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No.14064の一覧
[0] 完結 復活の時(鋼殻のレギオスif)[粒子案](2016/01/21 09:22)
[1] 第一話 一頁目[粒子案](2013/05/08 21:06)
[2] 第一話 二頁目[粒子案](2013/05/08 21:06)
[3] 第一話 三頁目[粒子案](2013/05/08 21:07)
[4] 第一話 四頁目[粒子案](2013/05/08 21:07)
[5] 第一話 五頁目[粒子案](2013/05/08 21:07)
[6] 第一話 六頁目[粒子案](2013/05/08 21:08)
[7] 第一話 七頁目[粒子案](2013/05/08 21:08)
[8] 第一話 八頁目[粒子案](2013/05/08 21:08)
[9] 第一話 九頁目[粒子案](2013/05/08 21:09)
[10] 第一話 十頁目[粒子案](2013/05/08 21:09)
[11] 第一話 十一頁目[粒子案](2013/05/08 21:10)
[12] 第一話 十二頁目[粒子案](2013/05/08 21:10)
[13] 閑話 一頁目[粒子案](2013/05/09 22:03)
[14] 閑話 二頁目[粒子案](2013/05/09 22:03)
[15] 閑話 三頁目[粒子案](2013/05/09 22:04)
[16] 閑話 四頁目[粒子案](2013/05/09 22:04)
[17] 第二話 一頁目[粒子案](2013/05/10 20:48)
[18] 第二話 二頁目[粒子案](2013/05/10 20:48)
[19] 第二話 三頁目[粒子案](2013/05/10 20:49)
[24] 第二話 四頁目[粒子案](2013/05/10 20:49)
[34] 第二話 五頁目[粒子案](2013/05/10 20:49)
[35] 第二話 六頁目[粒子案](2013/05/10 20:50)
[36] 第二話 七頁目[粒子案](2013/05/10 20:50)
[38] 第二話 八頁目[粒子案](2013/05/10 20:50)
[39] 第二話 九頁目[粒子案](2013/05/10 20:51)
[40] 第二話 十頁目[粒子案](2013/05/10 20:51)
[41] 第二話 十一頁目[粒子案](2013/05/10 20:51)
[42] 閑話 赤毛猫の一日[粒子案](2013/05/11 22:13)
[43] 第三話 一頁目[粒子案](2013/05/11 22:13)
[44] 第三話 二頁目[粒子案](2013/05/11 22:13)
[45] 第三話 三頁目[粒子案](2013/05/11 22:14)
[46] 第三話 四頁目[粒子案](2013/05/11 22:14)
[47] 第三話 五頁目[粒子案](2013/05/11 22:14)
[48] 第三話 六頁目[粒子案](2013/05/11 22:15)
[49] 第三話 七頁目[粒子案](2013/05/11 22:15)
[50] 第三話 八頁目[粒子案](2013/05/11 22:15)
[51] 第三話 九頁目[粒子案](2013/05/11 22:16)
[52] 第三話 十頁目[粒子案](2013/05/11 22:16)
[53] 第三話 十一頁目[粒子案](2013/05/11 22:16)
[54] 第三話 蛇足[粒子案](2013/05/11 22:17)
[55] 閑話 乙女と野獣[粒子案](2013/05/11 22:17)
[56] 第四話 一頁目[粒子案](2013/05/12 21:10)
[57] 第四話 二頁目[粒子案](2013/05/12 21:11)
[58] 第四話 三頁目[粒子案](2013/05/12 21:11)
[59] 第四話 四頁目[粒子案](2013/05/12 21:11)
[60] 第四話 五頁目[粒子案](2013/05/12 21:12)
[61] 第四話 六頁目[粒子案](2013/05/12 21:12)
[62] 第四話 七頁目[粒子案](2013/05/12 21:12)
[63] 第四話 八頁目[粒子案](2013/05/12 21:13)
[64] 第四話 九頁目[粒子案](2013/05/12 21:13)
[65] 第四話 十頁目[粒子案](2013/05/12 21:13)
[66] 第四話 十一頁目[粒子案](2013/05/12 21:14)
[67] 閑話 ツェルニに死す![粒子案](2013/05/13 20:47)
[68] 閑話 ニーナの勉強会その一[粒子案](2013/05/13 20:48)
[69] 閑話 ニーナの勉強会その二[粒子案](2013/05/13 20:48)
[70] 戦慄! 女子寮の朝[粒子案](2013/05/13 20:48)
[71] 第五話 一頁目[粒子案](2013/05/14 22:07)
[72] 第五話 二頁目[粒子案](2013/05/14 22:07)
[73] 第五話 三頁目[粒子案](2013/05/14 22:07)
[74] 第五話 四頁目[粒子案](2013/05/14 22:08)
[75] 第五話 五頁目[粒子案](2013/05/14 22:08)
[76] 第五話 六頁目[粒子案](2013/05/14 22:08)
[77] 第五話 七頁目[粒子案](2013/05/14 22:09)
[78] 第五話 八頁目[粒子案](2013/05/14 22:09)
[79] 第五話 九頁目[粒子案](2013/05/14 22:09)
[80] 閑話 第五話の後始末[粒子案](2013/05/14 22:10)
[81] 閑話 第一次食料大戦[粒子案](2013/05/15 22:17)
[82] 第六話 一頁目[粒子案](2013/05/15 22:18)
[83] 第六話 二頁目[粒子案](2013/05/15 22:18)
[84] 第六話 三頁目[粒子案](2013/05/15 22:19)
[85] 閑話 第二次食料大戦[粒子案](2013/05/15 22:19)
[86] 第六話 四頁目[粒子案](2013/05/15 22:19)
[87] 第六話 五頁目[粒子案](2013/05/15 22:20)
[88] 第六話 六頁目[粒子案](2013/05/15 22:20)
[89] 大惨事食べ物大戦[粒子案](2013/05/15 22:21)
[90] 閑話 サイハーデンの戦士達[粒子案](2013/05/16 20:13)
[91] 第七話 一頁目[粒子案](2013/05/16 20:14)
[92] 第七話 二頁目[粒子案](2013/05/16 20:14)
[93] 第七話 三頁目[粒子案](2013/05/16 20:14)
[94] 第七話 四頁目[粒子案](2013/05/16 20:15)
[95] 第七話 五頁目[粒子案](2013/05/16 20:15)
[96] 第八話 一頁目[粒子案](2013/05/17 22:06)
[97] 第八話 二頁目 [粒子案](2013/05/17 22:07)
[98] 第八話 三頁目[粒子案](2013/05/17 22:07)
[99] 第八話 四頁目[粒子案](2013/05/17 22:07)
[100] 第八話 五頁目[粒子案](2013/05/17 22:07)
[101] 第八話 六頁目[粒子案](2013/05/17 22:08)
[102] 第八話 七頁目[粒子案](2013/05/17 22:08)
[103] 第九話 一頁目[粒子案](2013/08/01 21:49)
[104] 第九話 二頁目[粒子案](2013/08/07 19:43)
[105] 第九話 三頁目[粒子案](2013/08/14 21:09)
[106] 第九話 四頁目[粒子案](2013/08/28 19:06)
[107] 第九話 五頁目[粒子案](2013/09/04 20:10)
[108] 第九話 六頁目[粒子案](2013/09/11 18:37)
[109] 第九話 七頁目[粒子案](2013/09/11 18:38)
[110] 閑話 槍衾がやってくる 前編[粒子案](2013/10/02 21:14)
[111] 閑話 槍衾がやってくる 後編[粒子案](2013/10/02 21:15)
[112] 閑話 ヴァーサス[粒子案](2014/02/05 16:12)
[113] 閑話 最悪の日[粒子案](2014/02/05 16:13)
[114] 第十話 一頁目[粒子案](2014/04/30 13:59)
[115] 第十話 二頁目[粒子案](2014/05/07 21:52)
[116] 第十話 三頁目[粒子案](2014/05/14 12:50)
[117] 閑話 ヴァーサスその2[粒子案](2014/05/28 22:30)
[118] 閑話 渚のエトセトラ[粒子案](2014/07/23 13:53)
[119] 第十話 四頁目[粒子案](2014/12/03 13:57)
[120] 第十話 五頁目[粒子案](2014/12/10 16:40)
[121] 第十話 六頁目[粒子案](2014/12/17 14:04)
[122] 第十話 七頁目[粒子案](2014/12/24 14:04)
[123] 第十話 八頁目[粒子案](2014/12/31 15:37)
[124] 第十話 九頁目[粒子案](2015/01/07 13:14)
[125] 第十話 十頁目[粒子案](2015/01/14 15:44)
[126] 第十話 十一頁目[粒子案](2015/01/21 18:13)
[127] 第十一話 一頁目[粒子案](2015/12/23 14:54)
[128] 第十一話 二頁目[粒子案](2015/12/23 14:54)
[129] 第十一話 三頁目[粒子案](2015/12/23 14:55)
[130] 第十一話 四頁目[粒子案](2015/12/23 14:55)
[131] 第十一話 五頁目[粒子案](2015/12/23 14:55)
[132] 第十一話 六頁目[粒子案](2015/12/23 14:56)
[133] エピローグなど[粒子案](2015/12/30 21:36)
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[14064] 第七話 五頁目
Name: 粒子案◆a2a463f2 ID:ec6509b1 前を表示する / 次を表示する
Date: 2013/05/16 20:15


 実戦は二度目だ。
 一度目は幼生体との戦いだった。
 都市外縁部で、記録映像でしか見た事のない、津波のように押し寄せる幼生体の群れを前に、ひたすら目の前の戦闘のみに集中した。
 だが、あの時でさえ、レイフォンが先に七割の幼生体を始末してくれていたからこそ、絶望的な戦力差を知ることなく地道に戦えたのだ。
 次の老性体との戦いは、予備戦力として現場にいただけで、充電作業と穴掘り以外に何かしたという認識はない。
 実際に敵を視認し、そして刀を振るうのは今回が二度目だ。
 別段、恐怖に身体がすくみ上がるなどと言うことはない。
 目の前にいる、大きいだけで鈍重な雄性一期と比べたら、日頃訓練してくれているイージェやレイフォンの方が、遙かに強力で恐ろしい。
 当然のこと、油断などしている暇はナルキにはない。
 薄皮一枚向こうは、命の存在を許さない地獄の世界だ。
 僅かな傷が即座に死につながる戦場で、油断などしている暇はない。

「ナルキ!!」
「おう!」

 それ以上に、一緒に戦っている傭兵団の人使いの荒さが、油断などと言う贅沢を許してくれないのではあるが。
 なぜか、傭兵団と完全に意気投合した、イージェの人使いの荒さは、もはや筆舌に尽くしがたい物になっているのは、非常な疑問を生む。
 とはいえ、指示されて余力がある以上はやらなければならない。
 イージェに指示された瞬間、全力の旋剄と共に汚染獣の横腹へと突撃する。
 幾つか習った、サイハーデンの技の仲で、唯一実戦で効果的だと認められた逆捻子を発動させる。
 叩きつけるのではなく、撃ち貫く。
 雄性体一期の外皮に向かって放つのではなく、その遙か向こう側、反対側にいる武芸者に向かって技を届かせる。
 そのイメージで放つことによって、ナルキの逆捻子は十分な威力を発揮することが出来る。
 斬撃系の技は、全て叩きつけるか殴りつけるかと言ったイメージが抜けきれないために、十分な威力を発揮することが出来ずにいるのだが、今は一つだけで十分だ。
 ナルキの攻撃が決定打となることはない。
 八人一組の中に混じり、牽制や嫌がらせのために、汚染獣の死角からこそこそと近付き、ネチネチと逆捻子を放っては逃げる。
 傭兵団の主力が到着するまでの間、ツェルニや他の戦場に目の前の雄性体を行かせないための攻撃だ。
 だからこそ、危なくなったら他の武芸者が気をそらしてくれるし、無理に危険を冒すことなく問答無用で逃げる事も出来る。
 戦闘開始から既に一時間近く。
 正確に確認している訳ではないが、レイフォンの方の割り当ては既に終わりかけているようだ。
 相変わらず人間離れしているというか、想像を絶する強さというか、非常識というか、もはや凄いとしか表現のしようがない。
 戦い始まるまで、そのレイフォンに敵意を燃やしていたハイアだが、当然の様に今は沈着冷静にこつこつと雄性体を確実に始末して回っている。
 流石にレイフォンほどの異常さを発揮している訳ではないが、それでもナルキなどと比べることに問題を覚えるほどには強い。
 そして遠くない未来において、ナルキが足止めしている奴も、その生命活動を停止するだろう。
 いや。おそらくハイアを待つまでもなく、他の汚染獣に回っている戦力がもう一組でも来れば、それでお終いになる。
 先制攻撃でその翔をもぎ取り、多くの脚を切り飛ばされた雄性体は、短時間で移動できる状況ではない。
 それでも、身をよじるようにしてツェルニへ向かう素振りを見せたり、あるいは邪魔な武芸者をはじき飛ばそうとしたりと、抵抗は未だに十分に危険なレベルだ。
 とは言え、弱ったところにナルキよりも熟練した武芸者が、散々に攻撃を撃ち込んでいるのだ。
 ナルキ自身の攻撃は決定打とはなっていないが、それでも汚染獣の体力を少しずつ削ぎ落とす役には立っているはずだ。
 そんな事を、激突までの一瞬に満たない時間で考えたナルキは、汚染獣の甲殻へと逆捻子を撃ち込む。
 外皮を貫通し、その内側にある肉へと切っ先が刺さる。
 刀身にまつわりつかせていた、方向の違う二つの衝剄を解きほぐし傷口を抉る。
 それと同時に甲殻を蹴りつけて距離を取りつつ、復元した鋼糸を更に傷口に浸透させる。
 外力衝剄の化錬変化 紫電。
 化錬剄で生み出した電撃で傷口を焦がす。
 汚染物質を吸収して再生する汚染獣とは言え、短い時間で完璧にと言う訳には行かない。
 ならば、ナルキが出来ることは時間を稼ぎつつ、打撃部隊が来るまでに少しでも弱らせておくこと。
 割り当て的には傭兵団の獲物だが、もしかしたらレイフォンが来るかも知れないし、他のツェルニ部隊が来るかも知れない。
 それは分からないが、ナルキのやることには何ら変わりがない。
 
 
 
 三体目の汚染獣を始末したハイアは、ほんの一瞬だけレイフォンの方に視線を向けてみた。
 五体目の始末が終わったところだった。

「天剣授受者ってのは、本当の化け物さ」

 いくつもの形態を切り替えられるという、使い勝手の悪い錬金鋼をそつなく使いこなし、その剄量に物を言わせて非常識な速度で汚染獣を討ち取って行くその姿は、認めることははばかられるが確実にハイアよりも強いだろうと判断できる。
 認めたくない事実だが、現実として目の前に存在している以上、渋々とではあったが認めない訳には行かないのだ。
 非常に不本意であるが。
 とは言え、ツェルニの学生達もそれなりに頑張っているし、のんびりと観戦している訳には行かない。
 レイフォンを見ていたのは、ほんの一瞬でしかないのだ。
 まかり間違っても、サリンバン教導傭兵団が汚染獣の殲滅で学生武芸者よりも遅くなってはいけないのだ。
 一対五の戦力差とは言え、それでも最後まで戦っている訳には行かない。
 危険を冒す訳には行かないが、傭兵団として戦ってきた戦歴にかけて、遅れを取る訳には行かないのだ。

『ハイアちゃん』
「・・・。団長と呼ぶさぁ」

 当然のことではあるのだが、支援攻撃をしていたミュンファの声に応えつつ、ハイアは目の前の戦場に意識を戻す。
 ここに安全地帯など存在しないのだ。

「それで、どんな用事さぁ?」
『は、はい団長。第三分隊のところがもうすぐ片付くそうです』
「さあ?」

 第三分隊と言われて、一瞬分からなかった。
 本来この分隊は陽動や足止めに特化した、機動力中心の部隊であって、打撃力はそれ程大きくないはずなのだ。
 確かに、時間をかければ雄性体の一期くらいは倒せる戦力はある。
 それは間違いないのだが、今回はその時間があまりにも短すぎる。
 ハイア達の主力部隊が五体倒している間に、一体倒せれば良くできたと言える程度の戦力のはずなのだが、今回はそのペースがかなり速い。
 そして思い出した。
 今回、ツェルニから借りてきた戦力がいると言うことを。
 もしかしたら、ルーキーに良いところを見せようと、何時も以上に張り切ったのかも知れないと、一瞬の半分ほどの時間考えたが、それはあり得ないと結論付けた。
 そんな莫迦なことをやっていたら、とうの昔に死んでいるから。
 ならば。

「もしかしたら、割と良い拾い物だったさ?」

 残ったのは、ナルキの攻撃力が予想よりも大きかったと言う事。
 活剄の切れと速さには、注目に値する物があったが、衝剄はそこそこで、化錬剄は自爆技に近かったはずだが、もしかしたらそれは思い違いだったのかも知れない。
 あるいは、前回戦った状況が悪すぎたのか。
 この思考も、一瞬の半分ほどの時間でやり遂げたハイアは、四体目の汚染獣へと襲いかかる。
 最終的にはナルキもツェルニ武芸者なのだ。
 傭兵団の沽券と、ハイアの意地にかけて負ける訳には行かない。
 とは言え、当然無理などをするつもりもないが。
 
 
 
 ツェルニ武芸長であるヴァンゼは、第一中隊を率いて汚染獣と戦っていた。
 いや。今も尚戦い続けているのだが、おおよそ決着は付いている。
 翔をもがれ、脚を切り飛ばされ、甲殻のあちこちから出血した雄性体は、もはや瀕死の状態でしかない。
 だが、当然油断などはしない。
 油断などしたら、とんでもない一撃がやってくる教官と、延々と訓練を続けてきたのだ。
 息の根が止まったことを確認出来るまで、一切気を緩めることなく指示を出し続ける。
 ヴァンゼ自身も武器を振るい、汚染獣へ打撃を撃ち込んできたが、中隊の指揮官としての、役割の方に重きを置いた戦い方をしてきた。
 指揮系統と士気の維持こそが、この先いつまで続くか分からない、ツェルニの暴走を生き抜く、唯一の方法だと信じているからだ。
 ならば、武勇を誇ることは他の武芸者に譲ってしまっても何ら問題はない。
 注意をそらすための攻撃を指示しつつ、第二中隊のゴルネオがどんな状況か、ほんの少しだけ気になった。
 もちろん、失敗したという報告は聞いていない以上、今も汚染獣と戦っていることは間違いないが、被害が出たかどうかが気になる。
 レイフォンが失敗するなどと言うことは、全くもって考えつかないが、ゴルネオやヴァンゼ自身は失敗をするかも知れないのだ。

「打撃部隊は準備をしろ! 左後ろから嫌がらせをして注意がそれたら、その時に攻撃しろ!」

 指示を出しつつ、戦場全体を見渡せる位置にこそ、指揮官は立つべきだと改めて思った。
 中隊規模の指揮運用ならば問題はないが、それ以上の規模の部隊となると、もう少し離れた場所から戦いをトータルで見る必要がある。
 被害を減らすために、見殺しにする指示を出すためにはこの位置が必要だが、もう少し多くの戦力を調達できたのならば、それを有効に使うために広い視野が必要なのだ。
 とは言え、それらは全てこの戦いを生き延びた後の話だ。
 生き延びるために、目の前の戦場に集中する。
 そして、一人でも多くをツェルニに連れて帰るために。
 仲間を見殺しにしろと言う命令を、今回は出さずに済みそうだと、そう考える自分を戒める。
 まだ、汚染獣の生命活動が停止したという報告はない。
 
 
 
 割り当ての五体を駆逐し終えたところで、レイフォンは一息ついていた。
 とは言え、ここは戦場であり、一息つくと言っても、それはまさに一呼吸分の時間でしかない。
 ツェルニに帰り着き、都市外戦装備を全て外して、そしてシャワーを浴びて、こっそりとメイシェンに預けてある命を返して貰うまで、気を抜くなどと言うことは考えられない。
 一息ついている瞬間でさえ、空気の流れや周りの音に注意を払いつつ、何時でも逃げ出せるように準備を終えているのだ。

「フェリ先輩?」
『何でしょうか?』

 巨大な刀の形状をした、正式仕様の複合錬金鋼を肩に担ぎつつ、フェリに声をかける。
 普段使っている刀よりも二回りほど大きく、確実に三割は重い上に、形状変化が出来るという使いやすいのか悪いのか分からない錬金鋼だが、それでも天剣がない今はこれに頼ることしかできない。
 などと小言を言いつつも、雄性体一期を五体屠ったはずだというのに、まだ十分に余裕のある新型錬金鋼は非常に有難い。
 キリクやハーレイに感謝の気持ちで一杯だが、それもツェルニに帰り着いてからの話だ。
 そう言えばと、ここで一瞬思い出す。
 三人で一つの研究室を使っているはずだというのに、二人しか未だに知らないと。

「他の戦線はどうなっていますか?」
『今のところ、軽傷者が十名ほど出ましたが、命に別状はないようです。応急処置は終了しています。残りの雄性体は四体です』

 思ったよりも被害が少ないことに、再び小さく溜息をつく。
 ツェルニの武芸者から死者が出ることは確実だと思っていただけに、この知らせに思わず力が抜けてしまったのだ。
 しかし、それもフェリが送ってくれた、簡素化した戦域図を見るまでの話だった。
 第一印象は、みんな良くやっているという物だった。
 攻撃と陽動、後方支援を巧みに入れ替え組み立て、ネチネチと嫌がらせのような攻撃を繰り返し、徐々に、しかし確実に汚染獣の抵抗力を削ぎ落としている。
 ツェルニ武芸者の分担、雄性体一期二体は、既に瀕死の状態であり、大した驚異ではないはずだというのに、それでも嫌がらせのような攻撃を続けているのだ。

「うん。卑劣で、卑怯で臆病な良い戦い方だ」

 正々堂々と戦うなどと言うことは、汚染獣との戦いではやってはならない。
 人間に比べて、遙かに凄まじい生命力を持ち、汚染物質を栄養源として再生できる汚染獣に、真っ正面から挑むなどと言うのは正気の沙汰ではない。
 そんな壊れた人間は、せいぜいが天剣授受者くらいな物だろうと確信する。
 そう。レイフォンを含めた天剣授受者以外は、汚染獣とは正面から戦ってはいけないのだ。

『それは褒め言葉なのですか?』
「もちろんですよ」

 だが、良くも悪くもレイフォンのサポートをしてくれているフェリにとっては、正面から戦って勝つことの方が普通になってしまっているのかも知れない。
 天剣授受者などと言う、人外の物騒な生き物と、普通の武芸者を一緒にしてはいけないのだ。
 そして、レイフォンでさえ、支援攻撃があった方が楽に戦えると言う事を、再認識しつつある今日この頃なのだ。
 そう。卑劣で、卑怯で臆病な戦い方の方が遙かに楽だというのは、戦場に出たばかりの頃にはきちんと知っていたはずなのだ。
 天剣授受者なんて物になってしまったために、楽に戦うという現実を見失っていたのだと、ツェルニに来てから思い知った。
 思い返せば、リチャードに相談するという発想を無くしたのも、天剣授受者となった頃からだった。
 改めて、レイフォンは自分が間違った方向へと進んだのだと言う事を認識した。
 だが、この続きを考えるのはツェルニに帰り着いてからでもかまわない。

「ナルキの方は無事ですか?」
『無事です。それどころか、もうすぐケリが付くようです』
「へえ」

 傭兵団へと貸し出されたナルキが、重傷を負うなどと言う事は考えていなかったが、戦果が予想よりも大きいことに少しだけ驚いた。
 一年以上にわたって訓練してきた以上、弱いなどと言うことはないのだが、もしかしたらレイフォンが知らない間に強くなっていたのかも知れないと、少しだけ嬉しくなった。
 だが、それもフェリからの詳しい情報を貰うまでのことだった。

「逆捻子じゃないよナルキ」

 ナルキらしい都市外戦装備を身につけた武芸者の、その技を見てそう呟く。
 拡大された映像で見る限りにおいて、ナルキは殆ど突き以外の技を使っていないようだ。
 鋼糸が伸ばされているし、化錬剄も使っているようには見えるのだが、それはあくまでもついでの攻撃にしかなっていない。
 ナルキ周辺の戦域図を見ると分かるのだが、傭兵団は明らかに陽動や嫌がらせに終始している。
 攻撃の主力を担っているのは、驚くことにナルキなのだ。

『何処が違うのでしょうか?』

 念のためと、ナルキの戦っている戦場へと向かっていると、フェリから疑問の声が聞こえてきた。
 他のツェルニ武芸者の方に不安がないかと問われたのならば、殆ど無いと答えることが出来る現状が、レイフォンにこの行動を取らせた。
 そう。ナルキが攻撃の主力を担っているという事実を、ナルキ自身があまり認識していないようなのだ。
 これはかなり深刻な事態を引き起こしかねないと、それ程強くない危惧を抱いたのだ。
 深刻な事態を引き起こすかも知れないと言う、強くない危惧などと言う物がこの世に存在していることを始めて知ったが、別段嬉しくも何ともない。

「逆捻子というのはですね。刀を突き刺して、その周りを破壊するための技なんですよ」

 甲殻を打ち破り、刺さった刀の周りに纏わり付かせた衝剄を解きほぐす時、当然傷口は見た目よりも遙かに大きくなる。
 これこそが逆捻子の本来の姿なのだが、ナルキのは明らかに違う。
 いや。逆捻子の応用版と呼べる技を、それと知らずに使っているというのが正解だろうか。

「貫き通すことに注意が行きすぎて、纏わり付かせた衝剄が直進しすぎてます」

 刀身の周りに纏わり付かせた衝剄は、そのままの形を維持しつつ直進している。
 甲殻の中での打撃技であるはずなのに、その到達深度は刀の全長の数倍に達しているだろう。
 もはや逆捻子とは呼べないほどに、技が変化してしまっている。
 そう。汚染獣の筋肉を貫通し、内蔵に被害を与えているほどに深く突き進んでしまっているのだ。
 だからこそ、予想以上に汚染獣の負傷が大きくなり、傭兵団はそれを分かったからこそナルキを主攻にした戦術に切り替えているのだ。
 もちろんフォローもきちんとやっているのだが、ナルキ自身に主役をやらせているという事実を伝えている様子はない。
 危険だとは思っていないが、少しだけ嫌な予感はしている。
 幼生体戦では、ペース配分を間違えて、最後の最後でガス欠を起こしてしまったことだし、念のために移動しているのだ。
 同じ失敗を二度もするとは思えないが、それでも始めてもった弟子と呼べるナルキのことが、少しだけ心配になっているのだ。
 いや。ハイアの時にもガス欠を起こしているから、今度やったら三度目になる。
 そうならないように、本人も注意しているだろうが、念のためにレイフォンも移動するのだ。
 もしかしたら、過保護かも知れないと思わなくもないのだが、それでも行動は止めなかった。
 
 
 
 散々に雄性体に攻撃を撃ち込んできたナルキだが、ただ今現在は途方に暮れてしまっていた。
 そう。撃ち込みやすい場所は全て逆捻子の傷跡で埋まってしまっているという現実に、かなりの勢いで途方に暮れてしまっているのだ。
 いや。ここまで攻撃をしてもまだ生命活動を止める様子のない汚染獣に対して、途方に暮れてしまっていると言った方が的確かも知れない。
 それは分かっていたはずなのだが、それでも、ここまで攻撃してまだ生きているという事実に、かなりの衝撃を受けてしまっているのだ。

「どうしたら良いと思う?」
『ええっと』

 近くにいるイージェに問いかけてみたが、答えは返ってこなかった。
 それは当然なのかも知れない。
 ナルキが放り込まれた集団は、基本的に陽動や足止めを専門とした部隊であり、決定的打撃力という物を持っていないのだ。
 戦いが長引くことは基本なのだろうが、それでもここまで長引いたことはなかったのかも知れないし、もしかしたら、気が付かないうちにナルキが足を引っ張ってしまったのかも知れない。

『取り敢えず、少し休憩するか?』
「それは、拙いんじゃないでしょうか?」

 流石に休憩するというのは拙いだろうと言う事は分かる。
 もうすぐハイア達が来ることは確実だが、もう少し他に出来ることがあるはずだと思うのだ。
 思うのだが、何か良い手が思いつくという訳でもない。

「取り敢えず、どっかに逆捻子を撃ち込める場所を探さないと」

 汚染獣は巨大だ。
 ナルキが受け持っている範囲内では、あらかた穴を開けてしまったが、少し移動すればまだ撃ち込める場所があるはずだと視線を彷徨わせる。
 と同時に、部隊長に指示を仰ぐことも忘れない。
 勝手な行動をして良いのは、自分が危険になった時だけなのだ。
 そう考えている間も、汚染獣から目を離しているつもりはなかった。

「っく!」

 だが、それでも僅かに集中力が落ちてしまっていたようだ。
 油断したことに歯がみしつつ、旋剄を使って汚染獣から遠ざかる。
 右脇腹から、左鎖骨にかけて焼ける感覚が若干の時差をおいて状況を教えてくれた。
 当然、断末魔の状態とは言え、汚染獣はかなり激しく動き回っている。
 いや。断末魔だからこそ激しく動き回り、色々な物をはね飛ばす。
 その中には、誰かの攻撃で飛び散った汚染獣の甲殻、その破片も含まれている。
 そして、運悪く、その甲殻の破片がかなりの速度でナルキに命中してしまった。
 大きな破片という訳ではないが、距離が近かったためにかなりの速度が残っていた上に、非常に鋭利だった。
 そう。ナルキ自身の傷は笑って済ませることが出来る程度であったが、都市外戦装備はとても冗談では済まない損傷を負ってしまっていた。
 そもそもが、微かな傷でさえ致命的な欠陥となる装備なので、傷がある状態というのは全て洒落にも冗談にもならないが、それでもかなりの切り口をさらしてしまっている。
 出撃の前日に受けた訓練がなければ、取り乱してしまったかも知れないほど、皮膚を焼かれる感覚は苦痛を伴った。
 更に悪いことに、裂け目が大きすぎて、手持ちの応急装備では対応できない。
 だが、呼吸関連の場所をやられなかっただけ、ほんの僅かな余裕が有るはずだ。
 汚染物質を吸い込んで死亡する場合、それはおおよそ肺の機能が停止した事による窒息死だと言われている。
 ならば、ナルキはまだ幸運だと言う事になる。

「申し訳ありません、戦線を離脱します」
『ご苦労だった。戦いはおおむね終わっているから、ゆっくり休んで良いぞ』
「了解しました」

 分隊長へと報告しつつ、更に汚染獣から距離を取る。
 ナルキが抜けた事で開いた穴は、イージェがせっせと何かの技で塞いでくれているから、少しだけ安心できる。
 応急処置用のスプレーを使っても、あまり危険でないところまで下がれたと確信して、やっと止まる。
 かなり遠くまで下がってしまったが、臆病なくらいで丁度良いとレイフォンも言っていたことだし、これくらいで丁度良いのだと自分を納得させ、応急処置を始めた。
 作業指揮車まで戻れば、替えのスーツが置いてあるはずだし、そこまでは旋剄を使えば、五分で届くはずだ。
 そう計算したナルキは、ふと視線を横へとずらせた。
 汚染物質によって、じりじりと灼かれる痛みは感じるが、応急処置が功を奏したのかだいぶ鈍くなっている。
 だから見えてしまったのだと思う。

「ああ。レイフォン」

 愛称ではなく本名を呼ぶ。
 ナルキ達が散々手こずった汚染獣を、殆ど一撃で始末してしまった中肉中背の武芸者を視界に納めてしまったから。
 ナルキにあれだけの力があれば、もっと速く始末することが出来たはずだし、何よりも怪我をすることもなかった。
 そして、きっとメイシェンやミィフィを心配させることもないはずだ。
 いや。戦いに出ること自体を心配しているのだから、どれほど強かろうとあまり変わらないのだろうとは思うが、それでももっと力が欲しいと、そう思ってしまった。

「ツェルニを守れるくらいの力が欲しい」

 都市か人か、どちらをより助けたいかと問われたのならば、ナルキは人と答える。
 だが、ツェルニが暴走している現状で人だけを助けることは、おそらく不可能。
 ならば、人を助けるためにはツェルニを守らなければならない。
 だからこそ、ナルキはツェルニを守れるだけの力が欲しいと、そう思ってしまったのだ。
 そしてその瞬間、胸に空いた空虚な器が、何か暖かな物に満たされるような、そんな不思議な感覚を覚えた。

「レイフォン?」

 雄性体を瞬殺したレイフォンが、何か慌ててナルキの方へと走ってきている光景が視界に飛び込んできた。
 それはもはや、疾走でさえないほどに凄まじい速度だった。
 ナルキが苦労して後退した距離を、ほぼ一秒で走破して、そして足を掴もうとするかのように、跳躍して手を伸ばしてくる。

「あれ?」

 そう。足を掴もうとするかのように跳躍して、手を伸ばしてきているというのに、ナルキはどんどんレイフォンから遠ざかって行く。
 この時ナルキは、自分が空中に浮いているらしいと言う事を認識した。
 そして、その瞬間、全てが白く塗りつぶされた。
 
 
 
  逆捻子について。
 ここではさも異例と言った書き方をしている、ナルキの逆捻子ですが、おそらくこれは違うと俺は思っています。
 通常の逆捻子は、ドリルで穴を開けた場所に、ダイナマイトを差し込んで起爆するというのに対して、こちらはドリルで穴を開けたところに、パイルバンカーで杭を打ち込むと言った違いはありますが、やる事に大きな違いはありません。
 逆捻子という技は一つでも、目的とする効果が違えば、色々なバージョンが出てくるのは必然です。
 と言う事で、深く貫く逆捻子もサイハーデンにはあると予測する次第です。
 成り行き上、少々大げさに書いているだけですのであしからず。
 
 と書いたのは、六月中頃の事でした。二十一巻で実際に似たような技が出てきて、少々驚いています。
 人間の想像力って、思ったほどの違いはないのかも知れませんね。
 とりあえず、執筆時点のまま投稿させて頂きました。
 
 
 
  後書きに代えて。
 ここまでおつきあいくださいまして、ありがとう御座いました。
 と言う事で、メルルンに蹂躙されたのはナルキとなりました。
 正直に言って、これで良いのかかなり疑問ではありますが、ニーナの場合、電子精霊との親和性だけで選ばれていますから、こういう展開もありかと思いました。
 と言うか、ナルキにメルルンを取り憑かせるために、色々と小細工を労してきたと言っても過言ではありません。レイフォンに弟子入りさせたり、老性体戦に参加させたり、色々と。
 まあ、何はともあれ、原作五巻まで終了となりました。
 お気づきの方もいると思いますが、ここまでが第六話に入るはずでした。執筆速度が異常に遅くなったために、第七話となっているだけで、六話目から通すと十一頁で片が付いていますし。
 そうそう。第八話は今年中の公開を目指していますが、俺が非常に苦手としているシーンがてんこ盛りなために、予定が達成されるかどうか、非常に疑問な展開となっています。
 とはいえ、どんなに遅くとも、来年の春までには何とか書き上げたいと思いますので、しばらくお待ちください。
 ショートオブや短編はこの限りではありませんので、そちらはお楽しみに。
 


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