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No.14058の一覧
[0] 化物語SS こよみハーレム 【完結】[鬱川](2010/01/07 20:45)
[1] こよみハーレム1 (神原編)[鬱川](2009/11/19 11:21)
[2] こよみハーレム2 (神原編)[鬱川](2009/11/20 12:57)
[3] こよみハーレム3 (戦場ヶ原編)[鬱川](2009/11/25 10:29)
[4] こよみハーレム4 (戦場ヶ原編)[鬱川](2009/11/25 23:14)
[5] こよみハーレム5 (間話) [鬱川](2009/11/27 17:00)
[6] こよみハーレム6 (千石編)[鬱川](2009/12/01 13:39)
[7] こよみハーレム7 (千石編)[鬱川](2009/12/04 12:13)
[8] こよみハーレム8 (八九寺編)[鬱川](2009/12/08 12:15)
[9] こよみハーレム9 (八九寺編)[鬱川](2009/12/10 12:36)
[10] こよみハーレム10 (火憐・月火編)[鬱川](2009/12/14 22:38)
[11] こよみハーレム11 (火憐・月火編)[鬱川](2009/12/16 12:08)
[12] こよみハーレム12 (忍編)[鬱川](2009/12/19 23:15)
[13] こよみハーレム13 (忍編)[鬱川](2009/12/21 17:25)
[14] こよみハーレム14 (羽川編)[鬱川](2009/12/25 22:35)
[15] こよみハーレム15 (羽川編)[鬱川](2009/12/29 18:32)
[16] こよみハーレム16 (後日談前編)[鬱川](2010/01/06 12:11)
[17] こよみハーレム17 (後日談後編)[鬱川](2010/01/07 15:08)
[18] こよみハーレム18 (外編)[鬱川](2010/07/30 17:31)
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[14058] こよみハーレム6 (千石編)
Name: 鬱川◆64b94883 ID:6c756c65 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/12/01 13:39
011

 羽川さんとのいつもの、楽しい楽しい勉強会を終えて、外に出た僕を待っていたのは、僕の自転車を守るように立っている神原とその横に、もう一人。

 八九寺ではなく、そこにいたのは些か予想外の人物。
 僕の姿を見付けて、降ろした前髪の隙間から僕をチラチラと見つめている少女。千石撫子だった。

「神原。お前やっぱりここにいたのか」
 一緒に図書館に行こうと誘った僕に対し、神原にしては珍しく僕の言葉に従わず、頑なに外で待っていると主張していた神原がここにいるのはまあ、予想出来たことだ。

 何がしたかったのかは皆目見当もつかないが、と言うかつきたくもないようなことをしていたのかも知れないが、それはこの際気にしないでおく、今問題なのはその横にちょこんと立っている女子中学生、千石だ。

 本気で拉致って来たのかも知れない。八九寺ではなく、千石なのは何か意味があるのだろうか。最後とか言っていた癖に。

「こ、暦お兄ちゃん。こんにちは」
 相変わらず小声な上、最初にどもっちゃう慌てた様子で千石は頭を下げてきた。

「よう千石。この間はありがとうな」
 先ずは忍の件の礼を言っておく。キチンと礼を言っておくことは大切だ。
 すると千石はブンブンと大きく首を横に振って、俯くとボソボソと言った。

「結局役に立てなくて、ゴメンなさい」
 ペコリと頭を下げる。こっちが礼を言ったのに、何故か向こうが謝ってくる。これが千石クオリティ。

「いやいや。そんなことはないぞ。本当に助かった。ありがとう」
「忍、ちゃん。暦お兄ちゃんの影の中にいるんだよね?」
 言い辛そうに忍の名を呼び、千石は僕の足下、影を見た。確かに忍は現在ここにいる。多分まだ寝ているか、或いは呼んでも出ては来ないだろう。

「ああ、まあ。そんな感じに落ち着いたよ。忍野もいなくなったし、一人であそこに置いておく訳にも行かないしな」
「忍野さんにも、ちゃんとお礼言いたかったな」

「やめとけ。アイツに決めゼリフを言う機会を与えるだけだ」
「ああ、あのセリフは中々奥が深い言葉だ。私も何か考えておこう。誰に対しても言っただけで私が変態だと分かって貰えるような決めゼリフを……」

「止めろ! お前が熟考した変態ゼリフなんて聞きたくない。そんな真似をしなくても、お前なら行動を見ただけで、変態認定されるから心配するな」
「私は、阿良々木先輩の自転車のサドルを使っていやらしい行為を行える女だ」

「言いやがった。僕の忠告も無視して言いやがった。しかも考えないようにしていたことだったのに。神原! 責任もって僕に新しい自転車のサドルを買って来い!」

「安心しろ。阿良々木先輩、サドルを使ってとは阿良々木先輩が考えているような部位の直接的接触では無く、単純に私が見て、想像して、キスしていただけだ。僅かに濡れているのはそのせいだ」

「どっちでもやだよ。座れねえよ!」
「ふふふ。私のセカンドキスは阿良々木先輩の殿部との間接キスだ」

 予想以上の変態っぷりを見せつけてくれた神原だが、ここまでのやりとりの間、千石が無言であることに気が付いて僕がそちらに目を向けると、千石は顔を下に向けたまま、プルプルと小刻みに震えていた。

 例によって笑いのツボに入ってしまったようだ。
 一日中、僕と神原のやりとりを見ていたら、千石の奴呼吸困難で倒れてしまうのではないだろうか。

 と言うより千石、この会話でそこまで笑うのはおかしいぞ。ここは僕と一緒にドン引きするところだろう。
「それで? 千石はどうしてここにいるんだ? 神原に拉致られたのか?」
「ち、違うよ。撫子は偶然ここを通りがかって、それで」

「うん。私が疲れて阿良々木先輩のサドルに顔を押し付けている時に通りがかって、話し相手になって貰っていたのだ」
 千石の後を引受けるように神原が言った。

 あんまり人の通らない道だから良いけど……いや、千石に見つかっている時点で駄目か。
 またもこの奇妙な独占欲だ。本当に他に奴らに見つかってないんだろうな。見られていたら大変なことになるぞ色々と。

「とにかくだ。阿良々木先輩、これで三人目の攻略キャラは決定したな。まあ、最後にと言った手前でだが、阿良々木先輩は攻略難度の高いキャラから攻略する癖をお持ちのようではあるし、丁度良いかもしれないな」
 戦場ヶ原のことを言っているのか。

「こ、攻略キャラ?」
 神原と僕を交互に見ながら慌てた様子を見せる千石。
「だから神原、僕は別に攻略する気なんて……」

「あ、あの!」
 僕の言葉が千石に掻き消された。なんて珍しい、あの千石が人の話を遮るとは、それほど言いたいことがあるのか。と僕が目を向けると、千石は顔を真っ赤にしたまま、両手で帽子を握りしめ、それを深く被り顔を隠すようにしながら口を開いた。

「良く分からないけど、撫子。暦お兄ちゃんになら、攻略されても良いよ?」
「流石は千石ちゃん。私がラスボスと呼ぶ少女だ。大人しそうに見えて、その実大胆な行動だな」
 恥ずかしそうな千石の横で、神原は何やら感心したように頷いている。

 おい神原。僕の妹キャラを勝手にラスボス認定するな。千石は言葉の通り意味も良く分からないまま、僕に何やら恩義を感じて頷いているだけなんだ。そりゃあ、これが千石じゃなかったらその言葉はもはや告白に近い物だったが、千石はまだ子供なのだ。良く分からないまま言ってるに決まっている。

 そこのところをちゃんと理解し解けよ。と言うテレパシーを送りつつ、神原を睨むように見ると、神原は一度瞬きし、大きく目を開いて僕を見つめたかと思うと、ん? なんて言いながら首を傾げて見せた。

 なんて可愛らしい仕草だ。
 こんな時だけエスパー能力を使わないなんて。

「と、ところで暦お兄ちゃん!」
 場の空気が奇妙な方向に行った時、千石がまたも声を張り上げた。何で千石の奴、今日はこんなに頑張っているんだろう。超が付く内気キャラなのに。

「ん? どうした千石。神原の言ったことなら、気にしなくて良いんだぞ?」
「そ、そうじゃなくて……暦お兄ちゃんは、この後神原さんと用事あるの?」
 神原のことを上目遣いに伺いながら、千石は言う。

 千石、その上目遣いは男には強力な兵器だが、神原相手にもかなりの破壊力を持っているんだ。いらぬ誤解を招くぞ。

「ああ、なるほど。安心しろ千石ちゃん。私はこれから、ちょっと用事があるから行かなくてはならないんだ」
 初耳だ。と言うより明らかな嘘だ。

「おい神原、お前」
「良いんだ。私はこれから用事がある」
 今日は珍しいことが良く続く。千石に続いて神原までもが僕の言葉を遮った。

「じゃ、じゃあ暦お兄ちゃん。これから撫子と一緒に……一緒に……」
 僕との距離を詰めて来る千石。だからその上目遣いは男に対しては無類の攻撃力を発揮するんだ、千石。お前は無意識なのだろうが、僕だから良いようなものの誰にも彼にもそんなことをしてはいけないぞ。

「本当に阿良々木先輩は鈍感だな」
 こんな時だけエスパーになるな。さっきはスルーした癖に。
「一緒に……」

 千石の瞳がグルグルと回り始める。あ、拙いオーバーヒートし掛かっている。これはこちらからフォローしてやらないといけないな。

「千石、お前この後暇なら、僕の息抜きに付き合ってくれよ」
「ふえ? あ、う、うん!」
 目の回転が止まり、代わりに千石は顔を赤くしたまま大きく頷いた。
 どうやら正解出来たようだ。千石はどうやらこの後暇だったのだが、自分から誘うのは恥ずかしくて出来なかったのだ。

 内気レベルの高さは相変わらずだ。
「神原。お前本当に良いのか?」
 相手が神原なら、二人より三人の方が、多分千石的にも良いと思うのだが、僕の問いかけに神原は大きく頷いた。

「勿論だ。私はこの後用事があると言ったではないか。今日は本の発売日なのだ」
 BL本か。
 今出来た理由なのだろう。本当か嘘かは知らないが、実に神原らしい理由だった。

「ではな阿良々木先輩、千石ちゃん。さらばだ」
 何処の時代劇の人物だとばかりに手を持ち上げて挨拶とした神原は、千石曰く宅急動、僕曰く縮地法、本人曰く加速装置を使用して、その場から風のように消え去っていった。

 あのお洒落ジーンズでも、何ら関係はなかったらしい、見事な加速だった。
 去っていく神原の後ろ姿を見つめながら、呆然としていた僕らだったが、やがて僕の方が先に正常状態に戻り、千石を見た。

「よし、じゃあ。行くか千石」
「う、うん。よろしくお願いします」
 遊ぶだけなのに、お願いをされてしまった。

 思い切り緊張しているらしい千石に、僕は軽く息を吐きながら、小さく笑い、さて、どうしようかと、考えるのだった。



012

 神原の話を聞いた後に、自転車に乗るのも気が引けて、僕と千石は自転車は使わずに徒歩で移動を始めた。
 その間、千石はずっと顔を伏せ、下を見つめ続けたままだ。

 もはや会話もままならない。と言った様子だ。
 一体何が彼女をここまでさせるのか、以前、月火ちゃんを交えて三人で遊んでいた頃は向こうからも声を掛けてくれたのに。

 この内気少女は成長と共に内気度まで上がってしまったのだろうか。校門前で僕を待っていてくれたあの時はちゃんと会話出来ていたと言うのに。

「……なあ千石」
「な、何? 暦お兄ちゃん」
 思い切り身体をビクつかせた後、前髪のカーテンの向こう側から、こちらを覗いてくる千石。何故か先程からフラフラと宙を彷徨っていた手が、一緒にビクついて、自分の後ろに回された。

 それはまるで、恋人と手が繋ぎたいけれども、それが出来なくて、何度か様子を伺いつつ、手を近づけているところに声を掛けられて、驚いて手を戻してしまったかのような。そんな動作にも見えたのは、僕の気のせいなのだろうか。

「いや、どっか行きたいところはあるか? そんなにお金は無いから、あまり金の掛かるところは無理だけど」
 僕の言葉に、千石は少しの間、辺りを見回すように首を動かし、考えていたが、やがてまたも前髪のカーテン越しに、上目遣いを駆使して、ポツリと呟いた。

「撫子、植物園が良いな」
「植物園? また、渋い選択だな」
 まあ、千石のことだ。あまり人が多いところは好まないだろうし、植物園というのは、彼女にとって割と良い場所なのかも知れない。

 正直、僕としても、かつてニヒルなキャラ設定時には、植物になりたいと願っていたこともあるほどだし、植物は嫌いじゃないのだが。

「ご、ごめんなさい。つ、つまんないよね」
「いや、良いよ。僕も植物は好きな方だし、千石も好きなのか?」
「う、うん。静かだし人もいないから、い、色々なこと出来るし」

 植物園で出来る色々なこと? はて、一体何があるだろうか。基本的には見る一択、おまけで触るか、嗅ぐ、くらいだと思うのだが。そんな風に思って意識を別の方に飛ばしていると、不意に僕の手に暖かさが触れた。

 目を向けると、千石が僕の手を握っていた、神原のように指一本一本を絡めるのではなく、本当に力も弱く握ると言うよりは、それこそ触れるって感じ。
 その後千石に目を向けると、顔を真っ赤にして、俯いていた。

 うーん。なんて保護欲をそそるんだ。うちの妹ズにも見習わせたもんだ。
 まだまだお兄ちゃんと手を繋いで歩きたい年頃なのだろう。もっともうちの妹連中がやってきても、こんな感動は味わえないのだろうが。
 流石僕の妹たちよりも妹キャラな千石だ。
 となればお兄ちゃんとして、ここでしてやることは一つだ。
 千石の手を一旦離し、僕は自分の方から千石と手を繋いだ。

「こ、暦お兄ちゃん!?」
 ビックリしたように声を上げる千石。顔が真っ赤を通り越して真っ赤っかだ。ああ、本当に可愛いな。

「一応、はぐれないようにな」
 とは言え、大して人通りがある訳でもないのだが、もう少し上手い言い訳を考えるべきだったか。

「う、うん」
 千石が異常に恥ずかしがるものだから、こちらまで少し緊張してしまう。コラコラ阿良々木暦、何を考えている。隣にいるのは僕の妹たちよりも、妹らしい妹キャラ、千石だぞ。
 手、ちっちゃいなー、とか。うわ、肌超ツルツルだ、とか。この暖かさが堪らないな、とか考えてるんじゃねえよ。

 何か変な気分になるじゃないか。他の例えば八九寺や神原など、何も考えなくても勝手にマシンガントークの応酬になる連中と違って、やや口数の少ない千石を相手にすると、どうしても色々と考えてしまう。

 いや、違うんだ千石。僕は決してお前に邪な気持ちを抱いている訳じゃなくてだな。
 とこんな言い訳をテレパシーで送ってみても、残念ながらテレパスではない千石は反応をしてくれなかった。



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