どーもどーもさっきぶり、ナッシュです。 さてもさても、非常に難しい場面となって参りました。 相変わらず、俺とエディは戦闘中。 ザトーは動かず。 妹達は、森の中を何やら移動している模様。 まぁ、狙撃って一度居場所を知られたらすぐに移動するのが定石らしいしね。 んで、S子さんの姿は見えず。 んー、何とかエディの攻撃を凌いで、反撃を当てられるようにはなってきた。 この短時間で攻撃パターンを学習…と言いたいところだけど、なんか頭の奥で小難しい計算やってるらしく、その結果をトレースしてるだけだから俺が凄い訳じゃなかった。 …とはいえ、正直言っておかしいんだよな。 エディがこの程度ってのが。 そりゃあ、宿主のザトーは暗殺者だから、ガチバトルが専門じゃないのは確かだ。 HxH張りのガチ戦闘も行ける暗殺者だったのかもしれないけど。 ナルトで言う暗殺は、絶対暗殺じゃない…千鳥が暗殺用とか分類されてるんだぜ、絶対別の殺し方を言ってるだろ…。 とにかく、例え専門じゃなくても、だ。 踏んだ場数は俺より多いだろうし、暗殺組織の一員であった以上、正式な…というのもおかしいかもしれないが、体系立った技術による訓練も受けている筈。 それが、この程度? ひょっとしたら、ザトーの経験とかを完全に共有できてる訳じゃないのか…? いや、それにしたってエディは禁獣…細かい事は知らんけど、ギアの親戚みたいなもんだ。 戦闘プログラムは、それなり以上のモノが入っている筈。 それに、エディは本来なら持つ事の無かった『心』を持ち、育てるだけの時間を過ごしてきた。 その経験値は侮れない。 …この程度の筈が無い。 理性と同時に、俺の勘も同じ結論を出していた。 あまりアテになる勘ではないが、今回の場合は根拠があるのだ。『ヌ』「ほいさっ!」 ノコギリ状になっての突進をサイドステップで回避し、刃の着いてない横から蹴りを入れる。 衝撃に逆らわずに飛んでいくエディ。 影が空中を飛ぶっていうのはおかしな感じだが、まぁそれはいい…感触からして、ダメージも入ってないし。 元々大して力を入れた攻撃じゃない。 エディが宙を舞っている間に、その辺から拾った小石と砂を一度に投擲。 結構なスピードで迫るソレを、エディは体の一部を鎖分銅のように振り回す事で全て叩き落とした。 その間に、俺はエディの側面に回り込んでもう一度小石と砂を投擲。 こっちはフォルトレスディフェンスで防がれた。 ここまでは計算の内。 俺と違って、エディはテンションゲージ(仮)が無限にある訳ではないので、必要が無くなったらすぐにフォルトレスディフェンスを解除した。 狙い目はそこ。 フォルトレスディフェンス中に体を捻って俺に正面から向き合おうとしていたけども、それでもまだ俺の接敵が早いッ! なのだが。 ギュオンッ!「またか!」 嫌が応にも、踏みとどまらざるを得なかった。 地面からドリルが突き出てきたのだ。 言うまでも無く、エディが仕込んだトラップである。 コレだよコレ。 チャンスと見て接近しようとしたら、狙い澄ましたようにドリルが突き出てくる。 多分、仕込まれてるのはドリルだけじゃないよな~。 でもそこまでドリルに拘るのは尊敬……いやいや、そこじゃなくて。 俺の行動が、8割方読まれているか、対策を打たれてる。 少なくとも、俺がチャンスと見て接近しようとした時、そこにドリルがある。 そのタイミングを見透かされている。 これが、どういう事か? ……手加減、されている? 何故、とかの理由はともかくとして、それは確かだと思う。 特に最初の時なんて、カウンターを食らいそうになってギリギリで避けたモノの、思いっきりコケたし。 でも追撃は無かった。 距離を取って体勢を整えただけだ。 これらが意味する所は…エディの狙いは、膠着状態にある…のか? 少なくとも、エディは俺を相手に、狙って膠着状態を作り出せるだけの実力があるのは確かだと思う。 こっちは攻めあぐねてるけど、エディの方は余裕綽々……単なるポーカーフェイス……だとは思えん。 うむぅ………ちょっと本格的に考えてみるか。 闘いの方は、制御プログラムの方に本格的に丸投げ。 …便利だねこの機能、オートモードが入ってるんだよ。 エディとマイボディとの闘いを他人事のように眺めながら、改めて考える。 …やはり、エディの狙いは膠着状態にあったようだ。 僅かばかり、動きが変わった……ワンパターンとは言わないまでも、規則性のある動きに切り替わったのに、そこに付け込もうとしていない。 精度や反応速度は上がっているんだが、それだけ先読みしやすくなるんだよなぁ、この機能…。 さてさて、エディの本当の狙いは一体何か。 俺を傷つけたくない? …それはない…………いや、仮にあるかもしれないけど、それは多分甘っちょろい理由じゃないだろう。 利己的な、自分を中心とした考えがあるに違いない。 闘う事が目的で、俺を傷つける意味は無い? …これも違う。 闘いは本能を満たすための行為かもしれないが、傷つけない闘いなんか闘いじゃない。 チェスとか将棋みたいな知的遊戯じゃねーんだぞ…いや、あれだってプライドが傷付くとか、駒の一つ一つを傷つけあってると言えない事もないが。 少なくとも、そんなジェントルメェンな気遣いをしながらの闘いでは、闘争本能は満たされる事は無いだろう。 むぅ……んじゃ何がある? ……思いつかん。 ちょいと、他の情報を絡めてみるか。 そうだな……エディの狙いが、ザトーを動かさない事と関係あるとしたら、どうだ? 膠着状態と、ザトーの不動。 …これを結ぶ線は、すぐには見つからない。 だが待てよ? 膠着状態を維持するのが目的というのは、やはり他に狙いがあると見るべきだ。 膠着によって作り出される状況を利用するとすれば、それは何だ? 考えるまでも無い。 『待ち』だ。 Waitだ。 既に罠を張って、後はかかるのを松葉崩し…じゃなかった、待つばかり。 …となると、ザトーの不動は別の意味合いを帯びてくる。 …つまるところ、囮。 一度は考えた可能性だが、闘いの間にすっかり忘れていた。 ヒートアップして頭が煮詰まってたみたいだな。 んー、しかし囮ったって何に? 俺の相手はエディだ。 そりゃ、何度かザトーの方を先に潰せないかと思ったけど、的確に妨害してきやがる。 つまり、俺に対して何かしようって訳じゃない。 まぁ、そうでなくても宿主を囮にしようなんて無謀な真似は……普通じゃしないな。 だが、そうせざるを得ない…例えばザトーボディの崩壊が思った以上に近かったとすると、どうだ? 新しい体を得る必要がある。 もしそうなら、それこそザトーの体を使い捨てにしてでも、俺に向かってくると…………? …!!!!! ヤバい!「ネクロ、ウンディーネ、コイツの体の方には手を出すな! 囮だッ、罠がある!」『…! チィィィ!』 叫んだ途端、苛立ちを露わにしてエディは俺に対して猛攻をかけてきた。 やっぱり、これが狙いだったか! 考えてみれば、ディズィー達の存在は、さっきのファーストコンタクトでバレている。 その場合、どちらをターゲットに絞る? 好みの問題もあるだろうが…宿主として適している方か。 或いは、宿主を武器とした場合に、より強力な力を奮える方か。 エディは多分、後者を選んだのだろう。 そういや、コイツって影から見ているとかナントカで、死角が無いんだったよな。 そりゃ狙撃しても多分避けられるわ。 いや、そんな呑気に考えてる場合じゃない。 狙いが露見したと知るや、エディは一気に攻勢をかけてきた。 ドリル、円形鋸、槍、爪…。 攻撃の多彩さが、さっきまでとは比べ物にならない! それに、さっきまではエディの方からしか攻撃してこなかったのに、今度は前後左右上下からの連続波状攻撃。 これは…フォルトレスディフェンスじゃないと防御できねー! ガガガガガ、と防がれているのもお構いなしに、エディはただ只管に攻撃を仕掛けてくる。 自分自身では接近せず、一定の距離を保って攻撃を連射する。 これは……しまった、判断ミスった! フォルトレスディフェンスは、使っている間は動く事ができない。 質を度外視した量の攻撃で俺をここに釘付けにして、その間にディズィー達にちょっかい出す気か! やらせはせん! この際、多少の傷は仕方ないと割り切って突撃……って、オイ…。 ザトー本体まで動きだしやがった。 こりゃ、益々座して待っている訳にはいかなくなったな。 エディだけでも手古摺ってるのに、ザトーの方まで出てくるとなると…しかし、ザトーはどれくらいの力があるんだろうか? 鍛えているとはいえ所詮は人間、ギアボディには敵わない……だったらいいんだが、この世界の連中にそんな常識期待しても無駄か。 少なくとも、一般成人男性よりずっと強いと思った方がいい…ギア細胞だか禁獣的な細胞だかの浸食とか受けてるかもしれないし。 ザトーが動き出し、こっちに来る…かと思った瞬間。 突然ザトーは飛び退いた。 次の瞬間、極太の閃光がザトーの居た場所に撃ち込まれ、盛大に森を揺るがせた。 噴き上がる土煙、その中に隠れるザトーの体。 そこへ、位置を予測したらしいウンディーネが法力で作った刃を幾つも飛ばす。 土煙を使って視界を遮り、そこへ連続して攻撃する…という算段だったんだろうが、相手が悪い。 ザトーに、目晦ましは通用しない。 案の定、ザトーは平然と砂煙の中から現れ、ディズィー達に向かって疾走した。 木の上に隠れていたディズィーは、姿を隠す事を止めて大きく跳躍、そのままネクロとウンディーネに導かれて空を舞った。 高度を取り、ザトーの手の届かない所から攻撃する…つもりだったようだが。 ザトーは木を一度の跳躍で昇り、その頂点付近の枝に飛び乗った。 そしてその枝のしなりを利用し、もう一度跳躍する。 ……俺に向かって!? 『ユクゾ。 体ヲ傷付ケズニ受ケキレヨ』 俺を集中攻撃していたエディが、サッと引く。 ただし、フォルトレスディフェンスにぶつかる回転鋸はまだ幾つか残っていて、俺は動くに動けない。(でも何かヤバい! さっきも多少の傷は受け入れるって腹括ったし、動け俺!) ビビッて竦みそうになる体を、ギアの制御プログラムで半ば強制的に動かす。 足に力を入れ、フォルトレスディフェンスを解くと同時に、全力でその場から飛び退いた。 …飛び退く瞬間、足に鈍く熱い感触が走る。 だが痛みとは感じなかった。 足の傷に構わず、バランスを崩した体を受け身で立て直し、エディを目で追う。 エディはどうやったのか、高く跳躍していた。 ネクロはそれを狙い撃ちにしようとしたらしいが、咄嗟の事だったらしく狙いが逸れて結局無傷で跳ばれてしまった。 そのジャンプの先に居るのは……ザトー。 俺に向かって飛んでくるザトーと激突する、エディ。 次の瞬間、目を疑った。 エディの体が膨れ上がり、ザトーを呑みこむ。 何だこれは、と思う暇も無く答えは出た。 膨れ上がったエディが収束し、人型の大きさになる。 …ただし、その人型には大きな翼があり、赤い目、獣のような顔を持つ、全身真っ黒。 よく観察するよりも先に、もう一度姿が変わろうとする。(合体した? このタイミングで、攻めの手を緩めてまで? なら狙いは…と言うか、この予備動作は…!) イグゼキューター。 ゲームでは覚醒必殺技だった。(このタイミングはヤバい…!) 体勢を崩し、足に傷を負って、避けられない。 フォルトレスディフェンスを発動させるヒマも無い。 ならば。 半ばヤケだけど。(叩き落とす!) まだ何とか、肘を振りぬくくらいの時間はある。 練習していた、全身を連動させる一撃で、矛先を逸らせば…!「兄さん!」『ディズィー、駄目です!』 ディズィーが叫び、こっちに飛ぼうとしているのが見えた。 ウンディーネがそれを止めようとしているが、支配力だか何だかが強くなっているのか、逆らえないようだ。 って、んな事観察してる場合じゃない! 既に間近に迫ったイグゼキューター。 最も効率的なタイミングと角度を瞬時に計算し、同時に俄仕込みとは言え何度も練習した肘の動きを再現する。 (南無八幡月虹題菩薩!) 苦しい時の神頼み、だが祈るだけでも気休めにはなる。 何も考えず、ただ肘を振りぬいた。 轟音、が聞こえた気がした。 半分意識を失っていたようだが、それは一瞬、刹那の事でしか無かったらしい。 肘が痛む。 でも感覚はあるし、ちゃんと動く…よし、体は無事だ! エディは……俺から少し離れた所で、剣の形のまま木にめり込んでいる。 何とか、矛先を逸らすのは成功だったか…。 マジで死ぬかと思った。「兄さん、しっかり!」「あ…ああ、ディズィー…」 ネクロとウンディーネの制止を振り切って、降りてきたディズィーが駆け寄って来た。 ああ、兄さんって呼ばれるのもちょっとぶり…………あ。 ヤバ……『ガアッ!』「きゃあっ!」 最悪! そっちに行くな、逃がさん! ギュオン!「が!」『動クナ!』 膝から崩れ落ちた。 ……畜生、最悪の展開になっちまった…! 俺から距離を取った所で、ディズィーがエディ…と言うかザトーに抑え込まれている。 クソッ、寄りにも寄ってディズィーが人質に取られるとは…。 状況を分析する。 まず俺は、イグゼキューターを凌いだ事で安堵し、気が抜けてしまった。 それによって興奮状態にあった精神が醒め、疲労が一気に噴き出て来ている。 思えば、剣の状態で木にめり込んだまま動かなかったのも、油断を誘うと同時にそれが狙いでもあったんだろう。 次いで、俺を心配して空から下りてきたディズィーは、注意が俺にばかり向いていてエディを無警戒だった。 それを狙わない道理は無い。 気付いた時には、ザトーは既に動き出した後だった。 咄嗟に阻もうとしたが、ザトーから離れたエディが妙な玉を吐きだしてきて、避けきれずに被弾。 次の瞬間にはディズィーを抑え込まれて距離を取られ、俺は足の傷のおかげで機動力が半減…。 畜生、冗談抜きで詰んだか? いや待て、距離を取られたとはいえ、ネクロとウンディーネはまだ動ける。 至近距離からの一撃なら、咄嗟に回避する事も難しいだろう。 それから、すっかり忘れていたがS子さんも居る筈だ。 物理的な攻撃力は期待薄だが、取り憑いて動きを抑えてくれるかもしれない。 それに、人質を取ると言う事は…何かしら、取引するつもりがある…のか? しかしエディが取引するとなると、一体何だ? 新しい宿主が欲しいなら、そのままディズィーに寄生しようとすると思うんだが。『モウ一度言ウ、動クナヨ……寄生種二人モダ』 …チッ、見抜いてやがる。 そして警戒を怠ってない。 こりゃ奇襲は無理…だな。 ギリギリと何かが鳴る音がしたと思ったら、俺の歯ぎしりだった。 ああクソ、俺の妹に触るんじゃねえよ…半分抱きつくような格好になってるからしっとゲージが駄々上がりなんですけども! 俺が動かないのを確認しても、エディは警戒を解かない。 ……これで不意を突こうと思ったら…どうすりゃいい? …………浪漫砲とオナラキャノンか? 確かに意表は浸けるだろうけど、妹達にどんな目で見られるか…いや、それをさておいても、狙いを定めるのに必要なモーションが大きすぎる。 オナラキャノンは後ろを見せなきゃイカンし、浪漫砲は股間のチャックを下げて勃起させたナニを取りださないとアカン。 この状況でシモをイジイジして取り出すって、それどんなセクシーコマンド―だよ。 …浪漫砲って、セクシーコマンド―の奥義に正式にありそうだな…。 いやいや、そんなアホな事考えてる場合じゃなくてだな。 …S子さん、こういう場面でこそ活躍してほしかったんだけど…なんか出て来ないな。 ディズィーが危機的状況にあるのを黙って見ているとは思えんが…。 何か待っているんだろうか? …とにかく時間稼ぎだな。「…ああ、俺は動かんよ。 ただし、妹達に妙な真似をしようとしたら、その瞬間に俺か、或いはお前が捕まえている3人の誰かがお前を攻撃するからな」『フン。 俺ノ目的ハ、最初カラ貴様ダ。 コノ小娘ニ用ハ無イ』「…! 兄さんに、何をするつもり!?」『動クナ!』「ディズィー、ストップだ!」「でも…」 …危ない危ない。 ディズィーのテンションゲージが一気に上がって、問答無用で暴れ始めるトコだったぜ。 それだけ愛されてるって事だけど、この状況じゃ一触即発だ。 ディズィーがエディとザトーを見る目には、いつになく強烈な光が宿っていた。 俺に手を出す奴は許さない、ってか? 兄冥利に尽きるな…。 何せ、俺に心配をかけたくないって理由から大人化するぐらいだもんな。 この状況で黙っていられる筈も無しか。 とは言え、俺にしてみればディズィー達に興味が無いというのは好都合だ。 俺の価値観は、妹達>越えられない壁>俺>越えられない事もない壁>その他諸々となっているのだよ。 …ああクソ、戦闘モードから素に戻ったからか、妙に雑念が混じる。 集中しろ、集中。「…で、テメーの狙いは何だ?」『先程モ言ッタデアロウ…。 貴様ノ体ヲヨコセ、心ヲ見セロ!』「…心云々はともかくとして…体ってのは?」『我ガ宿主ノ体ニハ、既ニ崩壊ノ兆候ガ表レテイル。 コノママデハ、遠カラズ宿主ハ死ニ、俺自身モ死ニ至ル。 ソウナル前ニ、新シイ宿主ヲ見ツケネバナラン』 …で、俺が新しい宿主候補って訳か。 しかし、ディズィー達に見向きもしないのは意外。 …何故に? ちょっと探り入れてみるか。「…俺が体を開け渡したら、ディズィー達はどうする」『ドウモセン。 ダガ、カカッテクルナラ叩キ潰ス。 …コノ娘、力ハ強イガ…先客ガ居ル。 寄生先ニハ向カン』 …先客? ………ああ、ネクロとウンディーネ! そういやあの二人って寄生種だったっけ。 しかもメチャ強力な。 その二人を押し退けて寄生できるか怪しいし、無理に寄生したとしても先客二人から徹底的に攻撃を食らいそうだ。 そりゃー手を出したくても出せんわな。 そこで俺の方を狙うって言うのがヤヤコシイけど。 …うーむ、誰か他人を差し出して自分は助かるとか出来んかな。 具体的に言うとザッパとか。 …いやでも流石に良心が…そもそもまだ近所の村に居るかどうかも分からんし。『ソノ点、貴様ハ寄生先ニハ打ッテ付ケダ。 体カラ発セラレル心地ヨイ波動…。 受ケテイルダケデ、力ガ漲ッテクル』 …オイ、またこのエネルギー波かよ! もう発してるのはエネルギー波じゃないだろ。 何か良く分からんけど、もっと厄介事を引き寄せる独特の波長が出てるよコレ! くっ…しかし、マジな話どうしたもんか。 この際、俺がどうなってもディズィー達だけは…って考えは却下だ。 俺が乗っ取られたら、それこそ激昂した妹達が何をやらかすか分からん。 希望があるとすれば……寄生された瞬間に俺が完全に屈服する訳じゃなさそうだ、って事かな。 ザトーだって、禁術を使ってから暫くは自分の意思で行動できてたんだし。 精神的な頑強さには自信が無いが、こっちだって命懸けなんだ。 その程度の事は気合いでどうにかしてやるさ。 …ん? あの、ちょっと? ディズィーを抑えてるザトーさんが、何かの中毒患者みたいにブルブル震えだしたんですが… ってオイ、ディズィーが痛がってる痛がってる! 何してやがんだテメェ! エディ、さっさとアレ止めろ、じゃないとお前を寄生させた瞬間に諸共に巻き込んで吹っ飛ばすぞ自爆装置とか多分あるしな!「……ァ」 ザトーが小さく何かを呻いた。 何だ?と思うやいなや。「ミリアアァァァァァァ!!!!」「うきゃ!」「ふぉ!?」『ヌ……クソ、モウ来オッタカ!』 絶叫するザトー。 見た目もそうだけど、中身も危ないヤツだよなやっぱ。 つか、ミリア? ミリアって叫んだ今? ザトーがこんな風に叫ぶ原因はただ一つ、ズバリその人ミリア・レイジ。 具体的にどんな因縁があるのかは知らんが…と言うか、エディはエディで『もう来た』って言ったよね? え、何? ミリア来てんの? この森に? いつの間にかGGXな時期に突入したの? でも賞金首にはまだなってない筈なんだけど。 ともあれ。 チャンスはチャンスだった。 エディが動揺している今、そしてザトーが暴走しかかっている今、ディズィーへの注意は殺がれている。(吶喊ッ!) 覚悟を決めて、地面を一蹴り。 渾身の跳躍。『ヌッ!』「せぇいやぁ!」 そのままライダーキック! ディズィーの顔面のすぐ横を貫いて、ザトーの胸板に直撃した。 まだ叫んでいる最中だったからか、その手応えは抵抗の無い柔らかい肉に拳を叩きつけたような感覚があった。 俺が着地するまでの間に、ディズィーはすぐにザトーとエディの両方を視界に治める立ち位置に向かい、体勢を整えた。 まだ腕をさすっているものの、何とか無事のようだ。 …体が震えているのを除けば、な。「…ネクロ、ウンディーネ、今すぐ暴れるのは無しだ。 第三者が接近してる。 明確な敵だった場合のみ、容赦しなくてもいい」『…………流石にそれは…聞き辛いです、兄様』『俺も心底頭に来ているのでな…』「…ディズィー、二人を止めてくれ! 心底頭に来てるのは俺だって同じで、それ以上に優先すべき事があるんだよ!」 …そう、これは俺の本心。 愛しい妹達を人質に取られて、この俺が大人しくしているとでも思っているのか。 正直、浪漫砲でも尻ボムでもオナラキャノンでも、後の事なんか一切考えずにこの連中を蹂躙してやりたいと、そういう衝動が体の底で滾っている。 が、その衝動に身を任せてしまえば、後の結果が目に見えている。 恐らく、接近しているのはミリア・レイジ。 髪に禁獣を宿らせ、伸縮自在・形も自在の髪を刃物のように使って闘う暗殺者。 ザトーとミリアの間にどんな因縁があるのかは未だに良く分からないが、ザトーと闘っている俺達を見逃してくれるだろうか? …答えはノー。 恐らく、徹底抗戦するなり本気でミリアを追いつめるなりしないと、殺されるような事は無いだろう。 だが反面、それだけ暴れれば俺達を仕留めるのに躊躇いは無い。 復讐者っていうのは、多分そういうモノだ。 もしそうなった時、俺達全員が無事に切り抜けられる可能性は…非常に低い。 少なくとも、俺かディズィー達のどっちかは重傷を負う事になるだろう。 最低限、エディかミリアのどっちかに味方しないと…。 二つの戦力に板挟みされる状況だけは避けたい。 なら、どうする? どっちに付く? 単純に考えるなら、ミリアの方だ。 仮にエディに付いて勝ったところで、俺の体が狙われているのは変わらない。 だからミリアに加勢…したいトコだけど、正直ミリアの方から拒絶されそうな予感がプンプンだ。 ミリアは自分の手で復讐する事に拘って…少なくとも、直接手を下す時には他人の手が入るのを嫌っているような節があった…ような気がする。 しかし手を出すなって言われたって、あっちからこっちを狙って来るんだから応戦するしかないわな。 二人の間で決着が付くまで待って、ミリアが勝てば良し、そうでなければ疲弊した所を一気に叩く…のが上策か。 同族みたいなモノであるエディを見殺しにするのはあまり気分がよくないが、まぁケンカ吹っかけてきたのはあっちだし。 流石に自分の命と同等なまでに、同族を助けたいとは思わない…初対面だしね。 そこまで考えた時、ガサガサガサッと森の茂みを掻き分ける音。 暗殺者としてどうなんだと思わなくも無かったが、まぁ居るのがバレてるなら隠れるだけ無駄だよな。 よし、出来るなら加勢、そうでなければ傍観、後に滅殺の方向で。 そうと決まれば、後ろでヒートアップを続けている妹達を何とかせねば。 ザッ!、と鋭い音を立て、森の茂みから飛び出してくる。 ミリア、ミリア…と言えば、綺麗な髪にパンツが見えそうな程短いスカート…なのかアレ…?、そしてスラッとした生足! こんな目で見てたら「いやらしい目で私を見るな」とか言われそうだけど、初見時くらいは勘弁してほしい…最近発散できてないから、例によって溜まってるしな! あと妹達に軽蔑されたくないし。 と言う訳で視姦…いやいやいや目の保養………………………え? 目に入ったのは。 スラッとした長い脚。 ただし右が黒、左が白のズボンに包まれている。 長い髪。 でも金色じゃなくて白髪。 やたらムキムキな胴体部分が、惜しげも無く晒されて。 そして長い髪には、何故かでっかい目のマークが…。「ザトー様!」 ……………ヴェノムじゃねぇか! そりゃザトーとは因縁浅からぬ仲だろうけど、さっきの「ミリアアアアァァ!」は何だったんだよ! 期待させやがってコン畜生! 考えてた展開とか完全に無駄になっちまったし、どうせ出てくるならムクツケキ野郎よりスレンダーな美女だろ! 裏切ったな、僕の期待(下心とも言う)を裏切ったな! ×××××(地雷エロゲの名前を入れましょう)と同じで裏切ったんだ! …マジでどうしよう…。アトガキお盆休みも終わりだし、短期間更新はこれで最後となります。本当は昨日投稿しようと思ってたんだけど、友達と飲みに行って花火大会見て、ついでに火事を発見して帰ってきたら忘れてたぜ。HPの方も忘れてたんだよなぁ…準備もしてないし、仕方ない飛ばそう…。PV168000。