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No.17498の一覧
[0] ストライクウィッチーズ スオムスいらん子中隊めざめる(百合)[asr](2010/04/29 06:12)
[1] ストライクウィッチーズ スオムスいらん子中隊めざめる 其ノ壱[asr](2010/09/21 07:12)
[2] ストライクウィッチーズ スオムスいらん子中隊めざめる 其ノ弐[asr](2010/09/21 07:12)
[3] ストライクウィッチーズ スオムスいらん子中隊めざめる 其ノ参[asr](2010/09/21 07:12)
[4] ストライクウィッチーズ スオムスいらん子中隊めざめる 其ノ四[asr](2010/09/21 07:12)
[5] ストライクウィッチーズ スオムスいらん子中隊めざめる 其ノ五[asr](2010/09/21 07:12)
[6] ストライクウィッチーズ スオムスいらん子中隊めざめる 其ノ六[asr](2010/09/21 07:13)
[7] ストライクウィッチーズ スオムスいらん子中隊めざめる 其ノ七[asr](2010/09/21 07:13)
[8] ストライクウィッチーズ スオムスいらん子中隊めざめる 其ノ八[asr](2010/09/21 07:13)
[9] ストライクウィッチーズ スオムスいらん子中隊めざめる 其ノ九[asr](2010/09/21 07:13)
[10] ストライクウィッチーズ スオムスいらん子中隊めざめる 其ノ拾[asr](2010/09/21 07:13)
[11] ストライクウィッチーズ スオムスいらん子中隊めざめる 其ノ拾壱[asr](2010/07/28 10:26)
[12] ストライクウィッチーズ スオムスいらん子中隊めざめる 其ノ拾弐[asr](2010/07/28 11:08)
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[17498] ストライクウィッチーズ スオムスいらん子中隊めざめる 其ノ壱
Name: asr◆2d538276 ID:f1b514d8 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/09/21 07:12
 天を覆うがごとき漆黒の艦隊は、人類の敵たる「ネウロイ」のものである。
 どこからきたのか、なにを目的としているのか。彼らについての多くは、いまだ謎に包まれたままだ。
 わかっているのはたったひとつ。
 人類に対し、彼らが明らかな敵意を持って、組織だった攻撃を執拗に繰り返す集団であるということだけだ。
 欧州中部のオストマルクが、ほんの一年ほど前に草木も生えぬ不毛の大地に堕とされたことは記憶に新しく、現在は、隣接するカールスラントが彼らの猛攻に晒されている。
 勇猛で知られるカールスラント軍と、列強各国から集った選りすぐりの精鋭たちが総力をあげてこれに対抗しているが、戦況はかんばしいものではない。
 そして今、カールスラントから海を隔てた北欧の小国スオムスにも、彼らネウロイの軍勢が押し寄せているのだった。



 鳴り響くサイレンを背にカウハバ空軍基地の飛行場から飛び出したのは、巨大なブーツのような機械を足にはめた、年端もいかぬ少女たちだ。彼女たちは、科学の産物を身にまとい、身の内の力を駆使することによって、常人には決して不可能な「空を飛ぶ」という奇跡をなし遂げている。
 飛行脚を装着し、空を駆け、異形のネウロイと戦い、これを倒す。強大無比なネウロイと対抗しうる、人類の持つ唯一にして最大の切り札。
 人は彼女たちを、天駆ける魔女、ウィッチーズと呼んだ。

「敵戦爆連合は地点A-4より高度四千を当基地へ向かい進行中。接触予定は全速で約十分。数は、少なくとも六十を超えているものと思われます」

 無線で送られる敵戦力の情報に、スオムス義勇独立飛行中隊隊長を務める穴拭智子中尉は目を細めた。
 鴉の濡れ羽を思わせる腰までの長髪をなびかせ飛ぶ姿は、切れ長の双眸や、すっと通った鼻梁も相まって、女性らしいやわらかさよりも戦士としての凛々しさを強く感じさせる。
 本国において「扶桑海の巴御前」の異名をとるのも頷ける英姿である。

 ここ最近はおとなしかったネウロイの侵攻だが、今日は随分と規模が大きい。この分だと、爆撃機も相当数いるだろう。
 もしかすると、厄介な大型爆撃機も随伴しているかもしれない。

 智子は後ろを振り向く。
 対してのこちらの戦力は、智子を含めて七人だ。
 先行するミカ・アホネン大尉の中隊を含めても、二十人に満たない少数編成。
 この戦力で、六十を超える敵戦爆連合を相手にしなければならない。

 加えて、敵は恐れを知らない異形のネウロイだ。
 彼らは撃墜されることをいとわずに、目標へ向かってまっすぐ進撃してくる。
 最後に残ったのがわずか数機であっても、基地や街が爆撃によって破壊されてしまえばネウロイたちの勝利であり、スオムス機械化航空歩兵隊の敗北である。

 戦力を残したままの撤退をしばしばおこなうネウロイだが、いつもそうであるとは限らない。
 異形の者どもの行動原理など、人の身に推しはかれようはずもなく、だから智子たちは、ただの一機も逃すことなく敵を撃破せしめる勢いで相対しなければならないのである。

 そんな絶望的とも言える行軍に際し、智子の顔にはしかし、悲観の色など微塵もない。

 智子だけではない。彼女とケッテ(三機編成)を組むハルカ一飛曹や、ジュゼッピーナ准尉にも。
 右後方を、背中まで届く銀髪をなびかせて飛ぶビューリング少尉は、面持ちこそいつも通りの無表情だが、焦りも気負いもしていないことが、これまでともに戦ってきた智子にはわかった。
 ビューリングとロッテ(二機編成)を組むキャサリン少尉は、笑顔まで覗かせている。
 智子の左後方をロッテで飛ぶエルマ中尉とウルスラ曹長のふたりにも、戦闘に際してのかるい緊張こそ見られるが、表情からは諦念など影も形もうかがえない。

「敵戦爆連合を目視で確認。編成は中型爆撃機三十に小型戦闘機改が約三十。接触次第攻撃に移りますわ。よろしいですわね、トモコ中尉?」
「こちらでも敵機を確認。了解しました。一番槍はお譲りします、アホネン大尉」
「早くお出でにならないと仕事がなくなってしまいますわよ? おーっほっほ!」

 楽しげな高笑いとともに、アホネン大尉率いる中隊十二名が統率のとれた動きで上昇を開始する。高高度から急降下し、敵集団を真上から殴りつけるのだ。
 速度にまかせた一撃離脱のこの戦術は、アホネン大尉のもっとも得意とするものだった。

「さあみんな、行くわよ!」
 智子が喉頭型マイクに向かって声を張ると、義勇中隊の面々が声をそろえてそれに応える。
 自軍の三倍を数える敵機の大軍を前にしても、少女たちの心に不安はなかった。
 なぜなら彼女たちは、つらく苦しい戦いを幾度も経験し、そのたびに生き残ってきた精鋭だからだ。

 かつて、スオムスに派兵されてきたばかりのとき、智子たちにつけられたあだ名は「いらん子中隊」という不名誉きわまるものだった。
 そのあだ名は、経歴に傷持つ者の多い彼女たちの実情を、一片ながら言い表すものでは確かにあった。
 各国軍の問題児ばかりが押しつけるようにして集められたスオムス義勇独立飛行中隊は、肩を並べて戦う軍人たちはおろか、整備兵にまで指差され笑われる存在であったのだ。

 しかし今や、彼女たちを笑う者などどこにもいない。
 初対面で堂々と役立たず呼ばわりをしたアホネン大尉すらも、今では義勇中隊へ全幅の信頼を置き、背中を預けてくれるまでになっていた。
 かつての「いらん子中隊」は、そのあだ名が持つ不名誉な印象を、質実剛健なる戦果によって払拭してみせたのである。

 だから自軍を圧倒する敵の群れを前にしても、怯える者などひとりとていない。
 それぞれが顔に自信をみなぎらせ、中隊長たる智子に続き、空を裂いて飛んでいく。

 ネウロイとの相対距離が縮まっていき、形状などがよりはっきりと見えるようになってきた。
 編成は、報告にあったとおり、中型爆撃機ケファラスが約三十、小型戦闘機ラロス改が約三十。
 中型や小型といえど、その姿は智子たちウィッチよりもずっと巨大だ。
 有効射程距離まで、あとわずか。

 先頭の智子が、装着しているキ44に魔力を注ぎこむと、内蔵された大出力魔道エンジンがそれを貪欲に飲み込んで、動力へと変換していく。
 更なる加速力を得た智子は、中隊の先陣を切って射程圏内へとおどり出た。

 それと同時に、上空から弾丸のような勢いで降ってくるものがあった。
 鋼を切り裂くかのごとき衝撃音を響かせながら、敵中型爆撃機に20ミリ機関砲を浴びせかける十二の機影。アホネン大尉率いるスオムス第一中隊の急降下攻撃である。
 たちまち四機のケファラスが火を吹き始め、爆散しゆっくりと落ちていく。
 ほかにも二機が煙を噴きつつ、進路を外れていった。

 ラロス改がただちに追うが、全速で離脱をはかる第一中隊には追いつけない。
 後ろから放たれる機銃も、巧みに回避機動をとる彼女たちに弾痕ひとつ与えることはできなかった。

 そうしてにわかに騒がしくなったネウロイの横っつらを、智子たちが思いきり引っぱたく。

 極東に伝わる居合抜きのような鋭利さで敵集団に斬り込み、そして貫く。
 細かい指示は与えない。そうする必要がないからだ。
 智子率いる独立中隊の面々は、個々のなすべきことをよく理解していた。

 数機のラロス改が、機関砲の集中射を回避する間もなく浴びて沈んでいく。
 速度を維持しつつゆるやかにターンした智子の眼前には、巨大な刀で真一文字に両断されたかのような敵編隊の姿があった。

 放出された魔力の軌跡を残しながら、智子たちはふたたび加速に移る。
 追い掛けてくるラロス改を引き離して、敵編隊に鋭く斬り込んでいく。

 戦域が広がり、小隊単位での攻撃に切り替えてからも、やることは変わらない。
 高速で強襲し、一撃を加えて離脱する。

 智子は、自らの力量に絶対の自信を持っている。
 事実、格闘戦で彼女に勝てる魔女は、ここスオムスのみならず、激戦下にあるカールスラントにおいてもほとんどいないと言っていい。
 それほどまでに、彼女の技量は卓越していた。

 しかし、それでも智子は格闘戦から離れることを決めた。
 旋回性に優れ、格闘戦最強の名をほしいままにしていたキ27に別れを告げ、キ44を新たな愛機とすることを選んだ。

 旋回性能に劣る反面、加速性と高速域での操縦性に優れたキ44は、要撃機として優秀であると同時に、強力な一撃離脱戦術を可能とする。

 一撃離脱戦術は、単位時間あたりの撃墜数では格闘戦に劣る。それは紛れもない事実である。
 しかし同時に、被撃墜の確率も大きく下げることが可能となる。

 この第二次ネウロイ大戦において、空戦は次の時代へと移行しつつあった。
 とどまるところを知らず増大していくネウロイの脅威を前に、ひとりのトップエースの国士無双ではなく、集団で安定した戦果を上げることが期待され始めたのだ。

 すなわち、小隊単位での一撃離脱戦術。

 列強各国のトップエースたちが軒並み得意としているこの戦術こそが、時代の要求と見事に合致していたのである。

 魔を駆逐する神の名を持つ愛機とともに、智子は空を駆ける。
 視線めぐらせばそこには、信頼すべき仲間たちが肩を並べるようにして空を駆けている。

 ゆえに。

 "わずか"六十程度の軍勢など、恐るるに足りず。

 またたく間に敵中型爆撃機が半数を割り、ほどなくして二桁を切る。
 残ったケファラスがのろのろと反転し、撤退行動に移る。

 しかし、同様に半数を割っていたラロス改たちは、いまだ戦意を失っていないようだった。

「今日は随分としつこいねー!」
「しんがりのつもりなんだろう。こいつらを捨て駒にしてでも爆撃機の被撃墜を避けたいのかもな」

 無線から響くキャサリンの言葉に、ビューリングが落ち着いた声音で答える。

「そう言われると、爆撃機のほうを墜としたくなってきますね」
「深追いは駄目ですよ。撤退させたらこちらの勝ちなんですから」

 ハルカの軽口に、エルマが苦笑混じりに突っ込んだ。

「では各機、敵残党の掃討にあたってちょうだい。逃げてくやつは追わなくていいからね!」
「「「了解!」」」

 中隊長たる智子の号令一下、スオムス義勇独立飛行中隊の面々は、空域に居座り続けるラロス改に、さながら兎を狩る猛禽のごとく襲い掛かっていった。


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