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No.17050の一覧
[0] ブリジットという名の少女 【GUNSLINGERGIRL】オリ主転生物 完結[H&K](2016/04/21 18:41)
[4] 第0話 俺が義体になった日 【ついでにアルバニア人探し】[H&K](2012/03/11 14:08)
[5] 第1話 自分のことを考えた日 【ついでにトリエラのこと】[H&K](2012/04/13 16:22)
[6] 第2話 天体観測の日 【ついでにヘンリエッタのこと】[H&K](2010/08/06 22:15)
[7] 第3話 これからのことを考えた日 【ついでにリコのこと】 [H&K](2010/03/08 06:32)
[8] 第4話 俺が撃たれた日 【ついでに少年のこと】 [H&K](2010/08/06 22:16)
[9] 第5話 それぞれの日 【ついでに3・4話のエピローグみたいなもの】 [H&K](2010/03/06 01:19)
[10] 第6話 祝福の日 【ついでにプレゼントのこと】 [H&K](2010/03/07 07:17)
[11] 第7話 祝福さる日 【ついでにクリスマスのこと】 [H&K](2010/03/08 22:14)
[12] 第8話 エルザ・デ・シーカ 【ついでに第一部の終わり】 序章 [H&K](2010/03/08 22:12)
[18] 第9話 エルザ・デ・シーカ 【ついでに第一部の終わり】 1[H&K](2010/03/26 14:08)
[20] 第10話 エルザ・デ・シーカ 【ついでに第一部の終わり】 2[H&K](2010/03/28 14:38)
[21] 第11話 エルザ・デ・シーカ 【ついでに第一部の終わり】 3[H&K](2010/03/28 23:32)
[22] 第12話 エルザ・デ・シーカ 【ついでに第一部の終わり】 終章[H&K](2010/03/29 10:47)
[23] ガンスリ劇場1 シリアス好きにはオススメ出来ません 【ついでに百合のようなもの】[H&K](2010/03/30 05:40)
[24] 第13話 ヒルダという名の猫 【ついでにクラエスのこと】[H&K](2010/03/31 01:57)
[25] 第14話 ローマの休日 【ついでにフランカフランコのこと】 [H&K](2010/04/01 15:52)
[26] 第15話 №9の日 【ついでにアンジェリカのこと】 [H&K](2010/04/30 22:56)
[27] 第16話 一マイル向こうの少女 【ついでに彼女のこと】 1 [H&K](2010/08/06 22:26)
[28] 第17話 一マイル向こうの少女 【ついでに彼女のこと】 2[H&K](2010/05/03 22:16)
[29] 第18話 一マイル向こうの少女 【ついでに彼女のこと】 終章 前篇[H&K](2010/05/04 07:17)
[30] 第19話 一マイル向こうの少女 【ついでに彼女のこと】 終章 後編[H&K](2010/05/05 08:15)
[31] 第20話 ピッツアの国のお姫様 【また彼女のこと】 前篇[H&K](2010/08/25 01:50)
[32] 第21話 ピッツアの国のお姫様 【また彼女のこと】 中篇[H&K](2010/08/06 22:28)
[33] 第22話 ピッツアの国のお姫様 【また彼女のこと】 後篇[H&K](2010/05/18 05:53)
[34] ガンスリ劇場2 シリアス好きにはオススメ出来ません 【ついでにラジオのようなもの】[H&K](2010/05/18 22:11)
[35] 第23話 IL TEATRINO 【プロローグ見たいなもの】 [H&K](2010/07/14 01:28)
[36] 第24話 あの子に勝るもの、劣るもの 【ついでにトリエラのこと】 [H&K](2010/07/14 13:49)
[37] 第25話 もう一人ここにいる 【ついでにピーノのこと】 序章 [H&K](2010/07/14 19:17)
[38] 第26話 もう一人ここにいる 【ついでにピーノのこと】 1[H&K](2010/07/15 09:18)
[39] 第27話 もう一人ここにいる 【ついでにピーノのこと】 2[H&K](2010/07/15 20:07)
[40] 第28話 接敵の日 【ついでに彼らのこと】 [H&K](2010/07/16 10:42)
[41] 第29話 敗北の日 【互いにまだ見えない】 [H&K](2010/07/16 11:53)
[42] 第30話 少し昔の日 【ついでに二人のこと】 上 [H&K](2010/07/17 22:07)
[43] 第31話 少し昔の日 【ついでに二人のこと】 下 [H&K](2010/08/02 23:14)
[44] ガンスリ劇場3 シリアス好きにはオススメ出来ません 【ついでに一コマ劇場のようなもの】[H&K](2010/08/03 16:32)
[45] 第32話 ブリジットの日常な日 【ついでに第四部プロローグみたいなもの】  [H&K](2010/08/04 23:09)
[46] 第33話 ミミ・マキャヴェリの日 【ついでにミミのこと】  [H&K](2010/08/06 22:28)
[47] 第34話  もう一人ここにいる 【ついでに彼らのこと】 3[H&K](2010/08/06 22:07)
[48] 第35話  もう一人ここにいる 【ついでに彼らのこと】 終章[H&K](2010/08/07 17:35)
[49] 第36話  GISな日 【ついでに閑話みたいなもの】 [H&K](2010/08/09 22:48)
[50] 第37話 手術な日 【ついでに夢のこと】 [H&K](2010/08/25 23:49)
[51] 第38話 訓練再開の日 【ついでにアンジェリカのこと】 [H&K](2010/09/19 11:10)
[52] ガンスリ劇場4 シリアス好きにはオススメ出来ません 【ついでにMCみたいなこと】R15かも[H&K](2010/08/26 01:19)
[53] 第39話 IL TEATRINO 【僕は人形、人間にはなれない】 2[H&K](2010/08/26 22:07)
[54] 第40話 IL TEATRINO 【僕は人形、人間にはなれない】 3[H&K](2010/08/29 01:08)
[55] 第41話 IL TEATRINO 【俺は人間、人形にはなりたくない】 4[H&K](2010/08/29 17:42)
[56] 第42話 IL TEATRINO 【僕は人形、彼女は亡霊】 5[H&K](2010/09/03 16:33)
[57] 第43話 IL TEATRINO 【ピノッキオとしての生き方】 6[H&K](2010/09/01 01:50)
[58] 第44話 IL TEATRINO 【ピノッキオとしての生き方】 7[H&K](2010/09/01 22:42)
[59] 第45話 IL TEATRINO 【離別】 8[H&K](2010/09/03 16:30)
[60] 第46話 IL TEATRINO 【離別】 9[H&K](2010/09/04 22:57)
[61] 第47話 エピローグ 【ついでに俺のこと】 [H&K](2010/09/05 22:03)
[62] ガンスリ劇場5 シリアス好きにはオススメ出来ません 【ついでにMCみたいなこと】2 R15かも[H&K](2010/09/06 22:37)
[63] 第48話 アフターマス 【ついでにプロローグみたいなもの】 第二期スタート[H&K](2010/09/06 22:39)
[64] 第49話 泡沫の日 【ついでに四か月前のこと】 1[H&K](2010/09/07 23:36)
[65] 第50話 泡沫の日 【ついでに四か月前のこと】 2[H&K](2010/09/09 16:36)
[66] 第51話 泡沫の日 【ついでに四か月前のこと】 終章[H&K](2010/09/12 22:30)
[67] 第52話 復讐 【ついでに四か月前のこと】 序章[H&K](2010/09/15 23:10)
[68] 第53話 復讐 【ついでに四か月前のこと】 前編[H&K](2010/10/15 14:18)
[69] 第54話 復讐 【ついでに四か月前のこと】 後編[H&K](2010/09/22 17:40)
[70] 第55話 復讐 【ついでに四か月前のこと】 終章[H&K](2010/09/23 20:03)
[71] 第56話 復讐 【そして彼女が動き出す】 [H&K](2010/09/26 08:38)
[72] ガンスリ劇場6 シリアス好きにはオススメ出来ません 【ついでにバレンタインネタ】[H&K](2010/10/11 22:13)
[73] 第57話 黒毛と赤毛 【ついでにぺトラのこと】 [H&K](2010/10/11 22:16)
[74] 第58話 失くすもの、忘れるもの、奪われるもの。【ついでに誰のこと?】 [H&K](2010/12/10 23:49)
[75] 第59話 覚えていますか。幻のような世界のことを【ついでに誰のこと?】1  [H&K](2011/03/02 23:44)
[76] 第60話 覚えていますか。幻のような世界のことを【ついでに誰のこと?】2 [H&K](2011/03/02 23:44)
[77] 第61話 覚えていますか。幻のような世界のことを【ついでにフラテッロのこと】3  [H&K](2011/03/02 23:44)
[78] 第61話 EXTRA STAGE 【ついでに赤毛と黒毛のこと】[H&K](2010/12/29 19:21)
[79] ガンスリ劇場7 シリアス好きにはオススメ出来ません 【ついでに再開へのカウントダウン】[H&K](2011/03/02 23:43)
[80] Countdown 3[H&K](2011/03/03 17:25)
[81] 第62話 義体は赤毛少女の夢を見るか 【ついでに赤毛と黒毛のこと】[H&K ](2011/12/27 01:30)
[82] Countdown2[H&K](2011/06/27 19:22)
[83] Countdown1[H&K](2011/06/30 19:55)
[84] 第63話 義体は赤い少女の悪夢を見るか。【ついでに黒毛と赤毛のこと】1[H&K](2011/12/27 01:30)
[85] 第64話 義体は赤い少女の悪夢を見るか。【ついでに黒毛と赤毛のこと】2[H&K](2011/12/27 01:30)
[86] 第65話 義体は赤い少女の悪夢を見るか。【ついでに黒毛と赤毛のこと】3[H&K](2011/12/27 18:25)
[87] 第66話 義体は赤い少女の悪夢を見るか。【ついでに黒毛と赤毛のこと】エピローグ[H&K](2011/12/28 02:05)
[88] ガンスリ劇場8 シリアス好きにはオススメ出来ません 【新章突入。すでに第二期なのに】[H&K](2011/12/28 06:50)
[89] 第67話 ヴェネチアの一番長い一日【ついでに俯瞰風景の事】1[H&K](2011/12/30 00:27)
[90] 第68話 ヴェネチアの一番長い一日【ついでに俯瞰風景の事】2[H&K](2012/01/06 20:17)
[91] 第69話 ヴェネチアの一番長い一日【ついでに俯瞰風景の事】3[H&K](2012/01/06 20:16)
[92] 第70話 ヴェネチアの一番長い一日【ついでに俯瞰風景の事】4[H&K](2012/01/06 20:16)
[93] 第71話 二人ぼっち。【ついでに彼らのこと】[H&K](2012/01/15 02:19)
[94] 第72話 闘争と人間、そして人形【ついでにロベルタのこと】[H&K](2012/02/26 15:18)
[95] ガンスリ劇場10 シリアス好きにはオススメ出来ません 【フラグ回収】[H&K](2012/02/26 22:53)
[96] 第73話 再び会えた日 【ついでにトリエラのこと】1[H&K](2012/03/10 17:21)
[97] 第74話 再び会えた日 【ついでにトリエラのこと】2[H&K](2012/03/11 22:32)
[98] 第75話 ブリジットという名の少女 【ついでにブリジットのこと】1[H&K](2012/03/17 01:52)
[99] 第76話 ブリジットという名の少女 【ついでにブリジットのこと】2[H&K](2012/03/23 08:36)
[100] 第77話 ブリジットという名の少女 【ついでにブリジットのこと】3[H&K](2012/09/29 13:36)
[101] 第78話 ブリジットという名の少女 【ついでにブリジットのこと】4[H&K](2012/09/29 13:41)
[102] 第79話 ブリジットという名の少女 【ついでにブリジットのこと】5[H&K](2012/03/30 21:07)
[103] 第80話 ブリジットという名の少女 【ついでにブリジットのこと】6[H&K](2012/03/27 15:32)
[104] 第81話 ブリジットという名の少女 【ついでにブリジットのこと】7[H&K](2012/03/30 21:07)
[105] 第82話 ブリジットという名の少女 【ついでに         】8[H&K](2012/04/01 00:04)
[106] 最終話 ブリジットという名の少女 【これがブリジットということ】[H&K](2012/04/02 01:21)
[107] エピローグ[H&K](2012/04/02 16:15)
[108] HEAVEN HEART HEART 【ついでにパラレルワールドみたいなもの】[H&K](2012/04/28 21:26)
[109] HEAVEN HEART HEART 【ついでにパラレルワールドみたいなもの】2[H&K](2012/04/30 21:12)
[110] HEAVEN HEART HEART 【ついでにパラレルワールドみたいなもの】3[H&K](2012/06/24 21:39)
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[17050] 第39話 IL TEATRINO 【僕は人形、人間にはなれない】 2
Name: H&K◆03048f6b ID:daca760b 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/08/26 22:07
 前の人生は、自分で言うのもあれだけど本当に碌でもない人生だった。
 薄給で深夜遅くまで現場に駆り出され、怪我をしてもまともな給付を得られることは出来なかった。
 挙句の果てには、勤務先で突っ込んできた乗用車に押しつぶされあっさりと死んでしまった。
 居眠り運転だった。





 だが僕は死のその瞬間まで、何一つ悲観することは無かった。
 この世に思い残すことなんてこれっぽっちも無かったし、仲の良い友人といっても大学で出会った男友達が一人だけだった。
 ぎりぎりと体が潰され、全身から血と肉が溢れ出ていくなか、僕はその世界と別れを告げた。






 次の人生がもしあるのならば、せめてもっと幸せな人生であることを願いながら。








 ILTEATRO  僕は人形、人間にはなれない。







 長いこと、果ての無い迷宮をさ迷っていた。そこはとても真っ暗で静かな場所だった。
 僕は音も光も匂いもないその世界で、発狂と覚醒を繰り返しながらただ歩き続ける。
 地獄というものは信じていなかったけど、これが地獄だと誰かから教えてもらったら素直に信じてしまうような、そんな場所だった。
 歩けど歩けど光は見えない。
 もう何日も、何ヶ月もその暗闇に惑わされている。
 そして遂に日数も分からなくなり、気が遠くなるほど光を失ったときにそれは唐突に現れた。
 失っていた体が、
 はっきりとした自我が、
 僕という存在が再構成されていくのが分かった。
 これが新しい次の人生の始まり――つまり転生だと悟ったとき、僕は光に包まれた。
 その光はとても暖かくて、僕は思わず声を上げる。
 辺りに響く赤ん坊のような泣き声を聞いたとき、僕は生を実感した。

 

 二度目の人生には余計なおまけが一つだけ付いていた。
 僕はそれを神が与えた罰なのかもしれないと考えていた。
 この小さな頭の中には生まれ変わるときに消えてしまう筈の、前の世界の記憶がそのまま残っていた。
 僕はそんなものこれっぽっちも有難いと思わなかった。
 まだ同じ日本に生まれたのなら兎も角、
 欧州のイタリア、そして以前とは全く違う家庭環境に送られた僕には日本で得た知識など殆ど役に立たなかった。
 それでも、優しい使用人や家族に触れるたびに僕の幸せはここにあるのだと思った。
 今度は死の間際くらい現世に悔いを残せるような、そんな人生を送りたかったのだ。








 僕の新しい家族は四人いた。
 父と母からなる両親。
 そして二人の姉。
 父は後から分かったことだけど、地元のマフィアを纏める組織のボスだった。麻薬や銃器の密売も行っていてしょっちゅう警察に睨まれていた。
けれど僕たち子供の前では絵に描いたような良き父だった。
休日は出来るだけ家で過ごし、二人の姉がスクールの夏休みに入ったときは家族五人でよく別荘に遊びに行った。僕を後ろから抱え込み、一緒に湖へ釣竿を垂らす父は頼もしかった。
前の世界では決して手に入らなかったものだった。
僕は父が大好きだった。




母はとても美人な人で、元は田舎のワイン畑のオーナーの娘だった。
僕のプラチナがかった髪色は母の髪色だ。
彼女は料理が上手で、夕食などの普段の食事は使用人に任せていたが、時折ケーキなどを作っては二人の姉や僕に食べさせてくれていた。
父との仲もとても良く、目立ったトラブルはそれこそ無かったと思う。
そして不思議と包容力のある人で、中身が大人である僕でも自然と甘えたくなるような人柄だった。
今更だけど、僕の新しい名前である「アルフレッド」と名づけたのは母だった。
彼女の祖父の名前から貰ったらしい。
僕は母が大好きで、彼女もまた、前の世界では決して手に入らなかったものだ。





上の姉の名前はエンリカと言った。
性格は母譲りの優しい人だけど、髪色は父の黒色だ。
僕が五歳になった頃にはもう大学に通っていて、随分と年の離れた姉だった。
彼女は使用人と共に時折僕を待ちに連れ出しては、社会勉強という名目で色々な史跡を見せてくれた。
大学でも古代ローマ史を専攻しているらしく、まだ年端も行かない僕相手に非常に熱心にコロッセオのことを語ったこともある。
ついでに婚約者も決まっているらしく、何度か家に連れてきているのを見ていた。
エンリカはとても幸せそうで、僕は彼女が家族の中で一番大好きだった。
誰かをここまで大好きになるのは、前の世界では決して無かったことだ。





 下の姉はイザベラと言った。
 上の姉とは五歳離れていて、母の容姿と父の性格を持っていた。
 彼女はとても静かな人で、いつも自室で本を読んでいるか中庭で鳥の観察をしていた。活発的なエンリカとは正反対の姉だ。
 けれど、僕のことを一番考えてくれていたのはイザベラだった。
 頭の中にある日本語のせいで僕がイタリア語の勉強に難儀しているときでも、彼女は自室から持ってきた絵本で根気良く言葉を教えてくれた。
 他にも色々と世話を焼いてくれたけど、一番心に残っているのはとある夏の午後の話だ。




 体も大きくなって、自分で好きに歩きまわれるようになったころ、僕は屋敷の中を探索のつもりで歩き回っていた。
 父が使用人に暇を出している所為か屋敷の中は閑散としていて、誰も僕のことを咎めなかった。
 けれど調子に乗りすぎた僕は、生まれてから一度も足を踏み入れたことの無い西館の中に迷い込んでしまった。普段は使用人の生活の場に使われているそこはとても薄暗くて、気味が悪かった。
 でも何より堪えたのは、延々と続く味気の無い廊下が何時ぞやの迷宮に見えたことで、僕は当てもなく世界をさ迷っている錯覚に陥った。
 自身の行動を嘆いてももう遅い。
 気が付けば僕は泣きながら走り回っていた。
 中身が大人だとか、そういったものを抜きにして、あの恐ろしい体験が目の前に迫っているようで僕は精一杯泣き続けた。
 もう二度とあの暗闇には戻りたくない。
 やっと手に入れた家族の幸せを失いたくない。
 僕はこの世界に来て初めて、自分が手に入れたものの意味を知った。前世の記憶は神の罰だと思ったけど大間違いだった。
 前世の記憶があるからこそ、僕はこうして生きているのだ。

「アルフレッド!」
 
 程なくして、僕は姉に捕まった。
 部屋にいないことを不信に思ったイザベラがわざわざ探しに来たのだ。そして彼女に手を上げられたのはこの事件が唯一だと記憶している。
 僕をぶった彼女はその後強く強く僕を抱きしめ、泣いている僕をあやした。
 僕はイザベラの胸に顔を埋めてわんわんと泣いた。
 この優しい姉が僕の手からすり抜けてしまわないよう、しっかりと抱きしめ返して。



 僕は生まれ変わったこの世界を、心底愛していた。




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