「『アハハハ!これはいきなりご挨拶だねー、怖いなー』」
子供なのか大人なのか老人なのか、男なのか女なのかすら判別のつかない不自然な声音が次々と耳に流れ込んでくる。機械か何かを使って声を変えているのだろう。
まあ予想はしていたが、わざわざ自分の素性を明かすような真似はしないか。口調自体はどう考えても男のそれだが、フェイクの可能性も高いので判断材料にはなるまい。
「『いやーでも、電話越しなのに背中がゾクゾクするってどういうワケよ。びっくりしちゃったね俺』」
「……」
遠く離れた相手から殺気が届いた事に驚いたらしいが、何も驚くべきことではない。
声は“気”を伝える手段として非常に有効だ。例えば川神鉄心ほどの達人ならば、一喝するだけで地を割り、海を割るとも言われている。
ちなみにピンチに陥った際に俺が饒舌になるのは、言葉に乗せた殺気で精一杯の威嚇を試みているという切実な理由があったりする。
そして、そういった知識は武に関わるものならば所持していて当然のものだ。つまり先程の反応から見て、奴自身は武力を持っていない可能性が高いと考えられる。
幾ら計算高い人間でも、こちらまでフェイクと言う事はさすがに無いだろう。
「『無視しないでよー寂しいじゃん。実際さ、俺とこうやって直接話ができる人間ってほとんどいないんだぜ?交流を深めて損はないと思うけどねー』」
「素性も知れん輩と言を交わす程、俺は酔狂ではない」
「『あ、うっかり自己紹介を忘れちまってた。一方的にと言っても君の事は良く知ってるからさー、他人とは思えない感じ?君も竜兵辺りから聞いてるだろうし?さくっと名乗っとこうってワケで改めましてぇ、
――俺がマロードだ。まあ末永いお付き合いを頼むよ』」
「ふん。己が姿を晒す事もなく、良く言ったものよ。厚顔極まる」
「『あー顔見せないのはやっぱ印象悪いかなー。でもまあ勘弁してよ。だって俺、君の目の前にいたら――もう今頃は殺されちゃってるでしょ?それはさ、ちょっと困るんだよね』」
「そして板垣の阿呆共に俺の相手をさせて、己は安全圏より高みの見物か。笑止、であるな」
板垣との戦闘に決着が着いた、このタイミングを狙ったかのように接触してきたということは、大方監視カメラなりを使って一部始終を見ていたのだろう。
目に付くところには見当たらないが、まあ機械の小型化が進むこの時代。本気で仕込もうと思えばどこにでも仕込める。
つまるところ俺の今夜の苦労は全て、正しくこいつの為の見世物にされていたという訳だ。なるほど、いい感じに殺意が湧き上がってきた。
「『あははは、キッツイねー。でもさ、普通トップが前線に出たりしないって。俺は頭脳労働が専門だからさ、君みたいに荒事にも出張ったりとかそーいうのはムリムリ。だから俺、結構君のことリスペクトしてたりしちゃったり?文武両道。いいじゃん、憧れちゃうねぇ』」
「……」
どこまで本気で言っているのかまるで分からない賛辞に、俺は沈黙で応える。
それにしても――こいつが、“マロード”か。
こうして言葉を交わしてみた限りでは、とにかく軽薄そうで不愉快な奴だとしか思えないが……
しかしながら、“ただそれだけ”の人間が誰にも正体を悟られずに堀之外という魔窟で暗躍し、あまつさえあの板垣一家に命令を下せる訳もない。
俺が自身に織田信長というキャラクター付けを施しているのと同様に、電話越しの何者かもまた“マロード”という仮面を被っている、と考えておいた方がいいだろう。
経験上、こういうタイプの輩こそ警戒して掛かるべき相手だ。
「『んー。色々と調べて知ってちゃいたけどさー、やっぱとんでもないねー君。まあちょっとしたイレギュラーはあったにせよ、まさか竜兵達がこんな簡単にやられるなんて思ってもみなかったなぁ。俺はこれでも頭脳タイプで売ってるんだけど、自信なくしちゃいそう』」
「解せんな」
ぺらぺらと中身の薄い言葉を吐き連ねるマロードを遮って、俺は口を開く。
ああ全く、どうにもこうにも、嫌な感じだ。上手く言葉で表現できそうにもないが、嫌な予感がしてならない。
「貴様が俺の事を真に調べたと云うなら、此度の結果は目に見えていた筈だが?俺と板垣の力関係など改めて競うまでもなく、遥か以前に決している……あの語るに足らん闘争の顛末、この堀之外に住まう者であれば誰しも知っている事だ」
「『あーそれね、もちろん知ってるぜ。でもさあ、それにしたってもう何年も前の話だし?人間って成長するもんだし?今の竜兵とか見てるとさ、普通はリベンジ出来ると思うのが自然っしょ』」
「下らんな。板垣風情がどれほど成長を遂げた所で、俺の歩みを妨げられる筈も無い。人間である以上、俺とて昔日の俺ではない」
「『アハハハ、人間である以上かー。実際、君を見てるとさ、ホントーに人間なのか疑わしいんだよねー。実はさ、悪魔だったりして』」
「生憎だが。与太話に付き合う程、暇ではない」
マロードの戯言を冷たく切り捨てると、俺は一度電話越しの会話を打ち切って、周囲に注意を向けた。
件の板垣一家は取り敢えず様子を見るつもりなのか、少し離れた所から大人しくこちらを睨むに留めている。
果たして暢気なのか薄情なのか、辰子に至っては立ったままうつらうつらと船を漕いでいた。
が、相手は猛獣も逃げ出す板垣一家。警戒は幾らしてもし足りない位だろう。念の為、連中が余計な真似を仕出かさないよう保険を掛けておくとしよう。
「ぐぅっ!?」
という訳で、俺はアミを蹴り倒してその頭を踏みつけ、完全に身動きを封じておいてから電話を続けた。
竜兵達の放つ殺気がちょっとばかり尋常じゃないレベルに膨れ上がっているが、実際にこちらに手出しできない以上恐れる必要はない。
そう、動物園。動物園にて猛獣の檻の前にいると思えば無問題だ。不用意に手を突っ込みさえしなければ、大丈夫大丈夫。
自分に言い聞かせて、怯みそうになる心を抑え付ける。
そんな風に俺が必死の自己暗示を行っていると、携帯から再びマロードの声が響いた。
「『あらら、人質に乱暴しちゃダメっしょ。なんといっても俺の大事な同志なんだからさー、扱いは丁重にしてよ』」
「ふん、俺の捕虜だ。生殺与奪の権は、全て俺の元にある」
「『困るなぁ、そんな態度取られちゃうと――“こっちの人質”も、身の安全は保証できなくなっちゃうかも?』」
さらり、とまるで何でもないように放たれたその言葉に。
俺は咄嗟に自制スキルを総動員して声を殺し、表情を殺し、心を殺した。
「……」
少なくとも表面上に変化は浮かばなかった筈だ。普段の鍛錬の成果が発揮されたと、願いたい。
ここで俺が僅かでも動揺を見せれば、それはどうしようもなく致命的な隙となる。その大き過ぎる隙を見逃してくれるほど甘い相手ではない。
嫌と言うほど、実感させられた。
故に俺はありとあらゆる感情を伺わせない。眉一つ動かさず、声一つ震わせず、あくまで普段通りの冷徹さを貫いて、淡々と言葉を返す。
「成程。それが貴様の用件と云う訳か」
「『あれ、それだけ?もうちょっと何かさ、リアクションしてくれてもいいんじゃないの?せっかく驚かせてやろうと今まで隠してたのに、寂しいじゃん』」
「ふん。その程度は予期していた事態の一つに過ぎん。貴様の言う人質とやらは、先に離脱した二人だろう」
「『そうそう、宇佐美巨人と源忠勝。堀之外じゃあ名の知れた代行人で、君の今回の依頼人。押さえさせてもらっちゃった、アハハハ!』」
マロードは不愉快な哄笑を上げる。その言葉の内容もあって、真剣で殺意が湧いてきた。
この野郎、タツを―――駄目だ落ち着け、冷静になれ。
親友を人質にされた程度のことで熱くなるのは、織田信長のキャラクターじゃあない。そんな綺麗な役回りは正義の熱血ヒーローにでも任せておけば良い。
ひたすら冷静沈着に思考を巡らせて最適解を導き出す、それが俺のすべき事だ。間違っても激発するな、今は事態を正確に把握しなければ。
「それで?」
「『んん?』」
「俺が、“人質”の存在などを。意に介すると本気で思うか?貴様にとって部下は保護すべき対象かもしれんが、俺にとっては違う。足手纏いとなるなら、躊躇いなく切り捨てるのみ」
「『あー、まあそうだろうね。でもさ、俺としちゃそういうドライアイスな性格も織り込み済みなのよ。役立たずの部下なんて余裕で見捨てられる……でもさ、“依頼人”は違うんじゃない?依頼人を守り切れなくて、請け負った依頼をこなせなかったってのは――つまり、“敗ける”ってコトじゃん』」
「……」
「『信長、君さ……敗けるのキライでしょ。それも、かなり半端ないレベルで』」
妙に確信的なマロードの言葉。思わず舌打ちが漏れ出そうになり、慌てて自分を抑える。
少しばかり甘く見過ぎていたのかもしれない。
こうも自信を込めて織田信長を語る事が出来る辺り、どうやらマロードは想像以上に深い所まで首を突っ込んでいるようだ。
俺の事を調べた、と言っていたが……こいつ、何を何処まで知っている?
「『俺的にはここで亜巳を失うのは痛いし、君も美味しい稼ぎ口を失くすのは不本意だと思うワケよ。って事で今回はさ、引き分け、痛み分けってことでお互い手を打たない?』」
人質交換という訳か。俺自身としては一も二も無く飛びつきたい提案だが……ここで慌ててはならない。
“織田信長”にとってこの状況はどういうものなのか、客観的に考える必要がある。虚像の威を保つには、常に細心の注意を払い続けなければならないのだ。
勝ち負け引き分け。利益に損失、外面と内面。
……。
…………。
……今回ばかりは仕方がない、か。
あまりに予想外が積み重なり過ぎて、こうなる可能性に思考が及ばなかった。
マロードの手前、見栄を張ってはみたが、実際のところ俺もこの事態はまるで想定できていなかったのだ。
第一、よりによってあの二人が捕らえられるなど、そう簡単に起きて良いことではない。
源忠勝に宇佐美巨人。忠勝は昔から腕っ節が強く、場慣れもしている。突出した能力こそ無いが総合的な実力は相当なものだ。
一方、養父の巨人とて決して弱い訳ではない――それどころか、一昔前はこの堀之外で随分と派手に暴れ回り、色々とヤバい事もやらかした経歴を持つ猛者である。
現在は第一線を退いてはいるものの、その実力は板垣とも真っ向から渡り合えるほどのものだろう。
普段はくたびれた中年親父にしか見えない上に強者特有の覇気も感じられないが、自分達の身を守る為ならばさすがに本気で力を振るう筈だ。
そんな親子が二人揃っていて、それでも不覚を取るものだろうか?いまいち信じられないものの、マロードの口ぶりからしてブラフとも思えない。
第一、確認を取ればすぐに露見するような嘘を吐く理由もないだろう。
…………。
まあ、とは言え、何がどうしてそうなったのか、なんとなく予想はついているのだが。
宇佐美巨人と源忠勝の両名をまとめて叩き伏せられるような馬鹿げた実力の持ち主で、かつアンダーグラウンドの住人。
誠に残念ながら心当たりがある。板垣一家が登場した時点で、薄々ながら現れるような気はしていた。
あくまで予感は予感、叶う事なら当たっていて欲しくはなかったのだが、やはり俺の場合は嫌な予感ほど良く的中してしまうものらしい。鬱陶しくも現実は常に厳しい。
アンニュイな溜息を吐き出したい気分に任せて、俺は内心にて不機嫌全開に呟く。
―――約束が違うじゃねぇかよ、釈迦堂のオッサン。
釈迦堂刑部は、元川神院師範代である。その肩書きが意味するところは、一言ではまるで語ることが出来ない程度には重い。
それでも敢えて簡潔に説明するならば、かつてあの川神百代が師と仰いだ男――と言えば、とりあえずその突き抜けっぷりは伝わるだろう。
あらゆる天才とあらゆる天災で満ち溢れたこの世界において、頂点から数えて十本の指に食い込むであろう実力を有する、正真正銘の怪物だ。
そして釈迦堂という男の最大の特徴は、世界におけるトップクラスの武力を保有した上で、それを振るう事に何ら躊躇いを覚えないところにある。
相手が気に入らなければ、一般人であろうとお構いなしに暴力を振り回す。
対戦相手の選手生命を絶ちかねない非情の技でも、勝利を得るためならば迷わず用いる。
弱いのが悪い、好きに生きたきゃ強くなれ――それが釈迦堂の口癖だった。
そんな武闘家にあるまじき思想と行動を危険視された結果、総代の鉄心によって川神院を追放されたのが、約十年前の話。
「おーおー、随分とハデにやり合ってたみてぇだな。ヒヒ、血の匂いがぷんぷんしやがる」
そして現在。三つの勢力が数時間に渡る激闘を繰り広げた第十三廃工場に、釈迦堂刑部は足を踏み入れた。
工場内には意識を刈り取られた人体が無数に散乱し、同じ数だけ血溜まりが広がっている。
森谷蘭と板垣辰子の戦闘の煽りを受けて、壁にも床にも罅割れとクレーターが刻まれている。
一見して何処の戦場跡かと思うようなその惨状を、釈迦堂はむしろ上機嫌な様子で見回した。
「ま、お前らが暴れたってんならこんなモンかね。若者は元気が一番ってな。さぁて――えらく久し振りじゃねぇか、小僧。懐かしいなぁオイ」
「……」
俺の正面、約五間の距離を置いて、釈迦堂は立ち止まった。
年に似合わず常にヘラヘラ笑った口元も、それだけでは到底誤魔化しきれていない歪んだ凶相も、最後に顔を交わした時とまるで変わらない。
そして、この殺気。俺のように虚勢を張って捻り出した紛いものとは違う。
臨戦態勢に入るまでもなく、ただ暢気にそこに突っ立っているだけで対峙する相手の肌を粟立たせるような、禍々しい存在感。
川神百代もそうだが、こういう規格外の存在と相対した時、俺はいつも己の矮小さに絶望にも似た想いを感じてしまう。
無論、俺には才能がない、などと思い上がりも甚だしい事は言わない。形はどうあれ、多くの凡人に比べれば俺は明らかに才に恵まれている。少なくとも、血の滲むような、死に物狂いの努力が、辛うじて実を結ぶ程度には。
しかし、それでも……“彼ら”と同じステージに立ち続けるには、あまりにも非力。存在としての格が違う。そう感じざるを得ないのもまた、事実であった。
そんな下らない感傷を俺に抱かせる点も、変わっていない。
唯一つ違和感を覚える部分があるとすれば――それは、両脇に軽々と抱えた二人分の人体くらいのものか。
四肢が二人分で八本と、頭が二つ。数えて十のパーツがだらりと地面に向けて垂れ下がっている。
「おいおい挨拶もナシかよ。ったくよー、年長者は敬うモンだぜ?せっかく面倒くせぇ手加減までして、五体満足でお届けしてやったってのに」
「師匠、チィーッス!」
「こんばんは~師匠」
「オウ。お前らは無事っぽいな。ま、俺の弟子がそう簡単にやられて貰っても困るか」
場違いに元気で暢気な二人の弟子、天使と辰子に、釈迦堂は皮肉っぽい表情で言葉を返す。
そして、少し離れた所で不機嫌そうに腕を組んでいる男、竜兵に視線を移した。
「ヒヒ、お前さんはなかなかヒデー有様だな。誰にやられたのか知らねぇが、素直に俺の教えを受けてりゃ余裕で勝てただろうによ」
「はっ、余計なお世話だ。俺は誰の指図も受けん、もっともマロードは別だがな」
竜兵は苦々しく眉間に皺を寄せながら、口の中に溜まった血と一緒に吐き捨てた。
ステゴロを信条とする竜兵は他の三姉妹とは違い、釈迦堂に武術を習ってはいない。それはこれからも変わることはないだろう。
釈迦堂はやれやれ、と肩をすくめた。
「あーあ、勿体ないねぇ。俺の見立てじゃお前にゃ間違いなく才能があるんだがな。才能は大事にしなきゃ駄目だぜ?なんつっても世の中、無能な努力家なんて間抜けで可哀相な連中は腐るほどいるんだからよ」
よっこいしょ、というわざとらしい掛け声と共に、釈迦堂は両脇の荷物を床に転がした。
この距離から見間違える筈もない。忠勝と巨人だ。両者とも気を失っているのか、ピクリとも動かない。見た感じでは目立った外傷は無さそうだが……。
本音を言えば傍まで行って自らの手で確認したいところではあるが、そういう訳にもいかない。
現時点では、彼らの身柄はマロードにとっての大事な交渉カードなのだ。迂闊な動きは禁物である。
俺が二人の様子を観察していると、釈迦堂はこちらの交渉カード――亜巳に視線を向けた。
「よう、亜巳。慎重なお前が不覚を取るなんざ珍しいじゃねえか」
「……師匠の手を煩わせてしまい、申し訳ありません」
俺の足元、手錠で拘束された亜巳がいつになく殊勝な言葉を吐く。
基本的にはどんな相手にも傲岸不遜な態度で接する亜巳も、師に対する敬意はきっちりと持ち合わせている。
「まー仕方ねぇさ。慎重だからこそ突かれる隙、ってのもあるもんだ」
「……?それはどういう……」
「分からねぇか。ヒヒ、やっぱお前は恐ろしい奴だぜ、信長よ」
心底愉快そうに口元を歪めながら、釈迦堂は全てを見透かしたような目を俺に向ける。
……この糞オヤジ、余計な事を言いやがって。
不愉快な視線と言葉に対し、俺は手加減無しの殺意を放出する事で応えた。
ビリビリと空気が一瞬で緊張し、震える。至近距離で殺気を浴びた亜巳が大きく息を呑んだ。
しかし、肝心のターゲットたる釈迦堂は眉一つ動かす事なく、平然たる表情で殺意の奔流を受け止めている。相変わらず、気に喰わない。
「イイ殺気だ、前に会った時よりもすげぇ。本当にお前は天才だと思うぜ。この俺をしてそう思う。さすがは、元・俺の弟子だ」
「下らん昔話をする気はない。それよりも、何故貴様が此処にいる?マロードとやらの下に付いたのか、貴様ほどの男が」
「まあ色々あんだよ、オトナにはよ。それによ、マロードはチンケな密売人たぁ訳が違うぜ?アイツはもっともっと大きな事をしでかせる奴だ。こうやって協力してんのも、言うなれば先行投資ってところか?ヒヒ、そういう意味じゃお前と同じだよ、信長」
「……」
「それに、何となく気が合ったってのもあるな。お前と相容れるかは別として、面白い思想の持ち主だぜ、マロードは。ま、その辺りは本人が直接話したがってるらしいから言わねぇけどな」
マロード。板垣一家を引き込むのみならず、釈迦堂刑部をしてここまで言わせるか。
少しばかり洒落にならない求心力だ。何者かは知らないが放置するのは危険すぎる、と改めて認識する。
ただ、悪いことばかりではない。先の会話の中で、少しは安心できる要素を見出すことが出来た。
色々な点でグレーゾーンに踏み込んではいるものの、どうやら釈迦堂は俺との“約束”を破る気はないらしい、と言う事だ。
このオッサンの行動原理を考えればそう簡単に反故にされるとは思わないが、約束の内容が内容だけに神経を遣わざるを得ない。
我が元・師匠ながら厄介な男だ――と内心で溜息を吐いた時、釈迦堂が再び口を開いた。面白いものを見つけた、と言う風に口元が弧を描いている。
……ああ、やはり。無駄だったか。
「ヒヒ……なかなか気配を殺すのが巧いな、お嬢ちゃん」
「っ!」
「俺じゃなけりゃ何が起きてるか分からねえ内に蹴り倒されてたかもしれねぇな。ま、相手が悪かったと思って諦めな。こっちにゃ人質がいるって事を忘れてもらっちゃ困るぜ」
飄々と語り掛ける先には、跳躍の姿勢を取ったままで硬直した明智音子の姿があった。釈迦堂の背後、数メートルの地点。
抜き足差し足忍び足、俺と釈迦堂が会話を交わしている間に足音も気配も見事に絶って徐々に忍び寄ってきていたのだが、残念ながら結果は見ての通りだった。
この化物を相手に不意打ちが通用するとは最初から思っていなかったとはいえ、少しくらい夢を見させて欲しいものだ。
「しかし、俺にゃバレちまったとは言え、これだけ練度の高い隠行ができるっつーことは……ウチの天と互角にやり合ったってのは嬢ちゃんの事か。の割にあんま血の匂いはしないみてーだが、裏の住人って訳じゃねえのか?」
「粗暴で野蛮なキミ達みたいな人種と一緒にしないで欲しいね。生憎と、こんな血生臭い夜は人生で初めてだよ」
「へぇ」
「ボクは清楚で上品でお淑やかで、問題は暴力よりも頭脳を使って解決したい人間なんだ。仮に探偵をやる羽目になったら安楽椅子は必須だね」
釈迦堂の発する得体の知れない雰囲気に中てられたのか、顔色はいまいち良くなかったが、ねねの元気は未だ残っているようだった。
もはや隠れている意味もない、とばかりに、中身のないスッカスカな言葉をぺらぺらと吐き出しながら俺の隣まで歩み寄る。
「ゴメンご主人。失敗しちゃった」
「許す。端から期待もしておらぬ故」
「う。それはそれでショックかも……まあいいや。で、“ご主人”に返事してくれたのは、ボクへの合格通知と受け取って良いのかな?」
小柄なねねは下から見上げるように、しかしふてぶてしい笑みを浮かべて俺を見つめる。
なかなか大した度胸だ。頭も回るようだし、武の腕前も天との戦闘を見れば一目瞭然。能力的には何の問題もない。
もっとも、性格面は相当に癖がありそうだが――そういう輩を部下として自在に使いこなせないようなら、俺の夢など決して叶いはすまい。
それに、と俺はどこか愉快な気分で思った。
俺はどうやら、このねねという少女が気に入ってしまったらしい。
「ふん。その小賢しさと面の厚さは認めてやろう。
――許す、今日より明智音子を織田信長が臣下と任ずる。精々、励め。己が領分を弁えている内は、飼っていてやろう」
「えーと。ありがたき幸せに御座りまするー、とでも言っておけばいいのかな?まあそういう訳で、これからよろしくお願いするね」
重々しい俺の声音にも多少は慣れてきたのか、ねねは緊張することもなく軽い調子で頭を下げて軽い調子で答える。
これが忠義馬鹿の蘭ならば滝の涙を流しながら頓首再拝、平身低頭して顔面を無駄に汚す場面だろうな、と心中にて苦笑する。
さて実際はどうだっただろうか。足元で間抜け面を晒して寝息を立てている我が従者を見下ろしながら軽く回想していると、携帯電話のアラームが再び鳴り響いた。
先程と違い、携帯は最初から俺の手中にある。間髪入れずに受信ボタンを押して、耳に押し当てた。
「『よう、さっきぶり。オレだよ、オレ。オレオレ』」
「………………………」
通話早々に不愉快な音声で不愉快なギャグを聞かされた。どうしようこいつ真剣で殺したい。
そんな俺の純粋な殺意が伝わったのか伝わっていないのか、マロードはやれやれと言いたげな溜息を吐いた。
「『ツッコミ待ちの寂しさを分かってないねー。まーいいや、それより人質もちゃんと届いたことだし、ここらで幕引きにしない?』」
「ふん。自ら舞台の幕を上げた輩が、随分と勝手な事を言う」
「『アハハハ、そう?俺の考えは逆かなー。自分でセッティングして幕を上げたからこそ、幕を引く権利と義務があると思うけどねー俺は。舞台に限らず主催者ってのはそういうモンっしょ』」
「己が手で舞台を演出しておきながら、己は観客席に座して其処で踊る道化を笑う。趣味の悪い事だ。貴様の何が、此処にいる獣共を惹き付けたのか。それは関知する所ではないが……俺とは相容れんらしいな」
「『あっれー、嫌われちゃったかな?実際に会ったら好きになってもらえる自信あるんだけどなー。アハハ、でもその前に殺されちゃいそうだからムリか。君は嫌いかもしれないけど、俺は君のこと、結構好きだったりするのよ。似た者同士、シンパシー感じちゃったりー、みたいな?』」
「貴様の如き輩と、俺が。似ている、だと?余程俺の勘気に――」
「『君さ、世界のこと憎んでるでしょ。そりゃもう、滅茶苦茶にしてやりたいくらい』」
「…………」
またしても。またしても、だ。強い確信に満ちたマロードの言葉に、俺は思わず沈黙を選んでいた。
知ったような口振りで俺の事を語るマロードに腹が立ったのは事実だが、それ以上に、抑え切れない戸惑いが俺の心を支配していた。
例え心の一欠けらに過ぎずとも。
真の意味で本音を見抜かれるのは、初めての経験だった。
「『どうして俺がそんな風に自信満々に言えるのか、不思議じゃない?その辺り、君とは色々と話したい事があるんだけど……、うん、今日のところはここまで!
どうせならもっと落ち着ける状況でゆっくり話したいからさ、またの機会を待つとしますか』
「……」
「『楽しみは後に取っておくのが人生の正しい味わい方っていうか?そんな感じじゃん?我慢強い俺ってステキ!抱いて!って自分で自分は抱けないか、人は皆孤独だねー哀しいね、アハハハ!』」
「…………」
これ以上の会話は無駄か。そう判断し、携帯を耳から離して通話を切ろうとした瞬間。
「あ、ちょっと待って!」
つい先程、栄えある俺の直臣第二号の座に収まったねねが慌てた調子で制止した。
そういえばこの少女はマロードとの因縁があるらしかったな、と記憶を呼び返しながら、俺は用済みとなった携帯をねねに投げ渡した。
「せんきゅご主人。さてさてさぁて、なんて文句を付けてやろうかな」
傍目に分かるほどにも意気込みながら携帯を耳元に持ち上げて、大きく息を吸い込み、
「…………!」
そのまま無言で固まった。
数秒間、表情すらも凍り付いたように固まっていたが、氷が溶け出すように徐々に怒りの形相へと変貌していく。
「うがぁあああああムカツクムカツクムカツクゥゥゥゥ!アイツ!ボクが代わるの分かってて通話切りやがった!死ね、死ね死ね死ね不幸に塗れて惨めに死んじゃえ!!」
清楚さも上品さも淑やかさも一片たりとも見当たらない罵声を喚き散らしながら、ねねは携帯電話こそが諸悪の根源と言わんばかりに思いっきり振りかぶり。
そして、何の慈悲も容赦もない力加減でコンクリートの床に叩き付けた。
今夜の戦闘では足技にしかお目に掛かっていなかったが、どうやら膂力も人外級だったらしい。哀れにも携帯は粉々に砕け散った。
「おおおおおおおおおおいテメェェ!俺のケータイに何しやがるゴラァ!!」
「どうどう、落ち着けリュウ!いや気持ちはすっげー分かるけどよ、アミ姉ぇが人質になってるからな!?まあこれでも飲んで落ち着けって」
「って興奮剤渡してどうすんだ!……クッ、しょーもないボケなんぞのお陰で少し落ち着いちまった自分が憎いぞ……!」
「う~ん。買い換えたばっかりだったのになぁ。勿体ないなあ……まあいいか。くかー」
「あ、この携帯キミのだったんだ。ゴメンねぇ他意は全然全く完膚なきまでにこれっぽっちもなかったんだけど、ちょっとうっかり落として壊しちゃった。でも謝ったから許してくれるよね?」
「上目遣いで可愛らしく言えば何でも許されると思ってんじゃねぇぞメスガキ……!いいか、あのケータイにはマロードから届いたメールの全てを保存してある!マロードの生声を就寝用と起床用の二パターンに分けて録音してあるし、更には貴重なマロードの生写真もコレクションしていた!それを、それを貴様は……これが許せるか、なあ天!」
「え、あ~……ごめんリュウ。普通に引くわ」
「ZZZ」
先程までの殺伐とした空気は何処へ行ったのやら、通話の切れ目がシリアスの切れ目、と言わんばかりに混沌空間が展開されていた。
これが普段の板垣一家だと言ってしまえば、まあそれはその通りなのだが。
少し前までガチで殺し合っていた相手がこんな連中だと思うと、何と言うか、色々と遣る瀬ない。心なしか周囲に充満している血臭ですらもシュールに思えてきてしまう。
「あの穀潰しども……馬鹿やるよりもアタシを助けるのが先だろうに。帰ったら制裁だねェ」
手錠で拘束されて尚、亜巳の目は嗜虐的に輝いていた。まだ解放した訳でもないのに、お仕置きメニューの内容を思案して悦に浸っているようだ。
真のサディストというものはいかなる状況であれドS心を忘れないらしい。ふっ、また下らぬ知識を付けてしまった。
「なァ、アンタ」
「ん?貴様は――何者だ?此処に至るまで俺の眼を掻い潜るとは見事な陰行、褒めてやろう」
「まるっと存在ごと忘れてんじゃねェぞクソが、前田啓次だ!」
「……?」
「本気で不思議そうな顔してんじゃねェ!オレは、あー、そうだ、夕方に親不孝通りでアンタにケンカ売った――」
俺は必死で頭を捻る。そう言われてみれば、チャラい金髪と大量のピアスには薄っすらと見覚えがあるような気がしてきた。
「ふん、思い出した。俺に手も足も出ず無様に敗北し。竜兵には見るも無残な姿になるまで殴られた雑魚だったな。得心がいったぞ」
「えらく不本意な思い出し方をされた気がするぜ……まァそれは置いといてだ。アンタには一応、礼を言っとこうと思ってよ」
「何だい、シンに殴り倒されて踏みつけられたのがそんなに嬉しかったのかい?
フフ、活きの良さそうな豚じゃないか、アタシにも踏まれてみる?今なら特別にサービスしてやるよ」
「人質のクセに横から出てきて話をややこしくすんじゃねェよ!……それでだ。まあアンタに礼を言うのも筋違いかもしれねェけどよ、オレはまだくたばらずに済んでる」
「……」
「それはつまり、まだまだ上を目指して足掻けるってコトだ。夕方にも言ったが、オレはこんな所で終わるつもりはねェ、必ずアンタと同じステージに立ってやる。だからよォ」
チャラい外見に似合わず、凛々しいとさえ形容できる表情で真っ直ぐにこちらを見据え、啓次は言葉を続けた。
「忘れんなよ。オレの名前は前田啓次。前田啓次だぞ、絶対に忘れんなよ!絶対だぞ!」
思わず何かのネタフリかと疑ってしまいそうなほど執拗に念を押しながら、啓次は工場の外へと歩き去っていく。
全身は隈なくボロボロで足取りはフラフラ、今にも倒れそうな程に危なっかしい姿だったが。
その背中は間違いなく、勝者の誇りと力強さに満ちていた。
「ヒヒ、青春ってのはイイねぇ。俺にもあんな頃があったぜ」
「それは無いだろう」
唐突に思い出を捏造し始めた釈迦堂に冷たいツッコミを入れる。
実際に釈迦堂の青春時代を知っている訳ではないが、この男が主人公の如く熱血している姿など有り得ない。
こいつは間違いなく高校生の時点で非道な悪役ポジションだっただろう。
となると主人公は同期の現川神院師範代、ルー・イーか。なるほど、誂えたかのようにピッタリな配役だ。
「青春かぁ。ルーの奴は主人公気質だったけどよ、ありゃ違うな。だってヒロインいねぇし」
奇しくも似たような事を考えていたのか、釈迦堂が客観的に見て意味不明な呟きを漏らした。
同類だと思われるのは癪なので、同調はしない。ついでにルー先生に同情はしない。
「んで、ヒロインと言えば……そこで幸せそうにぶっ倒れてる蘭はどうよ。俺の知ってる限りじゃある意味、辰よりヒデェ暴走癖を抱えてたが、ちったぁ改善したのかよ?」
ヒロインと蘭の繋がりがまるで見えてこない、文脈を徹底的に無視した内容だったが、他でもない元・師匠の質問だ。俺は生真面目にも答えてやる事にした。
「この莫迦従者が倒れている理由。辰との戦闘で“気”を過剰に消費したのが、その一つだ。それで理解出来るだろう」
「なるほど、本格的に重症だわな。向こう十年も治そうと頑張って、それでも治らないってのは、そりゃもうトラウマってレベルじゃねえ。まるで――呪いじゃねえかよ」
「……」
俺は、足元でむにゃむにゃと何やら寝言を呟いている従者を、黙って見下ろす。
返り血を浴びた顔はだらしなく緩んで、見ているこちらに伝染しそうな程に幸せそうだ。
心中ではあれほど人を斬る事を嫌がっている癖に、俺が適当な一言で褒めてやっただけで、こんなにも幸せそうに笑っている。
どれほど辛くても、それだけで笑えてしまう。
「俺とルーの青春にヒロインがいなかったのはよ、何も俺達がモテないダメンズだったからじゃねえんだぜ。その辺りを踏まえて若人に忠告しといてやるよ。熱血に燃えるも良し、冷血に徹するも良し、ただ、ヒロイン一人救えねぇようなヘタレ主人公にゃなるな」
「……」
「ヒヒ。らしくないこと言っちまったか?まぁでも、ダークな過去を匂わせる今の俺は間違いなくカッチョイイから良しとするぜ」
釈迦堂はいつも通りの薄ら笑いを貼り付けて言うと、おもむろに人質二名――忠勝と巨人の襟首を掴み、床をスライドさせるようにして、こちらへと放って寄越した。
身体のツボでも突かれているのか、乱暴に扱われても二人が目を覚ます様子はない。間近で彼らの無事を改めて確認してから、俺は釈迦堂を睨んだ。
「ふん。一方的に人質を解放していいのか?亜巳は未だ、俺の手中にあると云うのに」
「そういう駆け引きは苦手なんだよ、面倒くせえから。大体お前、もうお互い手を引くってマロードと約束してるじゃねえかよ。織田信長には情けも容赦もねえが、約束を守るだけの誇りはある。それくらいは俺にも分かるぜ」
「……」
全く、マロードといい釈迦堂といい、見透かしたような事ばかり言ってくれる。何より腹立たしいのは、それが何一つ間違っていない点だった。
正しく真実を突く言葉ほど対処し難いものはない。俺のように虚飾を虚飾で塗り固めた人間にとっては、尚更だ。
俺は心中にて何度目かの溜息を吐き出すと、コートのポケットから取り出した鍵を使って亜巳を解放してやった。
「あぁやれやれ、やっと自由に動けるよ。こんな窮屈なモンを進んで身に着けて喜んでる豚どもは理解に苦しむねェ、全く」
一応警戒は怠らなかったが、さすがに今更暴れるつもりはないらしく、亜巳はその場で大きく伸びをしてから、得物を拾って大人しく妹弟達の下へと歩み寄る。
「さーて」
そして、素敵に妖艶な笑顔と青筋を同時に浮かべながら、愛用の棒をぶん回したのであった。
「アタシを放置して遊んでんじゃないよ、このクソ虫阿呆どもが!!」
――と、綺麗にオチが付いたところで。
宇佐美代行センターによって持ち込まれた“黒い稲妻”討伐依頼に端を発した今夜の宴は、概ねこれにて幕を閉じる。
実際にはこの後、唐突に勃発した板垣一家のバトルロワイアルを釈迦堂と並んで見物したり。
気を失った男性二人と女性一人分の身体を然るべきところに搬送するために四苦八苦したり。
我が新たなる臣下であるところの明智音子を色々と尋問したり。
そんな感じの多種多様な後片付けが舞台裏で繰り広げられるのだが、それらの出来事を延々と語ったところで蛇足というものだろう。
本人の言う通り、実質的にこの舞台の幕を引いたのは間違いなくマロードだが、それを素直に認めてやるのも腹立たしい限りなので、せめてカーテンコールは俺こと織田信長に飾らせて貰おう。
―――今宵の舞台は、これにて閉幕!
~おまけの川神院~
「ハックショーイ!」
「あれ、ルー師範代。どうしたの?師範代がカゼ引くなんて珍しいね」
「いや、体調管理はバッチリなはずだヨ。これは……誰カがワタシの噂をしてルのかもしれないネ」
「あはは、そんなベタベタな」
「まあそれは無いじゃろ、ルー。お前はわしみたいにモテんからの」
「ワタシは武道一筋デスのでモテなくても結構。カゼを引かなかったなら万事OKネ」
「だからモテないんじゃないか?」
「お、お姉さまぁ!ホントのことをさらっと言っちゃダメだって!」
マロードの口調がどうにも上手く掴めず、意外なところで苦労した回でした。
原作だとボイスが入っているのでイメージが掴み易いのですが、それを文章のみで表現するのはなかなか難しい……。
声優の方々の演じ分けの偉大さを改めて実感しましたとさ。
P.S.今回で話の展開的にも一区切りが付きましたので、次話あたりでチラ裏からその他板に移動しようかと考えています。
それに併せてタイトルも変更するつもりですので、その他板に見慣れないまじこいSSが増えていたら是非とも覗いてやってください。それでは次回の更新で。