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No.16065の一覧
[0] アンナと愉快な仲間達(「ハーレムを作ろう」、「伯爵令嬢ゼルマ・ローゼンハイム」続き)[shin](2010/02/04 22:47)
[1] その2:アンナとおとうさん[shin](2010/02/04 22:48)
[2] その3:アンナ、皇帝の話を聞く[shin](2010/02/04 22:51)
[3] その4:アンナ都に行く[shin](2010/02/19 20:21)
[4] その5:アンナとお姉さん[shin](2010/02/19 20:25)
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[16065] その2:アンナとおとうさん
Name: shin◆d2482f46 ID:5756cc99 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/02/04 22:48
スイス、永世中立国、世界の銀行、マッターホルン等様々な事柄で有名な国である。
しかしこの国が有数の教育大国である事はあまり知られていない。

世界中の優秀な科学者や技術者は、米国のハーバード、イギリスのケンブリッジを目指す。
しかし世界中の王族、大富豪、独裁者が子弟の教育先として選ぶのはスイスなのだ。

レマン湖の畔、ジュネーブから程よく離れた湖畔に位置するこの大学もそのような各国の権力者の子弟を預かる事では知る人は知る教育機関だった。
卒業生や著名人の推薦と、望む期間の高額の授業料・滞在費を一括で払えるならば、生徒の学力レベルは問わない。

そのようにして受け入れた子弟に、望みうる最高の教育を授ける事では有数の大学である。
今湖畔沿いに続く石畳の小道をポプラ並木からこぼれ落ちる冬の木漏れ日を浴びながら歩いている彼女もそんな生徒の一人だった。



すらりとした細身の身体に、肩先で纏めた軽いウェーブのかかる赤毛。
明らかに美人の部類に属すであろう整った顔立ち。

ただ青み掛かった瞳から溢れるような強い意志の籠もった視線が、彼女のイメージを冷たいものとしていた。



何時ものように寮で朝食を済ますと彼女は図書館に向かった。
今日は特に講義は採っていない。

空いている時間は全て知識の取得に充てるのが彼女の日常だった。
自分がここに居られるのも後わずか。

その短い時間の間に役に立つ知識を仕入れるのに彼女は必死だった。



「えっ! 嘘!」



そんな彼女の確かな歩みが突然止まる。
辺りを見回し誰もいない事を確認すると、そそくさと道を外れ辺りから見えない木陰に身を移す。

再度辺りに誰もいない事を確認し、彼女はブラウスに手を伸ばした。
ボタンを外し、首に掛けたペンダントを取り出したのだ。

銀の鎖に大きな宝石の付いたシンプルなペンダント。
ただし、先端に付いたクルミ大のやや大きめの赤い宝石が、今は脈打つように動いているのが普通だとすれば。



「もー、何なのよ!」



彼女はブツブツ呟きながら、その宝石を強く握り締めるのだった。
かすかに淡く光る輝きが彼女を包み、次の瞬間にはそこには誰もいなかった。









突然何も無い空間に、光が溢れ出した。
そして、次の瞬間にはそこに先程までレマン湖の畔にいた女性が現れる。

「お帰り~」
部屋にいた三十台前後の男性が驚く事も無く気安く声を掛ける。

「ちょっと! いくら卿でも、勝手に部屋に入らないで下さい!」
彼女の口から怒りの声が漏れる。

「えー、そんな他人行儀な、アンナと俺の中じゃないか」
「どんな中なんですか? 少なくとも私の記憶ではそんな中はどこにもございません!」

「冷たいなあ、昔はあんなに可愛かったのに」
「私が冷たくなったなら、それはみんな卿のせいです。 そうに決まっています!」

「ええっ! 俺が悪いの?」
「違いますか? 来る者来る者みんな襲っていって、何人ものお姉さんを手籠めにしている色ボケが悪くない筈ないじゃないですか」

「えっ? 俺って色ボケ? アンナの中ではそんな評価なの?」
「今更何を言っているのですか、そんなのずーっと前からそう言う評価です、変更はありません!」



男は目の前で、頭を抱えて落ち込んでいる。
アンナはそれを横目で見ながら、隣の寝室に向かうのだった。

クローゼットを開き、今まで来ていたブラウスとジーンズを脱ぎ、こちらで愛用しているワンピースに着替える。


本当に、あの人も困ったものだ……
アンナがこの地にやって来て九年、最初は本当に顔を向けるのも恐ろしいと思ったものだったのに……









気が付けば北方辺境領の街コウォブジェクで必死に生きていた。
何人もの浮浪児達と同様、年長者のリーダーに従うように走り回りながら生きていた。

そんな生活も突然終わりを告げる。
リーダーを務めていた男性が殺された、グループはバラバラになり、アンナの元には自分を慕う年下の四人が残されたのだった。



     どうしよう……



あの時は、本当に途方に暮れた。
頼る充てもある筈も無い。

それなのに、自分を頼ってくれる小さな同胞達。
四人の八つの瞳が、縋るように自分を見つめていた。

私が縋りたいわよ!
心の中で叫んでみてもどうしようも無い。

既に今までねぐらにしていた橋の下には戻れない。
リーダーを殺害した、あいつらが待ち受けているだろう。

それだけに、早急に新しいねぐらを見つけなければならない。
今はまだ暖かい。

だけど、この先寒くなるのは目に見えている。
そうなれば、朝起きた時にグループの中で栄養状態の悪いものが息絶えるのをアンナは知っていた。

幸い、食べ物はゴミを漁っても何とかなる。
満足な量ではないけど、生きていける最低限。

魔物に襲われる可能性さえ忘れれば、森の中で木の実を探すことも可能だ。
食料は五人が必死になれば何とかなるだろう。

後は、寒さが来る前に、何とか風が凌げ、全員がくっつけば少しは暖かいと思える場所だけ。
それが思いつかない。

孤児院と言う手が無い訳ではない。
だけど、そこから逃げて来た子すらいたのだ。

一応最低限の食事は確保されている。
だけど、それは形だけ。

朝から晩まで、子供でも出来る仕事をさせられ、くたくたになって眠る。
いや、それならまだまし。

子供にはどう考えても無理だろうと言う仕事もさせられるのだ。
虐待は当たり前。

シスターの不満の捌け口。
見目麗しい子供は、良い小遣い稼ぎ。

そんな話が飛び交っている中、孤児院の門を叩こうなんて思わない。
だから、自分達で生きて行くしかない。



「あたたかいお水?」
「温泉って言うんだぜ、それって」

横で話している子供二人の会話がふと耳に入った。
そう言えば、ここから北東に言った村で温泉が出たって街の人が話していた。



「お湯が出すぎて川になって流れているそうだぜ」
「そりゃ、凄いな、いいなあ、冬は暖かそうだな」

こんな会話をしていたのだ。



     『冬は暖かそうだなあ』



そうだ、温泉の傍ならば暖かいに違いない。
しかも、最近出来たばかりだそうだ。

それならば、他の子達も誰も住んでいない筈。
川に掛かる橋の下にはまだ誰もいないだろう。

どうやって、行くのだろう。
どの位遠いのか?

全く判らないけど、少なくとも可能性はある……






     「みんな! 街を出るよ!」



とにかく生きて行く為に、出来ることは全てしよう。
そう思い、五人の仲間達と一緒に、コウォブジェクを後にしたのだった。






「ここが、おんせん?」
「なにもないね~」



一週間掛けて辿り着いた温泉が出たと言うバルクフォン卿の領地には何も無かった。
小さな農村と、小さな港。

二つの村の間の小高い丘の上に、こじんまりした館が建っている。
そこがバルクフォン卿のお屋敷だろう。

だって、それ以外に大きな建物は見当たらなかった。
屋敷から今五人が立っている森の端までは道が続いている。

今までみんなで歩いてきた道だけど、それは通り抜けてきた森の奥へと繋がっていた。
その道沿いに何件かの同じような家が並んでいる。

その横では村人が更に新しい家を建てようとしているようだ。
だけど、それ以外は何も無い。

もう少し大きな街だと思っていた。
これでは、残飯なんかも取り合いになっちゃう……

アンナは、通り抜けてきた森を振り返る。
うん、この森の中なら色々食べられそうなものもあった。

幸い、魔獣は出なかった。
ひょっとしたら、いないのかも知れない。

いや、いない方がありがたい。
食べ物は木の実を中心に集めよう。

それに作業をしているようだから、片手までも仕事があるかも……
アンナはくじけそうになる思いを必死に打ち消し、みんなを見る。

「とりあえず、温泉を探しに行こうか?」
「さんせ~」、「うん」、「あっ、あっちかな?」

左手の牧草地の向こうに、白い煙のようなものが見える。
アンナ達みんなは、そちらに向かって駆け出していた。



辿り着いたのは、湯気の立つお湯が勢い良く流れる深い溝のような川だった。
「わあ~、湯気がたってる~」

みんなは、ワイワイ言いながら、その流れを見ている。
降りられないかな、触れないかなと騒いでいる横でアンナは暗澹たる思いに包まれるのだった。

確かに、温泉の川はあった。
だけど、これってどう見ても出来たばかりの川だった。

それに小さな川と言うより、溝に近いものだ。
困った、これでは橋の下にねぐらを求められない……

考えてみれば判る筈だった。
出たばかりの温泉なんだから、橋すらも掛かっている筈も無かった。

あたしって、本当に馬鹿なんだから……
暗い森にビクビクしながら通り抜け、魔物に怯えながら食べられる物を集めて……

辿り着いた所が、こんな辺鄙な村。
しかも、人が少なくて食べ物も満足に集められそうにない。

冬のねぐらと考えた橋の下も、そもそも橋すら無い。
それはそうだ、出来たばかりの溝のような川に橋など掛けている訳は無い。






「あっ、あっち、あっち」
一番小さな女の子が歓声を上げて走って行く。

「あっ、危ない、待ちなさい!」
考え事を止めて、アンナは必死に彼女を追う。

他の子らも、同時にそちらに向かう。
彼女が見つけたのは、溝から溢れ出た温泉が湯だまりになっている所だった。

「ね、ね、これ、入れない?」
「あっ、これなら大丈夫だね」

アンナが止める間もなく、みんなその湯だまりに足をつける。
「あったかーい」、「気持ちいい~」

そんな声を聞けば、アンナの頬も緩む。
仕方ないわね……

そう思いながら、アンナも足をつけて見る。
素足にひりひりするぐらいだけど、暖かいお湯に癒されるようだった。

悲観していても始まらない……
少なくとも、コウォブジェクと違い、ここでは誰も苛める人はいない。

それにこうやって、のんびり出来るんだし……
うん、何とか頑張って生きて行こう。









     「で、いったいどう言う理由で私を呼び出したのですか? お・と・う・さ・ま!」



そう、アンナは五年前からバルクフォン卿の養女になっていた。
ちなみに、アンナが卿の事をおとうさまと呼んだのは今回が最初だった。



養女にすると言われた時は、まだ知らない事も多く、涙を流して感激したのを覚えている。
今思い出すと、それは恥ずかしい記憶だ。

バルクフォン卿に雇われ、孤児を活用した情報収集機関。
それが、孤児院を作るための建前だったとは全く気が付かず必死に他の仲間達と頑張った。

あれも巧妙だった。
表から見ればどう見ても孤児院にしか見えない。

だけどここに住む子供達はそんな事一切思ってもみなかった。
何せ、毎日しっかりと監視の仕事をこなしているのだ。

最初は五人だけで毎日道を見張る日々が続いたものだった……






五人でこの温泉が流れる川の傍で生きて行こうと決めてからは大変だった。
先ずはねぐらの確保が必要だった。

「すいません! この木切れ要りますか?」
なるべく可愛く見えるように、顔いっぱいの笑顔を浮かべ、働いている村人に問い掛ける。

「ああ、それか、別に要らないけど?」
「じゃ、貰って良いですか?」

「ああ、良いけど、何するんだい?」
「あっ、色々作って見ようと思うんです」

怪訝そうに顔を顰める村人にお礼を言って、早々に木切れを運び出す。
運んできた材木を縛ってあった荒縄を貰う。

温泉沿いに歩いていて、打ち捨てられた服を見つけた時は、みんなで万歳と叫んだものだった。
牧草地の果て、柵の外側に小さな小屋か出来た。

他人から見れば本当に粗末なぼろぼろの小屋とも言えないもの。
だけどアンナ達五人にすれば、誰にも文句を言われないで夜を迎えられる大切なねぐら。

ビクビクしながら森に入って木の実を集める。
建物を建てている村人を遠くから眺め、残飯をどこに捨てるか必死に目で追う。

そんな、最低の暮らし。
だけど、少なくとも年上の人に苛められず、自分達だけで暮らせる小さな小さな世界。



冬になったらどうなるのか……
まだ獣には出くわさないけど、狼やそれよりも怖い魔獣に襲われたら……

短い間だったけど、アンナはそんな思いを振り払うように必死に駆けていた。
そしてあの日を迎える。

「君達に仕事を与えるから、家で働かないか?」
バルクフォン卿が投げかけた一つの言葉。

不安とそして、ほんの僅かな期待。
騙されるのじゃないかと言う不安。

ひょっとして神様っているのかもしれないと信じたいと言う僅かな、本当に微かな期待。
でも、あんなにエロい神様だとは思いもしなかったけど……



そして、始まる予想も付かない新しい生活。
牧草地の柵沿いに作ったねぐらは、いつの間にかみんなの待機場所になっていた。

朝起きて、食事を済ませれば、五人でここまで来て監視を開始する。
見た事無い人が森から出てきて、街に向かえば、アンナがお屋敷に報告に走る。

何も無ければ、全員でお屋敷に帰ってお昼を頂く。
そして、また日が暮れるまで監視のために大切なねぐらに向かう。

アンナは直にこれでは監視の抜けがある事に気がついた。
そこでバルクフォン卿にその旨を伝えて貰った。

アンナが驚いたのは、その話を聞いてバルクフォン卿が態々自分に会いに来たことだった。
あの当時は本当に、尊敬していたんだわね……



今思い出しても、卿の前でおどおどしながら話していた自分の姿を思い出す。
卿は話を聞くと、どうすれば良いかと問い返してきた。

そんな会話を続けながら、結局ローテーションを組む事が決まり、それ以来道の監視は本当の仕事となった。
週五日、小さな子は二時間、大きくなれば最大八時間の監視。

そして二日は休みと言うジョブローテーションが採用される。
更に驚いたのは、それに併せて給金が支給されるようになった事だった。

その代わり、給金から宿舎での宿泊費、食事は引かれる。
だけど仲間全員が、施しを受けている立場から本当に、働いて暮らしている立場に変わった瞬間だった。



その後もアンナは、気が付いた事、思いついた事をバルクフォン卿に挙げていった。
それに併せて、卿のほうからの提案や勉強用の資料も渡される。

アンナは必死に頑張った。
そして、次々と新しい提案を挙げていったのだった。

道の監視も、大切なねぐらから、小さな出店に変わった。
通る人々が不審に思わないように、飲み物を販売する店にしたのだ。



ここに来る前に住んでいたコウォブジェクに連れて行って貰い、新たな仲間も増やした。
そして、監視場所も増やし情報の精度も上げる事も勉強した。

毎日のパターンを把握し、その中でイレギュラーが発生したら判るように工夫を凝らす。
統計学の分析手法を始めて教そわったのもあの頃だった。



この頃から、アンナにお姉さんが出来た。
バルクフォン卿の筆頭メイドの一人、アンジェリカ姉さん。

アンナの聡明さに気が付いたバルクフォン卿が、連れて来たのだ。
アンジェリカ姉さんに色々教えて貰い、世界が突然広がるようだった。

そして、アンジェリカ姉さんの紹介で、ヴィンドボナの屋敷に住む他の筆頭メイドの姉さん達。
みんな、みんなアンナの姉さんになってくれたのだ。

今から思えば、バルクフォン卿自身、アンナの質問に手が負えなくなってきていたのだろう。
だから、態々アンジェリカ姉さんを連れて来た。

アンジェリカ姉さんだけ連れてくると、他の筆頭メイド達から不満が出てくる。
結論として、ヴィンドボナに住まう彼女達も、頻繁に北方辺境領の館を訪れるようになったのだろう。

まあ、ここには露天風呂があるから、絶対あの色ボケが喜んで連れて来たんだろうなあ……
ホンと、当時は何も知らなかった。



彼女らがあの色ボケのお手付きで、アンナ自身が潜在的なライバルと見られていたなんて……
ヴィンドボナの屋敷に住むリリーとクリスがお手つきになって直ぐに、バルクフォン卿から養子に迎える話が出たのだ。

建前は、ポモージュの拡大により、責任者の立場を確立する為。
ちなみに、ポモージュと言うのは、アンナ達監視業務についている子供達の組織の名前だった。

この辺りはボモージュ地方にあたるのだが、誰かが最初にポモージュと言い出し、それが名前になってしまった。
そして、ポモージュ孤児院は、その支部をクラドノに作ろうとしていたのだ。

そのポモージュの実質的な管理者は、その生い立ちから今に至るまでずっとアンナが勤めていた。
それはそうである。

アンナを含む五人の仲間が中心におり、ポモージュのメンバー全員に言う事を聞かせられるのはアンナ達しか出来なかった。
そして、この五人の仲間達は、アンナの言う事しか聞かないのだ。

仲間達は決して忘れない。
アンナがコウォブジェクを出ると言わなければ、四人ともここにいる事は無かった事を。



バルクフォン卿の財力で維持している慈善団体であるポモージュ孤児院。
その管理者が、卿の養女であると言うのは、非常に理に適った事である。

誰も反対出来ないし、誰もがアンナを認める。
アンナ自身も、あのバルクフォン卿の娘として扱われる事は光栄であり、喜びだった。






だけどねえ……
その本当の理由が、お姉さま達が、アンナが卿のお手つきになるのを恐れたからだって……

誰が信じよう。
流石に、娘にすればお手つきにはならないだろうなんて。

そう言う思惑が、アンジェリカ姉さんも含め、全員の同意だった。
特に、リリーとクリスがお手つきになった為、彼女らの焦りは深刻だった。

他のメイドに手を出すのは最早諦めている。
だけど、リリーやクリス、そしてアンナ等、個人的に親しい言わば彼女達からすれば身内中の身内に手を出されるのは辛い。

特に、アンナも含めて、三人は一世代は若いのだ。
同年代の他のメイドと違い、新たな世代の若い娘は脅威になるのは間違いなかった。

まあ、この色ボケはそんな事考えてないだろうけどねえ……
今だから、バルクフォン卿の性格は良く判っている。

だから、確かにアンナ自身が襲われる事は無いだろう。
それに、リリーやクリスにしても、彼女らが望んだからこそ、お手付きになっている。

そう言う事があっても、色ボケは彼女らをみんな愛しているのは間違いない。
アンナ自身、自分もそのハーレムの一員になりたかったのかどうなのか良く判らない。

ただ、そのまま流されていたらそうなった可能性は否定出来ない。
そして、それでも良かったかもと思う自分がいるのも事実だった。



おかげで、今では奇妙な関係を構築してしまっている。
あちらの世界に留学し、様々な知識も身に付けた。

今もそれを継続中だったけど、どうやら留学も終わりらしい。
それでなけば、卿がアンナを呼び戻す理由が判らない。

少し未練は残るが、知識は書籍等を送って貰えば済む。
それに、コネクションは出来ているから、いざとなれば転移の魔法で会いに行けば良いのだ。



さてと、一体何があったのか、真剣に聞きましょうかね……
アンナは、『おとうさま』と呼ばれたまま、固まっているバルクフォン卿をまじまじと見つめるのだった。









卿の周りの親しい女性で、唯一お手付きでない女性。
養女ではあるが、娘として唯一好きな事を言って許される立場。



二人のこの関係は終生変わることは無かった。


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