前回の老性体戦で、色々大変な目に合ったリチャードだが、何とかサヴァリスに殺されずに済んでいた。
だが、それもいつまで続くか甚だ疑問である。
ここは、サヴァリスを押さえられる人と仲良くするしかない。
仲良くなってしまえば、何とかあの戦闘愛好家とも付き合えるかも知れないのだ。
だが、問題はサヴァリスを押さえられる人が、このグレンダンにいるのかどうかと言う事で。
「でだがシノーラさんよ」
「・・・・・。いつから気が付いていたの?」
グレンダンの昼下がり、日が燦々と降り注ぎ蒸し暑さを感じるさなかに、リチャードは誰もいないはずの場所へ向かって話しかけて、そして若干の時差を置いて返事が返ってきた。
そして、視線の先にいるのは何時ぞや襲撃された超絶的な変人であるシノーラだ。
「少し前に俺と目が合ったはずなんだが」
「・・・・・・・・・・・・。二百メルトルも先から気が付いていたのね」
シノーラが近付いてきたらしいことが分かったので、感覚を頼りにそちらへと視線を向けたのだ。
そして、その感覚は見事に的中して、周りに気が付かれていないらしいシノーラを発見することが出来た。
ちなみに言えば、過去最長距離での発見と補足だった。
だが、実はそれは事実の半分でしかないのだ。
「それと」
「うん?」
「シノーラさんそっくりな人が少し後ろにいるのも、きちんと分かっているから」
「!!」
発見されていたことに驚いて、近くにあった枝を揺らしてしまうそっくりさん。
相当意外だったようだ。
まあ、殺剄をしているらしいので当然と言えば当然である。
そして、恐る恐るとこちらにやってくるその人物は、何処からどう見てもシノーラそっくりだった。
一部を除いて。
「と言う事で、揚げパンに砂糖をまぶした奴を、大量に買ってくること」
「・・・・。はい」
何故か肩を落として歩み去るそっくりさん。
気の毒なことをしたような気がするのは、何故だろうかと、そんな事を一瞬考えてしまった。
「それでなんだが」
「うんうん? リーちゃんから手紙が来ているとか?」
「いや。続きは来てねえし、シノーラさん所にも書くようにとは伝えたんだがな」
「うんうん。良い子ねぇ。ご褒美に揚げパン少し上げる」
「悪いね」
用件に入れないが、揚げパンは嫌いではないので、有難く貰っておくこととする。
と、話が横にそれてしまっていることは間違いないので、強引に修正する。
「でだが」
「うんうん?」
「クォルラフィン卿のことなんだが」
「・・・・。なんで天剣授受者のことなんか、話題に出るのかな?」
惚けるつもりのようだ。
予めそうなるだろうとは思っていたのだが、やはりそうなってしまったので、追い詰めることとする。
「俺が武芸者を発見できる距離ってのは、おおよそ剄脈の大きさに比例するんだ」
「つまり、剄量が多いと遠くから発見できるって事ね?」
「そうなるな」
これには一つ例外事項がある。
それは剄脈の特色を十分に知ることだ。
簡単に言えば、良く知っている武芸者ならば、相当遠くからでも十分に発見できる。
例えばレイフォンの接近ならば、シノーラよりも遠くから察知できるし、ガハルド事件の時サヴァリスとリンテンスの存在を遠くからでも認識できたのもそうだ。
正確を期すならば、リンテンスはサヴァリスのおまけのような感じで認識できたのだが。
つまり。
「あんたはまだ二回しか会ってねえのに、二百メルトルも離れたところから発見できた」
「ふむふむ」
「サヴァリスとかなら百メルトル以内に近付かないと、分からなかったのにだぞ?」
既に正体がばれていることを知っていて尚、惚けようとしているシノーラ。
いや。これは完璧に遊んでいるとしか思えない。
「つまりだ」
「はいはいはいはい!! その通り!! 私こそがグレンダン女王アルシェイラでぇぇす!!」
結論を言わせてくれなかった。
まあ、こんな展開になるとは思っていたので驚くことはないが。
驚かないが、少々溜息が出てしまう。
溜息のついでに、一つ確認する。
「あそこで揚げパン買っているのも、天剣授受者だろ?」
「影武者のカナリスちゃんね」
よりにもよって、アルシェイラの影武者などさせられているかと思うと、一瞬にして同情の念でリチャードの胸は一杯になった。
暖かい揚げパンの入った、巨大な袋を抱えたカナリスが近くまで来たので、ついでにその肩を叩いてその労を労ってしまったほどだ。
「あ、あう。分かって頂けるのですね」
「貴女の苦労は、何時かきっと報われるはずです。どうか負けないで下さい」
サヴァリスに付きまとわれているリチャードだからこそ、カナリスの苦労は痛いほど分かってしまうのだ。
もしかしたら、苦労の方向や種類が違うかも知れないが、それでもその痛みは十分に共感できてしまう。
と言う事で、女王よりもカナリスの方への態度が丁寧となったわけで。
「ねえねえ。私に対する敬意とか敬いの心は?」
「なんだそれ? もしかしてサヴァリスよりも怖い生き物か?」
当然アルシェイラはややご機嫌斜めになったわけである。
とは言え、このままだと本題が非常に怖いことになりそうなので、少しだけ譲歩してみることとした。
「敬語使って話されたいんだったら、そうするけれど、どうする?」
「・・・・・・・・・・・・・。ぬわぁぁぁぁぁ!!」
どうやらアルシェイラの中で、非常に色々な葛藤が起こっているようだ。
頭を抱えて泣き叫びつつ、カナリスから揚げパンの袋を強奪して、猛烈な勢いで食べ始める。
当然では有るのだが、周りからなにやら冷たい視線が注がれているのだが、女王陛下は全く気にしていらっしゃらないようだ。
カナリスとリチャードにとっては、針のむしろと言ったところだが。
「むぅぅぅ。外に出てまで敬語と付き合いたくないわね。良いわ。特別にタメ口を許してあげる。感謝するように」
「へいへい。感謝の印として、兄貴の現地妻の写真をご覧頂きましょう」
そう言いつつ、暫く前の手紙に同封されていた、黒髪で大人しそうな少女の写真をアルシェイラに渡す。
どうでも良い事だとは思うのだが、恋愛という物が現実世界に存在している事を知らないらしいレイフォンが、よくもまあ、女の子などとつきあう事が出来た物だと感心してしまう。
これももしかしたら、ヨルテムに移住したからこそなのかもしれない。
ならば、レイフォン個人にとって追放処分を食らった事は、幸運、あるいは好都合だったのかも知れないと考えられる。
あくまでもレイフォン個人にとって、結果的にでは有るが。
リチャードがそんな思考で遊んでいる間に、変化は一瞬にして起こった。
「・・・・・・・・・・・・・・・・。リーちゃんの胸ももめないヘタレのくせに、こんな可愛い子を落としているとは。レイフォン。侮れないわね」
台詞だけを聞いていると物騒なのだが、その表情はとても楽しそうである。
そして、アルシェイラの視線が、写真のメイシェンの胸付近に注がれていることにも気が付いた。
万が一にでも、アルシェイラがメイシェンと会ったならば、速攻で揉むこと請け合いな野獣の視線でだ。
思わずレイフォンの現地妻の冥福を祈ってしまったほどには、危険極まりない視線だった。
まあ、グレンダンがツェルニと接触することなど無いから、それ程恐れる必要はないのだろうと思うのだが。
と、本題から著しくずれてしまった。
「本題なんだが」
「? この子を私に紹介するのが本題じゃないの?」
「それはタメ口叩いて良いお礼の品」
前回もそうだったが、アルシェイラと話すとなかなか話が進まない。
もしかしたら、これこそが女王の実力なのかも知れないと、少々絶望的な気分になったが、それを殴り倒して最も危険な人物について相談する。
そう。サヴァリスの危険度が最近凄まじいことになっているのだ。
「寄生型の老性体が現れたら、俺に取り憑かせて殺し合おうとか」
「あんなのはそうそう来ないと思うけれど」
「来られたら即座に命の危険だ」
相手は天剣授受者だ。
彼らの頼みを断ることが出来る人間は、このグレンダンでは極々少数である。
目の前で揚げパンを頬張っている、人外魔境はその例外中の例外だ。
「剄脈の移植技術を開発して、俺に移植して殺し合おうとか」
「そんな物は当分無理よね。・・・・・・・・・・」
なぜか、とても怖い表情でリチャードを見るアルシェイラ。
それはもう、生け贄の仔羊を見るような視線であり、もしかしたら、人体実験に提供される犠牲者を見送るようでもあった。
剄脈の移植技術などと言うのは、今まで研究されてこなかったはずだから、そう簡単にできるはずはないのだが、アルシェイラは何かそれに代わる技術を知っているのかも知れない。
そんな恐るべき視線だった。
だが、詮索するのは怖いので強引に目をそらして話を進める。
「で、でだが」
「うんうん?」
「サヴァリスを何とか止められないか?」
「うぅぅぅぅぅぅぅぅぅん? 私って基本的に放任主義だしぃぃ」
「語尾を伸ばすな!」
何故か、可愛らしく恥じらうアルシェイラに殺意が湧いてくる。
かなり切羽詰まっているのだ。
そう。女王であるアルシェイラに頼もうと決断するくらいには。
「天剣授受者を外に出すなんて事は、殆ど不可能だし、相手がサヴァリスじゃ私が言ったくらいで止まるわけ無いしぃぃ」
「・・・・・・・・・・・。やっぱり止まらないのか」
「なにしろ、授与式で私に襲いかかってきたし、他の天剣とグルになって戦いを挑んできたりしたしぃぃ」
何でサヴァリスが天剣授受者でいられるのか、非常に疑問になってきた。
と言うか、レイフォンが天剣授受者であったことが非常に疑問になってきた。
やはり天剣授受者とは、武芸者として超絶の存在であると同時に、人格が破綻していなければならないのだと、そう思えるからだ。
そしてふと、カナリスのことが気になった。
「いいんだいいんだ。私なんかどうせ陛下の影武者で、面倒な書類仕事ばっかり押しつけられて、ないがしろにされてばっかりいるんだ」
何時の間にか、揚げパンの入っていた空袋を屑籠に放り込みつつ、すねている女性を発見しただけだった。
やはり天剣授受者とは人格破綻者でないと勤まらないらしい。
いや。すねていると言う事はカナリスはまだ本来の天剣授受者ではないと言う事で。
「止めた」
これ以上問題が増えるのはごめんなのだ。
取り敢えず、サヴァリスの仕事を増やすことでリチャードの安全を少しだけ図ってくれることとなり、かなり疲れる面談は終了した。
天剣授受者に、戦う以外に仕事が出来るかどうかと言う、かなり深刻な疑問は残ってしまったが。
突然王宮に呼び出されたサヴァリスは、著しい困惑の中に放り込まれてしまっていた。
目の前には、珍しいことにアルシェイラ本人がいるが、その内容からすれば当然の事柄である。
天剣授受者への命令であるのならば、影武者のカナリスでは無理がありすぎる。
だが。
「もう一度お願いできるでしょうか?」
「なんだ? 貴様とうとう脳まで剄脈に犯されたのか? まあ良いだろう。耳の穴かっぽじってよっく聞け」
かっぽじって聞けと言った時だけ、アルシェイラの本性が見えた気がしたが、それは別段珍しいことではないので気にしてはいけない。
気にしなければならないのは、むしろその先の用件の方だ。
「放浪バス停留所の警戒任務を命じる。技量が落ちない程度の、鍛錬の時間は認めるが、それ以外は徹底的に停留所の安全を確保しろ」
やる気なさげにそう言うアルシェイラの視線が、サヴァリスを睨み付ける。
面倒ごとを押しつけられて怒っているように見えるが、サヴァリスにそんな記憶は全く無い。
「御意ですが、何故突然そんな事になりましたか?」
「ああ? 心当たりがありすぎて思いつけないのか?」
「いえいえ。全くもって心当たりがない物ですから」
なんだか心外なことを言われたので、必死で否定する。
こう見えてもサヴァリスは、汚染獣と戦うこと以外は殆ど何も考えていないし、鍛錬で誰かを殺したなんて事も滅多にないのだ。
いやいや。鍛錬で誰かを殺したことなど、多分無かったはずだ。
通常は誰かを相手にする事自体が気まぐれで、半殺しにするくらいで止めているし。
だと言うのに、アルシェイラはサヴァリスに全ての原因があると言っているのだ。
「リチャードに」
「はい?」
突然、愛しのリチャードの名前が出てきたので、少々驚いてしまった。
もしかしたら、アルシェイラもリチャードを殺したくなったのかと、勘ぐってしまった。
何しろ、知れば知るほど面白いのだ、リチャードは。
そして、猛烈に強力なライバルの出現を確信したが、その確信は幸運な事に、今回見事に外れる事となった。
「老性体取り憑かせて、殺し合おうとか言っているそうだな」
「それが何か?」
取り憑かせることに成功したら、もちろん誠心誠意全力で殺して差し上げるのだが、生憎と寄生型の老性体なんて物は、そうそう出てこないのだ。
前回のが特殊すぎたと言えるだろう。
そして、その絶好の機会をサヴァリスは逃してしまったのだ。
悔やんでも悔やみきれないが、後悔という言葉はサヴァリスの辞書には存在していない。
と言う事で、現在剄脈の移植技術がないかと、あちこちの医師や学者に問い合わせているだけである。
「そう言うことをやっている時点で、お前が社会不適合者だと気が付くべきだと思うのだがな」
「? 僕達は戦うことだけ考えていれば良いのではありませんか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・。良く分かった」
何故か疲れたようなアルシェイラに、少々驚きを覚えた。
天剣授受者三人がかりで全く歯が立たなかったというのに、今はサヴァリス一人で疲労困憊させているのだ。
世の中ままならないと、最近よく思うが、もしかしたら普通の人間は常にそんな事を考えているのかも知れない。
これは、もしかしたら大発見かもしれないとは思ったが、たいして気にとめることなく記憶の奥底へとたたき込んで、深く考える事はやめてしまった。
その理由は簡単だ。
戦う事だけ考えている方が、楽しいからに他ならない。
「取り敢えず、貴様は停留所の警護をやっていろ。呼ばれもせんのに勝手に出歩いたらぶち殺すからな」
「御意ですが。リチャードを連れて行っては?」
「当然駄目だ」
どうやら、リチャードがアルシェイラに何かお願いしたようだという事は分かった。
そうでなければ、こうも極端な処置が降りることはないはずだ。
天剣授受者とは、生まれた時にそうなると決められた存在であり、何時何処で生まれようとそんな物は関係ない。
問われるのはその強さのみ。
だと言うのに、今回は非常に特殊な状況だと言える。
だが、ここで考え方を少し変えてみる。
「ふむ。外からの武芸者と遊べるかも知れませんね。それはそれで楽しそうだ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「リンテンスさんの例もあるし、もしかしたら強い奴と戦えるかも知れませんね」
物事は前向きに考えた方が、何かと楽しい。
サヴァリスの場合は、戦うこと以外に何もない以上、どうやってそれを楽しむかを何よりも先に考えるのだ。
アルシェイラが呆れたような視線で見詰めてきているが、そんな物はもうどうでも良い。
一刻も早く、外から強い武芸者がやってきて、犯罪を起こさないかと、それだけが楽しみである。
サヴァリス絡みの問題が、大方片付いたと思っていたリチャードは、目の前の現実を認識して、深い深い溜息をついてしまった。
同じテーブルを囲んでいる父はと見れば、シチューを掬うためにもったスプーンをそのままに、完璧に凍り付いてしまっている。
それも無理はない。
「あのよう、アルシェイラさんよ」
「いやん。シノーラって呼んで」
そう。グレンダンが誇る天剣授受者を、実力で統べるべき存在が、同じテーブルを囲んでいるからに他ならない。
リチャードの能力を持ってすれば、二百メルトル離れた場所からでも、その存在を確認することが出来るのは間違いない。
だが、それはたかだか二百メルトルでしかないのだ。
レイフォンの場合、五百メルトル以上の距離からでも、その存在を認識することが出来ていた。
だが、その長距離をもってしても、僅か数秒とかからずにリチャードの目の前に現れることが出来た。
更に驚くべきかあきれるべきか悩むところだが、周りの被害を考慮して慎重に加速しての結果だった。
ならば、レイフォンを凌駕する武芸者であった場合どうなるだろうか?
しかも、距離的には半分以下である。
その結果が目の前にいる。
「急にサヴァリスが来なくなったらぁぁ、お夕飯を作り過ぎちゃうだろうと思ってさぁぁ。折角作ったんだからぁぁ、私が食べてあげないといけないと思ったわけよぉぉ」
語尾を伸ばす喋り方が、なにやらいたくお気に召したらしい。
それは本題ではないので、取り敢えずスルーすることとする。
問題は、いきなり女王などと言う怪生物が食卓に現れたために、未だに固まり続けているデルクの方だ。
心臓発作を起こしていても何ら不思議ではない。
目の前で手を振ってみて、意識があるかどうかを確認する。
「・・・・・・・・」
返事がない。
只の屍のようだ。
「いやいや。生きてるから」
取り敢えず自分に突っ込みを入れつつ、深皿にシチューを盛りつけ、アルシェイラの前へと置く。
確かに、話題を振った当日にサヴァリスが来なくなるとは思わなかったので、何時もの調子で夕食は大量に作ってしまっていた。
食べきることを考えると、確かにアルシェイラの参戦は心強い。
それは間違いないが、今問題としなければならないのは、固まってしまっている養父の方である。
と言う事で、デルクの鳩尾を強く押し込んで、意識をはっきりさせようと努力する。
結果、全く無駄だった。
「どうするんだ、これ?」
「私の愛の力で」
「頼むから、これ以上話をややこしくしないでくれ」
どうやら、アルシェイラは非常に暇らしい。
だからこそ、リチャード達をからかっているのだと判断できる。
グレンダンが平和だと言えるのかも知れないが、非常に傍迷惑なことであることは間違いない。
そして問題は、デルクをこの世に呼び戻すことである。
「リチャード」
「おやじ。気が付いたのか」
だが、自然治癒力で復活してくれたようで、デルクの唇から言葉が零れ落ちる。
しかし、その目は未だに虚ろであり呼吸さえままならない様子だ。
「私はもう駄目だ。レイフォンに先立つ不孝を詫びて欲しい」
「待て待て待て待て」
両肩を掴んで前後に揺すり、少しでも意識がはっきりするようにと努力する。
たかだか女王が来襲したくらいでこんな状況になるとは、デルクも寄る年波には勝てないのかと思ったが、実は違うのだろうと言うことは理解している。
武芸者にとって、アルシェイラとはそれ程に凄まじい存在なのだ。
リチャードのように、ある意味客観的にアルシェイラのことを見られるわけではないのだ。
とは言え、何故か不明だが、サヴァリスのことに一応のケリが付いた今の方が、遙かに問題であるという事実が、リチャードを散々に打ちのめした。
だが、これは始まりに過ぎない。
グレンダンにいる以上、この地獄はまだまだ続くのだと言う事は、きちんと理解できているつもりだ。
やはり、学園都市に留学すべきかも知れない。
そんな事を真剣に考えつつ、デルクを覚醒させるための努力を続ける事にした。