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No.2193の一覧
[0] 機動戦士ガンダム ツィマッド社奮闘録(現実→UC)[デルタ・08](2007/12/29 19:02)
[1] 第2話[デルタ・08](2006/08/07 23:26)
[2] 第3話[デルタ・08](2006/08/08 14:00)
[3] 第4話[デルタ・08](2006/09/05 16:19)
[4] 第5話[デルタ・08](2006/08/11 22:36)
[5] 第6話[デルタ・08](2006/08/21 12:27)
[7] 第8話[デルタ・08](2006/09/05 16:16)
[8] 第9話[デルタ・08](2006/10/06 09:53)
[9] 第10話[デルタ・08](2006/10/06 09:54)
[10] 第11話[デルタ・08](2006/11/07 11:50)
[11] 第12話[デルタ・08](2006/12/26 13:42)
[12] 閑話1[デルタ・08](2008/01/01 20:17)
[13] 13話(別名前編)[デルタ・08](2007/07/01 00:29)
[14] 14話(別名中編)[デルタ・08](2007/07/01 00:22)
[15] 15話(別名中編2)[デルタ・08](2007/07/01 00:27)
[16] 16話(別名やっと後編)[デルタ・08](2007/07/01 00:31)
[17] ツィマッド社奮闘録 17話[デルタ・08](2007/07/30 11:55)
[18] ツィマッド社奮闘録18話[デルタ・08](2007/08/16 12:54)
[19] 19話[デルタ・08](2007/08/31 13:26)
[20] 簡単な設定(オリ兵器&人物編) [デルタ・08](2007/08/31 13:47)
[21] 20話[デルタ・08](2007/10/11 19:42)
[22] 21話[デルタ・08](2010/04/01 01:48)
[23] 22話[デルタ・08](2007/12/25 15:59)
[24] 23話[デルタ・08](2007/12/31 18:09)
[25] 閑話2[デルタ・08](2008/01/01 20:15)
[26] 24話[デルタ・08](2008/02/24 17:56)
[27] 閑話3[デルタ・08](2008/05/23 11:31)
[28] 25話[デルタ・08](2008/07/29 14:36)
[29] 26話[デルタ・08](2008/10/18 17:58)
[30] 27話[デルタ・08](2008/10/31 22:50)
[31] 28話[デルタ・08](2009/01/18 12:09)
[32] 29話[デルタ・08](2009/03/18 17:17)
[33] 30話(又は前編)[デルタ・08](2009/04/02 16:07)
[34] 31話(別名後編)[デルタ・08](2009/05/14 22:34)
[35] 閑話4[デルタ・08](2009/06/14 12:33)
[36] 32話[デルタ・08](2009/06/30 23:57)
[37] 33話 オーストラリア戦役1[デルタ・08](2010/04/01 01:48)
[38] 34話前半 オーストラリア戦役2-1[デルタ・08](2010/04/01 01:45)
[39] 34話後半 オーストラリア戦役2-2[デルタ・08](2010/04/01 01:46)
[40] 35話 オーストラリア戦役3[デルタ・08](2010/08/26 00:47)
[41] 36話前半 オーストラリア戦役4-1[デルタ・08](2010/08/26 00:40)
[42] 36話後半 オーストラリア戦役4-2[デルタ・08](2010/08/26 00:40)
[43] 37話[デルタ・08](2010/12/24 23:14)
[44] 38話[デルタ・08](2010/12/26 01:19)
[45] 閑話5[デルタ・08](2011/01/04 12:20)
[47] 39話 前編[デルタ・08](2012/09/30 17:14)
[48] 39話 後編[デルタ・08](2012/09/30 17:23)
[49] お知らせとお詫び[デルタ・08](2015/04/03 01:17)
[50] ツィマッド社奮闘禄 改訂版プロローグ[デルタ・08](2016/03/11 19:09)
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[2193] 14話(別名中編)
Name: デルタ・08◆83ab29b6 ID:d442d9e1 前を表示する / 次を表示する
Date: 2007/07/01 00:22
・ 06:24

「ジオンの奴等、好き勝手しやがって・・・太平洋艦隊残存艦艇は全滅か」

「隊長、どうします?」

「決まっているだろ?」

そう言うと彼は不敵に笑い、背後を見た。そこには数台のミサイル・ランチャー・バギーと30人ほどの連邦兵が集まっており、手には対戦車ロケット砲『スティンガー』や対物狙撃ライフル等を持っていた。

「お前等! 俺達は何だ!?」

「サー!! 連邦軍第7海兵隊の特殊部隊です!!」

「お前等の仕事はなんだ!?」

「殺せ!! 殺せ!! 殺せ!!」

「ジオンの糞共に何をすればいい!?」

「殺せ!! 殺せ!! 殺せ!!」

「お前等は連邦を愛しているか!? 戦友を信じているか!?」

「ガンホー!! ガンホー!! ガンホー!!」

「OK! 俺達は奴等をぶちのめしに行くぞ!! 別働隊に指一本触れさせるな!」



初めに狙われたのはブラックパールリーダーだった。海兵隊員が動かすミサイル・ランチャー・バギーが装備する10連装ミサイルランチャーが火を噴いたのだ。ミサイルの接近に気がついたヒイラギ・タクヤ少尉はミサイルを避けて反撃しようとするが、既にバギーは建物の陰に逃げ込んでいた。そして違う建物の影から新たにバギーが現れ、ミサイルを発射し後退していった。これに追撃を仕掛けたのはヒイラギ少尉と同行していたブラックパール2のチャールズ曹長だった。

「ちょこまかと・・・追撃して叩き潰してやる!」

「待て曹長! うかつに突撃するな!」

そうは言ったがやはり不用意に突撃するような真似はチャールズ曹長はしなかった。一度建物の角で止まり、そこから様子を伺った後に前進したのだ。これは北米で不用意に敵を追ったザクが待ち構えていた連邦の戦車隊に蜂の巣にされたことがあったので、その戦訓であった。そして続いてヒイラギ少尉の乗るハイゴッグも角を曲がった、その時だった。

「撃てぇ!!」

連邦の士官が攻撃命令を発した次の瞬間にはハイゴッグに4発の対戦車ロケット弾が直撃した。そしてそのロケット弾はハイゴッグの左右のビルの1階と4階近くから放たれていた。

単純なことだった。先程からのミサイル・ランチャー・バギーは海兵隊員が布陣している建物付近に誘い込む為の囮に過ぎなかったのだ。普通なら対戦車ロケット弾程度ではモビルスーツは滅多なことではやられはしない。だが今回は当たり所が悪かった。1階から放たれたロケット弾の1発は胴体と腕の間、ショルダーアーマーの中に吸い込まれていき爆発、右腕が吹き飛ばされてしまった。そして更に悪かったのは4階から放たれたロケット弾だ。それはバランスを崩し前方に倒れたハイゴッグの背後のスラスターに直撃したのだ。さすがにスラスターに装甲をすることは不可能、故にそのロケット弾はヒイラギ少尉の乗るハイゴッグに致命傷を与えてしまった。スラスターから飛び込んだロケット弾は炸裂し、内部の機器を破壊した。不幸中の幸いというべきことはハイゴッグはコックピット自身が強固な脱出ポッドを兼ねていたということだろう。このおかげでパイロットのヒイラギ少尉は命を失わずに済んだが機体を破壊した衝撃は大きく、ヒイラギ少尉は重症を負い、機体はスクラップとなってしまった。そして隊長機がやられたことによってブラックパール隊の指揮は一時的に混乱した。
突出したチャールズ曹長のハイゴッグはいきなり隊長機が破壊されたことに驚き、一瞬動作が止まってしまった。そして棒立ち状態のハイゴッグ向かって横にあった小さな路地からミサイル・ランチャー・バギーがミサイルを発射、機体に直撃しチャールズ曹長のハイゴッグは転倒した。そして近くの建物の中に潜んでいた連邦兵が対物狙撃ライフルを発砲、転倒したハイゴッグのモノアイやスラスター、間接部に弾丸を叩き込んでいった。ハイゴッグは他のモビルスーツと比べて装甲が紙のように薄いとはいっても、流石に対物狙撃ライフル程度で撃ちぬけるほど弱くはない。だが相手も対物狙撃ライフルでモビルスーツの装甲を貫通できないのは知っている。そして執拗にモノアイを狙うスナイパーのライフルに装填されている弾丸は普通の弾ではなかった。

「しくじった・・・オートバランサーが逝かれた? スラスターも異常反応、間接部にも若干異常か・・・ん? ・・・なんだよこれ!?」

チャールズ曹長が仰天したのはモニターに映し出される光景だった。あろうことか敵はペイント弾をモノアイ周辺に命中させていたのだ。そのおかげでモノアイの映像を映し出すモニターはそのほとんどが赤く塗りつぶされていた。しかし・・・

「くっ・・・たかがメインカメラが使えないだけだ、水陸両用機をなめるなよ!」

そう言って彼は音響装置と赤外線装置を起動させた。水陸両用モビルスーツであるハイゴッグには音響装置と赤外線装置が搭載されており、この二つの機能はモノアイが使えなくても彼に十分な情報を教えてくれた。敵の大まかな位置を音響センサーで捉え、赤外線装置で場所をある程度特定し腕のメガ粒子砲を放つ。



倒れこんだモビルスーツが反撃したのは3人のコマンドが潜んでいるビルだった。1階に潜んでいたコマンドを狙ったメガ粒子砲はコマンド一人を蒸発させ、そのまま建物の基部を破壊し建物は崩壊。中にいた他の2人は瓦礫の下敷きになり圧死した。

「第7班がやられました!」

「敵機更に2機接近中です!」

「糞、さすがに破壊力があるな・・・全員聞け! 今持っているスティンガーを叩き込んだらここは撤収するぞ!」

「了解! 足の間接部に集中しろ!」

「ファイア!!」

そう言って放たれた3発の対戦車ロケット弾は距離が近かったこともあり3発とも命中し、立ち上がりかけた時に足に損傷を負った敵は再び転倒した。そしてこの隙にハートメン少佐率いる連邦軍海兵隊、後にゲリラ戦のプロフェッショナルと呼ばれジオンから恐れられる連邦軍第7海兵隊はこの場を後にした。そして他の場所でも同様の攻撃をし、2機のハイゴッグに損傷を負わせることに成功していた。



「アリマ少尉、ブラックパール隊がやられました!」

「なんだって!? どういうことだ」

「どうも連邦の反撃でやられたそうです。死者は幸いなことに無いそうですが隊長機が大破しヒイラギ少尉は重症、他にも3機がやられ、そのうち1機は戦闘継続は難しいと・・・」

「・・・わかった、すぐに後退するよう伝えてくれ。ブラックパール隊の残存機はこちらの損傷機と合流しその護衛をするように伝えてくれ」

「了解しました」

「しかしブラックパール隊がやられるとは・・・マーメイド隊、聞こえるか?」

「こちらマーメイドリーダー、何アリマ少尉?」

「そっちの状況は?」

「ドックの中のも含めて全ての敵艦船を破壊したわ。今は残敵掃討にかかっているところよ」

「分かった。ただ気をつけてくれ、ブラックパール隊が連邦の反撃を受け隊長機を含む4機がやられた」

「・・・嘘でしょ? タク・・・ヒイラギ少尉は!?」

「少尉の機体は大破し重症らしいが命には別状は無く、死亡者もいないらしい。今は無事な2機で後退中だ」

「ふぅ、無事でよかった・・・にしても予想外ね。あの人がやられるってこともだけどここまでこっちを苦戦させるなんて。こっちは新型機だってのに」

「友軍も損害が増えてきている。連邦も必死なんだろう」

「そうね、こちらも3機やられたわ。機体の性能に知らず知らずのうちに甘えていたみたいね」

「そうか・・・今データをみてるんだがブラックパール隊はどうも歩兵にやられたらしい。歩兵によるゲリラ戦もあなどれないってことだな」

「市街地や倉庫の多いところでは車両よりも歩兵のほうが脅威ってことね・・・改めて勉強になったわ」

「これからディープブルー隊は残敵掃討に移る。そっちは防衛線の構築を急いでくれ」

「了解、こちらも戦力が少ないから周囲の部隊と連携して早めにしておくわ」





ホイラー航空基地 07:14

「報告します! ホノルル市及び真珠湾に展開していた部隊を含め、ホイラー・ヒッカム両航空基地に部隊の集結を完了しました」

部屋に入ってきた参謀が部屋の中にいた二人にそう報告した。

「ご苦労」

「・・・少し聞きたいのだがホワス陸軍少将、まさかとは思うが文字通り全部隊を撤収させたのですか?」

「その通りだが何か? メルマンド空軍大佐?」

「馬鹿な、何部隊かは後方にまわしてゲリラ戦を仕掛けるべきではないのか!? それにホイラーとヒッカムだけ残っていてもじり貧ではないか!」

「・・・大佐、私は少将だよ? 口の利き方に気をつけたまえ。後ゲリラだが海軍と海兵隊がやっている。奴等は真珠湾とホノルルにまだいるはずだからな」

「な・・・」

メルマンド大佐は絶句した。目の前の男は海軍と海兵隊を捨て駒にしているのだから。確かに兵隊は極端に言えば捨て駒だろう。だが十分な装備がない部隊でゲリラ戦をしても、それはただの犬死だった。だが結果的に時間稼ぎができたのは事実であり、彼は目の前の男がそれほど冷血では無かった事をすぐに知った。

「考えてみたまえ、彼等の指揮系統は壊滅した真珠湾にあった太平洋艦隊司令部にあったがその司令部は壊滅している。もちろん私の名前で自由戦闘、後退も許可したものの、現場がどう判断するかは分からん」

「では少将は海軍司令部が壊滅することを見越して・・・?」

「私がジオンなら真っ先に空軍戦力と海軍戦力を叩くよ、特に真珠湾はジオンの水陸両用モビルスーツなら襲撃しやすい場所だからな。過去に行われた真珠湾拡張工事、水深が15m程度だったのを大型潜水艦が湾内でも潜航できるように水深30mまでしたのはやりすぎだったな。おかげで報告では陸上からでは潜航している敵に攻撃できないというし」

「たしかにあの拡張工事は不必要なものも多くありましたからね」

「その通り。海軍が足止めできなくともファンファン等の攻撃機で敵をかく乱、時間を稼ぐことは可能だ。小出ししたら各個撃破されるのがオチだからな」

「では部隊を後退させたのは・・・」

「部隊を再編成し効果的に部隊を派遣する為に決まっている。ところで大佐、航空隊はどうなっているのかね?」

「数分前の報告ではホイラー航空基地にばら撒かれた時限爆弾の処理は順調で、4つの滑走路の内3つの滑走路に投下されたものは処理が完了しました。またそれと平行し破損した各滑走路の復旧も現在急ピッチで行っており一応ですが2つの滑走路が使用可能で、それを使ってフライマンタとセイバーフィッシュを順次出撃させる予定です」

そう言ったメルマンド大佐にホワス少将はとんでもないことを言った。

「メルマンド大佐、今は非常時であり指揮系統は統一したほうがいいのではないか? 2人も命令を発する者がいては混乱するだろう。よって航空隊の指揮も私がとろう」

「はぁ!?」

まさに絶句、彼は目の前の男のことを見直していたがこれで評価は全くの振り出しに戻った。だが少し考えてみて今の発言の裏には焦りがあるのだと彼は考えた。元々ホワス少将はジャブロー所属のエリートだった。それが少しのミスをしたばっかりにハワイに左遷されたのだ。そして彼がジャブローに返り咲くには手柄を立てることが必要だった。もし彼の指揮下に入った航空隊が陸軍と協力しジオンの水陸両用モビルスーツを殲滅すればその功績の多くはホワス少将の手柄となる。そしたらジャブローへ返り咲くどころか中将へ昇進することも夢ではない、そうメルマンド大佐は考えた。そしてその結論に達した彼は当然ながら反対する。

「それは不可能です。今指揮を譲渡でもしようものならその関係で混乱がおき、結果情報が混乱し部隊は使い物になりません。第一少将には航空隊の詳細な指示はできないでしょう」

「この場で一番上位の者は私だ。君は私の命令に従えばいいのだよ。何、実際の命令を下すのは君だ。一時的に私の部下になるということだよ」

「そんなことをする時間があるなら今はジオンに対する対策を考えるべきです! 航空戦力を無力化し、真珠湾を今なお占拠しているということは今いる部隊以外に上陸部隊がいる可能性が高いということです!」

「ふんっジオンの宇宙人共が部隊を上陸させる艦艇を持っていると仮定しよう。だが奴等に敵前上陸できる技術があるかどうかはまた別問題だ。上陸するときを狙って集中攻撃すればモビルスーツごと海の藻屑にできるのではないか?」

「たしかにそうかもしれません。ですがジオンを甘く見るのは危険すぎます! 奴等を侮っては・・・」

「敵を過大評価するのも危険だと私は思うがね。確かにモビルスーツは脅威だがさっき言ったように海の上で輸送している船を沈めれば簡単に無力化できる。上陸前にMLRSや自走砲、空からフライマンタや攻撃ヘリで上陸艦艇を攻撃すればいい。何か間違ったことを言っているかね?」

「それは・・・たしかに間違ったことは言っておられませんが、現に上陸している敵の水陸両用モビルスーツはどうするのです?」

「それも問題無い。たしかにやつらのゴッグというモビルスーツは装甲が厚く破壊するのも一苦労だがやりようによっては破壊は可能だ。事実うちの戦車隊がゴッグを破壊したという報告を受けている。航空隊がつかえるなら敵モビルスーツのいるところに絨毯爆撃という手もある」

「ちょ、ちょっと待ってください。敵のモビルスーツが展開しているのはホノルル市や海軍港、それに民間空港といったところです。いずれにせよ絨毯爆撃などできない場所ですよ!?」

「戦争に犠牲や被害は付き物だよ。犠牲も被害もなく戦いに勝てるというのは幻想でしかない」

「それはそうですが、市街地に絨毯爆撃などしようものなら・・・」

「もちろんホノルル市に絨毯爆撃はせんよ。あくまで最後の手段だ。だが民間空港ならあまり問題なかろう? 被害は全てジオンのせいにすればいいのだから。もっとも、北部の占拠された空港にジオンがまだいるかどうかはわからんがね」

「しかしそれでも真珠湾に居座る敵には・・・」

「たしかにそうだ、真珠湾へ居座る敵は別の手段で駆逐する」

「その方法があるというのですか?」

「・・・君も知っていると思うが、我々もモビルスーツを1個中隊、計12機保有しているのだよ」

「1個中隊も!? いったいどうやってそれだけの数を・・・」

「なに、奴等が旧ザクと呼んでいるものだがね、宇宙からのプレゼントだよ」

「ここの陸軍がモビルスーツを運用しているとの報告は受けていましたが、せいぜい1~2個小隊程度だと思っていましたが・・・そんなにも」

「試験中隊だからな・・・これ以上説明するつもりはない。ところで、例の輸送部隊は今どのあたりにきているのかな?」

「ああ、今日やってくる航空部隊ですか。オアフ島は危険と判断しハワイ島の民間空港に着陸するよう命令しました。弾薬もミデアで一緒に輸送しているとのことなので1時間以内には再発進が可能になるでしょう」

「なんだと! ここに着陸させなかったのか!?」

いきなり立ち上がりそう叫んだ少将に疑念を感じながらもメルマンド大佐は答えた。

「え、ええ・・・まだ滑走路の時限爆弾は完全に除去されたわけでは無いので大事をとってそう命じましたが何か?」

そう言うとホワス少将は椅子に座りなおしこう答えた。

「・・・あの輸送部隊にはザクを元にした我軍の試作モビルスーツがあるのだ。わざわざハワイ防衛の為に呼び寄せた実験部隊だが・・・他にも私が上層部と取引してまで配備を頼んだRTX-44とその派生型もな。ミデアが運んでいる『弾薬』とは、ジオンに感づかれないように戦力を集結する為に付けられたそれらの部隊のことを指している暗号なのだ」

その言葉に今度はメルマンド大佐が驚いた。目の前の少将は12機の旧ザク以外にも対モビルスーツ用に部隊の増派を手配していたのだ。てっきりメルマンド大佐は彼のことをジャブローのモグラ、威張り散らし手柄を独占することしかしない人間だと思っていたのだがしっかり防衛のための戦力を用意していたのだ。しかし、同時に彼はあることに気がついた。

「ちょっと待ってください。ということはミデアには航空爆弾等は・・・」

「ほとんど搭載していない。おそらく増援部隊の1会戦分も運んでいないだろうな」

「そんな・・・」

そう、秘密裏に部隊を輸送しようとした代償がこれである。メルマンド大佐はハワイ島を臨時の野戦飛行場とし、そこから攻撃隊を反復出撃させようと考えていたのである。それがここにきて当てにしていた弾薬が無いときたのだ。

「・・・ホワス少将、航空戦力の一部を燃料・弾薬ごとハワイ島のヒロ民間空港に移動させることを提案します。増援部隊もそこにいるのでジオンの水陸両用モビルスーツがきても撃退できると思います」

「たしかにそうだが・・・これから輸送するのでは途中迎撃されないか?」

「それも承知の上です。万が一こことヒッカム航空基地がが落とされたら他の島の守備隊は降伏を余儀なくされます。それを避ける為にもあえてヒロ民間空港に部隊を移動させるべきかと・・・それに敵の部隊が展開している地域を迂回させれば攻撃を受ける可能性は少なくなります」

「そしてここが陥落寸前になったら残存部隊はハワイ島に退避するということか・・・たしかに戦闘を経験した兵士は当然ながらここにいる熟練整備兵も今の連邦には貴重な存在だからな」

「ええ、まぁここは滅多なことでは落ちませんが・・・」

「分かった、可及的速やかに移動を開始せよ。輸送隊は輸送が完了したらすぐに戻ってこさせろ」

そこまで言ったとき、室内に一人の兵が入室した。

「報告します。ホイラー・ヒッカム両航空基地の外部防衛ラインが整いました! なおヒッカム航空基地から戦闘ヘリ部隊が出撃、敵部隊に攻撃を開始しております。それと新たに島の東に偵察にでたディッシュが消息を絶ちました。現在消息を断った方向に向けて偵察爆撃任務を帯びたフライ・マンタとセイバーフィッシュ隊が出撃しました!」

「・・・すぐに全部隊に伝達せよ! 敵の上陸部隊が接近している可能性大とな! ぐずぐずするな、走れ!」

「りょ、了解しました!」

そういって伝令は部屋を飛び出していった。

「ホワス少将、まさか・・・」

「そのまさかと考えていいだろう。この状況で偵察機が消息を断つということは敵の本体がいる可能性があるからな。どうやらジオンに兵無しというのは若干誤りのようだな」

「しかし敵が本格的に上陸してきては・・・」

「ジオンが上陸するとしてもまだ先のはずだ。それなら火砲の配置は十分間に合う・・・今のうちに叩けるところは叩くか。メルマンド大佐、ヒッカム航空基地から戦闘ヘリを出撃させてくれ。真珠湾に砲撃を仕掛ける」

「分かりました。ですが狙うならヒッカム航空基地を襲撃中の部隊のほうがよいかと・・・既に戦闘ヘリ部隊が交戦中なので、その部隊に連絡をとります」

「ふむ・・・それではヒッカム航空基地を襲撃中の敵の詳細なデータをうちの砲兵隊に伝えたまえ」



ヒッカム航空基地 08:02

「こちらスチョップ2! 敵の新型モビルスーツは腕からビームをぶっ放してくるぞ! 各機警戒して攻撃せよ!」

「こちらホップ2、ですがこっちの戦闘ヘリは対人用といってもいいような貧弱な機体ですよ! これでどうしろと!?」

「一応対戦車ロケットランチャーをつけてるだろ! そいつで隙を狙ってぶち込め!」

「無茶言わんでください、とってつけたような代物じゃないですか! それにたった4発でどうしろと!? これならファンファンの部隊を待ったほうがましで・・・うわあぁ!!」

「くっ・・・こちらホップ4、ホップ2が撃ち落された! こっちの残りは2機だ! 弾薬も少ないしこれ以上の攻撃は無理だ!」

「くそ、なんで重攻撃ヘリがいないんだ!? いたらこっちの苦労も軽減されるってのに!」

「最前線にまわされてるそうですよ。ハワイのような戦力の整っている場所にはこんな軽戦闘ヘリで十分だとでも思ったんでしょ」

「唯一ここに配備されていた部隊は今はインド洋へむかう空母の上だしな。こんな武装ヘリで何しろってんだか・・・」

「こちらホバー71号車、攻撃中の全部隊に告げる! 敵部隊の位置を知らせよ」

「位置を知らせてどうするんだ!? 糞! また1機落とされた」

「砲兵の射撃が行われる。座標を教えてくれとのことだ」

「こちらファン3了解! 敵新型モビルスーツ1機が作戦エリアのアルファ75にいる。通りをおよそ時速30kmくらいで北進している。こいつに砲弾を叩き込んでくれ!」

「了解、砲兵に伝える。しばし待て!」

「こちらハーテック1、ポイント34でゴッグを確認! ゴッグは胴体のメガ粒子砲以外に対空装備は無い。相手がゴッグなら背後に回りこんで熱いのを叩き込んでやれ!」

「こちらベリュー1、了解した。カマほってやるぜ!」

「馬鹿ベリュー1! 変なこと言ってるんじゃねぇ、思わず吹いちまっただろうが!」

「こちらホバー71、私語は慎め。 砲兵がアルファ75全域へ射撃を開始した。着弾まで後30秒、全部隊アルファ75周囲から離れろ!」

しばらく後、ポイントアルファ75に数多くの砲弾とロケット弾が着弾した。この攻撃を受けたのはズゴックだがさすがの新鋭機もこれにはたまらず、機体に直撃して数瞬後にはズゴックは大爆発を起こし破壊された。

「こちらファン3、敵モビルスーツの破壊を確認! 砲兵に支援感謝と伝えてくれ!」



「糞! 敵の砲撃によってカース3がやられた! 敵の攻撃ヘリが座標を教えていやがるのか!」

「落ち着け! つまりは敵が引いたら全速で回避すればいいだけだ。しかし支援部隊がこっちにいないのはつらいな」

「報告! 中継通信機から通達! 『パレンバン』開始を通達してきました、作戦は次の段階へと移行します!」



ホイラー航空基地 08:18

「報告します! 戦闘ヘリ及び砲兵隊の攻撃により敵モビルスーツ数機を撃破、敵部隊はヒッカム航空基地周囲から後退しつつあります」

「ご苦労。メルマンド大佐、どう思う?」

「順調といってもいいでしょう。ですが最大の懸念は・・・」

「敵の本体がどこにくるか、だな。真珠湾を奴等は制圧しているが真珠湾に上陸とは考えれん。おそらく北部のディリンガム民間飛行場が制圧されたことを考えると敵は北部に上陸すると考えてもいいだろう。そしてその前提で自走砲とMLRSを配置した、だが・・・」

「ええ、北部に上陸するとしても上陸間際を狙い撃ちされればかなりの損害をだすことは奴等も知っているはずです」

「・・・我々は何か重要なことを見逃しているような気がするな。一体なんだ? 何を見逃している?」

そうしてホワス少将が迷っているとき、新たな報告が入ってきた。

「報告します! 偵察爆撃隊がオアフ東部およそ300kmの海域にて多数の艦艇を発見、友軍の戦闘艦が多数確認されました。後その中にはヒマラヤ級空母を1隻確認できたそうです。現在敵の直援機と交戦中とのことです」

「鹵獲された友軍の艦か・・・キャリフォルニアベースで鹵獲されたものだろう。あそこは有数の軍艦建造拠点だったからな」

「ジオンでヒマラヤ級に載せられる航空機といえばドップでしょうね。ジャベリンという戦闘機はどうか知りませんがドップはガウに搭載可能らしいですから・・・それに連邦の戦闘機より小柄だから搭載数も多いでしょうし、敵艦隊の防空能力は侮れないと考えていいでしょう」

「あの・・・後、その中に一際異様な艦影を確認したといってきました」

「異様な艦影? なんだそれは、詳しく報告せよ」

「は、なんでもホバー走行しているようで、戦艦並みの砲台を持っているようだとのことです」

「・・・ホバー走行で戦艦並みの主砲? ビッグ・トレーでも鹵獲・・・違うか、それならビッグ・トレーと報告するだろう。ということは・・・」

「ジオンの新兵器、ですか?」

「そう考えるのが無難だな。しかし300kmとは・・・偵察隊の失態だなこれは」

「申し訳ありません。ミノフスキー粒子が濃く、飛ばしていた哨戒機もレーザー通信の中継として、また砲撃ポイントの指示や対潜攻撃をおこなっていましたから・・・もっとも対潜攻撃を行った機はほぼ全てが撃墜されましたが」

「なんにせよここから300kmということは30ノットもだせば5時間でやってくる。今すぐに攻撃隊を出撃させるべきではないか?」

「そうですな。デプ・ロックとフライマンタ、護衛にTINコッドとセイバーフィッシュをだします」

「トリアーエズはどうするんだ? 現地改造していると聞いたことがあるが」

「セイバーフィッシュと違い、バルカンしか持たない元航宙機なぞあまり役に立ちません。たしかに小型ミサイルを2発搭載できるように改造しましたが、その程度では基地の防空くらいしか使い道がありません。もちろんいつでも出撃できるように準備はしています」

「分かった、それでは・・・」

続きを言おうとしたホワス少将をさえぎったのは、血相を変えて部屋に入ってきた将兵だった。

「何事だいきなり!」

「た、大変です! 偵察爆撃隊のフライマンタから緊急連絡が! て、敵の大規模な航空部隊がオアフに接近! その中には多数のガウ攻撃空母に数多くのオルコス中型輸送機が中心で、護衛と思われる敵戦闘機と現在交戦中だそうです!」

「な!?」

「しまった! 空挺降下か!?」

そう、ジオンの主力はこの航空部隊だった。ガウ攻撃空母だけでも10機、オルコス輸送機が50機の計60機の輸送機部隊に護衛の戦闘爆撃機、空中給油機、早期警戒機など、軽く100を越える機体が一路オアフ目指して進撃していたのだ。それは北米のジオン軍の航空戦力の大半であった。

「メルマンド大佐、今すぐ迎撃機を飛ばすんだ! 空襲警報を知らせろ!」

「りょ、了解しました。直ちに迎撃機を飛ばします!」

「糞、ジオンめ・・・海と空の3次元戦闘か・・・しかしこのオアフで空挺降下とは大胆不敵というかなんというか・・・各隊へ至急対空戦闘準備と伝えろ!」



ホイラー飛行場 08:19

「まわせまわせ~!! 敵は待ってはくれんぞ、トリアーエズ隊はB滑走路から緊急発進! セイバーフィッシュ隊はC滑走路だ! TINコッドはトリアーエズ発進後B滑走路で緊急離陸だ、A滑走路はまだ使えない! D滑走路は大型機用に空けておけ」

「待て、A滑走路からTINコッドを離陸させろ、A滑走路に散布された爆弾の処理はついさっき完了した! 後大型機は後回しだ、どうせ上げてもカモられるだけだぞ」

「馬鹿、D滑走路をよく見てみろ! デプ・ロック等の大型機で埋まってるのが見えないのか!? どっちみちD滑走路は今は使えん!」

そこはまさに戦場だった。ホイラー飛行場の管制室では緊急発進する戦闘機部隊への指示と、飛行場内に配備された対空部隊の配置でてんやわんやだった。

「第936防空部隊、滑走路を横切るな! そこは戦闘機が今離陸寸前なんだ! そこのフライマンタ、敵艦隊を攻撃したい気持ちは分かるが道を空けろ! 今時間は貴重品なんだ!」

「離陸した戦闘機から連絡! 敵航空部隊を目視したそうです、既に一部の部隊は戦闘を開始した模様!」

「こちらホイラー管制室、ヒッカム管制室へ! 敵と戦闘を開始した、戦闘機隊のいくつかをそちらにまわすからできればヘリ部隊をこっちにいくらか遣してくれ!」

「こちらヒッカム、無茶言うな! こっちはいまだ基地周囲で敵と戦っているんだ、戦力を引き抜かれた状態で敵の空挺がきたらヒッカムは落ちるぞ! それに戦闘ヘリ部隊の損害も大きい。今再編成しているがそちらに派遣できる戦力は無いものと考えてくれ!」

「糞、了解したヒッカム管制塔、なるべく善処する! こっちの部隊が戦闘に入ったので指揮管制を開始する、オーヴァー!」

「主任、滑走路までならなんとか無線が使えますかららいいですが離陸させちまったらレーザー通信以外はできません!」

「・・・忌々しいミノフスキー粒子め」



オアフ島東150km上空 08:29

「こちらエア・コマンダー・リーダー。編隊各機へ、敵の迎撃機が多数接近中。事前に決められた通り各早期警戒管制機は指揮を開始、各航空隊はそれに従うように。ガウ攻撃空母各機へ、艦載機の発進を始めてくれ。発進したドップは各自対地攻撃を開始、弾薬を撃ち尽くしたら帰還して対空装備で再出撃するように。ガウ攻撃空母各機はモビルスーツ投下後メガ粒子砲をスタンバイ、ただし敵基地への爆弾投下終了後別名あるまでそのまま高高度で待機せよ」

早期警戒機から命令された各機はそれぞれ命令されたことを実行に移した。3機1小隊編成のジャベリン戦闘爆撃機隊は出撃してきた連邦軍戦闘機に戦闘を挑み、ガウとオルコスは高度10000mをそのまま悠々と飛行していた。



「こちらゲトール1、敵戦闘機を視認した。例のジャベリンとかいう機体だ、セイバーフィッシュを上回る性能を持っているはずだから気を抜くなよ!」

そう上昇中のセイバーフィッシュのパイロットが言うと同時に共に飛んでいる友軍から無線が入り始める。だが上空とは違い低空ではミノフスキー粒子が濃い為か無線は途切れ途切れに聞こえる。

「こちらオグ・・・ガウから多数の戦・・・の発進を確認した・・・らくドップだ、格闘・・・意せよ」

「こち・・・・ク、了解した。まず敵・・・機を片・・・る。奴等が・・・の腕前か、空戦で確か・・・」

「アグレッ・・・連中に負けるなよ。ジオ・・・・・・き落とせ!」

「・・・糞! レーザー通信装置がありゃ友軍とまともな通信ができるってのになんで後回しにされたんだ畜生!!」

そう、ハワイの航空隊でレーザー通信を装備しているのは極少数で、大半の航空機は未だレーザー通信が装備されておらずミノフスキー粒子のせいで満足な通信ができない状態だったのだ。これは中東や南米、アフリカといった最前線や敵の脅威度が高い所に優先して装備を回している為比較的襲撃の危険が少なく防衛戦力が充実していると判断されたハワイの航空隊にはレーザー通信装置は配備が進んでいなかったのだ。地上部隊や艦船には配備がされていたがこれは地上兵力と艦隊が前線への増援として準備されていたからであり、基本的にハワイ防衛を主任務としている空軍よりも配備が優先されたからだ。
そして無線が途切れ途切れ聞こえる中双方の戦闘機部隊は激突し、互いに相手を撃墜しようと乱戦になっていった。例のジャベリンという機体はロケット弾を雨霰と叩き込んできて、編隊が崩れたところをドップが防衛線を突破していった。連邦の航空隊がドップの狙いに気がついたときにはもう手遅れだった。

「あのドップどこへ行く気・・・ってまさか奴ら基地を空襲するつもりか!? こちらシグヴァー3、敵戦闘機が基地へ向かっている! 速やかに迎撃してくれ! 足の速い奴らはあいつらを止めろ!!」

「こ・・・では無理で・・・・・・後方に敵機が、食いつかれ・・・助け・・・」

「こち・・・ガ11、機体に被・・・・・・・イジェークト!」

ドップの狙いに気づき反転、追撃しようとした機体はジャベリンに背を向けることになり、ジャベリンに背後を取られロケット弾やガトリングで叩き落されていく。この場の連邦軍航空隊はジャベリンの群を蹴散らさないと何もできない状態になっていたのだ。結果、連邦軍の戦闘機の多くはジャベリンとの戦闘に忙殺され、ガウとオルコスを食い止める事はできなかった。極少数の戦闘機は攻撃を仕掛けたものの逆に護衛についていたオルコスのガンシップ型の反撃に会い撃退された。そしてガウとオルコスの編隊は悠々と空を飛び、11分後には降下地点へと到達した。

「しかしジェット気流のせいで予定より大幅に遅れましたね」

「仕方あるまい。それに海上のほうも時化とかで予定が大幅に狂っている。予定は未定とはよく言ったものだ。さて、そろそろ降下ポイントだ。ナビゲートしっかりしろよ!」

「こちらエア・コマンダー7、担当機が目標エリアに到達。これより空挺降下を開始します」

「こちらエア・コマンダー4、同じく降下を開始させます」

そういう通信が続々とエア・コマンダー・リーダーの機体に入ってきた。それと同時にガウから3機、オルコスから2機のモビルスーツが射出された。



「なんだありゃ? なんで奴等あんな高高度で投下してるんだ?」

あっけにとられたのは地上の連邦軍防空部隊だった。てっきり高度3000m程度まで降りてきて、そこから降下させるものと彼らは思っていたのだ。高度8000mからの空挺降下等、並みのスラスターでは落下速度を緩和できず、地面に叩きつけられて御終いだと思ったからだ。
しかし彼らは思い違いをしていた。人間が空挺降下する際に必ず必要なあるモノを、モビルスーツが持っていないと断言できないということを・・・



「高度2000切りました!」

「予定通り高度1000でパラシュートを開きな! 後は連邦のボウヤ達に制圧射撃しながら行くよ!」

そう言って空中を落下しているのはこの作戦で唯一空挺降下を選んだキシリア派の部隊、シーマ海兵隊だった。彼女達は今回の作戦に今まで使っていたザクⅡF型から新たな機体を受理していた。そしてシーマ海兵隊はこの作戦に一つの希望を持って戦っていた。

「しかし、まさかシーマ様が本当に艦隊指令になられるとは思ってもおりませんでした。おまけに今作戦では新型機を受理しましたし」

「ふっ、ザビ家の坊ちゃんとツィマッドの連中には感謝すべきかね」

そう、シーマは本当に1つの艦隊を任されていたのだ。ここに至る経緯は簡単なもので、ガルマにエルトラン・ヒューラー社長がシーマ艦隊の境遇を教えたのだ。それを聞いたガルマはエルトランの提案でこのことをキシリアに尋ねたのだ。そしてその結果キシリア配下のシーマの上官であるアサクラ大佐が汚れ仕事を実行させていたこと、更にギレン派に有利な手駒として使っていたことがキシリアに知られたのだ。こうなれば話は早かった。即刻アサクラ大佐は解任され、シーマが艦隊司令に昇進し、初任務として今作戦にシーマの部隊は投入されたのだ。なおこの作戦投入がなぜ決まったかは不明だ。そして作戦の計画段階で敵を迅速に征圧する為空挺降下部隊に選ばれ、その時点でこれまで使用していたMS-06F ザクⅡF型からより性能の高いヅダS型、通称ヅダイェーガーに機種転換されていた。さすがにイェーガーの名を持つだけあって対艦ライフルから転用した狙撃用ライフルでの狙撃は命中率が高い。だが空挺降下中に反動の大きい狙撃ライフルでは精密射撃はできない為、全てバズーカと共にコンテナで投下された。今もっている武装はMMP-78 120mmマシンガンだった。円形のドラムマガジンではなく長方形のマガジンであり予備弾を比較的携帯しやすくなっているタイプだ。そして高度1000mになった時パラシュートが開かれ、速度が一気に減速した。当然ながら連邦軍はチャンスとばかりに対空砲火を放つ。対抗して空挺部隊もマシンガンで迎撃する。圧倒的に撃ち下ろす空挺部隊の射撃の方が命中率は高いが、やはり連邦軍の対空砲火に捉えられパラシュートに穴が開く機体が続出した。

「うわ! こちらデトローフ、パラシュートに被弾しちまいました! 予定より早いですがパラシュートを切り離します」

「減速ブースターを高度300で全力噴射しな! 後は分離後自身のスラスターでなんとかおし!」

「がってんでさ!」

そういったかと思うとそのヅダイェーガーはパラシュートを切り離し、高度300で減速ブースターを作動させた。この空挺降下パックは背中にメインスラスターが装備されているモビルスーツ用に開発されたもので、メインスラスターにかぶせるようにメインパラシュートが設置されていた。簡単に言えばリュックサックを背負ったような状態なのだ。そしてそのリュックサックには4箇所に減速用の小型ブースターと2基の大型減速ブースターを装備していた。これらは実験段階では降下中に使用すれば機体を空中で停止、更には上昇させることが可能なほどの推力を誇り、これで一気に降下速度を落としたヅダイェーガーは高度100でそのリュックサックを分離、自身のスラスターを使用して無事に着地することに成功した。そして着地に成功した機体はそれぞれ敵にマシンガンを浴びせていった。



ホイラー航空基地 08:57

「報告します! 敵モビルスーツ部隊が各地に空挺降下しました。その数およそ100機を越える見込みです。降下した敵はここホイラー飛行場の征圧に取り掛かっており、また滑走路では離陸寸前の機体が敵機の攻撃を受け爆発炎上している為一時的に制空権を失いました! 更にヒッカム航空基地は防衛ラインが突破されて最終防衛ラインで戦闘中、このままではヒッカム航空基地は陥落します!」

「・・・メルマンド大佐、防空ミサイルは何をしていたのだね?」

「無茶言わんでください。配備されている防空ミサイルは全てレーダー誘導式ですから誘導できませんよ。それにドップの攻撃で多数の損害がでております」

「無誘導でも発射すべきではなかったのかね? 敵は編隊を組んでおり旧世紀には高射砲という無誘導の対空兵器もあったはずだが?」

「それは・・・たしかにそうですがもはや敵降下部隊はその多くが降下してしまいましたし・・・」

「それに付け加えて敵の上陸部隊がいるし、進退窮まったということか」

「少将、ヒッカム航空基地はおろか、オアフ島の放棄も考えなくてはなりません、どうしますか?」

「・・・切り札を使う。1個中隊の内2個小隊を機動防御に回せばなんとかなるか。残り2個小隊は拠点の防衛にあてよう。基地の方はそうだな・・・ヒッカム航空基地へ連絡してくれ。車両も時限爆弾を設置し全て破壊して手荷物無しでミデアに乗り込みハワイ島まで撤収せよと伝えろ。殿は戦闘ヘリ等の航空部隊に任せておけ」

「了解しました。こちらに移動可能な部隊は移動させますか?」

「おそらく無理だろうな。敵に分断されているのだ、小柄なドラゴン・フライならともかくミデアではたどり着く前に撃破される可能性が高い」

「了解、ではこの基地も万が一の準備をしておきます」

「頼んだ」



ホイラー航空基地 09:05

「中尉、出撃準備完了です!」

「よ~し、ジオンの奴等にモビルスーツが使えるのは自分達だけではないことを教えてやろうぜ」

「第1、第2小隊でるぞぉ!」

その声と同時にハンガーの一つから白く塗られた旧ザクが姿を現した。それはダミー会社を通じて手に入れた旧ザクで、手には連邦製の120mm低反動砲を持っていた。

「命令では基地の守備を任された。第1小隊はこのまま基地に一番近い敵目指して進撃、第2小隊は少し後方からサポートを頼む」

「了解」

その様子を見ていた第3小隊の隊長、メソン・ゲール少尉は冷ややかな目で出撃する2個小隊を見送っていた。

「隊長、俺達はどうするんですか?」

「どうもこうもあるか、俺達は120mm砲持って待ち伏せだ」

「地味ですね・・・だがそれがいい!」

「マーク、そのネタなんだよ・・・まぁ今の自分達の技量だとそれがいいですよね」

「その通りだハス、ここは第1、第2の連中も含めて待ち伏せに回すべきなんだ。今の俺達の技量はジオンの奴等の新兵なら勝てるが熟練兵相手だとかなりの確立で負けるってレヴェルだからな。それに武装も広範囲に弾をばら撒けるマシンガンは無く変わりに長距離砲撃用といっても差し支えない120mm砲だ、これで奴等と戦えばすぐに接近されてジ・エンドになるのがオチだ」

「そうだな、まぁ我々2個小隊が残ったのは私の監視ということもあるだろうね」

「ビル・・・まぁ第1の奴等はお前をあからさまに敵視しているが俺達はお前を信用しているから、それだけは覚えといてくれよ」

会話に割り込んできたのは第4小隊隊長のビル・クロートだった。彼が敵視される理由、それは彼が元ジオン兵だからだ。ブリティッシュ作戦で隕石落とし、小惑星テンペストを地球に落下させる際に旧ザクで警備についていた彼は自らの所属する陣営の行為に恐怖し、軍を脱走したのだ。普通なら追っ手がくるところだったが丁度カタリナ戦役が始まろうとしていたために追っ手を出したくても出せない状況となり、彼が脱走したという報告は上に伝わらずにいつしか戦死判定を受けていたのだ。そして彼はカタリナ戦役で敗走中の連邦艦隊と遭遇し投降し、連邦軍に志願した。当然連邦は彼を工作員と疑い彼が志願した後は常に見張りをつけ監視しているが、彼のようにサイド3出身の連邦兵は多数いる為それ以上の事はできなかった。また台所事情がきつい連邦にとって彼のモビルスーツ操縦技能は他の鹵獲したザクの操作や解析に必要なものだったのだ。そして彼は紆余曲折の末ハワイで旧ザクの部隊の小隊長を勤めていた。
だがやはり隕石を落とした同類と見られている為彼を見る目は厳しく、時には暴行されたことも何度かあった。だが彼はジオンの行った隕石落としを許すことはできなかったし、今更軍を抜けられるはずもなかった。

「まぁあいつらはお前さんのアドバイスを聞こうともしていなかったからやられても文句はいえんだろうが・・・お前さんはこの状況をどう見る?」

「そうだな・・・正直情報が不足しているが敵が空挺降下を行ったことは確かだ。それはここを占領する目的以外考えられんから俺達は拠点に篭って防衛戦をするのがいいだろう。正直旧ザクではそれくらいが限界だ」

「やっぱジオンの新型の前にはコイツじゃきついか?」

「当たり前だ、俺がジオンを脱走する前のザクはC型、F型というものだったがそれらは旧ザクを全てのスペックで上回っているんだ。ましてやエース用といわれるヅダでは性能に差がありすぎる。それが数ヶ月前なんだから改修された機体、もしくは新型機がでてきてもおかしくない」

「じゃあ遮蔽物に隠れてコソコソ射撃するのが一番か・・・結局歩兵同士の戦いみたいなもんだな」

「歩兵同士の戦いっていうんならこの120mmは強力な火器だな。実験ではザクの正面装甲を破れる性能を持っているから当たれば確実に損害を与えられる」

「なるほどね、つまり巨大な歩兵同士の戦いって考えりゃいいってことっすね。 ところで隊長、その4つのコンテナなんですか? なんか衝撃厳禁って書いてあるんですが」

「ああ、それはこれから配布する。試作品だがこういう市街戦では役に立つはずだ。クラッカー、つまり手榴弾だ。連邦製の試作品でここにあるので全てだ、各小隊ににコンテナ1つ分だ」

「・・・あれ? コンテナ未開封ですよね? じゃあ第1と第2の奴らは」

「持っていっていない。というより持って行けと言ったが無視された」



そして出撃していった第1、第2小隊は隊列を組んで基地の外縁部に到着し、そこから更に郊外に出て行った。だがその数分後には彼らは恐慌状態に陥っていた。なぜなら先頭を歩いていた隊長機がいきなり狙撃され、破壊されたのだ。そして間髪いれずもう1機も・・・

「こちら第2小隊2号機! 敵はどこだ!? どこから撃ってきているんだ!」

「落ち着け! 伏せて状況を確認するんだ! 120mmで怪しげなブッシュ(茂み)を吹き飛ばしちまえ!」

「うわあぁぁぁ!!! メインカメラをやられた! 前が見えない!」

「落ち着け! サブに切り替えろ! 9時の方向に発砲炎を確認しました!」

「敵はなんだってんだ!? 糞、ぶっ飛べ!!」

そう言って9時の方向に手持ちの120mm低反動砲を乱射するが敵に当たった手ごたえは無く、逆にこの方は敵の正確な狙撃の前に徐々に無力化されていった。そしてそれから数分後、残っている旧ザクは建物の陰に隠れることができた2機になっていた。

「糞、支援はどうしたってんだ!?」

「無理だろう、さっきから要請してたが本部は自力で切り抜けろとしか言ってこない。しかし流石ジオンだな、モビルスーツの使い方がうまい」

「感心してる場合か! このままだと俺達死んじまうんだぞ!」

「だが打つ手が無いのも事実だ。おそらく敵は複数いる。最初の攻撃の時に間髪入れずに敵弾がきただろう? ということは今この瞬間も敵に狙われているということがありえるわけだ」

「じゃあどうするんだよ! 一旦後退するか?」

「・・・それこそいい的だ。匍匐前進で少しずつ進むか?」

「モビルスーツで? 無茶だろそれは」

「だよな・・・いっそ機体を放棄して逃げるか?」

「・・・魅力的な案だな。それでいくか?」

「じゃあそうす・・・! 敵だ!」

逃げようとした彼らだったがその案を実行することはできなかった。突如茂みからモビルスーツが跳躍し、空中から近距離で狙撃銃を発砲したのだ。放たれた弾丸は1機の旧ザクの右腕、120mm低反動砲を持つ腕を吹き飛ばした。そして腕を吹き飛ばされ、残されたほうの手でヒートホークをつかもうとしたその旧ザクは横から飛んできた弾丸で吹き飛ばされた。



「なんだい、もう終わりかい? よくそんな腕前で生き残っていられたねぇ・・・」

そう呟いたのはカーキとパープルのカラーリングのヅダイェーガーに乗っているシーマ中佐だった。彼女は135mm狙撃銃を使ってこの近くに展開している部下と共に敵の旧ザクを叩いていた。

「ったく、でしゃばらなければ死ななかったものを・・・」

そう言いながら120mm低反動砲をこちらに向けようとする旧ザクに彼女は135mm弾を叩き込んだ。それは旧ザクのコックピットに直撃し、あっけなく旧ザクは破壊された。

「すまなかったねぇ。あっさり勝たせてもらってさ」

「シーマ様、エア・コマンダーからここいら一帯に展開している部隊に対して指令がきました。このまま基地外周部を攻撃せよ、本格的な侵攻は上陸が成功してから行う予定だったが進攻が可能なようであれば順次進撃せよ、だそうです」

「あいよ、それじゃ連邦の坊や達をたっぷりかわいがってあげようか」

「了解しやした。それじゃあっしはバズーカで支援をしますシーマ様」



ホイラー航空基地 09:14

「出撃した試作小隊2つが全滅だと!?」

「はい、どうも敵の指揮官と思わしきカラーをしているヅダを確認したので、おそらく敵エースによって・・・」

「むぅ・・・・・・航空隊はどうなっているメルマンド大佐?」

「は、破壊された機体の除去作業を行いつつ並行して戦闘機の発進を行っております。ただ敵のガウ攻撃空母が高高度爆撃をしてくる為、基地の施設に少なからざる損害が発生しております。敵の戦闘機もなかなか手ごわく、支援している戦闘機が少ないヒッカム航空基地の損害はかなりのものになっております」

「・・・ヒッカムはもうだめか?」

「客観的にみればもう陥落寸前といったところでしょう。最新の報告では脱出用のミデアと輸送ヘリにも損害がでており、戦闘ヘリ部隊の損害は戦闘前の67%を越えております。ヒッカム航空基地の総合戦力は30%以下で、このままでは確実に・・・」

「分かった、ヒッカム航空基地に人員の脱出を命じてくれ。行き先はハワイ島だ。戦闘が始まる前に念の為にクリスマス島に駐留する輸送隊に支援を命じたから、もうすぐハワイ島に到着するだろう。それで順次クリスマス島に後退させればいい」

「・・・いつの間にそんな手配を」

「何、私はジャブローのモグラだよ。真珠湾が襲撃された時嫌な予感を感じたから念の為脱出手段を用意したまでだ。今回はそれをヒッカム飛行基地から脱出する将兵に割り当てるだけのことだ」

「・・・さすがジャブロー組、抜かりが無いというかなんというか」

「これくらいできなければジャブローにいる少将としてやっていけんぞ。常に最悪の事態を考えて手を回しておくのはあそこでは必須だからな」

「・・・と、ところで敵の上陸部隊はどうしますか? 報告によれば弾薬を使い果たした敵機は撤退したようですが、ガウに着艦可能なドップは弾薬を補給して再出撃しており、以前制空権は取り返せておりません」

「こちらが沿岸部に展開させつつあった自走砲とMLRSの半数近くが降下したモビルスーツによって破壊された。それどころか我々は周囲を包囲されつつある・・・デプ・ロックとミデア輸送機、それにドン・エスカルゴを除く航空戦闘可能な航空隊は制空権奪取の為に行動させろ。敵の上陸はやむをえんが、脱出路だけは確保しなければならん。すし詰めでかまわんからデプ・ロックとドン・エスカルゴにも人員を乗せてハワイ島に後退させろ! ミデアの発進準備もしておくんだ!」

「オアフを放棄、ですかな?」

「仕方あるまい、モビルスーツが100機もいるのでは陥落は時間の問題だ。それならハワイ島に後退しそこに最終防衛拠点を作ったほうがいい。奴らは空挺降下を再度するには時間が足りんからハワイ島に上陸するとしても水陸両用モビルスーツか揚陸艦艇くらいだろう。制空権を互角に持ち込めればミデアの生存率も高くなる。自走対モビルガン隊に大口径バルカン重装甲車隊には既に対モビルスーツ戦闘ではなく対空戦闘をするように指示をだしておいた」

「なるほど、懸命な判断でしょう。あれらは当たり所がよければモビルスーツを破壊することができますが、気休め程度ですからな」

「まぁ射角をとるのが問題だがな、ところで航空隊の残存機はいくらいる?」

「・・・ここホイラー航空基地にいる機体であれば最新の報告ではセイバーフィッシュが38機、TINコッドが11機、トリアーエズが72機です。他に戦闘爆撃機のフライマンタが56機、デプ・ロック爆撃機が42機、ドン・エスカルゴ対潜哨戒機が23機、デッシュ偵察機が17機、ドラゴン・フライ連絡機が42機です。ミデアは100機くらいかと・・・」

「随分と残っているな。たしかガウ攻撃空母に搭載できるドップは最大8機、ガウは確認できただけで10機だから合計で80機程・・・数で押し切れるのではないかね?」

「確かに一見すると多いように見えますが、本来ここに所属していた戦闘機の総数は軽く500機を越えます。固定翼機全てだと1000機近くもあったんです。それが敵の攻撃のせいで600機近くが破壊された計算になっているんですよ。それに数で押し切ろうとしても、敵のモビルスーツによる対空砲火で叩き落される始末で・・・不幸中の幸いは撃墜され脱出に成功したパイロットの多くが友軍に回収されたことくらいです」

「ふむ、そのパイロット達はミデアで後退させたほうがいいな。後は・・・殿の為にドラゴン・フライ連絡機を置いておくべきか。 ・・・MLRS、自走砲は弾を全部撃ちつくしてかまわん。友軍が撤退する時間を稼ぐんだ! ハワイ島を最終防御拠点にする。歩兵は輸送機、爆撃機等に乗って後退、整備要員を含む後方支援要員の脱出を優先させろ!」



ヒッカム航空基地 09:23

「報告! ヒッカム航空基地の放棄が決定しました! ヒッカム航空基地の部隊は順次ハワイ島へ後退せよとのことです!」

「・・・負けか。まぁ仕方あるまい。我々海兵隊は殿をし、その後ドラゴン・フライでホイラー航空基地へ移動、そこでまたゲリラ戦を仕掛けるぞ!」

「ハワイ島ではなくホイラーへですか?」

「あちらも戦力は少ないだろう。なら俺達第7海兵隊が時間稼ぎすれば友軍の支援になる」

「了解しました! 直ちに準備にかかります!」

「ああ、それとブービートラップはちゃんと仕掛けたか?」

「もちろんであります! 工兵隊や手持ち無沙汰になった連中と協力して用意しました。ひっかかれば盛大な歓迎が・・・」

そこまで言った時、遠くでいきなり爆発音が響き渡った。そして二人は顔を見合わせニヤリとした。

「マヌケがひっかかったな。まぁこの場合マヌケといって言いかわからんが・・・まぁいい、撤収するぞ!」

「サー、イエッサー!」



「パンター3、大丈夫か!?」

「こちらパンター3、ダメだ。脚部の損傷が大きい。一体何が起こったんだ?」

「敵のトラップではないか? もしくは自爆か・・・」

そう言って周囲を警戒する2機のグフ。ここにいる3機はガウから空挺降下した1小隊で、ヒッカム航空基地の制圧をするために前進していたのだ。そしてその内の1機が損傷したのだ。その機体は右足の装甲が吹き飛ばされ、歩行に障害が生じているようだった。

「一体何をしたんだ? 横の建物が吹き飛んでいるようだが・・・」

「わかりません。普通に建物の影に隠れながら前進していたのですが・・・」

「・・・それか。おそらく建物の窓際に爆薬を設置されていたんだろうな。センサーで感知して爆発したのか、それとも遠隔操作で爆破したのか・・・」

「やられたな。これからはうかつに建物の影に隠れることができないぞ」

「・・・こちらパンター、エア・コマンダー応答してくれ」

「・・・こちらエア・コマンダー7、パンターどうした?」

「敵のトラップにひっかかった。パンター3が脚部を損傷し歩行が困難だ。敵は建物の窓際に爆薬を設置していたようだ」

「了解した。貴隊の現在地から13kmほど後方に友軍の補給ポイントがある。そこまで行けるか?」

「少しきついかもしれませんが何とか自力でいけるかと思います」

「・・・だ、そうです」

「了解した。パンター1、2はそのまま前進してくれ。今連絡をしたがウルフが近くにいる。3kmほど前進してウルフと合流してくれ」

「了解。ウルフっていうと・・・」

「第573モビルスーツ小隊、通称キャットチームだ」

「ウルフなのにキャットねぇ・・・」

「今の発言はパンター2か、彼らを侮らないほうがいいぞ。彼らはスラスターを改造したデザートザク3機を運用しており、機動戦ではグフを装備する部隊と互角に戦える」

「・・・マジっすか」

「ってかこの作戦の期間中だけコードが変わるってのはどうも馴染めんな」

「本当と書いてマジと読む! それにブリーフィングを聞いていたのか? 防諜上での対策だ! つまらんこと言ってないで行動してくれパンター」

「こちらパンター、了解した。 ・・・さて、3は周囲を警戒しつつ後退、我々はトラップに気をつけて進むぞ」

「了解しました」

「了解、お二人とも気をつけて」

だがその言葉がパンター3の最後の言葉となった。彼らはいまだ第7海兵隊の仕掛けた巧妙な罠の中だったのだから。少しずつ後退していたグフが、先程通った通りを歩いていたらいきなりさっき通過した時はなんともなかったビルが爆発したのだ。しかもそれに連動してか、周囲のビルから対戦車ロケット弾が発射されたのだ。その攻撃をまともに受けたパンター3のグフは破壊され、パイロットは死亡した。

「パンター3!? そんな馬鹿な、さっきはなんとも無かったのに!」

「一体何が・・・糞!!」

仕掛けは簡単だった。最初に爆発したトラップはビルとビルの間にワイヤーを張って、ワイヤーが切れた瞬間に爆発するといったものだった。だがそれよりも狡猾なのは後退したグフにトドメをさしたトラップだろう。先のトラップの爆薬にワイヤーを張って、それが爆発したら必然的にワイヤーが切断、トラップが目覚めるといった代物だった。そして一度通過したから安全だと思い込んでいる通路を通過ようとする敵がきたらそれを感知し爆発、更にその爆発に連動し周囲に仕掛けられた対戦車ロケット発射機からスティンガーを発射するといった仕組みだった。これらは歩兵がいれば問題なく解除できるトラップだがモビルスーツのみが先行するとひっかかるタイプのトラップだった。他にも第7海兵隊が仕掛けたブービートラップは『放置されている車に設置した爆弾』や『ある一定の振動(モビルスーツが真横を通るとき等)で爆発する爆弾』、『対戦車地雷を路面に設置、迷彩シート等を上において偽装する』、『マンホールに爆薬を設置する』といったありきたりな罠に加え『建物の中に数多くの対戦車ロケットやバズーカを設置し、ワイヤーかセンサーでモビルスーツを感知したら一斉に発射する』『建物内に燃料を気化させ、建物自体をひとつの気化爆弾として扱う』といったものも数多くしかけていた。
連邦第7海兵隊にとって都合がよかったのは、ここオアフ島はジャブローから太平洋側に弾薬を送る中継地点となっていた為に武器・弾薬・燃料が豊富にあったことだろう。普通の基地でこれと同規模のトラップを仕掛けようとすれば、たちまち基地の弾薬の備蓄がなくなるほどであった。そして様々なトラップのせいで基地を制圧しようと前進する部隊の進撃速度はかなり低下し、やっとヒッカム航空基地の主要施設にモビルスーツが到着したときには既にヒッカム航空基地はもぬけの殻となっており、更に主要施設は自爆され一部は巨大な爆弾として到着した部隊を巻き込んで大爆発するほどで、基地施設の復興には多大な時間と労力がかかることが間違いない状態であった。


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