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No.14064の一覧
[0] 完結 復活の時(鋼殻のレギオスif)[粒子案](2016/01/21 09:22)
[1] 第一話 一頁目[粒子案](2013/05/08 21:06)
[2] 第一話 二頁目[粒子案](2013/05/08 21:06)
[3] 第一話 三頁目[粒子案](2013/05/08 21:07)
[4] 第一話 四頁目[粒子案](2013/05/08 21:07)
[5] 第一話 五頁目[粒子案](2013/05/08 21:07)
[6] 第一話 六頁目[粒子案](2013/05/08 21:08)
[7] 第一話 七頁目[粒子案](2013/05/08 21:08)
[8] 第一話 八頁目[粒子案](2013/05/08 21:08)
[9] 第一話 九頁目[粒子案](2013/05/08 21:09)
[10] 第一話 十頁目[粒子案](2013/05/08 21:09)
[11] 第一話 十一頁目[粒子案](2013/05/08 21:10)
[12] 第一話 十二頁目[粒子案](2013/05/08 21:10)
[13] 閑話 一頁目[粒子案](2013/05/09 22:03)
[14] 閑話 二頁目[粒子案](2013/05/09 22:03)
[15] 閑話 三頁目[粒子案](2013/05/09 22:04)
[16] 閑話 四頁目[粒子案](2013/05/09 22:04)
[17] 第二話 一頁目[粒子案](2013/05/10 20:48)
[18] 第二話 二頁目[粒子案](2013/05/10 20:48)
[19] 第二話 三頁目[粒子案](2013/05/10 20:49)
[24] 第二話 四頁目[粒子案](2013/05/10 20:49)
[34] 第二話 五頁目[粒子案](2013/05/10 20:49)
[35] 第二話 六頁目[粒子案](2013/05/10 20:50)
[36] 第二話 七頁目[粒子案](2013/05/10 20:50)
[38] 第二話 八頁目[粒子案](2013/05/10 20:50)
[39] 第二話 九頁目[粒子案](2013/05/10 20:51)
[40] 第二話 十頁目[粒子案](2013/05/10 20:51)
[41] 第二話 十一頁目[粒子案](2013/05/10 20:51)
[42] 閑話 赤毛猫の一日[粒子案](2013/05/11 22:13)
[43] 第三話 一頁目[粒子案](2013/05/11 22:13)
[44] 第三話 二頁目[粒子案](2013/05/11 22:13)
[45] 第三話 三頁目[粒子案](2013/05/11 22:14)
[46] 第三話 四頁目[粒子案](2013/05/11 22:14)
[47] 第三話 五頁目[粒子案](2013/05/11 22:14)
[48] 第三話 六頁目[粒子案](2013/05/11 22:15)
[49] 第三話 七頁目[粒子案](2013/05/11 22:15)
[50] 第三話 八頁目[粒子案](2013/05/11 22:15)
[51] 第三話 九頁目[粒子案](2013/05/11 22:16)
[52] 第三話 十頁目[粒子案](2013/05/11 22:16)
[53] 第三話 十一頁目[粒子案](2013/05/11 22:16)
[54] 第三話 蛇足[粒子案](2013/05/11 22:17)
[55] 閑話 乙女と野獣[粒子案](2013/05/11 22:17)
[56] 第四話 一頁目[粒子案](2013/05/12 21:10)
[57] 第四話 二頁目[粒子案](2013/05/12 21:11)
[58] 第四話 三頁目[粒子案](2013/05/12 21:11)
[59] 第四話 四頁目[粒子案](2013/05/12 21:11)
[60] 第四話 五頁目[粒子案](2013/05/12 21:12)
[61] 第四話 六頁目[粒子案](2013/05/12 21:12)
[62] 第四話 七頁目[粒子案](2013/05/12 21:12)
[63] 第四話 八頁目[粒子案](2013/05/12 21:13)
[64] 第四話 九頁目[粒子案](2013/05/12 21:13)
[65] 第四話 十頁目[粒子案](2013/05/12 21:13)
[66] 第四話 十一頁目[粒子案](2013/05/12 21:14)
[67] 閑話 ツェルニに死す![粒子案](2013/05/13 20:47)
[68] 閑話 ニーナの勉強会その一[粒子案](2013/05/13 20:48)
[69] 閑話 ニーナの勉強会その二[粒子案](2013/05/13 20:48)
[70] 戦慄! 女子寮の朝[粒子案](2013/05/13 20:48)
[71] 第五話 一頁目[粒子案](2013/05/14 22:07)
[72] 第五話 二頁目[粒子案](2013/05/14 22:07)
[73] 第五話 三頁目[粒子案](2013/05/14 22:07)
[74] 第五話 四頁目[粒子案](2013/05/14 22:08)
[75] 第五話 五頁目[粒子案](2013/05/14 22:08)
[76] 第五話 六頁目[粒子案](2013/05/14 22:08)
[77] 第五話 七頁目[粒子案](2013/05/14 22:09)
[78] 第五話 八頁目[粒子案](2013/05/14 22:09)
[79] 第五話 九頁目[粒子案](2013/05/14 22:09)
[80] 閑話 第五話の後始末[粒子案](2013/05/14 22:10)
[81] 閑話 第一次食料大戦[粒子案](2013/05/15 22:17)
[82] 第六話 一頁目[粒子案](2013/05/15 22:18)
[83] 第六話 二頁目[粒子案](2013/05/15 22:18)
[84] 第六話 三頁目[粒子案](2013/05/15 22:19)
[85] 閑話 第二次食料大戦[粒子案](2013/05/15 22:19)
[86] 第六話 四頁目[粒子案](2013/05/15 22:19)
[87] 第六話 五頁目[粒子案](2013/05/15 22:20)
[88] 第六話 六頁目[粒子案](2013/05/15 22:20)
[89] 大惨事食べ物大戦[粒子案](2013/05/15 22:21)
[90] 閑話 サイハーデンの戦士達[粒子案](2013/05/16 20:13)
[91] 第七話 一頁目[粒子案](2013/05/16 20:14)
[92] 第七話 二頁目[粒子案](2013/05/16 20:14)
[93] 第七話 三頁目[粒子案](2013/05/16 20:14)
[94] 第七話 四頁目[粒子案](2013/05/16 20:15)
[95] 第七話 五頁目[粒子案](2013/05/16 20:15)
[96] 第八話 一頁目[粒子案](2013/05/17 22:06)
[97] 第八話 二頁目 [粒子案](2013/05/17 22:07)
[98] 第八話 三頁目[粒子案](2013/05/17 22:07)
[99] 第八話 四頁目[粒子案](2013/05/17 22:07)
[100] 第八話 五頁目[粒子案](2013/05/17 22:07)
[101] 第八話 六頁目[粒子案](2013/05/17 22:08)
[102] 第八話 七頁目[粒子案](2013/05/17 22:08)
[103] 第九話 一頁目[粒子案](2013/08/01 21:49)
[104] 第九話 二頁目[粒子案](2013/08/07 19:43)
[105] 第九話 三頁目[粒子案](2013/08/14 21:09)
[106] 第九話 四頁目[粒子案](2013/08/28 19:06)
[107] 第九話 五頁目[粒子案](2013/09/04 20:10)
[108] 第九話 六頁目[粒子案](2013/09/11 18:37)
[109] 第九話 七頁目[粒子案](2013/09/11 18:38)
[110] 閑話 槍衾がやってくる 前編[粒子案](2013/10/02 21:14)
[111] 閑話 槍衾がやってくる 後編[粒子案](2013/10/02 21:15)
[112] 閑話 ヴァーサス[粒子案](2014/02/05 16:12)
[113] 閑話 最悪の日[粒子案](2014/02/05 16:13)
[114] 第十話 一頁目[粒子案](2014/04/30 13:59)
[115] 第十話 二頁目[粒子案](2014/05/07 21:52)
[116] 第十話 三頁目[粒子案](2014/05/14 12:50)
[117] 閑話 ヴァーサスその2[粒子案](2014/05/28 22:30)
[118] 閑話 渚のエトセトラ[粒子案](2014/07/23 13:53)
[119] 第十話 四頁目[粒子案](2014/12/03 13:57)
[120] 第十話 五頁目[粒子案](2014/12/10 16:40)
[121] 第十話 六頁目[粒子案](2014/12/17 14:04)
[122] 第十話 七頁目[粒子案](2014/12/24 14:04)
[123] 第十話 八頁目[粒子案](2014/12/31 15:37)
[124] 第十話 九頁目[粒子案](2015/01/07 13:14)
[125] 第十話 十頁目[粒子案](2015/01/14 15:44)
[126] 第十話 十一頁目[粒子案](2015/01/21 18:13)
[127] 第十一話 一頁目[粒子案](2015/12/23 14:54)
[128] 第十一話 二頁目[粒子案](2015/12/23 14:54)
[129] 第十一話 三頁目[粒子案](2015/12/23 14:55)
[130] 第十一話 四頁目[粒子案](2015/12/23 14:55)
[131] 第十一話 五頁目[粒子案](2015/12/23 14:55)
[132] 第十一話 六頁目[粒子案](2015/12/23 14:56)
[133] エピローグなど[粒子案](2015/12/30 21:36)
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[14064] 閑話 最悪の日
Name: 粒子案◆a2a463f2 ID:ec6509b1 前を表示する / 次を表示する
Date: 2014/02/05 16:13




 突然ではあるのだが、レイフォンはただ今現在、地獄のただ中に放り込まれていた。
 天剣抜きで老性体二期とやり合った時に比べてさえ、遙かに過酷な地獄に放り込まれていると断言できる。
 そう。レイフォンにとって最も忌むべき行事であるテストが間近になったために、勉強という戦場へと駆り出されているのだ。
 いや。ウォリアス先生の授業は続いているから地獄が過酷になったと、そう表現すべきかも知れないが、問題はまだ有る。
 勉強そのものが地獄だというのには違いないが、その事実は地獄の半分でしかないのだ。
 そう。最も大きな問題なのは、何時もレイフォンを助けてくれていたウォリアスが、勉強を教える側へと、つまり敵となって目の前に立ちはだかっているからだ。
 いや。これも日常の地獄であった。
 本題に入ろう。
 本題というのは、逃げるという選択肢は最初から存在していないと言う事実だ。
 そう。リーリンとフェリが後ろに控えている状況で、逃げるなどと言う選択肢が存在できるわけがないのだ。
 流石ウォリアスだと評価して良いかも知れない。

「さて、基本的なところから始めようか」
「お、お願いします」
「そう堅くなるなよ。お前さんは本来頭が良いんだから」
「ぼくが?」
「レイフォンが!!」

 驚きである。
 慌てて振り返り、レイフォンの認識が正しいかどうかを確認する。
 リーリンとフェリも驚いているところを見ると、レイフォンの頭が悪いというところは、全世界共通の認識である。
 だと言うのに、ウォリアスは頭が良いと言っているのだ。

「勘違いしちゃ困るが、頭が良いのとテストの成績がよいのは別問題だからな」
「そうなんだ」
「そうなんだよ」

 その言葉を聞いて少し安心する。
 だが、厳然として問題は存在し続けている。
 テストの成績がよいのと頭の良いのが別問題だとしたら、レイフォンはこれからどうすればよいのか分からない。

「身体を使う事とおおむね同じ理屈が、頭を使う事にも言えるんだ」
「そ、そうなの?」
「いくら天剣授受者だって、なんの訓練もせずに強くなったりしないだろ」
「それは、まあ、そうだけど」
「それと同じ理屈で、頭も使っている内に良くなって行くんだよ。レイフォンは身体と剄の制御が上手いんだから、少し改良するだけで十分に使えるようになるさ」
「そ、そうなんだ」
「ああ。向き不向きの問題はあるけれど、赤点取る事はなくなると思う」

 確かに、殆どの剄技を見ただけで再現できるという才能を持ったレイフォンだとは言え、鋼糸や化錬剄などの特殊な技はかなりの努力をしなければ会得する事が出来なかった。
 それと同じ事をもう一度やる事になるのかと思うと、かなり気が重いが、それでも、これから先、延々とウォリアス先生の特別講義を受け続けるよりは、遙かにマシだとそう自分を納得させる。
 だが、それでも問題が有る。

「僕って、頭良いのかな?」
「普通に使う意味ではかなり悪いと思うけれど、少し改良すれば使えるようにはなるさ」
「そ、そうなんだ」
「ああ。と言う事で始めるぞ」

 かなりの難題だろうと言う事は理解している。
 その証拠に、ウォリアスの視線が恐ろしい程細く鋭くなっている。

「先に言っておくけれど、人間の脳は一秒間に百兆個の命令を出していると言われている」
「ちょう?」
「億の一万倍」
「え、っと」

 リンテンスの操る鋼糸が億を超えているという噂はある。
 そのリンテンスが一万人で攻めてくるところを想像してしまった。
 勝てるはずはない。
 一秒と持たずに殺される事こそが現実であり、おそらくは慈悲なのだとそう結論付ける。
 いや。百万人のリンテンスが襲いかかってくるのだ。
 絶望を感じる暇さえ存在していない。

「ただし」
「う、うん?」
「百兆回じゃない」
「うん?」

 何が違うのかを考える。
 百万人のリンテンスに細切れにされる以外に、何処か違うところがあるのだろうかと考える。

「一億の道があれば、そこを通る命令は一秒間に百万回になる」
「・・・・・・?」

 さっぱり訳が分からない。
 だが、よくよく話の大元を思い出してみると、リンテンスが百万人で襲いかかってくると言う話ではなかったはずだ。
 脳が百兆個の命令を出していると言う事で。

「僕の脳も百兆個なの?」
「個人差はあるだろうけれど、そんなに大きくはないはずだよ。大体、脳の殆どは生命維持に使われていると言われているから」
「へ?」

 生命維持と言われてもぴんと来ない。
 それを認識しているらしいウォリアスが言葉を放とうとしたが、それを途中で止める。
 そして考える事五秒。

「ああ。考えないでも呼吸したりお腹が減ったりするだろ」
「それは当然じゃない?」

 どこの誰だって普通にやっている事である。
 レイフォンのその認識を披露したのだが、ウォリアスの反応は激烈だった。
 一瞬にして場の空気が凍り付き、リーリンとフェリが一歩後ずさる気配を感じられた。

「愚か者め」

 そしてこの瞬間、レイフォンの背中に冷たい汗が流れた。
 入学直後、メイシェンの働いている喫茶店へ出掛けた時、食べ物の話題から延々と蘊蓄を聞いた時に匹敵する程の、冷たい汗が背中を流れ落ちる。
 丸々一晩、人類と食事について語られたあの体験はレイフォンの中でトラウマとなっている。
 だが、目的を忘れないのがウォリアスの最も特出すべき特徴であった。

「・・・・・。細かい話は抜きにするけれど、脳の一部に血糖値を相対的に感じる場所があってな、その場所が正常に働いていると腹が減るんだが、間違って働くと物が食べられなくなったり食べ続けたりという、摂食障害になるんだ」
「そ、そうなんだ」
「ああ。大雑把に言うとそうなってる」

 かなり、恐ろしく途中経過を端折っている事は不満そうなウォリアスの表情一つからでも十分に理解できる。
 本当は、もっと詳しく、それこそ人類発祥に至る瞬間にまで遡って語りたいのだろう事は容易に想像できる。
 それを、ここまで短い言葉に圧縮してくれたというのは、当然レイフォンの試験勉強という目的を達成するためだ。
 試験勉強に感謝する日が来ようとは思わなかったが、それでも事実としてウォリアスの蘊蓄話を聞かずに済んだのは喜ばしい事だ。
 だが、現実は更に過酷だった。

「まあ、それは後々の話として本題に戻ろう。今までは単純に記憶したり計算するだけだったけれど、これからは頭を効率よく使う方法を覚えるから、かなり大変な事になるけれど、レイフォンだったらきっと大丈夫さ」
「た、他人事になっていませんか?」
「教えるのは僕だからね。他人事じゃないよ。楽しみにしているけれどね」
「たのしいんですか!!」
「ああ。僕が培ってきた頭を効率よく使う方法を、まだ誰も手を入れていないレイフォンという個体に対して使う。ゾクゾクしてくるよ」

 冷や汗が再び流れてきた。
 まるで、レイフォンを使った人体実験を楽しみにしているように見えるウォリアスから逃げ出したいが、そんな事は出来ないのだ。
 生け贄を哀れむ視線が、背中に二つ刺さっているから。

「ある意味、僕こそ学園都市だと言う事も出来る。誰かに持っている情報とそれを効率よく使う方法を伝授する。ツェルニに来て本当に良かったよ」
「は、はははははははは」

 ここで理解した。
 ウォリアスという人間は、天剣授受者と基本的に同じ人間なのだと。
 武芸の強さに偏っているか、それとも、知識の収集に偏っているかの違いしか無いのだと。
 何処まで行っても、おかしな人間と関わる事しかできないレイフォンは、ほんの少しだけ自分の生まれを呪ったのだった。
 
 
 
 
 
 ウォリアスの特訓を受けたレイフォンは、わずか三十分という時間で撃破されてしまった。
 現在は、熱暴走をしている脳を冷やすべく濡らしたタオルなどを頭の上に乗せている。

「情けない」
「そう?」
「情けないと思わないの?」
「全く、これっぽっちも」

 つい先ほどまで、怪しげな妖気を漂わせていたウォリアスだが、レイフォンが活動できなくなった瞬間に平常運転へと復帰していた。
 この切り替えの速さは異常だと思うのだが、問題はリーリンの認識とウォリアスのそれとにかなりのギャップがあると言う事だ。

「誰だって慣れない事をすれば短時間でギブアップしてしまうよ」
「それはそうだろうけれど」

 理屈としては理解できているのだ。だが、それでも納得していないリーリンも確実に存在する。
 そもそも、レイフォンの頭が悪くないと認識しているところからして、決定的に違っていると思うのだ。

「そうだね。これ投げるから受け取って」

 リーリンの疑問を理解したウォリアスは、全く意味不明だが使いかけの消しゴムを掌で弄びつつ、投げる仕草を繰り返す。
 意味不明である事を、隣でお菓子をつまんでいるフェリと視線を合わせる事で確認する。
 どうでも良いが、最近のフェリは常に何か食べているような気がしてならない。それでも、体型が変わらないという事実が存在している以上、リーリンに何かを言う権利はない。
 視線をウォリアスに戻すと、軽い動作で消しゴムが宙に放り上げられた。
 それを、両掌を広げてキャッチするリーリン。
 運動が苦手だが、これくらいはどうと言う事はない。

「今の一連の動作だけれど、簡単に解説すると、消しゴムという馴染み深い物体の質量を脳はきちんと認識しているんだ」
「それは、まあ」
「でだ。その消しゴムが宙を飛んでいるところを目が捉えてその情報を脳へと送る」
「うん」

 ここまでは何の問題も無い。
 出来るならば、ピーナッツ事件のような惨事は避けて欲しいところだが、その辺はウォリアスもきちんと理解しているようで話が進む。

「僕が投げた動作や飛んでいる速度から加えられたエネルギーを大雑把に予測するんだ。そのエネルギーでどんな軌跡を描くかを予測して、その着地点付近に手を出して捕まえる」
「うん」

 エネルギーなんて物を予測しているとは思えないが、確かに経験に基づいて着地点へ手を出した。
 何度でも言うが、運動が苦手なリーリンにだってこのくらいは出来る。

「武芸者は、この運動予測が無茶苦茶に得意なんだ。だから、汚染獣だろうと人間だろうと、構えから放たれた攻撃の威力を想像できる。レイフォンの場合は剄の流れも考慮しているから、その予測精度は極めて高いわけだね」

 そう言われても、リーリンは武芸者ではないのできちんと理解できたかは分からない。
 だが、思い返してみれば、ある程度年齢が行った後のレイフォンは、確実に身体の使い方が上手かった。
 それが、意識していないところでの能力だと言われたのならば、納得する以外にない。

「それで本題なんだけれど」
「元々脳の構造にはそんなに違いはないんだ。処理の問題も生命維持に比べれば大したことはない。問題なのは使い方をきちんと理解して体得しているかどうかだね」
「そこなのね」
「そ。そこを何とかすれば、天才的な閃きとかはないにせよ、赤点を取らなくて済むくらいにはなるはず」

 言われて見れば、ウォリアスがレイフォンに勉強を教え始めたのはツェルニ到着直後からだった。
 小学生が解くような問題から始めて、やっとこさツェルニ基準に足がかかろうかというところである。
 こんなにゆっくりしていて大丈夫なのかと不安に思っていたが、頭の使い方を覚えさせるという立ち位置から見てみると、間違いだとは言えないかも知れない。
 断言できないところがかなり痛いが。

「基本的な事は覚えさせたし、計算問題をやらせて脳の基本的な使い方も覚えさせた。後は応用と物を考える時のとっかかりを覚えれば、それ程苦労はしないと思うよ」

 ウォリアスはそう太鼓判を押してくれたのだが、試験はもう目と鼻の先に迫っているのだ。
 のんびりしていて良いのかという疑問も出てくる。

「まあ、今回のテストには間に合わないよ」
「間に合わないの!!」

 試験勉強だと言う事で応援に来たのだが、それはレイフォンを拘束するための口実だった事が判明した。
 流石悪逆非道な知将だとその評価を高くした。
 いや。どちらかと言うとウォリアスは参謀だろうか?

「本来十年かかる仕事を短時間でやろうとしているんだ。しかも、頭が固くなり出した年齢でだからね。僕の見立てでは、卒業までに目標を達成できたら御の字。追試は覚悟しておいてもらおうか」
「・・・・・・・・・・・・」

 理解した。
 リーリンが目の前を見ているのに対して、ウォリアスはレイフォンが卒業する頃を見ているのだと。
 だからこそ無理をさせないで、追試で時間が取られる事を覚悟の上で、日程やペースを配分しているのだと。
 そしてツェルニでやる事が増えた事を理解もしていた。
 レイフォンに頭を使う癖を付けさせるという、この共同作業を完遂するという難事業だ。
 目的地は遙か彼方にあり、そこまでの道のりは厳しいが、それでも力強い相棒がいるのだったらきっとたどり着ける。

「つまり、私はここに来てお菓子を食べていればそれで良いんですね」
「・・・・・・。太りますよ?」
「・・・・・・・・・・・・・」

 無言のフェリに蹴られるウォリアスを眺めつつ、ほんの少しだけこれからの道筋に暗雲が見えてしまったリーリンだった。
 
 
 
 
 
 合計四回レイフォンは熱暴走で冷却期間を必要とした。
 そして五回目となった今は、昼食の休憩を兼ねて徹底的な冷却を行っている最中だ。
 リーリンの目が冷たさを越えて、痛々しい物を見るそれになっている事をレイフォンはまだ知らないのかも知れないが、問題はそこではない。

「そう言えば、暫く前に戦略と戦術について解説し損ねたね」
「・・・・。覚えていたんだ」
「うん。やっと分かりやすそうな例えを思いつけたんだ」

 これは悪魔の宣戦布告だ。
 レイフォンという人質がいる以上、リーリンに逃げ場はない。
 そしてフェリにも逃げるという選択肢は存在していない。
 ロス家の食事はリーリンやウォリアスに支配されてしまっているから。
 逃げてしまったら、二度と作ってもらえないかも知れないのだ。頑張ってこの危機を乗り越えるしか方法はない。

「お手柔らかにね」
「大丈夫。リーリンにも分かるように考えたから。ただし、あまり正確じゃない事は理解しておいて欲しいな」
「それはかまわないわ。正確で難しいのは授業だけで十分よ」
「助かるよ」

 助かるよと言いつつ、ウォリアスの瞳はこれ以上ないくらいに細められ、そして何よりも、獲物を捕らえた肉食獣のようにきらめいていた。
 危険極まりない状況である。

「政治的な決断で、これからは外食を控えて家でご飯を作る事にしたとして」
「うん?」
「まずは料理を作る場所、台所を何とかしなければならないよね?」
「まあね」

 台所のないところで料理を作る事は出来るだろうが、それは猛烈に効率の悪い作業となる。
 あるいは、焚き火で肉を焼くだけとか言う単純な料理しかできなくなってしまう。
 ニーナだったらそれで十分だろうが、リーリンやウォリアスでは明らかに不満の種となるだろう。

「コンロの口が一つしかないところで、まな板を置く場所もないような台所で妥協するか、それとも、コンロの口が四つあってオーブンも備え付けのがあるような本格的なところにするか」
「私なら本格的なところね。家賃が安ければ」
「普通はそうなるね。で、まあ、それは本題じゃないから置いておくとして」
「うん?」
「台所が決まったら、そこに置く冷蔵庫や鍋、包丁なんかを揃えなきゃならないよね?」
「台所だけじゃ料理は出来ないもん、当然よね。食器とかもここに入る訳よね」

 なんだかんだ言いつつ、料理ショーのノリで相手をしているリーリンに尊敬の眼差しを送りつつ、レイフォンの様子を観察する。
 完全に死んでいるようでぴくりとも動かない。

「それで冷蔵庫や鍋、包丁なんか道具を揃えるのを当面環境戦略と呼ぶ事にするんだけれど」
「環境を整えるというそのまんまの意味ね」
「で、環境を整えたら次にやる事は調味料を揃えたり食材の備蓄を決めたりする事だよね?」
「お米とか小麦粉とか、もっと言えばレトルト食品とかなんやかんやね」
「短期間で使う肉や魚野菜や果物もこの辺に入るわけだね」
「そうそう。冷蔵庫の中が空っぽだと料理は出来ない物ね」
「よく使う材料や調味料を備蓄しておく事を状況戦略と呼ぶ事にするよ」
「うんうん」

 言葉は難しいが、料理をしている人間にしてみれば、通常の作業なのだろう事は十分に理解できる。
 フェリ自身は料理をしないのであまり理解しているとは言えない。

「戦術的勝利で戦略的敗北を補えないというのは、おおよそ環境戦略の辺りの話だね」
「と言うと?」
「コンロが一つと小さな冷蔵庫しかないのに、フルコースとか大勢に食事とか無理でしょう?」
「小さな台所でそれは相当無理ね」
「そ。この場合、大は小を兼ねるんだよ。例えば僕ん所よりもロス家の台所の方が使いやすいのはおおよそ環境戦略の責任だね」
「フェリ先輩のところは良いわよねぇ。家も負けていないとは思うけれど」

 確かにフェリの今住んでいるところは、二人しかいないにもかかわらず豪華な設備が整っている。今年に入るまでお湯を沸かす以外に使わなかった事が申し訳ない程の充実ぶりだ。
 それに引き替え、リーリンの住んでいる寮は大人数が共同生活をする事を前提に作られているので、フェリのところ以上に充実した設備が存在し、更にセリナやリーリンが積極的に料理をして使っているという状況だ。
 この辺の話は十分に分かると思う。

「でだね、用意した環境と状況を最大限使うために献立を考えるのが戦術だね」
「無計画に料理を作ると余計な買い物が増えて無駄も出る物ね」
「そ。それを避けるためにあるのが戦術で、戦術に沿って料理をするのが戦闘。結果として料理が出来上がるけれど、それが戦果というわけだね。指揮官が料理人と言う事になるかな?」
「成る程、分かりやすいような気がしてきたわ」

 分かったと断言できないのか、あえてしないのか分からないが、実はフェリも似たような状況である。
 感覚的に理解できていると思うが、それを応用する事が出来るかどうは全く未知数だ。

「そしてここからが本題」
「なになに?」
「ここにレイフォン・アルセイフという摩訶不思議な機材が存在しています」
「熱出して使い物にならないけれどね!!」
「今はね。でもこれはとても重要な機材です」
「どう使うの?」
「この機材。食材や調味料を入れて暫くほったらかしにしておくと、あら不思議。一段階以上上質な製品として出てきます!!」
「おお!! それはお得ね!!」

 段々通販番組のノリになって来ているのだが、二人は気が付いているのだろうか?
 気が付いていて止められないのだろうか?

「しかもこの機材!! なんと!! 恐るべき機能を備えつつ非常識な程の格安!!」
「これは詐欺だわ!! 生まれながらに非常識であるとしか形容の方法がないわ!!」

 リーリンの台詞を聞いたらしい機材が、涙を流している事を知っているのだろうかという疑問を覚えつつ、黙って続きを待つ。
 レイフォンの不幸よりもフェリの娯楽が優先されるのだ。

「以前言っていた、レイフォンを戦略的に使うという意味が何となく理解できたと思うけれど、リーリンは分かったかな?」
「ええ!! 十分すぎる程に分かったわ!! 何しろ、同じ料理人が同じ設備や道具を使って作ったとしても、食材や調味料が上質ならそれだけで美味しい料理になる物ね!!」
「その通りだよリーリン!!」

 なにやら教育番組か感動巨編にも見えるがこのまま進んでしまって良いのだろうかという疑問も浮かんでくる。
 最終的には終わるまで何もしないが。

「つまり!! ツェルニという家にとってレイフォンというのはまさに魔法の機材なのさ!!」
「素敵!! 一家に一台是非とも欲しい機材だわ!!」
「リーリン!! 残念だけれどこれは一つしかないんだよ!!」
「そんな!! そんな事ってあり得ないわ!! なんで一つしか用意できなかったのよ!!」
「これは偶然に生まれた機材なんだよ!! だから今はツェルニにしかないんだ!!」
「なんてこと!! 世界中がお金を出して買いたがるはずなのに!! 一つしかないなんて犯罪よ!!」

 ここまで来て、冷却が完全に終わったらしいレイフォンが逃走を図ろうとしたが、逢えなく襟首を捕まれて捕獲されてしまった。
 二人掛かりで。
 もちろん、フェリは何もしていない。

「でだね。実はもう一つツェルニには奥の手があるんだ」
「なになに? もしかしてウォリアス?」
「残念でした。僕は効率よく食材を使えるように献立を考える人。作る人じゃないんだ」
「じゃあ、どんな奥の手があるの?」
「味の素さ!!」

 そう言いつつ、何故かポケットから味の素の瓶を取り出すウォリアス。
 何時も持ち歩いているのだろうか?

「え、えっと? それってどういう?」
「ふっふっふふふふ」

 不気味に笑うウォリアスの手のが蓋を開け、レイフォンの頭に味の素の瓶を持って行く。
 つまりそれは、フェリとリーリンでレイフォンを食べて良いと言う事。
 思わず喉が鳴ってしまった。

「あ、あのぉ」
「まあ、これは冗談」

 とても残念だが、ウォリアスは味の素の瓶を懐にしまってしまった。
 何故そんな物を持ち歩いているのかとかも疑問だが、ここで取り出した理由も少し疑問だ。

「これを一振りすれば、たいがいの物が美味しくなってしまうと言う脅威の化合物、グルタミン酸ナトリウム」
「か、かごうぶつ」
「化学物質と言い換えても良いけれど」
「それは嫌」

 化合物とか化学物質とか言われると、何故かとても危険な物に思えてしまうのは不思議だが、実際にはそんな事はない。
 そもそも、ビタミンも蛋白質も糖質だって化学物質や化合物でしかないのだから。

「出来上がった料理にこれをかけてしまっているのがシン隊長達だね」
「ああ。あれはそう言う位置づけなのね」
「そ。学園都市にはあった方がよい調味料だね」
「学園都市には?」
「そ。学園都市には」

 今までのノリから少し冷静になり、真剣味を帯びるウォリアスの視線がリーリンを捉える。
 これからは少し真面目な話だというサインだろう。

「実を言うと、学園都市には戦術から下で何とかする以外の選択肢がないんだ」
「え、えっと?」
「例えばだね。政治的決断で騎士型の戦い方をすると決めるよね?」
「グレンダンでは流行らないけれどね」
「あそこの戦場は過酷だからね」

 騎士型の戦いという物は確かに存在する。
 被害を恐れずに打撃力重視の突撃をして勝つという物だ。
 汚染獣戦が頻繁に有るような都市では、犠牲を顧みなければすぐに滅んでしまうだろうから、グレンダンで流行らないのは理解できるし、人を育てるための学園都市でやらないのにも十分な説得力がある。

「学園都市では、基本的に六年で人がいなくなってしまうよね?」
「そうなっているわね」
「経験者がいないと騎士型は被害が大きいだけの戦い方になるんだよ。その経験者、熟練した指揮官がいない以上学園都市ではやらない方が良いよね?」
「自殺行為だって事?」
「そ」

 フェリの予測は間違っていなかったようだ。
 理由は少し違っていたが、そんなに外れてはいない。

「それとね。騎士型の戦いに適した流派というのをある程度納めた生徒が来ないと、打撃力にも問題が出てくる」
「来る者は拒まずの学園都市でそれは難しいわよね」
「そ。あえて言うならば、この設備と道具と食材を使って料理を作れと指定されているようなものだね」
「ああ。つまり、ある物を最大限有効活用する必要がある訳ね」
「そ。そのために必要なのが戦術の構築と味の素だね。ツェルニには魔法の機材があるからある意味勝って当然だね」
「成る程」

 ここまで来れば話はおおよそ理解できる。
 専門用語を使わずに説明したウォリアスの努力に敬意を表したくなる程だ。
 過去のツェルニは、最も重要な戦術の構築や味の素をほったらかしにしていた。
 今年になってからは、十分な質と量を確保する事が出来たので勝つ事が出来た。
 無論レイフォンの影の協力は当然あったが、もしかしたらウォリアスが入学しただけで良かったかも知れない。

「さて、ここまで話をしておいてなんだけれど、政治的決断をしようが戦略的環境を整えようが、戦術的勝利を収めようが、ある一つの要素に全てが縛られるんだけれど、リーリンはそれがなんだか分かる?」
「そんなの当然分かるわよ!!」
「レイフォンは?」
「あ、あう」

 不意の展開に頭が付いて行けないようだ。
 実を言うと、展開には付いて行けているのだが重要な要素という物は予測できていない。
 だが、それはとても簡単な要素だった。

「お金でしょう?」
「そ。お金で買えない物も確かに有るけれど、買える物が多いのも事実だよ」
「お金が無ければ十分な広さの台所を持った家にも住めないし、きちんとした機材を揃える事も出来ない!!」
「それどころか、賞味期限ギリギリの割引商品しか変えない人生だって待っているんだ!!」
「人生はお金によって支配されていると言っても過言ではないのね!!」
「少しのお金と少しの幸せこそが基本だけれど、制御できる規模の財政能力は必要だね!!」

 これには納得する。
 ロス家の事を考えれば素直に理解できるのだ。
 お金が有るからこそ、フェリは何不自由することなく育ち、キッチンに行けば何時だってお菓子をもらう事が出来た。
 全てが、では無いにせよ、それは重要な要素なのだ。
 と、ここでいきなり空気が変わった。

「さて」
「レイフォン」
「あ、あう」
「「第六ラウンドに突入しようか」」
「あぁぁうぅぅ」

 影の功労者たるレイフォンには、まだまだ地獄が続くようだ。
 それを認識しつつもフェリは、何となく満足感を得たのだった。
 
 
 
 
 
  解説!!
 一秒間に百兆個。
これは暫く前に見たドキュメンタリーでの知識。脳をテーマとしていたために興味本位で見ていたので、実はあまり明確な記憶がないので、知ったかぶりは危険極まりないでしょう。

 レイフォンは頭が良い。
汚染獣戦などの描写を見ると、きちんと頭を使って戦っている事が多いようなので、本来レイフォンは頭が良いがその使い方が悪いと判断。
それを頑張って修正すれば赤点は免れるはず。

 政治と戦略と戦術について。
大きく間違っていないと思うが、所詮は読書量が多いだけの凡人の浅知恵なので、正確であるはずはない。
話の種にするのにはよいだろうが、専門的な知識を持った人と議論するのは大変危険なので止めておく事をお勧めする。



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