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No.14803の一覧
[0] ある皇国の士官の話【皇国の守護者二次創作・オリ主・】  各種誤字修正[mk2](2010/06/12 21:06)
[1] 第二話[mk2](2010/06/19 17:45)
[2] 第三話[mk2](2010/06/19 17:45)
[3] 第四話[mk2](2010/06/19 17:46)
[4] 第五話[mk2](2010/06/19 17:46)
[5] 第六話[mk2](2010/06/19 17:46)
[6] 第七話[mk2](2010/06/19 17:46)
[7] 第八話[mk2](2010/06/19 17:50)
[8] 第九話[mk2](2010/06/19 17:47)
[9] 第十話[mk2](2010/06/19 17:48)
[10] 第十一話[mk2](2010/03/10 01:31)
[11] 第十二話[mk2](2010/03/26 05:57)
[12] 第十三話[mk2](2010/06/19 17:50)
[13] 第十四話[mk2](2010/06/19 17:50)
[14] 第十五話[mk2](2010/04/24 13:20)
[15] 第十六話[mk2](2010/05/12 21:52)
[16] 第十七話[mk2](2010/06/12 20:32)
[17] 設定(色々減らしたり、整理したり)[mk2](2010/06/12 01:32)
[18] アンケート結果です。[mk2](2010/01/25 22:55)
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[14803] 第十話
Name: mk2◆1475499c ID:2f98b6bf 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/06/19 17:48
先に行ったアンケートで、多くのお叱りを受けました。
軽い気持ちでこれを行なってしまったこと、心から謝罪させていただきます。
本来ならば、全記事を削除するべきなのですが、私は小胆なためそこまでの行動に踏み切ることができませんでした。
もしもこれ以降、記事を削除すべきと言う意見が大勢を占めるようならば、その忠告に従い記事を削除させていただきます。
お騒がせしてしまい、本当に申し訳ありませんでした。






撤退は予想以上にうまくいった。
敵に襲われることはもちろん、天災にも見舞われることもない。
唯一のトラブルというべきものがあるとしたら、24日の早朝から霧が出始めたことだろうか。
それさえも、俺自身に取っては原作通りの事で、驚くようなことではない。
苗川から北美奈津浜までの40里。
短い距離ではなかったが、25日午前第6刻には着くことができた。

「ここが北美奈津浜か。」

僅かに降っている粉雪が潮風に煽られ、濃密な霧の中を踊るように舞う。
目の前に広がっているであろう大海原は、霧に遮られ見通すことができないが、向こうに迎えの船がいるのだろう。

「まさか生きて海を拝めるとは、思ってもいませんでしたよ。」

高橋曹長が感慨深そうに呟いた。
確かに今までの戦いを振り返れば、そのような感想が溢れるのも無理はない。
捜索剣虎兵第11大隊、ここに所属していった生粋の剣虎兵は、すでに半数以上がその生命を落としている。
ひょっとしたら、俺はいまここに立っていなかったかも知れない。
そして、それは俺だけでなく、ここにいる全ての兵に言える。
結果は大きく異なったが、その過程に大した違いはない。
ここにいる人間は生き残るために全力を尽くした、ここにいない人間たちも生きるために全力を尽くしていた。
そこに違いがあるとするならば、一つ、運が良かったのだ。
そして、その運に助けられて、俺たちは今北美奈津浜、北領の南端に立っている。


ここに着いた俺たちを迎えたのは、転進司令本部でも、守原英康でもなかった。
そんな奴らは既に撤退を終えている、笹島中佐だって例外ではない。
恐らく顔を突き合わせて、夏期総反攻の草案でも練っているのだろう。
そのかわりに俺たちを迎えたのは、山と積まれた物資の残骸だった。
天幕、糧秣、砲、騎馬、銃、衣服、軍に関係するものならば、無い物は無いと言わんばかりの種類と量。
その量は、数個師団をゆうに養えるほどのものだ。
初期にこれほどのものが運ばれてきたとは考えづらいから、戦闘の長期化を想定した支援物資だったのだろう。
そして、兵を運び出すためにその多くが破棄されたというところではないだろうか。


特に周囲にゴロゴロと転がっている砲は、港では無いが故に運び出せなかったと思われる。
見えるのがほとんど擲射砲や臼砲等の大型砲であるところを見ると、平射砲はそれなりに持ち出せたのだろう。
それ以外に、馬も運び出すほどの余裕はなかったと見え、数百匹もの馬の死体が転がっている。
この規模では連れてきた馬が全て死んだとのではないか。
駒城が今回の戦でかなり儲かっていると原作では話していたが、納得できる話だ。


そんな物資の残骸の片隅に、僅か数十名ほどの皇国兵が小規模な宿営地を構築していた。
こちらの影を見つけたのか、その中の一団がこちらに駆け寄ってくる。

「自分は那須田中尉であります。貴官は第11大隊大隊長殿でありましょうか。」

「その通りだ那須田中尉。皇国陸軍独立捜索剣虎兵第11大隊大隊長益満保馬少佐、以下587名。転進司令本部からの撤退許可を受け、北美奈津浜に到着した。出迎え感謝する。」

「いえ、とんでもない、第11大隊に会えるというだけで光栄です、それを感謝など。」

40ほどだろうか、少し若さの残る顔に眩しいものを見るような表情を浮かべている。
良く見ると、後ろに並んでいる兵たちも、一様に同じような表情を浮かべていた。
……尊敬の眼差しって言うんだろうな。

「……船への移動はすぐに出来るのだろうか?」

「はい、波にさらわれないように陸に上げていますから、それを水のあるところまで押してやればすぐにでも。」

「ちなみに運荷艇は何艘ほどあるのだろうか?」

「20艘です。一つに5~6人ほどしか乗れませんが、そちらの剣歯虎を載せられるくらいの積載量はあります。」

「そうか、ありがとう。それでは撤収地点まで案内してもらえないだろうか。」

別に、彼らの宿泊地がここから見えないわけではないが、迎えに来てくれた以上、役目を与えるというのも礼儀だ。
はいっ、という小気味良い声と共に彼らが先導として歩き出す。
俺自身は怪我をして動けないが、今は馬に乗っているためついて行くことに問題はない。

「曹長、100人ほどのグループを作っておいてくれ。負傷者と導術が最初、士官と剣牙虎は最後だ。」

「大隊長殿はどちらで?」

「俺は負傷者である前に士官だよ。」

思わせぶりな表情を浮かべ、曹長は列の後方へと走っていく。
重傷を負っていた兵が、ここにたどり着くまでに4名ほど死んでいる。
それぞれ、足が吹き飛ばされていたり、腹部に大きな銃創を負っていた者たちだった。
俺が手を下したわけではない、そういった怪我をした兵は、撤退をする前に俺が自分の手で殺した。
いまここには、療兵が内地で手当てをすれば助かる、そう判断した兵しかいない


正直浮かれていたのだろう、北領に派兵されたときは、本当に死を覚悟した。
だがそうはならず、原作との誤差は起きたものの、生きて帰れるというだけでそんなこと些末ごとに感じられた。
新城が生きてさえいれば、皇国は帝国に抗しうる。
その条件を満たし、自分も生き抜くことができたのだ、浮かれない方がおかしいのかも知れない。
そしていざ撤退するというときに現実に突き落とされた。
怪我のせいで余り外を出歩かなかったのが原因なのだろう、負傷者、それもいつ死んでもおかしくないほどの怪我を負った人間が収容されている天幕に入ったときは、思わず呼吸を忘れた。
それほどの衝撃だった。
高橋曹長がこれだけは絶対にあなたがしなければならない、そう言って渡してきた拳銃。
義務をこなすことができたのは、こちらに来てから長かったからだろう。
前の世界での俺ならば間違いなく逃げていた。
そして、俺にそうさせたのは、こちらに飛ばされてから常に嫌っていた将家の意識というものに他ならなかった。

「余り気にしない方がいい。新米士官ならば誰でも通る道だ。」

いつの間に近くに寄って来ていたのか、新城が軍務中には決してしない言葉遣いで話しかけてくる。
行軍中は隊列の前後にいたため話すことができず、休止中も話す機会には恵まれなかった。
このタイミングでここに来たのは、高橋曹長が呼んだからだろうか。

「……。」

黙って首を振る。
この言葉を言ったのが別の士官ならば納得できたかも知れない、でも新城は違う。
新城だけは違う。

「気にするよ、味方を殺したんだ。気にしない方がおかしい。」

帝国兵を殺した。
前から向かって来た奴も、背中を向けて逃げ惑う奴も、どちらも気にせずに殺した。
まだ苗川に至る前、その撤退途中にいくつもの民家を焼いた。
井戸に毒を落とした。
数百、数千もの帝国兵が死ぬであろう命令を下した。
それでもこんな感情は抱かなかった。


原作で、新城はこれを許容できる戦場という言葉で形容した。
ならば味方を殺す、これが俺に取って許容できない戦争なのだろう。
味方を生かすためには大概のことは出来る、けれどもその逆はできない。

「仕方がないと思うことが大切だ、そう思わなければ君自身の精神の安定を欠きかねない。」

その語る新城の顔にはなんの表情も浮かんでいない。
隠しているのか、なんとも思っていないのか、付き合いは長い方だと思っているのにわからない。
俺には、新城の許容出来る戦争というものが何なのかは分からないが、新城にとっての戦争が俺と同じものだとは到底思えない。
きっと、新城は味方を殺すにせよ、それを笑って行えるのだろう。
そこに例外は二人しかいない、駒城保胤と蓮乃だ。
それ以外はたとえ自らの恩人であろうと、情人であろうと、幼子であろうと、無関係な衆民であろうと、等しく裁く。
少なくとも、俺が原作で読み取った新城の肖像とは、そうであった。

「そうか、それが新城の許容する戦場か。もういい。」

軽く手を振り、去るように命令する。
新城は従うだろう、彼は怯懦な人間だ、命令という形をとれば間違いなく言うことを聞く。

「…………。」

長い沈黙。

「新城大尉、少し一人にしてくれないか。」

語調を強める。

「僕はこういった時どのような言葉をかければいいのかを知らない、だけど保馬、少なくともこれは君の責任ではない。軍の、ひいては国家というものに責任がある問題だ。どうしてもそれを許容できないならば、軍を辞めるしかない。」

何か言いようのない怒りに駆られ、言い返そうと新城の方を向こうとしたとき、既に新城は後ろ姿を見せていた。
追いかけはしない、自分の地位がそれを許さないことは、わかっている、その程度の冷静さはある。
そして、その冷静さが自分の中に大きな違和感が存在していることを認識させていた。

「……なんで。」

自分でも何が言いたかったのかは分からない。
ただ、それは今の悩みに対する解決法といったものではなく、新城直衛という人間に対しての何かであることだけははっきりと理解できた。

「どうかされましたか?」

先導していた那須田中尉が、怪訝そうな顔で振り向く。
俺と新城の会話が僅かに耳に入ったのだろう。

「いや、何でもない。ただ少し、自分の手で殺した兵のことを話していた。」

「ああ、そういうことでしたか。」

何か得心が行ったという様子で頷く。

「中尉も、重傷を負った兵を自分の手で殺したことが?」

「……ありますよ、少佐殿よりも若い兵でした。私掠船との戦闘で負傷して、もう10年も前のことです。」

そう語る那須田中尉の表情は暗い。

「すまない、不躾だったな。」

人間誰でも触れられたくないことがある。
それを自分の一時の感情で抉ってしまうのは、許されることではない。

「いえ、少佐殿はお若いのですから。」

軽く笑顔を見せても、そこには影が除く。
それを見て、変に気を使わせてしまったように思えて、なおさらに罪悪感が増す。

「今回の戦いが初陣で、初体験ばかりだったんだ。」

「そうですか、初陣がこれとは災難ですね。」

とっさの話題逸らしだったのだが、那須田中尉も話を合わせてくれる。

「殺したり、殺されそうになったり、その他にもいろんな経験をしたよ。」

若干愚痴にも聞こえるその言葉に、那須田中尉は何か含むように目を細め、ゆっくりと返答をした。

「それだけの経験をなさっても、その表情が出来るならば大したものです。少佐殿は英雄になれますよ、少なくとも軍人としては。」

大人物、か。
今俺の顔には間違いなく苦笑が浮かんでいるだろう。
軍人としての大人物なんて、自分には似合いそうもない。
そういうのは新城みたいなのを言うものだ。
戦争を楽しみ、笑って人を殺す、どこか狂っている人間じゃないと、戦場の英雄なんて言うものにはなれない。

「残念ながら、中尉の言うとおりにはなりそうもない。兵がどれほど目の前で死のうと顔色一つ変えず、しかしこころの中では自分に死刑判決を下す。そんな奴こそが英雄になるべきだ。」

だからこそ、皇国には英雄がいない。
人の死を笑える人間は自分のことを顧みることができず、自分の行いを悔いることの出来る人間は、人を笑って殺すことなどできない。
当然だ。
この両立が出来る人間なんて、壊れている。
だってそれは全ての客観視に他ならない。
他人も、自分も、全ての人間をボードの上の駒だと思い、単純な足し引きだけで物事を考える。
普通の人間ならば、自分の生命と他人の生命が等価であるなど、考えもしないだろう。
だというのに、中尉の浮かべる表情は同意ではなく、不信と同情の混じった表情であった。

「……ご自分の表情をご存じないのですか?」

一体何を言っているのかと思った。
自分の表情なんて認識できるはずもないだろうに。

「一体何を?」

「いえ、ご自覚がないのでしたら。」

海岸までたどり着いたのをタイミングに、失礼します、と言い残し彼の部隊のところまで駆けて行く。
時間に猶予がある時ならば追いかけて聞いても良いのだが、流石にこの状況ではそうもいかない。
だけど、少し人と話したことで気が楽になった。
苗川撤収時からこちらに着くまでの間、命令をするとき以外誰とも話さないでいたため、結構気が張り詰めていたのかも知れない。
すくなくとも、もう少し時間がある時に考え直せば良い、そう思うくらいの心の余裕が出来ていた。


うちの部隊の方は若干手持ち無沙汰だが、陸戦隊の方はかなりの忙しさだ。
那須田中尉が部隊のところへと行くと同時に彼らのほとんどが動き出し、波打ち際から20間ほど離れた地点に揚げられている運荷艇の元へと駆け出し、一つの運荷艇に10人程が取り付くと、掛け声と共にそれを押して行き瞬く間に水面まで持っていく。
繰り返すこと2回、僅か数分の間に水面には20艘ほどの運荷艇が浮かんでいた。

「少佐殿、浸水も無いようでいつでも出られます。」

那須田中尉の報告の最中、今だに濃く残る霧の向こうから、複数の船のものと見られる警笛の音がした。






「本艦、大瀬艦長の坪田典文中佐だ。」

他の船とは違う、明らかに戦列艦と見える船に上がった俺を迎えたのは、少し縦に顔が長い30半ばほどの男性だった。

「はじめまして、坪田中佐殿。自分は皇国陸軍独立捜索剣虎兵第11大隊大隊長益満保馬少佐であります。」

初対面の相手にならば、一人称は自分だ。
新城ならば僕と言うかも知れないが、俺は自分の一人称にそれほどの拘りは無い。
ってそんなことより……坪田中佐?

「ようこそ本艦へ。内地までの短い間だが歓迎する。」

坪田中佐は原作で、まあ、色々あって死んでしまった人だ。
原作において新城は、北領撤退戦において焦土作戦を完璧にするために、笹島中佐を通してこの戦列艦大瀬に真室の糧秣庫を砲撃させようとしていた。
しかし、真室に到達する前に、大瀬は悪天候のため沈没、艦長を含めその全員が死んでいる、いや、死ぬはずだった。

「はっ、ご配慮感謝します。……ところで坪田中佐殿は笹島中佐殿のお知り合いでしょうか?」

「ほう、君も奴を知っているのかね。奴が俺のことをどう語っていたかは知らんが、奴は君のことを変なやつだといっていたよ。」

悪意のなさそうな顔でニヤリと笑い、一拍おいて豪快に笑い始める。
近くで話を聞いていた部下がポカーンとしているところを見ると、何処に笑いどころがあったのかわからないのだろう。
俺もわからない。

「笹島中佐殿は、船を扱わせたら自分などよりもよっぽど気がきく、艦長として生まれてきたような男だと言っておられました。」

もちろん、俺は笹島中佐と、坪田中佐の話などしていない。
ただ、原作において坪田中佐が余りにもモブキャラなので、少し確認をとりたくなっただけだ。

「そうか、そうか。まあ、そうだろうな。」

そう言って、先程よりも大きな声で笑い始める。
……笑い上戸なのかもしれん。


一人で笑っている坪田中佐を置いといて、軽くあたりを見渡す。
早朝と比べると、だいぶ霧も晴れてきていて、300間ほど先までなら見通すことが出来る。
その視界の中で真っ先に眼に入るのは、大瀬と並行に並べられた回船の列だ。
大きさに限って言うならば大瀬と同程度の大きさだが、砲を載せていないため積載出来る量は、大瀬を大きく上回る。
そのため第11大隊の兵の多くは、新城も含め大瀬ではない他の船に乗っている。
ちなみに回船といったが、海運分野において大協約世界の頂点に立っている皇国の船に、日本の歴史に登場するような船舶は見られない
帝国やアスローンなどの国家と商業を競うにあたり、その形状は非常に欧州のものに近いものに進化している。
中でも速度を重要視したと思える目の前の回船は、装甲艦登場前のクリッパーに似た形状を持っている。
流石貿易国家といったところか、民間から徴用したと思われる船舶の中にさえ、1世代前のガレオン等は含まれていない。


一方の大瀬は、艦首よりに作られたメインマストと、船体後部に作られたリアマストの2本が特徴的な軍艦だ。
ここ北美奈津湾において、唯一の軍艦でもある。
おそらく、敵艦との戦闘を想定して、護衛の代わりに配備されているのだろう。
大瀬は、こちらの世界の艦船の定義で言うと、ナポレオン戦争前後のフリゲート艦に類似した形状となっている。
確か、皇国水軍の言い方に習うと、乙型巡洋艦と言ったはずだ。
帆船、特に皇国水軍最新鋭ものは、駆逐艦も含めた上で普通3本のマスト(帆柱)を持つ。
一方で大瀬は2本、言ってしまえばかなりの旧型艦であった。

「君の部隊は友軍の撤退を単独で支援したのだったな、どうだった?」

こちらが周囲を見回している間に笑いを収めたのか、暇な時間を潰そうとするかのような表情を浮かべた、坪田中佐が尋ねてくる。
さきほどと同じ悪意の篭っていない表情であるところを見るに、これが彼の素なのだろう。

「我々だけが撤退を支援したわけではありませんよ。親王殿下の支援もありましたし。」

「親王殿下か、ああそうだったな。」

そう返事をすると、軽く鼻を鳴らす。
その顔には、皇族崇拝の念とは全く反対の感情が浮かんでいる。
もし周りに兵がいないのならば、悪態の一つでもつきそうな様子だ。

「で、君のところはどうだったんだ?」と

「殺して、殺された。戦争とはそういうものでは?」

深く答えたくはなかったので、軽く話題をそらす。
坪田中佐はその言葉で、こちらの内意を汲み取ったのか、鼻白んだのかはしらないが、それもそうだなとだけ返事をした。

「中佐殿はどうしてここに?」

「笹島から頼まれたのさ、アンタらを迎えに行ってやれと。」

会話の間を埋めるように出した質問、それを尋ねられた坪田中佐は、満更でもない顔で答える。
その時大瀬の露天甲板に、胴体を3箇所ロープで止められ、釣り上げられるように暁が登ってきた。
動くこともできず、かと言ってリラックス出来るわけでもない始めての感覚に、戸惑ったように「にゃー」と鳴いている。

「おお、これが今話題の剣歯虎という奴か。すごいな。」

坪田中佐が呟く。
この船の船員たちも、始めて間近で見るのだろう。
運荷艇や脱出艇を上げ下げするような機材で運ばれてきた暁が甲板に降りるなり、暇な船員たちで人の群れが出来上がる。
戸惑ったような表情のせいであまり怖くなかったのが原因だろう。
暁がロープで縛られているのを良いことに、頭をなでたり、しっぽを掴んだりでやりたい放題だ。

「あ、ちょ、そんなことすると。」

不快そうな表情で耐えていた暁が、一瞬素の表情を浮かべ、直後大きく息を吸い込み轟音を放った。
戦場で放たれるものと遜色ない声、空気が揺さぶられているかのように振動する。
ああ、この声って響くんだよな。
今でこそ平気だが、昔はこの声を聞く度に睾丸を鷲掴みにされたような気分を味わったものだ。
彼らも同じ気分を味わったのだろう、先程までペットを愛でるかのような態度をとっていた船員たちが、5間以上も後ろに飛び下がる。
本能的にこちらの恐怖心を揺さぶる声だ、耐えようと思って耐えられるものではない。

「ちょっといいですか?」

人の群れを押しのけ暁のところまでたどり着くと、こちらを認識したのか、やけに満足気な表情で再びその咆哮を轟かせた。
鼓膜が轟音で圧迫されるが耳は塞がない、まあ、いわゆる他の兵科への見栄ってやつだ。
案の定、周囲からは驚きや感嘆の声があがり、ちょっと満足気な気分になる。
軽く頭を撫でてやりながら、結ばれている紐を解いてやると四肢を大きく伸ばし、こちらに体を擦り付けてくる。

「笹島が話していたのを聞いただけだが、予想以上だな。」

いつの間に近づいていたのか、坪田中佐の声がすぐ後ろから聞こえた。
言葉とは裏腹に、特に先程と変わったところのない声色。

「触っても良いかい?」

そう言っている間にも、既に手は暁の方へと伸びている。

「か、艦長、危険です!」

先程の咆哮で暁から数間離れたところにいた船員の一人が、慌てて止めに入る。
しかし、暁には近寄ろうとしない。
結果的に、今の発言は艦長から6間くらい離れた位置から放たれている。

「大丈夫ですよ、自分がここにいるので、命じない限り攻撃はしません。」

「えっ、いや、ですが……。」

慌てっぷりが面白い。
かなり若く見えるから、新米士官なのではないだろうか。
落ち着きを取り戻した他の船員たちが笑っていることに気づいていないところがそれらしい。

「中尉も触ってみますか?」

ニヤリと笑いながら言うと、大きく手を振りながら人の輪の外へと走っていった。

「中々に気持ちいいな。」

後ろを振り返ると、坪田中佐が暁の喉を撫でているところだった。

「私は実家で猫を飼っていてね、妻もかなりの愛猫家なんだよ。」

言っていることは真実なのだろう。
触り方も堂に入っており、喉を撫でられている暁も、目も細め気持ちよさそうにしている。

「暁、この剣牙虎のことですが、内地に戻ったら買い取ろうと思っているのですけど、奥方様にもお見せに行きましょうか?」

「ふむ、中々に魅力的な提案だ。そちらの都合が着くならば是非とも。」

しゃがんでいる姿勢からこちらを見上げ、嬉しそうに答える。

「艦長、導術長より報告!本艦4刻の方向6浬の距離に敵艦確認、数は10とのことです!」

その報告が飛び込んできたのは、そんな会話の最中であった。








霧で視界が300間程しかない中を、10隻ほどの船が縦列陣形を作りながらゆっくりと進んでいる。
中央には乙式巡洋艦が3、その前後を固めるように9隻の駆逐艦が担っており、掲げられた旗は、彼らが帝国軍東方辺境艦隊所属であることを示している。
もっともそれぞれの艦の距離は100間以上離れており、両端の軍艦の姿は霧で見えない
その中心、乙式巡洋艦ヘルグラントの露天艦橋で2人の人物が会話を交わしている。

「艦長、もう少し速度を上げた方が。この速度では敵との遭遇時に、的になる恐れがあります。」

がっしりとした体型で、少し灰色がかった銀髪の男性が、懸念の色も顕に隣の青年へと話しかける。

「……そんなことより、座礁しないかが心配だ。ヴラソフスキィ提督から預かった船を、そんなことで失うわけにはいかない。それに奇襲?敵に戦闘艦などほとんどいないって聞いている。2,3隻の船が我々にまともな被害を与えられるか?」

しかし、その青年は聞く耳を持たずといった表情で、その提言を一蹴する。

「ですが」

「ワレンチン曹長、父は君を私に反抗させるために随行させたのか?」

なおも追いすがる、ワレンチンの言葉を途中で遮り、返す口調は罵りに近い。
興奮に充ち満ちた感情に水をさされ、かなり機嫌を悪くしたようだった。
まさしく会話を拒絶している態度に、ワレンチンはなにかを言いたそうにしたものの、結局何も言えず押し黙る。


青年、ドミトリー・クズネツォフ中佐にとって、これが初陣であった。
帝国においてクズネツォフ家は、代々水軍の重要な地位に人物を送り続けている。
そのクズネツォフ家の三男として生まれた彼は、あとを継ぐ可能性もなく、そのため伝統に従い成人後まもなく水軍士官学校へと送られた。
そこでの彼の成績はお世辞を使ってさえ、良いと言えないものであったが、彼の実家の名前が、卒業後まもなく彼を巡洋艦艦長の地位へと押し上げた。
それは僅か、数ヶ月ほど前の話でしかない。
そんな彼が、下士官の提言を受け入れられないのも無理はない話と言える。


もっとも、この大協約世界においてこういった若い人間が指揮をとることは珍しいことではない。
皇国、帝国、アスローン、南冥諸国群、これらの国は先進性、後進性はあるものの、全て貴族制を採用している。
こと帝国においては、現皇帝ゲオルギィ三世のもと絶対王政が敷かれており、その歴史もゴーラント一世より始まる1000年以上の歴史を持つ。
そして、貴族がその権力を持つ理由として語られるのが、ノーブレス・オブリージュ、すなわち高貴なる者の義務だ。
現在の大協約世界においては、貴族はこの義務に従い、従軍することが常識となっている。
実際、皇国や帝国の貴族は、貴賎を問わずその殆どが従軍経験を持つ。
現皇帝ゲオルギィや、前東方辺境領副帝の娘である東方辺境領姫、皇国現皇主正仁帝の弟である実仁親王などもこれにあたる。
そういった社会において、無能者や戦闘経験が皆無の人間が上位の立場となるのは、いわば不可避の問題とも言えた。

「曹長、敵を見つけたら、まず何をしたらいい。」

先程ワレンチン曹長を突き放した時とは少し違う、新しいおもちゃを与えられた子供が、その使い方を問うような口調で話しかける。
その姿は先程の態度とは違い、見出そうと思えば、それなりに愛嬌と言うものを見いだすことが出来そうな態度だった。
その様子に少し感情をほだされたのか、ワレンチンは見えないようにため息を吐きながらも、出来の悪い子供を見守るような表情を浮かべる。

「何処に敵がいるかわかりませんからね、可能ならある程度部隊を散開させたいのですが、今回は霧のせいでそれが出来そうにありません。連絡の取りようがありませんからね。」

基礎的な説明を省くことなく、理解力の無い彼の上官にもわかるように話していく。
小慣れた感のあるその対応は、彼とその上官の付き合いの長さを感じさせる。

「ですから結局のところ、山を張るしかありません。幸い敵は撤収中とのことですし、このまま陣形を崩さず北美奈津浜に突入後、敵がいなければ北美奈津湾口で待機、本隊との合流というのが定石かと。」

「へー、そんなものか。戦争っていったら、もっと派手な何かがあると思ってたけど。」

歴戦の下士官や将校が聞いたら、顔を真赤にして怒り、そんなものはないと怒鳴りそうな発言を無造作に放つ。
初陣を過剰なまでの緊張感と責任感で迎える若者がいれば、彼は全くその正反対にいるような人間であった。
もっとも、ワレンチン曹長は彼のそういった浅慮な発言に慣れているのか、軽く苦笑を浮かべるだけで済ませる。

「寡兵と言っても侮ってはいけません。我々がここにいる理由も、陸での苦戦を悟ったユーリア殿下のご配慮なのですから。」

「まったく、陸の方が餓死寸前って聞いたときは、正気を疑ったけどね。陸の奴らはそんな初歩的なことさえ、まともに手配出来無いなんてね。」

鼻を鳴らし、馬鹿にしたように話すその言葉をシュヴェーリン少将が聞いたら、彼の命を賭してもドミトリーを手打ちにするだろう発言であった。
もっとも、陸と海の仲は悪いと古来から相場が決まっているため、それほど不思議な発言ではなかったが。


現在彼らがついている任務は、撤退途上の皇国水軍及び、北美奈津浜に集結しているであろう皇国陸軍への攻撃である。
10日ほど前に東方辺境軍総司令部に入った報告は、東方辺境鎮定軍の兵站が、近い将来限界に達するであろう予想を示していた。
これをその鋭敏な戦略センスで感じ取った、東方辺境姫ユーリア・ド・ヴェルナ・ツァリツィナ・ロッシナはすぐさまヴァランティ東方辺境艦隊に攻撃指令を下した。
この命令を受け取ったヴァランティ東方辺境艦隊総司令官ヴラソフスキィ大将は、旗下の艦隊では期限内の目標地点到達の不可能を悟り、旗下の辺境第1戦列艦隊から機動力のある駆逐艦と乙式巡洋艦の一部を抽出、皇国の撤退を撹乱させ本隊の到着までの時間を稼ぐ戦略にでていた。
うまくいけば、撤退に使われている皇国の回船を一網打尽に出来る、そしてそれを護衛する皇国軍艦はさほど多くないことが想定出来るのだ、たとえ皇国水軍の艦艇が多くとも所詮40隻ほどの軍艦しか持たない水軍である。
10隻ほどの軍艦があれば、撃破は出来なくとも十分に撤退を遅延させることは可能、そう東方辺境艦隊司令部は判断した。
その臨時に編成された、先鋒集団がドミトリー中佐旗下の10隻である。

「艦長、それはユーリア殿下への批判になりかねません。お控えを。」

帝国、というよりは彼の上官の実家に忠誠を誓っているワレンチンは、周囲の誰もがこちらに気を止めていないことを確認し、優しい口調で彼の上官に自制を促す。

「あっ、いや、そんな意図はなかったんだ。」

誰かに謝ろうとし、その対象がここにはいないことに気づき、妙に焦ったような口調になる。
彼自身に10隻もの船を指揮する能力はなかったが、それでも性格の悪い人間ではなかった。
それがわかっているからだろう、ワレンチンもそれ以上たしなめることはしない。





明らかな砲声、あたりを覆う白にそれが響き渡ったのはちょうどその瞬間であった。
そして一拍遅れた後に、世界が崩壊したのではないかとさえ思える爆音が轟く。

「な、なんだ、今の音は。敵の新兵器か!?」

普通の砲声ならばこれほど狼狽はしない。
今響きわたったそれは、ただの砲声とは明らかに一線を画す音であった。

「違います、これは……船が爆沈したときに出る音です!」

彼自身も狼狽を隠せないものの、一瞬の間に的確な判断を下せるところは、さすが下士官と言ったところか。

「艦長、敵の攻撃です。敵の位置は不明、今の音からして攻撃を受けたものと。」

唐突な攻撃に、慌てて伝令が駆け寄ってくるが、情報の欠如故に要領を得ない。

「あん、どういうことだ!?」

「霧で何も見えず、後方も見えないため僚艦の確認さえ。」

「もういい、砲術長!掌帆長!」

このまま伝令の話を聞いても仕方がないと思ったのか、まだ話している彼を無視し、ドミトリーは大声でこの船において最も重要な2名を呼ぶ。
既に近くまで来ていたのか、すぐに返答が来る。

「砲術長、全砲門開け、掌帆長、最大戦速で敵を振り切れ。」

「無理です艦長、現在風は本艦9刻の方角から吹いています。いまここで速力をあげたら僚艦にぶつかります。」

彼の命令を受け、砲術長が即座に艦橋下部に入っていた一方で、掌帆長は命令の不可能を伝える。

「ならば、周りの艦に伝えろ。これより最大戦速に移行、その上で、取舵をとり敵艦を迎撃する。急げ!」

風上にいると思われる敵に対する戦術としては、好手とは言えない判断に一瞬顔を顰めるが、即座に命令伝達のために駆けて行く。
下士官に過ぎない掌帆長に、士官に反論するほどの権限はない。
数寸後、艦尾に据え付けられたカンテラが点滅を繰り返し、前後の艦に先の命令を送る。
後方の船からは霧のため見えないだろうが、それをまた後方の船が伝えるので伝達に関しては問題はない。



   北↑

        進↑   ●●
   行↑   ◎●
方↑   ○○
        行↑   ●●
         ↑   ●×

                ◆

風向き:ヘルグラントより9時の方向
◎:ヘルグラント
●:駆逐艦
○:巡洋艦
×:轟沈した駆逐艦
◆:想定される敵艦の位置。

問題は時間であった。
こうしている間にも断続的に敵艦の砲撃音が響き、戦列後尾は敵の砲火に苛まれている。
実際、戦列前方にいるヘルグラントこそ何の攻撃も受けていないが、後方では阿鼻叫喚の図が展開されていた。

「くそ、なんであいつらはこっちの居場所がわかったんだ!?」

とりあえず、一通りの指示を出し終えたドミトリーが悪態をつきながら、しかし当然の疑問を述べる。

「……わかりません。ただ蛮族の中には背天の技を使う者がいると聞いた覚えがあります。」

「背天の技?」

帝国において、導術は一切使用されていない。
その最大の理由が宗教の存在だ。
拝石教という、皇国にはない独特の宗教を持つ帝国では、その教義に基づき導術に関する一切が禁止されている。
導術を使える人間は皆殺しにされ、それに関する情報の一切の記述も認められない時代が数百年続いたことにより、導術について知るものは帝国にはほぼいなくなっていた。
様々な商業活動に導術が利用され、経済の回転に導術が必要不可欠となっている皇国とは、非常に対照的だ。

「普通の人間では見えないものを見通し、感じられぬものを感じる技だとか。」

「そんなもの、あるはずがない!」

ワレンチンの発言に被さるように否定する姿からは、その両国に存在する、価値観の差異の一端を、明確に感じ取ることができた。

「艦長、駆逐艦ペルヴェネツから報告。駆逐艦エフレムは敵初弾が火薬庫に命中し轟沈、本艦もメインマストが破損し自力航行不可、とのことです。それ以外にも、後続の全ての艦から被害報告が来ています。」

「敵艦についての情報は?」

「ペルヴェネツの最後の情報によると、数は1、艦種は砲声の数から巡洋艦と思われる、とのことです。」

エフレム、ペルヴェネツ、共に嚮導駆逐艦として製造された艦である。
嚮導駆逐艦とは、本来海賊の駆逐や、回船の護衛などの目的で作られた駆逐艦の旗艦として使われるべく設計された。
通常の駆逐艦よりも拡充された指揮所と武装をしており、先の2艦は<ロゴルナ>級にあたり12斤艦砲を両舷あわせ28門装備している。
共に、本来はこのような使い方のされる艦種ではなかったが、その快速と重武装を買われ今回の任務についていた。
実際大瀬の装備は12斤艦砲が両舷で24門であり、通常ならば単艦でも大瀬を上回る火力を持っている。

「ちぃ、せめて敵艦がどちらに進んでいるのかだけでもわかったら。」

ドミトリーが爪を噛みながら呟く。
速度の増加と共に、聞こえてくる砲声も乏しくなる。
しかし彼らが果たさなければいけないのは、自艦の保護ではなく敵艦の撃破だ。
まだ若い彼が抱いた焦燥感はかなりのものだろう。

「艦長、敵の大まかな位置はわかっております。艦を二つに分け左右から挟撃するのはいかがでしょう。」

「僚艦同士の誤射の可能性がないか?」

「……この場合多少はやむを得ないかと。」

視界の有無に関わらず現代の砲では500間以上離れての攻撃は基本的にされない。
余りにも命中率が下がるからだ。
それに加え友軍艦が敵を視認できたことから考えれば、敵艦の位置は、後方に取り残した僚艦のさらに後方500間前後と考えられた。
艦隊を左右に分け転進すれば、少なくともどちらかの艦が敵に接触する。

「航海長、僚艦に指示を。リューリクとカングート、ダーネブログはこちらと共に取舵、その他は面舵をとり、敵艦を挟み込む。」

先程から近くで会話を聞いていた航海長が、即座にその命令を伝令と操舵艦橋へと伝える。
舵輪の回転と共に舵が大きく水面をかき乱す。
前方の駆逐艦リューリクに続き、ヘルグラントの船体が大きく左に傾いた。
急激に変わった風向きに、一瞬帆が力なく倒れるが、即座に後ろから新たな力を受け先程よりも大きくその帆を張る。

「天象長より報告、風は本艦10刻の方向に移行せり。」

「好都合だ、最高の速度が出る。」

先程から加速を続けていたものの、横風では裏帆を打ちやすく速度は中々上がらないが、180°の旋回を行った場合、最高の方向から風を受けることになる、
先程まで5刻ほどであった速度も、9刻を超えることが期待できた。

「見張員長、警戒を厳にしろ。敵を絶対に見落とすな。」

「はっ、見張り厳にします。」

「砲術長、両舷砲いつでも撃てるようにしておけ。」

「砲術長了解。」

「陸兵隊長より艦長、陸戦隊完全装備にて待機中、各員配備の許可を求む。」

「好きにしろ。ただし渡船板を忘れるな。」

次々と連絡がなされる中、艦橋下部から40人ほどの人員が駆け上がって来て、それぞれ見張り台の上に登ったり、手摺の後方にしゃがむなどして敵艦との接触に備える。
上甲板の一段下、砲甲板において多くの砲員がいつでも命令を実行出来るよう、装填の済んだ艦砲に取り付く
たとえ微かな影であろうと、見張員がそれを見つけ、艦長へと報告する。
先の奇襲による混乱が収まった今、帝国水軍はその名にふさわしい練度を示していた。


先も述べたように、貴族制を敷いている国において、有能ではない人間が指揮をとる事になることは珍しいことではない。
しかし、下士官の質の高さがそれを補う。
彼らの艦長が下した命令がいかに簡素なものでも、その命令の範囲内において、最も大きな戦果を出せるように各員が動く。
比較的将家の影響が薄いため、水軍士官の多くを衆民が占める皇国との最大の違いがそこにあった。


左舷に未だに炎上を続ける僚艦が見える。
1隻は帆先を除きその船体を海面に沈ませ、もう2隻はメインマストの大破と船体の炎上により自力での航行能力をなくしている。

「……曹長、あの2隻は沈むか?」

「わかりません。火薬庫まで火が行くかどうか、ですね。」

「ダーネブログを船員の救出に向かわせたい。だめだろうか。」

ワレンチンは返事を躊躇う。
その判断が間違っているからではない。
現在あの2隻は非常に危険な状態になっており、救助を向かわせるのは正しい判断と言える。
問題は現在の戦闘の主導権は皇国側が握っており、ダーネブログが戦列を離れたことによってそちらが狙われる可能性があることだ。
その場合、現在でも危険な状態の2隻がさらなる危険に晒されかねない。

「……後にした方が良いかと。」

「そうか。」

悔しさをにじませた返答に、ドミトリーは短く答える。
彼自身無理と言われることを想定していたため、押し通そうとはしない。
ただ、その短い返答が彼の心情を表していた。



   北↑

        進↓
   行↓   ●
方↓   ○        ○
        行↓   ◎    ∴   ●
         ↓   ●   ××   ●


∴:沈んだ艦
×:炎上中の艦
◎:ヘルグラント


炎上している僚艦の脇を通り過ぎても、なかなか敵からの接触がない。
もちろん、見張員の発見も期待はしているのだが、導術によりこちらが後手になることは予想された。
不気味な沈黙が数寸続く。
既に敵が離脱してしまっている可能性が、全ての船員の脳裏をよぎる。
味方が一方的に撃破され、敵には逃げられるという最悪のビジョン。
直後、ヘルグラント右舷から砲声が轟いた。

「伏せろ!!」

誰が放ったとも知れない言葉に、全員が沿った行動をとる。
もっとも、放たれなくてもとる行動は変わらないが。
砲声から数瞬おいた上で響き渡る着弾音。
導術を使用したとは言えど、初撃故にその精度は低い。
その大半は海面を叩くのみにとどまった。
しかし、1発の幸運な砲弾は敵艦への命中を得た。
ガンッ、という音が鳴るが、巨大な船体を持つヘルグラントは揺らがない。
しかし、それと同時に、破壊された船体の木片が甲板を飛び回り、その直線上にいた不運な船員が体を引き裂かれた苦痛にのた打ち回る。

「右舷砲門開けぇ!!」

ドミトリーが今で放った中でも最も大きな声、その叫び声に答え、右舷から無数の砲弾が放たれる。
旧式の巡洋艦である大瀬と比べ、ヘルグラントはそれに倍する艦砲を載せている。
それが一斉に霧の中へと吸い込まれて行く。
命中音は聞こえない、そもそも命中を期待して放った攻撃ではない。
敵艦の位置さえ掴めていない攻撃では、そもそも近くに落ちることさえないだろう。
それでも敵への牽制にはなるし、味方の船員を勇気づける効果がある。
ヘルグラントの砲声に続くように、前後の艦からも斉射の音が聞こえる。


それに答えるように再び霧の向こうから聞こえる砲声、先のものと比べれば圧倒的に近い。
旗艦と思われる大型艦を狙ったのだろう、ヘルグラントにも3発もの砲弾が向かう。
1発は船体に突きささり何事もなく終わるが、その内2発は甲板上で炸裂し、霰弾を周囲に飛び散らせる。
先程の木片とは違う鉛の雨に、甲板上に展開していた船員が10名近く吹き飛ばされ、なぎ倒され、その生命を終えて行く。

「見張員長!敵の位置は!!」

「ほ、本艦2から3刻の方向!」

互いの砲声で声が聞き取れないため、会話は自然と大声になる。
砲声のみで判断を下しているため、見張員長からの報告も少し正確さを欠く。

「面舵一杯、これより我々は敵艦に対し衝角戦術をとる。」

隣で伏せていた曹長がギョッとしたような表情でこちらを振り向く。
まさか、彼の若き上官がそれほどの積極策をとるとは思わなかったのだ。
衝角戦術とは、船首の水面下にある突起を、敵の船底に突き刺しその航行能力を奪う戦闘手段である。
現在の艦砲が発達した世界においては廃れつつある戦術ではあるが、この時代全ての艦に慣例的に設置されていた。


即座にその命令が前後の艦に伝わり、戦列の先頭を走るリューリクの船体が大きく右に傾く、直後、リューリクのメインマストに砲弾が突き刺さりその巨大な柱をへし折った。
風を捉えられなくなったリューリクの船足が、ゆったりと低下する。
船速の鈍った艦では、衝角戦術は使えない。
敵艦の速度がこちらを上回っていた場合、そもそも追いつくことが出来ないからだ。
特に現状況では、敵艦の位置さえはっきりとしていない。
沈むことはありえないが、戦闘に参加し続けるには致命的な被害であった。

「リューリクは置いておけ、これより本艦が先頭に立つ。」

「危険です、艦長が被弾する恐れがあります。」

僚艦が対応する分には異議は唱えないものの、彼の上官が危険に晒されるとあらば、ワレンチンは異議を唱える。
敵艦が十分な被害を受けている場合ならば接舷しても問題ないが、衝角戦術を使う相手は今だに被害を受けていないのだ。
互いの艦上で激戦が繰り広げられるだろうことが予測できた。

「貴族が矢面に立たず、誰が先頭に立つというのか。」

それは彼の父が、彼の幼少の頃によく言い聞かせた言葉であった。
もちろん彼はその言葉に誇れるような生き方をしてきたわけではない。
それほどの意識を持って、人生に臨んでいる貴族など一握りだ。
それでも、今の肥大化した彼の意識が、心の何処かに染み付いたその言葉を吐き出させていた。
それこそ、まぎれもなく、全ての人間が羨む勇気というべきものであった

「見えた!」

砲声のみを頼りに霧を掻き分け進んでいたヘルグラントの前方に、朧気ながら敵の船影がちらついた。
片舷の砲を常時放ち続けるその姿は、まさしく彼らが探していた大瀬の姿であった。

「総員衝撃に備え!!」

その言葉を、近くにいた兵が復唱し、艦の隅々まで伝わっていく。
あるものは柱に、あるものは手摺に、その体をあずける。


敵との距離が300間を切り、敵の攻撃は全てが間違いなくこちらに当たる。
ヘルグラントは戦列の先頭に立っており、その攻撃を一身に受けているのだから当然だ。
進路も一直線に敵艦へと向かっているため、砲弾を当てるにも苦労しない。
さらに敵艦甲板に並んでいる兵からの攻撃も激化している。
砲とは違いその精度は高い。
甲板上の兵がバタバタと倒れて行き、ドミトリー自身を掠るような弾も何発も飛んでくる。


飛び交う砲弾の内、数発がヘルグラントのマストを直撃する。
軋むような音を立て、艦尾に設置されていたリアマストが倒れる。
既にヘルグラントに直立しているマストは存在していなかった。
甲板にいる船員も、その殆どが傷を負い、半分以上が血溜まりの中に突っ伏している。
それは、第11大隊が味わったものと比べ、勝とも劣らない地獄であった。


しかし、中破、あるいは大破という判定が出てもおかしくない被害を出しながらも、ヘルグラントは最も貴重な距離を稼いでいた。
自力航行能力を失いながらも、惰性に従い船は前に進む。
そして舵が生きている以上、逃げる敵を追うことはできた。

「敵艦接触まで10点、9,8,7,6」

誰がカウントしたのか。
火力の嵐の中で、誰もそれも認識することが出来ない。
それでもそのカウントは確かだった。

「5,4,3衝撃来ます!!」

巨大なハンマーで殴られたような衝撃が船体を揺らし、乗り上げたかのようにヘルグラントの船首が持ち上がる。
この瞬間、ヘルグラントの船首は、大瀬の右舷中央部に完全に突き刺さっていた。


溜まっていたフラストレーションを開放するかのように、甲板に並んでいた陸兵達が真っ先に駆けて行く。
各々が手に小銃、腰に鋭剣を装備しており、その姿は水兵には見えない。
数名が渡船板を持っているが、使うことはないだろうと思えた。
それほどまでに、ヘルグラントの船首は深々と大瀬に突き刺さっていた。

「うあああああああああああああ」

先に渡っていった陸兵隊に、砲員や見張員も続く。
この段階において兵科は関係ない、全員が手に鋭剣や短銃を持ち敵艦へと渡っていく。
そこには階級も、貴賎も関係ない。
全員が、ただ敵を倒し、生き残るためだけに戦っていた。

「曹長、俺たちも行くぞ。」

「……背中はお守りします。」

覚悟を決めた人間を制止するほど無粋ではない。
ただ短く返す彼の部下に、ドミトリーはかつてないほどの信頼感を覚えていた。


霧とは別の、硝煙によって遮られた視界の中を駆けていった兵たちを、整列した皇国の陸兵達の弾幕が出迎える。
しかし、その人数は多くない。
ヘルグラントと大瀬、その艦種は共に巡洋艦であるが、旧式の大瀬と、新型のヘルグラントでは、搭載している兵員の数が数十人も違う。
弾幕の間を間を縫い、攻撃を受けなかった帝国兵が、皇国兵を切り捨てて行く。
士気の高さも伴い、その戦闘は四半刻と経たず終わりそうに見えた。



その声が聞こえるまでは。



形容しにくい、しかし、人間の本能の根本的部分に働きかけるような咆哮が霧の中に響き渡る。
それは本来ならば海上で聞くことはない声。
しかし今、この大瀬の上には、その声をだす生き物が乗っていた。


本能的な恐怖により足を止めた帝国兵の群れの中に、3つの白い影が飛び込む。
それを見た兵は、ある種場違いな感情に囚われた。
美しいと。
その兵は直後、首の大動脈を噛みちぎられ、その生命を終えることになった。

「な、何の音だ!?」

敵を圧倒するかと見えた、帝国の攻撃が止まった。
まだヘルグラントにとどまっている兵が、前へと進みだそうとしない。
その理由は一つ、50人もの兵が皇国の艦へと渡っていったにも関わらず、先程の声を境に全く銃声も剣戟も聞こえなくなったのだ。
逆に響きわたるのは、帝国語での慈悲を請う声と、神や母親の名を叫ぶ断末魔の声、咀嚼されているかのような不気味な音。
その音は、渡っていった帝国兵が瞬時に鏖殺されてしまったのでは、という余りにも信じがたい想像を彼らに与えた。
硝煙によって作られた煙幕が、彼らの視界を遮り、皇国の艦の甲板を臨むことが出来ない。
それがさらにその想像を掻き立てる。
そしてその音は、1寸ほどで鳴り止んだ。

「……な、何をしている。目の前には敵がいるのだぞ!進め!!」

ドミトリーが叫ぶものの、その効果は薄い。
敵がいるのに、そこにいるのが本当に自分たちの知っている生き物なのかが信じられない。
目の前の皇国艦から、全く音が聞こえてこないことがさらなる恐怖を誘う。

「……サターナ。」

誰かが呟いた。
帝国後で悪魔を表す言葉。
その言葉こそ、いまここにいる全員の想像を象徴していた。

「馬鹿な、そんなものいるはずがない!」

そう言うと、ドミトリーは自ら前進して行き、船首の方へと歩み寄っていく。
指揮官自ら進まれたら、従わざるを得ない。
ヘルグラント甲板にいた船員たちが、怯えながらもゆっくり前進して行く。

「あ。」

船員の一人が声を零した。
硝煙の煙幕の中から、大きな影が唐突に現れ、ドミトリーをはじき飛ばしたのだ。
血こそ流れていないものの、体をおかしな方向に曲げながら飛んでいく。
その影は船首からもう一度飛び跳ね、甲板中央部に着地する。
それは一匹の虎であった。
白を基調とした毛に黒い縞模様が入っている、いや、いたと思われた。
全身を帝国兵の血でどす黒く濡らし、口元には戦友であった兵の肉片がこびりついている。
その姿があまりにも堂々としているが故に、あまりにも美しすぎるが故に、あまりにも恐怖を喚起させるが故に、彼らはその瞬間動けなかった。
虎の咆哮が、帝国の艦の上で響く。
その声に合わせるように、皇国の銃撃が帝国水兵と降り注ぐ。


それは皇国軍の反撃だった。
既に船底に大穴が開けられている以上、彼らがこの海域を脱出する術は無くなっている。
ならば、なぜ彼らがここまで戦うのか、それは僚艦の脱出を支援するために他ならなかった。
4種類の軍服が入り交じり、互いに剣戟と銃声を交わし合う。
しかし今や、その戦況は圧倒的に皇国に傾いていた。
ヘルグラント甲板に突如として現れた3匹の剣牙虎は、海上においてもその圧倒的な戦闘力を見せつけ、むしろ帝国水軍が戦列を組んでいない事を利用し、陸戦以上にその能力を見せつけている。
圧倒的な瞬発力により帝国の銃撃は空を切り、決死の思いで繰り出される剣も、その殆どが躱されるか肌をなでるにとどまり、致命傷を与えることが出来ない。
また、剣牙虎にのみ気をとられれば、後ろから駆け寄った皇国兵に背中を撃たれ、皇国兵に対処しようとすれば剣牙虎にその背中を切り裂かれる。
船という場所に特有の狭さも皇国兵の味方となる。
密集出来ず、容易く壁に追い詰められ、仲間の援護もなく死ぬ。
そこはまさに帝国兵にとっての地獄であった。


戦場において、兵が最後まで戦う例は少ない。
大抵は矢が尽き剣が折れる前に、その武器を捨て去り敵に背を向ける。
彼らの最上級指揮官が既にいないとあらば、尚更であった。

「ひ、ひぃ。」

あまりの恐怖から一人の兵が、手摺を乗り越えその向こう側の海へと逃避する。
一人が逃げれば続々と続く、甲板にいたほとんどの兵は彼に続きその身を海に投げ出していた、
彼らとて、飛び込んだ海が極寒の地獄であることは認識している。
実際飛び込んだ者の多くが、着水した瞬間にその心臓が止まり、そのまま水の中へと沈んで行く。
それでも、その最初の瞬間を持ちこたえることができた頑強な体の持ち主は、近くに散らばるマストや木片に捕まり、仲間の救助を待つことができた。
ヘルグラントと大瀬の甲板の上でこそ、彼らは圧倒的優勢に立っていたが、今だにこの海域には健在な味方艦が5隻もあるのだ。


つまり、逃げれば助かるということ。
ただでさえ、報奨金制度があり、うまくいけば家を買えるほどの金銭が手に入る皇国とは違い、帝国には報奨金制度がない。
いくら敵艦を沈めようと、死んでしまえば意味がない。
つまり練度は高くとも、基本的に士気が高くないのだ。
戦闘は四半刻もかからずに終了した。
非常に局地的な皇国の勝利として。


ほとんどの生きている帝国兵は海へと逃げ、死者か重症者しか残っていないヘルグラントの甲板、その中で、一人だけ甲板の上に立つ帝国兵がいた。
歯を食いしばり、それでも逃げようとはしない。
理由は彼の足元を見れば理解できた。
明らかな重傷を負いながらも、まだ生きている彼の上官。
少なくともその生命を守るためだけに彼はそこに立っていた。

「皇国水軍大瀬艦長、坪田典文中佐だ。貴官の名は。」

彼を取り巻く皇国兵の中から、一つの声が響く。
もちろん言語が違うため、坪田の言葉は彼には理解されない。
しかし、それを比較的流暢な帝国言語で訳す皇国兵がいたため、その内容は彼にも理解できた。

「帝国水軍下士官ワレンチン・サハロフ曹長。」

返答は短い。

「死にかけた主人を見捨てられないか、貴族とは難儀なものだな。」

口の片側をつり上げ、坪田は皮肉げに笑う。

「……蛮族には忠義という言葉がないと見える。」

そう返すワレンチンの目には、死を覚悟したものに特有の、強い意志が浮かんでいる。
松葉杖をついている士官らしき男がそれを伝えると、坪田はどこか遠いものを見るような表情を浮かべる。

「忠義に死ぬのも悪くはないか。」

松葉杖の士官がそれを訳さなかったため、ワレンチンにはその言葉の意味がわからなかったが、そこに込められた感情は理解できた。
それは確かに尊敬の感情であった。

「自分は殺されても良い、ただ、この青年だけは助けてもらえないだろうか。」

「……その必要はない。」

ワレンチンの表情が固くなり、柄に加えられた力が剣先を微かに揺らした。
溢れでた殺気に、松葉杖の士官の隣にいた剣牙虎が、唸り声を漏らす。

「我々は現時刻をもって降伏する。可能ならば大協約に基づいた扱いを受け入れて欲しいものだが。」

「…………受け入れましょう。」

この時二人が吐いた言葉、それは互いにとって非常に屈辱的なものだったに違いない。
しかし、この場にいる両軍の、最も階級の高い人間が合意したことにより、この海域において行われた海戦、それは終わりを迎えた。
この後、周囲に展開していた帝国艦の兵は、皇国の圧倒的敗北を予想していながら、その想像とは全く別のものを見ることとなる。
ヘルグラント及び大瀬甲板には、圧倒的多数の皇国兵、そして僅かばかりの帝国兵がいた。
これが勝ちと言えるのか、それとも負けと言えるのか、それは立場によって大きく変わるだろう。
しかしこの瞬間、この海域にいた全ての人間が敗北感を噛み締めていた。





これは、帝国と皇国の戦いにおいて、最初に生じた海戦であり、帝国が追撃時に受けた最大の被害であった。
帝国
嚮導駆逐艦ヘフレム沈没
嚮導駆逐艦ペルヴェネツ大破
駆逐艦ヴィクトル大破
駆逐艦リューリク中破
巡洋艦ヘルグラント大破
その他小破多数。

皇国
巡洋艦大瀬大破





あとがき

過去最大の文章量です。
もう少し短く分けたかったのですが、このような結果になりました。
今回の話は、ほぼオリジナル展開です。用語に関しては、可能な限り原作に準じましたが、間違いがあれば御指摘ください。
最後に、誤字の指摘をしていただいた方々に感謝を。


ちょっと原則未読者に不親切かなと思ったので、設定の方に皇国と帝国のスペック差を書いておきます。
原作未読者の方は、読んだ方が世界観がわかりやすいかもです。
地理

マップに関しては、原作の最初のページを立ち読みでもしていただくのが最もわかりやすいのですが、簡単に言うと帝国はロシア、皇国は日本です。
ロシアっぽい土地の、中央に帝国本土、西に帝国西方諸侯領、東に帝室直轄領(東方辺境領)といった位置関係です。
で、東方辺境領東端の、少し南に皇国があります。
他にも帝国のかなり西にアスローンという国があり、さらにその西に南冥民族国家軍というのがあります。
どちらも帝国とガチンコで戦えるくらいには大国のようです。
ただし、アスローンと南冥民族国家軍は、酒の名産地としてくらいしか登場しないので、あまり気にしなくても構いません。
大きさの比率は目算で50(帝国):1(皇国):50(南冥民族国家軍):7(アスローン)と言ったところです。

文化

帝国本土はロシア、東方辺境領はドイツ的です。
皇国は日本と同じと思っていただいて結構ですね、武士道という言葉もありますし、義を重んじる精神も持っています。
ただし、歴史に関しては600年ないくらいで短いです。
明治時代の日本が、緩やかに西洋化したらこんな感じだったかも、みたいな雰囲気を漂わせているところが特徴的ですね。
この先皇国が存続し続けるとしたら、今の日本とはだいぶ違った感じになりそうです。
経済に関しては明言されていませんが、皇国もかなり帝国と接戦出来るくらいのようです、バブル期の日本とアメリカみたいな。

軍事力

帝国
総兵力:400万(予備役等の動員時:970万)
軍艦(ただし、東方辺境領のみ。):80隻(本土に20~30隻、徴用船舶200隻)

皇国
総兵力:20万(予備役の動員時:50万。ただし予算の都合上、総動員は行えていない。)
軍艦:40隻(徴用船舶:300隻)

皇国は総力戦ですね、と言っても国民皆兵を敷くほど切羽詰っているわけではありませんが。
帝国は経済の閉塞感を打開するために行なっている感じです。
両国共に志願制です。


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