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No.14064の一覧
[0] 完結 復活の時(鋼殻のレギオスif)[粒子案](2016/01/21 09:22)
[1] 第一話 一頁目[粒子案](2013/05/08 21:06)
[2] 第一話 二頁目[粒子案](2013/05/08 21:06)
[3] 第一話 三頁目[粒子案](2013/05/08 21:07)
[4] 第一話 四頁目[粒子案](2013/05/08 21:07)
[5] 第一話 五頁目[粒子案](2013/05/08 21:07)
[6] 第一話 六頁目[粒子案](2013/05/08 21:08)
[7] 第一話 七頁目[粒子案](2013/05/08 21:08)
[8] 第一話 八頁目[粒子案](2013/05/08 21:08)
[9] 第一話 九頁目[粒子案](2013/05/08 21:09)
[10] 第一話 十頁目[粒子案](2013/05/08 21:09)
[11] 第一話 十一頁目[粒子案](2013/05/08 21:10)
[12] 第一話 十二頁目[粒子案](2013/05/08 21:10)
[13] 閑話 一頁目[粒子案](2013/05/09 22:03)
[14] 閑話 二頁目[粒子案](2013/05/09 22:03)
[15] 閑話 三頁目[粒子案](2013/05/09 22:04)
[16] 閑話 四頁目[粒子案](2013/05/09 22:04)
[17] 第二話 一頁目[粒子案](2013/05/10 20:48)
[18] 第二話 二頁目[粒子案](2013/05/10 20:48)
[19] 第二話 三頁目[粒子案](2013/05/10 20:49)
[24] 第二話 四頁目[粒子案](2013/05/10 20:49)
[34] 第二話 五頁目[粒子案](2013/05/10 20:49)
[35] 第二話 六頁目[粒子案](2013/05/10 20:50)
[36] 第二話 七頁目[粒子案](2013/05/10 20:50)
[38] 第二話 八頁目[粒子案](2013/05/10 20:50)
[39] 第二話 九頁目[粒子案](2013/05/10 20:51)
[40] 第二話 十頁目[粒子案](2013/05/10 20:51)
[41] 第二話 十一頁目[粒子案](2013/05/10 20:51)
[42] 閑話 赤毛猫の一日[粒子案](2013/05/11 22:13)
[43] 第三話 一頁目[粒子案](2013/05/11 22:13)
[44] 第三話 二頁目[粒子案](2013/05/11 22:13)
[45] 第三話 三頁目[粒子案](2013/05/11 22:14)
[46] 第三話 四頁目[粒子案](2013/05/11 22:14)
[47] 第三話 五頁目[粒子案](2013/05/11 22:14)
[48] 第三話 六頁目[粒子案](2013/05/11 22:15)
[49] 第三話 七頁目[粒子案](2013/05/11 22:15)
[50] 第三話 八頁目[粒子案](2013/05/11 22:15)
[51] 第三話 九頁目[粒子案](2013/05/11 22:16)
[52] 第三話 十頁目[粒子案](2013/05/11 22:16)
[53] 第三話 十一頁目[粒子案](2013/05/11 22:16)
[54] 第三話 蛇足[粒子案](2013/05/11 22:17)
[55] 閑話 乙女と野獣[粒子案](2013/05/11 22:17)
[56] 第四話 一頁目[粒子案](2013/05/12 21:10)
[57] 第四話 二頁目[粒子案](2013/05/12 21:11)
[58] 第四話 三頁目[粒子案](2013/05/12 21:11)
[59] 第四話 四頁目[粒子案](2013/05/12 21:11)
[60] 第四話 五頁目[粒子案](2013/05/12 21:12)
[61] 第四話 六頁目[粒子案](2013/05/12 21:12)
[62] 第四話 七頁目[粒子案](2013/05/12 21:12)
[63] 第四話 八頁目[粒子案](2013/05/12 21:13)
[64] 第四話 九頁目[粒子案](2013/05/12 21:13)
[65] 第四話 十頁目[粒子案](2013/05/12 21:13)
[66] 第四話 十一頁目[粒子案](2013/05/12 21:14)
[67] 閑話 ツェルニに死す![粒子案](2013/05/13 20:47)
[68] 閑話 ニーナの勉強会その一[粒子案](2013/05/13 20:48)
[69] 閑話 ニーナの勉強会その二[粒子案](2013/05/13 20:48)
[70] 戦慄! 女子寮の朝[粒子案](2013/05/13 20:48)
[71] 第五話 一頁目[粒子案](2013/05/14 22:07)
[72] 第五話 二頁目[粒子案](2013/05/14 22:07)
[73] 第五話 三頁目[粒子案](2013/05/14 22:07)
[74] 第五話 四頁目[粒子案](2013/05/14 22:08)
[75] 第五話 五頁目[粒子案](2013/05/14 22:08)
[76] 第五話 六頁目[粒子案](2013/05/14 22:08)
[77] 第五話 七頁目[粒子案](2013/05/14 22:09)
[78] 第五話 八頁目[粒子案](2013/05/14 22:09)
[79] 第五話 九頁目[粒子案](2013/05/14 22:09)
[80] 閑話 第五話の後始末[粒子案](2013/05/14 22:10)
[81] 閑話 第一次食料大戦[粒子案](2013/05/15 22:17)
[82] 第六話 一頁目[粒子案](2013/05/15 22:18)
[83] 第六話 二頁目[粒子案](2013/05/15 22:18)
[84] 第六話 三頁目[粒子案](2013/05/15 22:19)
[85] 閑話 第二次食料大戦[粒子案](2013/05/15 22:19)
[86] 第六話 四頁目[粒子案](2013/05/15 22:19)
[87] 第六話 五頁目[粒子案](2013/05/15 22:20)
[88] 第六話 六頁目[粒子案](2013/05/15 22:20)
[89] 大惨事食べ物大戦[粒子案](2013/05/15 22:21)
[90] 閑話 サイハーデンの戦士達[粒子案](2013/05/16 20:13)
[91] 第七話 一頁目[粒子案](2013/05/16 20:14)
[92] 第七話 二頁目[粒子案](2013/05/16 20:14)
[93] 第七話 三頁目[粒子案](2013/05/16 20:14)
[94] 第七話 四頁目[粒子案](2013/05/16 20:15)
[95] 第七話 五頁目[粒子案](2013/05/16 20:15)
[96] 第八話 一頁目[粒子案](2013/05/17 22:06)
[97] 第八話 二頁目 [粒子案](2013/05/17 22:07)
[98] 第八話 三頁目[粒子案](2013/05/17 22:07)
[99] 第八話 四頁目[粒子案](2013/05/17 22:07)
[100] 第八話 五頁目[粒子案](2013/05/17 22:07)
[101] 第八話 六頁目[粒子案](2013/05/17 22:08)
[102] 第八話 七頁目[粒子案](2013/05/17 22:08)
[103] 第九話 一頁目[粒子案](2013/08/01 21:49)
[104] 第九話 二頁目[粒子案](2013/08/07 19:43)
[105] 第九話 三頁目[粒子案](2013/08/14 21:09)
[106] 第九話 四頁目[粒子案](2013/08/28 19:06)
[107] 第九話 五頁目[粒子案](2013/09/04 20:10)
[108] 第九話 六頁目[粒子案](2013/09/11 18:37)
[109] 第九話 七頁目[粒子案](2013/09/11 18:38)
[110] 閑話 槍衾がやってくる 前編[粒子案](2013/10/02 21:14)
[111] 閑話 槍衾がやってくる 後編[粒子案](2013/10/02 21:15)
[112] 閑話 ヴァーサス[粒子案](2014/02/05 16:12)
[113] 閑話 最悪の日[粒子案](2014/02/05 16:13)
[114] 第十話 一頁目[粒子案](2014/04/30 13:59)
[115] 第十話 二頁目[粒子案](2014/05/07 21:52)
[116] 第十話 三頁目[粒子案](2014/05/14 12:50)
[117] 閑話 ヴァーサスその2[粒子案](2014/05/28 22:30)
[118] 閑話 渚のエトセトラ[粒子案](2014/07/23 13:53)
[119] 第十話 四頁目[粒子案](2014/12/03 13:57)
[120] 第十話 五頁目[粒子案](2014/12/10 16:40)
[121] 第十話 六頁目[粒子案](2014/12/17 14:04)
[122] 第十話 七頁目[粒子案](2014/12/24 14:04)
[123] 第十話 八頁目[粒子案](2014/12/31 15:37)
[124] 第十話 九頁目[粒子案](2015/01/07 13:14)
[125] 第十話 十頁目[粒子案](2015/01/14 15:44)
[126] 第十話 十一頁目[粒子案](2015/01/21 18:13)
[127] 第十一話 一頁目[粒子案](2015/12/23 14:54)
[128] 第十一話 二頁目[粒子案](2015/12/23 14:54)
[129] 第十一話 三頁目[粒子案](2015/12/23 14:55)
[130] 第十一話 四頁目[粒子案](2015/12/23 14:55)
[131] 第十一話 五頁目[粒子案](2015/12/23 14:55)
[132] 第十一話 六頁目[粒子案](2015/12/23 14:56)
[133] エピローグなど[粒子案](2015/12/30 21:36)
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[14064] 第五話 六頁目
Name: 粒子案◆a2a463f2 ID:ec6509b1 前を表示する / 次を表示する
Date: 2013/05/14 22:08


 老性体戦でも使った、都市外作業指揮車に揺られること丸一日。
 レイフォン達、ツェルニ偵察部隊は見事に廃都市と思われる場所にやってきていた。
 その足は完全に止まっているが、有機プレートの自己修復機能は生きているのか、エアフィルターを抜けて汚染物質に触れた草が枯れて、微かな風邪に揺らめいているのを確認出来る。
 見るからに寂しげな光景であるが、もし今年の武芸大会で敗北をしたのならば、ツェルニがたどる未来予想図でもあるのだ。
 その目に焼き付けておかなければならない光景ではあるのだが、偵察という仕事上あまり感傷に慕っていることも出来ない。

「放浪バスの引き上げ機は破壊されているようだ。そちらはどうですか?」
『こちらには停留所そのものが見あたらない。ワイヤーを使って上がるしかないだろう』

 別な方向を調べていたゴルネオとの通信が、念威端子を通して耳に飛び込んでくる。
 状況はのっけからかなりシビアな展開であるようだ。
 誰にも気が付かれることなく溜息をついたレイフォンは、鋼糸を復元して上へと伸ばす。
 伝わってくる感触を確認して、丈夫そうな建物の幾つかに絡め、自分の身体と装備合わせて百キルグラムル程度の重量を引き上げようとした。

「フォンフォン」
「はい?」

 そんな時に声をかけられた。
 もちろんフェリからである。
 いや。これでニーナにまでフォンフォンと呼ばれたら、世を儚んでヨルテムに逃げ帰ってしまうかも知れないから、それはそれで良いのではあるのだが、何故このタイミングで呼ばれたのか皆目見当が付かないのが恐ろしいところだ。
 ここでいきなり料理をしろとか言われたら、それはそれは困ったことになる。
 汚染物質のせいで、すぐに食材が駄目になってしまうからだ。

「私も上げて下さい」
「? 鋼糸でですか?」
「ええ。ワイヤーに掴まって上るのは面倒で疲れるので」
「・・・・・・・。分かりました」

 とても恐ろしい注文を付けられるのかと思っていたが、レイフォン的には非常に簡単な内容だったので、若干のタイムラグを持って了承した。
 そう。レイフォンにとっては造作もない簡単なことである。

「ナルキも頑張って上るんだよ」
「鋼糸でか? 上るのか? ここを?」
「うん」

 ナルキの鋼糸は、本来移動の補助や対空迎撃のような、あまり力のかからないことに使われている。
 だが、やはり得意ではないにせよ、出来るのと出来ないのでは大きく違う。
 と言う事で、強制的に鋼糸で都市まで上がって貰うことにした。
 当然、慣れないことをするために非常に疲れるはずだが、鋼糸自体あまり使うことがないために、出来るだけ状況を見つけて訓練しないと何時までも出来ないと思うのだ。
 念のためにではあるが、もし万が一ナルキが転落した時にも、大怪我をしないように少し下にレイフォンの鋼糸でネットを作ってある。
 ナルキの実力ならば、空中で姿勢を立て直して綺麗に着地できるだろうが、念のためだ。
 レイフォンのその心配を認識していないはずのナルキが、鋼糸を復元して上方へと伸ばす。
 長さ的には十分ではあるのだが、剄量が違うためにレイフォンとはその速度がだいぶ違うのは仕方が無いことだ。
 と言う事で、フェリと自分を合わせた重量を軽々と扱って都市部へと先に上がる。
 ニーナとシャーニッドも、ワイヤーを使ってゆっくり上がってくるが、ナルキへ向ける視線が哀れみのそれになっているのは当然だろう。
 だがしかし、既に第十七小隊員達にとっても人ごとではなくなりつつある。
 ナルキの特訓がイージェのしごきに変わりつつある今日この頃、レイフォンに精神的な余裕が生まれつつあるのだ。
 だが、そんな未来の予測をしていられるのもそれ程長い時間ではなくなっている。
 もうすぐ都市部へと到着してしまうのだ。
 この先何が出てくるか、非常に恐ろしい。
 前回の老性体戦は、ある意味馴染み深い敵が相手だったが、今回はどんな事態がやってくるか分からないのだ。
 それは極めて恐ろしいことである。

「現在までのところ、都市部に、敵性あるいは生体反応はありません」
「分かりました」

 フェリがそう言っているのだから、ほぼ安全であると思うのだが、それでもレイフォンは鋼糸を伸ばして微細な振動を感知し続ける。
 その情報量の多さに、脳が沸騰しそうな感覚を覚えるが、半分以上条件反射的にやってしまうのだ。
 それというのも、念威に引っかからない老性体とか居たら、それこそ万事休すだからだ。

「私の念威が信じられませんか?」
「信じていないわけではありませんが、習い性というか条件反射的な反応ですね」
「無駄な努力だとは思いませんか?」
「生き残るためだったら、どんな努力だってしますよ。例えそれがテストのために徹夜することだって」

 未だに、老性体と戦うよりも、テストのために勉強することの方が苦しい。
 そう考えると、未知なる脅威に立ち向かっている今の状況の方が、遙かにましであるという結論も出てくる。
 少し気が楽になった。
 自分でも単純だと思うのだが、それでも気が楽になったのは確かだった。
 
 
 
 都市部へと到着したニーナが目にしたのは、ある意味異常な光景だった。
 見渡す限りに広がる廃墟。
 そしてあちこちに広がる血の跡。
 ただそれだけだった。
 視界の限り、人工物は尽く破壊されているし、戦いの跡も垣間見える。
 だがしかし、遺体が全く存在していないのだ。
 これほど異常な光景という物は未だかつて見たことがない。
 そして、最もこう言う惨状に慣れているはずのレイフォンへと視線を向けるが、やはり同じように辺りを見回しているだけだった。
 そうなると、これは異常の中の異常と言うことになってしまう。
 そんな恐るべき現象が起こった都市の側へと、ツェルニがやってくる。
 冗談ではないと叫びだしたい気分だ。
 つい一月前に老性体という化け物と遭遇したばかりだというのに、再びこんな異常事態と遭遇するとは思わなかった。

「何が有ったと思う?」
「分かりません。遺体が完全に無いなんて事は考えられないんですが」
「少し前にツェルニが襲われた、あの数の多い奴は?」
「幼生体ですか? それだと建物はもっとこう、横から押し倒されていないといけないんですが、上から押しつぶされた感じで壊れていますから」
「だとするとだ。誰かが遺体を片付けたと言う事か?」
「それは有るかも知れませんが、断言は出来ません」

 シャーニッドも同じように疑問を感じたようで、レイフォンへと質問したが、やはり明確な答えは返ってこなかった。
 ならば、何か証拠を探さなければならない。
 何が起こったにせよ、その痕跡は残っているはずだ。
 その痕跡を繋ぎ合わせて、真実を突き止める。

「と言う事でナルキ」
「は、はい?」
「警察官としてのお前の出番ではないかと思うのだが」
「い、いや。私は強行捜査課で、頭を使って難事件を解くのは専門外なんですが」
「そうなのか?」
「そうなんです」

 捜査ならば、捜査の専門家と思って声をかけてみたのだが、どうやら捜査にもそれぞれ専門があるようでナルキには無理なようだ。
 となると、もう一人の一年生の顔が思い浮かぶのだが。

「ウォリアスを連れてくるべきだったか?」

 頼るのはしゃくではあるのだが、それでもウォリアスが居ればきっとなにがしかの答えを出してくれたのではないかと、そう思うのだ。
 だが、ナルキとレイフォンの予測は明らかに違っていた。

「ウォリアスがこんなところに来たら」
「何処かの図書館に入り浸って、とても捜査なんてしないと思いますが」

 言われて見て考える。
 古文都市レノスというのは、古い資料をかき集めることを最大の目的にしているような都市だと聞いた。
 そして、ウォリアスという人物は明らかにその都市の影響をもろに受けている。
 いや。これ以上ないくらいに情報収集という物に情熱を傾けている節がある。
 ならば、住民が居なくなった都市の情報を根こそぎ持って行こうと、あらん限りの非道な行いをするとしても何ら不思議はない。
 いや。むしろ死んだ人に情報なんて要らないと嘯きつつ、極秘資料を喜々として強奪して行きそうだ。

「あり得るな」

 連れてこなくて良かったと、そう言う結論へ達した。
 確かに、死んだ人達に情報など不要なのだろうが、それでも、墓荒らしを目の前でやられて気分がよいはずはないのだ。

「そもそも、ウォリアスは戦略・戦術研究室に詰めっきりで、殆ど出てこないらしいですよ」
「そう言えばリーリンがお風呂に入れろって僕に言って来ていたっけ」

 ニーナが挑んだ時に、既に二日連続で殆ど寝ていなかったはずだ。
 その後も状況があまり変わらないのだとしたら、それはそれで非常に困ったことになってしまうと思うのだが、カリアンやヴァンゼはその辺きちんと考えているのだろうかと疑問に思う。
 必要なことは間違いないのだろうが、結果を出す前につぶれられても困るのだ。

「風呂に入れろだと?」

 だが、問題は実はそこなのだ。
 リーリンは女子寮に住んでいることからして確実に女性であることは間違いない。
 ウォリアスの方は少々疑問ではあるのだが、ほぼ確実に男性であるはずだ。
 女性が男性を風呂に入れる。
 それはそれでかなり問題のある展開だと思うのだが、本人達はあまり気にしないのだろうかと疑問にも思う。

「デッキブラシで洗われて泣いてるウォリアスって、なんだか想像できないか?」
「泣きながらこれからはお風呂に毎日入りますって、許しを求めるところなんか完璧に想像できますよね」

 男二人の認識は一致しているようだ。
 視線を横にずらしてみると、ナルキも頷いている。
 一皮むけたウォリアスと遭遇することになるかも知れない。
 そんな事を一瞬考えたが、話が著しく離れていることにも気が付いていた。
 そもそも、レイフォンに風呂に入れろと言っているのだ。
 リーリンが入れるというわけではないはずだ。
 無いはずだが、レイフォンはただ今現在この廃都市にいる。
 つまりそれは、リーリンがウォリアスをデッキブラシで洗うと言う事で。

「・・・。この状況の詮索は後回しだ。今は危険がないかを確かめることの方を優先する」

 あり得るかも知れない破廉恥な情景から目を逸らせるために、今やらなければならないことを口にする。
 本来ニーナ達はそのためにここに来たのだ。
 目的をきちんと決めて、それを達成するための方針を決める。
 それこそが、失敗しないコツだと指揮に関する教科書の何処かにかいてあったと思う。
 ならば、目的に沿って行動すべきである。

「・・・・・・・・・・・。シェルターや機関部などに、生存者がいると思うか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。それはどうでしょうか? 断言は出来ませんが、期待は薄いかと」

 危険がないかを確認するためには、やはり情報が欲しい。
 もちろん、端末情報を持ち出すのも重要なことだが、それ以上に生きた情報源を確保できれば、それに越したことはない。
 だが、都市がこの有様では、生存者が居るという可能性は極めて低いと、レイフォンに言われるまでもなく理解している。
 とは言え、探す価値が全く無いというわけではないのだ。

「第五小隊と合流して、向こうとも話し合った方が良いな」
「第五小隊は北回りに都市を回ってくるそうです。あちらに合わせるとすると一時間半後に合流できるかと」

 向こうの念威繰者と連絡を取り続けていたらしいフェリの報告を聞いたが、それは少し時間がかかりすぎるとも思う。
 とは言え、状況が分からないのに分散しているのは極めて危険だ。

「分かった。周りを警戒しつつ移動して第五小隊と合流する」

 分からない以上、基本に忠実になるのは仕方のないことだ。
 正体不明の敵に各個撃破されるという危険性は、レイフォンが居る以上ほぼ考えられないが、第五小隊は少々危険かも知れない。

「・・・・・・・・・・・・・。私は何を考えている?」

 だがすぐに気が付いた。
 最終的には、ここでもレイフォンに頼ってしまっているのだと。
 これではいけない。
 出来る限り頼らずに、自分の手で事を成し遂げなければならない。
 改めて気合いを入れ直したニーナは、合流予定地点へと向けて足を進め始めた。
 
 
 
 一度合流した捜索隊だったが、そのままでは非常に効率が悪いのは覆しようのない事実だった。
 と言うわけで、現在は離れすぎない程度の距離を置いて捜索活動をしている。
 具体的には二キルメルトル程度までを限界として、相互に監視と警戒の網を張りつつ捜索している。
 第十七小隊は、現在シェルターの中を調査中だ。
 それを念威端子越しに監視しつつ、フェリは絶対にあの中には入らないと堅く心に誓っていた。
 端子を通してでもはっきりと血の匂いが伝わってくるのだ。
 入ったら当分取れないと確信できるだけに、絶対に入らないし風下側にも立たない。
 何故そんなに意固地になっているのかと問われたのならば、それは簡単だ。
 数日前に大量に貰ったメイシェンのお菓子に、変な匂いが付いたら台無しだからだ。
 そう。今この瞬間も、フェリの持つ鞄の中には大量のクッキーが詰め込まれているのだ。
 最優先目標は、そのクッキーを死守することである。

「・・・・・・・・・・・。何かが違います」

 そう。何かが決定的に違うような気がする。
 だが、判断そのものは間違っていないはずだ。
 端子を送り込んで調べれば、話は簡単であるにもかかわらず、ニーナが何故か張り切ってシェルターへと突撃してしまったのだ。
 乾ききらない血だまりに支配されている、全滅しているシェルターにだ。
 何をそんなに熱くなっているか、さっぱり分からないが、付き合う義理は無いので外でゆっくりとみんなが帰ってくるのを待つ。
 引きずられて入ることになった、シャーニッド達は可哀想だが、犠牲は必要なのだ。
 そんな事を考えつつ無意識的な動作で手が鞄に伸びようとするが、それを寸前で止める。
 ここはツェルニではないのだ。
 万が一にでも長期滞在となったら、補給することが出来ない貴重物資となりかねない。
 そんな危険極まりない事態を予測して、消費を抑えなければならないのだ。

「鉄の意志で食べるのを我慢しましょう」

 レイフォンに頼んで作ってもらうという手もあるが、材料が満足に残っていないことだって考えられるのだ。
 慎重になるに越したことはない。
 そんな、猛烈な葛藤を生む時間はしかし、唐突に破られた。
 当然のことだが、ニーナ達がシェルターから出てきたのだ。

「くわぁぁ! たまらん」

 大げさに悲鳴を上げて深呼吸するのはシャーニッドだが、流石のニーナもその行動を咎めようとはしていない。
 中の光景は端子で確認した以上の凄まじさだったのだろう。
 入らなくて良かったと、心の底から安堵を覚えた。

「やはりかなりおかしいですね」
「何がだ? あれ以上に凄惨でないと駄目だとか言うなよ」

 臨時で第十七小隊へ編入されたナルキが、レイフォンの呟きを拾って非難がましい声を上げている。
 当然その顔色は優れず、はっきり言って一番ダメージを受けているように見える。
 汚染獣戦の時は、小隊員としても上位の実力を見せつけるのだが、流石に全滅したシェルターなんて物に入るのは初めてのことなのだろう。
 ナルキの心境は十分に理解できるし、ニーナに引きずられてしまったことも悲劇であると同情してしまう。

「食べ残しがない」
「食べ残しって、もしかして」
「うん」

 言うなと、ナルキが視線で訴えかけているが、そんな物に気が付くようにレイフォンは出来ていないのだ。
 軽く呼吸を整えると。

「シェルターの状況からすると、汚染獣は小さめだったみたいだけれど、それでも隅っこに入った指の先とか、靴の中に残った踝から先とか、そんなのが残っていて当然なはずなんだけれど全く無かった。汚染獣が何か道具を使って、行儀良く食べたと言うのじゃなければ、間違いなく誰かが遺体を片付けたんだ」

 想像する。
 幼生体が、ナイフとフォークを使って人間を食っているところを。

「・・・・・・・・・・・・・・・。フォンフォン」
「はい?」

 加害者がヘラヘラとこちらを見た。
 いや。もしかしたら笑っているわけではないのかも知れないが、フェリには笑っているように見えるのだ。
 と言う事で、無防備なその脛に渾身の蹴りを撃ち込む。

「ぐわぁぁぁ! ひゅぅ」

 悲鳴を上げて脛を抱えて飛び跳ねようとしたところに、追撃を放つ。
 爪先の指の部分に、的確にヒールを押し当てて、強弱を付けつつ踏みにじる。
 変な吸気音を最後に、レイフォンから空気の流れが観測されなくなった。

「馬鹿だ、馬鹿だ、馬鹿だ、馬鹿だ、馬鹿だ、馬鹿だと思っていましたが、穏やかな表現をするとか、オブラートに包むとか、ぼかした言葉を使うとか、状況を匂わせるとか言う賢い方法は思いつかなかったのですか」

 更に心ゆくまで踏みにじり、そして呼吸が止まっているレイフォンから脚を離した。
 周りから同意の空気が漂ってきているし、いくらレイフォンが馬鹿だろうと同じ過ちをするとは思えないから、これで十分だろうと自分を納得させる。
 もう少し虐めたいが、この意味不明な都市で戦力を不必要に消耗することは避けたいので仕方が無い。

「それで、他のシェルターも調べますか?」
「い、いや。そろそろ日が暮れる。野宿するのはあまり好ましくないから何処か使える宿を探そう。向こうにもその旨を伝えておいてくれ」

 出てきた時よりも青い顔をしているニーナに言われるがまま、フェリは第五小隊の念威繰者を通してこちらの意志を伝えた。
 同時に、端子を飛ばして近くで使えそうな建物がないかを探す。
 レイフォンはまだ両足のダメージから立ち直れないのか、蹲ったまま非難がましい視線でフェリを見ているが、気にしてはいけない。
 だが、それも限界に近付きつつある。
 その情けない姿に嗜虐心がくすぐられてしまうのだ。
 思わず、笑いが漏れそうになるのを割と真剣にこらえる。
 
 
 
 フェリの地獄のような制裁を生き抜いたレイフォンだったが、休む暇を与えられずこき使われていた。
 あちこちから食材をかき集めてきて、第五小隊員の分までご飯を作っていたのだ。
 ナルキの手伝いがなければ、泣きながらメイシェンのところに逃げ帰っていたことだろう。
 それくらいフェリの制裁は凄まじかったのだ。
 料理関係の仕事をしているオスカーも居るには居るのだが、残念なことに食材の専門家であり料理はあまり得意ではないとのことだった。

「シャァァァァァ!!」
「不愉快です」

 そんなわけで、ナルキと共同して料理を作り上げ、それがテーブルの上に乗せられたのはつい五秒前のことだった。
 そして今目の前で、既に牽制が始まっている。
 レイフォンの作った物でも食べることは別問題と言った感じのシャンテと、取り敢えずシャンテに対抗したいと思っているらしいフェリの、威嚇の応酬だ。
 他の面々は、料理の皿をかっさらって逃げる算段をしているようにしか見えない。
 実を言えば、レイフォンもその中の一人だ。
 折角作ったのに台無しにされては困るのだ。

「しかし、相変わらず美味そうだな」

 だが、そんな周りのことなど知らぬげに、シャーニッドだけが平然と食べる準備を終わらせて、フォークとナイフを手にしている。
 レイフォンが見る限りにおいて、驚くべき精神構造だ。

「そ、そうだな。だが、これなら問題が無くなるかもしれんな」
「何か問題が有りましたか?」

 料理に問題はないはずだ。
 食べようとしている人達には、少し問題が有るかも知れないが。

「いやな。セルニウムの補給の間は休みになるのだが」
「機械科を始め、上級生がみんな採掘に駆り出されるからね」
「そうです。その間に強化合宿をやろうかと思っていたのですが、問題は食糧の確保でした」

 シチューの皿を確保したニーナが、非常に不本意そうに話し出し、それに反応したのは鶏肉のソテーを確保している、やはり不本意そうにしているオスカーだ。
 二人が不本意そうにしているのは、もしかしたらきちんとテーブルについて食べられないからかも知れない。
 良家の出身者には割と多い思考なので、おおよそ理解できる。

「成る程。場所の見当は付いていると言う事だね」
「はい。食料生産区画の一部が農閑期でして、そこを使えそうなのですが」
「そう言う場所の側には店もろくにないからね」

 話を聞きつつこっそりと鋼糸を復元して、シャンテとフェリの周りに蜘蛛の巣状の結界を張り巡らせる。
 最悪の事態になっても、全滅を避けるために。
 リンテンスから学んだ鋼糸の技だが、実は戦闘以外でこそ活躍することの方が断然多くなっているという事実に、少々では済まない不条理さを感じてしまっている。
 まあ、ある意味今は戦場と言えるかも知れないからかまわないのかも知れないと、自分を誤魔化しつつ陣を完成させた。

「料理の出来る人間には心当たりがあるのですが、出来ればあまり頼りたくなかった物ですから」
「そこで白羽の矢が立ったのがアルセイフ君か。しかし、彼も訓練に参加するのだろう? いくら何でも訓練をしながら料理は出来ないだろう?」

 少女二人以外の視線がレイフォンへと注がれる。
 もしかしたら、そんな便利な機能も付いているのではないかという、興味津々の視線だ。
 残念ながら持っていない。
 首を横に振ることで、その事を伝えた後にやってきたのは、期待が裏切られたという脱力感だった。
 なんだか非常に負けた気がする。
 とは言え、千人衝での作業は非常にレイフォンの精神に負担をかける。
 常日頃からやっている掃除とかだったら問題無いが、料理となると要求される精度が全く違うのだ。
 いくら器用貧乏のレイフォンとは言え、訓練をしつつ料理をするとなると流石に無理である。

「そうか。流石に人間そんなに器用になれるわけではないのだな」

 残念そうにニーナが呟いているが、一体レイフォンをなんだと思っているのか、かなり真剣に聞きたい気分がする。
 聞くのが怖いので聞かないけれど。

「まあ、それはもう少し話が進展してからと言うことで、今は明日の行動を決めてしまいましょう」

 場に満ちた脱力感を払拭するように、ゴルネオがサラダボールを抱えて少女二人から遠のきつつ話題の転換を図る。
 これにはレイフォンも賛成である。
 なんだか、何時か簡単な訓練をしつつ料理が出来てしまいそうな自分に、少々怖い物を覚えていたからでもあるが、明日の予定というのも十分に重要な内容である。

「明日我々は機関部へ行ってみるつもりです。生存者が居るとしたらあそこが最も可能性がある」
「分かった。我々はもう少し他の場所を当たってみよう。とは言え、生存者がいると思うか?」

 ニーナとゴルネオの会話を聞きつつ、シャンテとフェリの分を除いた料理の避難が終了した。
 これで最悪の結果は避けられたので、精神的に一段落だ。

「居なければ、遺体の謎が解けません」
「それは確かにそうだが、脱出した後だとは考えられないか?」
「ですが、戦闘からそれ程時間が経っていないように見えます。ならばまだ何処かにいるとも考えられます」
「筋道は通っているな。・・・。ならば第十七小隊は機関部を、我々は地上部で危険がないかを確認する」

 隊長二人の会話は何の問題も無く進んで、明日の行動は決定されたようだ。
 ならば問題は、空腹を我慢したまま睨み合っている少女二人と言う事になる。

「二人とも。沢山作りますからどっちの方が多く食べられるか競争しませんか?」

 何とか解決したいという一心で、思わずおかしな提案をしてしまった。
 滅んだ都市で何をやっているのかとか、かなり色々と問題のある行動ではあるのだが、話が前に進まない以上仕方がないのだ。

「お前の言うことなんか聞かない!!」
「馬鹿ですか? 馬鹿なんですね。そうですかやはり馬鹿でしたか」

 最終的には、二人から冷たい言葉しか返ってこなかったが、それでも話が進んだことで良しとしよう。
 後ろ向きにそう考えたレイフォンは、取り敢えず確保しておいた自分の食事に手を付け始めた。
 空腹なのは誤魔化しようがないのだ。
 だが、スプーンでシチューを掬った次の瞬間、弛みきっていた、フェリの周りの空気が一転したのを感じた。
 ある意味、日常から戦場に瞬間移動したような、そんな恐るべき速度の変化だった。

「南西の方向、距離五百メルトルに動体反応。家畜などではありません」
「確認しました。ただし、生体反応は確認出来ていませんが、動力反応もありません」

 第五小隊の念威繰者の方でも確認が取れたようで、矢継ぎ早に報告が上がる。
 それを聞きつつ、レイフォンはスプーンをその場に放り出して立ち上がっていた。
 夕食を食べ損ねて残念だと思う気持ちを引きずることなく、瞬時に戦闘のために精神を切り替える。
 いや。食べ物の恨みは恐ろしいと言うから、少しだけ何時もよりも攻撃的になっているかも知れないが、それでも冷静さを失う事の無いように、戦闘のためにあらゆる感情を全て切り落とした。

「先行します!」

 言い捨てると、窓を開け放ってそこから外へと飛び出す。
 相手は移動しているにもかかわらず、生体反応も、何かの動力で動いているのでもないという。
 そんな非常識な相手と戦える人間など、レイフォンを含めて存在していないが、それでも最大の戦力であるレイフォンが最初に接触することが、最も望ましいと思うのも事実だ。
 いや。最悪の場合特殊進化した老性体などと言う、あまりにも恐ろしい敵の出現さえ覚悟しなければならない。
 つい最近、老成二期とやり合ったばかりだというのに、またあんな化け物と戦うことになるのは、正直に言って気分が重いのだが、まだ敵だと決まったわけではないと、自分を少し誤魔化しつつ指定された方向へ向かって警戒を怠らないように注意しつつ、他の隊員が当分追いつけない速度で走る。
 万が一の場合でも、レイフォンだけだったら逃げる事が出来るからだ。


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