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No.19908の一覧
[0] 真・恋姫†無双 一刀立身伝 (真・恋姫†無双)[篠塚リッツ](2016/05/08 03:17)
[1] 真・恋姫†無双 一刀立身伝  第二話 荀家逗留編①[篠塚リッツ](2014/10/10 05:48)
[2] 真・恋姫†無双 一刀立身伝  第三話 荀家逗留編②[篠塚リッツ](2014/10/10 05:50)
[3] 真・恋姫†無双 一刀立身伝  第四話 荀家逗留編③[篠塚リッツ](2014/10/10 05:50)
[4] 真・恋姫†無双 一刀立身伝  第五話 荀家逗留編④[篠塚リッツ](2014/10/10 05:50)
[5] 真・恋姫†無双 一刀立身伝  第六話 とある農村での厄介事編①[篠塚リッツ](2014/10/10 05:51)
[6] 真・恋姫†無双 一刀立身伝  第七話 とある農村での厄介事編②[篠塚リッツ](2014/10/10 05:51)
[7] 真・恋姫†無双 一刀立身伝  第八話 とある農村での厄介事編③[篠塚リッツ](2014/10/10 05:51)
[9] 真・恋姫†無双 一刀立身伝  第九話 とある農村での厄介事編④[篠塚リッツ](2014/10/10 05:51)
[10] 真・恋姫†無双 一刀立身伝  第十話 とある農村での厄介事編⑤[篠塚リッツ](2014/10/10 05:51)
[11] 真・恋姫†無双 一刀立身伝  第十一話 とある農村での厄介事編⑥[篠塚リッツ](2014/10/10 05:57)
[12] 真・恋姫†無双 一刀立身伝  第十二話 反菫卓連合軍編①[篠塚リッツ](2014/10/10 05:58)
[13] 真・恋姫†無双 一刀立身伝  第十三話 反菫卓連合軍編②[篠塚リッツ](2014/12/24 04:57)
[17] 真・恋姫†無双 一刀立身伝  第十四話 反菫卓連合軍編③[篠塚リッツ](2014/12/24 04:57)
[21] 真・恋姫†無双 一刀立身伝  第十五話 反菫卓連合軍編④[篠塚リッツ](2014/12/24 04:57)
[22] 真・恋姫†無双 一刀立身伝  第十六話 反菫卓連合軍編⑤[篠塚リッツ](2014/12/24 04:57)
[23] 真・恋姫†無双 一刀立身伝  第十七話 反菫卓連合軍編⑥[篠塚リッツ](2014/12/24 04:57)
[24] 真・恋姫†無双 一刀立身伝  第十八話 戦後処理編IN洛陽①[篠塚リッツ](2014/12/24 04:58)
[25] 真・恋姫†無双 一刀立身伝  第十九話 戦後処理編IN洛陽②[篠塚リッツ](2014/12/24 04:58)
[26] 真・恋姫†無双 一刀立身伝  第二十話 戦後処理編IN洛陽③[篠塚リッツ](2014/10/10 05:54)
[27] 真・恋姫†無双 一刀立身伝  第二十一話 戦後処理編IN洛陽④[篠塚リッツ](2014/12/24 04:58)
[28] 真・恋姫†無双 一刀立身伝  第二十二話 戦後処理編IN洛陽⑤[篠塚リッツ](2014/12/24 04:58)
[29] 真・恋姫†無双 一刀立身伝  第二十三話 戦後処理編IN洛陽⑥[篠塚リッツ](2014/12/24 04:59)
[30] 真・恋姫†無双 一刀立身伝  第二十四話 并州動乱編 下準備の巻①[篠塚リッツ](2014/12/24 04:59)
[31] 真・恋姫†無双 一刀立身伝  第二十五話 并州動乱編 下準備の巻②[篠塚リッツ](2014/12/24 04:59)
[32] 真・恋姫†無双 一刀立身伝  第二十六話 并州動乱編 下準備の巻③[篠塚リッツ](2014/12/24 04:59)
[33] 真・恋姫†無双 一刀立身伝  第二十七話 并州動乱編 下準備の巻④[篠塚リッツ](2014/12/24 04:59)
[34] 真・恋姫†無双 一刀立身伝  第二十八話 并州動乱編 下準備の巻⑤[篠塚リッツ](2014/12/24 04:59)
[35] 真・恋姫†無双 一刀立身伝  第二十九話 并州動乱編 下克上の巻①[篠塚リッツ](2014/12/24 05:00)
[36] 真・恋姫†無双 一刀立身伝  第三十話 并州動乱編 下克上の巻②[篠塚リッツ](2014/12/24 05:00)
[37] 真・恋姫†無双 一刀立身伝  第三十一話 并州動乱編 下克上の巻③[篠塚リッツ](2014/12/24 05:00)
[38] 真・恋姫†無双 一刀立身伝  第三十二話 并州平定編①[篠塚リッツ](2014/12/24 05:00)
[39] 真・恋姫†無双 一刀立身伝  第三十三話 并州平定編②[篠塚リッツ](2014/12/24 05:00)
[40] 真・恋姫†無双 一刀立身伝  第三十四話 并州平定編③[篠塚リッツ](2014/12/24 05:00)
[41] 真・恋姫†無双 一刀立身伝  第三十五話 并州平定編④[篠塚リッツ](2014/12/24 05:00)
[42] 真・恋姫†無双 一刀立身伝  第三十六話 劉備奔走編①[篠塚リッツ](2014/12/24 05:01)
[43] 真・恋姫†無双 一刀立身伝  第三十七話 劉備奔走編②[篠塚リッツ](2014/12/24 05:01)
[44] 真・恋姫†無双 一刀立身伝  第三十八話 劉備奔走編③[篠塚リッツ](2014/12/24 05:01)
[45] 真・恋姫†無双 一刀立身伝  第三十九話 并州会談編①[篠塚リッツ](2014/12/24 05:01)
[46] 真・恋姫†無双 一刀立身伝  第四十話 并州会談編②[篠塚リッツ](2015/03/07 04:17)
[47] 真・恋姫†無双 一刀立身伝  第四十一話 并州会談編③[篠塚リッツ](2015/04/04 01:26)
[48] 真・恋姫†無双 一刀立身伝  第四十二話 戦争の準備編①[篠塚リッツ](2015/06/13 08:41)
[49] こいつ誰!? と思った時のオリキャラ辞典[篠塚リッツ](2014/03/12 00:42)
[50] 一刀軍組織図(随時更新)[篠塚リッツ](2014/06/22 05:26)
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[19908] 真・恋姫†無双 一刀立身伝  第三十九話 并州会談編①
Name: 篠塚リッツ◆e86a50c0 ID:53a6c9be 前を表示する / 次を表示する
Date: 2014/12/24 05:01
「暇やなぁ……」

 一刀の命令を受け、州都を出発して三ヶ月が過ぎた。州境にある砦に到着するのに、三日ほど。神速の張遼隊の面目躍如といった速度で到着しても、部隊はずっと待機である。元々、戦になる可能性は低いというのが軍師たちの見立てだったが、実際に其の通りになってみると実に面白くない。

 一刀などは、何事もない方が良いと言うのだろうが、武人である霞はそれでは退屈なのだ。せめて好き放題馬を乗り回せればよいのだが、調練という名目であっても、大規模に軍を動かしてあちらに『挑発』と取られたら目も当てられない。霞の希望は戦いでも、一刀の命令は待機だ。さらに言えば部隊の規模は向こうの方が上で、しかもかなりの精兵である。

 ただ、騎馬部隊の錬度はそれ程でもない。馬の質もこちらに比べれば良くはない。その辺りは立地の差だろう。条件が悪いなりに調練を積んでいることは、見れば解った。一糸乱れぬ行軍は、指揮官の性格を現しているようである。見たことはおろかどんな人物なのかも良く解らないが、あちらの指揮官はおそらく堅物で間違いない。

 咥えていた草の葉を、ぺっと吐き出す。風に乗って舞う葉の向こうに、曹操軍の陣が見えた。兵数は約二万。精兵ばかりの彼らとにらみ合いだけで三ヶ月だ。暇で暇で仕方がない。報告書は逐次州都に挙げているが、特記なしと報告を続けるのもそろそろ限界である。何か行動を起こした方が良いかとやんわり聞いてみたが、筆頭軍師殿からは『余計なことは何もするな』というありがたい命令が書面で届いた。

 ここで戦をするのが得策ではないというのは、霞にも解っている。

 だが、何かしたいのだ。せめて一当たりくらいしないと、三ヶ月もここで暇を潰しただけで終わってしまう。いつか戦うかもしれない相手が、目の前にいるのだ。彼らを眺めるだけで国に帰すのは、勿体無いにも程があった。

「小姉さん。ここにいたんですか」

 物見台の梯子を、澪が上がってくる。澪は霞の隣に立つと、目を細めて曹操軍の陣を見た。

「今日も動きませんねぇ……」
「見た通りやな。演習でもせえへん? って手紙出したら、乗ってきてくれんかな」
「あぁ、それは良いですね。乗ってくれると、私も楽しいんですが……」

 馬と共に生きてきた澪も、じっとしているのが耐えられない性質である。柵を握る手には力を込められていた。あそこにいるのが精兵であるのは、少し見れば解る。そういう連中と戦ってみたいと思うのは、武人の性だった。

「まぁ無理やろな。あの陣を敷いた奴は、絶対頭の固い堅物やもん。稟ちゃんとかとは気が合いそうやけどな」
「小姉さんとは合わないでしょうねぇ……」
「一緒に遊ぶんやったら楽し思うけどなぁ」

 昔から四角四面に仕事を進めようとする人間とは合わなかった。それが必要というのは解るが、自分のすべきことではないと、忌避感すら覚えてしまうのである。衝突すると解っているのなら、必要以上に関わらない方が良い。霞直属の部隊が自由な気風になっているのは、責任者である霞の性格が色濃く現れた結果と言える。

「しっかし、三ヶ月もにらめっこすることになるとは思わんかったで。やるならやる、やらんならやらんでさっさと次いこーってことには、ならんもんやなぁ」
「あちらにもあちらの事情があるのでしょう。平和なのが一番と、一刀様なら言うと思います」

 私は戦いの方が気楽です、と澪は笑う。それについては霞も同意見だ。霞や澪だけでなく多くの兵がそう考えているのだろうが、そういう発言をすると、一刀は何とも言えない悲しそうな顔をするのである。

 人が死なない方が良いに決まっているというのが、一刀の持論だ。

 軟弱な、と思わないでもないが、そういう優しさのある人間の方が上に立つのに向いているということもある。自分が思われていると思うと、兵も不思議と力が出るものだ。文官と衝突しがちな兵の多い并州軍にあっても、一刀の人気は高い。

(一刀、元気かなぁ……)

 三ヶ月にらめっこを続けているということは、それだけ一刀の顔を見てないということでもある。演習で州都を空けることもままあったが、戦争の気配もなかった并州で、これだけ一刀と離れるのは久しぶりのことだった。戦に出た兵は多かれ少なかれ郷愁を覚えるものであるが、ここまで強く誰かを意識したのは初めてのことである。

 もしかしてこれが恋? と詮無い想像をしてみて、笑う。自問してみて理解できたが、そこまで甘いものではなさそうだった。ただ人間として、一刀のことが好きなのである。あの声を聞いて、馬鹿みたいに笑って、一緒に酒でも飲みたい。そういう欲求が、霞の中で大きくなっていた。

 その欲求を実現するためには、眼前に展開する部隊が邪魔である。曹操軍の精兵二万。相手にとって不足はない。おっとり刀で駆けつけた時とは違い、并州軍の主力騎馬隊も、遅れて到着した。戦力もしっかりと整いつつある。兵数としては劣るが、展開次第では勝ちも拾えるだろう。良い勝負ができると、霞には確信があった。

 本音を言えば今すぐにでも打ってでてやりたいが、敬愛する一刀と幹部連中の判断は『待機』である。あちらが突っかけてこない限り、こちらから戦を挑むことはできない。勢力全体として見た場合、まだまだ曹操軍の方が精強なのだ。時間を稼ぎたいのはこちらの方。せめて事態が好転し、明確に曹操軍が不利を背負うまではこちらから手を出すことはできない。

 ふぅ、と霞は大きく溜息をついた。

 政治的事情があるならば、こちらでは何もできない。どれだけ一刀との酒を焦がれても、待機しかできないのだった。大きく伸びをして、腰を鳴らす。今日も動きがないのであれば、物見に出てくる必要もない。身体がなまらないように調練でもしようと、梯子を降りようとした矢先、澪が声をあげた。

「小姉さん、動きがありました」

 囁くような澪の声に、霞はとって返して身を乗り出した。

 敵陣の中から騎馬が進み出ている。少数。僅かに五騎だ。その内一人には見覚えがあった。浅黒い肌に銀色の髪。敵陣の将軍で、名前を楽進といったはずだ。残り四人には、覚えがない。

 しかし、四人に囲まれるようにして歩く金髪の小さい影から、霞は目を離すことができなかった。只者ではないと、直感する。

「もしかしてもしかすると、あれって曹操やったりせぇへん?」
「やだなぁ、小姉さん。もしそうだとしたら大変じゃないですか」

 ははは、と澪は声を出して笑うが、顔は欠片も笑っていなかった。澪も目を細めた真剣な表情で、金髪の少女を見つめている。細かな雰囲気など理解できなくとも、敵陣の将軍が金髪の少女を守るようにしているのだから、将軍よりも身分が上なのは誰でも解る。

 それが戦う意思を見せずにこちらに向かっているのだから、こちらとしては手を出すこともできない。話がしたい、そういうことだろう。

 そしてこちらの陣営の責任者は自分である。重い決断ならば州都まで持ち帰る必要があるが、そうでないなら一人で処理をしなければならない。

(せやから頭の回る副官欲しい言っとるのになぁ……)

 責任者が丸投げとはいかないが、判断の参考にする意見を出してくれる人間は必要だった。并州軍にもそういう人間はいるにはいるが、叩き上げの彼らの経験に基づいた判断は要所で大いに参考になるものの、政治的な判断には向かない。霞が求めているのは、戦うこともできる軍師だった。

 軍師の中で言えば、灯里が一番良い線を行っている。剣の腕もそれなりで部隊の指揮もでき、方々に顔が利く彼女が副官としていてくれれば、いざという時頼もしい。軍団が再編された時、軍部に来ないかと期待していたのだが、彼女はねねと共に経済の建て直しという戦とはまた違った大きな使命を持って東奔西走することになった。残りの幹部は頭は回るが腕っ節については残念な人間ばかりである。

 後は……と、最有力候補に思い至ると、霞は何とも複雑な表情を浮かべた。

 霞の脳裏に思い浮かんだのは、張勲である。そこそこ腕が立ち、何より頭が回る。霞の求める条件にこれほど当てはまる人間もいないが、彼女は袁術軍の人間、それも実質的な運営を担っていた大幹部だった女だ。

 今更、先の戦でどちらにいたかには拘らない。今仰ぎ見ている一刀だって、元は孫呉の所属で霞とは敵同士だった。それは解っているのだが、袁術軍というだけで拒否反応が起こってしまうのは、当時董卓軍に参加していた将兵にとっては当然の反応と言えた。

 その張勲は既に、袁術と共に一刀の身内とされている。正式に縁組をした訳ではないが、対外的には同じことだった。代表の家族なのだから、どういう遺恨があっても雑に扱う訳にはいかない。それが有能ならば尚更である。

 張勲の有能さは、雛里からも伝え聞いていた。今は新兵の調練を見ているが、その指揮の冴えは目を見張るもので軍棋を指しても負けることがあるという。このまま何もなければ、遠征軍に回される可能性もあるということだ。

 今は曹操と事を構える寸前であるが、袁紹軍の方も放ってはおけない。袁家に所属していた張勲の情報は、前線に立つ人間には喉から手が出るほど欲しいものだ。

 しかし、それも裏切らなければという前提に立っての話である。一刀が信頼しているようだが、霞は彼女のことが信頼できないでいた。

 人間を見る目、という点においては一刀は中々信頼できるものがある。彼が言うのだから大丈夫なのだろうが……信頼とは行動によって生まれるものだ。まだ彼女がどういう人間か深く知らない霞には、やはり張勲を信頼することができない。自分が信頼できない人間を、部下に信頼させることはできない。引いては、張遼隊が張勲に不信を持つことに繋がる。戦場での不和は敗北に繋がり、敗北は人間を死に至らしめる。

 頭を振って、大きく息を吐く。

 霞は軍人である。正しい軍人は、上が決めた人事に抵抗しない。稟たちは憎き宦官たちとは違うのだ。足を引っ張るような人事だけは絶対にしないと、信頼することができる。

 いずれ一緒に戦うのならば、一度腹を割って話してみるしかない。どう転ぶにしても、それは未来のこと。霞はとりあえず、張勲について考えることをやめた。

 金髪の少女を中心とした集団はついに、物見台からもはっきりと顔が見える距離まで近づいていた。

 高貴な装いに、獲物は業物の大鎌。小兵ではあるが、近くで見てみるとその威圧感が凄まじい。間違いなく、あれが曹操だろう。

 面倒くさいことになるのを確信した霞だったが、その顔には笑みが浮かんでいた。

 膠着状態には飽き飽きしていたところだ。状況が動くならば、どんなものであれ歓迎しよう。

(これで、一刀に会えるかもなー)

 そうであれば、凄く楽しい。自分が州都に戻るような展開になれ、と霞は天に祈った。




 


















「見事です」

 いまだに踏ん張っている七乃隊を見て雛里が漏らしたのはそんな感想だった。七乃隊の相手をしているのは、元々并州にいた軍であるが、霞が并州軍実働部隊の最高責任者になって以来、寝ても覚めてもしごき続けてきた兵である。見所のある上位の兵は霞直属となったものの、そうでないからと言って弱兵ではない。戦場に出て良いと霞からゴーサインを貰った中に、惰弱な人間は一人もいなかった。帝国全土の水準で見ても、并州兵は精強な部類に入るだろう。

 その騎馬隊が手加減をしているとは言え、寡兵でもってその突撃を正面から受け止め、吹っ飛ばされても戦意を失わないばかりか、なお勝ちを拾おうとする彼らの姿勢は賞賛に値すると言って良い。新兵ならば尚更である。

「まさか三ヶ月でここまでになるとはね……」
「100人だけなのが心苦しくはあります。ですが、彼らならばもう従軍しても足手まといにはならないことでしょう」
「残りはどうだ?」
「いただいた時間があれば十二分に」

 七乃の笑みは、順調過ぎるほど順調と物語っていた。

 新兵の調練は、ただのステップだ。いずれはもっと責任のある地位に、というのは最初から考えていたことであるが、そうなると七乃の資質が問題になってくる。トップが何も考えていなかった頃の美羽なのに、袁術軍が軍団として機能していたのは、七乃の功績に寄るところが大きい。一角の才能があるのは解っていたことだが、新兵の調練という袁術軍ではやらなかっただろう仕事でも、彼女は非凡なところを見せてくれた。

 今は百人の中の代表が指揮しているが、これを七乃がやるともっと強くなるという。百人隊長としても非凡な力があると雛里が太鼓判を押した。前から、霞は頭が回ってそれなりに戦える副官が欲しいと言っていた。七乃なら十分、霞の眼鏡に叶うだろう。武官不足は元から問題となっていたこともある。できることならすぐにでも要望に応えたいところだが、まだまだ緊迫した状況がそれを許さなかった。

 七乃が霞と共に仕事をするようになるには、まだ時間がかかるだろう。それまではこの新兵達を、七乃直属として調練を続けるより他はない。二千人。将軍と呼ぶには少ないが、勢力に加入したばかりであることを考えると、破格の待遇である。

 実績を考えれば少なすぎるほどであるが、それは時間が解決してくれることだろう。彼女は優秀だ。それでも、実績を出し続ける必要がある。袁術軍出身というのは、それだけで敵を作る要素になりうる。人間性を信頼しているのは幹部だけ。仲間を増やしていくには、彼女自身の努力が必要になる。

 ちらと、七乃を見る。戦う百人を見つめる眼差しは真剣なものだ。

「七乃。あの百人について詳しく話せるか?」
「出身地、来歴まで全て。二千人全員、良く話をしました」
「百人選抜して、他の面子は不満に思ってたりしないか?」
「信賞必罰は世の倣いです。次こそは、と皆懸命に調練しています」
「良いことだ」

 どんな事情であれ、選ばれなかったということは禍根を残す。奮起していると言葉にするのは簡単だが、それを心の底から言うのは難しいものだ。七乃の言葉には、確信に満ちた響きがあった。少なくとも、七乃は選ばれなかった千九百人が前向きに頑張っていると信じているのである。良く話をしたというのは本当のことだろう。

 一刀自身、七乃と良く話した。袁術軍の筆頭幹部だったということで世間の評判は最悪だが、評判ほどに人間性は破綻していない。単に美羽のことが全てというだけである。それはそれで危険ではあるものの、美羽の安全が確保されている限り、彼女は極めて常識的に行動する。

 一刀の後ろでは、稟が直立不動で立っている。私が口を挟むべきことはありませんと顔に書いてあるが、それなりに長い付き合いだ。不機嫌なのは見れば解った。まだまだ七乃のことが信頼できないのだろう。気持ちは良く解る。幹部の中で、七乃について思うところがないのは一刀自身と、判断基準が使えるか使えないかの静里と、来るもの拒まずの灯里くらいのものである。

 袁術軍にいた。ただそれだけの理由で、大抵の人間が壁を作っている。それを責めることはできない。一刀も、特に理由がなければ七乃を色眼鏡で見ただろう。今、一刀が七乃を普通に受け入れることができているのは、孫呉の演出があったからだ。美羽も七乃も、今は家族である。家族を信頼しない理由はないし、七乃はその信頼に応えてくれている。家族が、仲間が結果を出してくれるのは、嬉しいものだ。

 どうだ、と稟を見ると彼女は不機嫌そうに視線を逸らした。結果を出したことは誰の目にも明らかだ。稟の求めるレベルに及んでいるのかは解らなくても、期待はずれと評価を下すことはできない。厳しい性格であるが、稟は仕事に私情を挟んだりはしない。七乃のことが嫌いでも、能力さえ確かであれば登用はしてくれる。そういう公正なところが、一刀は好きだった。


 結局、新兵百人は一人残らず叩きのめされてしまったが、誰一人途中で逃げ出すようなことはせず、その場に踏みとどまった。一刀は七乃と共に彼ら彼女らの元を訪れる。

 彼ら彼女らは都市部、農村部と生まれは様々であるが、ほとんどの人間は貧困層の出身で、男性もいれば女性もいる。年齢は若いと言って良いだろう。少年少女と呼べる年齢に見える者も、三割程度混じっていた。

 彼らにとって州牧というのは良くも悪くも雲の上の存在であり、会話はおろか顔も知らないという人間がほとんどだった。そもそも具体的にどういう仕事をしているのかすら知らない者もいたくらいである。ざっくりと、自分たちには及びもつかない偉い人という理解をしているだけ彼らの元に、その州牧が笑みを浮かべて現れ、さらに握手まで求めてくるのだから、新兵たちは驚くことも忘れて茫然自失となった。

 彼らの意識がはっきりとしない内に、一刀は彼ら一人一人と握手をし激励すると、その足で州庁に戻った。

 移動は馬車である。御者台には要が座り、周囲は近衛の兵で固めている。馬車にはまず一刀が乗り込み、次いで稟と雛里、席次が一番後ろの七乃は最後に乗り込み、一番下座に座る。四人が乗り込んだことを確認してから、要は馬に鞭を入れた。村を出て、もう青年と言っても良い年齢に差し掛かりつつあるが、要はいまだに足し算を間違える。武はかなりのものがあるのに、さっぱり出世できないのはその辺りに由来していた。

 要と同期の人間はそれなりに出世をし、文官に向いているものはそちらに異動するなど大いに活躍していたが、要だけが村を出た時からほとんど変わらぬポジションで働いている。人間、欲があるものだ。良い暮らしとかしたいと思わないのかと思わず聞いたことがあるが、彼は屈託なく笑いながら、今のままで良いと答えた。

 それが嬉しくもあり、少し寂しくもある。もう少し欲があっても良いと思うのだが……それは個人の問題だ。

 調練は州都の外周、街壁の外で行われている。州庁までは馬車で30分程度の道のりだ。一眠りするには十分な時間である。椅子に深く腰を下ろした一刀は、早速一眠りしようと瞳を閉じかけたその横面を、何やら固いものがこつん、と小突いた。

 差出人は、稟である。眼鏡の奥の凛々しい目が、仕事をしろと言っていた。稟にばれないように小さく溜息を吐いて、それを受け取る。

 紐を解いて、中身を見る。稟が渡してきたそれは、外務に関する資料だった。并州外の勢力の情勢が細かく記されている。中でも一番詳しく書かれているのは并州から見て東側、曹操の勢力圏についてだった。南下する黄巾の勢力を食い止めることに成功。今は奪われた土地の奪還を始めているという。元劉備勢力圏での抵抗は、驚くほどに少ないようだった。無理に抵抗するなというのが、最後まで残り戦った将軍、張飛の命令であるという。それを忠実に守った結果とも言えるが、単に戦っても勝ち目がないということに気づいたんだろう、というのが静里の弁だ。

 最後まで戦った人間と、途中で諦めた人間。その温度差は、外から見た時以上に大きいものである。実際に劉備軍について戦っていた人間も、続々と曹操の軍門に降っているという。戦うことで日々の糧を得ている人間にとって、頭から上がどうなっているなど大した違いではない。庶民にとって最も重要なのは平和で安定した生活が続くことである。それが行われるのならば、自分の上に立っているのが劉備でも曹操でもどっちでも良いのだ。

 曹操は厳正ではあるが、民に負担を強いたりしないと聞いている。劉備の統治よりは窮屈を覚えるかもしれないが、時間が経てば民はそれにも慣れるだろう。

 黄巾により打撃を受けた軍は、急速に再編が進んでいるという。劉備軍の兵を吸収している訳だが、その指揮に当たっているのがあの関羽という情報が入った。これについてはまだ確認中らしいが、静里の勘では『間違いない』とのことだった。劉備軍の中でも殊更劉備に心酔していた人間と聞いている。それがどうして曹操に降り、あまつさえ、兵として戦っているのか一刀には解らなかったが、首を刎ねられたと報告を受けるよりはマシと考えることにした。

 当面、彼女は北部の黄巾と戦う予定らしい。仮にこのまま曹操軍と一戦交えるようなことになっても、かの美髪公と戦う何てことにはならないはずだ。

 一通り木簡を読み終えて一息吐くと、こちらをじっと見つめていたらしい雛里と目があった。見つめ返すと彼女は慌てて目を逸らし、帽子で顔を隠してしまう。相変わらず初々しい反応が可愛らしい。膝の上にでも乗せて思う存分撫で回したいところであるが、仕事モードの稟が隣にいるこの状況で自分の欲望に正直になったらどういうことになるのか、学習しない一刀ではなかった。

 木簡を紐で結び、稟に返すと入れ代わりに別の木簡が差し出されてくる。次は幽州か冀州か。身構える一刀の耳に、御者台の方から戸を叩く音が聞こえた。

「団長、早馬みたいですよ」

 その声に、七乃が馬車内を横切り、歩道側の窓を開けた。外の風が流れ込むと同時に、馬車とは別の馬の足音が聞こえてくる。

「久しぶりだな、大将」

 早馬に乗っていたのは、静里だった。数日前に州都を出て、それ以来の再会である。部下に動きがあったと出て行ったはずだが、本人が早馬で戻ってくるとは相当のことなのだろう。表情を引き締める一刀に、静里は端的に応えた。

「東の砦に曹操が来た。護衛は四名。その内一人は遠征軍を率いていた楽進だ。今は霞が200を率いてこっちに向かってる。大将と会談がしたいらしい」

 本当か、とは誰も聞かなかった。静里は情報部門の責任者である。その本人が、態々早馬に乗って来たのだから、これはそういう確度の話なのだ。

 詳しいことは州庁で話す、と静里の馬は先に道を行く。馬車の中には沈黙が降りた。曹操と会談。願ってもない話だ。黄巾が曹操軍を攻めたことで今すぐ戦ということはなくなったが、御大将自ら足を運んできたということは、安全に更に保証が付いたと考えることもできる。和平、停戦の話であるならば兵力の劣る一刀軍としては、これを受けない理由はないが――

「孫呉がどう出るか、ということになりますね」

 七乃が静かに、口を開く。稟がギロリと睨みやるが、何処吹く風とばかりに七乃は涼しい顔をしていた。幹部がいる場で、自己主張するのは珍しい。元より、袁術軍にあって孫呉と戦った七乃は、この場で最も相対する側として、孫呉を知っている人間である。共に戦ったことしかない一刀たちにとって、それは得ることのできない感覚だ。

 視点が違えば、別の意見もあるかもしれない。

 七乃の考えが聞きたい。そういう意図を込めて、一刀は二人の軍師を見た。雛里は小さく頷き、稟は不承不承といった様子で窓の外に視線をやった。話してよし、という軍師二人の態度を受けて、一刀は七乃を促す。

「孫策さんは大望をお持ちの方です。いずれは全ての勢力を平らげて、頂点に立とうと考えておいででしょう。孫呉にとって、曹操軍がここで一息吐くことは、少々都合がよろしくありません。できることなら二面、三面で攻め立てて、立て直す隙を与えたくないはずです」
「勝敗はともかくとして、俺達には戦って欲しいって訳だな」
「負ける前提で話を進めていることでしょう。むしろ一刀様に勝たれると、力関係がより混沌としてきます。孫呉の後ろ盾なしに、曹操軍とも渡り合えるようなことになれば、孫呉と同盟を維持する旨みはなくなりますからね」

 ふむ、と一刀は息を吐く。確かに同盟を組むならば遠く離れた孫呉よりも、隣の曹操の方が都合が良い。孫呉と組んで曹操と戦うよりは、曹操と組んで孫呉と戦った方が、生き残れる確率は高いようにも思える。

 ただそれは、今から誰と同盟を組もうと考える余裕があった場合である。既に客将という名目で手練が二人も送り込まれている以上、ここで違う方向に舵を切るという選択肢はない。相手への配慮を考えるならば、仮に曹操から申し出があったとしても、孫呉と同等の同盟を組むことはできない。

 流石にこちらの状況は、曹操も解っているだろう。その上で、離間工作を行うことは十分に考えられる。実際に同盟を組むことはなくても、孫呉が組むかも、と疑心暗鬼になれば、それで良いのだ。

「西進の軍は約二万。并州全体に圧をかけるには聊か心元ない。では補足されないような確度から兵が攻めてくるかと言えば、それも考え難い。今は黄巾の対応で精一杯のはず。万全の策と少数の精鋭でもって、仮に并州を落とすことができたとしても、一刀様に喧嘩を売るということは、すなわち、孫呉との開戦です。流石に曹操さんでも後が続きません。孫呉も戦を終えた後ではありますが、今なお戦っている曹操軍と比べれば、まだまだ余裕がありますからね」
「じゃあ、曹操殿は何をしに来るんだと思う?」
「停戦、という名の不可侵の強要が建前。本音は一刀様の値踏みと言ったところでしょうか?」
「俺の? あの曹操殿が?」

 一刀からすればそれは、至極当然の疑問だった。曹操と言えば、かじった程度した三国志を知らない人間でも知っている程のビッグネーム。武将が女の子になった世界とは言え、その実力は一刀の耳にも届いている。そんな大人物が自分に興味を持つとはどうしても思えないのだが、仲間三人からの反応は一刀に追随するものではなかった。七乃は呆れ、雛里は口をぽかんと開けて驚き、稟は冷ややかな目でこちらを見つめている。

「……その身一つで立ち上がった人間は普通、三年少々で州牧になったりはしませんよ? 今や一刀様は立身出世の体現者ですから」
「そう言われると、自分が凄い人間のように思えてくるから不思議だ」
「そこで増長しないのは、一刀殿の美徳の一つと言えるでしょう。帝国内の実力者を上から順に並べた場合、一刀殿はまだ上位十指にも入らないでしょうし」
「参考までに聞くけど、上位五指はどんなものかな」
「袁紹、曹操、孫策、馬騰、公孫賛。順番としてはこんなものでしょう。これに『いまだ行方不明』の董卓が続くと考えて良いと思いますが、袁紹軍と公孫賛軍の戦の推移により、近く順位が入れ替わるはずです」

 負ける公算の高い公孫賛が脱落し、それに疲弊した袁紹も順位を落とすということである。袁紹がどこまで落ちるか解らないが、そうなった時存在感を増すのは二位、三位の曹操と孫策、そして中央の争いにはほとんど関わっていない馬騰である。

 馬騰は勢力圏が帝国西部ということもあり、東部の面々との軍事的な交流はほとんどない。勢力圏が近い董卓とは知らない仲ではないらしいが、その董卓が中央での勢いを失っている今、馬騰は帝国西部の顔役と言っても良い。

 東部は今荒れているが、その影響を受けていないのも大きい。手付かずの戦力がいずれ中央に押し寄せてきたら、と危惧しているのは決して少数ではない。

 ただ、あちらはあちらで異民族との問題を抱えている。并州で良好な関係を築けていることが、全体としてみたら稀有なことなのだ。領土的な野心を持っていたとしても、今すぐ実行に移せる訳ではない。

「あちらは五名ですから、こちらがそれ以上の人数を会談に同席させる訳にはいきません。こちらが出せるのは最大でも五人ですが、曹操殿が連れているのは全て武官です。我々が全員文官で固めるのも、それはそれで角が立ちます」
「夏侯淵殿は切れ者だって聞くけど?」
「それでも武官は武官です。そして、それを逆手に取ってくることも考えられます。彼女らは曹操殿の護衛です。重要な会談の場に護衛をぞろぞろ連れ歩くのも、あまり格好の良いものではありませんからね」

 それは一刀にも解った。護衛を連れるということは危険を認識しているということで、極端な話をすれば『お前達を信用していない』と宣言するに等しい。敵対勢力ではないにしても、自分の勢力圏の外にたった五人でやってきたのだ。身の危険を感じるのも当然だが、曹操はそれを承知の上でやってきた訳だ。重要な会談の場所でも護衛を外さないというのは仕方のないこと、という理解を得られるとしても、それは『曹操という人間は小心である』という風聞に繋がりかねない。

 たった五人で乗り込んできたのだ。曹操の立場、性格からして、見得は最後まで張り通す必要がある。つまり――

「最悪、会談は一対一で行われます。連れて行けるのは、多くても一人です」
「その場合、こっちは軍師を連れて行っても良いのかな?」
「武官を連れて行くのが無難でしょう。お互い一人の護衛ということで、体裁も整いますし……」

 答える稟の表情は優れない。重要な場面で自分が同席できないのが歯痒いのだ。稟も剣を使えない訳ではない。かの『常山の昇り竜』殿から手ほどきを受けた腕は中々のものであるが、それは文官にしてはという程度である。将軍級の面々とは比べるべくもないし、一刀よりも大分弱い。

「雛里、警護はどうなる?」
「どこで会談をするかにも寄りますが、州庁か、そうでなければ一刀さんのお屋敷ということになるでしょう。どちらも静里さんにお願いして構造は徹底的に調べましたから、こちらが把握できていない隠し通路などの類はありません。周囲を厳重に固めれば問題ないと思います」
「あまり疑いたくはないけど、孫呉はどうだろう」
「手を出す可能性は低いと思います。孫呉が望んでいるのはここで軽く一当たりすることで、本格的に戦を始めることではありません。ここで曹操殿に何かあって、更にそれが孫呉の差し金と解ったら、曹操軍が後に引けなくなります」
「曹操殿を人質にとるとか」
「曹操殿がこっそりおいでならまだしも、霞さんたちが護衛してこちらに向かっている訳ですから、どういう目的で何処にいるのか、多くの人が知っています。ここで正体不明の勢力が現れて曹操殿をさらったとしても、誰もが私達か、孫呉の関与を疑うことでしょう。それでは評判を落とすだけで意味がありません」
「やるなら俺達でも孫呉でもない第三勢力ってことだな」

 并州を完全に統一したとは言えないが、州都から東の砦までは最も目が行き届いている地域と言って良い。絶対とは言えないまでも、この辺りは并州で最も安全だ。霞が東の砦から戻ってきて、更に州都には恋を始め精鋭が揃っている。孫呉に裏切られる心配がないならば、思春や呂蒙の部隊も使うことができる。これを突破できる勢力はいない……と思いたい。

 なれば、連れて行く一人を誰にするかである。

 視線を彷徨わせながら、一刀は思う。ここでのことは曹魏に伝わり、筆頭軍師の荀彧の耳にも入る。世間での評判がどうとか、曹操が自分をどう思うか。考えるべきことは色々あるが、一刀が考えたのは荀彧のことだった。平凡な手を打てば笑われる。考えて手を打てば、小賢しいと思われる。だからせめて意表を突いてやりたい。荀彧も、曹操も想定していない手を打って、あっと言わせてやりたい。

 その希望を叶えた上で、曹操に合わせてこちらも見得を張り、かつ会談を成功させる必要がある。意表を突けて、文官ではなく、護衛という名目を通すことができて、会談の場に連れて来ても相手を納得させることができるだけの立場にある人間。

 そこまで考えたところで、一刀は視線を上げた。対面の席では、七乃がにこにこと微笑んでいる。以心伝心。そんな言葉が脳裏に浮かんだ。




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