目の前に、白い壁が有る。
天上も白。床も白。直方体の部屋の中には、明りと、椅子と、マオだけだ。
「やられたね……」
参った。そう言うように額に手を当てて、マオは小さく呟いた。
もう、やられたという言葉しか出てこない。
気が緩んだ瞬間に、完璧なる不意打ち。
消耗が失策を産み、その失策が――今の状況だ。
部屋の中央。ただ一つだけ存在する椅子(それも床に固定されていて動かせない)に座って、マオは息を吐く。手には何も持っていないし、話す相手もいない。服だって上下の下着と、清潔だが簡素すぎる服だけ。拘束衣で無い事と、室温は快適だという部分だけは幸いか。
「……あー。……暇だな」
立ち上がって、身体を軽くほぐす。
寝る時間は山ほどあるが、既に十分寝ているから全く眠く無い。
身体を動かすのは良いが、風呂やシャワーも自由ではない。
生きていられるだけ、まだましと言うべきか。
ごろり、と備え付けのベッドに横になった。
白の天井を眺めながら考える。蛍光灯一つだけの天上は、光を反射させて酷く眩しい。目を閉じれば、光の中に前の記憶がフラッシュバックするようだった。
――記憶に欠落が有る。
――消える直前に、仮面の男を見ていた。
――強く命令を受けた事は、確信している。
――だが、幸いにも死んではいない……。
眼を閉じて、もう何度目かになる考えを、繰り返す。
あの後、帝国特務局の一員だと言うアッシュフォード家の運転手に拾われて、政庁まで届けられた。
公爵令嬢と一緒に行動していたルルーシュは、アーニャを置いて一人で直ぐに戻ってきた。
そして、ジェレミアに命令してマオへの対処を取ったのである。
「…………」
マオは生きている。今も死んではいないし、死ぬ気配が無いと言う事は、少なくとも『何らかの目的』を達成させるまでは、相手は自分を殺す気が無いと言う事だ。……エリア18でのオマーン王族の事を考えても、彼女を殺さないだけの理由が有る。
となると、一定の条件を満たした時に作動する命令、なのだろう。多分。何らかの状況がトリガーにされた。それは間違いない。発動した場合、命令を実行し――最悪、自殺だって考えられる。
問題は、その引き金が一体どうすれば作動するのかが、不明だという事だ。戦場かもしれないし、ふとした切っ掛けかもしれない。KMFに乗った時か、相手からの攻勢が有った時か、はたまたルルーシュの背後を取った時か……。
「だから、取りあえずは――仕方がない状態なんだよね……」
ならば引き金を引かせなければ良い。極力、何時でも対処を出来るようにするしかない。
ただ、こんな状況を魔女が見たら、どんなことになるのか……。
想像するだに恐ろしい。
あれで、魔女は意外と愛情深いのだ。愛情がちょっと上手に表現されないだけで。
「……大丈夫かな。マジで」
ぞくりと、マオは背筋に這いあがった寒気を思う。
具体的には、ルルーシュへとか、私に命令した仮面の男とか、自分へとか。
あの魔女は果たして、何もせずに看過してくれるのだろうか。
マオは現在、監視付きで独房監禁中であった。
コードギアス 円卓のルルーシュ 第一章『エリア11』編 その⑬
「お早うございます」
と挨拶をして入ると、既に移動整備基地は動き始めていた。
「おーはーよーう」
変なテンションのロイドが、両腕を上に掲げて挨拶する。今日も寝た時間が少ないのだろう。目の下には隈が出来ているし、薄いが無精ひげもある。
「はい、おはよう。昨日説明した通り、射撃系の調整するからね。モニカの協力もあるから覚悟して」
入口近くで紙に目を通していた作業着に白衣という、相変わらずな格好のマリエルが業務を伝えて来た。
普段は明るい人なのだが、現場だと気性が丸きり違ってしまう。研究第一の上に、ランスロットをロイドと同じ位には溺愛している。
「おはよう。枢木君」
専門用語に四苦八苦しながら、本日の行程表と睨めっこをしていた小寺マサシが、笑顔を返す。彼の仕事は整備主任補佐だ。補佐という名目で、朝から晩までマリエル・ラビエの指示の下、機械を動かし、機材を運び、忙しく過ごしている。
元々生家が中小工場だった為、機械弄りは苦にならない、と言っていた。意外と手先も器用で、設計図の読解も出来ている。お陰でマリエルは彼を気に入っているそうだ。
相も変わらず騒がしく、平和な特派の一風景だった。
「マサシ。今日は銃身も変えてみるからね。準備しといて」
「分かりました」
会話を横耳に、備え付けのロッカールームに入った。
トレーラーの中は狭い。かなり狭い。まずランスロットの整備工場が全体の半分以上を占めている。
残りの内、一割が発電機器やエナジーフィラーを初めとするトレーラーそのものに必要な設備。
一割が水道、シャワー、トイレを初めとする生活必須の水回り(セシルが時々造る、変な創作料理はここで生まれる)。あと、簡易の治療室もあった。
一割が設計図置き場や資料室など、特派必須の部屋。この二部屋は特派の頭脳。もっと言えば大陸最高の頭脳の痕跡が眠る場所だ。KMFに関わる技術者ならば手が出るほど欲しがる代物が山のように眠っている。入室できるのは、ロイドとマリエルのみで、セシルも二人の許可が無い限り入れない。
もう一割が応接室を兼ねる会議室と整備を確認できるブリッジだ。KMFの視察に来るとこの場所に案内されるし、セシルが情報を分析して通信しているのもこの部屋である。因みに、普段はメンバーの食事場で休憩場にもなっている。
そして残りの一割に満たない空間に、二段重ねの仮眠ベッドが2つと個人ロッカーの二部屋が詰め込まれているのだ。非常に狭いのも当然。人生をKMFに捧げる者だからこそ、この生活でも不満は言わない。特派に所属する事が困難な理由の一つには、過酷で不健全すぎる生活習慣があるのかもしれなかった。
白いパイロットスーツに着替え、待機室に向かう。
早い物で、スザクが特派で働き始めて、もう3週間になった。
それはつまり、新宿ゲットーでルルーシュと遭遇してから、3週間と言う事だ。
軍事演習が有り、車両事故が有り、サイタマゲットーでの戦闘が有り、屋上での会話が有った。ルルーシュ達が休暇で揃って外出したのは1週間以上も昔だ。毎日の密度が濃いからか、もう随分と時間が経過をしていると思っていたが……実際は、まだ一月も経過していない。
だが、一月で随分と環境が変わっていた。
「ああ、枢木スザク?」
「――! これは、クルシェフスキー卿!」
トレーラーの中に、モニカ・クルシェフスキーがいた。
即座に膝をつく。ナンバーズであり、名誉ブリタニア軍人のスザクだ。本来ならばラウンズには、謁見は愚か目障りという理由で排除されても仕方がない。そんな関係が有る。
こうして会話が行えると言う事、それ自体が変化を如実に表していた。
最後に対面したのは、サイタマでの制圧戦が終了した後だ。ベティウィアを自主整備していた時だった。
「ああ、良いですよ、立ってても。座ったままじゃ質問も出来ないですし」
ルルーシュの同僚であり、帝国最高の狙撃手たる彼女の実力は、サイタマで把握している。
こうして対面していると普通の穏やかな女性なのだが、こういう人間こそ、戦場では恐ろしい――それをスザクは知っていた。冷静で、冷静なまま、泣きながら、銃弾を相手に叩きこめる臆病者は、ただの豪傑より遥かに恐ろしい。
「枢木准尉。射撃は余り得意ではないようだけど」
「あ、はい」
この女性の基準は全く当てにならないが、スザクの射撃能力は平均より上の程度だったのは事実だ。
スザクは体力や反射神経はある。視力も良い。だが感覚が届かない遠方に、自分の意志を通す事は下手だった。言いかえれば、至近距離で銃をばらまく機関銃の扱いは上手いが、拳銃を構えて狙い、限られた弾丸で相手を狙うスキルは低いのである。
見える事と中てる事は違う。風や相手の挙動を読んで動く事が射撃には求められるのだ。
「今日は私も時間が有るからね。見させてもらいます。……励むように」
「は!」
イエス、マイロードと返事をしながら、ふと思い出す。
士官学校時代。日本のとある小島で教育訓練を受けたのだが、その時に風聞で聞いた話によれば――ラウンズの教育はかなり厳しいそうだ。怖いとか不条理とかとは違う意味で、厳しい。口調や態度が優しくても、絶対に妥協せず、脱落を許さないのが彼らの教育方針なのだそうだ。
「あ、そうそう。もう一つ。――枢木准尉。アーニャから聞いたよ。ルルーシュと仲が良いんでしょ?」
そんな事を考えていると、突然に質問が飛んできた。
ナンバーズ相手でも普通に話しかけてくれる人だ。階級や身分に興味がないだけかもしれないが。
「――親しくさせて、頂いております」
あの後、会話をしたのは数えるほどだが。
それでも語らう事が出来たのは、確かだ。ルルーシュが時間を造って訪ねて来てくれていた。
「うん。宜しくね。……あ、私達しか把握してない情報だから、気にしなくて良いよ?」
流石に大っぴらに友人扱いは、立場上出来ない。スザクだって望んでいなかった。
だが、それをフォローしてくれるのがルルーシュだった。感謝だ。
「ルルーシュ、普通の友人は少ないからね……。だから、君みたいな存在は貴重だと思う。ジノもルルーシュとは同年代だけどさ、あの家も結構色々ある。私は近いと言っても5歳以上差が有るし。……アーニャも仲が良いけど、年下だもの。――C.C.は立場が、全く違うし」
「……なるほど」
C.C.卿(表向きの名前は有るらしいが、それで呼ばれる事は少ない)。
そう言えば―― 一回だけ、出会った事が有る、と思う。
昔。ルルーシュと一緒に遊んでいた頃、一度だけ見かけた、あの緑髪の女性だろうか。
ルルーシュと出会えた事。それが彼女の采配なのならば、スザクは脚を向けて寝られないかもしれない。
「卿は、C.C.卿の事を、ご存知なのでしょうか?」
「知っているよ。――と言っても、私も出会ったの、ラウンズに入る少し前だから、詳しい訳ではないけどね。でも、彼女の精神の機微についてを把握できる位には、そこそこ良い関係かなと思っている」
うんうん、と静かに、何かを思い出す様に頷いたモニカだった。
「きっと今の魔女さんは、凄く機嫌が悪いんじゃないかと――」
「――――ああ、悪いぞ」
「え?」
其処に、居た。
緑髪の魔女が、泰山と悠然と、壁に寄りかかって立っていた。
気配も何も無く、最初からその場所に佇んでいた様に。
余りにも唐突な出現に、スザクは馬鹿みたいにぽかんと口を開け、モニカも再稼働まで時間が懸かった。
普段の不敵な微笑は、口元への若干に皮肉めいた物に取って替わり、瞳は剣呑な光を宿している。誰がどう見ても、非常に怖い――否。そんな表現では似合わない。思わず退いてしまう鬼気を纏っていた。
その辺の不良がやれば、ああん? とでも言いたそうな顔、と表す事が出来るだろう。
だが、威圧感は段違いだった。
「……何時、来ました?」
「たった、“今”だよ。モニカ」
コツリ、と足音一つを響かせて直立すると、態度はゆっくりと。
しかし、まるで周りを支配する様な錯覚を持って。
「これをセシルに渡しておけ。私はルルーシュの所に行ってくる」
懐から一枚の紙を出す。
受け取って顔を落とすと、そこには略式では有ったが、大雑把な行程表と、問題点が記載されている。
「……エレインの整備書ですか」
砂漠からのご帰還ともなれば、大々的なオーバーホールが必須だ。
なるほど、と納得して顔を上げ。
魔女は既に消えていた。
「…………」
「…………」
あるのは、ただ騒がしい特派の空気と、手元に残った整備表一枚である。
しばし、口をへの字にして誰もいない空間を睨んでいたモニカだったが。
「神出鬼没ですねえ。相変わらず」
何か過去を思い出す様に、彼女はポツリと呟いて。
「多分、量子化して、エデンバイタル介して、空間転移をして来たんだと思いますが――」
「……はあ。……そうなん、ですか」
単語の意味から何から、さっぱり訳が分からない。なんだそれは。
とにかく、スザクが分かった事は一つだ。
「ラウンズって――凄いんですね……」
常識では測ってはいけないのだろう。
人間離れしているとは思っていたが、空間を飛べるんだ。流石は魔女と言うだけある。
「いや、あれはC.C.にしか出来ないです」
間違えないでね? とモニカは思わず突っ込みを入れる。
スザクの混乱は、一向に戻ってこない彼に業を煮やしたマリエルが部屋に入って来るまで続いた。
●
魔女が怒ると怖いと言う事を、アーニャは良く知っていた。
思いかえすも懐かしいアリエス離宮。まだ彼女が若く、離宮で行儀見習いとして下積み時代を過ごしていた頃。帝国随一の騎士マリアンヌ候の下での修業に、胸と期待を膨らませていた頃のことだ。
あれは、そう。シュナイゼル殿下に伴われて、謎の眼鏡が来訪した時だった。あの眼鏡は研究中だと言う書類の束を携えて来た。マリアンヌ様にも参考として見て頂こうと持参していたのだ。それ自体は別に良い。当時、第三世代機ガニメデを自在に操り戦場の覇者となっていたマリアンヌ様の意見は、技術畑の人間としては、是非とも聞きたい意見だっただろう。
だが、その後が不味かった。
周囲が見えなくなっていた眼鏡は、歓談と交流に熱中して――。
大仰な仕草を取ったばかりに、タイミング良くアーニャが運んで来た、焼き立てのピザを、地面に落とさせてしまったのだ。いや、タイミング悪くと言うべきか。
地面に無残な姿を晒したピザを見て、同席していた魔女が目に悲しみと怒りを湛えていた。
ここだけの話。
――――C.C.は、意外と心が狭い。
『私が公明正大で心が広いと思ったら間違いだぞ、アーニャ・アールストレイム。……私はただ、経験で耐性を付けているだけだ。だから人間の行動を見ても、許すわけじゃない。それを諦観として受け入れられるだけだ。―― 一部の現象を除いてな』
当時はまだ、アーニャの事を呼び捨てで呼ぶ事もなかった。
まあ、そんな魔女の心を怒らせる部分が、ピザなのだ。
なんでピザなんだ、と幾度となく思ったが、その辺りは不明なのだから仕方がない。
で、まあ眼鏡――――要するにロイド・アスプルンドは、その後、魔女に盛大に弄られる羽目になった訳だ。
因みにアーニャが手に入れた携帯端末は、その際のロイドからの謝罪の証だったりする。
「報告書は読んだ。話も聞いた。だからこれ以上は言わないが」
ルルーシュの正面。
執務机の上に腰を掛け、彼の顎に指を添え、端正な顔を至近距離で見つめている魔女がいる。
部屋の中にいるのは、ルルーシュとアーニャと彼女だけ。
政庁に来た連絡は愚か、つい数十分前まで、アラビアに居たらしい姿だ。居たらしい、ではない。アーニャの所にも、ドロテアから連絡が入っていた。内容は――――。
『アーニャ! そっちにC.C.行ってないか!?』
と言うもの。どうやら彼女が跳んできた(誤字に非ず)のは間違いないようで。
来てるよ、と冷静に返信しておいた。
まあ、ルルーシュと話をして、気がすんだら帰還して、もう一回、表玄関から来るだろう。
魔女の姿は、あたかも、今から唇を落とすような姿勢だが――――その瞳は色目かしさとは正反対だ。
「私は機嫌が悪い。――だから、原因を何とかしろ」
理不尽。だが、まあ良くあることだ。
魔女の怒りは、苛烈さとは違う。怒鳴る事も殆どない(少なくともアーニャはC.C.が怒鳴り、感情を大っぴらに露わにする事は見た事が無い)。行うとすれば、精神的に弄るか、歯に絹を着せない言い方で容赦なく心を抉るかである。
魔女C.C.における『一部』。
それは、戸籍上は彼女の庇護下にいる、機密情報局の少女達に関する問題も含まれている。
「マオにギアスを掛けた阿呆は何処だ?」
その話を聞く為に、遥々アラビアから此処まで来た辺り、魔女の内心は動揺しまくりなのだろう。
「……言われずとも」
がっしりと顎に固定された魔女の指を払い、席ごと背後に下がって、ルルーシュは距離を取った。
その顔に、若干の疲労感が見えていたのは、気のせいではないだろう。
「分かった事は、順々に全部話す……。だから少し待て」
いきなり彼女が出現した事については、何も言わない。
それが魔女には出来ると言う事を、アーニャもルルーシュも知っているからだ。
予め纏めておいたのだろうか。ルルーシュは溜め息一つと共に、机の引き出しからファイルを取りだした。中に綴じられた紙の束は、厚みこそ少ないが、文字数は意外と多そうだ。
「一つずつ、話す……。何かあったら聞け」
「ああ」
机の上に腰かけたままの魔女は、それでも短く頷いた。
「まず、大事な事を言っておく。……俺は、マオの見た偽スザクの正体の検討は、付いている」
「ほう? 誰だ」
面白そうな顔をした魔女に、ルルーシュは簡潔に名前だけを言った。
「――篠崎咲世子だ」
◇
「お動きなさいませんよう……。神楽耶様からの言伝をおいた後は、直ぐに去ります」
首筋に感じる、ほんの僅かな吐息にルルーシュは、微かな楽しみを込めて返事を返した。
薄皮一枚の距離で刃が置かれていても、侵入者相手に物怖じをすることも無い。恐れては何も出来ないし、折角の機会を無為にする事になる。そもそも怖がる必要が無い相手だ。それをルルーシュは、良く知っていた。
「流石に、茶を飲んでいく余裕は無いか」
「……また後日に、お誘いください」
相手も、その余裕と軽口に小さく声を弾ませた。
「神楽耶も一緒にか?」
「ええ。……敵同士の、交渉の場になってしまいそうですが」
「それは困るな。――神楽耶とお前の二人を相手にするのは、大変そうだ」
ルルーシュは八年前、エリア11になる前の日本に来訪していた。
魔女と共に訪れた。枢木スザクと友人になった。藤堂鏡志朗とも出会った。紅月カレンにだって一瞬ではあるが接触をしていた。その経験は、確かに今のルルーシュの一部として息付いている。あの時に誓った言葉を、決して忘れることなく、ルルーシュはこうして歩んでいるのだから。
「それで、本件に入ろうか。咲世子」
はい、と相手は頷いた。
篠崎咲世子。
八年前にはキョウト六家に――より正確に言えば、皇神楽耶の護衛として召し抱えられていた。
キョウト六家は、旧財閥の集団だ。元々は皇宮とも関係が深い家柄だったらしい。神楽耶の家……皇家をトップに、桐原・宗像・刑部・公方院・吉野、だったか。因みに、枢木は古くから国家要人の守護だかを行う家系だったのだそうだ。京都六家を経済のトップとするならば、枢木家は軍事系の上層にいる家系。
その辺は、魔女C.C.が非常に詳しい上に、ルルーシュがスザクを勧誘している公人としての理由にも絡んで来てしまうので略す事にするが――要するに、枢木家も京都六家も、古い歴史の名門であり、幼い頃から繋がりが強かったのだ。
「日本に、麻薬が蔓延している事は、ご存知ですね?」
「リフレインの流入経路までは、大体掴めているぞ。エリア10経由だ」
エリア10。東南アジアの麻薬生産地《黄金の三角形(ゴールデン・トライアングル)》が、リフレインの氾濫に一役買っている事は既に気付いている。現在は、誰が必要以上に確保して、密輸をしているのか。その調査の最中だ。
「結構です。――その取引現場の情報、お知りになりたくは?」
「対価は?」
知りたい。勿論知りたいが、タダほど高い物は無い。
「…………。では、一度だけの、無償の助力を。お願いした時に、何時か」
「良いだろう」
頷く。神楽耶の事だ。無理難題を押し付けはしまい。
恐らく、此方が飲まざるを得ないギリギリのラインで期を読み『借りを返せ』と言ってくるに違いない。
だがルルーシュは平然と頷いた。例え約束を順守したとしても負けが無いと確信していた事が一つ。もう一つは、皇神楽耶という少女が、どう動くのかを期待していたからだ。
「結構。……今すぐにお話は出来ませんが、近い内に、貴方に届くよう動きます」
「分かった」
静かに肯定したルルーシュに、今度こそ咲世子は、くす、と微笑んだ。
首元の刃が引かれ、ルルーシュが動けるようになっても、彼女は気にしなかった。
やれやれ、と思って向きを変えると、寝室の窓際に、忍び装束の女性が佇んでいる。入りこむ月光に映し出された姿は、凛として美しい。その態度に比較して穏やかな顔は、何か面白そうに笑っていた。
「……何か、おかしい理由でもあったか」
「いいえ。ただ――貴方は、お変わりないようで」
またそれか、とルルーシュは肩を竦めて。
「ああ。……奇遇だな。スザクにも、同じ事を言われたよ」
「そうですか。――スーさんは、お元気の様ですね」
「幸いにもな」
日本に居た頃、魔女を除けば、ルルーシュが最も長い時間を接していた相手がスザク。次が神楽耶だ。彼女は、あれで意外と男勝りだった。スザクより小回りと機転が効いた為に、落とし穴や罠を仕掛けるのが上手かった事を覚えている。
咲世子は、その当時から神楽耶の護衛(と、世話係)を行っていた。当然ながら、スザクとも魔女とも顔見知り。当時は、この目の前のSPメイドも、まだ高校生だった。
「……では、そろそろ失礼致します」
優雅に、彼女は腰からの一礼をする。
「ああ。神楽耶に伝えておいてくれ。……互いの戦いをしようとな」
「確かに。――では」
彼女は、つい、と隣室の扉に視線を向けて。
「扉の向こうで立ち聞きをしている、ラウンズのお二人にも、息災と幸運を、お祈りしておきます」
モニカとアーニャ。二人が咲世子の侵入を感知し、何時の間にか、扉の向こうで気配を殺していた。
その事実をあっさりと読み取り、彼女は突然、目の前から消える。目で追えはしない。まさに“消えた”としか言えない現象。どうやって消えたのか、それはルルーシュにも分からなかった。
「……ルルーシュ。今の誰?」
「夜中に見知らぬ女性を連れ込むのは、感心しませんよ?」
「昔の知人だ。――密偵で暗殺者でもある……顔見知りのメイドだよ」
それが、ナリタへ出かける数日前の夜のことである。
◇
「……と、まあそう言う事が有ったんだ」
「あの世話人か。なるほど」
篠崎咲世子の記憶を引っ張り出してきたのか、魔女は頷いた。
高校生の時、既にかなり腕が立つ人間だったのだ。今の腕は知らないが……ルキアーノでも勝てるかは怪しいレベルと、ルルーシュが判断したのだ。ビスマルクと同レベルと言う事か。
「で?」
さっさと説明をしろと、目で促す。
ルルーシュは若干、辟易したように口を開いた。
「だから、だ。――ナリタで、マオが『偽スザク』を見たと言った時、それは咲世子なのだと判断した」
マオは少女だ。だが、機密情報局の一員で、ギアスユーザーで、しかも《イレギュラーズ》だ。実力は、普通の諜報員以上の物を持っていると、マリアンヌも認めている。
彼女が太刀打ちできない相手。しかも変装をし、彼女を誘いだし、実力を見た上で煙のように消える事が出来る人間だ。タイミング的にも、咲世子で間違いがないと思った。
「そして、その予想“は”正しかったんだ」
「……ふむ」
マオがギアスを受けた。その情報から『偽スザク』=咲世子と見た、ルルーシュの判断が間違っていたのかと思ったが、……どうやら、そう言う訳ではないらしい。
そこまで話すと、ルルーシュは動いた。ごそごそ、と収納容量が大きな実務重視の机から、厳重に包まれた『何か』を取り出す。丁度、魔女の掌より小さい位。15センチ程の品だ。
「見ろ」
包装を剥がし、魔女に示す。
其処にあったのは、投擲に使用される鉄の両刃の武器だ。
「忍者が使う……アレだな? 私も、もっと小さい物を持っているが」
「ああ、アレだ。……名前は忘れたが」
両者共に、顔を揃えて頷く。
笹の葉に似た形を持つ鉄の武器だ。塚は無く、握りの反対側に、丸い穴を伴った錘。壁に刺せば足場になり、打ち合わせれば火花を散らし、取り扱いも簡単な道具が、其処はあった。
二人は名前を忘れているが、『苦無』と呼ばれる武器である。
「これは、マオに向かって放たれた物だ。彼女は、暗闇の中でギアス《ザ・リフレイン》を使い、拳銃で打ち払った。……見ての通り刃が潰してあるから、食い込みこそすれ、突き刺さりはしない。目に当たれば失明くらいは免れないだろうがな。……マオの話では、軌道は上半身を狙っていて、命中していても気絶と打撲と肋骨の骨折で済んでいただろう――とのことだ。だから、そう怖い顔をするな」
速度が速度だったから、拳銃は銃身が痛み、使い物にならなくなった。
しかしまあ、咲世子が本来、敵であると言う立場を考えると、命を落とす心配が無いだけ十分である。
「理屈では分かるがな。……私は養娘を傷者にされて平常心で居られるほど、人間が出来てはいないぞ」
「知っている。その不満は、仮面の男に言え」
だが、その前に話を聞けと、ルルーシュは『苦無』の柄の部分を、指し示す。
「ここだ。この握りの部分を見ろ」
鉄色の武器は、鈍く光り、不気味な波紋を浮かべている。
その柄の部分。ちょうと投擲する際、掌の腹に接する場所に――。
「……名前が彫ってあるな。『篠崎咲世子』と」
「ああ。だからこれは咲世子の物だ」
「……マオを誘い込んだ者が、咲世子の名前を騙った可能性は?」
「無い。お前も解るだろう。……咲世子相手にだぞ? それで大体の説明は付く。――仮に可能性が有っても、これは盗まれた物でもないさ。俺も見覚えが有るし、盗まれていたら咲世子が何か伝えてくる」
「……ふむ」
確かにその通りだ。
「そして実は、この柄の部分に、一枚の紙が結ばれていた」
『苦無』はマオが拾って回収し、胸元に仕舞っていた。
気絶から目覚めた彼女の発言からも、それは確認している。ギアスの様子も無い。
「内容は?」
「アーニャが調査中だ。……だが、恐らくリフレイン関連だろう」
マオと咲世子が接触した倉庫。あの倉庫も関連施設ではないか、と言っていた。
「解るな? リフレインを蔓延させている相手は不明だ。だが、情報を流して来る以上、咲世子は――もっと言えば、神楽耶は麻薬を嫌っていると見て良い。性格的にもだ。そして、咲世子達が此方に情報を送って来るのが主目的だった以上――残った片方でギアスを、マオに刻み込むか? 寸前の戦闘をしたにも関わらずだぞ? だから、両者は違う勢力なのだと思う」
咲世子と神楽耶が、ギアスの事をどこまで知っているかは知らない。だが、神楽耶達と『仮面の男』が同じ陣営とは考えにくい。戦争に手段は関係がないとは言え。そうは言っても礼儀は守るのが彼女達だ。
マオの話を聞いた印象から考えれば、だ。咲世子達の行動に便乗して、他の勢力がギアスを使った。そう思えてくるのだ。そもそも、他者の心を縛るギアスという者を、神楽耶は好ましく思わない。使わないと言っているのではない。使う時は、もっとここぞと言う時に使わせる。
「……なるほど」
ルルーシュの事だから、何か致命的な見落としが有る可能性は否定できない。
が、論理展開に何ら不思議な部分は無い。魔女だって同じ結論だ。
「さて――此処まで話して、有る程度、掴めてきた事が有る」
ルルーシュは、『苦無』の確認を終えた所で、再び梱包し、それを収納する。貴重な証拠品だ。失くすわけにもいかなかった。また咲世子に返す必要もあるだろうし。
そして今度は『特派』から遅れられてきた報告書を取り出す。
「サイタマゲットーで『ヤマト同盟』が使用していたKMF。GX量産型の中から、面白い機構が見つかってな。……自爆で判別しにくいが、恐らく」
「恐らく?」
「R因子の関連だ。詳しい内部の成分分析は、『本国』に任せてある。ジェレミア経由で、バトレーに運ばれる手筈だ。その辺に抜かりは無い」
「バトレー。……バトレー・アスプリウスか。苦労人の」
本国に居る中間管理職の男を思い浮かべ、同情してやった。
R因子を初めとする単語は、専門的な話だ。何も知らない者を相手に説明をすると、非常に面倒臭い。だが、専門知識を持っているC.C.には、それで十分だった。次に促す。
「そうだ。マオにギアスを掛けた男は、命令形……。俺によく似たギアスを持っていると思われる」
滅多に使わないし、コンタクトで抑えてあるから大きな危険は無い。だが、使った場合の事をルルーシュは良く、とても良く知っている。
力を得た事は後悔しない。むしろ感謝をしている。だが、リスクを背負っている事も確かなのだ。
「C.C.……言いたい事は解るな?」
「ああ。解る」
思いかえすのは、もう一月近くも前の出来ごとだ。今迄に手に入れたピースが集まり、形を成す。一月前、同じ事を話しあった。あの時は“不自然な自殺をした”エリア18の王子についてだった。
オマーンとエリア11との関係――その王子は、エリア11に時折、足を運んでいた。
ルブアリハリ砂漠の地下遺跡が示す『教団』の分裂――その何割かが、何処に流れているのか。
サイタマでの突然の不可解な蜂起――鹵獲されたGX量産機体に見える、『教団』の痕跡。
そして仮面のギアスユーザー ――恐らくはルルーシュと同じ、命令形のギアスユーザー。
「……良い感じに混沌として来たな」
「ああ。だが、チャンスでもある」
要素は盤上に揃いつつある。まだ足りない要素が有るし、見えない部分もある。だが、欠片は集まり形を成し始めた。あとは、その形をどう治めるかだ。相手が相手。下手を打てば、相手の思惑に嵌るだろう。
ますますもって、本腰を入れてエリア支配に取り組む必要がありそうだ。
エリア11に潜んでいる闇を引きずり出し、倒す。その為にルルーシュは此処に来たのだから。
「その男」
「……ああ。恐らく、オマーン王子の殺害犯だろうな」
●
「……零」
『何だ』
空間が有った。地の底に広がる、深く、手狭な、それでいて空気の中に密度が籠った空間だ。
密度は、居並ぶ軍服の男達の放つ威圧感だ。畳敷きの座敷部屋だ。壁には日本奪還を謳った掛け軸があり、その前では正座の男達が並んでいる。
『日本解放戦線』本部。
エリア11最大の抵抗勢力が犇めく秘密基地。
其処には今、指導者たる男達と、仮面の男が対面をしていた。
「……この情報は、本当か?」
懐疑的な言葉で、一人の男が呟く。
『嘘だと思うか?』
「…………」
押し黙ってしまった男達の前で、その人物は再度、問いかける。
『私がお前達の要請で調べ、渡した情報に、間違いが今までに、一回たりとも有ったか?』
声は挑戦的で、強い自信に溢れていた。ともすれば演出に思える態度が、何故か心に納得を齎して行く。
そのせい、だろうか。
「……いいや」
渋々とでは有るが同意をした男は、軍服を着た中でも初老の男だ。中心に座り、抵抗勢力の中核を担っている事が、見てとれる。
「確かに零。お前から渡された情報は有効だった。……認めよう」
日本解放戦線・片瀬帯刀。名目上は、この抵抗勢力の総大将に座する、旧日本軍の少将だ。
皺が刻まれたその顔は、けれども苦い物が混ざっている。
「新たにやってくると言う副総督。それと、ほぼ同時期に開催されるサクラダイト先進国会議。――皇族が二名だ。その情報は、我々にとって大きな材料になる……。その点には、感謝をしても良い。だが」
そう、もう直に2名の皇族が来訪する。
その情報を、この仮面の男は伝え、彼らに流したのだ。
それだけで、この男の価値は言うまでも無かった。
『だが、か。――ふん、だからと言って今回の情報が正しいとは限らない、か? それとも、これを機に私が何かを企むか? 日本人は、存外に器量が狭い。……私が効いた武士とは、受けた恩義は誰であっても忘れない、本質を見ている種族だと聞いたがな。――ああ、いや、訂正しよう』
明らかな侮蔑に、憤慨しかけた軍人達に、態度を揺らがすこともしない。
ただ、目の前の男達に対して、冷笑を返す。
『――器量が狭いのは、日本人では無くてお前達だったか』
「貴様……! 口が過ぎるぞ!」
今度こそ腰を上げて立ち上がった男達だったが、それでも殴りかかる事は自制する。
直前に言われた通り、ここで手を出せば先の言葉を認めたことと同意だからだ。
――――日本の為。故国の為。そう口で言っているだけではないか。
見えない仮面の中で、彼は静かに呟く。
――――国を変える。ブリタニアを倒す。その意志も、気概も、覚悟も、全てが中途半端だな。
日本解放戦線の、日本を取り戻すと言う意志は尊重しよう。……だが、それだけだ。
見知らぬ男に頭を下げる事も出来ない組織に何が出来る。少なくとも藤堂鏡志朗は自分に頭を下げた。紅月直人も礼を尽くしてきた。軍人として、“自分を使おう”と彼らがしている時点で、既に助力する気は少なかった。それでも組織を離れないのは、まだ離れても何も出来ないからに過ぎない。
本気で国家を想うなら、己の矜持など折るべきなのだ。
他ならぬ『彼』自身が、それを誰よりも体験しているのだから。
――――だが、牙を研ぐには時間が懸かる。
行き場所がない。戦う力も少ない。だから、今はこの場で耐え忍んでいる。
彼らは軍人だ。戦う事が出来ても、組織を動かすには無駄が多い。無論、組織には政治技能を持った者がいるが、そうした者たちに最大限の便宜を図れる状態とは程遠かった。
第一次太平洋戦争(第二次世界大戦)と同じだ。当時は、軍国主義が蔓延し、非戦派は弾圧を受けたとされる。政治の中に軍人が食い込み、戦うことに鉾を向け続けた。日本が戦わざるを得ない世界情勢が有ったとしても……軍人が政治に口を出した時点で、体制としては危ないのだ。あの時はブリタニア側が観戦を決め込み、ロシアを牽制していた。だから、中国と植民地の抵抗を破って、日本が勝った。
だが、今回は――そのブリタニアが敵だ。当時と同じ体制で、勝てるほどに甘くは無い。
日本解放戦線は、『零』を利用しているつもりだろう。結構、ならば自分も利用するだけの話だ。
「……この情報は、此方で検討させて貰う。――草壁中佐」
「は」
幹部達が動き始めたのを尻目に『零』は身を翻す。
時間の無駄にしかならない。仕事はしたのだ。これ以上、何を言う気も、言われる気も無かった。
『どう使おうとも、それはお前達の勝手だ』
それだけを、言い残して。
サクラダイト生産国会議。
あの軍人達が、そこでどんな働きをしてくれるのか。それを冷静に考え。
今は遠い、アラビアの砂漠を微かに想いながら
用語説明 その18
篠崎流
咲世子が治めている謎のSP術。咲世子で37代目と言う事なので、成立は大体、八百年~千年近く昔になる。SP術と言っているが、変装・尾行・潜入・暗殺と、どうみても忍者の系譜。千年も昔に『忍者』という概念は無い(成立は武士と同じ鎌倉時代である)為、鎌倉初期か、その直前位からの家系だろう。
篠崎家の発祥は諸説あるが、常陸国筑波郡『篠崎』の物部氏。ほか桓武平氏、藤原氏秀郷流、橘氏、清原氏などらしい。
以下・作中での設定(妄想)。
この話では、篠崎流31代が、幕末期に江戸居留守役を務めていた篠崎仲苗である。その後、明治期の動乱と、太平洋戦争。第二次太平洋戦争の渦中にあって、頭首が大きく移り変わり、エリア11と呼ばれる今に、37代目で咲世子に受け継がれた、ということになっている。
つまり篠崎仲苗から辿る。篠崎仲苗の先祖を辿れば、九州・島津氏の系譜になる。初代島津家当主は島津忠久で、彼は父・惟宗忠康と、母・丹後内侍の間に生まれた子供。その丹後内侍が、比企家の血を引いており、比企家は藤原秀郷に連なる家系である。
つまり藤原秀郷――比企――丹後――島津忠久――篠崎仲苗――篠崎咲世子という系譜だ。
この流れなら、間に忍者的な仕事をする篠崎家がこっそり育っていても変では無い、と思う。
登場人物紹介 その18
片瀬帯刀
『日本解放戦線』の指導者。旧階級は少将。と言っても《奇跡の藤堂》こと藤堂鏡志朗に頼っている部分はかなり大きく、本人の実力は今一つ。帝国軍人らしい、正義や根性や頑迷さは有るのだが。
原作では、ナリタ攻防戦の後にタンカーで脱出を図るも、ルルーシュに自爆を演出され死亡。ナナナでは、ナリタ連山で、コーネリア相手に特攻して死亡。可哀想に。
でも、まあ『日本解放戦線』は――決して噛ませ犬では終わらせる気は無い。弱いなりに頑張って貰います。神風とか、実際やられたら凄く嫌だと思うんだ。支配者側からしてみれば。
今回は、地味です。伏線回です(キッパリ)。
サクラダイト生産国会議は、サイタマゲットー以上の描写をするつもりなので、ちょっとチャージ気味ですね。皇族も2名増えますし。
さて、ちょっと解説を。
日本に軍隊が有るのは、第二次世界大戦で負けていないからです。この世界に有るのはアメリカではなく、ブリタニア。故に太平洋戦争で日本と戦いませんでした。というかロシアの牽制までしていました。この辺は、また後日に触れます。ニーナ・“アインシュタイン”とかにも関わるので。
故に、大日本帝国の戦争相手は、清(当時は、まだ中間連邦ではない)及び、各国植民地の反乱だけ。戦況は基本的に日本の有利に進みましたが……、厭戦感情や当時の皇室の意向もあり、最後は、ブリタニアと欧州諸国の取り直しという形を持って引き分けという扱いに落ちました。
日本は中国から超多額の賠償金を確保し、代わりに併合した半島を解放しました。まあ、解放したのは良い物の、日本に依存していた体制を立て直せず、中華に組み込まれてしまいます(この時の出費や併合が後々、中華連邦に繋がっていく)が、それも別で語りましょう。
で、多額の賠償金を使って戦後経済を立て直し、近代化。帝国憲法も改正され、かなり民主化されました。そして高度経済成長から現代へと繋がる訳です。だから、帝国陸軍は(名前こそ変えましたが)健在。勿論この世界の日本に、第九条は有りません。
さて、次回は副総督が来ます。次にラウンズで大活躍するのは誰かな……?
一言でも感想を頂けると、喜びます。
では、また次回!
(12月11日・投稿)