『モニカ』が入室しました
・モニカ 「はい、こんばんわ。なんと今日は、私が一番です」
・モニカ 「アーニャは。……あれ、まだですか」
・モニカ 「…………」
・モニカ 「……………………」
・モニカ 「…………あのー。もしもーし?」
・モニカ 「…………」
・モニカ 「……………………」
・モニカ 「一人で呟いているのって、なんかアレですねー」
・モニカ 「えーと、それじゃあ誰か来るまで、私はぼーっとしてるので、来たら声、掛けてください」
コードギアス 円卓のルルーシュ 第一章『エリア11』編 その⑦
人型機動兵器が現実化する、という考えは、ほんの十年前までは夢物語だった。
考えてみれば当然だが、手間暇が違う。二足歩行の機械兵を一から生み出す時間。従来の、例えば戦車や戦闘機といった兵器を改造して、大きな力を持つ戦略兵器を生みだす時間。どちらが短く簡単か、と言えば、それは後者に決まっている。
開発され始めた当時と言えば、皇帝シャルルによるエリア支配が始まった頃。言い換えれば、戦争を吹っ掛け始めた時期だ。これは歴史学者が時折、語る事だが――――彼の存在が無かったならば、戦争による軍需産業の活性化は起こらず、KMFという新兵器が登場する事も無かった、と言われている。
つまりそれだけ、KMFという兵器は、兵器の歴史や常識から見れば異端なのだ。
何故、こんな兵器が生み出されたのだろう? と思わず、一度は誰でも考えてしまうくらいに。
NightMare Frame(ナイトメアフレーム)。
七年前の第二次太平洋戦争において、神聖ブリタニア帝国が初めて戦場に投入して以来、戦場を塗り替え、世界を席巻し続けている人型機動兵器。
その名の由来は、『フレーム』と呼ばれる大型衛生重機と、『騎士の馬(ナイトメア)』と呼ばれる軍事兵器。この二つが組み合わさって出来た物だ。
この内、『フレーム』を提唱し、実用化に漕ぎ着けたのが、アッシュフォード公爵家。
元々、彼らの研究コンセプトは、民間用の大型工業機械だった。人間が操縦して扱う、労働力を補うためのロボットだ。その為、骨組みや筋肉、FCC(重心制御機能)を初めとする「機体を人間のように動かす技術」には、今尚も大きなアドバンテージを有している。
機能に様々なバリエーションを持たせたKMFは、今や用途は軍事に留まらない。警察、工場、運送、各種調査、その他多くの現場で人間に活用されている。
しかし、その一方で。
『ナイトメア』と呼ばれる軍事兵器が、一体、誰に提唱されたのかを知る者。
『ナイトメア』を兵器の概念として構想し、アッシュフォードとの提携によりKMFを世界に誕生させたのは……実はたった数人の人間達だった、という事実もまた、殆ど表に出ていなかった。
「お邪魔します」
と一声を懸けて、モニカ・クルシェフスキーは格納庫に入る。
途端、騒がしい金属音と、何かの機械が動く駆動音が耳に響いて来た。相変わらず、KMFに携わる現場は騒がしい。電子音も引っ切り無しに鳴り響いている。けれども嫌いではなかった。
こうして駆動音を耳にしていると、昔に戻った錯覚すらする。
いや、特派の持つ空気自体が、自分の慣れ親しんだ空気に似ているからかもしれない。
「……あら」
そして大きく、感慨深く息を吸い込んだ所で、KMFの顔が、自分の頭の上に出ている事に気が付いた。格納庫に整備音が響いているのだから、機体が入っていて当然だ。
KMFは小さくとも全長4メートル以上。当然、モニカが下から見上げる格好になる。置かれている場所が出入口に近く、接近しているせいで、全体像を見るのは、少し難しい。
モニカに見えるのは、白い頭だけ。見慣れない形だ。好奇心を刺激されるが、機材も多くて視線が塞がれている。何処か、良い場所は無いだろうか。
不審者の如く、きょろきょろ、と周囲を見回していると、声をかけられた。
「……あ、もしや、モニカ」
声の方向に振り替えると、機体近くに居た一人の女性が、歩いてくる所だった。
橙の作業服に映える、短い黒い髪。雰囲気は穏やかな、けれども勝気で芯の強そうな印象。美少女と言うには大人びているし、美女と言うには若い。そんな人物だ。
機体を弄っていたせいか、服の所々が汚れているが、間違いない。
その顔に、驚きが浮かぶのを見て、駆け寄って。
「エル……? わあ、久しぶり! 元気にしてた?」
思わず、近寄って抱きしめる――――寸前に。身をひょい、と回避された。
技術者の筈なのに、意外と素早い動きだった。
「うん。元気だったけど。……ちょい危ないって。ラウンズの制服、汚れちゃうでしょ」
モニカには、可愛い相手を見ると、つい思わず抱きしめるという困った癖がある。うっかりと制服を汚してしまうこともしばしばだ。
目の前の相手は、その悪癖を十分に理解していた。
「あ。そうね。どうしよ」
「んー。……えーと、ちょっと待って?」
御免、と軽く合図をして、彼女は近場の内線電話に手を伸ばす。
電話の相手は、直ぐに出た。
「あ、エルです主任。お客さんが来ました。モニカです。応対お願いしますね」
実に軽い口調だ。特派内では階級が重視されない、と聞いたが、本当にここまでルーズで良いのだろうか。毎度のことながら、不安に感じてしまう。
モニカは気にしないが、その態度で外に出ると、色々と不味いのではないだろうか。
「あ、機体の調整作業ですか? ええ。あの新入り君が張り切っているお陰で、結構、順調です。――――あー、はい。分かりました」
それじゃ、後で。と言葉を残して、彼女は電話を切る。
「上、来て良いってさ。私も休憩して良い、って許可出たし、案内するよ」
そう言って、働く大人のカッコイイ笑顔を、マリエル・ラビエは浮かべた。
マリエル・ラビエ。
特別派遣嚮導技術部の、整備責任者。
“あの”レナルド・ラビエの娘にして、世界で最もKMFに詳しい人間の一人。
そしてモニカ・クルシェフスキーの大事な友人だ。
彼女への親愛の証として、エル、と呼んでいる。
特派は、相変わらず、何かと変な部署だった。
『あー。これはこれは、クルシェフスキー卿。如何いった御用で? 会う予定も無かったですよね?』
『いえ。ルルーシュに頼まれた、機体状況の確認をしようと』
『そうですかー。それじゃ、ミストレスの整備報告書だけ、後でセシル君がお渡しします。……あ、スイマセン、もう良いです? 僕、ランスロットの実験、行きたいんで』
『……ええ。はい、どうぞ』
応接室に通されて早々の、ロイド・アスプルンドとの適当な会話を思い出して、モニカは溜め息を吐く。
全くあの主任。ナイトメア馬鹿だとは思ってはいたが、今日は普段以上に上の空だった。ルルーシュからの推薦で新しいデヴァイサーを入手した、とか言っていたが、よっぽど良い数字が出たらしい。
これで自分だから良いものの、プライドの高い貴族なら腹を立てて怒りだす。絶対。
肩にかかる疲労感を押し殺して、前を見る。
格納庫には、見慣れない純白の機体が鎮座していた。
「これが、第七世代ナイトメアフレーム、か……」
案内された特派の応接間から、機体の全体像を眺める事が出来た。格納庫の、殆ど隣に造られた応接室は、片面がガラス張り。ハンガーで整備中の機体を、観察が可能になっている。
応接室から格納庫の様子を伺える。これは、特派の客人には受けが良いらしい。だが。
『専用の格納庫を各地に置く資金は無駄だよね。大型トラックの荷台を格納庫に改造して、キャンピングカーみたいに運用すれば良いんじゃない? 余った資金は研究に回せるし。現場に急行できるし』
……この発言を聞いた時、頭を抱えた物だ。何か違う。何が違うのかは上手く言えないが、兎に角、ズレている事は間違いない。
移動式格納庫で、なんで十分な整備が可能になるんだ、とか。衣食住を一体どうやって賄うんだ、とか。幾らなんでも研究に全てをかけ過ぎだろう。
この特派の人間は、腕も頭も確かだが、性格が酔狂すぎるのだ。まともな性格の持ち主など、副主任のセシル・クルーミーだけだ。
気を取り直して、見慣れない機体を、今度こそじっくりと眺める。
「……腕は、本当に良いんだけどね」
本当に、技術者としては超一流だ。この特派という部署は。機体を眺めて、そうしみじみ思った。
基本配色は白。その各所に黄色で装飾が施された、騎士を彷彿とさせる立ち姿。本来は頭部に収納されるファクトスフィアを胸部に持ってきたからか、従来よりも顔が小さく頭身のバランスが良い。より人型に近い、細身でシャープさがある。
腕の部分が少し厚みを帯びているのは、防御シールドのブレイズルミナスだろう。よく見れば、シールドの邪魔にならないように、手の甲に小型ハーケンがあった。細部まで丁寧な仕上がりだ。腰元と合わせての四つのハーケン。これが、基本武装っぽい。
心配なのは搭乗者だ。背中からデヴァイサー用のブロックが競り出ているが、ぱっと見、安全性が、凄く怪しい。明らかに通常規格と違うのだ。
「……アレ、脱出装置、あるの?」
「いや、ないよ」
室内に来ていたエルに、尋ねてみる。モニカが来た事で、彼女は作業を一段落させていた。
気心知れた相手の為か、態度が大雑把だ。作業服の上着を腰に巻き付けた、薄手のシャツという楽な格好。下に着ていたのだろう。自分よりも豊かな胸部装甲が、目立って競り出ている。
「機体性能を追求して、予定されていたスペックを引き出せるように調整すると、脱出装置を搭載出来なくなったの」
とろとろとろ、と応接室に設置されていたメーカーからコーヒーを注ぐ。
徹夜に備えた濃いコーヒーは、数少ない特派の消耗品だ。彼女は、真っ黒な液体を一口飲んで。
「父さんの図面を、主任が読んで、私が調整。材料確保だの作業効率だの計画だの、面倒な事はセシルさん任せだったんだけどね。図面通りに引けば、図面通りの出力が出る、って事で完璧を追求したら――――なんか、乗員に全く優しくない機体が出来ちゃった」
できちゃった、とお茶目に言ったが、正直、軽い口調で言われても困る内容だった。
無用の長物になってしまっては、困るのではないだろうか。
「……運用できるの?」
「出来るよ? 大幅な軽量に成功したから、運動性が高いし、フロートシステムを搭載すれば飛行も可能だし。武装は少ないけど汎用武器は後付けできる。ただ、やっぱり防御力には難があるかな。それで脱出装置が付いてないから、不測の事態が有れば死ねる。だから、まあ……よっぽどの人じゃないと、乗ろうとはしない。図面には、『当たらなければどうという事は無い!』って、大文字で書いてあったけどね」
モニカの隣に並んで、コーヒーを片手に、そんな事を言う。
「で、実際、図面の通りに造ったら、まんまの機体になった。父さんらしいと言えば父さんらしいけど」
……その、当たらなければどうたら、という有名そうな言葉は、一体、どこの誰が言った言葉なのか、モニカは知らない。
が、ともあれ。一応、人を異常に選ぶ機体、という認識は彼女も持っていたようだ。
「ふーん」
取りあえず、そう頷いておく。
しかし白い奴は、レナルド博士が図面を引いた機体なのか。ならばベティウェアやミストレス、エレインとは、兄弟機と言う事になる。
そこが、レナルド・ラビエの凄い所だ。
全くコンセプトの違うKMFを、実現が可能な範囲で構想する。防御。機動。射撃。運動。そのどれもが、特化させるにも多大な労力を必要とするというのに、博士は、形にしてのけた。
彼以上に死を惜しまれる人材は、中々、いないだろう。
「父さんの遺産を、主任が読みこんで、皆でアレンジしたんだけど。――――実はここだけの話、例の秘密システムも搭載してる」
その“例の秘密システム”という物に、モニカは心当たりがあった。
前々からマリエルが研究していた、『視覚に特殊な刺激を与え、肉体の情報処理を早めるシステム』だ。確かこちらも、彼女が父の研究を受け継いだのだったか。
「強化パワードスーツに搭載する予定だった、ナイトメア・システム、だっけ?」
「そう。システムの発想自体は褒められたけどね。肝心のスーツのセンスがちょっと、ってシュナイゼル殿下に言われて、で、ランスに搭載する事になった」
「ランス……」
彼女が、あれだよ、と指差した先に有るのは、白いKMFだ。
「特派の最新KMF・ランスロット。略してランスって呼んでる。『円卓の騎士』に因んだ、暫定最強機だよ、数字の上で言えば」
「……へえ」
暫定とはいえ、最強、ね。それは少し、ラウンズの自分にとっては面白くない。
自分が最強と語るつもりはないが、愛機の性能も、自分の技量も相当だ。今までラウンズとしてやってきた、矜持と自負がある。
モニカの対抗心に、気が付いたのだろう。マリエルは、小さく笑って、まあまあ、と肩を叩いた。
「そう怒んないでって。デヴァイサーまで強さだと考えるなら、最強には程遠いよ。そもそも、実戦もまだだから」
「……そうなの?」
「そう。ピーキーな操縦性、安全性の不安、更にはナイトメア・システムとの適応性。こんなに条件が重なっちゃ、乗り手はいない。一応、シュナイゼル殿下と一緒に行動してた時、目ぼしい騎士には試験を受けて貰ったけどね。乗りたい騎士も、主任を満足させられる数字を出せた人も、いなかった」
研究に全てを捧げた特派だ。馬鹿と紙一重な連中しかいないが、反面、妥協はしない。
どんなに著名な騎士だろうと、権力者だろうと、実験結果に満足がいかない限り、断っていた。
「で、つい先日。ついに全てに合致する兵士が見つかったんだ。通常稼働率は、何と脅威の94%。お陰で主任はご機嫌。食事も睡眠も最低限で、ずーっと実験してる」
94パーセント。それは凄い。かなり本気で感心する。機体性能がどれ程かは知らないが、特派の機体で其れだけの数字を叩きだせるのならば、それこそ騎士候には十分だろう。
しかし、ずっと実験なのか。体は大丈夫なのか、と訊ねようとして、今更だったと考え直す。
「で、どんな人なの? そのデヴァイサー」
「エリア11出身の名誉ブリタニア人兵士。ルルーシュさんの推薦で送られてきた男の子だよ」
「あ、名誉なんだ。……そう」
それは、また。厄介な事に繋がりそうだ。
別にナンバーズに偏見は持っていない。ラウンズとして各地の戦場を巡っていれば、そんな思いは些細だと学びとれる。そもそも実力が全ての世界だ。その名誉ブリタニア人兵士が、誰よりも上手くランスロットを操れるのならば、それは凄い事なのだ。
モニカ自身、親の世代からの移民だった。幸いにも、親がブリタニア国籍を取得し、かなりの名声を得たから直接的な難は逃れていた。だが、ロシア系民族と言う事もあって、子供の頃は色々と苦労した物だ。
騎士という立場になる決心をしなければ、今、何処でどうなっていたか、分からない。
「一通りの調整が終わったら、エリア11で実験的に、戦場に投入しようと思ってるんだ。データ収集も兼ねてね。デヴァイサーの問題があるから難しいけど、何かあったらモニカも後押しして欲しいかも」
「……まあ、考えておくよ。で、その秘蔵っ子の名前は?」
モニカの質問に、マリエルは自慢げに返す。
「枢木スザク」
「……スザク、ね」
変わった名前だ、と言うのが、第一印象だった。
●
『あにゃ』が入室しました。
・あにゃ 「……モニカだけ?」
・モニカ 「…………」
・あにゃ 「モニカ?」
・モニカ 「……ふあ? ……あ、やっと来てくれました。うっかり眠っちゃいそうでしたよ」
・あにゃ 「他の、皆は?」
・モニカ 「なんか今日は遅れてます。会議までは時間がありますけど。普段はもっと、賑やかなんですがねー。一気にバタバタ、来るかも知れません」
・あにゃ 「うん」
・モニカ 「アーニャは、今日は何をしてましたか? 政庁には居ませんでしたよね?」
・あにゃ 「ジェレミア達と一緒。……教導? 模擬戦、とか」
・モニカ 「そう。どうでした?」
・あにゃ 「……楽しかった」
『吸血鬼』が入室しました。
『魔 王』が入室しました。
・モニカ 「あ、どうもです」
・魔 王 「ああ。済まないな、馬鹿の相手をしていて遅れた」
・あにゃ 「……何時もの事?」
・モニカ 「ルルーシュ。お手数、おかけします」
・吸血鬼 「おいおい、お前らやっぱりいきなり酷くないか?」
・魔 王 「そうか。じゃあ、さっきまでのお前の所業を話してやろう」
・吸血鬼 「え、おい」
●
下部デッキに入ると、ざくりざくり、と肉を裂く音が聞こえてきた。
同時に届くのは、耳に残る哄笑。慇懃無礼、と言う表現がよく似合う、丁寧だが神経に触る声だ。
「ああ、実に良い色だ」
陶酔にも似た、熱い吐息が聞こえてくる。正直、男のそんな声を聞いても、寒気と鳥肌が奔るだけだ。気持ち悪い。
明らかに愉悦を感じながら、その声は何かの作業をしているらしい。相変わらずだな、と思いつつ床に視線を向けると、赤色が広がっている。細かな肉片。脂。小さく見える白い物は骨か。
空間の中には、二つの物が有った。
片方は人間。もう片方は死体。
死体から流れ出た、既に赤色を失いつつある血は、床に滴り落ち、波紋を広げている。
肉が切断される音が響く度、台の上の塊は奮える。とうに命は失っている所を見るに、きっと刃を入れられた反射だろう。表面に走った斬り跡から流れる血は既に少ない。
第二皇子シュナイゼル保有の浮遊戦艦アヴァロン。
KMF格納庫に隣接したこの空間で、見るも無残な解体ショーが行われていた。
「悲鳴が無いのが、残念ですがねえ……」
台の上の生贄へと、縦横無尽に刃を奮う男がいる。橙に染めた髪。悪目立ちする薄化粧。《吸血鬼》の異名を持つ、被弾率と敵機撃墜数で両トップの記録を持つ、帝国最強の一角に位置する騎士。
ナイト・オブ・テン。
ルキアーノ・ブラッドリー。
くくくく、という気味の悪い笑い声と共に、彼は器用にくるくると刃を回し、踊る様にナイフを操る。
美しい、とまで言える刃物裁きだ。熟練の、長年に渡って、自分の手の様に扱い続けなければ取得出来ない技術。華麗な、そして凄絶な動きに、もはや生贄の形は原型を留めていなかった。
「ご満悦だな」
近寄って、声をかける。いきなりナイフが(比喩ではなく)飛んでくる事もあるので注意が必要だ。幸いにも今回は、刃が飛んでくる事は無かった。
呆れた様なルルーシュの声に、吸血鬼は生贄から顔を上げる。
「おや、ルルーシュ。……どうです? 見事に裁けたでしょう?」
そう言って、解体した対象を、自慢げに見せて来る。
美しさすら感じられる断面図に、ルルーシュは。
「ああ。そうだな」
確かに、見事に裁けているよ、と頷いて、指示を出す。
「さっさと食糧庫まで運んでおけ。魚は鮮度が命なんだ」
巨大なマグロが、其処にはあった。
全長三メートル近い超巨大マグロは、既に綺麗にブロック状に切り分けられている。
一時、刃物を自由に振れて満足したのか、思いのほかすっきりした表情でルキアーノは懐に刃を仕舞う。その際、近くに置かれていた汚れた布切れで、しっかり身を拭うのも忘れない。
ナイフを仕舞うと、途端に雰囲気も軽くなった。
この男。自分の中の狂気を、ナイフやKMFで制御しているのである。
「この光景を見て、俺への言葉はそれだけかよ」
「ああ。立派な魚を釣り上げたな。凄い凄い。褒めてやる」
「棒読みで言われても嬉しくねえよ」
そう言いつつも、切り分けた魚を、丁寧に氷を敷き詰めた発泡スチロールの箱に納めて行く。
この魚は、きっと明日、本国の港に運ばれ、誰か家の食卓に並ぶのだ。
「んじゃ、食料貯蔵庫はぐるっと回って反対側だったな?」
中身が切り身と氷で一杯の発泡スチロール箱を肩に担ぎ、楽々と部屋を出て行く。
ルルーシュが持ち運べない程には重そうだったが、そこは体育会系。平然と歩いていってしまった。
(……鉢巻きを締めて、前掛けを着て、魚屋の店先に立っていても、意外と似合うんじゃないか?)
そんな風に、ルルーシュは思う。
ルキアーノ・ブラッドリー。
趣味は、魚釣りである。
話せば、長くなる。
ラウンズは世界各国を飛び回る。飛び回った先々で戦闘行動を行い、相手に降伏寸前まで大きなダメージを与え、功労者として本国に帰って来る。派遣先は皇帝の意向だ。
例えば、第九席のノネット・エニアグラム。彼女は基本的に本国に居る事が多い。しかし「今からお前は南極に飛べ」と言われれば、素直に頷いて、いそいそと輸送機に愛機ケイと共に乗り込むしかない。
勿論、そんな事は滅多に無い。時間の割り当てや他任務との折衝は、ビスマルクやベアトリスが気を利かせてやってくれている。同様に「戦場を転々とする」「今日も明日も別の場所で戦争だ」と言う事も、実はそう多くは無い。
投入される戦場は過酷だが、ラウンズの誰もが、その戦場を切り抜ける事が出来る実力者だった。
しかし、そんなラウンズでも苦労する問題がある。
「戦場から本国」への移動。これはまだ良い。行きは準備が、帰りは休息があるからだ。思いのほか時間はあっさりと経過する。しかしそれ以外。護衛任務を初めとする、戦い以外での移動。これが辛い。
平たく言えば、“凄く暇”なのだ。
故にラウンズは各々、輸送機の上で暇潰しになる趣味を持っている。長々と説明したが、ルキアーノの釣りも、そんな趣味の一つだった。
因みに、本人の言質を取れば『俺は「魚釣り」が好きなんじゃなくて、「魚を釣って、好き勝手に捌く」事が好きなんだよ』――――だそうだ。
より手応えある大物を求めている内に、自分で釣るには獲物の大きさ的に満足できなくなった。その結果、KMFで釣りに出かけ、キロ数百はある超大物を釣っては捌く、を繰り返す羽目になる。
想像してみて欲しい。戦場で多大な成果を上げるナイトメアフレームが、海上すれすれに飛ぶ航空艦から特注の釣竿を垂らし、見事なマグロやカツオを一本釣りしている光景を。
そうじゃないだろ、と言いたくなる。シュールとか、そんな表現を通り越して言葉を失う光景だ。
何時だったか、鯨が針に懸かって引っ張られ、飛行機から脱落し、そのまま水没して死にかけた、という言葉を聞いた時は、もう言葉も無かった。
懐かしい話を思い出していると、ルキアーノが帰って来る。
「さて、どうすっかな。流石にこれ以上、魚捌いても置き場所ねえし。ルルーシュ、暇潰しの良い案無いか?」
「お前が処理すべき仕事ならあるが?」
「げ、藪蛇かよ」
一応、ルキアーノの名誉の為に言っておけば。
この騎士の腕は、本当に物凄い。こんな人格破綻者がラウンズに居座り、今も行動出来るのは、確固たる実力があるからだ。
ラウンズの中で、誰が最も短時間に大量の敵を倒せるか、と言う部分で競い合えば、ルキアーノの右に出る者はいない。被弾率や損耗率も高いが、稼いだ撃墜数と言う点で言えば、多分、他のラウンズと桁が違っているだろう。……いや、雑魚処理専門、という訳ではない。ちゃんと敵将も討取っている。
「そもそも俺は、その為にお前を呼びに来たんだ。少しは真面目にやれ」
「へいへい。……全く、どいつもこいつも、俺のお目付け、御苦労なこって」
「ルキアーノ」
「分かってるって。そう怒るな」
軽く肩を竦めてルキアーノは、身を翻す。
自室へ向かうその足取りは軽かったが――――ルルーシュの指摘に、何かを感じたのだろうか。
「俺の業とはいえ、難儀なもんだ」
彼は小さく、そう呟いた。
●
・魔 王 「と、まあそう言う事があってな。つい先ほどまで、書類の後始末に追われていた」
・モニカ 「ご苦労様です」
・あにゃ 「ごくろうさま」
・魔 王 「ああ。……そうだ。エリア11の方は?」
・あにゃ 「別に、大きな変化は無い」
・モニカ 「シンジュクでの事件から、昨日の今日ですからねー。あ、そうそう。ルルーシュのミストレスの方は、特派に確認しておきました。セシルさんが整備の手配をしてるので、帰ってきたら治ってると思います。報告書、送りますね」
『開拓者』が入室しました。
・開拓者 「よ。皆、元気そうだな」
・あにゃ 「こんばんは。……こんにちは?」
・吸血鬼 「お早うで良いんじゃないか?」
・モニカ 「相変わらず北ですしね、ジノ」
・魔 王 「そうか。……ああ、まあな。ジノ、お前は?」
・開拓者 「問題は無いな。――――仕事も一段落付いたし、近いうちに本国に戻れそうだ」
『虎殺し』が入室しました。
・虎殺し 「そうか。其れは良いな。……そうだジノ。折角だから、お前も士官学校の講師をしないか? 私一人だと、数も多くて、少し面倒だ。……臨時雇いでも良い収入になるぞ?」
・開拓者 「あ、エニアグラム卿。謹んで遠慮しとく。――元帥のお膝元に行くのは少しな。それにほら、俺は空軍系だ」
・虎殺し 「そーか。じゃあ仕方ない。ルキアーノ、お前は?」
・吸血鬼 「全力で嫌だね。トラウマ再発するってえの」
・モニカ 「そもそも、ルキアーノは教鞭取るキャラじゃないですしね。あ、私は良いですよ?」
・虎殺し 「モニカは去年もやってくれたからな。いっそ、ヴァルトシュタイン卿が顔を出してくれると面白いんだが」
・あにゃ 「ノネット、……遊んでない?」
・魔 王 「いや、その反応も違くないか?」
『ONE』が入室しました。
・ONE 「ふ、済まないが、エニアグラム卿。其れは難しい注文だな」
・虎殺し 「おや。……失礼。聞かれていましたか」
・ONE 「気にしなくて良い。分かっている」
・魔 王 「ヴァルトシュタイン卿が参加出来るとは、珍しいですね」
・あにゃ 「何かあったの?」
・ONE 「ああ。C.C.から連絡があった。――――これから少し、詳しい話をしたいそうだ」
・モニカ 「詳しい話、ですか」
・開拓者 「この時期に、話題ってえと」
・吸血鬼 「例の、アレ、かね?」
『泥っち』が入室しました。
・泥っち 「済まない、と。……なんだ、皆、今来たばかりなのか。ここ数分での入室時間が異常だな」
・モニカ 「そう言う事もありますよ。シンクロニシティ、ってやつです」
・あにゃ 「……そうなの? ルルーシュ」
・魔 王 「アーニャ。俺に訊くのは良いが、まず自分で調べて考える、と言う事を実行しよう」
・開拓者 「お、ルルーシュには珍しいセリフだな」
・吸血鬼 「こりゃ、近くシスコンっぷりも改善されるかねえ?」
・ONE 「さて、どうであろうな。――さて皆、いい加減、真面目になろう。軽い話題でもなさそうなのでな」
『C×C』が入室しました。
・C×C 「その通りだよ、ビスマルク。――――真剣に行くぞ」
●
そう、真剣な話だ。
全員の視線が向いている事を確認して、魔女は愛機の中で大きく息を吐いた。
気を引き締めて、切り出す。
「まず初めに。砂漠地下に存在が予測されていた『施設』を発見した。『遺跡』も一緒だ」
その小さな一言で、全員の態度が変わる。無表情になる者、殺気立つ者、乾いた笑みを口に浮かべる者。
表情こそ違うが、集った全員が。それこそ、ルルーシュやアーニャすらも、紛れもない敵意を宿している。魔女だって同じだ。ラウンズで、“彼ら”を敵と定めない者はいない。
「ご丁寧な事に、凶鳥――――羽ばたく鳥の紋章付きだ。紛れもない支部の一つだったんだろう」
魔女が一回、皮肉気に笑うと、皆から質問が飛ぶ。
「扉は?」
これはビスマルク。
「見つけた。封鎖されていたが、周囲の安全を確認した上で、解放作業に向かう予定だ」
「……残党は?」
これはモニカ。
「そちらは無し。残念な事にな。痕跡はあったが、実験体、研究員、信徒、幹部。勿論トップもだ。全員、影も形もない。もぬけの空だった」
「脱出経路は」
これはルルーシュ。
「探査中だ。だが、歩道ではなく、地下列車の線路くらいは覚悟しているよ」
「……手詰まり?」
「それが、そうとも言い切れない。――――話したいのは、それだ」
最後の、アーニャの質問に、アクセントを置いて返す。
「現在の世界情勢を見るに、連中が何処に逃げたかを想像するのは、難しくない」
世界地図を持ち出すまでもない。
南北の新大陸は、ブリタニアの支配下。オセアニア、アジア・ロシア・ヨーロッパの一部、太平洋の小国はエリアとして確立されている。
ブリタニアの影響を受けずとも何とかなる国家など、ユーラシア大陸内陸部だけだ。しかも、エリア18によってアラビア半島は動乱の最中。アフリカは国力が低い。ヨーロッパとの国境は一触即発の状態。
となると。
連中が行きそうな場所は、一ヶ所――――いや、一国しか無い。
「中華連邦、だな?」
代表して答えたルルーシュに、頷く。
「そうだ。……だが、中を調べた結果、どうもそれだけじゃあない。分裂している可能性がある」
「分裂、だと?」
長い間存在する大規模組織では特に珍しい事ではない。
当初の理念を失って暴走する。末端部に管理が行き届かなくなる。意見の対立から中互いが発生する。反目が離反に繋がる。そして、組織が分裂する。
神聖ブリタニア帝国も、その法則からは逃れられないだろう。事実、エリアでは腐敗が進んでいる。
「……良い事、じゃない、ね」
アーニャの言葉に、肯定で返す。
「ああ。むしろ厄介だ。……まだ全てではないが、居住区画を見つけてな。その部屋の使用跡が、明らかに差があり過ぎる」
「待て待て、そう論理展開を飛ばさずに、俺に分かるように説明してくれ」
簡潔に、という吸血鬼の言葉に、静かに頷いて、魔女は告げる。
「つまりだ。居住区画は、ブロックで構成されていた。アパルトメントみたいに、幾つかの部屋が寄り集まって棟を形成していた訳だ。これは分かるな?」
しかし、と魔女は言う。
「使われた部屋と使われなかった部屋がある。これは良い。中には空き部屋もあるだろうさ。だが――――棟の使用状況が作為的に過ぎる。明らかに幾つかの派閥に分裂して、派閥ごとにブロックを占拠していた様子が、見受けられるんだ」
「……人数差は」
「それはまだ調査中だ。だが、本来の『組織』の流れをくむ大規模グループ。其処から離反した小さなグループが、幾つか、だと思われるな」
「……纏めようか。アラビア半島地下の『組織』の支部は、既にもぬけの殻。しかし内部分裂が発生しており、複数に分かれた可能性は否定できない。――――さっきの流れから推測すれば、その大規模グループは、中華に行っているらしい、か」
ノネットの口調に、全員が黙る。
「……なら問題は、別れた連中か」
「そうだ」
「今迄存在したバックアップが無い。つまり、長い時間は行動出来ない。迅速に動きだす必要があるという事だ。……ならば、そいつらは何処を目指し、行動するか? 幸いにも、集団の規模が小さければ発見はされにくい」
「ああ。理解が早くて助かるよ、ルルーシュ」
傍から見ていれば、詳細が全く見えない会話だが、ラウンズ達は皆、十分に把握していた。
彼らは皆、事前知識があるし、追っている連中の正体も知っている。何より、ラウンズは皆が皆、語るも悲惨な被害を一度、奴らに受けているのだ。
全員の目的が一致し、揃っている時、その集団は恐ろしい程の力を発揮する。今もそうだった。
「要するに、だ。今現在、ブリタニアと対立している地域に、別れた“奴ら”のグループがやって来る可能性があるんだな? その少数制を利用して、再度、エリアに潜り込む事も、有り得るか」
「そう。確かに今までも警戒していたが、今まで以上に危険度は上がるだろう。だから、この場の全員に忠告をしておく。――――向こうも再度、体勢を立て直しつつあるのは間違いない。それも、かなり本気でな」
最年長の魔女は、画面に映る八人に向けて、告げる。
「『教団』の影に、くれぐれも気を付けろ。油断していると、何時かの再来になりかねんぞ」
●
トウキョウ某所。
煌びやかな租界の電光も、この遠く離れた山奥までは届かない。
嘗ては山中と言えども、最低限の街灯が置かれ、微小とはいえ灯りを提供していた。だが、もはや過去の話だ。ブリタニア侵攻と共に、日本人の持っていた光は失われたと言っても良い。
そんな事を思いながら、紅月直人は時計を確認する。
昔から持っていた電波時計だ。蛍光機能も付いていて、失くしたら、このご時世、きっと入手に苦労する一品だった。
時間を確認して、携帯電話を手に取った。
途端に、タイミング良くマナーモードの携帯が振れる。余りのタイミングの良さに、何処かで自分を監視しているのではないかと、思ってしまうほどだった。
「……紅月だ」
『私だ』
「――――ああ」
名乗った途端に、声が聞こえてくる。変声期を通している為か、不明瞭な声色。性別は愚か、性格、年齢といった全ての個人情報が、想像できない。
分かるのは、断固たる口調の中にある、確固たる意志だ。
『シンジュクでは、上手く出来たようだな』
「……それについては感謝している。アンタが、俺の計画に合わせて住民を避難させてくれなければ、一般人への被害は段違いに多かっただろう」
地下基盤を破壊することでの地盤沈下。あの作戦を計画し、実行したのは直人だ。だが、ゲットーの住民を巧みに誘導し、ほぼ全員を避難させたのは、この電話の向こうに居る男だった。
幾らゲットー内への興味を持っているブリタニアの人間が少ないとはいえ、どうやったのか、正直、見当もつかない。
「……それで、今度は何の用だ」
『紅月直人。お前のその戦略眼を、欲しがっている者が居ると言ったら、どうする』
「何……?」
『まだ検討中だが、君の手腕と才覚を、スカウトしたがっている者が居る、と言う事だ』
「……見ず知らずの相手を、信じる程、俺は甘くないな」
呆れて、苦笑いが出てしまった。
そもそも、この男からの連絡も、余りにも唐突な物だった。
抵抗活動をしている最中、突然に携帯電話に割り込み、余計なお節介(結果として、非常に助かったが)をしていった。そんな奴だったから、ゲットーでの行動も半信半疑だったのだ。
『避難誘導の完遂、だけでは不満か』
「そうじゃない。あんたの手腕が優れている事は認めよう。だがブリタニアの罠の可能性もある。とてもじゃないが、信じるには足りない」
そもそも、直人は向こうの名前すらも聞いていないのだ。外見から何から、全てが不明な相手を、どうやって信じろという。例え結果が出ていようとも、とてもではないが受け入れる気は無い。
直人一人ならば良い。だが、彼の背後には。彼を信じる仲間がいるのだ。
『……成る程、ならば一つ、お前に情報を教えてやろう。信じる、信じないは、お前の自由だ』
不敵、としか表現が出来ない笑いと共に、彼は告げる。
『お前の戦略眼を欲しているのは、藤堂鏡志朗だ』
「……!」
その名を知らない日本人はいない。七年前の戦争で、唯一ブリタニア軍を退けた無敗の名将。
激戦区厳島から部下と生還した、「厳島の奇蹟」を引き起こした旧日本帝国陸軍の侍。ブリタニアからも、「将軍と騎士の器を持つ者」と高い評価を受ける人物だ。
「……冗談がきついな。寝言も、大概にして貰えないか」
『君がどう思うかは勝手だ。――――ではな』
着信と同じくらい唐突に、通話は切れる。
それきり、辺りには沈黙が落ちた。草木も寝静まる様な時間だ。巡回のブリタニア駐留軍も、自分のいる位置までは回ってこない。
知らず知らずの内に、直人は携帯を強く握りしめていた。
(……くそ)
何か、嫌な感じだ。利用されているような。それでいて、その相手の手腕に頼らざるをえないような、そんな感覚がある。言葉では言えない不安があった。
地道な活動を続けていても結果は無い。だが大きな活動も、未来を切り開くには難しいだろう。
人間は誰しも、希望に縋りたくなる。そして縋った先が希望とは限らない。絶望を掴んで破滅した同胞を、直人は今まで、数多く聞いてきた。
抵抗勢力である――――テロリストと扱われる自分達の未来が、どうなるのか。
仲間内からは絶大な信頼を受ける紅月直人にも、見通しは全く立たない。
猛毒が潜んでいそうな、先の携帯電話が、酷く魅力的だった。
登場人物紹介 その⑩
マリエル・ラビエ
特別派遣嚮導技術部の整備主任。ロイドの部下。
第七世代KMF“ランスロット”の整備を行う女性。美少女と美女の中間くらい。面倒見が良くて芯が強い女性だが、時々、大事な事を伝え忘れる天然属性も持っている。
実はすでに大学院博士課程を修了した天才。世界で最もKMFに精通した一人とも言われており、ランスロットの設計者、故マリエル・ラビエ博士は父親である。
七年前の父の死後以降、親交のあったロイド、セシルの進めもあって特派に所属。現在は、父親の遺産管理をしつつ、特派と協力しながら、残された図面から優れたKMFを生みだしているようだ。
また当時未完成だった技術を完成させてもいる。このうちの一つ“ナイトメア・システム”は、ランスロットに搭載された、『視神経に特殊な信号を送り、肉体の反応を大きく向上させる装置』である。
ラウンズ十二席のモニカとは親友であるようだが、その背景は不明。
親しくなった相手には、愛称でエルと呼ばせている。
(補足)
漫画『反抗のスザク』に登場の女性。
ランスロット仮面の開発者の一人、といえば分かりやすいと思う。
中継ぎ、かと思ったら、ちょっとだけ“倒すべき敵”の影が登場しました。『嚮団』ではなく『教団』です。誤字では有りませんよ。
そして、今回の副題「ラウンズの愉快な皆さん」ですが、意外と各所に大事な情報と伏線が隠れています。もしよかったら、探して考えてみてください。
例えば、皆のルキアーノへの扱いが微妙に悪かったりするのも、実は結構大事な伏線です。
次回は、本国でのルルーシュの話。
きっと、色々驚くと思いますので、御期待下さい。
短くとも、率直な感想をくれると嬉しいです。
ではまた次回!
(5月9日・投稿)