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No.14803の一覧
[0] ある皇国の士官の話【皇国の守護者二次創作・オリ主・】  各種誤字修正[mk2](2010/06/12 21:06)
[1] 第二話[mk2](2010/06/19 17:45)
[2] 第三話[mk2](2010/06/19 17:45)
[3] 第四話[mk2](2010/06/19 17:46)
[4] 第五話[mk2](2010/06/19 17:46)
[5] 第六話[mk2](2010/06/19 17:46)
[6] 第七話[mk2](2010/06/19 17:46)
[7] 第八話[mk2](2010/06/19 17:50)
[8] 第九話[mk2](2010/06/19 17:47)
[9] 第十話[mk2](2010/06/19 17:48)
[10] 第十一話[mk2](2010/03/10 01:31)
[11] 第十二話[mk2](2010/03/26 05:57)
[12] 第十三話[mk2](2010/06/19 17:50)
[13] 第十四話[mk2](2010/06/19 17:50)
[14] 第十五話[mk2](2010/04/24 13:20)
[15] 第十六話[mk2](2010/05/12 21:52)
[16] 第十七話[mk2](2010/06/12 20:32)
[17] 設定(色々減らしたり、整理したり)[mk2](2010/06/12 01:32)
[18] アンケート結果です。[mk2](2010/01/25 22:55)
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[14803] 第九話
Name: mk2◆1475499c ID:2f98b6bf 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/06/19 17:47
その連絡を聞いたとき、思考が止まった。
今なんて言った?撤退の許可?この戦場から離脱してもいい?
嘘だろ、だってそれじゃあ。

「大隊長殿、嬉しいのはわかりますが、そこまで驚かれると兵が動揺します。」

近くにいた高橋曹長が小声で耳打ちをしてくる。

「……すまない。」

いつの間にか席から立ち上がっていたらしく、呆然とした思考をまとめながら席に着く。
おいおい、マジかよ。
撤退するとどうなるんだ?
新城がお姫様と合わなくなって、メレンティンとも会わないか?
バルクホルンやカミンスキィはいいとしといても、フラグが立たない?
OK落ち着け、KOOLになるんだ益満保馬。


例えば撤退したとして、どんな問題が起きる?
姫様、ユーリア・ド・なんとか・ロッシナとのフラグが立たないと、まず姫様が皇国に来なくなるだろ。
いや、ひょっとしてそれ以前に、六芒郭での戦いでなんか起きそう。
なんとか・ラスティニアンの暗殺が成功する?新城がユーリア殿下を殺す?
……案外問題がない?むしろ戦況的に有利?
といっても、9巻以降何が起きるかわからないよな。
もしも姫様が皇国勝利のための重要なファクターだったら?
例えば、皇国が勝利するために東方辺境伯領の裏切りが必要とか、新城の精神的支柱になって支え続けるとか。
やばいな、先が見えない。
北領の戦闘に参加しなけりゃいけなくなった時点で、可能な限り原作をなぞりたかったんだが。


じゃあ、撤退せずに降伏したとして、どんなデメリットがある?
一つ目は簡単だ、降伏が受け入れられずに、皆殺しにされる場合だ。
といっても、原作と違い有利に戦闘を進めている現状ならば、帝国も降伏を受け入れる可能性が高い。
二つ目は時間の浪費だな。
もしも、新城が撤退に成功していたら、2ヶ月以上の時間が手に入る事になる。
その場合、恐らく新城に与えられるだろう、近衛衆兵鉄虎501大隊のさらなる練度の強化が見込める。
もしも事を迅速に運ぶことができるなら、ひょっとしたら、ひょっとしたらだが、アレクサンドロス作戦を阻止できるかも知れない。
三つ目はこちらの事情だが、俺が生き残れたとして、今の階級からすると貰えるのは大隊か?
それの強化にかなりの時間を使うことができる。
……どっちが得だ。

「大隊長殿、守原英康閣下が、我々のためにこれほどの労力と熱意を割いてくださっているのです。これを無下にするという選択肢はありえません。」

松岡少尉が、戦争とは別のところに意志を置いた視線で語りかけてくる。
既に戦闘は始まっており、新城を含めた士官は戦線に出張っている。
ここにいるのは、負傷したせいで掩蔽の外に出られない俺と、予備隊の指揮官であるため戦線に出ていない松岡少尉だけだ。
原作と違い生き残っている、というかそもそも原作に登場していない唯一の士官だ。
はっきりいって、西田少尉以上にイレギュラーな存在だと言ってもいい。
まあ、イレギュラーなだけならまだいい、今の戦況で指揮を執れる人間は何よりも貴重だし(導術には劣るけどね。)、はっきり言って有能だ。
この大隊の士官の中では、20歳と、俺以上に若い士官で、偵察に関する任務では期待以上の働きをするというお墨付きを新城からももらっている。


だが問題はそこじゃない、数日前に判明したことだがこいつ守原に連なる将家の出らしい。
作戦会議中に、兵藤少尉がポロリと司令部の悪口をいったら、もうやばいくらい怒って乱闘寸前にまでなり、それ以降こいつの前で上層部の話は一切できなくなった。
で、ちょっと高橋曹長に聞込みをさせたら、そういうことが発覚したわけである。
実は守原英康の隠し子だったりしないよな、しないよな?

「我々の兵力が低下しているとは言え、600人以上兵はいます。それを撤退させるだけの船となると5隻以上は確実でしょう。用意するのは容易ではない数です。それほどまでに守原英康閣下は、大隊長殿を心配してくださっているのです。」

あーあー、うるさい、うるさい。
なんなんだアンタ、守原の回し者か?

「とりあえず、この件に関しては一旦会議を開いてから決める。参謀の意見も聞いておきたい。」

とりあえずこいつの口を黙らせるために、新城の名前を出す。
やっぱり育みだなんだと言われても、新城の地位は高い。
新城の名前=駒城がバックにいる、という方程式があるからだろう。
益満の名も、低いわけじゃないんだが、守原の名前を傘にこられると対抗するにはちょっと弱い。

「敵が渡河しました、数は300!陣地右翼正面です。」

導術が叫ぶように報告する。
気分を害されたのか、松岡少尉が導術兵をにらみつけるが、まだ新兵の彼はそれに気がつかない。
ただでさえ戦場にいるのに、後方からの連絡を受け取ったりなどで精神的に余裕が無いのだろう。

「松岡少尉、迎撃の準備だ。予備隊を率いて、敵の正面の壕に援軍に行け。」

原作では、新城がとある意図のもとに予備隊を使っていたが、今回の戦況はそれほど切羽詰まっていないため、普通の使い方をしている。
ようは、脆弱な地点の補強だ。
敵の弱点を突くという使い方も、現在の戦況ではありえないため、奇抜な戦術は行わない。
それに、ちょっと五月蝿いし。
何かを言いたそうにしながらも、逆らうわけにもいかず、後ろ髪を引かれるといった様子で掩蔽から出て行く。

「早朝から渡河が成功したのか、引きつけて殲滅すれば敵の消耗も増えるか?」

撤退するにせよしないにせよ、敵を叩いておいて損はしない。
弾薬は、派手に使ってもあと4日は戦えるから気にすることじゃないし、糧秣も十分にある。
どれくらいあるかと言うと、降伏するとしたら、帝国におすそ分けしてあげてもいいくらいある。
まあ、たかが1個大隊程度の糧秣なんて、軍規模になれば何の意味もないだろうし、撤退するとしたら燃やすんだけどね。
まさに外道、そんな言葉が頭に浮かぶ。

「敵壊乱、撤退して行きます。」

導術が10分もたたずに報告してくる。
順調だ、帝国の戦力が2個旅団からたいして変わっていないなら、この3日間で結構な被害を出したに違いない。
対するこちらの被害は軽微、剣牙虎にいたっては1頭も死んでいない。
原作と比べれば格段に違う戦況だな。
……うん、撤退しない方がいいかも知れない。
このまま普通に降伏したら、兵はほとんど死なない。
俺も、新城も、西田少尉も、漆原少尉も、兵藤少尉も、全員が生きて帰れるかも知れない。
まあ、それは撤退したとしても一緒か。
難しい、でも無難に行くならばやはり原作ルートが手堅いだろうか。




23日午後6刻、日が暮れ、帝国が撤収すると同時に俺は士官を大隊指揮所に集め、今後の方針について話し合っていた。
すなわち、撤退するか否かと言う件についてだ。

「撤退しましょう。」
「撤退ですね。」
「常識的に考えれば撤退しかないのでは」
「ですから守原英康大将閣下殿の(ry」
「おまえ、脊髄で考えんじゃねーよ、頭使え頭。」
「撤退するのが定石ではないでしょうか?」

誰が誰だかお分かりだろうか?
上から新城、西田少尉、漆原少尉、松岡少尉、兵藤少尉、中村少尉だ。
先の乱闘未遂事件で、乱闘にはならなかったものの、実は止める前に松岡少尉の右ストレートが兵藤少尉の顔面に炸裂しており、二人の仲は悪いとかいうレベルではない。
どれくらいやばいかと言うと、上官の目の前で言い争いが始まるくらいやばい。

「兵藤少尉、そういう発言は内地に帰ってからにしてもらえないか?数少ない士官を処罰するのは、誰にとっても幸せにならないはずだ。」

若さ故か、すぐにカッとなる松岡少尉が言い返す前に兵藤少尉を止める。
この二人、新城と合流してからというもの、顔を合わせる機会が増えたせいで頻繁にリアルファイト寸前まで行く。
平時なら両方を処罰して、最悪、後備役や後方任務にでも左遷すれば落ち着くのだが、戦地にいる以上そうもいかない。
新城でさえ露骨にため息をついているところを見ると、どうしようもないのだろう。

「各員の意見はわかった。で、兵藤少尉の意見は?」

「あー、自分はどっちでもいいっすよ。大隊長殿的に、生きて帰れる可能性が高い方を選んでください。」

……えっ、撤退しないとダメな雰囲気?
一応決定権はこっちにあるんだろうけど、ここで撤退しませんっていったらKYって言われそう。
皇国の猛獣使い、皇国の守護者、皇国の空気嫁、うん、嫌な響きだ。
まあ、冗談は置いといて

「新城大尉、理由を。」

「ここで撤退すれば兵がこれ以上死にません。それに、戦術的勝利を得ているにも関わらず、捕虜になると言うのも癪な話です。」

ああ、なるほど。
新城は兵が死なないことを最上に考える性格だったな。
その後の理由も新城らしい。

「漆原少尉。」

「新城大尉と同じです。撤退できる状況にも関わらず、撤退しないのは愚者に等しいでしょう。」

……さりげなく喧嘩売ってんのか?

「西田少尉。」

「愚者と言うのは言い過ぎでしょうが、撤退する方が降伏するよりはましな選択肢であるように感じます。」

「松岡少尉。」

「この状況で引くことができるのは大きいかと、もしも降伏が受け入れられない場合、我々は玉砕しなければならないかも知れません。その前に、撤退する方がより安全かと。」

いきなりまともな意見をいうなよ、驚くだろ。

「中村少尉。」

「捕虜になったり玉砕したり、そういったことは自分の好みではないので。」

中村少尉は、13日以降に笹島中佐から派遣されてきた、騎兵砲小隊の小隊長だ。
現在はこちらの騎兵砲を合わせた、1個騎兵砲中隊を指揮している。

「しかし諸君も知っての通り、我が軍は死者は少ないものの、非常に負傷者が多い状況になっている。彼らを輸送する手段があるとおもうか?」

「糧秣が十分にあったため、馬が9頭ほど生きています。それらで馬車を作ればよいかと。いざとなれば猫にひかせることもできます。」


……まあ、そりゃそうか、俺も一度考えて問題ないと言う結論にたどり着いたし。
撤退は嫌なんだけど、単純にどっちの作戦が兵の消耗が少ないかって聞かれたら、間違いなく撤退なんだよね。

「わかった、これより撤退の準備を始める。」

上官命令で無理やり従わせる手もないわけじゃないけど、正直そこまでしたくない。
それに、確固たる自信があるわけでもないのに、権力を振りかざすのはあまり好みではない。
どちらに行っても結局先が見えないならば、短期的にでも実利の見える撤退を選択するのが良策だろう。

「騎兵砲及び平射砲はこれらをすべて破棄、牽引に使われていた馬は、兵員や物資の輸送に使うように、中村少尉はこれを指揮しろ。」

一瞬反論が来るかな、と思ったが、中村少尉はなにも言わずに頷く。

「新城大尉は宿営地の撤退の指揮を、松岡少尉と漆原少尉はこれを手伝え。西田少尉は旗下の中隊を連れて警戒を。」

一番様々なものがあるのは後方の宿営地だ。
人数も必要だろう。

「兵藤少尉は俺と残って、陣地の方の後片付けだ。」

そして、一番物が少ないここ主力陣地の処理、特に重要書類もないし、燃やす物もない。
ただ、鹵獲されて帝国に使われるのも癪だな。

「とりあえず北美奈津浜まで行ければいい、余分なものは可能な限り処分していこう。」

全員の顔を見渡しながら言い含める。
それぞれが心の中で何を考えているかは知らないが、とりあえず異論はないらしい。

「撤退の準備に備品の処分、共に一切の火の使用を禁じる。申し訳ないが灯火管制だ。」

原作の虎城の戦いでは、新城が堂々と撤退していたが、そこまでリスキーなことはやりたくないし、状況も違う。

「それ以外の細かいところは諸君に任せる。新城大尉、糧秣と弾薬だけは多めに見積もって準備しておいてくれ。1刻後にはここを発つ。以上。」

その言葉を合図に、兵藤少尉を除く全員が席を立ち外へ出て行く。

「兵藤少尉、各掩蔽を回って、可能な限り必要ないものを処分しておいてくれ。書類の処分にのみ、帝国にバレない範囲で火も使っていい。」

さて、とりあえず指示は出し終えたか?
時間も1刻あれば十分だろうし、夜間のうちに距離を伸ばせば敵に追いつかれる心配もない。
できることも、もうこれ以上のことはないだろう。
もしも何か起きるとしても、その時に対処すればいい、難しいことではないのだから。


座っていた椅子の背もたれに大きく寄りかかる。
既に指示は出し終えたし、怪我をしているから仕事を手伝うこともできない、下手をすれば足手まといにさえなるかも知れないからだ。

「……大隊長殿。」

そんな俺に、高橋曹長が言いたくないけれども、言わなければならない、そういった相反する感情が入り混ざった妙な声で呼びかけてくる。

「なんだ?」

少し身構える。
こういった声を聴く時は、たいてい何か面倒なことが起きている時だ。

「一つ、大隊長殿がしなければいけない義務があります。」

教師が教え子を諭すような、親が子を見守るような、不幸を告げる親戚のような、そんな表情を浮かべて彼は続ける。

「義務?」

聞いたことはない。
指揮官の役目、原作に書かれていた新城の行動、そのどちらにも外れるような事はしていないはずだ。

「これだけは指揮官がやらなければ兵が納得しません。」

そう一拍おいたのは、躊躇いがあったからだろうか。

「……負傷者の介錯です。」

重々しく放たれたその言葉は、俺の耳に妙に生々しく届いた。



あとがき
元々は10話と9話は一つの話にまとめるつもりだったのですが、文体の落差が激く已むを得ず分けました、数日後には続きを投稿したいです。
ところで、文章を書けば書くほど、自分の文章力が落ちているように思えるのってなんででしょうね?他の作者さんも、よくそう言っているのを見かけますが。


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