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No.14064の一覧
[0] 完結 復活の時(鋼殻のレギオスif)[粒子案](2016/01/21 09:22)
[1] 第一話 一頁目[粒子案](2013/05/08 21:06)
[2] 第一話 二頁目[粒子案](2013/05/08 21:06)
[3] 第一話 三頁目[粒子案](2013/05/08 21:07)
[4] 第一話 四頁目[粒子案](2013/05/08 21:07)
[5] 第一話 五頁目[粒子案](2013/05/08 21:07)
[6] 第一話 六頁目[粒子案](2013/05/08 21:08)
[7] 第一話 七頁目[粒子案](2013/05/08 21:08)
[8] 第一話 八頁目[粒子案](2013/05/08 21:08)
[9] 第一話 九頁目[粒子案](2013/05/08 21:09)
[10] 第一話 十頁目[粒子案](2013/05/08 21:09)
[11] 第一話 十一頁目[粒子案](2013/05/08 21:10)
[12] 第一話 十二頁目[粒子案](2013/05/08 21:10)
[13] 閑話 一頁目[粒子案](2013/05/09 22:03)
[14] 閑話 二頁目[粒子案](2013/05/09 22:03)
[15] 閑話 三頁目[粒子案](2013/05/09 22:04)
[16] 閑話 四頁目[粒子案](2013/05/09 22:04)
[17] 第二話 一頁目[粒子案](2013/05/10 20:48)
[18] 第二話 二頁目[粒子案](2013/05/10 20:48)
[19] 第二話 三頁目[粒子案](2013/05/10 20:49)
[24] 第二話 四頁目[粒子案](2013/05/10 20:49)
[34] 第二話 五頁目[粒子案](2013/05/10 20:49)
[35] 第二話 六頁目[粒子案](2013/05/10 20:50)
[36] 第二話 七頁目[粒子案](2013/05/10 20:50)
[38] 第二話 八頁目[粒子案](2013/05/10 20:50)
[39] 第二話 九頁目[粒子案](2013/05/10 20:51)
[40] 第二話 十頁目[粒子案](2013/05/10 20:51)
[41] 第二話 十一頁目[粒子案](2013/05/10 20:51)
[42] 閑話 赤毛猫の一日[粒子案](2013/05/11 22:13)
[43] 第三話 一頁目[粒子案](2013/05/11 22:13)
[44] 第三話 二頁目[粒子案](2013/05/11 22:13)
[45] 第三話 三頁目[粒子案](2013/05/11 22:14)
[46] 第三話 四頁目[粒子案](2013/05/11 22:14)
[47] 第三話 五頁目[粒子案](2013/05/11 22:14)
[48] 第三話 六頁目[粒子案](2013/05/11 22:15)
[49] 第三話 七頁目[粒子案](2013/05/11 22:15)
[50] 第三話 八頁目[粒子案](2013/05/11 22:15)
[51] 第三話 九頁目[粒子案](2013/05/11 22:16)
[52] 第三話 十頁目[粒子案](2013/05/11 22:16)
[53] 第三話 十一頁目[粒子案](2013/05/11 22:16)
[54] 第三話 蛇足[粒子案](2013/05/11 22:17)
[55] 閑話 乙女と野獣[粒子案](2013/05/11 22:17)
[56] 第四話 一頁目[粒子案](2013/05/12 21:10)
[57] 第四話 二頁目[粒子案](2013/05/12 21:11)
[58] 第四話 三頁目[粒子案](2013/05/12 21:11)
[59] 第四話 四頁目[粒子案](2013/05/12 21:11)
[60] 第四話 五頁目[粒子案](2013/05/12 21:12)
[61] 第四話 六頁目[粒子案](2013/05/12 21:12)
[62] 第四話 七頁目[粒子案](2013/05/12 21:12)
[63] 第四話 八頁目[粒子案](2013/05/12 21:13)
[64] 第四話 九頁目[粒子案](2013/05/12 21:13)
[65] 第四話 十頁目[粒子案](2013/05/12 21:13)
[66] 第四話 十一頁目[粒子案](2013/05/12 21:14)
[67] 閑話 ツェルニに死す![粒子案](2013/05/13 20:47)
[68] 閑話 ニーナの勉強会その一[粒子案](2013/05/13 20:48)
[69] 閑話 ニーナの勉強会その二[粒子案](2013/05/13 20:48)
[70] 戦慄! 女子寮の朝[粒子案](2013/05/13 20:48)
[71] 第五話 一頁目[粒子案](2013/05/14 22:07)
[72] 第五話 二頁目[粒子案](2013/05/14 22:07)
[73] 第五話 三頁目[粒子案](2013/05/14 22:07)
[74] 第五話 四頁目[粒子案](2013/05/14 22:08)
[75] 第五話 五頁目[粒子案](2013/05/14 22:08)
[76] 第五話 六頁目[粒子案](2013/05/14 22:08)
[77] 第五話 七頁目[粒子案](2013/05/14 22:09)
[78] 第五話 八頁目[粒子案](2013/05/14 22:09)
[79] 第五話 九頁目[粒子案](2013/05/14 22:09)
[80] 閑話 第五話の後始末[粒子案](2013/05/14 22:10)
[81] 閑話 第一次食料大戦[粒子案](2013/05/15 22:17)
[82] 第六話 一頁目[粒子案](2013/05/15 22:18)
[83] 第六話 二頁目[粒子案](2013/05/15 22:18)
[84] 第六話 三頁目[粒子案](2013/05/15 22:19)
[85] 閑話 第二次食料大戦[粒子案](2013/05/15 22:19)
[86] 第六話 四頁目[粒子案](2013/05/15 22:19)
[87] 第六話 五頁目[粒子案](2013/05/15 22:20)
[88] 第六話 六頁目[粒子案](2013/05/15 22:20)
[89] 大惨事食べ物大戦[粒子案](2013/05/15 22:21)
[90] 閑話 サイハーデンの戦士達[粒子案](2013/05/16 20:13)
[91] 第七話 一頁目[粒子案](2013/05/16 20:14)
[92] 第七話 二頁目[粒子案](2013/05/16 20:14)
[93] 第七話 三頁目[粒子案](2013/05/16 20:14)
[94] 第七話 四頁目[粒子案](2013/05/16 20:15)
[95] 第七話 五頁目[粒子案](2013/05/16 20:15)
[96] 第八話 一頁目[粒子案](2013/05/17 22:06)
[97] 第八話 二頁目 [粒子案](2013/05/17 22:07)
[98] 第八話 三頁目[粒子案](2013/05/17 22:07)
[99] 第八話 四頁目[粒子案](2013/05/17 22:07)
[100] 第八話 五頁目[粒子案](2013/05/17 22:07)
[101] 第八話 六頁目[粒子案](2013/05/17 22:08)
[102] 第八話 七頁目[粒子案](2013/05/17 22:08)
[103] 第九話 一頁目[粒子案](2013/08/01 21:49)
[104] 第九話 二頁目[粒子案](2013/08/07 19:43)
[105] 第九話 三頁目[粒子案](2013/08/14 21:09)
[106] 第九話 四頁目[粒子案](2013/08/28 19:06)
[107] 第九話 五頁目[粒子案](2013/09/04 20:10)
[108] 第九話 六頁目[粒子案](2013/09/11 18:37)
[109] 第九話 七頁目[粒子案](2013/09/11 18:38)
[110] 閑話 槍衾がやってくる 前編[粒子案](2013/10/02 21:14)
[111] 閑話 槍衾がやってくる 後編[粒子案](2013/10/02 21:15)
[112] 閑話 ヴァーサス[粒子案](2014/02/05 16:12)
[113] 閑話 最悪の日[粒子案](2014/02/05 16:13)
[114] 第十話 一頁目[粒子案](2014/04/30 13:59)
[115] 第十話 二頁目[粒子案](2014/05/07 21:52)
[116] 第十話 三頁目[粒子案](2014/05/14 12:50)
[117] 閑話 ヴァーサスその2[粒子案](2014/05/28 22:30)
[118] 閑話 渚のエトセトラ[粒子案](2014/07/23 13:53)
[119] 第十話 四頁目[粒子案](2014/12/03 13:57)
[120] 第十話 五頁目[粒子案](2014/12/10 16:40)
[121] 第十話 六頁目[粒子案](2014/12/17 14:04)
[122] 第十話 七頁目[粒子案](2014/12/24 14:04)
[123] 第十話 八頁目[粒子案](2014/12/31 15:37)
[124] 第十話 九頁目[粒子案](2015/01/07 13:14)
[125] 第十話 十頁目[粒子案](2015/01/14 15:44)
[126] 第十話 十一頁目[粒子案](2015/01/21 18:13)
[127] 第十一話 一頁目[粒子案](2015/12/23 14:54)
[128] 第十一話 二頁目[粒子案](2015/12/23 14:54)
[129] 第十一話 三頁目[粒子案](2015/12/23 14:55)
[130] 第十一話 四頁目[粒子案](2015/12/23 14:55)
[131] 第十一話 五頁目[粒子案](2015/12/23 14:55)
[132] 第十一話 六頁目[粒子案](2015/12/23 14:56)
[133] エピローグなど[粒子案](2015/12/30 21:36)
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[14064] 第十話 八頁目
Name: 粒子案◆a2a463f2 ID:1d4afd70 前を表示する / 次を表示する
Date: 2014/12/31 15:37


 汚染獣の警報が鳴り響いて数時間が経った。
 その間、避難し続けている生徒達の間には、それなりに悲観論を呟く者も居たが、それは大声にはならなかった。
 何しろ暴走中は毎日のように汚染獣に襲われていたのに、何とかそれを切り抜けることが出来たという実績が大きいのだ。
 あの時に比べたら、どうと言う事はないと思っている生徒が殆どだろうし、実際問題としてリーリンもそう思っている。
 だが、それでも不安は消えない。
 何しろ、汚染獣とは、まさに常識の通用しない生き物だからだ。
 常識の通用しない武芸者が二人いるとしても、それで互角と言い切ることは出来ない。

「で、何しに来たの?」

 そんな、切羽詰まったらよいのかどうか分からない状況の最中にやってきたのは、細目で読書が大好きな極悪武芸者である。
 その後ろに、食肉加工店を営んでいる武芸者もいる。
 だが、ウォリアスの纏う空気は何時もよりは少しだけ張り詰めているし、細い瞳は鋭い光を発しているようにも見える。
 眼が細すぎるので、光の加減でそう見えるだけかも知れないが。

「メイシェンに用事。汚染獣が見付かったんだけれどかなり遠くてね」
「ああ。あの変な乗り物を使うのね」
「そ。それで、レイフォンがフェリ先輩に心をへし折られてしまってね」
「・・・・・・・・・・・・・・・。なんでこんなときに」

 長距離行軍をするとなると、たいがい使われる都市外指揮車という乗り物がある。
 レイフォンは何度かお世話になったと言っていたが、リーリンは当然のこと乗ったことはない。
 割と乗り心地はよいと言う事だったが、別段乗りたいとも思わない。
 それよりも問題は、ツェルニが危機的状況に陥りかけているというのに、レイフォンの心をへし折って遊んでいる先輩の方だ。
 後にすればよいのにと思うのだが、最悪の場合メイシェンを使えば復活するからとウォリアスも放って置いたのだろう。
 むしろ、フェリのテンションを上げる方が重要だと思ったのかも知れない。
 途中経過がまったく語られていないので、さっぱり事情が分からないが、今の問題はそこではないのだろう。

「あう。汚染獣に襲われたことで攻められたの?」
「いや。普通に、フェリ先輩に虐められたんだけれどね。取り敢えずオスカー先輩に着いて行ってくれるかな?」
「あう」

 納得が行かないところはあるが、レイフォンが使えないのでは話にならない以上、リーリンに選択の余地はない。
 そもそも、メイシェンに用事なのであまり関係ないが。
 取り敢えず、オスカーに連れられて移動するメイシェンを見送りつつ、何故か残ったウォリアスに視線を向ける。
 目的のない行動をとることは多いが、それでもこの状況で暇を持てあましているというわけではないはずだ。
 それなので、話を振ってみる。

「愚痴でも言いたいの?」
「愚痴ねえ。愚痴と言えば愚痴かな。戦略的にしてやられている状況だからね」
「それって、かなり拙いんじゃ?」

 何時ぞやの説明を信じるならば、戦略的な敗北は戦術的に取り返すことは出来ないはずだ。
 だが、それにしてはウォリアスに余裕が有りすぎることに気が付き、そこから答えを出すことが出来た。

「状況戦略だっけ? そっちをしくじったの」
「そ。数十個体ずつ入ったカプセルを散乱されてしまってね。予測される戦場が離れすぎていて相互支援がかなり難しい」
「成る程」
「何時出てくるかも分からないから、こちらが戦力を集中できない」
「お互いに戦力の逐次投入とか言うことになったのね」
「そ。戦術的に何とか挽回できるからまだ良いけれどね」

 外も緊迫すればいいのかどうか分からない状況らしいと、この時に分かった。
 まとめてやって来るのだったら、それこそレイフォンを外へ出すなどと言う事は出来ないが、逐次投入ならばツェルニ武芸者だけでも何とか持ちこたえることが出来るだろう。
 だが、それでも問題はある。
 わざわざ遠出をする理由がないような気がするのだ。
 いや。強力な汚染獣と遠くで戦うというのは、都市の安全を確保するためには必要かも知れない。
 それでも、ウォリアスの口ぶりからするとかなり遠出になるようで、そこまでする理由が分からないのだ。

「遠出って言ってたけれど」
「年度の初めにあった老性体戦くらいの距離。こっちに来るまで待ちたいんだけれど、地形的に汚染獣が今いる場所が一番有利なんだ」
「面倒ねぇ」
「まったく」

 結局、他の選択肢よりはマシなのを選んだと言う事らしい。
 とてもウォリアスらしい行動原理だと思うが、ふと疑問に思った。

「ねえ、ウォリアス?」
「ん?」
「今、時間有る?」
「レイフォンの心の修復には、最低三十分はかかるはずだし、それなりに」
「・・・・・・・・・・・・・・・」

 どんな方法で心を修復するのかとても疑問ではあるが、あえて思考を進めることを止めた。
 とても腹立たしい光景が予想されてしまったから。
 それよりも、今はリーリンの中に浮かんできた疑問を解決することこそが重要なのだと、強引に話を元に戻す。
 微かに殺気が漏れたのか、ミィフィが後ずさったようだが気にしてはいけない。

「ウォリアスって、年齢は幾つなの?」
「肉体年齢は、十五才だよ。いや。あと二日で十六才」
「年下だったんだ」
「お姉ちゃんと呼ぼうか?」
「止めて」

 そう。疑問とはウォリアスの年齢について。
 どう考えても同世代とは思えない言動を連続してやってのけ、感情と理性が対立する時には、一瞬で理性を優先させる。
 いや。優先しないこともあったが、それは全てウォリアスが生きる目的に進むための選択だったと思う。

「そうだね。内緒にしてくれるんだったら」

 その生き方はやはり同年代とはやや違うと思う。
 だからこそ、ここで聞いてみたいと思ったのだが、その視線はしかしミィフィという茶髪猫へと注がれていた。
 公表されることを望まないと、その視線が訴えている。

「む? オフレコにしろと言うのだったらそうするよ。私だって分別くらいはあるから」
「本当に?」
「当たり前だろう!!」

 ウォリアスの念押しに、やや激昂して答えるミィフィ。
 ウォリアスの懸念もミィフィの怒りも分かる気がするので、双方から適度な距離を置いて成り行きを見る。
 火花が散るような視線の応酬は起こらず、ミィフィの一方的な睨みを受け流していたウォリアスが小さく溜息をつく。

「内緒にしてくれるんだったら話すよ。実は結構重大な話なんだけれどね」

 そう言いつつも、あくまでも軽い空気を崩さないウォリアスだが、外見に騙されてはいけない。
 一体どれだけの悪事をその脳が生み出したか、それの一部に関わったリーリンとしては油断など出来はしないのだ。
 そして語られた内容は、あまりにも意外な物だった。

「古文都市レノスは、古い資料を延々と集めることを目的にした都市なんだけれどね。その更に目的。資料を集める目的があったはずなんだ」
「そりゃまあ」

 目的のための手段であることは、ウォリアス自身はっきりとではないにせよ示し続けている。
 ならば、資料を集めることが目的化してしまっているレノスに、本来の目的があると考えるのは必然だろう。

「何代か前の人が、レノスの目的はなんだろうかと疑問に思ったんだけれど、とても人間の寿命の間に結論は出ないことがはっきりしていたんでね、ある機械を作ったんだ」
「どんな?」

 単純な計算機や記憶装置ではないはずだ。
 そんな物は既にいくらでも存在しているのだから、改まって作るという必要はない。

「他人の人生を、夢という形で追体験する機械」
「? え?」
「? ん?」

 疑問の声を上げる。
 それは隣に座るミィフィも同じだった。
 他人の人生を夢で見ることに、どんな意味があるのかが分からない。

「その人の知識と経験を、第三者の視点からじっくりと検証することが出来る。これが出来ると、本人が気が付かない間違いを見つけやすくなるし、そもそも夢の中の出来事とは言え、実際に体験しているのに近いから、学習の時間を極端に短縮できる」
「ああ」
「おお」

 説明を聞いて二人で納得の声を上げる。
 結論に至る経過を詳細に知ることが出来れば、それは大きな判断材料となる。
 その時の心理状況や、持っていた知識や経験、技術を効率的に取得できると言う事は、自分自身を第三者の視点から見ることに限りなく近いだろう。
 夢で見た他人の人生ならば、欠点や弱点を見つけることも簡単だろう。
 いや。それどころではない。
 これは恐るべき力を秘めた機械だと言える。
 たとえばの話だが、レイフォンがこれを使えば学習の時間を驚異的に短縮できるはずだ。
 ツェルニとウォリアスが総掛かりで六年かかるのを、僅か半年でやってしまうことだって、それこそ夢ではない。

「レイフォンには使えないよ」
「え?」
「お?」

 まるで心を読んだかのように、リーリンが真っ先に考えたことを否定するウォリアス。
 まあ、勉強が苦手で成績の悪いレイフォンに使いたいと思うのは当然のことなので、普通に読めるのだろうが。

「夢を見る機械には決定的な欠点があるんだ」
「ど、どんな?」
「二割の確率で拒絶反応を起こして、脳死状態になる」
「・・・・・・」

 たかが二割と言う事は出来ない。
 死亡率二割の伝染病であると考えれば、感染しないに越したことはない。
 更に、使うのがレイフォンとなれば、その危険性は一気に跳ね上がるだろう。
 よほどのことがない限りは、使わない方が良さそうである。

「そして最も恐ろしいのは、実は後遺症なんだ」
「後遺症って?」
「覚えているかな? 僕は僕の人生を生きていないって言ったこと」
「え? うん。ツェルニが暴走している時の話よね」
「そ」

 あの時は何を言っているのかさっぱり分からなかった。
 いや。今だって良く分かっていない。
 だが、今から語られる話こそが理解するための材料であることは分かる。

「僕が今生きている人生も、夢の出来事じゃないかと思ってしまうんだよ」
「・・・え」

 ウォリアスのその言葉を聞いた瞬間、リーリンの背中を冷たい汗が流れた。
 それは、明らかに人と違う現実が見えているリーリンの現状に近いのではないだろうかと。
 もしかしたら、リーリンが気が付かないだけで、本当はこれは夢なのではないだろうかと。

「汚染獣との戦いに出て、腕を食い千切られてその痛みで目覚めたら、何事もなくそこに腕があったりとか」
「そ、それは」
「日常良くある事故で息子を亡くして、その悲しみで目覚めてみたら、自分には息子がいないどころか、その息子の年齢に全然達していないとか」

 人と違う現実を生きているというリーリンの現状と、他人の人生を生きていると勘違いしたウォリアスではかなりの違いがあることが分かった。
 そもそも、ウォリアスにとってそれは過去であり、現在ではない。
 だがはっきりと分かったことがある。
 ウォリアスが夢という形で体験した人生は、かなりの割合で悪夢だったのだと。

「だから、僕が今生きているこの現実も誰かの夢なんじゃないかと思ってしまってね。僕は自分の人生を生きているのか分からないし、自己暗示にもかかりやすいんだ。これが夢かも知れないと思っているんだったら、簡単だよね」

 自分という物があやふやだからこそ、古い資料を集めるという目的のために生きることで、自分を規定しているのかも知れない。
 あるいは、今の人生が誰かの夢ではないことを確認する作業を延々と続けているのかも知れない。

「僕は、合計二百四十年に及ぶ人生を追体験している。どう考えても十五才ではいられないね」

 死亡率二割の危険を冒して、更に後遺症に苦しみつつも現状を生き続けている人間が、目の前にいることに気が付いた。
 だからこそウォリアスは常に冷徹なのだと言う事にも気が付いた。
 ツェルニが暴走している最中、メイシェンについて相談を持ちかけたことがあった。
 その時ウォリアスはこう言ったのだ。
 他の選択肢がないと言うだけで、全力で支持すると。
 カリアンのような傑物でなければ、あるいはカリアンでさえ、そんな決断は出来ないだろう。

「かれこれ二百五十年の経験が、今の僕を支えているわけだね。だから人よりも少しだけ違ったことが出来る」

 リーリンが今体験している、現実が二重に存在するというのとは明らかに違う現状をウォリアスは生きている。
 それは十分に分かった。
 だからこそ、眼の細い少年は異質に映るのだと。

「これはもう、カンニングなんて生やさしい話じゃないことは分かるよね?」
「そりゃあ。教師役の先輩よりも凄いって話になるからね」
「凄いってよりも、圧倒できるよ。やる気になればね」
「ならないんだ」
「そ」

 復活した感じのあるミィフィが、ウォリアスの口止めの理由に行き着いている時リーリンは更に疑問に思った。
 結局、レノスが古い資料を集めて回る理由はなんなのだろうかと。
 いや。それ以上に疑問がある。
 何故、二割の死亡率や後遺症があることを知りつつ、ウォリアスは夢を見る機械を使ったのだろうかと。

「レノスの目的ははっきりしないんだけれどね、グレンダンとの接触している時間が変に長かったんだ」
「うわぁ」

 ふと飛び出した都市名に、思わず変な悲鳴を上げたのはミィフィだ。
 グレンダンに関わってもろくな事が無いと、そう認識しているのだろう。
 その認識はリーリンも共有している。
 よりにもよってグレンダンとの接触時間が長かったなどという話を聞いてしまっては、進むも地獄、退くも地獄であることは間違いない。

「で、ツェルニが暴走している最中にグレンダンが廃貴族の影響を受けているんじゃ無いかって予測はしたよね?」
「レイフォンもそこに辿り着いていた物ね」

 リーリンに向けられた質問であることは分かったので、出来るだけ簡単に答えた。
 どの都市よりも危険でいて、何処の都市よりも安全である、狂った槍殻都市。
 そこにいる間はそれが当然だと思っていた。
 他の都市の、汚染獣との戦闘頻度が低いという話は聞いていたが、それは実感を伴わない単なる情報だった。
 いや。リーリンにとってみれば未だに実感の湧かない情報でしかない。
 今年のツェルニが異常だという話は聞いているし、実際にそうなのだろうけれども、暴走している期間を除いても汚染獣との遭遇確率は結構高い。
 もちろんグレンダンほど驚異的ではないにせよ、今回ので三回遭遇してしまっている。
 しかも、その内二回は老性体という話だから、ある意味グレンダンよりも凄いかも知れない。
 だが、問題はやはりグレンダン。
 廃貴族に取り憑かれ、普通の都市ならば確実に壊滅しているような状況が日常となる異常な都市。

「グレンダンは、ハルペーみたいな強力な汚染獣と戦うために戦力を集め続けていると思うんだけれど、それがいつからか全然分からない」
「ん? それって重要な情報?」
「重要だよ」

 グレンダンはいつから汚染獣を追うように行動しているのか?
 それがそんなに重要な情報であるとはリーリンには思えない。
 だが、相手はウォリアスだった。

「グレンダンという都市は、実は二つあるんだ」
「え?」
「お?」

 都市の名前が二つあってはいけないと言う事はないだろう。
 だが、それが、よりにもよってグレンダンとなれば話は違ってくる。

「一つは、二、三百年前にヨルテムの行き先リストから消えている奴ね」

 全ての放浪バスが出発し、そして帰る都市ヨルテム。
 その行き先リストから消えると言う事は、その時点で、何らかの原因で滅んだと言う事になる。
 そこまでは問題無い。

「もう一つは槍殻都市」

 これは、リーリンが出発するまで存在していた。
 そして、おそらくは今も存在し続けていることだろう。
 そしてリーリンには、この思考の先にある結論が分からない。

「問題なのはね。槍殻都市グレンダンの名前がヨルテムの行き先リストに載ったのは、二、三百年前からなんだよ」
「? え?」
「もしもし?」

 二百五十年という恐るべき人生経験を持ち、自分さえ第三者の視点から見ることも出来るという思考の怪物が放った言葉を、理解できなかった。
 そもそも、無くなった都市のことは分かったとしても、存在する都市がいつからあるかなどは分からないはずだ。

「レノスが集めた情報の中にね、紙媒体で作られた古い行き先リストがあったんだ。過去千年分くらいの奴」
「そ、それって」

 千年と軽く言うが、その情報量は膨大の言葉さえ霞むような量になるはずだ。
 その中からグレンダンという都市の名前を探し出した。
 その情熱というか、執着心に何よりも驚愕してしまう。

「その紙媒体で分かったことが、槍殻都市は比較的新しい都市らしいと言う事なんだけれど・・・」

 言葉が曖昧に終わる。
 結論が出ていないのか、それとも。

「リーリンやレイフォンがやってきたグレンダンは、本来の名前から変わったんじゃ無いかって、今思っているんだ」
「そ、そんな事、あるの?」
「さあ」

 都市の名前が変わるなどという話は聞いたこと無いが、リーリンが知らないだけかも知れないのだ。
 だが、槍殻都市グレンダンが比較的新しい都市だと言うよりは、名前が変わったと言われた方がまだ納得が行く。
 自律型移動都市の製造技術は既に失われているはずなのだ。
 遙か、古の時代に失われたはずの技術が生きていて、槍殻都市が最近作られた。
 それはリーリンの常識からはかけ離れた推論である。
 まあ、現実が二重に存在しているという時点で常識が通用していないのだが、そこは出来るだけ無視することとする。
 いや。そもそも。

「・・・・・・・・・・・。自律型移動都市っていつ頃からあるの?」
「さあ。それを知りたいと思っているんだけれど、古すぎて資料が全然ないんだ」
「当然よねぇ」

 人類が持っている歴史的資料では、それ程遡ることが出来ない。
 いや。そもそも人類史は都市と共に始まったと、そう言えるかも知れない。
 それ程、大崩壊以前の資料は残されていない。
 極々僅かな映像資料や、古代の都市の遺跡が見付かることはあるが、それはかなり希な出来事であるし、紙や電気的な記録が見付かったという話しはないはずだ。
 これはある意味、人類の誕生に関わる内容である。
 リーリンのような、あまり歴史や古いことに興味のない人間でさえ、とても引かれる話だったがそれは唐突に終わりを告げた。

『よろしいでしょうか?』
「はいはい」

 フェリの念威端子が、何時の間にかウォリアスの頭の上に乗っていたのだ。
 何故か少しだけ、笑いの要素が混じる光景である。

『フォンフォンが復活しましたが、よろしければまた心を折りましょうか?』
「無駄な時間とエネルギーをレイフォンと僕らに使わせるだけだから、止めて下さい。作業指揮車に向かいますから」
『了解しました』

 話はこれまでである。
 メイシェンがいるからレイフォンの心くらいはいくらでも修復できるだろうが、時間が無限にあるというわけではないのだ。
 無事に汚染獣を倒せれば、この先五年という時間を得ることが出来る。
 その時間を使って、今の話の続きを聞くことが出来るだろうと、そう自分を納得させる。
 出来れば、ウォリアスにリーリンの現状を話してしまいたいと思っているのだが、それは今は出来ない。

「気をつけて行ってくるのよ」
「ツェルニはきっとナルキ達が守ってくれるからね」
「はいはい」

 あくまでも軽いノリで、ウォリアスの背中がリーリンの視界から消えていった。
 その頭脳は既に汚染獣との死闘へと向けられ、自分の死さえ計算の内に入っているのだろう。
 レイフォンさえ及びも付かない怪物はしかし、普通の人と何ら変わらない歩みで去っていったのだった。


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