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No.13860の一覧
[0] 俺と彼女の天下布武 (真剣で私に恋しなさい!+オリ主)[鴉天狗](2011/04/15 22:35)
[1] オープニング[鴉天狗](2011/04/17 01:05)
[2] 一日目の邂逅[鴉天狗](2012/05/06 02:33)
[3] 二日目の決闘、前編[鴉天狗](2011/02/10 17:41)
[4] 二日目の決闘、後編[鴉天狗](2009/11/19 02:43)
[5] 二日目の決闘、そして[鴉天狗](2011/02/10 15:51)
[6] 三日目のS組[鴉天狗](2011/02/10 15:59)
[7] 四日目の騒乱、前編[鴉天狗](2011/04/17 01:17)
[8] 四日目の騒乱、中編[鴉天狗](2012/08/23 22:51)
[9] 四日目の騒乱、後編[鴉天狗](2010/08/10 10:34)
[10] 四・五日目の死線、前編[鴉天狗](2012/05/06 02:42)
[11] 四・五日目の死線、後編[鴉天狗](2013/02/17 20:24)
[12] 五日目の終宴[鴉天狗](2011/02/06 01:47)
[13] 祭りの後の日曜日[鴉天狗](2011/02/07 03:16)
[14] 折れない心、前編[鴉天狗](2011/02/10 15:15)
[15] 折れない心、後編[鴉天狗](2011/02/13 09:49)
[16] SFシンフォニー、前編[鴉天狗](2011/02/17 22:10)
[17] SFシンフォニー、中編[鴉天狗](2011/02/19 06:30)
[18] SFシンフォニー、後編[鴉天狗](2011/03/03 14:00)
[19] 犬猫ラプソディー、前編[鴉天狗](2011/04/06 14:50)
[20] 犬猫ラプソディー、中編[鴉天狗](2012/05/06 02:44)
[21] 犬猫ラプソディー、後編[鴉天狗](2012/05/06 02:48)
[22] 嘘真インタールード[鴉天狗](2011/10/10 23:28)
[23] 忠愛セレナーデ、前編[鴉天狗](2011/04/06 14:48)
[24] 忠愛セレナーデ、中編[鴉天狗](2011/03/30 09:38)
[25] 忠愛セレナーデ、後編[鴉天狗](2011/04/06 15:11)
[26] 殺風コンチェルト、前編[鴉天狗](2011/04/15 17:34)
[27] 殺風コンチェルト、中編[鴉天狗](2011/08/04 10:22)
[28] 殺風コンチェルト、後編[鴉天狗](2012/12/16 13:08)
[29] 覚醒ヒロイズム[鴉天狗](2011/08/13 03:55)
[30] 終戦アルフィーネ[鴉天狗](2011/08/19 08:45)
[31] 夢幻フィナーレ[鴉天狗](2011/08/28 23:23)
[32] 幕間・私立川神学園第一学年平常運行中、前編[鴉天狗](2011/08/31 17:39)
[33] 幕間・私立川神学園第一学年平常運行中、中編[鴉天狗](2011/09/03 13:40)
[34] 幕間・私立川神学園第一学年平常運行中、後編[鴉天狗](2011/09/04 21:22)
[35] 開幕・風雲クリス嬢、前編[鴉天狗](2011/09/18 01:12)
[36] 開幕・風雲クリス嬢、中編[鴉天狗](2011/10/06 19:43)
[37] 開幕・風雲クリス嬢、後編 Aパート[鴉天狗](2011/10/10 23:17)
[38] 開幕・風雲クリス嬢、後編 Bパート[鴉天狗](2012/02/09 19:48)
[39] 天使の土曜日、前編[鴉天狗](2011/10/22 23:53)
[40] 天使の土曜日、中編[鴉天狗](2013/11/30 23:55)
[41] 天使の土曜日、後編[鴉天狗](2011/11/26 12:44)
[42] ターニング・ポイント[鴉天狗](2011/12/03 09:56)
[43] Mr.ブシドー×Ms.キシドー、前編[鴉天狗](2012/01/16 20:45)
[44] Mr.ブシドー×Ms.キシドー、中編[鴉天狗](2012/02/08 00:53)
[45] Mr.ブシドー×Ms.キシドー、後編[鴉天狗](2012/02/10 19:28)
[46] 鬼哭の剣、前編[鴉天狗](2012/02/15 01:46)
[47] 鬼哭の剣、後編[鴉天狗](2012/02/26 21:38)
[48] 愚者と魔物と狩人と、前編[鴉天狗](2012/03/04 12:02)
[49] 愚者と魔物と狩人と、中編[鴉天狗](2013/10/20 01:32)
[50] 愚者と魔物と狩人と、後編[鴉天狗](2012/08/19 23:17)
[51] 堀之外合戦、前編[鴉天狗](2012/08/23 23:19)
[52] 堀之外合戦、中編[鴉天狗](2012/08/26 18:10)
[53] 堀之外合戦、後編[鴉天狗](2012/11/13 21:13)
[54] バーニング・ラヴ、前編[鴉天狗](2012/12/16 22:17)
[55] バーニング・ラヴ、後編[鴉天狗](2012/12/16 22:10)
[56] 黒刃のキセキ、前編[鴉天狗](2013/02/17 20:21)
[57] 黒刃のキセキ、中編[鴉天狗](2013/02/22 00:54)
[58] 黒刃のキセキ、後編[鴉天狗](2013/03/04 21:37)
[59] いつか終わる夢、前編[鴉天狗](2013/10/24 00:30)
[60] いつか終わる夢、後編[鴉天狗](2013/10/22 21:13)
[61] 俺と彼女の天下布武、前編[鴉天狗](2013/11/22 13:18)
[62] 俺と彼女の天下布武、中編[鴉天狗](2013/11/02 06:07)
[63] 俺と彼女の天下布武、後編[鴉天狗](2013/11/09 22:51)
[64] アフター・ザ・フェスティバル、前編[鴉天狗](2013/11/23 15:59)
[65] アフター・ザ・フェスティバル、後編[鴉天狗](2013/11/26 00:50)
[66] 川神の空に[鴉天狗](2013/11/30 20:23)
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[13860] SFシンフォニー、前編
Name: 鴉天狗◆4cd74e5d ID:d4775c47 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/02/17 22:10
 四月十三日、火曜日。 

 特に何の事件も波乱もなく朝を迎えた俺は、いつもの如く蘭の用意した朝食を胃袋に流し込み、軽めの鍛錬で身体のコンディションを確認し、周囲に舐められない容貌を保つ為に身支度を整え、そして川神学園へ向けて出発―――する前に、自身の二つ隣の部屋へと立ち寄った。

「むにゃむにゃ……もう食べられにゃいぃ」

「……」

 寝室に足を踏み入れた俺を出迎えてくれてたのは、あまりにもベタ過ぎて思わずツッコミを放棄したくなるような寝言であった。そんなモノをだらしなく開けた口から涎と一緒に垂れ流しているのは、誠に遺憾ながら俺にとっての他人ではない。紆余曲折を経て先週の日曜日からこのボロアパートに棲み付き始めた、理知に富み気品に溢れ清楚且つ貞淑な良家の子女(自己申告)にして、織田信長が直臣第二号。愛称ネコこと明智ねねが、ベッドの上にてニヤニヤと頭の緩い笑顔を浮かべながら爆睡中であった。

「鰤……鯖……鮎……えへへへぇ」

 海中遊泳の夢でも見ているのだろうか。見ればこやつ、掛け布団を向かい側の壁にまで蹴り飛ばすという脅威の寝相の悪さを発揮している。こいつは確実に冬場に不注意で風邪を引くタイプだろうな、いやしかし馬鹿だから大丈夫なのか――などと呆れながら思考していると、従者第一号がきびきびとベッドへと歩み寄った。

「ねねさん。ねねさん、朝ですよ。起きてください、ねねさん」

 耳元で囁きながら、ちみっこい身体をゆっさゆっさと揺さぶる。どう見てもその手付きは俺に対するソレよりも乱暴だった。昨日も同様に起こそうとしたのだが、声を掛けて揺すった程度ではまるで反応を得られず、結局諦めて放置する羽目になったので、蘭の奴も今回から情け容赦は捨てる事にしたのだろう。ねねの頭部がガクガクと縦横無尽に跳ね回るが、しかしそれでも一向に目を覚ます様子はない。どう考えてもあれだけ脳をシェイクされれば問答無用で覚醒するものだろうに、一体全体どういう身体構造をしているのだろうか。なかなか興味深かった。

「ああもう、ねねさんだって学生のハズなのに……場所は知らないですけど、このままじゃどう考えても遅刻確定ですよ!ねねさん!」

「すぴー、くかー。むにゃむにゃ」

 先程よりかなりボリュームを上げて声を掛けるも、返ってくるのは腹立たしいほど安らかな寝息のみ。性格故に暴力的な手段に訴える気にはなれなかったのか、蘭は困り果てた顔で立ち尽くした。

 そんな我が従者どもの情けない姿を傍目に、俺は腕時計を確認する。時間的にそれほどの余裕がある訳でもなし、こんな所で無駄に時間を潰している場合ではない。という訳で、俺は奮闘中の蘭に声を掛けた。

「蘭。往くぞ、莫迦な従者なぞに構っている暇はない」

「う、うぅ……。お言葉ながら、このまま放って行くのはちょっと」

「ふん。それで主が遅刻していては本末転倒よ」

「は、ははっ、承知致しました。まったくもう、帰ったらちゃんとお話ししないと……」

 どことなく黒いオーラを発しながらブツブツと文句を垂れる蘭を引き連れ、部屋を後にする。閉まりゆくドアの隙間から最後に見えたのは、何事も無かったかのように惰眠を貪りながら布団の上で寝返りを打っている馬鹿の姿だった。

 しかしそれにしても、奴は本当に“あの”明智家の御令嬢なのだろうか。一度裏は取ったとは言え、これまでの立ち振る舞いからはまるで信じられない。やはり改めて確認する必要がありそうだ、と割と真剣に思考しながら、俺はアパートを出立した。






 変態の定義とは何だろうか。
 
 一体何を以って人間を変態にカテゴライズすべきなのか。

 どこからどこまでが変態で、どこからどこまでが一般人なのだろうか。

 人力車に乗って登校する金色スーツ着用の九鬼財閥御曹司やら、白粉を顔面に塗りたくって公家のコスプレっぽいものをした歴史教師やらは間違いなくその枠に入るべきだと思うが……、そう、例えば、ロープで結んだタイヤを三つほど後ろに引き摺りながら猛ダッシュしている女子高生がいたとしたら、俺は彼女を変態と呼んでもいいのだろうか。

 多馬大橋、通称変態の橋を渡っている途中で彼女に追い抜かされた直後、俺はそんな事を考えていた。

「ん?」

 ふと既視感のようなものを覚え、俺は首を傾げる。視線の向かう先は前方数十メートル、多馬大橋の終端。ダッシュを終えて休憩中なのか、清清しげな表情で汗を拭きながら、欄干の傍で足を止めている少女。腹の部分にはロープが巻き付けられ、その先は相当重量のありそうなタイヤに繋がっている。朝のトレーニングが一段落、と言った所なのだろう。

 ランニング。鍛錬。努力家。川神学園。……川神。

「ふん。成程な」

「お知り合いですか?主」

「否。一方的に知っているのみ」

 俺の予想が間違っていなければ、間接的とは言えこの織田信長とそれなりに縁のある人物だ。推測を確信へと近付ける為、俺は前方にて休んでいる少女へ向けて足を進める。

 近付くにつれ徐々にはっきりと目に映る、栗色のポニーテールと眩しいブルマが活発な印象を与えるその姿は、事前に集めた情報とも合致していた。これはもはや間違いあるまい。

 川神学園における俺の最大の警戒対象、世界最強たる武神、川神百代―――その妹、川神一子。

 妹とは言っても百代との血の繋がりはなく、義妹である。孤児院出身の彼女が里親を亡くして途方に暮れていた際、百代の意を汲んで川神院が養女として引き取った、という経歴の持ち主だ。当時……あれは確か十年近く前の話だったか、ローカルニュースとして報道された事を覚えている。武道の総本山・川神院が養子を取るということは、ただそれだけで事件として扱われるほどにセンセーショナルな出来事なのだ。

 そして、彼女個人がどういう人物かと言うと。ひたすら明るく素直で、分隔てなく他者に接し、ひたむきで努力家。良くも悪くもアクが強過ぎてともすれば周囲に倦厭されがちな姉とは、正直あまり似ているとは言えない性格である。実際、俺が調べた限りにおいては、彼女は総じて周囲の人間に愛されている様子だった。川神学園においても学年を問わず男子からの人気が高く、姉の存在さえなければ言い寄る男は幾らでもいるだろう、と葵冬馬は語っていた。

 成程。成程成程。この少女が、俺の親友が恋焦がれる、川神一子か。

 常日頃の織田信長ならば一般学生など無視して学園へ向かうところだが、しかし俺は彼女という人間に興味があった。忠勝の件もあるが、それだけではない。忠勝の想いを知るよりも更に以前から俺は川神一子という少女を知り、その存在に結構な興味を抱いていた。だからこそ俺は、足を止めて息を整えている彼女の横を素通りする事はしなかった訳だ。

「くく。精が出るな」

「うわわわ!?」

 おもむろに立ち止まって声を掛けると、彼女はよほど驚いたのか、目を白黒させながら大袈裟に飛び上がった。この調子だと今の今まで俺の存在には気付いていなかったらしい。走って追い抜いた際に間違いなく俺の姿は視界に捉えている筈だが……よほど集中して鍛錬に臨んでいたのか、それともよほどの鈍感なのか。川神の姓を名乗る以上、前者と考えるのが自然か。

「あ、アンタ!2-Sの転入生ね!?」

 少女は素早く俺との距離を取ると、警戒も露にこちらを睨みつける。ぐるる、と威嚇するような唸り声が聞こえた気がした。

「……」

 そんな彼女の様子を観察しながら、俺は思考を巡らせる。誰にでも分け隔てなく接するとは言っても、さすがにその性質は織田信長には適用されなかったようだ。彼女個人にそこまで嫌われるような事をやらかした覚えはないが、しかしまあ学園の一般生徒からしてみれば俺の存在は、例えそこに居るだけでも警戒と恐怖に値するものとなっているのだろう。それでいい。心の底から望む所だ、そうでなくては困る。

「いかにも。もっとも、貴様と顔を合わせた覚えはないが、な。俺の顔も売れたものだ」

「あれだけ派手に決闘を繰り返してたらイヤでも覚えるわ。お姉さまもアンタと戦いたい戦いたいっていつもぼやいてるし」

「お姉さま。……成程、川神百代に義妹がいるとは話に聞いたが、貴様がそうか」

「そうよ、アタシは川神一子!この名前を覚えとくといいわ、今でこそお姉さまはアンタに夢中だけど、いつか私に振り向かせてみせるからね!」

「……」

 禁断の姉妹愛、という言葉が咄嗟に頭に浮かんだ自分をぶん殴ってやりたい。

 ビシィッ!と恐れ知らずにも織田信長に向けて指を差しながら胸を張る少女に、ああこいつはきっと世間で“愛すべき馬鹿”と呼ばれる人種なんだろうなぁと痛感する。ちなみに愛すべきでない馬鹿の例としては、嘆かわしい事に我が従者たる明智ねねが真っ先に挙げられる。未だ数日の付き合いだが、既に奴の可愛げのなさは十二分に思い知らされたものだ。

 と、あんな莫迦従者の事を考えていても仕方が無い。注意を目の前の少女、川神一子に戻す。俺を見る彼女の目にはメラメラと敵愾心の炎が燃えていた。或いはライバル視でもされているのだろうか。いずれにせよ、彼女は俺の事をそれほど恐れている訳ではないようだ。

 その事実に対して俺が抱いた感情は、不快さではなく――むしろその反対。

 面白い。あまりの愉快さに、思わず笑いが込み上げてきた。

「くくっ」

 対外的には嘲笑うような表情にしか見えないであろう俺の顔に、一子はむっとしたように眉を寄せた。

「あ、笑ったわね!うぅ~、確かに今のアタシじゃアンタやお姉さまには届かないけど、アタシは常に進化し続けてるんだから!いつまでも余裕じゃいさせないわよ!」

「ふん。俺や川神百代を超える、か。くく、ソレがその為の手段という訳か?」

 ロープの繋がる先、トレーニング用のタイヤに目を遣りながら言う。これまでよほど使い込まれたのだろう、擦り切れてボロボロの有様だった。

「そう、日々の積み重ねが大事なのよ。諦めずに努力し続ければ道は開ける!ユーオウマイシンってね」

「ユーオウマイシン……勇往邁進、か」

「川神魂ってヤツよ。アタシはいつか川神院の師範代になって、お姉さまと肩を並べてみせる!」

 紡ぐ言葉には一片の疑念も迷いも不安もなく、ただひたすらに前だけを見据えた瞳が眩しく輝いている。それは、心の底から夢を追い求め、その実現を信じている人間の表情だった。遥かに遠い目標へと真っ直ぐに突き進む、愚者の姿だった。

 いつだったか、釈迦堂の口から川神一子について耳にした事がある。曰く、武の才能など殆ど持ち合わせてもいない癖に、川神院の師範代という狭過ぎる門を目標とする、実に愚かな少女がいる、と。天才が一の鍛錬で習得する技に十の鍛錬を費やし、血を吐くような努力に努力を積み重ねて、ようやく彼らの背中に喰らい付いている、そんな哀れな少女。誰の目から見ても届く訳のない夢を追い求め、諦めることなく必死に足掻き続けている。

 その話を聞いた時、俺が顔も知らぬ少女に対して感じた想いは、賞賛でも侮蔑でも憐憫でもなく―――深い共感、ただそれだけだった。

「くくっ」

「むっ、また笑ったわね!人の夢を笑うなんて、アンタやっぱり」

「いや。世は俺にとって、嘲笑うべき事物で満ち溢れているが……俺は、“夢”を笑う事は、ない」

 例えその夢が荒唐無稽で身の程知らずなものであっても、そこに向けて積み重ねた努力を否定するような真似はしない。そんな行為は、俺自身の人生の否定そのものだ。

 俺の真摯な言葉が意外だったのか、一子は驚いたように目をパチクリさせていた。

「そ、そう?でも確かに笑ってたような……すごくイヤな感じで」

「言った筈だが。世は俺にとって、嘲笑う事物で満ち溢れていると。俺が笑わぬのは“夢”のみよ。貴様の存在そのものには、嘲笑うべき点が多過ぎる」

 さて。この川神一子という少女には色々と共感を覚える点があるし、個人的な感情としては決して嫌いではないのだが―――それとこれとは話が別だ。

 俺には俺の夢がある。冷酷非情の支配者・織田信長を演じ続ける為、ここからは情ではなく理で動かせて貰うとしよう。

「な、なんですって~!言わせておけばアンタねぇ!」

「ふん。……思い上がるな、と言っている」

「っ!?」

 会話を円滑に進めるために抑え込んでいた殺気を解き放ち、強烈に周囲を威圧する。突如として増したであろう重圧に一子は息を呑み、凍り付いたように顔を強張らせた。

 川神院の養女と言ってもやはり一般人。殺気にはそれほど慣れていないようだ、と冷静に相手の戦力を分析しながら、俺は恫喝の響きを含ませた言葉を投げ掛ける。

「俺の視界を阻む障害物は悉く滅する。川神一子。貴様の夢が何であれ、俺の“敵”として立ち塞がる心算ならば――その芽は疾く刈り取るのみよ」

「うっ……」

 一子は声にならない呻きを上げて、狼狽したように後ずさる。当然の話だ。相手が武道に通じていればいるほど、俺の姿はより凶悪なものとしてその目に映る。ましてや川神院に起居し、あの川神百代や釈迦堂刑部と生活を共にした彼女ならば――俺の発する気がいかに異質なものであるか、感じ取れない筈は無い。

「己が裁量を弁え、牙を剥く相手を選ぶがいい。夢半ばで倒れるのは本意ではあるまい」

 元々それほど気の強い性格ではないのだろう。じわり、と目の端に涙を浮かべ、明らかに怯えの混じった表情をこちらに向ける。

 そんな彼女に冷たく言い捨てると、俺は固まった彼女を放置して歩き出した。あの様子を見る限りでは、俺と無闇に敵対しないよう釘を刺すことには成功したと考えて良さそうだ。川神の姓を持つ彼女を抑えておけば、或いは背後に控える川神院に対する牽制として作用するかもしれない。

 まあ実際、その辺りに関してはそれほど深く期待してはいないが、しかし本命の“風間ファミリー”に関しては――――

「やいやい待ちやがれ!よくもウチのワン子を泣かせてくれやがったな!」

 打算を巡らせながら立ち去りかけた俺は、背後からの威勢の良い怒鳴り声に思考と足を止めた。

 脳内で考えただけで噂などしていないのだが、現れる時には現れるものか。

「ちょ、キャップ!放っておけばあのまま行ってくれたのに」

「おいおい、そりゃちょいと弱気が過ぎるんじゃねぇか、軍師さんよ?俺様たちの愛すべきペットが泣かされてるんだぜ?」

「今回は僕もガクトに賛成かな。見過ごせないよ、こんなの」

「それに大和。キャップが止めなかったら、私が止めてたよ。ファミリーのみんなに手を出すなら、私が黙ってない」

「み、みんなぁ~」
 
 ……五人。否、川神一子を数に含めれば六人か。ここにきて新たに現れた計算要素に頭を高速回転させて策を練り上げながら、悠然と振り返る。

 少年が四人と少女が一人。こちらを険しい目で見つめる面々の中に、見覚えのある顔はなかった。俺は彼らに冷徹な視線を向けながら、分析を開始する。

 まずは計算高そうな目で注意深く俺を観察している少年、恐らく戦闘能力はほぼ皆無。

 この中では俺に対して最も強く怒りを感じている様子の色白で細身の少年、こちらも同様。

 190cm程の大柄な体躯と強靭そうな筋肉を有する少年、これはまあ見た目通りそこそこ強い。

 他の面子からキャップと呼ばれた、正面から堂々と俺を見据えている少年、強い事は強いがやはり一般人の域を出ない。

 分析完了。取り敢えずこの四人に関しては、さほどの警戒には値しないと考えても良さそうだ。

 となると問題は、残りの一人。

 静かながらも異常な敵意を込めた鋭い目で俺を睨んでいる少女―――これは、文句なしに強い。

 俺ではすぐには測り切れないレベルだ。つまりは蘭や天と同じく、人外クラス。何ともまあ、次から次へと厄介な相手が出てくるものだ。川神学園は人外の宝庫か?

「蘭」

「ははっ、此処に」

 万が一の事態に備え、忠実なる我が従者を呼び出しておく。どこからともなく現れると、蘭は俺の後ろに控えた。

 場合によっては川神一子とは蘭に聞かせたくない類の会話を交わす可能性があったので、先程から少し遠ざけていたのだが……結局は無駄な心配りに終わった訳だ。

 ただ、忍者の如く唐突に現れる事で、始めから気配に気付いていたと思しき少女以外の面々を驚かせる事には成功したらしい。だからどうしたと言われるかもしれないが、心理的に優位に立つ為にはこういった小細工も馬鹿に出来ない。

 俺は改めて彼らを見回した。命知らずにも織田信長を敵に回そうとしている、無知な一般生徒たち。

「ふん」

 面倒な事になったものだ、と俺は心中にて溜息を零す。彼らが本当に真の意味で一般生徒ならば、何も問題は無かったのだが。

 俺の仕入れた情報が正しければ、彼らは“風間ファミリー”と呼ばれる集合体――などと言うと大袈裟な話で、実際はリーダーである風間翔一を中心に集った幼馴染七名の小規模な学生グループである。単にそれだけならば俺の情報網に引っ掛かる事は決して無かっただろうが……
 
 唯一にして最大の問題は、このグループの構成メンバーとしてあの川神百代が存在している事実だ。

 それはつまり、下手に彼らに対して手出しをしようものなら、最強の武神による報復を覚悟しなければならない事を意味している。常に戦いに飢えている百代のことだ、口実を与えれば嬉々として攻撃を仕掛けてくるだろう。それだけは全霊を以って回避しなければならない事態だった。

 要するに、と俺は思考を纏める。この場における俺の勝利条件は、彼らに具体的なダメージを与えることなくさっさと戦意喪失させるか、或いは平和的に話し合って解決するか。その二つに絞られてくる訳だが、この状況から平和的な話し合いに持っていくのは相当に難易度が高そうなので、必然的に取れる手段は一つしか残らない。

 やれやれだ。一子に声を掛けた自分の責任もあるが、朝っぱらからこんな厄介事に遭遇するとは面倒極まりなかった。そもそもこういう状況を未然に防ぐため、一子を脅かしておいたと言うのに、何ともタイミングの悪い。げんなりした気分になりながら、可能な限り早めに片付けるべく行動を開始する。

「俺を呼び止めたな、貴様。当然……この俺の歩みを妨げるに足る、十分な理由があっての所行であろうな?」

 何もわざわざ本気を出す必要はない。相手が一般生徒であれば、手を抜いたところで怯え竦んで凍り付く結末は変わらない――そんな侮りが計算違いを生んだ。

 俺の放った殺気を浴びて、確かに彼らは顔色を失くし、怯んではいたが、しかし誰一人として心を折られた様子はなかった。特にキャップと呼ばれた少年は殆ど恐怖した様子もなく、真っ直ぐに俺の目を見返して、堂々と声を上げた。

「てめーは俺の仲間を泣かせた!それだけで十分すぎる理由だぜ」

 あの川神百代が自分の上に立つリーダーと認めた男、風間翔一。どういう人物なのか、と色々考えていたが、納得した。武力云々ではなく精神性を買われたという訳か。

 確かに、織田信長を相手に一歩も退かずに対峙するその姿からは、人を惹き付けるカリスマ性が感じられる。

「然様か。ふん、その程度の理由で十分とは恐れ入る。貴様らの命は、随分と軽いらしいな」

 ならば、もはや侮りはすまい。先程の反省を活かし、威圧のレベルを戦闘用の状態まで底上げする。ギシリと音を立てて、空気が歪んだ。

 殺気もこの段階になれば、もはや相手の心が折れていようが折れていまいが関係はない。有無を言わさず“死”を脳髄に認識させて身体機能を喪失させる。言ってしまえば、フィジカル面に直接働きかけて身動きを封じるのだ。根性だの仲間への想いだの、そんな少年漫画的な理屈が入り込む余地はない。

「くっそ、動けねぇっ!」

「ちぃっ!何だよコイツは……ムチャクチャじゃねーか」

「くぅ……、姉さんがあそこまで大喜びする理由が、やっと分かった気がするな」

「反則でしょ、こんなの……!」

 リーダーの風間翔一を含めて、少年達は一様に悔しげな表情で彫像と化す。人間である以上、殺気に対する拒絶反応に例外はない。

 故に、その影響を撥ね退けられるのは何時だって人外でしか有り得ないのだ。

「みんなは下がってて。私がやる」

「よせ京、一人でどうにかなる相手じゃない!」

「心配ありがと、大和。でも、みんなでやればどうにかなる?分かってるハズ、この男は化物だって。モモ先輩が認める相手だよ?みんなには悪いけど、足手纏いにしかならない。……大丈夫。たとえ一人でも、何があっても、ファミリーのみんなは私が守ってみせる」

「さっきから一人一人って、誰か忘れてないかしら?アタシだって、このまま皆がやられるのを見てるなんてゴメンよ!助太刀するわ、京!」

 京と呼ばれた少女と、立ち直った川神一子が他の面々を庇うように俺の前に立ち塞がる。両者ともに殺気が効いていない訳ではないが、恐らくは“気”の心得があるのだろう、少年達に比べるといまいち効果が薄い。

 まあそれでも板垣の連中やらプロの軍人やらと並べて考えた場合、効果は雲泥の差であった。明らかに動きが鈍っている。この状態で果たして実力の何割を発揮できる事やら。これだけ相手が弱体化していれば、俺が小細工を弄するまでもなく蘭一人でも十分に事足りるだろう。

「くく。雑魚が群れた所で、詮無き事よ。大魚に呑まれ、糧と成り果てるのみ」

 そんな彼女達を余裕の表情で嘲笑って見せながら、改めて思う。

 この構図はどう考えても俺が悪役じゃあなかろうか、と。

 朝の通学路で都合八人の男女が対峙していれば注目を浴びるのは当然の話で、またしても俺達の周囲にはギャラリーが出来上がりつつあった。彼らの目にこの光景は果たしてどう映っているのか。

「アレって風間ファミリーと、例の転入生二人組?なになに、どうなってるの?今まさに勇者VS魔王って感じ?」

「風間くーん!負けないでー!」

「うおおおお川神さん、そんなヤツぶっ倒しちまって……あ、ごめんなさい」

 やはり周囲から見てもヒールは俺と蘭サイドの模様。それはまあこの程度の悪行は省みるまでもなく常日頃から行っているし、それは織田信長としてこれ以上なく正しい在り方なのだろう。ただ、これ程までに“正義”臭のする人間を相手にした経験は殆ど無かったので、今更ながら何とも妙な感覚に陥ってしまう。堀之外は腐った連中の巣窟なので、必然的に悪を悪で制した経験ならば幾らでもあるのだが。

 悪を以って善を捻じ伏せる……か。

 ――うん、それはそれで中々悪くないものだ。相手が何者であれ俺は我を押し通せるのだ、と世界から証明されたような気分になれる。

「――てめぇら、そこで何やってやがる」

 そして、まあ、悪の親玉の前には必ず正義のヒーローが現れるのがお約束、である。

「ゲンさん!?」

 恐々と遠巻きに様子を見守っていた群衆を掻き分けて姿を現したのは、不機嫌全開な仏頂面を顔面に貼り付けた我が幼馴染――源忠勝であった。

 忠勝は俺達と風間ファミリーの間に割り込むと、両者を交互にギロリと睨んだ後、最後に川神一子に視線を向ける。

「た、タッちゃん……?」

「……ちっ」

 戸惑ったような顔の一子に何か言いたそうな調子だったが、忠勝は結局、無言で視線を逸らし、今度は少年の一人を鋭く睨みながら口を開いた。

「オイ直江てめぇ、折角の忠告を無駄にしやがって……こいつには手を出すなって言ったろうが」

「一応、俺は止めたんだけどね……まあ言い訳はしないよ。だけど、先にワン子にちょっかい掛けてきたのはあちらさんな訳で」

 大和。直江。なるほど、彼が直江大和か。川神百代の舎弟で、風間ファミリーの参謀役――通称“軍師”。道理で油断のならない目付きをしている訳だ。

 グループ内における肩書きと立場からして、武力一辺倒の百代をサポートする役目を負っているのだろう。となれば、他の中途半端に武力の高い面子よりもむしろ警戒すべき人物かもしれない。

 あくまで冷静に分析を続けていると、忠勝の怒りに満ちた目がついにこちらを向いた。

「信長、一子に手ェ出したってのは本当の話か…場合によっちゃタダじゃおかねぇ」

 無理矢理に激情を押し殺したような低い声。忠勝は冗談抜きでキレる一歩手前まで行っている様子だった。やはり恋する少女の事が絡むと冷静ではいられないものらしい。

 全く、本当にらしくない。お前はそうじゃないだろう、タツ。

「下らんな。実に下らん。川神百代本人ならば兎も角、未熟極まる小娘など興味の外よ」

「だったら何だ、一子がてめぇに喧嘩売ったってのか?」

「然様に愚かな事を仕出かさぬよう、警告をくれてやっただけだ。それをそやつらが大袈裟に騒ぎ立てただけの事。俺は路傍の石を蹴るほど暇ではない。まあ――こうして自ら俺の足元に転がってくると云うなら、話は別だがな」

「……ちっ」

 言葉に込められた俺の意図が正しく伝わったのか、忠勝は苦々しげに舌打ちを零してから、「抜け目のねぇ野郎だ」と小さく吐き捨てた。

 そして、

「悪かった」

「た、タッちゃん!?」

 織田信長に向けて詫びの言葉を放ち、更に頭を下げるという行為に出た忠勝の姿に、風間ファミリーからもギャラリーからも大きな動揺が生じた。源忠勝は誰ともつるまず孤高を貫く一匹狼、他人に対して軽々しく下手に出る男ではない。

「同じクラスの連中の不始末だ、頭なら俺が下げる。お前に手出しをしねぇように言い聞かせもする。―――だから、今回の件は水に流してくれ」

 真っ直ぐに俺を見据えて言う忠勝に、思わず口元が歪む。

 これだから親友というものは素晴らしい。俺が何を求めているのか、良く理解している。

「……くく。他人の為に誇りを捨てるか。俺には理解の及ばぬ行為よ」

 やはり相当に衝撃的なシーンだったのだろう、群衆のざわめきは収まらない。「あの源くんが頭を下げるなんて……」「やっぱり只者じゃないぜアイツら」「クラスメートの為にプライドを投げ打つ源くんカッコイイ!」等と、まあ一部ズレてはいるが、概ね生徒達の忠勝に対する評価の高さがそのまま織田信長の評判へと転じていくのが分かる。

 そう、何も毎度毎度戦って相手を下す必要などない。いつメッキが剥がれてもおかしくない、という巨大すぎるリスクを背負ってまで戦闘に拘るのは馬鹿のする事だ。

 今回の忠勝の如く、“織田信長の実力を認める真の実力者”をある程度用意することが出来れば、大抵の無駄な争いは回避できる。周囲に自身を認めさせるとはそういう事だ。いかなる場合であれ、基本的には無条件降伏こそが俺の最も欲するところだった。

「ちょっと待てよゲンさん」

 しかし当然ながら、ここで納得できないのが風間ファミリーである。当事者を差し置いて勝手に話を進めようとする忠勝に、風間翔一が不満顔でストップを掛ける。

「これは俺達の問題だろ、ゲンさんは」

「黙れボケ、これ以上話をややこしくすんなアホ。……ちっ、危機感の欠片もねぇ。もっとしっかり言い聞かせておくんだったぜ」

 ギロリ、と睨み据える忠勝の眼光の鋭さに、翔一は戸惑ったように口を閉ざした。
 
 危険な裏の世界に片足を突っ込んで生きている人間と、平穏無事な表の世界で生きてきた一般人。やはり意識の差は大きいのだろう。

 それでも、忠勝は比較的“表寄り”の人間だ。どちらの常識にも通じているという意味で、表と裏、双方の住人の調停役としてこれ以上に相応しい人材はいない。

「主」

「っ!」

 蘭のアイコンタクトを受けて、俺は周囲に悟られないよう注意しながら息を呑む。

 どうやらのんびりと構えている余裕はなくなったらしい。遅刻がどうのこうのと、そんな程度の低い問題ではない。早急にこの場を離脱しなければ。

 焦りの滲む内心を押し殺し、微妙な空気に包まれている風間ファミリーを冷然と見遣って、俺は退屈そうな声音を放った。

「ふん。興が削がれた。往くぞ、蘭。時間の無駄だ」

「ははっ。参りましょう」

「あーっ!おい逃げんの――モガモガ!」「だから余計なマネすんじゃねえボケが!あいつに口実を与えるなってんだよ!」

 潮時だ。もう一押しが欲しいところだったが、これ以上は不味い。

 騒がしい一般生徒達に悠然と背中を向けて、勝手に急ぎそうになる足を抑え、あくまで勝者の余裕を見せつけながら歩き去る。

 逃げるな、か。全く、無茶を言ってくれるものだ。

 何せ、今一番会いたくない存在―――恐ろしい武神の気配が後方から近付いているんだ、誰だって逃げ出したくもなるだろう。

「ふん。笑えんな」

 危なかった。本気で間一髪のタイミング。今更ながらに冷や汗を流しながら、俺は小さく安堵の吐息を漏らした。

 
 風間翔一。直江大和。川神一子。椎名京。島津岳人。師岡卓也。そして、川神百代。


―――これが、後に様々な感慨と共に思い返す事となる、風間ファミリーとのファーストコンタクトであった。














~おまけの風間ファミリー~


「おー、なんだなんだ、こんな所で集まって。まさか美人のねーちゃんがストリップでもしてたんじゃないだろうな?」

「姉さんの妄想通りだったら俺も嬉かったんだけどね。……例の転入生と、ちょっと」

「何だと、お前ら織田とやりあったのか!?あーいや、そんなワケないか」

「悔しいけどモモ先輩の言う通り。アレがやる気だったら、私達は今頃こんな風に話せてない。……身をもって実感した。あの殺気は人間辞めてるね」

「うぅ、我ながら情けないわ。目の前に立つだけで足が震えちゃった」

「ワン子は良く頑張ったと思うよ。僕なんて怖くて動けもしなかった。男なのに……」

「ったくよー、この俺様がビビっちまうとは屈辱だぜ。まだまだ鍛え方が足りねーって事か。トレーニングメニューを組み直さねぇとな」

「あー、織田な。アイツはなぁ、正直ちょっとお前らの手には負えないと思うぞー。まあ今回お前らが無事で良かった。もし何かされてたら問答無用で叩き潰してやるところだったぞ」

「実際、姉さんなら対抗できるだろうし、俺達もかなり安心できるよ。……ところで我らのリーダーがさっきから一言も喋ってない件について」

「……」

「やっぱりショックだったのかも。男のプライド的な意味で」

「…………ぜ」

「お、何か言ってるね」

「ブツブツ言ってやがるが聞こえねぇな。どれどれ」

「うおおおおおおお、燃えてきたぜっ!!」

「うがぁぁ!?うるせぇよっ!耳元で急に叫ぶんじゃねー!」

「敵は強大、されど意気軒昂!俺は絶対アイツを超えてみせる!ってワケで早速、武者修行の旅に出てくるぜー!」

「ちょ、キャップ学校!今日火曜日だから!」

「金曜には帰るから梅子先生によろしくな~!」

「病気が出ちゃったか。良いのかなぁ、新学期始まったばかりなのに」

「しょーもない。……と言いたいけど私も頑張らないと。部活、か……」

「アタシも気合入れて特訓しないとね。このままじゃ悔しくておちおち寝てらんないわ!」

「ん~……」

「どうしたの姉さん。珍しく難しい顔しちゃって」

「珍しくは余計だな、んん?……いや、ジジイが言ってたのはこういう事か、と思ってな」

「?」

「ま、気にするな。アイツが何だろうが私には関係ない。強ければそれでいいんだ。私を満足させてくれるなら、何だっていい……」













 今回は短め。というか前回にちょっとばかり気合を入れ過ぎただけなのですが。
 この辺りから風間ファミリーの出番も少しずつ増えてきます。これからクリスとまゆっちも増えるし、大所帯で書き分けが大変だ……頑張らないと。
 まあ基本的にはS組中心なんですが、やはり原作主人公組は大事です。
 そういう訳で今回は完全な顔見せ回でした。退屈な展開でごめんなさい。という感じで責められる前に予防線を敷きつつ、それでは次回の更新で。

※一部言い回しを修正しました。ご指摘感謝です>てるてるさん


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