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No.2193の一覧
[0] 機動戦士ガンダム ツィマッド社奮闘録(現実→UC)[デルタ・08](2007/12/29 19:02)
[1] 第2話[デルタ・08](2006/08/07 23:26)
[2] 第3話[デルタ・08](2006/08/08 14:00)
[3] 第4話[デルタ・08](2006/09/05 16:19)
[4] 第5話[デルタ・08](2006/08/11 22:36)
[5] 第6話[デルタ・08](2006/08/21 12:27)
[7] 第8話[デルタ・08](2006/09/05 16:16)
[8] 第9話[デルタ・08](2006/10/06 09:53)
[9] 第10話[デルタ・08](2006/10/06 09:54)
[10] 第11話[デルタ・08](2006/11/07 11:50)
[11] 第12話[デルタ・08](2006/12/26 13:42)
[12] 閑話1[デルタ・08](2008/01/01 20:17)
[13] 13話(別名前編)[デルタ・08](2007/07/01 00:29)
[14] 14話(別名中編)[デルタ・08](2007/07/01 00:22)
[15] 15話(別名中編2)[デルタ・08](2007/07/01 00:27)
[16] 16話(別名やっと後編)[デルタ・08](2007/07/01 00:31)
[17] ツィマッド社奮闘録 17話[デルタ・08](2007/07/30 11:55)
[18] ツィマッド社奮闘録18話[デルタ・08](2007/08/16 12:54)
[19] 19話[デルタ・08](2007/08/31 13:26)
[20] 簡単な設定(オリ兵器&人物編) [デルタ・08](2007/08/31 13:47)
[21] 20話[デルタ・08](2007/10/11 19:42)
[22] 21話[デルタ・08](2010/04/01 01:48)
[23] 22話[デルタ・08](2007/12/25 15:59)
[24] 23話[デルタ・08](2007/12/31 18:09)
[25] 閑話2[デルタ・08](2008/01/01 20:15)
[26] 24話[デルタ・08](2008/02/24 17:56)
[27] 閑話3[デルタ・08](2008/05/23 11:31)
[28] 25話[デルタ・08](2008/07/29 14:36)
[29] 26話[デルタ・08](2008/10/18 17:58)
[30] 27話[デルタ・08](2008/10/31 22:50)
[31] 28話[デルタ・08](2009/01/18 12:09)
[32] 29話[デルタ・08](2009/03/18 17:17)
[33] 30話(又は前編)[デルタ・08](2009/04/02 16:07)
[34] 31話(別名後編)[デルタ・08](2009/05/14 22:34)
[35] 閑話4[デルタ・08](2009/06/14 12:33)
[36] 32話[デルタ・08](2009/06/30 23:57)
[37] 33話 オーストラリア戦役1[デルタ・08](2010/04/01 01:48)
[38] 34話前半 オーストラリア戦役2-1[デルタ・08](2010/04/01 01:45)
[39] 34話後半 オーストラリア戦役2-2[デルタ・08](2010/04/01 01:46)
[40] 35話 オーストラリア戦役3[デルタ・08](2010/08/26 00:47)
[41] 36話前半 オーストラリア戦役4-1[デルタ・08](2010/08/26 00:40)
[42] 36話後半 オーストラリア戦役4-2[デルタ・08](2010/08/26 00:40)
[43] 37話[デルタ・08](2010/12/24 23:14)
[44] 38話[デルタ・08](2010/12/26 01:19)
[45] 閑話5[デルタ・08](2011/01/04 12:20)
[47] 39話 前編[デルタ・08](2012/09/30 17:14)
[48] 39話 後編[デルタ・08](2012/09/30 17:23)
[49] お知らせとお詫び[デルタ・08](2015/04/03 01:17)
[50] ツィマッド社奮闘禄 改訂版プロローグ[デルタ・08](2016/03/11 19:09)
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[2193] 13話(別名前編)
Name: デルタ・08◆d442d9e1 前を表示する / 次を表示する
Date: 2007/07/01 00:29
はじめに

4月に更新するとかいっておいてもう6月も終わり7月に・・・時がたつのは早いですな(マテ
とりあえずなんとかできましたが半分以上はほとんど1月の時点で出来上がっていたものを少し手直ししたもので、正直なところ微妙かとは思います。後やたら長くなったのも自分自身なんで長くなったのか疑問ですが・・・ワードパッドで594kbって一体なぜに!?
それと今回は試験的に視点がころころ変わる展開にしており読みにくいとは思いますがそこは勘弁してくださいorz
恐ろしく長くなったので一応4つにぶつ切りしました(爆
とりあえず後編のあとがきに続く


13話

5月20日

・・・お久しぶり、ツィマッド社長でVFの総責任者でもあるエルトラン・ヒューラーです。突然だが・・・胃が痛い。こいつが神経性胃炎ってやつですかそうですか・・・診断結果は神経性の胃炎ってお墨付きもらったよこんちくしょう! まぁ胃癌とかでなくてよかったが・・・医者からはあまりストレスを溜めないように言われたけど最近は色々あってストレス溜まる一方だからこれ完治するのいつだろう? 激しく不安だ。

まぁそれは置いといて現状を説明しようか。会社のほうなんだが・・・嫌がらせ食らってます! まぁこれは結構前からあるから何を今更って感じなんだが・・・慣れって怖いね(爆)まぁ具体的に言えばうちとの取引先が圧力食らって取引がお流れになることもあったが最近一番でかい嫌がらせはやっぱこれだろう。

『爆弾テロ未遂』

・・・なんか皆からの絶叫が聞こえた気がするんで、簡単に説明しようか。サイド3を出港予定のうち(ツィマッド社)の輸送船に爆弾が設置されてたんだ。どうも荷物の中に紛れ込んでたらしいんだが密告があって、それで急遽調査したら発見されたって具合だよ。 ・・・え? 何を運ぶ予定の輸送船だったのかって? キャリフォルニアベースに輸送予定の資材を満載したHLVを積んでいたんだよ。特にVFに配属予定だった新型MSも搭載していたから爆破されなくて助かったよ。爆弾が爆発していたら大量の物資を抱えたHLVは壊滅、船は良くて航行不能、悪ければ轟沈して物資は地球に届かなくなるところだったからねぇ。人的被害も馬鹿にならないし、特に積んでいた資材の中にはキャリフォルニアベース守備の為の広域防衛装備があったし・・・まぁ効率は落ちるが今は荷物をひとつひとつ確認してから運搬するようにしているけど・・・むかつく! まぁ当然ながら犯人は見つからなかったが、これももしかしたら警告の一種なのかもしれないなと思っている。
っと、思い出したら胃が痛くなってきたような(汗)・・・まぁこの話題はもうやめよう、自分の為にも・・・

でだ、軍事面で大きな事といえば、一昨日大規模な軍事作戦、トライデント/ジャベリン作戦で地中海・アフリカ戦域における大規模な進撃作戦が開始された。ただ地中海・アフリカ戦域における進撃作戦と言っても実質は中東進撃と残敵掃討ってことだけど・・・まぁ私の気のせいかもしれんがこの作戦って18日に発動したんだっけ? そこらへん忘れてきてるからやばいな・・・こいつが若年性痴呆症ってやつですか!?(まぁこっちにきて9年もしたらそら忘れるわ)
で、その影響か連邦軍の太平洋艦隊の多くがインド洋に移動を開始したみたいなんだ。こっちとしては明日に控えているハワイ攻略作戦の障害がひとつ減ったからありがたいんだがなんだかご都合主義なような気も・・・まぁ正直空母の艦載機や戦艦並みの主砲を持つ戦闘艦とかがいたらこっちの損害もかなりでかくなるのはわかっているからねぇ。前の海戦で大損害を食らったVF潜水艦隊は一応万全の状態に戻ってはいるが、肝心のハイゴッグはキャリフォルニアベースでの生産はまだ不可能だからいちいち本土から輸送しなきゃならないし、今回投入する新型モビルアーマーもどんな不都合が起きるか分からないし・・・とりあえずハワイ攻略作戦のおおまかな計画はこうだ。うちの潜水艦隊を中核とする水陸両用モビルスーツ部隊がハワイの航空基地を襲撃し敵の迎撃機を極力離陸させないようにさせる。次にその合間を縫ってガウ攻撃空母とオルコス輸送機からなる輸送機部隊を進出させモビルスーツ隊を降下させる。当然これには空中給油型オルコス、通称コバンザメと護衛に戦闘爆撃機のジャベリンを用意している。そして敵がかく乱している時に上陸支援艦艇と揚陸艦、輸送船で多くの陸上戦力を揚陸させるといった手順だ。既に輸送船団はハワイ近海まで進出しているはずだし、輸送機部隊も離陸を開始したころだろう。夜明けと同時に攻撃が開始される手筈だからね。
・・・え? よくモビルスーツとかを搭載できる揚陸艦艇を配備できたなって? 言っとくけど最後の輸送船団は徴用した民間のフェリーがメインだよ。後は鹵獲した強襲揚陸艦や戦闘艦艇だね。当然モビルスーツを乗せれる船は限られてるからフェリーとかにはマゼラアタックとかが乗せられているよ。一応モビルスーツを乗せられる大型タンカーもいるけど・・・タンカーというよりもモビルスーツサイズの上陸舟艇だな、WW2時代の感じの。なんせタンカーを凹型に改造してそこにモビルスーツを搭載しているんだから・・・まぁこれは急造なんでモビルスーツを乗降させるのに苦労するがモビルスーツのスラスターを使えば問題は無いはずさ。この輸送船団が到着しないとハワイの制圧は不可能だからねぇ。やっぱり最終的に敵地を占領するのは歩兵の役目だし。
幸い18日のトライデント/ジャベリン作戦で宇宙からミノフスキー粒子を搭載したHLVを東南アジアに大量に落下させ、追加で昨日中東・西アジア方面に落下させたミノフスキー粒子散布用HLVのいくつかを大気圏突入失敗に見せかけて太平洋に、しいてはハワイ近海に落下させることができた。これでジェット気流に乗って今頃いい感じでハワイ近海に拡散しているはずだ。ミノフスキー粒子の濃度は場所によって激しい差がでるけど仕方ない。

さて、そろそろ時間なんで失礼するよ。これから重役会議があるんでね。 ・・・それが終わったら病院で診断か、気が滅入るな(泣







20日 23:42 アメリカ西海岸上空

闇に包まれた空を多くの光が西へ向かって飛んでいく。よく目を凝らせばそれが無数の航空機であることが分かるだろう。

「こちらキャリフォルニアベース、エア・コマンダー・リーダーへ。現状を報告せよ」

「こちらエア・コマンダー・リーダー、キャリフォルニアベースへ。現在のところ異常無し、全機問題無く飛行中だ」

「了解した、それではレーザー通信を終了、次に話をするのはハワイ占領後だな。良い空の旅を」

「了解、いい旅を祈っておいてくれ」

そう言って基地との通信を切った。

「機長、連絡お疲れ様です。今のうちに仮眠を取ってはいかがですか?」

「そうしたいがエア・コマンダー各機の報告を聞くまでは無理だな」

そう機長が言ったら機内通信が入った。

「あ、機長。それなら機長が基地と連絡している間にはいってきました。各機異常無く各編隊共に異常無しだそうです」

「そうなのか、分かった。じゃあしばらく仮眠させてもらうよ、2時間ほどしたら起こしてくれ」

「分かりました、ゆっくりしてください。何かあれば呼びますので」

「頼んだ、2時間したら君と交代するよ」

そう言って機長はコックピットから出て行った。

「やれやれ、機長も根詰めすぎだよ」

「まぁ作戦時に眠くなったら困るからな」

「違いない・・・しかし凄まじい数だよなぁ通信士」

そう副機長がつぶやくのも無理は無い。なんせコックピットから見える範囲には無数の航空機が飛んでいるのだから・・・

「まぁガウ攻撃空母だけでも10機、オルコス輸送機型が50機の計60機の輸送機ですからね」

「おい管制官、いいのか管制してなくて」

「別に問題はないようですし、少しくらいなら大丈夫でしょ。話の続きですがさっきいった60機の他にこのエア・コマンダー型早期警戒管制機にコバンザメ型空中給油機、トーカイ型対潜哨戒機に護衛のジャベリン戦闘爆撃機が含まれますし」

「まぁガウとジャベリンを除けば全てオルコスだもんな・・・それと対潜型はトーカイじゃなくてトウカイって名前だぞ」

「あれ? そうでしたっけ?」

「ああ、まぁトーカイでもいいような気もするがな。だが早期警戒管制機がエア・コマンダーってストレートすぎる、ネーミングセンス悪すぎだろ。もっとまともな名前は考えれなかったのかと命名した奴に文句をいってやりたい」

「それを言ったらおしまいでしょ? しかし・・・オルコスの派生機って多いな」

「まぁ連邦のミデアをモデルにしてるらしいですしね。数に関して言えば大量に生産することで量産効果で安くなるってことですし」

「でもこの編隊の内オルコスシリーズに関しては相当数がうち(VF)所属なんだろ? VF地上軍と北米に駐屯している正規軍の大半がこの作戦に参加しているってのも頷ける話だな」

「ただでさえ大編隊なのに加えて空中給油を真夜中にするんですから、これだけ多くの早期警戒管制機がいるのも頷けますよ」

「それもそうだ・・・しかし・・・VFって元私兵とは思えないくらい拡大してるよな」

「まぁたしかに・・・正規軍の友人に聞いたんですが、ほとんどの奴らがVFをガルマ様の地球方面軍の主力精鋭部隊だと勘違いしてましたよ」

「まぁそれは光栄なんだろうがあまり仕事を増やしてもらいたくないよな・・・ってか他の正規軍はどこに展開してるんだ?」

「噂じゃパナマ運河を維持しつつ北米の残敵掃討を行っているって聞きました。なんでも連邦は輸送機と潜水艦で多くの戦力を北米に送り込んでゲリラ戦を仕掛けているようで」

「たまったもんじゃないな。索敵網の完成っていつ頃なんだ?」

「沿岸一帯に監視拠点なんて設置しようものなら人員がどれだけあっても足りませんよ。ルッグンとトーカっと、トウカイでしたね。それらで海岸一帯を定期的に見回っているらしいんですがたまに連邦戦闘機の襲撃を受けて索敵網に穴が空くとか・・・」

「まぁ連邦にとっちゃ喉もとに突きつけられたナイフみたいなもんだからなぁ」

「その為に援助物資をばら撒いて北米の人心の掌握をしているって話ですしね」

「・・・副機長、この戦闘いつ終わるんでしょうね? 俺本国に恋人残してきてるんですよ、この任務が終わって休暇が取れたら結婚しようって約束をしt」

「通信士、そういうセリフを言うと死ぬってのがセオリーだぞ。少なくとも俺は巻き添えを食らいたくはない」

「同感、そういうセリフは単座の戦闘機かなんかに乗ったときに言ってください」

「・・・すいません。ですがそれって漫画やアニメとかの話では?」

「こういうことは機長が詳しいんだが、コトダマっていうのがあるらしい。つまり嘘でも口にするなってことだ」

「了解しました、自分も死にたくは無いですしね」







ハワイ諸島 オアフ島 連邦軍太平洋艦隊基地

「哨戒中の潜水艦が消息不明?」

「はい。消息を絶ったのはM型潜水艦で、4時間前の定時報告に応答が無く、現在も連絡が取れません」

「ただ単に通信装置の故障ということは?」

「たしかに先日降下に失敗したと思われるHLVから大量のミノフスキー粒子が流出し、ハワイ一帯は激しい電波障害が起こっているのでその可能性も否定できませんが、近頃活発になってきたジオンの潜水艦隊に撃沈された可能性もあると推測しております」

「ジオンの水中艦隊か、たしかに最近東太平洋は騒がしいが・・・」

「はい、それを裏付けるかのように様子を見に行かせた偵察機も消息を絶ちました」

「ふむ・・・ジオン潜水艦隊の可能性が高いということかね?」

「その通りです。そこで司令、インド洋に派遣した太平洋艦隊をハワイに戻すことを提案します」

「それはできん、潜水艦1隻と偵察機1機が消息不明になったからといって派遣した艦隊を戻すことは不可能だ」

「ですが司令、現在ここに残っている艦艇はヒマラヤ級を含めて空母が2隻、巡洋艦が6隻に駆逐艦が18隻。しかもその内の何隻かはドックに入っている状態です。しかもミノフスキー粒子もかなり大気中に漂っている状態です。もしジオンに襲撃されたら・・・」

「・・・たしかにそうだが、インド洋への太平洋艦隊派遣は連邦議会の要請でもあるのだ。我々のような一介の軍人にそれを覆す事などできないのが実情だよ、レビル将軍等の例外を除いてはな」

「ええ、確かに今回の派遣に際して、減る戦力の代わりとばかりにホイラー航空基地、ヒッカム航空基地には多くの航空機が配備されました。特に戦闘機部隊はかなりの数です。ですが水中からの脅威に対抗できる対潜哨戒機はあろうことか太平洋全域の航空基地への転属命令で、配備されていた機数は減らされました。次の補充は未定だそうですが、これでは東太平洋を跳躍跋扈するジオン潜水艦隊を押さえることはできません! 辛うじて増派された中に水中ポッドがありましたが実戦で使えるかどうかわからない代物ですよ!」

「私も憂慮しているよ。君に言われるまでも無く増援要請はだしてある。だが与えられた戦力でできる限りの事をするのも軍人の仕事だよ。それと君の言う水中ポッドだが既に一部では潜水艦に搭載しジオンの通商破壊船を何隻か撃沈する戦果を挙げている。それに幸い増援要請が認められたのか明日明け方近くにジャブローから航空隊の増援がくる」

「それは初耳です。いつ決まったのですか? それに増援内容は・・・」

「通達されたのはつい先ほどだ。君が来るのと入れ違いに関係各所に通達されたのだろう。内容はミデアにデブロック、フライマンタだ。航続距離の問題からフライマンタは増槽を取り付けており弾薬に関してはミデアが輸送するということらしい」

「なるほど・・・しかしやはりドン・エスカルゴはこないのですか・・・」

「まぁ今となってはドン・エスカルゴは引っ張りだこだからな。例のゴッグというモビルスーツの被害がインド洋や大西洋で拡大している。特に大西洋では輸送船団の護衛についているヒマラヤ級に必要不可欠だ。インド洋でもつい先日始まった敵の侵攻のせいで護衛は不可欠になっている。それまでは手元にあるドン・エスカルゴと対潜ヘリでなんとかしなければならん」

「・・・わかりました。では対潜警戒についてはこちらで何かいい案が無いか検討してみます。後当該海域には夜明けと共に対潜哨戒機と護衛戦闘機を発進させます」

そういって参謀は退出し、この数時間後にハワイ近海の哨戒案を新たに作成するがその案が連邦に採用されることは無かった。







21日 04:45 ハワイ諸島近海

ここに複数の巨大な物体が深海で息を潜んでいた。その中の1つ、VF潜水艦隊旗艦であるリヴァイアサンの発令所から周囲に潜む潜水部隊にひとつの指令が発せられた。

「時間だ、各機作戦を開始せよ!」

その指令を発した次の瞬間、辺りに展開していた水陸両用MSが一斉に動き始めた。目標は連邦軍太平洋艦隊の根拠地、ハワイ諸島。ここを陥落させることができれば連邦の太平洋艦隊は大きく後退せざるをえなくなり、太平洋のミリタリーバランスは大きくジオンに傾くことが予想できた。その為この作戦にはジオン・VF双方の水陸両用MSの半数以上が投入されることとなった。数で一番多いのはゴッグで、次に多いのがVF所属のハイゴッグだった。そしてその中で新たに配備されている機体が存在した。

MSM-07 ズゴック

MIP社がツィマッド社と共同開発したMSで、ハイゴッグのデータを参考にした為、外見は史実のズゴックだが若干性能が向上し、ハイゴッグと部品の共通化によりハイゴッグが装備する外部ジェットパックを装備することが可能になった。

今回その初期先行量産型(つまり量産された試作機)が30機投入されていた。そしてジェットパックを装備したズゴックとハイゴッグ達はある程度ハワイに近づいたら一斉にジェットパックを使用し一気に加速した。そしてそれと同時に海中に潜む潜水艦から一斉に対地ミサイルが発射された。



オアフ島 海岸線

「・・・暇だな」

「暇なのは否定せんがな。明け方の見回りはいいもんが見られるぞ」

「・・・どうせ日の出とかいうんだろ? それに夜明けってまだ先じゃないか」

「それ言ったらおしまいだな。しかし聞いたか? あの噂」

「ああ、確かここの陸軍が前線に投入されるってやつだろ? 太平洋艦隊が出撃したんだから本当のことじゃね?」

そう談話しながら歩哨についている連邦兵、彼らのいる場所はホノルルに近い南端の海岸線だった。戦争開始後しばらくしてキャリフォルニアベースが陥落し、キャリフォルニアベースの目と鼻の先のハワイ諸島は表面上は連日警戒を強めていたが、多くの連邦兵がハワイにジオンが侵攻してくるとは思っていなかった。
それも当然である、元々艦船の建造には時間がかかるのだから。仮に鹵獲した船舶を使用してもハワイには連邦海軍最大の戦力、太平洋艦隊が存在するのだ。そうでなくても強力な航空戦力を保有するハワイを攻撃するということは自殺志願者とまで言われていたのだから。

もっとも、今回太平洋艦隊の大半が移動することになりハワイ諸島の防備が手薄になったのは紛れも無い事実だ。そしてキャリフォルニアベースの生産能力を知っている者達にとっては今回の移動が危険な事も・・・
そう、キャリフォルニアベースの船舶建造能力は驚異的で、輸送艦なら僅か1ヶ月で建造できるほどだった。さすがに戦闘艦艇を1ヶ月で作るのは不可能だが、占領してから2ヶ月もあれば小型艦くらいは量産している可能性もある。 ・・・実はキャリフォルニアベースではジオンに占領されるまで多くの戦闘艦艇の建造が行われており、少なくない数の船舶がジオン軍に鹵獲されていたのだ。もちろん爆破処理されたものも多数あったがそれでも少なくない数の戦闘艦艇がジオン軍に無傷で鹵獲されたのも事実であり、先々月には大西洋でジオンの(実際はVFの)潜水艦隊により多くの船舶が失われていた。

つまりいまやジオン軍は海軍戦力でも侮れない存在となっていたのだが、それでもやはりハワイの連邦軍将兵の多くは楽観視していた。そして気がついた時には手遅れになっていた。

この二人の連邦兵が異常に気がついたのは沖合いの海面から多数のミサイルが飛び出し、こちらに向かってくるのを目撃したことだった。

「ん? ・・・おい、あれはなんだ!?」

「え? 水柱? ・・・って水中発射型ミサイルか!? 大変だ、すぐに基地に連絡を・・・」

そして無線機に手を伸ばしたところで彼らのすぐ近くの海面がいきなり隆起し、ブースターを噴かしたモビルスーツが飛び出してきた。彼ら二人にとって幸運だったのはこのモビルスーツ達は時間との勝負中だったことだろう。どのみちこれだけ派手な行動をすれば連邦軍に気がつかれるのは分かりきっている為、時間を惜しむこともあり彼ら二人は無視されることとなったのだ。

彼ら水陸両用モビルスーツの目標はホノルル市の制圧と、ホノルル空港と隣接したヒッカム航空基地、そして連邦軍の太平洋艦隊が停泊している真珠湾だった。ヒッカム航空基地はヘリやVTOL機主体の空軍基地で、多くの戦闘ヘリが駐機しており、これを制圧できればハワイ制圧の関門が一つクリアできたも同然だった。そして真珠湾にはインドに派遣されなかった艦艇が停泊しており、それだけでも十分脅威となる戦力だった。

そしてオアフ島の南側で騒動が起こっている時、北側でも騒動が起こっていた。その舞台はディリンガム民間飛行場近辺だった。突如海面から複数のモビルスーツが上陸し、ディリンガム飛行場を占拠したのだ。その機体はゴッグでもズゴックでも、ましてハイゴッグでもなかった。

MSM-04 アッガイ

それはジオニック社の系列会社であるスウィネン社が独自に開発した偵察用モビルスーツだった。外見とは裏腹にザクのパーツを流用したそのモビルスーツは生産コストが低く、ステルス性能も高い機体となった。武装は頭部に105mmバルカン砲を4門装備し、腕部分を換装することで多彩な装備を持つことができ、当初の想定よりも戦闘能力が高い機体として完成した。今ここにいる機体の多くは右手がアイアンネイル&機関砲、左手が6連装ミサイルランチャーという兵装だった。中には腕がグレネードランチャー発射機や普通のマニピュレーターとなっている機体もいた。
元々ディリンガム飛行場は民間空港で、軍の航空機は緊急着陸等の非常時でしか運用していない。その為、警備しているのは民間の警備会社なのでモビルスーツに対抗する戦力など最初からなかった。重要なのはオアフ島の北側で騒動を起こし、連邦軍の注意を分散させることだった。空港を一時占拠したアッガイは何機かを警戒の為に残し、残りはそのままオアフ島中央へと進軍していった。

さて、ここで二つの疑問が生じる。一つはジオンの攻撃はオアフ島に集中しているようだが他の島々はどうなったということだ。これについては理由は簡単だ。ハワイ諸島に展開する連邦軍はその戦力の大部分がオアフ島に集中しているからだ。もちろんハワイ島をはじめに他の島々にも展開している部隊はいるが、それらは基本的に少数の歩兵部隊と数両の61式戦車と装甲車であり、最大の戦力でもハワイ島にいるミデア数機と護衛のセイバーフィッシュ6機に61式戦車15両といったもので、ジオンから見れば取るに足らない戦力と映ったからだ。
そして二つ目、ジオンの奇襲を許したとはいえその戦力はいまだ海岸沿いで、島中央にある連邦軍の航空戦力が集結しているホイラー航空基地はどうしているのかということだ。上陸から幾分時間が経過しているので、スクランブルした航空機がいても不思議ではなかった。だが現実にはいまだハワイの空を飛ぶ連邦軍航空機は少数の哨戒機のみだった。
これも答えは簡単だった。連邦軍航空隊は出撃したくてもできない状態にあったからだ。皆は覚えているだろうか? 水陸両用モビルスーツ部隊が一斉に行動した時、潜水艦隊が数多くの対地ミサイルを一斉発射したことを・・・これらは一定の距離(一定の燃料を消費したら)を飛行したら内部に抱える小型爆弾をばら撒くタイプのもので、ミノフスキー粒子の影響をうけないある種のロケット弾のようなものなのだ。そして、これらはホイラー航空基地の周囲に落下し抱えていた小型の時限爆弾 最長で1時間半後に爆発するもの を基地にばら撒いたのだ。その中には基地とは全く関係のない場所にばら撒いたものもあるが、大半はホイラー航空基地にばら撒かれた。その結果、いつ爆発するか分からない爆弾があちらこちらにある為に航空部隊は出撃したくてもできない状態に陥ったのだ。小型とはいえその爆発力は侮れず無理矢理離陸しようとした戦闘機がそれの爆発により大破したほどだ。
だが連邦軍もやられてばかりで済ますつもりは毛頭無かった。



ヒッカム航空基地郊外 06:21 

「こちらヴァリスタ・リーダー、ヒッカム航空基地に敵モビルスーツ多数侵入! さっき離陸したばかりのファンファンがやられた、ここで奴らを食い止めるぞ!」

「こちらチャーリー・リーダー、我々が前面から抵抗をする。その隙に側面に回って叩き潰してくれ」

「了解したチャーリー。デルタはどうした?」

「デルタはやられた、61式で馬鹿正直に真正面から撃ち合いをしてやがったから自業自得といえばそれまでだが・・・後ズールが後方に回っている最中だ、こちらはXT-79の部隊だから支援射撃は期待できそうだぞ」

「了解した。むざむざやられはしないがそっちも気をつけてくれよ」

「あいよ、そっちもな!」

「・・・よし、全車準備いいな? チャーリーが時間を稼いでいてくれる間に奴らの側面にでるぞ!」

「了解! 奴らに鉛弾のプレゼントをしてやりましょう!」

「ヴァリスタ3、鉛弾って・・・何時の時代だよ」

「いいじゃないか2、例えだよ例え」

「くだらない論議はそこまでだ。口を動かす前に手を動かせ! 友軍を見殺しにするなよ」

「了解!」

「こちらヴァリスタ2、配置につきました。目標を捕捉しました、相手はゴッグです」

「・・・なんてこった。よりによって重装甲で有名なゴッグかよ!?」

「愚痴を言うな! 例えゴッグの装甲が厚くても関節やモノアイは構造上装甲は薄いはずだ! そこを重点的に狙って行動不能にしてやれ!」

「付け加えていえば腰のメガ粒子砲も狙い目です。発射直前に命中すればエネルギーが逆流する可能性もありますし」

「聞いての通りだ。モビルスーツは無敵ではないことをジオンの奴らに教えてやれ!」

「了解!」



そのゴッグのパイロットは突如連続した衝撃に見舞われ、動揺したがあまり損傷が出ていない為まだ余裕を持って対処できた。当然である、膨大な水圧に耐えるため装甲は厚く、機体構造自体が頑強でありモノアイもあたりどころが悪くない限り破壊されないようにできているのだから。

「なんだ一体? ・・・あれは? データベース検索・・・・・・『大口径バルカン重装甲車』? ほう、ザクを撃破できるバルカンを持つ装甲車両か、だが・・・」

そこまで言って手で機体を守りつつ機体にチェックを走らせ、異常無しという結果を見たパイロットは不敵に笑った。

「このゴッグの装甲がバルカンぐらいでやられると思ってるのかよ・・・しかし俺だけでは少々きついな。こちらベア5、敵の対モビルスーツ用バルカン搭載車両と交戦中、速やかなる支援を求む!」

すると一瞬の間をおいてすぐに返事が返ってきた。

「こちらベアリーダー。ベア5へ、状況を知らせろ」

「現在61式主体の戦車隊と交戦中に横から大口径バルカン重装甲車の攻撃を食らいました。今のところ重大な損傷は発生していませんが数に押され苦戦中です。支援をお願いします」

「・・・こちらベアリーダー。ズゴックが数機支援に向かった、それまで現状を維持せよ」

「了解しました。 ・・・さて、バルカンは後回しにして先にコソコソ隠れながら撃ってくる61式から片付けるか」

そう言って彼は機体を操作し、61式戦車が隠れていると思われる建物に向かって腹部メガ粒子砲を撃ち込んだ。



「うわあぁぁぁ!」

「こちらヴァリスタ・リーダー。チャーリー隊、大丈夫か?!」

「こちらチャーリー2、チャーリー・リーダーの61式は破壊されたので自分がチャーリー隊の指揮を取ります。チャーリー3も建物の瓦礫で主砲に損傷が発生したらしいので後退を命じました! このままでは防衛線に穴が!」

「・・・こちらヴァリスタ・リーダー、了解した。 糞、各車もっと弾幕を張れ! こちらヴァリスタ・リーダー、防衛ラインに穴が開く! 至急、支援求む」

「こちら自走対モビルガン車両、H-116号車です。これより支援します」

そう言って現れたのは2連装機銃を持った装甲車両だった。これが持つ機銃は対ヘリ・対歩兵用と言ってもいいもので、実際の戦場では旧ザクに通用するかどうか怪しい代物だったが、牽制には使えるとヴァリスタ・リーダーは判断した。

「支援に感謝す。チャーリー2の61式を支援してやってくれ」

「了解しました!」



「流石に1撃で全滅してはくれんか・・・まぁいい。メガ粒子砲の脅威をたっぷりと味わってもらうか」

そう呟いたところにいきなりアラートが鳴り響いた。あわててチェックすると先ほど行った射撃で右側のメガ粒子砲が使用不可能になったというのだ。これは元々右側のメガ粒子砲は先ほどからの銃撃で若干損傷しており、射撃を行った際にその損傷が拡大したというのが真相だったが。

「ちっ、まぁいい。右腹部メガ粒子砲へのエネルギー供給は自動停止、余ったエネルギーは左メガ粒子砲にまわっているのか・・・まぁ大丈夫かな。さて、いい加減うるさいバルカンを黙らせるか」

そう言って機体右側にいる3両のバルカン装甲車に胴体をむけ、メガ粒子砲のトリガーを引こうとした瞬間、彼は機体に大きな衝撃を感じ次の瞬間には彼の意識は消し飛んだ。

そう、迂回して背後に回っていたズール隊のXT-79のレールガンによって彼のゴッグは背中のバックパックを撃ち抜かれたのだ。本来モビルスーツは一部の例外(史実のゾック等)を除けば大抵背中の装甲は正面と比べて薄くできている。そしてモビルスーツの多くは背中にバックパックを装備するタイプでそこだけはやはり防御力が更に薄くなっており、そしてその事実は連邦も掴んでいた。結果としてバックパックに直撃を受けたゴッグは装甲を貫通し内部の機器を破壊したのだ。そしてその内部の機器にはコックピットも含まれていた。
小爆発をしながら崩れ落ちるゴッグを見て周囲の連邦兵は歓声を上げた。もちろんこれで敵の攻撃が終わったわけではないが、重装甲として知られるゴッグを破壊したことはオアフ島で戦っている将兵の士気を上げることにつながる。

「こちらヴァリスタ・リーダー。ゴッグ1機破壊を確認、今のうちに戦線を立て直すぞ!」

「こちら第9145小隊所属のホバートラック、ヴァリスタ・リーダーへ。そちらに敵新型モビルスーツが3機向かっています。後真珠湾に停泊していた艦船は敵のモビルスーツによってその大半が破壊、港は占拠された模様です。またオアフ島北側のディリンガム民間飛行場も敵の新型モビルスーツによって占拠されました。残存戦力はホイラー及びヒッカム航空基地に集結せよとの命令です」

「了解した。だがホノルル市はどうなる?」

「おそらく後で奪還することになると思います。今ホイラー航空基地の滑走路は使用不可能な状態なので航空戦力はヒッカム航空基地の戦闘ヘリくらいしかないので・・・」

「了解した。これよりヒッカム航空基地の防衛ラインの構築にあたる」

ハワイを巡る戦闘は始まったばかりだった。



真珠湾 時間は少し巻き戻り05:19 

「こちらディープブルーリーダー、マーメイド及びブラックパール隊は作戦通りに行動せよ」

「こちらマーメイド隊、了解しました。これより敵艦船への攻撃を開始します」

「こちらブラックパール、予定通り真珠湾の陸軍を殲滅する」

そう言って18機のハイゴッグはそれぞれの役目を果たすべく行動していった。ディープブルーの役目は真珠湾の占領だった。もちろんたったこれだけのモビルスーツで一大海軍拠点である真珠湾を落とせるとは思っていない。本体が来るまで占拠していればいいのだ。基本的に連邦軍のハワイ駐留部隊は真珠湾の海軍、ホイラー&ヒッカムの空軍、ホイラーに隣接する陸軍といった配置だった。つまり真珠湾の近くにはヒッカム航空基地しか大きな部隊は存在しないわけだった。そして海軍基地で一番の大火力を持つのは戦闘艦艇だった。

「こちらマーメイドリーダー、マーメイド各員へ。ドックの中にいる敵艦も確実に仕留めなさい」

「了解! しかし後片付け大変じゃありませんか?」

「その心配をしてて返り討ちにあったら目も当てられないじゃない。それにここ使うのはいつも私達に嫌がらせをしてくれてる紫ババァだから気にしなくてもいいわ」

「了解しました~、ってことだから皆ちゃっちゃと片付けましょ~」

「・・・カナー軍曹、もうちょっと緊張感を持ってちょうだい。まぁそういうことだからさっさと片付けるよ」

そういい真珠湾へと侵入した彼女達だったが、思いがけない敵が真珠湾で待っていたのだ。



「くそぉ・・・ジオンの奴等め、このハワイを襲うとはいい度胸だ。艦長、発進はまだか!?」

「無茶を言うな! 本艦は停船しているのだぞ、ここの水深ではあんた達を発進させるにはギリギリなんだ! 1発でも攻撃を食らって浸水でもしたら即発進不可能なんだぞ!」

「だがこのままなにもせずに艦と一緒に水没するのは却下だ! 散々馬鹿にした潜水艦乗り、いや海軍の全員にこいつの真価を見せるときなんだ!」

「だがはっきり言わせてもらうがそんな棺桶で・・・」

「艦長! いくら艦長といえど今の暴言は許さんぞ! あんたはさっさと俺達を発進させればいいんだ! これ以上グダグダぬかすと無理やりハッチをこじ開けるぞ!」

「・・・ったく、生きて帰ってこいよ。格納庫に注水完了次第ハッチ開放だ、急がせろ! フィッシュアイがでるぞ!」

そして輸送艦『リーロ・パタ』の格納庫に水が満たされ底部が開放され始めた時、搭載されていた15機のフィッシュアイが起動した。

フィッシュアイ、正式名称RB-79Nは地上で製造されていたボールの生産ラインを急遽変更して実戦配備されたものだ。ボールを海中用にしたものといえばそれまでだが、180mm低反動砲を連装式のロングスピアに変更し、作業用マニピュレーターを巨大なクロー・アームに変更し後部に大型ダクト型式の推進装置をとりつけられ、クロー・アームと併用することで水中での高い機動性能を実現している機体だった。一部では宇宙でも似たような改装(クロー・アームと大型推進装置の設置)を施してみてはどうかとの意見がでるほどのものだったが、このフィッシュアイは航続距離に恵まれなかった為、母艦からあまり離れることができないという機動兵器としては致命的な問題が発生した。もっとも母体となったボール自身航続距離が短いので気にするほどではなかったが・・・そしてこのことから口の悪い将兵からはこのフィッシュアイのことを『ひも付き』と呼んでいた。
だがこれを扱う兵士達はこの機体に自信を持っており、更にここにいるのはジオンの通商破壊船を数隻血祭りに上げたことのあるパイロット達だった。

まだ開ききっていないハッチから出撃したフィッシュアイはそのままゆっくりと艦を離れていった。敵の水陸両用モビルスーツに察知されることを警戒してのことだが、停泊艦の破壊音等があたりに響いているのでソナーは気にしなくてよかっただろう。既に2隻ほど着底しており、モニターに映った敵モビルスーツの腕についていた円筒形のものからミサイルが放たれ、新たに大きな破壊音が海中に響き渡った。

「糞、戦闘艦艇は致命的なダメージか・・・だがそれにしては補給艦や輸送艦には攻撃をしていないな。まさか本気でここを占領するつもりなのか? そうはさせん。各機へ告ぐ・・・友軍の為にここで死ね! 我々が時間を稼げは稼ぐほど反撃の態勢が整うんだ。後敵モビルスーツの腕の円筒形の物体はおそらく大型ミサイルコンテナだ。そいつにスピアを叩き込んでやれ! 後は各自の判断で戦闘しろ」

そう言って彼は左腕に円筒形のミサイルコンテナを持っている機体にロングスピアを放った。ロングスピアは細長いロケット弾のようなもので水中ではかなりの速度を持ち、低空を飛行するヘリすら撃墜可能な武装だったが攻撃力という点で見れば小型の魚雷くらいの威力しかなかった。だが彼の放ったロングスピアは一直線に円筒形のミサイルコンテナに突き刺さりミサイルコンテナは誘爆、そのハイゴッグの片腕片足を破壊した。



「きゃあ!?」

「!? ハルナ、無事!?」

「こ、こちらハルナ、左手の大型ミサイルユニットに被弾し誘爆しました! 機体大破、左手足全壊してます!」

「落ち着きなさい。敵の追撃が来る前に後退しなさい!」

「こちら5、敵潜水艇・・・いや違う、敵機動兵器を確認しました。宇宙で使われているボールっていうのに似ています!」

「水中用に改造したのかしら? まぁいいわ、各機迎撃を開始しなさい」

その言葉にハイゴッグ何機かがフィッシュアイにメガ粒子砲を内臓した腕を向けるが、それより先にフィッシュアイの放ったスピアランスが襲い掛かった。それらは水陸両用機では比較的装甲の薄いハイゴッグに命中していくが、さすがに間接部等装甲が薄い場所に命中した機体を除いてほとんどの機体が無事だった。中には横を向いていたハイゴッグの足を狙ったスピアランスが発射直後、目標機体がこちらに向いた為足と足の間をすり抜け斜線上にいた味方艦船に直撃するという笑えないことも起こっていた。

そしてスピアランスを放ち終えたフィッシュアイはその巨大なクロー・アームでハイゴッグへ格闘戦を挑んだ。だがその巨大なクロー・アームは『はさむ』ということより『殴る』といったような鈍器扱いされるような代物だった。なぜならこのクロー・アームは瞬間的な握力が弱く、装甲が厚い水陸両用モビルスーツ相手ではある意味見掛け倒しなのだから。そして彼らはそのことを熟知しておりこのアームではよほどのことが無い限りゴッグすら破壊することが難しいということも・・・
それを知っている彼らが生み出した戦法は、格闘戦に移行した機体を囮にし背後からロングスピアを放つというサッチ戦法のようなものだった。戦術的に1対多数で戦うのは間違っていない。
だが彼らは一つ間違いを犯した。それはハイゴッグの運動性をゴッグの20%増しに考えて戦闘を行ったことだ。ハイゴッグはゴッグの最大の特徴であった装甲の厚さを捨て、機動性を大幅に向上させた機体であるということを彼らは知らず、更に言えばその機動性はゴッグの20%増し程度のものでは無いということを・・・

結果からいえば彼らフィッシュアイ部隊は健闘したと言っていい。元々急造品であるフィッシュアイでハイゴッグ部隊を相手にし、更に1機を大破させたのだから。だがその代償に15機いたフィッシュアイはいまや4機にまで数を減らしていた。水中にいる敵機は4機で同数とはいえこのままでは全滅は確実だった。

「くそ、やはりこいつじゃジオンの新型相手だときつすぎるか・・・」

「隊長、こいつら機動性が想定よりもめっちゃ高いですよ!」

「ロングスピアは威力不足だし弾切れ・・・クローは鈍器代わりしか使えないか。今回の戦闘データを下に新型機を開発して欲しいところだな、我々が生き残れたらの話だが・・・」

打つ手が無くなり、このまま全滅するかと思われた時に連邦軍海軍の反撃は始まった。フィッシュアイがハイゴッグと戦闘し時間を稼いでくれていたおかげで戦闘可能な艦船が反撃準備を整えれたのだ。ある艦は炎上しダメコンをしながら対潜魚雷を発射し、ある艦は陸上に上がった敵モビルスーツに向けて速射砲を放ち、ある艦はミサイルを飛翔させた。この攻撃に泡を食ったのは陸上に上がったモビルスーツ隊だろう。なんせ事前の取り決めではマーメイド隊が水上艦艇を始末するということになっていたのだから。当然無事な艦艇を見つけたら他のモビルスーツ隊もビームをお見舞いしていたがとてもではないが全てを破壊する余裕は無かった。
とにかくこの攻撃はある意味不意打ちとなり、ズゴックを含む数機が犠牲になった。

「チャンスだ! 各機各自の判断で行動せよ、撤退してもかまわんがその場合は戦闘データを友軍に必ず送り届けろ!」

そう言って彼の乗るフィッシュアイは1機のハイゴッグに向かって突撃、いやこの場合は特攻といってもいいだろう。そのハイゴッグは迫りくる対潜魚雷を迎撃するのに忙しいようで、気づいたときにはフィッシュアイのクローの射程内だった。フィッシュアイの左のクローでハイゴッグの右腕を挟み、右手のクローを機体全体を使ってハイゴッグのモノアイに勢いよく叩きつけた。
さすがに至近距離からこれだけの質量を勢いよく叩きつけられたら無傷で済むわけが無い。モノアイスリットは大きく歪み、しかもオートバランサーが損傷したのかゆっくりとその機体は後ろ向きに倒れていく。パイロットが衝撃で気絶したのかもしれないが1機倒れこんだということは事実だった。他の機体を見てみると2機が格闘戦を挑んでおり片方のアームを破壊されたフィッシュアイは浮上しながら撤退を開始していた。

だが一時混乱していた敵は冷静さを取り戻し、フィッシュアイと浮かんでいる艦艇に容赦なく反撃を開始した。陸上のモビルスーツが艦艇にビームの嵐をお見舞いし、撤退していたフィッシュアイはビームを喰らい爆発、格闘戦を挑んだフィッシュアイ2機も破壊されていった。そしてフィッシュアイの隊長が最後に目にしたのは倒れていたハイゴッグの腕が伸び、4本の鋭いクローが自機に迫る光景だった。

「隊長、敵機動兵器全て沈黙。洋上の艦艇も浮いているのは残り数隻です」

「思わぬ反撃だったわね。連邦の水中用機動兵器・・・なかなか侮れないわ。ところでファー軍曹、無事か?」

「な、なんとか生きてます。でも機体はオートバランサーが損傷、モノアイスリットも歪んでいるのでモノアイが満足には・・・」

「とりあえず戦闘行為には支障が出るわけね・・・とりあえずハルナとシャーリーの護衛をしてて。大破したとはいえ3機もいれば大抵の敵は攻撃してこないわ」

「隊長、私達は作戦続行でいいんですよね?」

「ええ、疑わしきは全て罰せよで少しでも怪しいものには容赦なくビームを叩きつけてやりなさい。いくわよ」

そしてそれから数分後には真珠湾に浮いていた戦闘艦艇は1隻残らず沈められ、艦橋やマストが海面上に覗かしているだけとなり、港湾施設も多く破壊された。だがディープブルーを含む水陸両用モビルスーツ隊の面々が痛い目に会うのはこれからが本番だった。


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