敵、火星の後継者の砲撃がブラックサレナを保護している時空歪曲場を激しくたわませる
すかさず反撃、数発のハンドカノンで撃墜
戦況は絶望的、センサー内の識別が敵で真っ赤に染まるほどだ
機種は全てバッタ
ユーチャリスとは距離を離されてしまいさらには戦艦十数隻の猛攻に援護ができないでいる、それ以前に援護を頼もうにも強力なジャミングで数百メートル先にも通信できないだろう
（ラピスを降ろしておいて得策だったか）
この猛攻、もしラピスがユーチャリスに搭乗していたら此方の援護に集中してしまうだろう
そう思いながらも操縦者、テンカワアキトは冷静に歪曲場で機体を覆い突貫、少しユーチャリスとの距離を詰めるが同時に歪曲場発生装置の限界が近いことをアラームが知らせる
「クぅ」
機体を急速ロールさせながら胸部バルカンとハンドカノンを掃射、暗い宇宙に数多の光が発生する
撃墜数は既に100を超えている、巡洋艦と駆逐艦も数隻落とした
撤退しようにも攻撃の火が強すぎる為に帰還が出来ない
ボソンジャンプをしようものならイメージ伝達の為に一瞬停止した瞬間に・・・
（無駄な思考だな・・どうせ余命僅か・・なら香典変わりにお前らの命、全て貰っていこう！）
「ああああああああああ！！」
馬鹿みたいに操縦席で声をあげて自身を奮い立たせる、そうでなければ折れてしまいそうだから
自分の決意が
・・・
・ ・
・
数時間？それともほんの数十分後か？
時間の感覚はとうに麻痺した、あたりに漂うのは残骸、残骸。そして先ほどまで人だったもの
その外れ、ひっそりとブラックサレナはいた
例え片腕がもげようと
頭部が跡形も無く吹き飛んでいようと
あれほど重厚だった装甲が着弾で激しく歪んでいようと
確かに未だ稼動していた
「生き・・残ったか」
ユーチャリスは轟沈だった、最終的には敵戦艦十数隻ほぼ全ての重力波砲の絶え間ない砲撃にあい歪曲場が決壊、そして瞬く間に唯の鉄塊になった
帰る場所が無くなった、その事実にアキトは以外にも冷静だった
バッタの大部隊を壊滅させた、その後は無謀な戦いだった
高出力の歪曲場に物を言わせて敵のソレを破りエンジンブロックに突入、内部を完膚なきまで破壊して離脱時、その爆発の衝撃を使って加速、そして次へ
途中で重力波砲が前も見ずに突っ込んできた
ミサイルが熱烈なラブコールを送ってきた
対空砲火が機体の装甲上でタップダンスを踊った
「だが・・生き残ったか」
エネルギー問題は背面のテールバインダーと内部のエステバリスの重力波アンテナを外し無理やり付けていた相転移エンジンによって一応の解決はしていた・・瓜印だったのが唯一の不安材料だったが
「ふ」
ナデシコ時代の自分の機体を整備してくれた男、思ってみれば世話になってばかりだなと思い笑ってしまう、今更ながら自分の意識が朦朧としている事に何となく気づくアキト
「あぁ・・・帰るか」
何処に？
「家に・・さ」
幻聴にそう言い返しＩＦＳの認識ボールを握りなおす、同時に「ネチャリ」と音がする
鎧の様な物を着ている為に判らなかったが・・肉体は度重なる高Ｇによって骨折多数、一部は骨が覗けるほどだ
「なんだ・・もう死にそうだったのか」
其処で初めて自分の現状に気づく
「帰らなくちゃ・・いけない」
濛々とした頭脳は唯一つ、あの自分が一番輝いていた時間を思い返していた
イメージ集中・・イメージ不足・・・・補完不可能、失敗
遺跡に情報伝達・・イメージ失敗により異常発生
機体並びに肉体のボース粒子変換・・肉体の変換にバグ発生
「ジャンプ」
ポツリと呟いた瞬間、目の前が暗くなった
・ ・・・・
死んだ・・のか？
・ ・・・・・
当然か、あれだけ殺して何も感じない異常者だ、居なくなったほうが世のためだな
・ ・・・・・
ルリちゃん
ラピス
ユリカ
みんな
済まない、俺は・・俺は・・・・・
目の前が明るくなる
「な！」
慌てるが見ると其処は操縦席、機体の状況も変わらず悪い
生き残った、ソレを感じるよりも先に手が動く
機体のテンションを調査し始めると同時に喚き出した警戒音に現実に引き戻される
「・・でかい！！」
ナデシコ級の三倍？四倍近く有るのではないか、そんな艦影を奇跡的に生き残っていたセンサーが感知する
（しかもこの速度・・速い！）
このままでは衝突すると上昇、数秒とせずにいままで漂っていた場所を高速で青い巨大な戦艦が通り過ぎる、形状はまるで20世紀末から21世紀初めまで走っていたＦ1カーを彷彿とさせる形状だが当然アキトはそんな事は知らない
「敵！」
地球、火星の後継者、民間で所持している戦闘艦、全てが現在指名手配のアキトにとっては見敵必殺、通り過ぎた戦艦相手には弱々しさから涙が出てきそうなほどの生き残った一門のハンドカノンを撃つ
悲しきか、虚しく装甲版上を兆弾、傷どころかへこんでさえいない
同時に相手も気づいた様子でアキトの常識を逸した機動、言葉に表せば一瞬でほぼ直角に艦首を持ち上げてひねり込みながら此方の後方に入ってこようとする
「遠距離戦闘は不味いな」
最高速度は相手に分かある有るが小回りは圧倒的に有利だ故に後ろを取ることは出来ず接近するには・・
「正面から行く」
相手の予想進路に割り込む形で前進、しようとした瞬間、歪曲場の作用によって弾き飛ばされたが何かしらの光学兵器を使用してくる
（実弾兵器ではない？重力兵装は既に一般化した時代に光学兵器を積んでるとは・・）
そんなことを思いながらも戦況はこれで変わった、相手の主兵装、又は対空兵器は此方には無効だと判ったのだ
前面に歪曲場を集中、生き残った脚部ブースターを全開、さらに姿勢制御用スラスターも使用して加速、同時に生き残った左腕の追加装甲とハンドカノンをパージ
始まった加速にコクピットシートに押さえつけられるような感覚を覚え始める、感覚が鈍くなっていることをこの時ばかりは感謝した
先ほどから歪曲場にひっきりなしに殺到している光学兵器、さらに大型のミサイルも混じり始めている
（どれか一つでも当たれば終わりだな）
さらに加速、１隻と一機が互いに交差しようとした瞬間、アキトは防御用歪曲場全ても総動員して生き残った左手に集中させる
拳を振りかぶり・・・当てた
ギャリギャリと激しい摩擦音、敵機の装甲と此方の高出力歪曲場が衝突、装甲を激しく押しつぶしていく
時間にして数瞬、左手はその高出力と超負荷に耐え切れず肩から剥離、さらに尾翼と思わしき所に脚部を強かに衝突させコクピットがミキサーにかけられた様に激しく揺れる
連戦に告ぐ連戦
すでに限界を超えていたアキトは・・意識をそこで失うのだった

後書きみたいな
初投稿なので恥ずかしい限りです・・ハイ、主世界はヤマモト・ヨーコになるのでその他に投稿してみましたが良かったのでしょうか？
何故か「せんかん」を変換すると「千巻」になってしまう・・何故？