香月博士の部屋に殴りこみ…もとい直訴に行った白銀、当初は自分の意見が尊重される可能性は限りなく低い事を判っていたが返ってきた返事は
「良いわよ」
「へ?」
「だから良いって言ってんじゃない…若年性痴呆症?」
の一言だった
理由を聞けば目的の白銀の記憶は訓練中に最も多量にフラッシュバックした。それこそ以前の人格が表層に浮き出るほどに
精神的に不安定だったのは人格の攻撃面のみが浮き出たのではないかと自身の予想を口にする香月博士
「よっぽどBETAに恨みでも持ってたんじゃない?」
此れまでの記憶の発現は自身と関わり深い何かが起因となって起こっているのだから今回も何処かにソレが存在している筈
「BETAに親愛を抱くわけないんだから宿るのは怒りとか負の感情でしょ?今までの記憶の発現が全て正の感情を主として表れているなら…一番手っ取り早い方法じゃない」
事実としてソレが最も早く記憶を取り戻せる可能性が高い…だが白銀の意見、衛士にしてくれと言う意見を全て呑んだわけではない
「あんたに死なれるとこっちも色々と迷惑なんだから死なない程度に自分を取り戻してからじゃ無いとダメよ?出る度にあんな風になられたんじゃすぐ死にそうだから…判ったかしら?白銀武?」
白銀の記憶自体に霞がかった時間、シュミレーターに乗っていた時の彼の奇怪な言動とさらに発想を超えた機動とFCSを無視しながらも確実にBETAを仕留めていた空間把握能力の異常性をたっぷり説明された
「まぁ素直に凄いって事は認めてあげるわ…仮想とは言え此処までのスコアを保持した衛士はそういないわよ」
取りあえず説明の途中から白銀の意識は遠のいていたと此処に補足として書いておく
数日後
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白銀武は凄まじく後悔していた
そりゃぁ最初は喜びと驚きが同時に襲ってきたさ…何とあの香月博士が俺を南国のパラダイスに連れて行って下さると言うんだから
意気揚々と乗り込んだ潜水艦…何故か着させられた救命胴衣とサバイバルキット一式、さらに渡された中身がそれなりに詰まったバック
予測は出来た…でもさ…魚雷に人間を搭載して撃つのはどうかと思いますよ?マジで死ねます
白銀武はライブで人間魚雷回天ごっこをしていた…当然だが命がけで
「あのクソアマァアアアアアアアア!!」
心の底から恨みました…本当ですよ
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「ゼ…ハ…ゼ…し・死ぬかと思った」
身体は既に限界を超えた活動の為に空気を求め続ける、取り敢えずは死ぬ気で泳いで本当に死に掛けて陸地に到着した
数分間は地面につっぷしたままの状態で息を整える
「まさか…途中で海底にぶつかって…止まるとは」
本来ならばもっと陸地近くに出る予定だったのだろう、だが予想に反してその事故によって壊れた魚雷君から抜け出した白銀が見たのは最も近い島でも一キロ以上離れておりさらにたらと海流の流れが速い海、小島が多いい為に海流が複雑になっているのだろう
その為にその一キロを泳ぐために凄まじい体力を消費した
常人ならば間違いなく途中で息絶えていただろう
どんな嫌がらせだ等と思いながら背中に背負ったままだったリュックの固定具を外し引き摺りながら彼は自分の目の前に持ってくるとノロノロとした手つきでソレを開く
「…何だコレ?」
取りあえず一番最初に目に入ったのが茶封筒、海水に濡れて酷く開け難いが
「ん~何々…追跡…もしかしなくても命令書?……なんだとぉおおおおおお!!」
凄まじい叫びと同時に飛び起きる白銀、その紙にはこう記されていた
『取りあえずこの手紙を読んでいるという事は島に着いたって事ね。まさか私がアンタを態々そんなパラダイスに連れて行くと思った?アンタには特別に別の仕事をあげるわ
今その島にはアンタ以外に207小隊が居るわ、彼女達は仮想敵であるアンタから逃走して退却地点まで逃げるのが目的。
アンタは索敵をしつつ追跡、目的は純粋に威圧感を与えるだけで良いわ、見つかったらアウト、じゃぁ幸運を祈るから適当に頑張ってね
香月夕呼』
こうして白銀の一人ぼっちのワクワクドキドキ追跡者ライフ~無人島編~が始まるのだった
後書き
一人ぼっちの寂しい白銀君