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No.18683の一覧
[0] コードギアス 反逆のルルーシュ~架橋のエトランジュ~[歌姫](2010/05/15 08:35)
[1] プロローグ&第一話  黒へと繋がる青い橋[歌姫](2010/07/24 08:56)
[2] 第二話  ファーストコンタクト[歌姫](2010/05/15 08:34)
[3] 第三話  ギアス国家[歌姫](2012/08/04 10:24)
[4] 挿話 エトランジュのギアス[歌姫](2010/05/23 13:41)
[5] 第四話 キョウト会談[歌姫](2010/08/07 11:59)
[6] 第五話  シャーリーと恋心の行方[歌姫](2010/06/05 16:48)
[7] 挿話  父親と娘と恋心[歌姫](2010/06/11 21:19)
[8] 第六話  同情のマオ[歌姫](2010/06/19 11:50)
[9] 第七話  魔女狩り[歌姫](2010/06/26 11:21)
[10] 第八話  それぞれのジレンマ[歌姫](2010/07/03 22:23)
[11] 第九話  上に立つ者の覚悟[歌姫](2010/07/10 11:33)
[12] 第十話  鳥籠姫からの電話[歌姫](2010/07/24 08:57)
[13] 第十一話  鏡の中のユフィ[歌姫](2010/07/24 10:10)
[15] 第十二話  海を漂う井戸[歌姫](2010/07/31 12:01)
[16] 第十三話  絡まり合うルール[歌姫](2010/08/07 11:53)
[17] 第十四話  枢木 スザクに願う[歌姫](2010/08/21 11:24)
[18] 第十五話  別れの陽が昇る時[歌姫](2010/08/21 12:57)
[19] 第十六話  アッシュフォードの少女達[歌姫](2011/02/12 10:47)
[20] 第十七話  交錯する思惑[歌姫](2010/09/11 12:52)
[21] 第十八話  盲目の愛情[歌姫](2010/09/11 12:09)
[22] 第十九話  皇子と皇女の計画[歌姫](2010/09/25 13:41)
[23] 第二十話  合縁奇縁の特区、生々流転の旅立ち[歌姫](2010/09/30 07:39)
[24] 挿話  親の心、子知らず ~反抗のカレン~[歌姫](2010/09/30 07:32)
[25] 挿話  鏡の中の幻影 ~両性のアルカディア~[歌姫](2010/10/09 10:35)
[26] 挿話  カルチャーショックプリンセス ~交流のユフィ~[歌姫](2010/10/09 11:36)
[27] 挿話  それぞれの特区[歌姫](2010/10/16 12:06)
[28] 挿話  ティアラの気持ち  ~自立のナナリー~[歌姫](2010/10/23 10:49)
[29] コードギアス R2 第一話  朱禁城の再会[歌姫](2010/10/30 15:44)
[30] 第二話  青の女王と白の皇子[歌姫](2010/11/13 11:51)
[31] 第三話  闇夜の密談[歌姫](2010/11/13 11:35)
[32] 第四話  花嫁救出劇[歌姫](2012/12/02 21:08)
[33] 第五話  外に望む世界[歌姫](2010/11/27 10:55)
[34] 第六話  束ねられた想いの力[歌姫](2010/12/11 11:48)
[35] 挿話  戦場の子供達 [歌姫](2010/12/11 11:42)
[36] 第七話  プレバレーション オブ パーティー[歌姫](2010/12/18 11:41)
[37] 第八話  束の間の邂逅[歌姫](2010/12/25 10:20)
[38] 第九話  呉越同舟狂想曲[歌姫](2011/01/08 12:02)
[39] 第十話  苦悩のコーネリア[歌姫](2011/01/08 12:00)
[40] 第十一話  零れ落ちる秘密[歌姫](2011/01/22 10:58)
[41] 第十二話  迷い子達に差し伸べられた手[歌姫](2011/01/23 14:21)
[42] 第十三話  ゼロ・レスキュー[歌姫](2011/02/05 11:54)
[43] 第十四話  届いた言の葉[歌姫](2011/02/12 10:52)
[44] 第十五話  閉じられたリンク[歌姫](2011/02/12 10:37)
[45] 第十六話  連鎖する絆[歌姫](2011/02/26 11:10)
[46] 挿話  叱責のルルーシュ[歌姫](2011/03/05 13:08)
[47] 第十七話  ブリタニアの姉妹[歌姫](2011/03/13 19:30)
[48] 挿話  伝わる想い、伝わらなかった想い[歌姫](2011/03/19 11:12)
[49] 挿話  ガールズ ラバー[歌姫](2011/03/19 11:09)
[50] 第十八話  闇の裏に灯る光[歌姫](2011/04/02 10:43)
[51] 第十九話  支配の終わりの始まり[歌姫](2011/04/02 10:35)
[52] 第二十話  事実と真実の境界にて[歌姫](2011/04/09 09:56)
[53] 第二十一話  決断のユフィ[歌姫](2011/04/16 11:36)
[54] 第二十二話  騎士の意地[歌姫](2011/04/23 11:38)
[55] 第二十三話  廻ってきた順番[歌姫](2011/04/23 11:34)
[56] 第二十四話  悲しみを超えて[歌姫](2011/05/07 09:50)
[57] 挿話  優しい世界を踏みしめ  ~開眼のナナリー~[歌姫](2011/05/07 09:52)
[58] 挿話  弟妹喧嘩のススメ  ~嫉妬のロロ~[歌姫](2011/05/14 09:34)
[59] 第二十五話  動き出した世界[歌姫](2011/05/28 09:18)
[60] 第二十六話  海上の交差点[歌姫](2011/06/04 11:05)
[61] 第二十七話  嵐への備え[歌姫](2011/06/11 10:32)
[62] 第二十八話  策謀の先回り[歌姫](2011/06/11 10:22)
[63] 第二十九話  ゼロ包囲網[歌姫](2011/06/25 11:50)
[64] 第三十話  第二次日本攻防戦[歌姫](2011/07/16 08:24)
[65] 第三十一話  閃光のマリアンヌ[歌姫](2011/07/09 09:30)
[66] 第三十二話  ロード・オブ・オレンジ[歌姫](2011/07/16 08:31)
[67] 第三十三話  無自覚な裏切り[歌姫](2011/07/23 09:01)
[68] 第三十四話  コード狩り[歌姫](2011/07/30 10:22)
[69] 第三十五話  悪意の事実と真実[歌姫](2011/08/06 13:51)
[70] 挿話  極秘査問会 ~糾弾の扇~[歌姫](2011/08/13 11:24)
[71] 第三十六話  父の帰還[歌姫](2011/08/20 10:20)
[72] 第三十七話  降ろされた重荷[歌姫](2011/09/03 11:28)
[73] 第三十八話  逆境のブリタニア[歌姫](2011/09/03 11:24)
[74] 挿話  私は貴方の物語 ~幸福のエトランジュ~[歌姫](2011/09/03 11:55)
[75] 第三十九話  変わりゆくもの[歌姫](2011/09/17 22:43)
[76] 第四十話  決意とともに行く戦場[歌姫](2012/01/07 09:24)
[77] 第四十一話  エーギル海域戦[歌姫](2013/01/20 14:53)
[78] 第四十二話  フレイヤの息吹[歌姫](2013/01/20 14:56)
[79] 第四十三話  アルフォンスの仮面[歌姫](2013/01/20 15:01)
[80] 第四十四話  光差す未来への道[歌姫](2013/01/20 15:09)
[81] 第四十五話  灰色の求婚[歌姫](2013/01/20 15:12)
[82] 第四十六話  先行く者[歌姫](2013/01/20 15:15)
[83] 第四十七話  合わせ鏡の成れの果て[歌姫](2013/01/20 14:59)
[84] 第四十八話  王の歴史[歌姫](2013/01/20 14:58)
[85] 挿話   交わる絆   ~交流のアッシュフォード~[歌姫](2012/12/30 18:51)
[86] 挿話  夜のお茶会 ~憂鬱の姫君達~[歌姫](2012/12/30 14:03)
[87] 第四十九話  その手の中の希望[歌姫](2013/02/23 12:35)
[88] 第五十話  アイギスの盾[歌姫](2013/03/22 22:11)
[89] 第五十一話  皇帝 シャルル[歌姫](2013/04/20 12:39)
[90] 第五十二話  すべてに正義を[歌姫](2013/04/20 11:22)
[91] 最終話  帰る場所&エピローグ[歌姫](2013/05/04 11:58)
[92] コードギアス 反逆のルルーシュ ~架橋のエトランジュ~ オリキャラ紹介[歌姫](2011/04/06 10:27)
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[18683] 挿話  それぞれの特区
Name: 歌姫◆59f621b7 ID:e85ac49a 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/10/16 12:06
  挿話  それぞれの特区



 「扇さーん、ディートハルトさんからここに松茸あるって聞いて来たんですけど、一緒に食べさせて貰っていいですか?」

 日本食の試食会の翌日、ディートハルトから扇の家にエトランジュから贈られた松茸があると聞いてやって来たカレンに、扇は目を丸くしながら出迎えた。
 ちなみに表向きには妻としている千草は現在買い物に出ており、ここにはいない。

 「どうしたんだカレン。十月のユーフェミア皇女の誕生祭りの試食会で松茸が出たと聞いたんだが」

 「それがね・・・」

 カレンが残念そうな声で試食会であった松茸騒動を語ると、扇はそういえば今朝の朝刊見ていなかったなと特区内で発行されている日本特区新聞を手に取った。

 「本当だ、松茸が日本だけで好まれているって出てるな。
 輸入許可は下りなかったから日本産のみ取扱い可か・・・エトランジュ様もいいタイミングで配ってくれたもんだ」

 「あんな状況で私も食べるなんて言えなくて、それで食べ損ねちゃった。
 ちょっとだけでいいんで、分けてくれませんか?」

 「そういうことなら食べていくといい。千草が調理方法知らなかったもんだから、まったく手つかずだったんだ。
 ・・・でも参ったな。外国人は松茸の匂い駄目なんだろ?千草食べられるかな」

 ふと扇が心配そうな顔をしたので、そういえば扇の内縁の奥さんはハーフだったとカレンはどうしようと悩んだ。

 「貰ってから時間経ってるってことは冷凍保存でしょ?香りは残念だけど飛んでるんじゃないかな」

 「そうか、それなら何とか大丈夫かもな。
 実はレシピを同僚の教師から貰って来たから、千草が帰ってきたら作って貰うよ」

 扇は経済特区日本にある小学校の教師をしている。ナンバーズを意識してしまうことからクラスは数字やアルファベッドではなく、幼稚園のように月組や星組と名付けられた。

 「扇さん、何だか楽しそう。お兄ちゃんも生きていたらきっと・・・」

 「ああ、ナオトも喜んだろうにな。
 生徒達ものびのびと勉強が出来ると喜んでなあ、戦争前にあったモンスターペアレントや学級崩壊とかいじめとかもなくて、理想的な環境だよ」

 扇が嬉しそうに学校の様子を語るのを見て、カレンは一時的にせよ己の望みが叶った扇に申し訳なく思った。

 (ごめんなさい扇さん・・・一年もすれば終わっちゃう教師生活なんです。
 でも日本が真に解放されたら、副指令は誰かに任せてずっと先生して貰いますから)

 ずっと器じゃないと嘆いていた重責から解放されたせいか、扇は実に生き生きしている。

 「まあ、とにかく千草が来るまで待っててくれ。そういや本部にいる連中は元気か?
 公衆電話で話したいが、禁止されてるからな」

 騎士団本部の場所が探知されるのを防ぐため、特区内の公衆電話から連絡を取るのは禁止されている。
 そのため、騎士団への連絡はすべてカレンを経由して行われることになっていた。

 「うん、玉城もゼロも元気にしてる。
 日本が落ち着いたからゼロ達は一度海外を回って、レジスタンス同盟を組むって言ってたわ」

 「そうか・・・経済特区にいるのは俺とカレンだけだからな。他の連中は?」

 「農業特区の南さんはホッカイドウでお米作ってて、吉田さんは酪農やってるんだって。
 工業特区の井上さんと杉山さんは、主に電化製品作ってるみたい」

 ホッカイドウでなるべく日持ちするものを作って日本解放時に大いに活躍させ、さらに工業特区で電化製品を作る過程で部品などを横流しする構想の元、特区のメンバーはそれぞれ動いていた。

 「順調ならいいんだ。このまま平和になれば、それでもいいのかもな・・・」

 妹分のカレンも親子の誤解が解けてそれなりにうまくいっているようだし、何も波風を立てなくてもという思いが扇にはあったが、さすがにそれを口には出さない。

 「平和が一番よ、扇さん。でも、ブリタニアが支配している限り、しょせんは一時しのぎでしかないと思う」

 カレンはたかが試食会を催すのに口実を設けねばならない現状や、学校にブリタニアの思想を刷り込む時間割を入れられたりしている状況を語ると、扇はそうだなと溜息を吐く。

 「その思想教育の時間枠は、適当にごまかしてるんだけどな・・・カレンが教育担当官をブリタニア人の協力者にしてくれたから」

 「こういうことのために私がいるんだから、気にしないで。
 そうそう、今度から各特区間で郵便が開通することになったの。
 検閲が入るけど普通の手紙ならやりとり出来るから、内容に気をつけてみんなと連絡してね」

 ゼロが暗号を考えてくれるから出来たら教えるというカレンに、扇は複雑そうに笑った。

 「解った。ないよりマシだけど、検閲か・・・やっぱりブリタニアがいる限り普通の生活は駄目なんだな」

 「だから私達が戦うんじゃないですか。頑張りましょうね」

 カレンは握りこぶしを作って鼓舞すると、扇はああ、と頷く。

 「ところでカレン、千草が帰ってくるまでまだかかるんだが、よかったら先に俺と作るか?」

 そう長いことここにいるわけにもいかないだろうと言う扇に、カレンはう、うんと頷きながら台所に立つ。

 そして十分後、扇は心の中で亡き親友に語りかけた。

 (ナオト・・・貴族育ちにすると駄目なんだな。
 ああそういえば小母さんもドジなところあったな・・・ならこれは血筋なんだろうか・・・?)

 たった十分で調味料を入れ間違えたり無駄に力を入れたりして細かくなったりしたので食べられなくなった下ごしらえの材料と、砕けた皿を量産したカレンに扇は溜息をつく。
 
 ごめんもういいよ俺がやるからと扇に言われた時、無駄に家事能力の高いルルーシュを思い浮かべてカレンは言った。

 「シュタットフェルト家じゃこんなこと出来ないんで、やらせて下さい扇さん!!」

 余りの気迫に気圧された扇がこくこくと頷くと、カレンは再び包丁を手に取った。
 そして思い切り包丁を振り落として大根を切った・・・まな板ごと。

 それから五分後、壊した調理器具を買いに行くために扇宅を出るカレンの姿があった。



 カレンが特区内にあるデパートの調理器具コーナーに足を向けると、彼女はこの特区日本でユーフェミアに次いで有名なシュタットフェルト家の令嬢のため、それなりに顔を知られているせいで視線が集まった。

 「シュタットフェルト伯の令嬢だ・・・何でこんなところにいるんだろ」

 「さあ・・・さっきからまな板とか見てるわね。家で料理でもするのかしら」

 カレンは居心地の悪さに小さく震えると、さっさと用事を終わらせるべく己が壊した調理器具をカートに入れていく。

 そして会計のためにレジに並ぶと、他はすべて日本人だったために一斉に日本人達が彼女に列を譲ろうとしたので、カレンは手を振った。

 「いいんですいいんです、順番は守りますから!」

 カレンが日本人との間に生まれたハーフであることを知らない彼らは、その台詞に感動した。

 「まあ、シュタットフェルトの御令嬢は優しいのですね。この前、順番譲らなかったって激怒したブリタニア人がいたので・・・」

 (やっぱりか!これだからブリタニアは!!)

 「最低限のマナーを守らないなんて、それこそブリタニアの品位を落とす行為だわ。
 こちらできつく叱責します!まったくもう・・・!」

 カレンは見つけたらシメてやる、と決意すると、会計を済ませた。

 扇宅へ戻る途中、さっそく己でシメなければならないブリタニア人と遭遇した。

 十歳くらいの少年がベンチに座って美味しそうにおはぎを食べながら会計をしている母親を待っていると、ちょうどそこへいかにも貴族ですという服装をした軽薄な雰囲気の二十歳前後の男二人が通りかかり、そのおはぎを取り上げて床に叩きつけた。

 「イレヴンのガキが、さっさとどけ!ブリタニア貴族が来たんだ、言われなくても場所を開けろよバカ」

 「言われないと解らない脳みそだから仕方ないだろ。おら、落ちたまずそうなもの取って食え!」

 「あいつら・・・!」

 泣きだした少年を無理やりベンチから引き離してどかっと腰を下した貴族に、母親が慌てて飛んできて息子を抱きしめる。

 その様子を警備員達も見て見ぬふりをしているのに腹が立ったカレンは、その貴族の前にやって来た。

 「貴方達をこれから警察に連れてくわ。罪状は不当な理由で特区内の子供を傷つけた暴行の現行犯よ」

 「なんだと?僕の家は男爵家だぞ!たかがイレヴンのガキをどうこうしたからって・・・!」

 「特区法令により、何人たりとも正当な理由なく日本人に危害を加えることは禁止されているはずよ。
 貴方達は今、ただベンチに座っていただけの子供の腕を無理やり引っ張って床に投げ倒したわよね?」

 「う、うるさい!僕の家は男爵・・・」

 「おい、こいつシュタットフェルト伯爵の令嬢だぞ!経済特区責任者の娘だ!」

 「・・・へ?」

 こういう権力を笠に着て無法な振る舞いをする人間は、より強い権威に弱い。
 自分が何もしていないと訴えても、この少女が見たままを証言すればどちらの言い分が取られるかは明々白々である。

 「いや、あのですねこういうくだらないことで警察の手を・・・」

 「子供に手を上げて平然としてるような人間として間違っている人を、この特区内でのさばらせておくのは、ユーフェミア皇女殿下の気高いご意志に反します!」

 こういう場面で安易に抜かれる伝家の宝刀を持ち出されて、男爵家の男は途端に卑屈になって言い訳にならない言い訳を始めた。

 「いやあの我が男爵家はこの特区に多大な寄付を・・・」

 「貴方の父君の財力は必要ですが、貴方自身はいりません。
 とっとと荷物まとめて出て行って二度と出入りしないことで男爵家の名誉を守るか、警察沙汰になって御父君もろとも特区のニュースの一面を飾るか、どちらを選びます?」

 「今すぐ租界へ帰らせて頂きます!」

 選択の余地はなかった。
 男爵家のバカ息子達が泡を食って逃げだすのを、その場に居合わせた日本人達は笑いをこらえて見送った。
 
 「あの無法を働いた者は二度と特区に出入りさせません。
 表沙汰に出来ず申し訳ありませんが、これでよしとして頂けますか?」

 カレンの言葉にむやみに騒ぎを起こしてせっかくの特区を潰されたくない日本人達が同意するとカレンはごめんなさいと再度謝罪した後、と扇宅に向かって小走りで走り去った。

 (これで三人目だ・・・短期間でこういうのが出られると困るのよねほんと)

 口止めしたからと言っても、人の口に戸は立てられない。
 積み重ねればブリタニア人の法を無視した行為が許され続けると、日本人達が特区から離れる危険がある。

 (始まったばかりだってのに・・・いったん成功させないといけないんだから、一度きつく全体でシメたほうがいいかもしれないなあ)

 カレンは政庁までコーネリアに報告に出向いているユーフェミアに相談するかと、溜息をつくのだった。



 同時刻、政庁でコーネリアに面会したユーフェミアは特区の報告を行った。
 未だに身体が思うように動かないコーネリアは無理をして正装をまとい、総督室でその報告を聞いている。

 「順調にいっているようなら何よりだ。
 農業特区は元から農業を営んでいる者達が中心なので今年中の収穫もあり、か」

 「ええ、これでエリア11の食料自給率の安定が見込めます。
 工業特区における電化製品も、来月中にはエリア11内で販売が可能とのことですわ」

 「よくやったユーフェミア副総督。だが、十月のお前の誕生日を祝うこの企画だが・・・」

 特区業績に置いて見事な成果を上げている妹に、コーネリアは成長したと喜びつつも日本人に甘い政策を取る彼女にどうも不安を覚えていた。

 「はい、十月にある私の誕生日をお祝いしてくれることになったのです。
 試食会や出し物の確認も済んだのですが、楽しかったですわ」

 「ダールトンから聞いた。オクトパスだの異様な臭いのキノコだのという意味不明な食材をどう扱うかで揉めたとな」

 「別ににほ・・・いえ、イレヴンの方々に悪気があったわけではないのですから、よろしいではありませんか」

 「それはそうだが、あまり奴らに甘い政策を取るなよ。
 ・・・今のところはバランスが取れているようだから、この調子でな」

 ユーフェミアが日本人をイレヴンと呼んだことで、きちんとブリタニア人と区別をつけていることが出来ているならそうきつく言うまいと考えた。

 「平和的な手段で交流を深めていく方がいいと思ったのですわ。
 それにルルーシュも食べていたっていう屋台の食べ物を私も食べてみたかったのですもの」

 「何、ルルーシュが?何故屋台の食べ物など食べていたのだ」

 ろくな食生活をさせていなかったのかと眉をひそめるコーネリアに、ユーフェミアの背後に控えていたスザクが答えた。

 「実は日本には祭りの際に屋台をたくさん並べる風習がありまして・・・。
 ちょうどルルーシュ・・・殿下がおいでの際は預かっていた自分の家でお祭りが幾度か開かれておりましたから」

 「そういうことか・・・それでお前も興味を示したのか」

 「ええ、とても面白い食べ物ばかりでしたわ。
 切ったら犬の絵柄が出てくるマキズシとか、オセンベイにソースで絵を描いたりとか、ナナリーが好きだって言うわたあめも美味しくて!」

 いかに試食品で食べたものが見た目にも楽しくて美味しかったかを嬉しそうに語るユーフェミアに、コーネリアは亡き末弟と末妹を思い浮かべた。

 「そうか、それならぜひ私も食べてみたいものだな」

 既に問題がないものばかりに許可を出してあるのなら、そうまずいものはあるまいと考えたコーネリアの言葉に、ユーフェミアは顔を輝かせた。

 「ええ、ぜひおいでになって下さいな!オクトパスというと皆さん気持ち悪がりますけど、茹でるだけであんなに美味しそうなんです。
 和菓子もご覧になって下さいな、綺麗でしょう?」

 報告書に添付された美しい花形の和菓子の写真に、コーネリアはほう、と素直に感心する。

 「なるほど、ブリタニアとはまた違った趣きの菓子だな。
 お前の誕生日だ、好きにするといい」

 実は本国の目もあるのでもう少し格を重んじたパーティーにするよう言い聞かせようと思っていたコーネリアだが、この地で儚く散った弟達が好きだったものを自分もと言う彼女らしい思いに情を動かされ、やめることにした。

 「ありがとうございますコーネリア総督閣下。
 閣下がお越しになって下さることが、何より嬉しいプレゼントですわ」

 日本特区に反対していた姉が来てくれるのが嬉しいと全身で語るユーフェミアに、コーネリアも笑みを浮かべる。

 「総督として一度は視察に行かねばならんと思っていたところだ。
 十月には私の身体も元に戻っているだろうから、安心しろ」

 「はい、お待ちしておりますね。では、私はそろそろ特区に帰ります」

 ユーフェミアは特区に集中するため、現在の住居は経済特区フジである。

 「そう急がずとも・・・今夜は政庁に泊っていけばよかろう」

 「いいえ、まだまだ仕事が残っておりますもの。
 明後日からは農業特区ホッカイドウに視察に行かなくてはなりませんし・・・」

 「ああ、あそこは冬になれば雪が凄いそうだからな。今のうちに行った方がいいだろう」

 「ええ、ブリタニア特区協力者のエドワードさんが気温の変化をよく知らずに風邪をこじらせて入院してしまったそうですの。
 お見舞いは感染ったらいけないということで遠慮させて頂きますけど・・・」

 ユーフェミアが少し残念そうなので、コーネリアは当然だと頷く。

 「お前に何かあったら、特区もまずいことになる。
 ダールトンからろくに睡眠もとらず無理をしていたと聞いたが、くれぐれも自愛するように」

 「皆様からもそう叱られてしまいました。
 早寝早起き、栄養のとれた食事をするだけでも違うとエドワードさんが教えて下さいましたから。あと、アロマテラピーの方法など」

 「いいことだ。なかなかいいアドバイザーがいるようで、安心した」

 こういう面での的確なアドバイスは、ダールトンやスザクなどでは難しいだろう。
 自分の代わりに私的な面でも気にかけてくれる者がいることに、コーネリアは安堵した。

 「政治を司る者としての自覚も出たようで、私は嬉しいぞユフィ。
 ・・・くれぐれも身体に気をつけるように」

 「お姉様・・・!はい!」

 ユーフェミアは最愛の姉に褒められたことが嬉しくて、ユーフェミアは笑顔で総督室を後にする。

 それを見送ったコーネリアは、ずっと己が守ってきた最愛の宝物の成長を確かに喜びながらも、同時にどこか寂しいものを感じて小さく首を横に振った。

 「・・・少し見ない間に、大きく成長したようだなユフィは」

 「はい、姫様。この分ならば黒の騎士団を始めとするテロリストをエリア11から排斥出来れば、この地はユーフェミア様にお任せしても安心かと」

 ギルフォードの言葉にコーネリアはそうだなと頷くと、黒の騎士団についての報告書を再度手にする。

 「特区にはあれ以降手出しはしていないようだが、各地で犯罪組織の撲滅を行っているな。
 最近では数が少なくなっているせいで数ヶ所にとどまっているようだが」

 「は、特にリフレイン密売組織はほとんどが壊滅しているようです。
 情けないことに地方長官などの高官が関与していた動きが明らかになりまして、ユーフェミア様もたいそうお怒りで厳罰に処すようにおっしゃっておいででした」

 「そんなザマだから、ゼロが調子に乗るのだ!
 幸か不幸か連中は今静かだ・・・ブリタニアの国威をこれ以上落とすわけにはいかん」
 
 コーネリアは現在収監中の汚職に関わった高官達の処刑を決定すると、特区日本の影響で日本文化に興味を示すブリタニア人が増えたと特集が組まれた新聞に視線を落とす。

 「日本食の次はキモノか・・・確かに美しい柄だが」

 「着るのは難しいのでペルシャ絨毯のようにインテリアとして飾る者がいるそうですね。ユーフェミア様のお誕生日に献上するという企画があるとか」

 業績も順調に上がっており、租界から特区に観光目的で訪れるブリタニア人もユーフェミアの誕生日以降は増えるだろう。特区が成功したと言える日が来るのも、そう遠くはないかもしれない。
 特区に対して収益をブリタニアに戻す法案を早急に通すべきかもしれないと、コーネリアは考えた。

 (イレヴンの支持を集めているユフィが締め付けるより、私がやる方がいい。
 あれに対してイレヴンに不信を抱かれたら、特区が終わるからな)

 コーネリアはそう決意すると、執務室で書類に向かうのだった。



 カレンが扇の家に戻ると、彼の内縁の妻である千草が戻って来ていた。

 「戻りました扇さん!壊しちゃった器具、買ってきました」

 「ああ、千草も今戻ってきたところだから、ちょうどよかったよ」

 無残に壊された料理器具を前に途方に暮れていた褐色の肌をした背の高い女性・千草ことヴィレッタは、カレンが買ってきた調理器具を見てほっと胸を撫で下ろした。

 「お帰りなさい、カレンさん。
 はじめまして、千草といいます。よろしくお願いします」

 にっこりと穏やかな笑みを浮かべる女性の声に、カレンはどこかで聞いたような声と内心で考え込むが、まさか目の前の女性が日本人にとって忌むべき純血派の軍人であるヴィレッタ・ヌゥだとは思いもつかなかった。
 いつもナイトメアで戦っていたのでヴィレッタの顔を見たことがなかったし、そもそも雰囲気からして軍人には見えないのだから無理もない。

 「あ、私こうづ・・・いえ、カレン・シュタットフェルトと言います。
 扇さんには兄との関係でお世話になってました」

 たとえ扇の内縁の妻といえども、どこから漏れるか解らないので素性はバラすなとルルーシュから命じられているカレンがそう自己紹介する。

 「ええ、要さんからお話は伺っています。今日は松茸でしたね。
 要さんの同僚の人から貰ったレシピがありますので、今から作りますから少し待って貰えますか?」

 「す、すみません・・・調理器具壊しちゃって」

 そう言ってカレンが買い揃えた調理器具をヴィレッタに手渡すと、彼女は礼を言って受け取り、手際よくレシピを見ながら料理を始めた。

 冷凍されていた松茸は既に解凍されており、香りは飛んでいたのでヴィレッタは少々顔をしかめた程度で先日のダールトンのような反応はなく、料理が完成する。

 「あんまり香りしないなあ・・・冷凍ものだから仕方ないけど」

 「そうだな・・・でもお吸い物はいい香りだぞ」

 ヴィレッタがマスクをして無理して作ってくれた松茸の吸い物の香りを、扇とカレンが堪能する。

 「ん~、おいしい!松茸ごはんに網焼きー。お母さんにも食べさせてあげたいなあ」

 「エトランジュ様にお願いすれば、また送ってくれるんじゃないのか?」

 EUでは価値がないらしいから、言えば送って貰えるだろうという扇に、カレンは少々申し訳なさそうな顔になる。

 「でもこっちから言ってばかりっていうのもねえ・・・何か日本から送れるものがあればいいんだけど」

 「それもそうか。まあ機会を見て松茸が手に入ったら、小母さんに送ってやればいいさ」

 扇の言葉にそうね、とカレンが笑うと、匂いは合わないが口には合ったらしく、ヴィレッタも松茸を食べている。

 「匂いは苦手ですけど、味はいいですね。
 慣れれば気にならないから、ブリタニアも輸入を認めてくれればいいのに」

 「松茸が受け入れられても、戦争してるからEUからの輸入は厳しいかもな。
 ああでも中華連邦からなら・・・」

 扇がそう言いかけたが中華とブリタニアとの政略結婚を阻止するべくゼロとエトランジュが動いているんだっけと思いだし、日本解放まで松茸は当分お預けだなと内心で溜息をつく。

 「・・・ま、栽培とか出来るようになったら、食べられるようになるさ。
 食事と言えば、明日から学校で給食が出るんだ。そっちも楽しみでなあ」

 教師生活を堪能しているらしい扇の話を、カレンとヴィレッタが食事をしながら楽しそうに聞いている。

 松茸づくしの夕食が終わった後、カレンは時計を見て慌てて立ちあがった。

 「やばい、そろそろ帰らなきゃ!今日はごちそうさまでした扇さん!」

 「ああ、遅くならないうちに戻った方がいいな。じゃあ、また」

 「はい。千草さんも、夕食美味しかったです。では、また」

 「ええ、またどうかいらっしゃってね」

 自分の正体が知られないよう軽く変装したカレンは、とうとう千草(ヴィレッタ)の正体に気づくことなく扇宅を出た。

 この辺りは扇と千草のように日本人やブリタニア人、もしくはハーフが共に居住する地域で、特区内でも注目が集まっている場所だ。

 ユーフェミアの理想に一番近いとされているが、同時に文化や習慣の違いによるトラブルが多い地帯でもあるためなのだが、ことがことなだけになかなか解決が難しい。

 ユーフェミアから黒の騎士団内でもブリタニア人がいるそうだが、このようなトラブルにはどう対処しているのかと尋ねられたことがある。
 黒の騎士団の場合、ブリタニア人でも日本人でもないエトランジュ達が間に立っており、重いトラブルだとゼロ自ら対処していると告げると第三者がいない特区内では使えない策なので諦めた。

 その都度話し合って折り合いをつけていくしかないので、そのためにもお互いの文化交流を深めていくべきだとカレンは思う。

 まだ陽が完全に落ちていないせいか、まだ子供達がいる公園を通りかかると、ブリタニア人の子供達が日本人の子供達と一緒にかごめかごめをして遊んでいるのが見えた。

 「か~ごめかご~め、籠の中の鳥は~♪」

 大人の思惑やしがらみなど知らぬげに楽しそうに遊んでいる彼らを見ると、頬が緩む。

 ほんのつかの間でも、何と平和で和やかな光景だろう。
 いつか日本が解放される日が訪れても、この光景だけは永遠に続けばいい。

 カレンは心からそう願いながら、経済特区にあるブリタニア人専用マンション最上階にあるシュタットフェルト家の別宅へと足を向けるのだった。



 その夜、ユーフェミアは就寝前にスザクに言った。

 「お姉様はルルーシュとナナリーのことを気にかけていらっしゃる分、彼のことを出されると弱いみたい。
 なら、ナナリーを記念した病院を建てたいと言えば許可して下さるかしら?」

 ルルーシュのことは信頼しているが、危険なことをしている分万が一ということがある。
 その時ナナリーだけでも保護したいと考えているユーフェミアは、安全に彼女を保護出来る環境作りをしたいと思ったのである。

 「木を隠すなら森の中って言うし、ナナリーと同じ境遇の子をたくさん集めればバレにくいわ。
 前々からこういう施設を造りたいと思ってたもの、特区の業績が伸びれば福祉政策の一環として何とかお姉様の御許可を頂ければ・・・」

 以前のユーフェミアならば思いもつかないであろう他人の心情を理解した上での作戦に、スザクは驚きながらも頷いた、

 「いい考えだと思うよ。ルルーシュに言えばうまい計画書の出し方や根回しの仕方を教えてくれるんじゃないかな」

 ナナリーのためなら寸暇を惜しんでやってくれるとスザクは確信している。
 それを聞いたユーフェミアは、困ったような笑みを浮かべた。

 「医療特区と名付けて大規模な医療施設を造るのが一番理想だけど、まずは大病院くらいから始めましょう。
 ナナリーには来て欲しいけれど、その場合ルルーシュに何かあったってことだから複雑だわ」

 「戦争をしているんだから、まさかの時のために準備をするのは悪いことじゃないと思うよ。
 それにナナリーが来なくても、福祉機能を整えることは正しいんじゃないかな」

 「そうね、スザクの言うとおりだわ。
 特区の業績が黒字に転じたら、すぐに通せるように今から計画書を立てましょう」

 ユーフェミアはそう決意すると、ルルーシュにそれを伝えるべく、明日になればカレンに話そうと明日会いたいというメールを彼女に送信するのだった。


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