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No.16065の一覧
[0] アンナと愉快な仲間達(「ハーレムを作ろう」、「伯爵令嬢ゼルマ・ローゼンハイム」続き)[shin](2010/02/04 22:47)
[1] その2:アンナとおとうさん[shin](2010/02/04 22:48)
[2] その3:アンナ、皇帝の話を聞く[shin](2010/02/04 22:51)
[3] その4:アンナ都に行く[shin](2010/02/19 20:21)
[4] その5:アンナとお姉さん[shin](2010/02/19 20:25)
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[16065] その5:アンナとお姉さん
Name: shin◆d2482f46 ID:5756cc99 前を表示する
Date: 2010/02/19 20:25
歪む視界に、軽い頭痛を覚え、顔をしかめる。
魔法による空間移動は肉体に対する負荷は少ないらしいけど、精神的には結構疲れるみたいね。

まあ、異世界からボモージュ、ヴィンドボナと移動してきた訳だから疲れるのも当然かもしれないわ。



「いらっしゃいませ~、お茶どうぞ~」

少し間延びしたような話し方で声が掛けられる。
正面の大きな執務机、中央に置かれたノートパソコンから顔も上げずに声だけが飛んでくる。

「ハイ、頂きます、アンジェリカ姉さん」
アンナは執務机の横に置かれたチェアに歩み寄りながら答えた。

見れば机の端には丸いお盆、その上にはティーセット。
ご丁寧にお茶請けらしい和菓子までが用意されていた。

「ちょっと待ってね~、直ぐに終わらすから~。 あっ、それ鶴屋八万の最中、おいしいよ~」
そんな箏言いながら忙しなく指先をキーボードに這わすアンジェリカ姉さん、視線はモニターを見つめたままだ。

アンナは苦笑を浮かべながら、ティーポットを持ち上げる。
パチンと固定化が解除され、微かな湯気と同時に緑茶のほんのりとした甘い香りが広がった。

緑茶?
アンナは更に苦笑が大きくなるような気がした。

和菓子と緑茶まで用意しているなんて、どう見てもアンナが来ることを予想していたのが丸判りである。
アンジェリカ姉さんが、この部屋への転移を許しているのは、他の四人の姉さん以外だと、アンナを含めた妹三人だけだ。

その中で、アンジェリカ姉さんが態々自分の大好きな和菓子でもてなして貰えるのは、自慢じゃないがアンナ位しかいない。
何故って、他の六人ともどちらかと言えば洋菓子の方が好きなのよね。

「頂きます」
アンナの言葉に、アンジェリカ姉さんが軽く頷いたように思えたので、そのまま最中に手を伸ばす。

紙の包装を取り、パクリと口に入れた。
ほのかな餡の甘い香りが口いっぱいに広がり、ホッとした気持ちにさせてくれる。



あー、癒される……



朝起きた時点ではあちらの世界の大学にいたのに、今は帰ってきてヴィンドボナの市街の真ん中にいるのだ。
移動距離(?)と言うのも変だけど、結構大移動だと思う。

それよりも、突然の状況の変化に振り回されてしまい、目が回りそう。
大体、まだ当分大学で好きな事してられる筈だったのに、どうして急に帰って来なければならないのかしら。

うん、ポモージュに仕事が入ったからね。
あれ?

大学はどうなるの……



もし、このままポモージュのお仕事でずうっと、こっちにいるならば大学は休学しなければいけないのかな?
まあ、退学する必要はないわよね……

あの学校は、届けさえ出しておけば、休学扱いは割合と簡単だ。
最もその分、お金が掛かるけど……

お金は、おとうさまに出して貰っている。
あっ、そうか、もう気にしなくて良いかも……

今までは、バルクフォン卿に費用を捻出して貰い、申し訳ないと言う気があったのは事実。
だけどなんだか、おとうさま(お義父様)と呼ぶように決め手から、ストンとその気持ちが無くなった気がする。

そうよ、私がお義父様と呼んであげるのだから、それぐらい出しても罰は当たらないわよね……
最中を食べながら、アンナは一人でうんうん頷くのだった。






「おまたせ~、 あっ、全部食べちゃったの?」
アンジェリカ姉さんがパソコンの電源を落としこっちに振り向いた。

だけど、その視線がお茶請けが乗っていたお皿を向いて固まっている。
確か、アンナが部屋に現れた時にはお茶請けには最中が四つ載っていた。

うん、今は一つも載っていない。

「アンジェリカ姉さん!」
「えっ?」

アンナは、真っ直ぐにアンジェリカを見つめる。
そんなアンナの態度に、お茶請けの皿をチラチラ見ながら、応えてくる。



「ごちそうさまでした!」

アンナは深々と頭を下げる。
ここが大切。

昔から、アンナはお菓子があると全部食べてしまうのだ。
まあアンナ自身、悪いとは思うのだけど、こればかりは仕方ない。

お義父様の世話になってからは、食事に関してはこの癖は直った。
だけど、お菓子だけは今でも変わらない。

ついつい、食べないとと思って全部頂いてしまう。
おかげで、アンナだけではなく、リリーとクリスもお菓子に関しては貪欲になってしまったのはいい思い出だ。



とにかくこうやって相手の分まで食べてしまった時の対応はいつも一緒。
ひたすら頭を下げて、嵐が納まるのを待つ。

「ふう、まあアンナに見せたのが間違いね~」
良し! アンジェリカ姉さん、諦めた!

「ごめんなさい、おいしかったです」
そう言いながら顔を上げると、苦笑いを浮かべたアンジェリカ姉さんがアンナを見ていた。






三十分程、お互いの近況報告や姉さま達の話を取り留めなく続ける。
もっと話していたいけど、今日中にはボモージュの館に戻りたいので、この辺で本題に入る。

まあ、アンジェリカ姉さんだから出来る事で、これがアマンダ姉さんやグロリア姉さんだとこうは行かない。
二人と話していると三時間コースだ。

「それでね、アンジェリカ姉さん、皇帝の件なんだけど……」
これって、お姉さんの仕業?

言葉にはしなかったけど、目線で伺う。



「そうね~、ポモージュの拡充と、バルクフォン家の地位向上よね~」



ああ、やっぱり……
それだけ聞けば、皇帝がヴィンドボナの屋敷に来たのもアンジェリカお姉さまの差し金だと想像が付く。

多分、聞いても教えてくれないだろうけど、お姉さまがボーデお爺さまを動かしてそう仕向けたに違いないわ。



「うーん、ホルシュタイン候とシュタインドルフ卿、後キルベルガー卿も絡んでるわよ~」



ええっと、十二選帝侯の一人であるホルシュタイン候と北方及び東方辺境伯も動かしたと……
どうも、アンジェリカ姉さんと会話していると、会話が飛ぶから大変よね。

「そこまでしなければいけない事なの?」
「いけない事なのよね~」

そりゃ、アン自身もポモージュの価値には気が付いている。
北方辺境領、東方辺境領、そしてゼルマ姉さんのアルトシュタット周辺の様々な情報が入手出来る組織。

それだけに、更に他の選帝候領での情報収集まで手を伸ばせば、帝政ゲルマニアを動かす事も可能だと言うのは理解している。
だけど、そこまでする必要があるのかしら……

元々は、お義父様の領地だったオリーヴァとクジニツァと言う二つの村に怪しい人が入ってこないかどうかを見張る為のもの。
そして、ゼルマ姉さまの復讐劇に伴いその規模が大きくなったけど、基本は同じ。

ゼルマ姉さまの養父となった元ローゼンハイム伯爵の領地カーリッシュ周辺の安全を見張る為に東方辺境領にも施設を増やし。
そして、十二選帝侯の一人となった今ではアルトシュタット領にも施設が出来た。

これまでは、成り行き上でその諜報エリアが拡大しただけ。
だけど、今回の一件が上手く行けば、多分他の選帝候領にも広がる。

しかも上手く行けば皇帝の支援も期待出来る以上、瞬く間に帝政ゲルマニア全土に広がるわね。
だけど、アンナもそうだし多分お義父様自身もその組織を使って国政をどうこうしようと言う考えは無い。

それどころか、ポモージュをそこまで大きくしてしまうと、皇帝に言いように使われるだけに陥る可能性もあるわ。



「安全保障の問題なのよね~」
「安全保障?」



アンジェリカ姉さんの言葉で、思考の海から引き戻される。
有力選帝候ともコネクションを持っており、お義父様自身爵位は低いが、資産は十分過ぎる程保有してられる。

その上、ゼルマ姉さん自身が選帝侯である以上、安全保障が必要な事はめったに起こりえないわ。
だと言うのに、アンジェリカ姉さんは安全保障の問題だと言う。

皇帝が強権を発動して、私達をどうこうしようとしてくるのかしら?
ありえないわね……

そんな事をすれば、選帝侯との対決から経済の破綻まで起こりうる事態は被害の方が大きい筈。
と言う事は……



「問題は外なのよね~」



やっぱり!
帝政ゲルマニアの問題じゃないと言うこと。

それで、マルコマーニ領なのね……
ゲルマニアの外側からの干渉に対しての情報収集。

まさか、エルフが何かしてくるの?
うううん、それもありえない。

マルコマーニ領の東のシュタイアーマルク領には、龍の八王子さんがいる。
いくらエルフと言えども、八王子さんが怒りかねない事をするとは考えられないわ。

と言う事は……



「ガリア王国、国王ジョセフ一世が問題なのよね~」
「ガリアですか……」



ガリア国王ジョセフ一世、確か数年前に即位したけど、特に表立った手腕は聞こえてこない。
ガリアがゲルマニアに目をつけているの?

確かに、ハルケギニア一の大国であり、帝政ゲルマニアのライバルと言える国だから、その可能性は無い訳ではないと思う。
だけど、それならばガリアと国境を接しているヴィルテンベルグ領やブファルツ領等マルコマーニ領の西方の選帝候領に対してではないのかしか?

マルコマーニ領とガリアの間にはエルフの領土が広がっている以上、そこを抜ける事は出来ない筈……
と言う事は…… まさか……



「ジョセフ一世とエルフの間にコネクションがあるみたいなのよね~」



そうなると、全く話が違ってくるわ。
エルフを敵視しているのは、どちらかと言えばガリア王国であり、何と言ってもロマリア連合皇国。

帝政ゲルマニアは、どちらかと言えば中立的な立場と言えるわね。
確かに、過去の十字軍に兵を出してはいるけど、直接ゲルマニアからエルフ領への侵攻は行っていない。

そんな事をすれば、万が一その報復行動をエルフが行えば、多くの領土が危険に晒される事となるのよね。
ガリアと違い、南から東に掛けて広い国境線沿いを防衛するのは不可能に近い。

それ故に、帝政ゲルマニアはエルフを直接刺激するような行為は行わないわ。
そして、エルフは人間側が攻め立てない限りあちらから来る事は無い。

おかげで、マルコマーニ領やシュタイアーマルク領は国境の向こうは未開地扱いになっている。
でも逆に言えば、マルコマーニ領は南からの攻勢にはガリアと接しているヴィルテンベルグやブファルツ領に比べて脆い事になるのよね。



「そしてね~、 今は道が出来ているでしょ~」



アンナははっと気が付いて、真っ直ぐにアンジェリカ姉さんの顔を見つめる。
それに対して、アンジェリカは強く頷くだけだった。

そう、マルコマーニ領を占有すれば、帝都ヴィンドボナまでは、一直線で行く事が出来る画期的な新道が繋がっているのだった。
国境付近で何か問題が発生した場合、整備された道は即座に必要な戦力を送りつける事が可能になる。

だけど、逆に言えば国境線を抜かれた場合、帝都まで一気に敵勢力が攻め寄せる事が可能になる。
選帝侯の一人が防壁となっている今の状態ではどちらかと言えば前者、救援兵力の展開に有利。

でもマルコマーニ候が裏切れば、逆。
そう、直ぐにでもヴィンドボナまで攻め寄せる事が出来る訳ね……









「ありがとう、アンジェリカ姉さん」

一通り話し終えると、アンナは立ち上がった。
勿論、今すぐガリアがゲルマニアに攻めて来ると言う話ではない。

だけど、国家を守ると言う事は、そのような可能性があれば対応方法を検討する必要があるのだ。
それ故、ポモージュと言う国に属していない組織を使い情報収集を行う方法が有効になる訳。

そしてこれをアンナが長となっているバルクフォン家由来の組織が行う事で、皇帝に対する覚えも良くなる。
うん、ポモージュのみんなも立場が良くなる。

それに、これだとお義父様が表に出る事も無いわ……
アンジェリカ姉さんが動くのも判る気がした。

だけど、結局私が頑張らなきゃ行けない訳ね……
うん、決して嫌じゃない。

ここまで大きくして貰った恩もあるし、何よりも姉さん達が好きなのだから。
お義父様は……

まあ、どうでも良いかもしれないけど、お姉さま達には褒めてもらいたいし。
頑張ろう!



「それじゃ、大体判ったから、私行くわね」
「ハイ~、アンナ~、気をつけてね~」

アンジェリカ姉さんが、手を振っている姿を見ながら、アンナは再び転移するのだった。






アンナが転移して行くと、アンジェリカの顔から笑みが消える。
フウッと吐息を吐いたかと思うと、アンジェリカは自嘲するように口を引きつらせた。

仕方ない……
アンナはやる気になっているようだけど、アンジェリカにすれば本当に申し訳無いと思ってしまう。

少なくとも後、半年程度は時間があると思っていたのだ。
ところが、ここに来てガリアの動きが見えて来た。

ボーデ商会を実質動かしているアンジェリカだからこそ気が付いたその動き。
マルコマーニ領の物資の移動が予想より下回り出した。

そして、どこからとも無く必要物資が供給されている現状。
これだけだったらまだ原因も不明だし、密かに探るだけなのだけど……

そう思いながら、アンジェリカは指輪に思いを込める。
取り出したのは、ご主人様の母国語で書かれた一冊の冊子。

アンジェリカならば、それが読める。
そして、読んだが為にその可能性に思い当たってしまった。

ジョセフ一世が、「アンドバリの指輪」を試して見る可能性に。



勿論、お話の世界とこの世界は違う。
ご主人様は出てこないし、ジョゼットがお話のようになる可能性はあり得ない。

それでも、「ゼロの使い魔」と非常に良く似たこの世界。
違うのは、ゲルマニアには立派な道路があると言う現実。

マルコマーニを押さえれば、ヴィンドボナまで一直線と言う事に多分ジョセフ王は気が付いたのだろう。
勿論、実際にガリア国軍を動かしてゲルマニアを攻める積もりは無いとは思う。

多分、アルビオン王国が落ちた辺りでゲルマニアの動きを封じる為に活用するのであろう。



だけど、それを許す訳には行かない。
その為に、今からその計画を潰さねばならない。

ご主人様自身やアンジェリカ達が直接介入して、その計画を潰す事は不可能ではない。
いや、それどころか非常に単純な事だ。

ご主人様が「水の精霊王」と契約している以上、「アンドバリの指輪」と言えどもその効力を失効させる事は簡単なのだ。
だけど、それをする訳には行かない。

手助けしてしまえば、アンナ達が頼るようになる。
それではこの先ダメなのだ。

アンナが中心になり、ジョゼやその他の仲間と一緒に対応しなければ行けない。
そうすれば、彼女達がゲルマニアを守って行ける。

この世界そのものは、きっとあの「ルイズ」と言うヴァリエールの娘が何とかしてくれるだろう。
だけど、ゲルマニアのアンジェリカ達が大切に思うものは彼女は守る筈も無い。






アンナには頑張って貰わなければならない。
そう、アンジェリカ達はご主人様と一緒にもうすぐこの世界から旅立つのだから……






あっ、でも影から手助けするのは、良いよね~






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