《Page36 死神》 キラがサラ脱出の報を受けて体育館を飛び出していった後、ライト、ニア両陣営の間には重苦しい空気が横たわっていた。 夏海は手にしているデスノートの切れ端にニア達の名前を書き込みたくてたまらないようだが、自分達の命がかかっているせいで実行に移せず、イライラしたようにペンを回している。 夏海が動けないせいで自分の行動も制限されてしまっているライトも、息子から一向に連絡が来ないために険しい目でニア達を睨みつけるばかりだ。 一方、ニアはそんな二人の心情などどこ吹く風で、自分が持って来ていたデスノートのページを時間潰しとばかりに適当にめくっている。 それがさらにライト達の怒りを助長しているので、他のキラ捜査員達は冷や汗を流しながら睨み合う両者を見つめるしか出来なかった。 そんな沈黙の戦いが十分も続いた頃、険悪を捏ね上げて地獄の窯で焼き上げたかのような雰囲気に耐えられず、ハル・リドナーが口を開いた。 「一つ、どうしても聞きたいことがあるのですが・・・ニア、彼に聞いてもいいですか?」 リドナーの真剣な表情と口調に、ニアは頷いて許可を出す。 「何だ、ハル・リドナー」 不機嫌そうな声をかけられてリドナーは息を呑んだが、やがて意を決したように尋ねた。 「ずっと、不思議に思っていたわ・・・どうやって貴方は、死神になったのか・・・」 無駄に黙っているよりかは、話しているほうが気が紛れる。 それならずっと疑問に思っていたことを聞いてみようと思ったのだろうリドナーの問いは、皆も同じことを考えていたのだろう。一斉にライトに視線が集まった。 「確かに私も、それは不思議に思っていました。 リュークも知らなかったそうですので、死神界でも人間が死神になるということは珍しいケースのようですね」 ニアがノートのページをめくる手を止めて話に加わると、ライトはしばらく考えていたようだが、やがてニヤリと笑みを浮かべた。 「キラ信者が死神になって、僕の指揮下に入られると困るから阻止したいってところかな。 心配する必要はないよ、人間が死神になるには、かなり難しい条件をクリアする必要があるからな」 「そうだろうな~。そんな面白い話があったら、死神界にあっという間に広まるはずだから」 リュークが面白そうに、クククと笑う。 簡単に人間が死神になれるなら、いつも娯楽に飢えている死神達がその話をしないとはまず考えられない。 現にライトが死神になった日、すぐに噂は死神界を駆け抜けて、彼の名前は全ての死神が知るところとなった。 ライトにしても死神の手駒がいてくれたほうが何かと便利なはずなので、キラ信者を何人でも死神にしていたはずである。 「なあ、俺にも教えろよライト。もうそろそろいいだろ?」 「・・・いいだろう、別に話しても構わない頃合だ。人間の死神化は、条件が揃えば阻止できないしね」 ライトは楽しそうに口の端を上げると、ニアが持っているデスノートを指差す。 「“デスノートの所有権を持っていること”・・・それがまず、第一の条件になる」 予想内の条件だったから、一同はさしたる反応を示さなかった。 「そして二つ目の条件。それは “デスノートを使って、合計で666年以上の寿命を奪うこと”」 「何だと?」 相沢が目を剥くが、ライトは淡々として続けた。 「リュークから、死神はどうやって生きているかは聞いているか?」 「ええ。適当な人間の名前をデスノートに書き込んで殺し、残りの寿命を貰って生きているんですよね」 ニアが答えると、ライトはそのとおりとニヤリと笑う。 例えば六十年生きる人間を二十歳で殺せば、その死神は四十年生きることが出来る。 そして第二の条件を満たすには、この六十年生きる予定の人間を二十歳で17人殺せばいいということである。 「別に驚くことじゃないだろう?死神にとって人間の寿命は食事みたいなものだ。 食事をすることを躊躇えば、人間は死ぬ。 つまりこの条件は、いかに躊躇わず人間の寿命が奪えるかを試しているんだよ」 理論としては納得がいくが、いかに死神達に人間(じぶん)達の命が軽視されているかを知り、ニア以外の捜査員達は悔しさに歯軋りした。 「ただし、死神の目の取引をすれば、666年は半分・・・333年でいいんだ。 自分の寿命を減らしてまで人を殺したいと思った訳だから、死神には相応しいと判断されるらしいね」 死神の目は、顔を見るだけでその人間を殺すための名前が解る。 それを得るためには自らの残りの寿命の半分を代償とするのだが、そうまでして人を殺したいという者は、確かに殺人を躊躇わない人間であろう。 今までのデスノート所有権を持つ人間で、この二つの条件を満たしているのはかなり多い・・・というより、ほぼ全員だろう。 死神になった夜神ライトは、リュークがライトの前に姿を現した時点で何十人と言う犯罪者を殺しており、充分その資格を満たしていた。 第二のキラ・弥ミサは死神の目の取引を二度もしたし、ライトの代理人としてライトが持っていなかった死神の目を使い、名前が解らない犯罪者を裁いたこともある。 さらに四葉キラ・火口 卿介が死んだ後起こった裁きをしていたのも彼女だから、333年で条件が満たされることもあり、問題なくクリアしているはずだ。 四葉キラ・火口 卿介も犯罪者裁きと平行して自社に邪魔な人間を殺し続けていたし、最後に死神の目の取引をしていたので彼もそうだ。 魅上 照もライトの代理人になって死神の目の取引をした上、犯罪者を裁き続けていた。 条件を満たしていないのは魅上を殺しただけ・・・それもその時は所有権を持っていない状態だったニア一人である。 「そして、三つ目の条件。 “この二つの条件を満たした状態で、自分に憑いている死神のノートに名前を書かれて殺されること”」 「何・・・?!」 意外な条件に、一同は絶句した。 「自分に憑いた死神に殺されることって・・・確かにライト君は、リュークのノートに名前を書かれて殺された・・・!!」 松田があのYB倉庫でのライトの壮絶な死に様を思い出して、呻くように言った。 『いいや、死ぬのはお前だ』 そう冷徹に言い放って、自分のデスノートにこれまで長い時間を共にしていたライトを、失望したという理由でリュークはいとも簡単に殺した。 「そう、確かに松田に撃たれた僕だけど、直接の死因はリュークのデスノートによる心臓麻痺。 僕だけが、この三番目の条件を図らずも満たしていたんだよ」 火口の死因はライトの時計に仕込んだデスノートの切れ端による心臓麻痺で、魅上の死因はニアが彼の名をデスノートに書き込んだせいだ。 (そして弥の死因は、出産によるショック死・・・もしかして、この男・・・!) 今は夏海に憑いているライトだが、この男が死んですぐに人間界に向かったとすれば、行き先はまだ生きていた弥ミサの元だろう。 その後彼女に指示してキラ教団をまとめさせ、人工授精によって第二子・弥キラを産ませ、そして自身のデスノートで殺したとすれば、彼女もまた死神になっている可能性がある。 (もしそうだとしたら、弥 キラの寿命は見えていたから、彼に憑いていない。 ならば弥 音遠のほうにいる可能性が高いが・・・) 戸籍上の名前がデスノートで殺せる名前とは限らない。 現にキラは、弥 月という戸籍上の名前で過ごしていたのだから、姉たる音遠もそうしているはずだ。 未だ音遠の顔を見ていないニアは、彼女の本名を知らない。 (この仮説が正しかったら、今私達が犠牲になって弥 キラと弥 夏海を殺したところで、弥 音遠は残る。 そして彼女に憑いている弥ミサが夜神ライトに死神としてのデスノートの所有権を譲れば、結局はこの男の勝ちだ) ニアの仮説は音遠に死神が憑いている以外はまさにそのとおりで、ほぼ同時刻にサラがこの事実を知っていたりするのだが、ニアはそれを知らない。 「そもそも何故、死神がデスノートを人間界に落とすか解るか?」 ニアの思考を中断させたライトの問いかけには、誰も答えない。 リュークですら、まさか自分個人の目的である“退屈しのぎ”が理由だとは思っていないからだ。 「死神はデスノートの数だけ存在する。 死神は不老だし、デスノートで人間の寿命を奪い続けている限りは基本的に不死だけど、ごく稀に死ぬことがある」 例としては人間に恋をして、その人間の寿命を延ばす目的でデスノートを使用したジェラスとレムが挙げられる。 それと人間の寿命を奪うことを忘れ、自身の寿命が来てしまう間抜けな死に方をする死神も存在する。 『どうやったら死神が死ぬんですか?』と聞いてライトが素直に答えるとは松田でさえ思わなかったため、誰も無駄な質問をしなかったので話は続けられた。 「その空席を埋めるために、死神にふさわしい人間かを試す・・・ということですか」 「そのとおり。死神を生み出せるのは死神大王だけだけど、死神を一体生み出すにはかなりの時間と手間がかかるらしい。 死神の数が減ればそれだけ人間の人口を調節するのが難しくなるから、一定の数の死神がどうしても必要になる。 だからせめて新たな死神を生み出す間だけでも、代わりが要るのさ」 「なるほど・・・つまり死んだ死神のデスノートを人間界に落とし、さっき貴方が言っていた条件を満たした人間を殺して死神にする、という訳ですね」 「ああ。そしてその試験官の役割をしているのが、人間にデスノートを譲渡した死神というわけだ」 死神界の掟に、こういうものがある。 デスノートを持っている限り、自分が死ぬまで元持ち主である死神が憑いてまわる。 人間界で使われるデスノートには、生きた死神の人間界で人間に使わせるという意志が始めになければならない。 死神は人間にデスノートを直接渡す場合、人間界単位で満6歳に満たない人間にノートを渡してはならない。 デスノートを持った人間を死神界にいる死神が殺す事はできない。 デスノートを持った人間を殺す目的で、死神が人間界に下り、その人間を殺す事もできない。 デスノートを持った人間を殺せるのは、人間界にデスノートを譲渡している死神だけである。 死神が人間界にデスノートを持ち込み人間に所有権を与えたものの、その人間が気に入らないなどの理由から、その人間を自分のノートで殺すことは一向に構わない。 人間界にデスノートを持ち込んだ死神はノートの最初の所有者が死んだ場合、自分のノートに所有者の名前を書き込まなければならない。 これらの掟は全て、いわば死神になれるかの適性試験のために作られたものである。 試験の最中に対象者から離れる試験官は、まずいない。 六歳以下ではまずろくな判断力はもちろん言語能力すらないので、ノートに正確に名前を書くことすら相手がワイミーズハウスにいる子供のような天才児でもない限り、難しいことだろう。 デスノートを持っている人間を他の死神が殺せないのも、試験の最中に他の死神に殺されましたではやる意味がない。 デスノートを譲渡した死神だけがその人間を殺せるのも、憑いた人間が666年の寿命を奪いきれていない間に死神失格と判断した時のためのものだ。 死神が所有者の名前を自分のデスノートに書き込む理由は、所有者が死神の手によらずして死んだ場合は“不合格”と死神大王に知らせるためのもの。 そして死神が憑いた人間が死神にふさわしいと判断すれば、三番目の条件を満たすために自分のノートに名前を書く、という訳である。 「じゃあつまり、俺は死神としてライトを推薦しちまったってことか?」 「推薦どころか、お前がとどめを刺して僕を死神にしたんだよ。 死神大王が二冊目のノートをお前に渡したのはお前に騙されたからだけど、お前がやったことは結果としてそうなるからな」 どのような事情であれ、リュークがライトにデスノートを手渡し、ライトが666年の寿命を人間から奪い、リュークによって殺されたのは変わらない事実である。 要するにリュークは無自覚ながら、ライトの死神の適性試験の試験官を見事に務め上げ、合格の判子を押していたのだ。 「そりゃあ、お前が死神にふさわしいどころか、もうとっくに立派な死神だとすら思ってたけどよ・・・」 本当に死神になるとは思わなかった。 「やっぱ、お前にデスノート渡して正解だったな。面白!」 楽しそうに笑うリュークを前に、捜査員達はただ呆然としていた。リュークには面白いだろうが、人間達にとっては面白いどころか最悪の話である。 まさかあの日、自分達がライトを追い詰めたことが、人間達にとって最悪の死神を生み出すことになってしまったなど、いったい誰が予測できただろう。 捜査員達が絶望の二字を噛み締めて立ち尽くしているのを嘲笑しながら、ライトは続けた。 「リュークがこの話を知らなかったのも、無理はない。 はるか昔は死神界と人間界はもっと深く繋がっていたんだけど、ある事情から死神大王が死神界と人間界とを遮断したからね。 結果として死神は人間界に関心をなくしてしまったから、今の腑抜けた死神達が出来上がってしまったわけだ」 死神は無闇に人間界に居てはならない。 人間界にいてよい条件は、 Ⅰ.自分が所持していたノートを人間に持たせている時。 Ⅱ.ノートを渡す人間を物色するのは、本来、死神界からするべきではあるが、82時間以内であれば、人間界に居て物色しても構わない。 Ⅲ.人間を殺す目的でより深くその個人を観察する場合も、82時間以内でその人間に憑いていれば人間界に居てもよい。 この掟が出来た理由は、頻繁に死神が人間界に降りていた時代、特定の人間に肩入れし、その人間の寿命を延ばす目的でデスノートを使い、そして命を落とした死神が少数ながらいたためである。 そのせいで空席が幾つも出来てしまい、それを埋めるために人間を死神にしてみたのだが、人間出身の死神は死神以上に人間達に肩入れしてしまうのは当たり前といえは当たり前。 ただでさえ死神になる条件を満たす人間は獄少数だったというのに、すぐに自分の家族や恋人などのためにデスノートを使ってしまうので、すぐに砂となって死んでしまった。 結局、空席が順調に埋まることはなかったのだ。 そこで死神大王は死神界と人間界を遮断し、死神界の穴から寿命を奪う人間を選ぶことにさせ、直接人間と関わらせないようにした。 結果として確かに、人間の寿命を取り忘れるような間抜けな死神以外が死ぬ事態はなくなったが、今度は死神達のやる気がなくなってしまい、日がな一日ゴロゴロして博打をして遊ぶだけとなってしまったのである。 その後、減った死神を補うため、死神大王は素直に正攻法で死神を生み出そうとした。 それにはデスノートが必要だったのだが、人間界に残されたままのノートが二冊あった。 それを回収したいと常々思っていたのだが、今の死神界にそれを任せられる者はおらず、とりあえず出来るだけの死神を新たに生み出した。 リュークが生まれたのはこの頃で、それ故に人間界にデスノートが回っていた理由も知らなかったのだ。 レムはおそらく、このことは知っていたと思う。 だからジェラスのデスノートをミサに手渡し、『もっと自分のために使え』と言ってノートの使用をそそのかした。 きっとジェラスの代わりに、死神になって欲しかったのだろう。 さらに年月が過ぎてもうノートの回収や死神界の浄化などを諦めていた頃、リュークが気まぐれでデスノートを落とし、それを拾った人間が死神すら驚くほどの勢いで人間達を殺し始めた。 あっさりと死神になる条件を満たしたその人間は、死神さえを殺せるほどの知性と度胸を備えており、無様な最期を遂げたとはいえ彼ほど人間界に精通し、頭の切れる者はいない。 リュークが彼を殺してくれたお陰で無事死神となった人間に、死神大王はデスノートの回収を任せたところ、あっという間に二冊のノートの回収に成功した上、新たにもう一人の死神を生み出してくれた。 ジェラスとレム、死んだ二人の死神の空席を埋めてくれた訳である。 「今の死神界の状況がいいと言えないのは、死神大王だって解っている。 今の死神達は、適当に目に付いた人間を殺して生きているんだからね。 元人間の僕としても、それは気に入らない。お前達だって、適当に目をつけられて殺されたら、浮かばれないだろ?」 「う・・・それは確かに・・・」 松田が呻くように同意したが、相沢に睨まれて口を閉じた。 しかし、相沢も通り魔のような死神にいつ目をつけられるかと思えば、いい気がしない。 他の者達も同感だったのか、小さく息を呑む。 「でも、死神達に人間を殺すなとは言えない。それはすなわち、死神に死ねと言っているも同然だからね。 だから僕は、代案を出した。 『死神に犯罪者、もしくは罪を犯そうとした人間だけを殺させればいい』とね」 「何だと?!」 相沢達が目を剥いて叫ぶと、ライトは驚くことは無いだろう?と笑みを浮かべた。 「何が不満なんだ? 死神は人間の寿命を貰って生きることが出来る。 死神大王は死神を効率的に働かせることが出来る。 人間達は犯罪者が死んで、治安のよくなった世界で生きることが出来る。 犯罪者以外は誰も迷惑を被らない・・いいことずくめじゃないか」 死神は死神界の穴から、自在に人間界を見下ろすことが可能である。 その中で、例えば銀行強盗をしようとしている人間を見つければその時点でノートに名前を書いて殺してしまえばいい。 犯罪者を殺すのと平行してそれを行えばもっと犯罪発生率は低くなり、治安もよくなるはずだ。 「もっとも、犯罪がなくなって死神が人間を殺さなくなったら、すぐに平和に慣れて犯罪者が出てくるだろう。 それをまた死神が殺す・・・堂々巡りだけど、それは人間の業ともいえるから、仕方がない。 死神の数と犯罪者の発生率とを照らし合わせれば、充分可能な計画だ」 「何と言う・・・ことを・・・!」 「だから、何が不満なんだ? ならお前達はこのまま死神を放置しておいて、自分の寿命を延ばすために適当に人間を殺してもいいとでも言うのか? どうせなら、世の害虫となっている奴らを殺して貰うほうがマシじゃないか」 イエスとは言えなかった。 だが、ノーとも言えない言葉だった。 「もともと僕一人がキラとして犯罪者を裁いていくには、限界があった。 死神になれたことは、本当に幸運だったよ。 怠惰な死神界を改革し、さらに効率よく人間界を浄化することが出来るのだからね。 つくづく、死神じゃないほうの神は僕の味方なんだって思うよ」 そう言って高らかに笑うライトに、リュークは半ば呆れたように言った。 「簡単に言うけど、他の死神がお前の言いなりになるとは思えないけどな。 今の状態に満足してる奴らのほうが多いぜ?」 「確かにね。でも、死神は掟には忠実に従うだろう? まずは、一年に何人かの犯罪者を殺すことを義務付けるだけでいいさ。 後はゆっくり、死神界を改革させて貰えばいい」 「げ~・・・でも、それはそれで面白そうだな」 正直ライトの思想には呆れているリュークだが、見ている分には実に面白いので、反対するようなことはしなかった。 それに、今の死神界が退屈極まりないのも事実だから、この男が改革すれば少しは面白い世界になるかもしれない。 もしそうなるというなら、今度は正真正銘の協力者になってもいいと、リュークは思った。 笑い合う死神達を前にして、相沢達はただ震えて歯を鳴らすばかりである。 死神も死ぬらしいが、その方法を聞いてもライトやリュークが答えるとは思えないし、それを調べる方法すら思いつかないのだ。 銃で撃とうも死なない存在となったライトを、いったいどうやって止めればよいというのか。 もはや言葉をなくした一同に、ライトは追い討ちをかけた。 「そうそう、もう一ついいことを教えておこう。 ニアが今そのデスノートで666年・・・いや、死神の目の取引をしたから333年の寿命を奪ってリュークに殺して貰ったとしても、死神にはなれないよ。 言い忘れたけど、死神になるための条件はあともう一つあって、それは“ デスノートの所有者が、死神になるための条件を知らないこと”だからね」 「!!」 「僕を死神界に追い返した後、自分も死神になって僕の邪魔をしようと考えたかもしれないけど、僕から死神になるための条件を聞いたことでそれも出来なくなった。 うかつな質問をした部下を恨むんだね、ニア」 ニアがかすかに眉をひそめたのを見て、ニアが少なからずその考えを持っていたことをライトは悟り、ニヤリと笑みを浮かべた。 「もう誰も僕を止めることは出来ないんだよ、ニア。 たとえ今、キラ達を殺したところで、ね・・・ん?」 そう言って嘲笑うライトの耳につけられたヘッドフォンに、息子からの通信が入った。 「やっと終わったよ、父さん」 淡々とした口調で、息子は父親に報告した。 「・・・レスターという男が持っていたデスノートと、金庫の中のデスノートは・・・全て燃やしたから」 その言葉と同時に、娘・ネオンの叫びが耳に鳴り響いた。 「何考えてんのよ、キラ!説明してよー!!」