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No.14064の一覧
[0] 完結 復活の時(鋼殻のレギオスif)[粒子案](2016/01/21 09:22)
[1] 第一話 一頁目[粒子案](2013/05/08 21:06)
[2] 第一話 二頁目[粒子案](2013/05/08 21:06)
[3] 第一話 三頁目[粒子案](2013/05/08 21:07)
[4] 第一話 四頁目[粒子案](2013/05/08 21:07)
[5] 第一話 五頁目[粒子案](2013/05/08 21:07)
[6] 第一話 六頁目[粒子案](2013/05/08 21:08)
[7] 第一話 七頁目[粒子案](2013/05/08 21:08)
[8] 第一話 八頁目[粒子案](2013/05/08 21:08)
[9] 第一話 九頁目[粒子案](2013/05/08 21:09)
[10] 第一話 十頁目[粒子案](2013/05/08 21:09)
[11] 第一話 十一頁目[粒子案](2013/05/08 21:10)
[12] 第一話 十二頁目[粒子案](2013/05/08 21:10)
[13] 閑話 一頁目[粒子案](2013/05/09 22:03)
[14] 閑話 二頁目[粒子案](2013/05/09 22:03)
[15] 閑話 三頁目[粒子案](2013/05/09 22:04)
[16] 閑話 四頁目[粒子案](2013/05/09 22:04)
[17] 第二話 一頁目[粒子案](2013/05/10 20:48)
[18] 第二話 二頁目[粒子案](2013/05/10 20:48)
[19] 第二話 三頁目[粒子案](2013/05/10 20:49)
[24] 第二話 四頁目[粒子案](2013/05/10 20:49)
[34] 第二話 五頁目[粒子案](2013/05/10 20:49)
[35] 第二話 六頁目[粒子案](2013/05/10 20:50)
[36] 第二話 七頁目[粒子案](2013/05/10 20:50)
[38] 第二話 八頁目[粒子案](2013/05/10 20:50)
[39] 第二話 九頁目[粒子案](2013/05/10 20:51)
[40] 第二話 十頁目[粒子案](2013/05/10 20:51)
[41] 第二話 十一頁目[粒子案](2013/05/10 20:51)
[42] 閑話 赤毛猫の一日[粒子案](2013/05/11 22:13)
[43] 第三話 一頁目[粒子案](2013/05/11 22:13)
[44] 第三話 二頁目[粒子案](2013/05/11 22:13)
[45] 第三話 三頁目[粒子案](2013/05/11 22:14)
[46] 第三話 四頁目[粒子案](2013/05/11 22:14)
[47] 第三話 五頁目[粒子案](2013/05/11 22:14)
[48] 第三話 六頁目[粒子案](2013/05/11 22:15)
[49] 第三話 七頁目[粒子案](2013/05/11 22:15)
[50] 第三話 八頁目[粒子案](2013/05/11 22:15)
[51] 第三話 九頁目[粒子案](2013/05/11 22:16)
[52] 第三話 十頁目[粒子案](2013/05/11 22:16)
[53] 第三話 十一頁目[粒子案](2013/05/11 22:16)
[54] 第三話 蛇足[粒子案](2013/05/11 22:17)
[55] 閑話 乙女と野獣[粒子案](2013/05/11 22:17)
[56] 第四話 一頁目[粒子案](2013/05/12 21:10)
[57] 第四話 二頁目[粒子案](2013/05/12 21:11)
[58] 第四話 三頁目[粒子案](2013/05/12 21:11)
[59] 第四話 四頁目[粒子案](2013/05/12 21:11)
[60] 第四話 五頁目[粒子案](2013/05/12 21:12)
[61] 第四話 六頁目[粒子案](2013/05/12 21:12)
[62] 第四話 七頁目[粒子案](2013/05/12 21:12)
[63] 第四話 八頁目[粒子案](2013/05/12 21:13)
[64] 第四話 九頁目[粒子案](2013/05/12 21:13)
[65] 第四話 十頁目[粒子案](2013/05/12 21:13)
[66] 第四話 十一頁目[粒子案](2013/05/12 21:14)
[67] 閑話 ツェルニに死す![粒子案](2013/05/13 20:47)
[68] 閑話 ニーナの勉強会その一[粒子案](2013/05/13 20:48)
[69] 閑話 ニーナの勉強会その二[粒子案](2013/05/13 20:48)
[70] 戦慄! 女子寮の朝[粒子案](2013/05/13 20:48)
[71] 第五話 一頁目[粒子案](2013/05/14 22:07)
[72] 第五話 二頁目[粒子案](2013/05/14 22:07)
[73] 第五話 三頁目[粒子案](2013/05/14 22:07)
[74] 第五話 四頁目[粒子案](2013/05/14 22:08)
[75] 第五話 五頁目[粒子案](2013/05/14 22:08)
[76] 第五話 六頁目[粒子案](2013/05/14 22:08)
[77] 第五話 七頁目[粒子案](2013/05/14 22:09)
[78] 第五話 八頁目[粒子案](2013/05/14 22:09)
[79] 第五話 九頁目[粒子案](2013/05/14 22:09)
[80] 閑話 第五話の後始末[粒子案](2013/05/14 22:10)
[81] 閑話 第一次食料大戦[粒子案](2013/05/15 22:17)
[82] 第六話 一頁目[粒子案](2013/05/15 22:18)
[83] 第六話 二頁目[粒子案](2013/05/15 22:18)
[84] 第六話 三頁目[粒子案](2013/05/15 22:19)
[85] 閑話 第二次食料大戦[粒子案](2013/05/15 22:19)
[86] 第六話 四頁目[粒子案](2013/05/15 22:19)
[87] 第六話 五頁目[粒子案](2013/05/15 22:20)
[88] 第六話 六頁目[粒子案](2013/05/15 22:20)
[89] 大惨事食べ物大戦[粒子案](2013/05/15 22:21)
[90] 閑話 サイハーデンの戦士達[粒子案](2013/05/16 20:13)
[91] 第七話 一頁目[粒子案](2013/05/16 20:14)
[92] 第七話 二頁目[粒子案](2013/05/16 20:14)
[93] 第七話 三頁目[粒子案](2013/05/16 20:14)
[94] 第七話 四頁目[粒子案](2013/05/16 20:15)
[95] 第七話 五頁目[粒子案](2013/05/16 20:15)
[96] 第八話 一頁目[粒子案](2013/05/17 22:06)
[97] 第八話 二頁目 [粒子案](2013/05/17 22:07)
[98] 第八話 三頁目[粒子案](2013/05/17 22:07)
[99] 第八話 四頁目[粒子案](2013/05/17 22:07)
[100] 第八話 五頁目[粒子案](2013/05/17 22:07)
[101] 第八話 六頁目[粒子案](2013/05/17 22:08)
[102] 第八話 七頁目[粒子案](2013/05/17 22:08)
[103] 第九話 一頁目[粒子案](2013/08/01 21:49)
[104] 第九話 二頁目[粒子案](2013/08/07 19:43)
[105] 第九話 三頁目[粒子案](2013/08/14 21:09)
[106] 第九話 四頁目[粒子案](2013/08/28 19:06)
[107] 第九話 五頁目[粒子案](2013/09/04 20:10)
[108] 第九話 六頁目[粒子案](2013/09/11 18:37)
[109] 第九話 七頁目[粒子案](2013/09/11 18:38)
[110] 閑話 槍衾がやってくる 前編[粒子案](2013/10/02 21:14)
[111] 閑話 槍衾がやってくる 後編[粒子案](2013/10/02 21:15)
[112] 閑話 ヴァーサス[粒子案](2014/02/05 16:12)
[113] 閑話 最悪の日[粒子案](2014/02/05 16:13)
[114] 第十話 一頁目[粒子案](2014/04/30 13:59)
[115] 第十話 二頁目[粒子案](2014/05/07 21:52)
[116] 第十話 三頁目[粒子案](2014/05/14 12:50)
[117] 閑話 ヴァーサスその2[粒子案](2014/05/28 22:30)
[118] 閑話 渚のエトセトラ[粒子案](2014/07/23 13:53)
[119] 第十話 四頁目[粒子案](2014/12/03 13:57)
[120] 第十話 五頁目[粒子案](2014/12/10 16:40)
[121] 第十話 六頁目[粒子案](2014/12/17 14:04)
[122] 第十話 七頁目[粒子案](2014/12/24 14:04)
[123] 第十話 八頁目[粒子案](2014/12/31 15:37)
[124] 第十話 九頁目[粒子案](2015/01/07 13:14)
[125] 第十話 十頁目[粒子案](2015/01/14 15:44)
[126] 第十話 十一頁目[粒子案](2015/01/21 18:13)
[127] 第十一話 一頁目[粒子案](2015/12/23 14:54)
[128] 第十一話 二頁目[粒子案](2015/12/23 14:54)
[129] 第十一話 三頁目[粒子案](2015/12/23 14:55)
[130] 第十一話 四頁目[粒子案](2015/12/23 14:55)
[131] 第十一話 五頁目[粒子案](2015/12/23 14:55)
[132] 第十一話 六頁目[粒子案](2015/12/23 14:56)
[133] エピローグなど[粒子案](2015/12/30 21:36)
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[14064] 第九話 一頁目
Name: 粒子案◆a2a463f2 ID:ec6509b1 前を表示する / 次を表示する
Date: 2013/08/01 21:49


 ナルキの目の前には、当然の事ではあるのだが、実質的にツェルニを運営しているお偉いさん達が並んで座っていた。
 大きめの会議室を貸しきりにして、机と椅子を並べただけの質素な状況だが、それでも、かなり凄い眺めである事には違いない。
 とは言え、見知った顔ばかりであり、緊張して話す事が出来ないなどと言う事には、なっていないのがせめてもの救いだろうか。
 いや。マイアスで体験したような、知り合いが全くいないという状況に比べれば遙かにましである。
 生徒会長であるカリアンと、その相棒であり武芸長であるヴァンゼ。
 老性体戦の際に顔合わせした事のある各科の長が並び、更にレイフォンやイージェも関係者と言う事でこの場に出席しているが、実のところナルキよりもレイフォンの方が緊張しているように見えるのは、ある意味当然の事かも知れない。
 何しろ、戦闘が絡まない時のレイフォンは恐ろしく小心者なのだ。
 まあ、それは今はどうでも良い。
 何故こんな会議が開かれたかと問われたのならば、話は非常に簡単であり、そして当然の物であった。
 廃貴族の影響を受けたツェルニが暴走して、汚染獣の群れに突っ込み続け、最終的には人間の言葉を話すという想像した事もない恐るべき何かと遭遇してしまったのだ。
 その異常事態の過程で、廃貴族に取り憑かれて疾走していたナルキの事情聴取が行われるのは当然の事であり、そして必然でもあった。
 まあ、ミィフィやメイシェン、リーリンと言った人達には既に話しているから、話すための要領を心得ているので、それ程苦労をするという訳でないことは救いなのだろうとも思う。
 それでも、同じような話を何度もするのは流石にきつい事なのも事実である。
 と言う事で、一回で全てが終わるようにとカリアンが取りはからってくれたのだ。
 そのお陰で、偉い人に取り囲まれるという精神的な負担を強いられているので、どちらがよいかと聞かれると困るのだが。

「それで、何処に行っていたんだね? ツェルニに居なかった事はほぼ間違いないし、空中からいきなり湧いて出てきたというのも確認されているのだが」

 出席者がそろった事を確認したカリアンの質問で会議は始まった。
 そして、ナルキに関して言えば、最も重要な質問が最初にされるのは当然の事。
 だが、カリアンの質問に明確な答えを返す事が出来るかどうか、ナルキに自信はない。
 なぜならば、ナルキ自身に何が起こったのかをきちんと理解していないからだ。
 そう。放浪バスを使わずに他の都市に移動するなどと言う事実を、どう自分に説明したらよいかとか、色々と困ったことがあるのだ。
 だが、答えられるところはきちんと答えるつもりでいるのも事実だし、そして、この質問には答える事が出来る。

「学園都市マイアスと言うところにいました」

 自信満々に答えたのだが、当然の事、室内には微妙な空気が流れてしまっている。
 これですぐに話を進められる人間がいたら、それは恐らく、想像を絶するおかしな人生を歩んできた事の証明となるだろう。
 放浪バスを使わずに都市間を移動する事は不可能なはずだというのに、それをやったのだとナルキが宣言したのだから。
 しかも、行き先で起こっていたのは、電子精霊を巡るおかしな戦いだったのだ。
 周りにいるお偉いさん達がお互いの視線で、誰も理解していない事を、確認するのを待つ間に、ナルキは自分の体験した事を再確認する。
 そうでもしないと、確かに体験したのだと断言できないような、そんなあやふやな気持ちになったからだ。
 だが、確かにナルキはマイアスに行き、そしてお面を付けた集団と戦い、更にグレンダンの天剣授受者と遭遇してしまったのだ。
 ナルキが確認しおえるのと時を同じくして、小さな咳払いと共にカリアンが次の質問を発する。

「ああ。信じられない事なんだが、マイアスで君は何を見てきたんだね?」
「そうですね。色々な事がありましたよ」

 結局のところ、体験した事を出来るだけ事細かに話す以外の選択肢など存在していないのだ。
 そして、全てを話し終えるのに二時間ほどがかかってしまった。
 途中、サヴァリスの話が出たところで、念のためにレイフォンへの確認が行われた。
 人相風体、そして発言の内容まで、出来うる限り細かく話して、それがサヴァリス本人であるらしい事がレイフォンによって確認された。
 更に念のために、ゴルネオまで呼び出されて決定的な確認も行われた。
 ヨルテム出身のナルキが、グレンダンの天剣授受者などを直接知っているわけがないことは当然である。
 レイフォンのように都市を出た場合や、リヴァースのように、外から来ない限りはナルキが直接知る事は考えられない。
 つまり、ナルキ自身が不安に思うような非常識な体験は、間違いなく起こったのだと本人も含めて確認された。

「・・・。信じられないような話だが、天剣授受者を見たという事実は動かしがたいようだね」

 サヴァリスが何故グレンダンを出ているかについては謎だが、事実として存在している以上しかたがない。
 原因よりも事実の方が遙かに重要なのだ。
 そう。このまま行くと、サヴァリスがツェルニにやって来てしまう。
 あるいは、その危険性が恐ろしいまでに高い。
 いや。別れ際にツェルニに行くというようなことを言っていたではないか。
 任務の内容によってはナルキの危機は回避出来るが、残念な事に何故グレンダンを出たかについては全く謎なのである以上、最も危険と思われる状況を想定しておかなければならないのだ。
 解決する方法など存在していないが、何とかしなければならないのだ。
 と言う事で、元の天剣授受者に視線を向ける。
 助けてくれと。

「え、えっと。サヴァリスさんが来たら、僕が真っ先に逃げ出したいよ」
「だよな」

 だが、当然の事ではあるのだが、レイフォンからは色よい返事は返ってこなかった。
 あんな恐ろしい思考方法をする超絶の武芸者と関わり合いになりたくないのは、当然の事であるのだ。
 ここで再び、サヴァリスの目的についての疑問が浮上してくる。
 天剣授受者とは、グレンダンの誇る最強の武芸者であると同時に、都市を守るための最後の砦であるはずだ。
 そんな天剣授受者を、何故グレンダンは都市外へと出したのか。

「・・・・・・・・・・・・・・」

 嫌な汗が背中を流れる。
 サヴァリスは、もしかしたら、ナルキの中にいる廃貴族に用事があるのではないだろうかと。
 それならば、ナルキのような、どうと言う事のない武芸者に熱烈なラブコールを送っていた理由にも説明が付く。
 そして、その廃貴族だが、原因は不明だが、今は完全にその活動を停止しているが、何時また暴れ出すか分からないという危険な代物である事には間違いない。
 出来れば、サリンバンに熨斗を付けて差し上げたいところではあるのだが、残念な事に、ナルキには廃貴族をどうやって身体の外へと追い出すかが分からない。
 最悪の場合、ナルキがグレンダンまで行かなければならなくなるかも知れない。
 天剣授受者のいる、グレンダンにである。
 そして想像する。
 頬を染めたサヴァリスにお姫様だっこされて、傭兵団の放浪バスへと連れて行かれるナルキを。
 新婚旅行の先は、当然の事、最も危険で、最も安全な都市グレンダン。
 待ち受けるのは、天剣授受者の死をもたらす祝いの席。

「う、うわ」

 想像するだけで寿命が縮む思いだ。
 出来る事ならば、サヴァリスの用事は廃貴族とは無関係であって欲しいところだ。
 ナルキが、自分の将来についてとても恐ろしい予測を打ち立てている間にも、会議はろくな成果を出さずに終了した。
 元々が、異常事態の連続だった以上、常識人しか居ないツェルニ上層部にどうこうする事など出来るはずはなかったのだ。
 だが、これは一度はやっておかなければならない、ある意味儀式のような物である事も理解している。
 これを抜きにして、ナルキやカリアンは日常へと復帰する事は出来ないのだ。
 出来れば、これで全てが丸く収まってくれると嬉しい。
 出席者の全てがそう願った事が、ほぼ唯一の成果だったのかも知れない。

「ああ。ゲルニ君」
「はい?」

 会議が終わったので、退室しようとしたナルキを呼び止めたのは、かなり真剣な表情をしたカリアンだった。
 そして、生徒会長からの提案は、あまり心地よい物ではなかったのだが、必要であることも分かったのでナルキは了承する以外に道はなかった。
 
 
 
 途中から参加した会議が無事に終わった事を確認して、ゴルネオはどうしてももう一度確認しておかなければならないと、そう自分を奮い立たせる。
 ナルキの証言に間違いがないのだったら、マイアスにいたのだ。
 グレンダンの天剣授受者であり、自らの兄であるサヴァリスが。
 どんな目的で都市を出たかは、知りたくない。
 いや。目的はおそらく廃貴族であろう事は察している。
 ルッケンスの家系に連なる者として、初代の現実とは思えない話は耳になじんでいるし、そもそもツェルニ自身が廃貴族の暴走に巻き込まれてしまっていたのだ。
 その前提に立ってみれば、廃貴族という狂った電子精霊が存在していると言う事と、取り憑かれた武芸者が超絶の力を発揮する事はおおよそ信じている。
 そして、その廃貴族を確保するためにこそサリンバン教導傭兵団は結成され、現在ツェルニに居るのだ。
 そこまでは良いだろう。
 だが、既に超絶の力を持つサヴァリスが、何故廃貴族などを求めてやってくる必要などがあるというのだろう? そう言う疑問があるのも事実なのだ。

「ナルキ・ゲルニ」
「はい?」

 その疑問を解決できるかどうかは分からないが、それでもゴルネオは訪ねなければならない。
 近くを歩いていたレイフォンを小脇に抱え、何故か顔色の悪いナルキを捕まえて質問を発する。
 本当に、マイアスにいたのはサヴァリスだったのだろうかと。
 いや。答えは出ているのだ。
 ナルキの証言は全てでは無いにせよ、ゴルネオの記憶にあるサヴァリスと一致している以上、確かめる必要はないのだろうが、それでも訪ねなければならないのだ。

「ああ。念のためと言うよりも、違っていてくれると嬉しいと思っているのだが」
「サヴァリスと名乗っていました」
「出来れば、何かの間違いであって欲しいのだが」
「天剣授受者だというような事を言っていました」
「他人のそら似とか、もしかしたら、違う人間がそう名乗っているだけとか」
「明らかにレイフォンと同格の実力を持っていましたし、私の感じた命の危険は並大抵の物ではありませんでした」
「・・・・・・・・・・・。済まないな、時間を取らせてしまって」
「いえ。気持ちは分かりますし、間違っていてくれたらどんなに良いだろうとも思います」

 全ての希望が打ち砕かれたが、それでもゴルネオは伝えなければならない事がある。
 廃貴族について知っているだけの事を、元天剣授受者と、天剣授受者に追われる哀れな武芸者に伝えておかなければならないのだ。
 それだけが、サヴァリスによって色々と大変な事となる二人に、ゴルネオができる唯一の事だから。
 思えば、実の兄との確執にさえならない関係が、ガハルドとの関係を深める切っ掛けとなり、ツェルニに来る遠因となった。
 レイフォンに対して、思うところがない訳ではないにせよ、現状を受け入れなければ前へは進めないのだ。
 そんな内心を出来るだけ出さないように話を進め、そして終了させたところで、ふと思いだした事があった。

「そう言えば、各小隊長の紅白試合があるのだったか」
「ああ。そう言えばそんなイベントもありましたね。先輩も参加するんですよね?」
「ああ。俺は白組の主将をする事になっている。後はその時にくじ引きで決まるそうだ」

 もうすぐ武芸大会が始まるはずなので、最終的に各小隊にどんな割り当てをするかを決めなければならない。
 その参考にするために、各小隊長での試合をする事になっているのだが、意味があるかと問われると、ゴルネオ自身はあまりないと判断している。
 汚染獣との連戦の中で、お互いの事は良く分かっている。
 それは小隊長同士の間でも言える事で、どんな場面でどんな判断を下すかは、おおよそ予測できてしまっているし、本来小隊対抗戦はそのためにもある物だったはずだ。
 まあ、今年に限って言えば、半分以上エンターテイメントとかしているが。
 そう。未だにゴルネオの小脇に抱えられている元天剣授受者の影響で。

「頑張って下さい。草葉の陰から応援していますから」
「いや。まだ生きているだろうナルキ・ゲルニ」

 そう突っ込んだゴルネオだったが、残念な事に、この先も生き続ける事が出来るかどうかは、著しく疑問である。
 もし、本当にサヴァリスが廃貴族を確保するために動いているのだとすれば、確実にナルキは身の危険にさらされる。

「咆剄殺で惨たらしい死体になっている初夜の光景とか、想像してるんですよ私」
「・・・・。ああ」

 初夜という単語が何故出てきたか理解できないが、それでも、危険性としては十分以上に高いと判断できる。
 そう判断したゴルネオは、レイフォンを解放しつつも試合会場へ向かって歩き始めた。
 時間があまりないためだろうが、ナルキの事情聴取からすぐに試合が行われる事となってしまっているのだ。
 日を改めてくれれば良かったのにと、そんな愚痴っぽい事を考えつつも身体は勝手に動く。
 
 
 
 小隊長達の紅白試合を眺めつつも、ナルキの胸にあるのは常にサヴァリスの事だけである。
 もちろん恋い焦がれる乙女チックな意味合いではなく、血潮が飛び交い命が風前の灯火となるような意味での事だ。
 シンとニーナの対決を網膜はきちんと映しつつ、それを脳で処理しているという実感は全く存在していない。
 ナルキが知っているニーナよりも確実に強くなっている事とか、シンの技の切れが恐ろしいほどに鋭くなっているとか言う情報も、全ては意識の表面を滑り落ちてしまって行くだけだ。
 だが、そんな現実からの避難も一瞬で打ち破られた。

「うわ!!」

 突如として、会場を轟音が支配したのだ。
 それだけではない。
 紫色の光によって視力も奪われた。

「な、なんだ? サヴァリスさんの襲撃か!!」

 思わず腰を浮かせて錬金鋼に手をかける。
 とは言えナルキに出来る事と言えば、苦痛を少なくするために自刃する事だけ。
 いや。油断していたら自刃さえ出来ないかも知れない。それだけの実力差が天剣授受者との間にはあるのだ。
 だが、当然だが、今回はナルキの早とちりというか、混乱状況での誤判断だった。
 その証拠に、優しく肩におかれたレイフォンの手は非常に落ち着いている。
 そう。サヴァリスが来たら、間違いなく殺し合いをする事となっているレイフォンが、落ち着き払っているのだから、今回は違うとやっとの事で身体と心が理解できた。

「隊長の雷迅だよ。まだ不完全みたいだけれど何とか使えたみたいだね」
「あ? ああ。隊長さんも強くなってるんだな」

 心臓が全力疾走をしているのを押さえつつ、浮いたままだった腰を席へと下ろす。
 この程度の事で取り乱していては、とても日常生活は送れないのだ。
 だが、そんなナルキの考えを吹き飛ばすような台詞が、レイフォンの口から零れ落ちる。

「雷迅を隊長に教えたのは僕だけれど」
「ああ?」
「僕は何処でそれを覚えたんだ?」
「・・・・・・」

 レイフォンは武芸莫迦である以上、武芸という特定分野に関しては常人が達する事の出来ない境地にいる。
 一度見た技を自分の技として再現するという特殊能力を持ち、全力の十分の一でも剄を注ぎ込めば通常の錬金鋼は破壊されてしまうと言う、圧倒的な剄量をも持っている。
 そんなレイフォンが、何処で技を見たかを忘れるなどと言う事はおおよそ考えられない。
 それはつまり、常識的な経路で覚えたのではないと言う事を意味していて。

「・・・・・・・・・・・。考えるのはウッチンに任せよう、レイとん」
「・・・・。そうしよう」

 二人の認識が一致した頃になって、紅白試合はヴァンゼの率いる紅組の勝利で幕を閉じたのだった。
 
 
 
 会場を出たレイフォン達だったが、この後の予定という物は特に決まっていない。
 とは言え、やる事がない、と言う訳ではない。
 連続した汚染獣との戦闘で明らかになってしまった実力を見込まれ、小隊に属していない武芸科生徒からやたらとラブコールがかかっているのだ。
 もちろん、全てに応える事など出来はしないために、各小隊が鍛錬の指導をしたりしているのだが、それでもレイフォンに直接習いたいという人は結構いるのだ。
 まあ、もうすぐ武芸大会という切羽詰まった状況では、どう足掻いたとしても基礎的な事に終始してしまうから、問題という問題はないのだが。

「そう言えば、ウッチンはどうしてるんだ? 最近顔見ないけれど」
「ウォリアスなら、報酬がどうのって言っていたから、きっと図書館に籠城してるんだと思うよ」
「ああ」

 ナルキの疑問に答えるついでに、ツェルニの暴走が終わってから、殆ど会っていない友人の事を思い出した。
 メイシェンの事とかで散々頼ってきておいて、酷い話ではあるのだが、連絡が来たのが一度だけであり、実際にはこの十日ほど会っていないという状況では仕方が無い。
 更に、居ると思われるのが図書館では、レイフォンから会いに行くなどと言う芸当はとても出来ないのだ。
 だが、不幸はとことんレイフォンを愛してしまっているようで、向こうからすり寄ってきた。

「と、噂をすればウッチンだが」
「・・・。なんだか一杯荷物があるね」

 そう。視線の先にいるのは間違いなく細目の極悪非道武芸者であり、台車に乗せた荷物と共にほくほく顔でこちらに向かってやって来ているのを確認出来る。
 何を運んでいるかは、ウォリアスの性格と状況からおおよそ間違いない。

「レイフォン発見!!」
「う、うわぁぁ!!」
「ナルキも発見!!」
「きゃああ!!」

 何故か、とても良い笑顔と共に指さされてしまった。
 しかもその指先は、クイクイと曲がってレイフォンとナルキを地獄へと誘っている。
 そして、色々な恩を持ったレイフォンに逃げるという選択肢は存在していない。
 ナルキは完全にとばっちりだが、地獄の旅に道連れは必要である。
 そして、なけなしの勇気を振り絞りつつ、隣を歩いていたナルキを道連れに、死に神に匹敵する知識収集マシーンへと近付く。
 そして確認する。
 台車に乗せられているのは、かなり古い本であると。
 埃を被り、なにやら変色している紙と、そこから発散される独特の、甘い香りがレイフォンの背中に冷や汗を流させる。
 今夜は悪夢を見る事が確定した。

「これ、どうしたんだ? 分かるような気はするが念のために。盗んだとかじゃないよな?」
「違うよぉ? きっちんと生徒会長から許可をもらって、三百冊のデータを電子化して持って行って良いって」

 警官としての義務感からか、腰が引けた状態だったがナルキが質問を発し、ウォリアスがそれに答えるのを聞きながらレイフォンは思う。
 三百冊の本を電子データにしたら、どんな料理が出来るのだろうかと。
 現実逃避である。
 ウォリアスが変に上機嫌である事も、この逃避に拍車をかけているのだが、現実は更に突き進む。

「レイフォンの所に暫く置いておいてくれないかな? 家に置いておくと日常生活が出来なくなるってリーリンが五月蠅そうだから」
「あ、あう」

 これだけ大量の本を自室に持ち込んだウォリアスがどうなるか、それはもはや考えるまでもない。
 全てを電子データに変換して、完璧に読破するまで部屋から出てくる事はないだろう。
 これから武芸大会があるという重要な時期に、戦略・戦術研究室もそうだが、是非ともウォリアスの悪逆非道ぶりが必要なのだ。
 それを抜きにしても、日常生活が出来なくなる人間をリーリンが放っておく事など考えられない。
 そして何よりも、世話になっている以上レイフォンに拒否は許されないのだ。
 と言う事で、当分の間悪夢に襲われる事が確定したのだった。
 
 
 
 三百冊というと、多いのか少ないのかナルキには判断できない数字だったが、実際に運んでみるとその質量と体積に圧倒されてしまった。
 胸の中にいる廃貴族は昼寝でもしているのか、こんな時は全くもって働いてくれないために、活剄を総動員してもかなりの疲労を覚えると言うほどには、凄まじい質量と体積だった。
 普段ミィフィやメイシェンが買ってくる本は、殆どが文庫サイズなのでそのつもりで居たのも大きいだろう。

「あ、あう」
「ああ!! これを全て僕の物に出来ると思うだけで、胸がときめいてきてしまうよ!!」

 だが、今回運んだ本の半分ほどは、見るからに威圧感と存在感のあるハードカバーだった。
 残り半分も大きな本ばかりで、冊数の割には場所を取る事この上ない。
 本が近くに有ると悪夢を見てしまうと言うレイフォンにとって、既にこの部屋は汚染獣との戦場以上の地獄となってしまっているし、実はナルキもかなりきつい物を感じているのだ。
 文庫サイズが三百冊だったら、ここまでの衝撃は受けなかっただろうが、ハードカバーだと話が全く違うのだ。
 既に土気色になっているレイフォンの顔を眺めつつ、ナルキも速くここから脱出しようと心に誓った。
 戦闘を前にしたサヴァリスなみの変態から距離を置きたいという気持ちも当然のように有る。
 知らないだけで、この世界にはこんな変態が大量に生息しているのではないかと、そんな疑問も浮かんできたが、兎に角今は逃げ出す事を最優先に考えなければならない。
 そのはずだったのだが、突如部屋の扉がノックされ、返事をする前に爆発的な勢いでそれが開かれた。
 そして現れたのは、ナルキが疾走する前と微妙に印象の違うリーリン。
 何処がどうとはっきり言うことは出来ないのだが、何処かが、あるいは何かが違う気がする。
 そのリーリンが、部屋の中を見回して、莫大な量になっている本を無視してウォリアスをロックオン。

「もしかしてウォリアス? ここに住みたいとか言い出す訳?」

 流石というかなんというか、ウォリアスという危険極まりない生き物の生態をきちんと把握していたようだ。だからこそ、どこからか情報を得て、このタイミングでここへとやってくる事が出来たのだろう。
 レイフォンの部屋に置いて予防線を張るところまできちんと予測しての事だったら、それはもの凄く的確な読みと言える。
 だが、今回この行動は無駄に終わるのだ。それも予測済みかも知れないが。

「そ。ここに住めば僕は幸せになれるんだ」

 だが、ウォリアスから出てきた言葉は、ナルキの考えをあっさりと否定するものだった。
 本末転倒どころの話では無い。
 折角ナルキとレイフォンが大量の本をこの部屋に運び込んだというのに、それが全て無駄になろうとしているのだ。
 それを予測したリーリンが来なかったのならば、間違いなく現実の物となっていただろう。
 道で会った時と言っていることが違うが、欲望にまみれた人間の言動ほどあやふやな物はないので、こちらの方が本音だろうと判断する。

「ナルキとレイフォン?」
「は、はひ?」
「な、なにかな?」

 そんな現状を認識しているのかどうか、酷く冷静なリーリンが二人を呼ぶ。
 その瞳に宿るのは、とても冷たく鋭い光だ。
 そして、その瞳と同じ声が命令を発した。

「女子寮へこの荷物を運んで頂戴」
「か、かしこまりましたリーリン様」
「謹んで承らせて頂きます」

 レイフォンと二人で、これ以上無いくらいに恭しく力仕事を請け負う。
 これほど恐ろしい生き物は居ないと、武芸者の本能が絶叫しているのだ。
 だが、それに引き替え、ウォリアスは平然と三人を眺めつつ何か考えている。
 普通に考えるのだったら、幸せを奪われるならば抵抗するはずだというのに、そんな兆候は全く伺えない。
 だが、次の瞬間何か決意を固めたように大きく頷いた。
 そして一言。

「ならば仕方が無い。僕は女の子になろう」

 意味を理解出来なかった。
 いや。理解したくない。
 それはリーリンも同じだった様子で、硬直したままウォリアスという変な生き物に視線を固定している。
 髪が長いし、どちらかと言えば細身であるので、女の子として通用するかも知れないが、それでもかなりの整形手術が必要なのは間違いない。
 どれくらいの費用がかかるだろうかと現実逃避気味に考えること十五秒。

「・・・。あのさ」

 三人の視線の、集中砲火を浴びる事十五秒、なにやら少し疲れたウォリアスがけだるげに頬を搔く。
 何か訴えているように見えるが、それを理解する事をナルキの精神は拒絶している。

「冗談なんだから突っ込んで欲しいんだけど」
「「「え?」」」

 今度は、驚きで身動きが取れなくなってしまった。
 そもそもウォリアスという生き物は、情報を集めるためだったら自分の身を犠牲にすることさえ惜しまなかったはずだ。
 ならば、男を捨てることさえ平気だとそう直感したのだが、少し違ったようだ。

「命くらいだったら要らないけれど、男を捨てるのは少し考え物だよ」
「そ、そうなのか?」

 男という生き物は、もしかしたら、自分の命よりもそちらの方を大事にするのだろうかと、この部屋にいるもう一人の男へと視線を向ける。
 困った表情と視線を返されただけだった。
 どうやら、命を捨てるのも男を捨てるのも嫌と言う事らしい。
 レイフォンの反応の方が遙かに理解できるが、問題はウォリアスの方だ。

「ここから一日三冊持って行って、自分の部屋で読むよ。大体百日で終わる計算だね」

 どの辺からが冗談で、どの辺からが本気なのか分からないウォリアスの提案は、リーリンによって了承され、レイフォンの部屋には百日の間威圧的な本が居続けることとなったのだった。
 幾つかの未解決の問題を残したままだったが。


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