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No.20025の一覧
[0] 【チラ裏から流出】終末の聖杯戦争 Fate [完結] (Dies irae×Fate/Stay night )[イル=ド=ガリア](2010/08/15 20:56)
[2] Fate 第一話 神に仕える悪と邪なる聖人[イル=ド=ガリア](2010/08/01 15:35)
[3] Fate 第二章 運命の夜[イル=ド=ガリア](2010/07/04 14:50)
[4] Fate 第三章 英雄と影[イル=ド=ガリア](2010/07/04 14:56)
[5] Fate 第四話 白銀の騎士と青い槍兵、そして炎の獅子[イル=ド=ガリア](2010/07/07 20:42)
[6] Fate 第五話 開幕[イル=ド=ガリア](2010/07/08 20:33)
[8] Fate 第六話 狂戦士と雪の少女[イル=ド=ガリア](2010/07/08 21:19)
[9] Fate 第七話 戻らぬ日常[イル=ド=ガリア](2010/07/09 17:19)
[12] Fate 第八話 情報戦[イル=ド=ガリア](2010/07/11 01:39)
[13] Fate 第九話 聖餐杯の策謀[イル=ド=ガリア](2010/08/01 15:45)
[14] Fate 第十話 絞首刑~VSライダー[イル=ド=ガリア](2010/07/12 11:50)
[15] Fate 第十一話 柳洞寺侵攻戦[イル=ド=ガリア](2010/07/13 12:43)
[16] Fate 第十二話 アーチャーの智略[イル=ド=ガリア](2010/07/14 09:49)
[17] Fate 第十三話 混戦[イル=ド=ガリア](2010/07/15 08:08)
[18] Fate 第十四話 鮮血神殿[イル=ド=ガリア](2010/07/16 07:32)
[19] Fate 第十五話 第二開放[イル=ド=ガリア](2010/08/08 20:03)
[20] Fate 第十六話 冬の娘~イリヤ[イル=ド=ガリア](2010/07/18 16:34)
[21] Fate 第十七話 第四次聖杯戦争の残滓[イル=ド=ガリア](2010/07/19 18:12)
[22] Fate 第十八話 戦火に潰える妄執の家[イル=ド=ガリア](2010/07/20 10:04)
[23] Fate 第十九話 中盤戦の戦略[イル=ド=ガリア](2010/07/21 15:19)
[24] Fate 第二十話 交錯する運命[イル=ド=ガリア](2010/07/22 07:45)
[25] Fate 第二十一話 戦略と謀略[イル=ド=ガリア](2010/07/24 12:06)
[26] Fate 第二十二話 英雄と戦争[イル=ド=ガリア](2010/07/24 12:05)
[27] Fate 第二十三話 弓兵と狂戦士[イル=ド=ガリア](2010/07/25 17:00)
[28] Fate 第二十四話 凛の奇策(暴走)[イル=ド=ガリア](2010/07/26 14:56)
[29] Fate 第二十五話 贋作者の戦い[イル=ド=ガリア](2010/07/27 15:33)
[30] Fate 第二十六話 約束された勝利の剣[イル=ド=ガリア](2010/07/28 10:38)
[31] Fate 第二十七話 絆の戦い・勝利すべき黄金の剣[イル=ド=ガリア](2010/07/29 10:23)
[32] Fate 第二十八話 槍さんと螢さんと[イル=ド=ガリア](2010/07/30 09:52)
[33] Fate 第二十九話 最後の憩い[イル=ド=ガリア](2010/07/31 10:01)
[35] Fate 第三十話  幕間劇[イル=ド=ガリア](2010/08/01 15:29)
[36] Fate 第三十一話 黄金の殲滅者[イル=ド=ガリア](2010/08/02 09:56)
[37] Fate 第三十二話 姉弟[イル=ド=ガリア](2010/08/03 07:25)
[38] Fate 第三十三話 遠坂邸の戦い[イル=ド=ガリア](2010/08/04 06:30)
[39] Fate 第三十四話 王と騎士[イル=ド=ガリア](2010/08/05 15:41)
[40] Fate 第三十五話 決戦の狼煙[イル=ド=ガリア](2010/08/06 10:01)
[41] Fate 第三十六話 破滅への鎮魂歌[イル=ド=ガリア](2010/08/06 07:28)
[42] Fate 第三十七話 呪いの魔槍[イル=ド=ガリア](2010/08/06 22:43)
[43] Fate 第三十八話 騎士の理ここに在り[イル=ド=ガリア](2010/08/07 16:29)
[44] Fate 第三十九話 終幕へ[イル=ド=ガリア](2010/08/08 17:36)
[45] Fate 第四十話 襲撃者[イル=ド=ガリア](2010/08/09 10:15)
[46] Fate 第四十一話 黄金聖餐杯[イル=ド=ガリア](2010/08/09 10:44)
[47] Fate 第四十二話 決戦は柳洞寺[イル=ド=ガリア](2010/08/09 20:52)
[48] Fate 第四十三話 煉獄の炎[イル=ド=ガリア](2010/08/10 09:41)
[49] Fate 第四十四話 剣の英霊[イル=ド=ガリア](2010/08/10 18:33)
[50] Fate 第四十五話 贋作と真作[イル=ド=ガリア](2010/08/11 07:37)
[51] Fate 第四十六話 黄金の代行[イル=ド=ガリア](2010/08/11 16:34)
[52] Fate 第四十七話 戦友の絆[イル=ド=ガリア](2010/08/11 21:42)
[53] Fate 第四十八話 散り逝く者の祈り[イル=ド=ガリア](2010/08/12 05:55)
[54] Fate 第四十九話 聖杯の奇蹟[イル=ド=ガリア](2010/08/12 16:35)
[55] Fate  True End[イル=ド=ガリア](2010/08/13 19:27)
[56] Fate Good End[イル=ド=ガリア](2010/08/13 21:49)
[57] ネタ集(リリなのDiesパロディ)[GDI](2011/11/28 21:33)
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[20025] Fate 第四十七話 戦友の絆
Name: イル=ド=ガリア◆ec80f898 ID:4c237944 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/08/11 21:42
Fate (最終日)


第四十七話    戦友の絆






 聖杯の下における戦いは、決着の時を迎えていた。


 衛宮士郎はなおも立っている。圧倒的に戦力差を前にしながら、諦めることなく戦い続け、まさに血と骨で抗っていた。


 だがしかし―――


 「ここまでか」


 魔力というものは有限であり、それが底をついた今、最早彼に戦う手段はない。


 そして、如何に聖剣の鞘といえど、持ち主の魔力回路そのものが焼き切れ、魔力の生成そのものが不可能となればその真価を発揮することは叶わない。これは決して死者を蘇らせる宝具ではなく、生者にこそ祝福を与えるものなのだ。


 「まだ、まだ」


 それでも、彼はまだ立ち上がる。既に干将・莫耶は十度以上の砕かれ、既に強化すらも不可能となった状態で、未だに傷一つ負っていない言峰綺礼に立ち向かう。



 その姿に、“なぜ”という疑念を持つ言峰綺礼ではない。それは必然であり、命がある以上、衛宮士郎が退くことなどありはしないのだ。


 だがしかし、これまで彼の鉄鎚の如き拳を防いでいた唯一の盾を失った今、最早士郎は死の運命に抗うことは出来ない。


 「最後だ――――父と同じく、我が拳にて逝くがいい」


 そして、最後の一撃が叩き込まれる。


 既に死に体である衛宮士郎にその一撃を防ぐ余力など残されているはずもなく。



 「Eins……!(一番)」


 瞬間―――この場にいる筈の無い、宝石の魔術師の声が響き渡った。



 「凛―――馬鹿な!!!」



 「くたばりなさい、腐れ神父!!!」


 そう、彼女はこの瞬間を待っていた。まさしく狙撃手の如く、魔力を殺し、息をひそめ、言峰綺礼が衛宮士郎に最後の一撃を繰り出すその瞬間を。



 言峰綺礼と戦うならば、衛宮士郎が前衛であり、遠坂凛は後衛。それは定められた布陣であり、どのような重傷を負おうとも、一度交わした約束を違える遠坂凛ではない。


 柳洞寺にやって来たのは三人ではない。そう思わせることこそが最大のブラフ、衛宮士郎が語った、“一人ではない”とはつまりそういうことである。


 彼の背後には、常に遠坂凛がいた。万が一にも言峰綺礼に彼女の存在を気付かせないために、彼は無謀な特攻を繰り返した。全ては、この時の布石のために。



 そして―――



 「はあああああああああああああああああああああああああああ!!!」



 「ぬう、おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」


 解放される宝石は最後に残された一番、十番はセイバーに、九、八、七、六はバーサーカーに、二番はアーチャーの強化に用い、聖餐杯には五番、四番、三番を使用した。


 この最後の宝石は、凛が士郎を治療する際に使用した宝石と最も近い特性を持つ。すなわち、炎、氷、風といった五大元素複合特性(アベレージ・ワン)たる彼女の属性のいずれかに特化させるのではなく、純粋な魔力のみを込め、汎用性を突き詰める。


 そして今、解放された魔弾は純粋なる魔力エネルギーとなって言峰綺礼に殺到する。彼に対して放つならばこれこそが最適であると兄弟弟子である凛は誰よりも理解していた。


 だがしかし――――



 「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」


 言峰綺礼は未だに顕在、腕に刻まれた令呪の魔力が残る黒鍵に注ぎこまれ、扇形の盾となりて魔弾の強襲を防ぎきる。


 「士郎!」


 「らああああああああああああああああああああああ!!!」


 されど、彼女等の攻撃はこれで終わりではない。士郎が凛を信じたように、凛もまた士郎を信じていた。


 いや、“待つことの勇気”に関してならば遠坂凛は衛宮士郎の遙か上を行く。


 彼女は見ていた。衛宮士郎の心臓が言峰綺礼に砕かれる様を。その肺が潰される様を、臓腑に黒鍵が突き刺さる光景を。


 それらを直視し、一度も目を逸らさず、凛はただ一度きりのチャンスを待ち続けた。その忍耐力足るや一体どれほどのものか想像もつかない。


 サーヴァントは、マスターと属性が近いものが呼ばれる。ならばやはり、遠坂凛が英霊エミヤを召喚したのは必然であり、赤の主従の絆は、決して誰にも敗れない。



 「衛宮士郎―――!!」

 そして、その光景に言峰綺礼は息を飲む。既に魔力の尽くを使いはたした衛宮士郎が駆けたところで意味などあるはずもなく―――




 「くたばりやがれええええええええええええええええええええええええええええええ!!」


 その手には、見覚えがある短剣が握られていた。




 アゾット剣




 凛が魔力を込め、士郎に託した切り札。それを、自身の身を砕かれながらも守り抜いた士郎の意地が、ここに勝利を呼び寄せる!



 「ぐ、おおおおおおお!!」


 凛の宝石魔術を防ぐために全霊を込めていた言峰綺礼にはその強襲を防ぐ手立てがない、心臓目がけて振り下ろされるその短剣に咄嗟に拳を叩き込むも、全身の力を利用せずにただ腕の力のみで放たれるそれは、渾身の勢いで突進してくる士郎の慣性力を殺しきれない。


 故に、


 「がっ!」


 軌道を心臓から僅かに逸らすのが限界であり、アゾット剣は言峰綺礼の肺に突き刺さる。


 だがそこまで、魔力の尽きた士郎にはアゾット剣に込められた魔力を解放する手段はなく――――




 「“laβt――――!!!」


 その本来の担い手である遠坂凛は、遠隔操作による起動を可能としていた。


 「Ein KOrper ist ein KOrper ――――!!(塵は塵に、灰は灰に)」


 そして、言峰綺礼の体内に突き刺さった刀身より、魔力の波動が迸り。




 瞬間――――全ての音が失われた。













 青い火花が、黒い神父服に咲き散った。

 胸に刺さった短剣と、そこから四方に散った火花。

 肉辺は跳ばず、出血らしき物もない。


 それでも――――ここに、戦いは終わっていた。






 「これが、お前の得た答えか――――――衛宮士郎」


 自分では打倒出来ない敵を前に、仲間と共に戦う。仲間を信じて戦い続ける。


 それは、衛宮切嗣がその人生において一度たりとて成しえなかったことであり、衛宮士郎が信じた勝利の形であった。


 正義の味方は孤高に非ず、仲間と共に戦うことが出来る。彼らの支えがあるからこそ、戦い続けることが出来る。



 「俺じゃない、俺達だ」

 そして、全ての想いを込めて士郎はそう宣言し。


 「アンタは私達を舐め過ぎた。知ってたでしょ、私は度し難いほどの負けず嫌いで、こいつは気の遠くなるほどの頑固者だって」

 そうして皮肉を飛ばす凛の姿は、どこか赤い英霊に似ていた。



 その姿に、言峰綺礼は苦笑いを禁じえない。


 よもや、この短剣で自分が貫かれる日が来ようとは。



 「最大の障害を排除し、衛宮切嗣と戦うために使ったこの短剣、これこそが私の敗因となるとは――――くくくく、人生とは、どこまでも上手く出来ているものらしい」



 衛宮切嗣と戦うために、遠坂時臣を殺した短剣が、今、衛宮士郎によって言峰綺礼に突き立てられ、遠坂凛によって解き放たれた。


 遠坂時臣が消え、衛宮切嗣が果てたこの冬木に、言峰綺礼のみが残り続け。そして、彼らの後継者達がそれを打倒した。


 イリヤスフィールを、救うために。



 「10年か――――まったく、私も衰えたものだ」


 そして、その身を炎が包み込む。


 10年前の煉獄の残り火を宿し、顕現させた炎の種火となったその肉体を、聖杯の炎が飲み込んでいく。





 それを、二人は最後まで見届けた。


 衛宮士郎は満身創痍、遠坂凛も癒えきっていない傷が再び開き、脇腹から血が流れている。


 それでも、二人は立って見届けた。肩を貸し合い、どこまでも共に在り続けながら。






 それが、言峰綺礼という男の最期であり――――



 10年前より続いた、ある戦争の終焉を示す、炎の葬送であった。











■■―――――――――――■■




 「Mein lieder Schwan (親愛なる白鳥よ)」


 「dies Horn,dies Schwert, den Ring sollst du ihm geben. (この角笛とこの剣と、指輪を彼に与えたまえ)」


 邪聖の声が響き渡る。

 これまでのような簡易的なものではなく、聖餐杯の真の渇望がここに顕現しようとしている。




 「う、おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」


 そして、荒れ狂う魔力に抗い、さらなる収束を行いながらも、騎士王は踏み込みのタイミングを探る。



 ≪まだ早い≫


 今、最も行ってはならないのは焦って飛び込むこと、敵に回避されることこそが最悪手なのだ。


 この一撃に全てを懸ける以上、失敗は許されない。敵が攻撃に全てを注ぎ込む瞬間でなければ、空間転移によって避けられる可能性が捨てきれない。


 そもそも、聖餐杯が正面から受けて立つ保証などどこにもないのだ。ヘラクレスやクーフーリンならば間違いなく受けて立つだろうが、この男の言葉ほど信用できないものはない。



「Dies Horn soll in Gefahr ihm Hilfe schenken, この角笛は危険に際して彼に救いをもたらし」


「in wildem Kampf dies Schwert ihm Sieg verleiht この剣は恐ろしい修羅場で勝利を与えるものなれど」



ならば、信頼すべきは己の勘と経験。

敵が放つ殺気を読み取り、最早行動の変更が不可能な段階まで敵が敵意を収束した瞬間、そこに全てを懸ける。




「doch bei dem Ringe soll er mein gedenken, この指輪はかつておまえを恥辱と苦しみから救い出した」


 そして、邪聖の詠唱は終極へと向かい。



「der einst auch dich aus Schmach und Not befreit! この私のことをゴットフリートが偲ぶよすがとなればいい」


今まさに、時がきた。




 「はあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」


 黄金の剣が輝き、星の光を集めたと称される『最後の幻想(ラストファンタズム)』がここに限界を超えて顕現する。



 「約束された――――――(エクス)」


 かつて、あらゆる戦場を制した騎士王が駆ける。


 まさしく彗星の如く輝きを放ち、風を超える神速でもって、聖餐杯を切り伏せんとその神威を解き放つ。





「Briah――――創造」


だが、その光景を前に、黄金の代行は微塵も臆さず、逆に己の勝利を確信していた。



 ああそうとも、この身は黄金の代行。しかし、どのような宝具を掠め盗ったところで、そも英雄王を恐れていない騎士王がその一撃を恐れる筈もない。


 ならば、間違いなく彼女はこちらの攻撃の発動の瞬間に踏み込み、我が創造もろとも切り伏せんとすることだろう。


 だが――――愚か



 貴女は知らない。



 真の黄金とは何たるかを。私が信仰する黄金とは、決して英雄王などではないのだと。






 「Vanaheimr ―――― 神世界へ (ヴァナヘイム) 」


 「勝利の剣――――――!!!(カリバー)」




 至高の黄金とは、人界に混じることなど許されない。


 あの存在が冬木にあれば、その瞬間にこの街は生贄の祭壇と化し、悉くがグラズヘイムに吸収される。


 それこそが絶対者、ならば、10年間も人に混じって生を謳歌していた英雄王如きなど比較するにも値しない。



 我は黄金の代行、クリストフ・ローエングリーン。


 その黄金とは、あのような紛い物では断じてなく―――





 振り下ろされる黄金の剣


 それが、聖餐杯の肉体に届き、その玉体を破壊する。その刹那―――




「Golden Schwan Lohengrin!!! 翔けよ黄金化する白鳥の騎士(ゴルデネシュヴァーン・ローエングリーン)」


 狂おしく望んだ変身の渇望


 ラインハルト・ハイドリヒが振るう、運命の神槍がここに顕現していた。





■■―――――――――――■■






 「――――」

 一瞬、その一瞬、騎士王の動きが停止する。


 第四次聖杯戦争において、征服王イスカンダルが示したランクEXの超宝具、“王の軍勢(アイオニオン・ヘタイロイ)”を目撃した瞬間以上の衝撃が、彼女の存在そのものを直撃した。



 ≪何だ≫


 勝負を決める瞬間において、それは致命的な隙。



 ≪何だこれは!≫


 だがそれでも、その疑問を抱かずにはいられない程の、圧倒的な神気をその槍は放っていた。




 そして、必殺必中の神槍は黄金の光を纏いながら疾走し―――



 騎士王の心臓を、その霊核ごと貫いていた。






 これはすなわち、戦術勝利に非ず、戦略的な勝利。


 聖餐杯は大型遊戯施設で行われたセイバー・アーチャー対バーサーカー戦を知り尽くしており、彼女の宝具、その威力、速度に至るまで全てを把握していた。


 対して、騎士王は最後まで聖餐杯の真の力を知らなかった。黒円卓の騎士でないものが“愛すべからざる光(メフィストフェレス)”の存在を知るはずもなく、戦闘の前段階、情報戦において彼女は致命的に出遅れていた。



 純粋に戦技で競うならば強いのは騎士王、また、もし彼女がクリストフ・ローエングリーンの創造を知っていたならば、やはり勝つのは彼女であっただろう。


 そしてもし、彼女の手元に“全て遠き理想郷(アヴァロン)”があれば、“翔けよ黄金化する白鳥の騎士(ゴルデネシュヴァーン・ローエングリーン)”を鞘でもって防ぎ、返す刀で無防備となった聖餐杯を切り伏せるという理想的なカウンターを実現させることすら可能となる。



 だが、彼女は知らなかった。こと戦場において相手の情報を知ることは最重要であり、“敵を知り、己を知れば百戦危うからず”とはその重要性を説く言葉である。








 故に――――





■■―――――――――――■■




 「鶴翼、不欠ヲ落ラズ (しんぎ、むけつにしてばんじゃく)」


 展開された“無限の剣製(アンリミテッド・ブレイドワークス)”において、迫りくる宝具を迎撃しながら英雄王に向かう英霊エミヤが、その勝利を確実とするのも当然の帰結である。



 英雄王はエミヤの切り札を知らず。エミヤは英雄王の手札を知り尽くしている。



「心技、泰山二至リ (ちから、やまをぬき)」


 「心技、黄河ヲ渡ル (つるぎ、みずをわかつ)」



 「馬鹿な、押されているだと、この我が!!」


 そして、心を驚愕に満たされた英雄王に、その一瞬の隙を突いて駆けるエミヤを止める手段はなく。



 「唯名、別天二納メ (せいめい、りきゅうにとどき)」



 「おのれ―――贋作者風情があああああああああああああああああ!!」


 その怒気も、効果を発揮することなく霧散し、





 「両雄、共二命ヲ別ツ――! (われら、ともにてんをいだかず)」



 刀身が通常の倍以上に巨大化し、鶴の羽ばたきの如く姿を変えた鶴翼の剣が、裂帛の気合と共に、英雄王へと振り下ろされた。


 その剣戟は、大英雄の“十二の試練”をも突破し、命を奪うだけの威力を秘めている。世界でただ一人、英霊エミヤのみが可能とする干将・莫耶の奥義。


 その一撃は、英雄王の纏う黄金の鎧すらも破壊し―――




 「私の勝ちだ――――英雄王」


 その背後から飛来したさらなる干将・莫耶が、英雄王の首を宙に飛ばしていた。








■■―――――――――――■■




 ―――聖餐杯は哂い続ける。


 「ははははははははは! おお、おお、素晴らしきかな! 黄金錬成陣、不死創造す生贄祭壇の果てに、我が夢、我が愛の形あり!!」


 邪聖の勝利を告げる声が、高らかに響き渡る。


 神槍をもって霊核を貫かれた騎士王は、既に現界を続けることすらままならず、そのまま聖杯へと飲み込まれていく。


 だがしかし、その間際。



 ≪見た≫



 騎士王は、消えゆく瞳である光景を捉えていた。


 聖餐杯の肩、そこに、ないはずのものがある。



 切り傷



 聖剣に凝縮されていた騎士王の魔力は、彼女の霊核が破壊された瞬間、今まで彼女の意志によって留められていたがため、行き場を無くし暴風となって巻き起こった。


 “約束された勝利の剣”を津波とするなら小波程度のものだが、その小波で、不滅を誇った筈の聖餐杯の身体に傷がついている。


 しかしそれもごく僅か。ただの人間でも指で押さえれば掻き消えるような些細な傷であり、本の先で皮膚を僅かに傷つけたようなものだ。聖餐杯自身も気づいていない。


 だが、聖餐杯に限ってそれはあり得ない。あれほど聖剣を叩き込んだにも関わらず不滅を誇った肉体が、あの程度の風で傷つくなど。



 ≪もしや――あの槍は≫



 その絶対的な防御力を、全て攻撃力に転換した結果ではないのか?



 ≪知らせねば≫


 これはまずい、初見ではあの黄金の槍に立ち向かう手段などありはしない。


 ならば、それを見た自分には、例え及ばずともせめて戦友にそれを知らせるという義務があるというのに。


 サーヴァントたるこの身が恨めしい、霊核を完全に破壊されればこの世に留まることは許されず、後は聖杯に飲まれるのみ。


 ≪アーチャー≫


 そして、悔やんでも悔やみきれぬ未練と共に、



 赤き騎士と共に戦場駆けた騎士王は、この世から完全に姿を消した。


===============================

 騎士王まさかの退場。ついでに慢心王も退場。英雄王状態なら勝てたのに…
 英雄王についてのアレコレは、トリファがそう思っているということです、そうすることによって、さらに聖餐杯は黄金とシンクロする、と言う感じで。
 次の更新は明日の昼頃を目指します。



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