルもミノフスキー粒子が濃い状態では直進しかできないので回避運動を取ることで大半がはずれ、命中コースにあるものだけをそれこそ『下手な鉄砲数撃ちゃ当たる』の諺通り弾幕を張ることで破壊することに成功する。そして・・・
「は、外れたのか?(良かった~当たらなくって・・・肝を冷やしたよ)」
「そのようですね。よぉし、今度はこちらの番だ! メガ粒子砲発射後にレールガンを試し撃ちだ!」
その命令が各部署に到達し、左右に突き出した連装メガ粒子砲から4本の光が木馬目掛けて放たれる。間をおかずに元は対艦用に開発され防空装備の1つとなった135mmレールガン8基の内射線を向けれる4基が弾丸を発射する。もっと近づけばモビルスーツ用の試作ビームライフルを流用し威力を下げ連射速度を上昇させた巨大な6銃身ガトリングビーム砲も使えるのだが、そこまで敵は近づいてはいなかった。ファルメルも準備が整ったのか、メガ粒子砲の一斉射撃を行っていた。残念ながら2隻からの砲撃は木馬の艦橋を掠める至近弾だったが、驚いたのか木馬は高度を落とし、そのままルナツーの『山』に隠れてしまった。
「高度を落とし隠れたか・・・モビルスーツ隊がいれば低空から侵入させ攻撃させるというのに・・・」
「というよりも艦長? 一応ここってルナツーですよね? ルナツーからの増援、来ると思いますか?」
「・・・・・・長時間ドンパチしてたら来ると考えていいでしょう。つまり短時間に終わらせば来ない内に撤収できます」
「・・・この場にあるモビルスーツといえば、シャアの部下の機体しかないが・・・命令できないからなぁ」
「艦長、アルフヘイム隊より通信です。8番機被弾、護衛に7番機をつけ撤退させるとのことです。また護衛のムサイがエンジンに被弾、大破したとのことです。現在シャア少佐のヅダの援護のおかげで膠着状態に持ち込んでいるそうですが、アルフヘイム隊の残弾が底をついているそうです」
「・・・7番機にマシンガンの予備弾薬を持たせ、自身は対艦装備で行かせるべきですね」
「艦長の判断でいいと思いますよ。こっちは敵艦が顔を覗かせたら砲撃といった感じでいいでしょうし」
「そうですな。 ・・・それにしてもたった2機相手にアルフヘイム隊は足止めが精一杯とは。これがレポートにあったルナチタニウムを使用した連邦モビルスーツの性能という奴ですかな?」
「話じゃ120mmザクマシンガンの弾丸を弾いたと言われていますからね。ですが流石にバズーカ等の対艦装備やヒートホークなら通用するでしょう」
「むしろ通用しなかったら恐怖ですよ。まぁ流石にビーム兵器なら大丈夫でしょうけど、今現在モビルスーツ用のビーム兵器は搭載していませんからね。後4日ほど待てば搭載してたんですが残念です」
「まぁ今は目の前の脅威に集中しましょう。伏兵がいたら洒落になりませんし」
「そうですな・・・対空監視を厳にせよ、ルナツーからの増援にも気をつけろよ」
(・・・確か原作だと砲撃ができないからガンタンク発進って流れだったはずだけど、この場合どうなるんだ? 仮に発進するにしても来るとしたら正面からか? その場合メガ粒子砲をぶっ放せば問題ないし・・・あれ? その場合カイと・・・ハヤトだったか? あいつらどうするんだろう? 他の人がガンタンクに乗るのか? あれ?)
考え事をしていたエルトランだったが、その思考は強制的に中断されることとなった。なぜなら艦にいきなり衝撃が走ったからだ。
「おぅわ!? な、なんなんですか!?」
「敵の攻撃か!? ダメージリポート!」
「報告します! 右前方の小山の影に戦車らしきものを確認、更に反対側の左の谷からも砲撃です。データ照合完了、サイド7で確認されたタンクタイプと両肩にキャノンを積んだ赤い機体です。タンクタイプ2機、キャノンタイプ1機を確認しました」
「な、なんだってぇぇええええ!?(ガンダムが2機いたから覚悟はしてたけど、ガンタンクも2機乗っけてたのかい! ってかパイロットは誰なんだ!?)」
「報告! 右舷メガ粒子砲に被弾し大破、左舷下方レールガン損傷! ただし艦内部への損傷は軽微です」
「砲撃を行う前に発進させ、地表を歩いてきたのか? ・・・レールガンとガトリング砲で迎撃を急がせろ、左舷メガ粒子砲はそのまま正面を向けて敵艦に備えておけ。パプアとファルメルは?」
「パプア、補給用のコンベアーの格納を完了させ退避行動中です。ファルメルは回頭中、まだミサイル等は補給が完了していないようです。おそらく戦闘終了後に改めて補給をするものかと・・・ザクの発進ですが、現在パイロットが乗り込もうとしているところだと返事が来ました」
「格納庫よりアルフヘイム隊7番機の出撃要請が来ています。艦の護衛を任せますか?」
「いや、予定通り予備弾薬を持たせ部隊に行かせろ。もう弾薬が切れている頃だ、急がないと足止めができん可能性が高い! 足止めに失敗したらそれこそ敵のモビルスーツの増援が増えるだけだ」
「了解しました。7番機には当初の予定通り友軍部隊への援護に向かわせます」
そう言った次の瞬間、また艦に大きな衝撃と爆発音が響き渡った。
「報告、左舷ガトリングビーム砲1基大破、右舷上方翼破損!」
「くっ・・・じわじわと損害が増えてますね」
「こういうのを包囲されてフルボッコと言うのですかな。操舵主、高度を上げてCIWSの射線を確保しろ」
「・・・艦長、この状況を打開する案はありますか?」
「この艦の持つ防御火器で一応3機程度なら対応できるはずなのですが、何度も言うとおり本艦は慣熟航行中なので・・・しかも奇襲されたことで新米共がパニックを起こしているのが痛いですな。ですが本艦はガニメデ級高速空母よりも重装甲なので、モビルスーツ搭載型のキャノン砲なら重要区画への直撃さえなければ十分持つかと思われます」
「・・・それはつまり重要区画に直撃したら沈没の可能性があるってことかい? 簡単にまとめると自力でなんとかする、若しくはその間に援軍を待つしかないってことかな? こうなるとアルフヘイム隊が敵2機に拘束されているのが痛いな。 ・・・修理費がどれだけになるのか頭が痛くなるところですが、命には代えられませんからね。死者が余り出ないようにお願いしますよ、できれば艦の損害も最低限で」
「ええ、もっともな話ですね・・・砲撃主、もっと弾幕を張れ! パニックに陥ってるんじゃねえぞ、この艦を沈める気か!? 通信士、後方のファルメルへ連絡。敵モビルスーツのいる辺りをメガ粒子砲で薙ぎ払うよう伝えろ。特に右舷の小山の影からコソコソ撃ってくるタンクタイプの辺りをな」
「了解・・・・・・あ、ファルメルから援護の為受け取ったザク2機がたった今出撃し、これからタンクタイプに向かうとのことです」
アルビオンのCICのモニターの1つに、後方から接近するザク2機の姿を映したのはその報告とほぼ同時だった。
・
一方アルフヘイム隊はというと・・・
「チキショウ! どんだけタフなんだよこいつ」
「シャア少佐じゃないですが連邦のモビルスーツは化け物ですね」
「白い奴はシャア少佐が抑えているから除外するとしても・・・黒いのも大概ですよ。弾もないしどうします?」
「いや、今通信が来た。7番が弾を持ってこちらに向かってるそうだ。だがアルビオンが敵の母艦と別働隊から攻撃を受けていて小破しているらしい」
「それでなんと?」
「・・・アルフヘイム隊はそのまま任務を続行、焦らず敵モビルスーツ2機をその場で足止めされたしとのことだ」
「・・・アルビオンのほうはファルメルと合同で何とかするってことか」
「いっそ射撃援護の後に白兵しかけますか? ヒートホークやヒートソードが命中すればあるいは」
「いや、こちらからの攻撃を仕掛け、それを防がれて逆に撃墜されたらそれこそ破滅へ一直線だ。まだ我々の技量は浅いということを忘れるな、過信すると一気に落とされるぞ」
「了解、まぁ実戦データの収集としてがんばりますかね」
「黒い機体は接近戦を仕掛けるくらいだ。我々は隙を見て牽制すればいい。狙われた機の近くにいる機が白兵戦を仕掛けるというブラフをすれば相手は回避を取るかそのまま突っ込むかに分かれる。 ・・・しかしこれは帰ったら白兵戦の強化練習だな」
だが明るく言う口調とは裏腹に、アルフヘイム隊の表情は浮かなかった。当然だ、弾薬不足で練習を余りしていない白兵戦を仕掛けなければならないのだから。それを証明しているかのように、既にプロトガンダムとの鍔迫り合いに失敗して腕を持っていかれたヅダが2機ほどいる。援護射撃がなければおとされていたのかもしれない。そしてその援護射撃も危険なもので、外れた弾丸が誤射として2番機のリックドムに直撃、正面装甲を大きく凹ましていた。更に言えば、7番機が持ってきた弾薬ももう底を突きかけている。
「・・・これじゃ尻貧ですよ」
「まぁ今現在生きていることを喜ぼう。敵のバケモンみたいな新型機と戦って生きているということを」
「それは敵を撃退してから言いたい台詞ですよ、っとぉおお!? 危ねぇ、ビームサーベルが盾のピックを両断しやがった! ってぇぇぇええ!?」
「な!? ば、ばかもん!!」
「隊長と3番が激突した!?」
「この状況冗談抜きでやばいぞ! 可能なら一目散に逃げ出してぇ!」
そんな言葉を交し合っていたアルフヘイム隊だが、やはり不慣れな白兵戦だったのが原因で一気に窮地に陥ることになる。1機のヅダにプロトガンダムがビームサーベルを振り下ろし、ヅダはそれを防ごうとヒートホークで迎撃するも、タイミングを誤ったのかヒートホークを両断され更に左腕に装着された白兵用ピックを装備した盾をビームサーベルが際どい所でかすっていく。といってもカウンターを行う為に白兵用ピックを伸ばしていたせいで、白兵用ピックは両断されてしまい格闘攻撃ができなくなってしまった。更にビームサーベルを避ける為に行った緊急回避機動が運悪くヒートサーベルを振りかぶって接近中だったリックドムの接近コースと交差、見事に両機は激突しリックドムの手からヒートサーベルは離れあらぬ方向へと吹っ飛んでいく。つまり一気に2機の白兵戦能力が消失したわけだ。そしてもつれあった2機に止めを刺さんばかりに接近するプロトガンダム。流石にやばいと思った他の隊員が援護して難を逃れたが、その代償として残っていた予備弾丸は全て使い果たすこととなる。
「隊長、3番、大丈夫ですか!?」
「こちら3番、生きてるよ~」
「もっと返事はちゃんとしろ! こちら1番機、機体損傷軽微だ。だがヒートソードを失った」
「どうします? 今の援護で残弾無し、白兵戦できる機体は言うまでもなし」
「・・・シャア少佐のほうは?」
「向こうは・・・・・・互角!? あの白い機体やるなぁ」
「シャア少佐のチェーンされたヅダと互角!? ありえねぇ・・・」
「一旦撤退も致し方なしか・・・? 敵機が後退していく?」
「シャア少佐の相手をしていた白い奴も撤退を開始しました」
「・・・とりあえず見逃してもらったということか? ・・・糞!」
「・・・とりあえず隊長、母艦に戻りましょう」
そうしてアルフヘイム隊は撤退を開始する。だが母艦、アルビオンのほうでは洒落にならない事態が発生していた。
・
「敵艦砲撃を開始! ・・・敵メガ粒子砲はビームかく乱幕に命中しました。続いてミサイル接近、このままだと2発直撃します」
「回避運動と同時に弾幕を張って撃ち落せ。こちらもミサイルを相手のいる方向にぶっ放せ!」
「1発間に合いません、命中します!」
その直後に艦が大きく揺れ、警告音がCICに鳴り響く。そう、敵のモビルスーツ隊を対処中に木馬が攻撃を仕掛けてきたのだ。幸いタンクタイプの機体、ガンタンクをマチュウとフィックスが中破させ後退させることに成功していたが、それまでに更にアルビオンの被害は大きくなっており、残っていた左舷メガ粒子砲も損傷し残っている対艦兵装は135mm両用レールガン3基とCIWS(といっても攻撃力はかなりある)、それにミサイルくらいしかなくなっていた。
「艦下部に命中、内部に損害発生! 最寄のダメコンは急げ!」
「敵艦にレールガン命中! 被害程度は不明です!」
「ビームかく乱幕はだし惜しみするな! 後方のファルメルのミサイル支援はどうなった!?」
「とっくに弾切れだそうです! 側面にまわって射撃すると連絡がきています」
「糞、レールガンが弾かれた! 命中角度が浅かったみたいです、ダメージ確認できず!」
そして・・・この戦闘で最悪の一撃がアルビオンに直撃した。ホワイトベースの艦隊正面上部の連装砲塔と右舷側の連装メガ粒子砲からほぼ同時に放たれた攻撃がビームかく乱幕が薄くなったところに命中、威力を低下させつつもそれを突き抜け回避運動を行っていたアルビオンの右舷エンジンに直撃し・・・エンジンが爆発した。その衝撃は凄まじく、更に直撃してほんの一瞬を置いての爆発だった為に史実のホワイトベースのようにエンジンを切り離すことも出来なかった為に被害は拡大した。
「うわぁぁぁああああ!? (ガッ!!!)・・・・・・」
「ほ、報告! 右舷機関ブロックに直撃、大爆発を起こした模様! 左舷機関ブロックにもダメージ発生、各所で損傷増大! 左舷エンジンの出力低下、航行不能!?」
「ダメコン急げ! ・・・ルナツーに不時着する、総員対ショック態勢を取れ! いいですか社長・・・!? しゃ、社長!?」
「メディック、至急艦橋へ来てくれ! 社長が意識不明だ!」
艦橋から運び出されるエルトランだったが、それでも戦いは続いていく。報告される被害に顔を青ざめる艦長だったが、それでも木馬が接近してくるようなら生き残っている火器で反撃するために準備するが、それは杞憂に終わることとなる。アルビオンを撃沈したと判断した木馬は一目散にルナツー基地へと逃げ込む進路を取ったからだ。
おかげで命拾いをした双方(木馬はあと少しでファルメルの集中砲火を受けるとこだった)だったが、特に甚大な被害を受けたのはジオン側、特にVFのアルビオンだろう。幸いアルビオンは片方のエンジンだけで航行可能なように設計されており、損傷した左舷エンジンの修理が比較的順調に進んだこともあって数時間で応急処置は完了、ルナツーから速度は遅いが離れていった。なおパプアと護衛のムサイも沈没は免れてはいたが共に中破ないし大破判定だった。
ちなみにエルトラン社長は強い衝撃によるただの気絶(幸い後遺症とかはなかった)でたいしたことはなかったのだが、気絶した為この時損害を聞いたのは戦闘終了後のことで、損害を聞いた時のリアクションは冒頭に戻るわけだが・・・VF被害総計:アルビオン大破、モビルスーツ隊損傷機過半数・・・この被害に社長がトリップ(暴走)するのは仕方ないだろう。出来立てほやほやのアルビオンが大破したことでかなり精神的にきてるようだ。
そして社長がどこかへトリップしている間にシャア少佐はルナツー襲撃を決行、ノーマルスーツでルナツーへと侵入していく。このことにエルトランが気がつくのは騒ぎが起きてからだったりする。
あとがき
うん、また遅れたんだ、すまない。
今回の社長の冒頭のトリップは、たとえるなら長年憧れていた車を買った次の日に事故をおこされ傷物にされた気分だと思って欲しい。
そんな事態になればまずたいていの人がマジギレしかねないと思ったから今回の話を作ったんだ。
で、後言うべきことは・・・先月更新できなくてごめんなさいorz
やっぱ一気に書き上げたほうがいいな~暇なときにちょくちょくってどうしても途中まで書いた流れをぶったぎるし、自分自身どこまで進めたか思い出すのに苦労するし・・・自分自身の能力のなさに絶望s(ry