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No.13774の一覧
[0] うそっこおぜうさま(東方project ちょこっと勘違いモノ)[にゃお](2011/12/04 20:19)
[1] 嘘つき紅魔郷 その一 (修正)[にゃお](2011/04/23 08:52)
[2] 嘘つき紅魔郷 その二 (修正)[にゃお](2011/04/23 08:53)
[3] 嘘つき紅魔郷 その三 (修正)[にゃお](2011/04/23 08:53)
[4] 嘘つき紅魔郷 エピローグ (修正)[にゃお](2011/04/23 08:54)
[5] 嘘つき紅魔郷 裏その一 (修正)[にゃお](2011/04/23 08:54)
[6] 嘘つき紅魔郷 裏その二 (修正)[にゃお](2011/04/23 08:55)
[7] 幕間 その1 (修正)[にゃお](2011/04/23 09:11)
[8] 嘘つき妖々夢 その一 (修正)[にゃお](2011/04/23 09:24)
[9] 嘘つき妖々夢 その二[にゃお](2009/11/14 20:19)
[10] 嘘つき妖々夢 その三[にゃお](2009/11/15 17:35)
[11] 嘘つき妖々夢 その四[にゃお](2010/05/05 20:02)
[12] 嘘つき妖々夢 その五[にゃお](2009/11/21 00:15)
[13] 嘘つき妖々夢 その六[にゃお](2009/11/21 00:58)
[14] 嘘つき妖々夢 その七[にゃお](2009/11/22 15:48)
[15] 嘘つき妖々夢 その八[にゃお](2009/11/23 03:39)
[16] 嘘つき妖々夢 その九[にゃお](2009/11/25 03:12)
[17] 嘘つき妖々夢 エピローグ[にゃお](2009/11/29 08:07)
[18] 追想 ~十六夜咲夜~[にゃお](2009/11/29 08:22)
[19] 幕間 その2[にゃお](2009/12/06 05:32)
[20] 嘘つき萃夢想 その一[にゃお](2009/12/06 05:58)
[21] 嘘つき萃夢想 その二[にゃお](2010/02/14 01:21)
[22] 嘘つき萃夢想 その三[にゃお](2009/12/18 02:51)
[23] 嘘つき萃夢想 その四[にゃお](2009/12/27 02:47)
[24] 嘘つき萃夢想 その五[にゃお](2010/01/24 09:32)
[25] 嘘つき萃夢想 その六[にゃお](2010/01/26 01:05)
[26] 嘘つき萃夢想 その七[にゃお](2010/01/26 01:06)
[27] 嘘つき萃夢想 エピローグ[にゃお](2010/03/01 03:17)
[28] 幕間 その3[にゃお](2010/02/14 01:20)
[29] 幕間 その4[にゃお](2010/02/14 01:36)
[30] 追想 ~紅美鈴~[にゃお](2010/05/05 20:03)
[31] 嘘つき永夜抄 その一[にゃお](2010/04/25 11:49)
[32] 嘘つき永夜抄 その二[にゃお](2010/03/09 05:54)
[33] 嘘つき永夜抄 その三[にゃお](2010/05/04 05:34)
[34] 嘘つき永夜抄 その四[にゃお](2010/05/05 20:01)
[35] 嘘つき永夜抄 その五[にゃお](2010/05/05 20:43)
[36] 嘘つき永夜抄 その六[にゃお](2010/09/05 05:17)
[37] 嘘つき永夜抄 その七[にゃお](2010/09/05 05:31)
[38] 追想 ~パチュリー・ノーレッジ~[にゃお](2010/09/10 06:29)
[39] 嘘つき永夜抄 その八[にゃお](2010/10/11 00:05)
[40] 嘘つき永夜抄 その九[にゃお](2010/10/11 00:18)
[41] 嘘つき永夜抄 その十[にゃお](2010/10/12 02:34)
[42] 嘘つき永夜抄 その十一[にゃお](2010/10/17 02:09)
[43] 嘘つき永夜抄 その十二[にゃお](2010/10/24 02:53)
[44] 嘘つき永夜抄 その十三[にゃお](2010/11/01 05:34)
[45] 嘘つき永夜抄 その十四[にゃお](2010/11/07 09:50)
[46] 嘘つき永夜抄 エピローグ[にゃお](2010/11/14 02:57)
[47] 幕間 その5[にゃお](2010/11/14 02:50)
[48] 幕間 その6(文章追加12/11)[にゃお](2010/12/20 00:38)
[49] 幕間 その7[にゃお](2010/12/13 03:42)
[50] 幕間 その8[にゃお](2010/12/23 09:00)
[51] 嘘つき花映塚 その一[にゃお](2010/12/23 09:00)
[52] 嘘つき花映塚 その二[にゃお](2010/12/23 08:57)
[53] 嘘つき花映塚 その三[にゃお](2010/12/25 14:02)
[54] 嘘つき花映塚 その四[にゃお](2010/12/27 03:22)
[55] 嘘つき花映塚 その五[にゃお](2011/01/04 00:45)
[56] 嘘つき花映塚 その六(文章追加 2/13)[にゃお](2011/02/20 04:44)
[57] 追想 ~フランドール・スカーレット~[にゃお](2011/02/13 22:53)
[58] 嘘つき花映塚 その七[にゃお](2011/02/20 04:47)
[59] 嘘つき花映塚 その八[にゃお](2011/02/20 04:53)
[60] 嘘つき花映塚 その九[にゃお](2011/03/08 19:20)
[61] 嘘つき花映塚 その十[にゃお](2011/03/11 02:48)
[62] 嘘つき花映塚 その十一[にゃお](2011/03/21 00:22)
[63] 嘘つき花映塚 その十二[にゃお](2011/03/25 02:11)
[64] 嘘つき花映塚 その十三[にゃお](2012/01/02 23:11)
[65] エピローグ ~うそっこおぜうさま~[にゃお](2012/01/02 23:11)
[66] あとがき[にゃお](2011/03/25 02:23)
[67] 人物紹介とかそういうのを簡単に[にゃお](2011/03/25 02:26)
[68] 後日談 その1 ~紅魔館の新たな一歩~[にゃお](2011/05/29 22:24)
[69] 後日談 その2 ~博麗神社での取り決めごと~[にゃお](2011/06/09 11:51)
[70] 後日談 その3 ~幻想郷縁起~[にゃお](2011/06/11 02:47)
[71] 嘘つき風神録 その一[にゃお](2012/01/02 23:07)
[72] 嘘つき風神録 その二[にゃお](2011/12/04 20:25)
[73] 嘘つき風神録 その三[にゃお](2011/12/12 19:05)
[74] 嘘つき風神録 その四[にゃお](2012/01/02 23:06)
[75] 嘘つき風神録 その五[にゃお](2012/01/02 23:22)
[76] 嘘つき風神録 その六[にゃお](2012/01/03 16:50)
[77] 嘘つき風神録 その七[にゃお](2012/01/05 16:15)
[78] 嘘つき風神録 その八[にゃお](2012/01/08 17:04)
[79] 嘘つき風神録 その九[にゃお](2012/01/22 11:18)
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[13774] 嘘つき紅魔郷 裏その二 (修正)
Name: にゃお◆9e8cc9a3 ID:2135f201 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/04/23 08:55


~side 美鈴~



 いつもなら夕日が山に沈む時刻。大空は紅霧に覆われてしまっている為、太陽の所在は分からないけれど、
周囲の明るさの減少具合からしてそれくらいの時間なのだろう。
 私は軽く息をつき、数刻前に行ったレミリアお嬢様との会話を思い出す。

『――私の楽しみをどうか奪ってくれるなよ、紅美鈴。
この門前でお前と顔を突き合わせ、下らない雑談に興じることも、私の大切な日常なのだから』

 お嬢様の言葉を思い出す度、私の胸の中に熱い感情が込み上げてくる。気を抜けば涙が出そうになる程だ。
 その言葉は酷く優しいもので。その言葉は酷く嬉しいもので。こんな嘘つき相手に、お嬢様はそんな優しい言葉を与えてくれたのだ。
 卑怯者。私は本当に卑怯者だ。お嬢様の為とはいえ、私は息を吐くようにお嬢様に沢山の嘘をついた。

『安心して下さい、お嬢様。たとえ博麗の巫女が相手でも、私は一歩足りともこの門を越えさせはしませんから。
たとえ命尽きようとも、お嬢様の為にこの場所を死守してみせます』
『恐らく博麗の巫女は私が今まで闘ってきた妖怪達とは比較にならない強さなのでしょう。
だけど、私は一歩足りとも引きません。例えスペルカードルールを破ったとしても、お嬢様には指一本触れさせませんから』

 我ながら酷い言葉だと思う。我ながら酷い嘘つきだと思う。
 博麗の巫女が来ても、私はフランお嬢様の計画通りに巫女を通すことは確定している。それなのに、あんなことをのたまったのだ。
 お嬢様の不安を少しでも取り除きたかった、そんな自己満足の為に、私は酷い嘘を沢山ついたんだ。
 けれど、お嬢様はそんな私に怒ってくれた。命を捨てるような真似はするな、と。お前が死んだら私は怒る、と。
 嬉しかった。お嬢様の言葉が本当に嬉しかった。嘘つきな自分に、お嬢様はあんなにも優しい言葉を沢山くれたのだ。
 お嬢様、レミリアお嬢様。ごめんなさい。そしてありがとうございます。今回の件で、私はお嬢様のお役には立てません。
 けれど、誓います。これから先も私はお嬢様の為に生き、お嬢様の為に死ぬことをもう一度ここに誓い直します。
 全てはレミリアお嬢様の為に――そう誓ったとき、遠くの空から見える二つの人影。

「…お嬢様、もしかしたら少しだけお役に立てるかもしれません」

 一つの影は博麗の巫女。だが、もう一つの影は見知らぬ白黒の洋服に、箒の上に乗った誰か。
 フランお嬢様から受けた命令は二つ。『博麗の巫女を館内に通すこと』と『それ以外の来客は追い払うこと』だ。
 ならば私のやるべきことは一つ。お嬢様の為に、あっちの黒白には時間の許す限り私に付き合ってもらうことにしよう。
 大地を踏みしめ直し、私は妖気を高めていく。弾幕ごっこは不得手だけれど、倒すことに執着しなければ時間を稼ぐことは容易い。
 さあ、始めましょうか。レミリアお嬢様の為に、全ては敬愛するレミリア様の為に。











~side 霊夢~



「やっぱり人間って使えないわね」

 メイドを打倒し、この異変の主犯を探していた私だけど、その犯人は思いのほか簡単に見つかることになる。
 声のする方に護符を突きつけると、その方角には幼い容貌をした吸血鬼が一人。
 この化物屋敷の親玉にしては、嫌な感じもプレッシャーもない。それが私にとっては何より不気味に感じられた。何なのコイツ。

「…さっきのメイドは人間だったのか」
「貴女、殺人犯ね」
「一人までなら大量殺人犯じゃないから大丈夫よ」

 私をからかう様子が実に癇に障る。その余裕ぶっている姿もまた気に食わない。
 確かに吸血鬼ということもあり、その実力は計り知れないんだろう。だけど、最初から私に対して勝ちを確信しているのが腹立たしい。
 確かに人間はアンタ達にとって格下の存在なんだろうけれど、『博麗霊夢』を舐めているという事実が許せない。

「で?」
「そうそう、迷惑なの。あんたが」
「短絡ね。しかも理由が分からない」
「とにかく、ここから出ていってくれる?」
「ここは、私の城よ?出ていくのは貴女だわ」
「この世から出てってほしいのよ」

 あからさまな挑発をする私に、呆れる様子の吸血鬼。
 …変な奴ね、本当。これだけ格下の人間から好き勝手言われたら、そろそろ本性というか、妖怪の力を見せつけてくると思ったんだけど。
 今、私の目の前にいるちんちくりんな吸血鬼からは妖気のよの字も感じられない。まだ実力を隠すつもりなんだろうか。本当に頭にくる。
 私相手ではそんなの必要ないと思っているんだろうか。馬鹿にして。

「しょうがないわね。今、お腹いっぱいだけど…」
「護衛にあのメイドを雇っていたんでしょ?そんな、箱入りお嬢様なんて一撃よ!」
「咲夜は優秀な掃除係。おかげで、首一つ落ちてないわ」
「…貴女は強いの?」
「さあね。あんまり外に出して貰えないの。私が日光に弱いから」
「…なかなかできるわね」
「こんなにも月が紅いから――本気で殺すわよ」

 私に向けられたのは、純然たる妖怪の殺気――の、筈なんだけど…正直、全然怖くない。
 いや、怖くないっていうか、微塵も重圧を感じない。なんていうか、子供に睨まれてるっていうか、そよ風っていうか。
 私は今、なんとなく直感で『コイツ、実は弱いんじゃないか』とか感じているんだけれど、果たしてこの勘を信じていいものか。
 門番は直接戦ってはないけれど、かなりの妖力を全身から放っていた。図書館の魔法使いは恐ろしい程に強大な魔力を有していた。
 そしてこの館のメイドは人間離れしたスペルと能力を有していた。その主…いやいや、絶対弱い訳がない。あり得ない。そんな筈がない。
 だからこそ、私は気合を入れ直す。そして、正面から吸血鬼を睨み返す。

「こんなにも月が紅いのに」

 余計なことを考えるのはこれまでだ。とにかくコイツを懲らしめて、この異変をさっさと解決する。
 そして神社に帰ってお風呂に入ってご飯食べて寝ておしまいだ。考えをまとめ、私は弾幕を展開する。

「楽しい夜になりそうね!!」「永い夜になりそうね!!」

 …なんだ、やっぱり相当な実力者だったんじゃない。
 けれど、それでこそ倒し甲斐があるってものよ。覚悟しなさい、全ての元凶めっ!












~ side咲夜~



「フランお嬢様、やっぱり駄目だった?」
「ええ…『お姉様に怪我を負わせたのは、私のミス。だから看病するのは私だ』って言ってきかなくて」
「ふふっ、何だかんだ言ってレミリアお嬢様に一番甘いのは他ならぬフランお嬢様なのかもしれないわね」

 そう言って笑い掛けてくる美鈴に、私は苦笑を浮かべながらも同意する。結局のところ、フラン様が母様のことを一番愛しているのだ。
 椅子に腰をかけ、紅茶を嗜んでいる美鈴に習い、私も椅子に腰を下ろす。そんな私を横目で見て、美鈴は楽しそうに口を開く。

「看病役をフランお嬢様に取られちゃって残念ね」
「…余計なこと言ってないで門番に戻りなさいよ」
「あら、知らなかった?レミリアお嬢様が意識を取り戻すまで、私の仕事はレミリアお嬢様の警護なのよ」
「誰がそんなことを認めたのよ」
「私が勝手に決めたわ。勿論、パチュリー様には許可を貰っているしね。
かく言う咲夜も、フランお嬢様程ではないものの、ずっとレミリアお嬢様につきっきりじゃない。お仕事は良いの?」
「休暇届けをパチュリー様に叩きつけてきたわ。勿論、母様が意識を取り戻すまでの期間中ずっと」
「あらら、これはレミリアお嬢様が意識を取り戻して最初にすることは館内の大掃除になりそうね」

 美鈴の軽口にそうねとだけ返して、私も机の上にある紅茶に口をつける。
 人里で厳選したモノを選んだだけあって、本当に美味しいと思う。早く母様にもこの味を堪能してもらいたい。

「…あの、咲夜、それ私が淹れた紅茶」
「美味しいわ。ありがとう、美鈴。忙しい私の代わりに紅茶を淹れてくれて」
「忙しいって、今は咲夜も休職状態じゃない…全く、昔はあんなに素直で可愛かったのに」
「母様を護る為に色々誰かさん達にこれ以上ないってくらい鍛えられたもの。人は変わるものよ」
「人は変わる、良い言葉ね。妖怪の私にはこれ以上ない程に素敵な言葉に聞こえるわ」

 私の行動を怒ったりすることはなく、美鈴は仕方がないとばかりに苦笑しながら、新しく紅茶を淹れなおす。
 最近は母様に対して素直になれない分、こうして姉代わりの美鈴によく我儘を言っている気がする。少しだけ反省しよう。
 新しいカップに紅茶を淹れながら、美鈴は私に口を開く。それは本当にしみじみとした口調で。

「何はともあれ、今回の件は一応無事に終了ってことね」
「ええ、そうね…これでまたいつもの日常が戻ってくるわ」
「後はお嬢様の名前が上手く幻想郷中に広まってくれると良いんだけどね」
「否が応でも広まるわよ。今回の紅霧は幻想郷全体、言ってしまえば人里から妖怪の山一体まで包み込んでしまったもの。
こんな奇怪な事件が解決し、紅霧も収まった。普通なら、この原因が何だったのかを知りたがるでしょう?」
「そうして調べた結果、レミリアお嬢様の名前に辿り着く…そして、少しでも妖しの知識があるものならば、
幻想郷一体を紅霧で覆うことがどれ程までに莫大な妖力を必要とするかを理解し、その異変を起こした犯人を警戒し、恐れを抱く」
「その中でも強者と謳われる存在は、レミィに対して興味を抱く。これから先はレミィと接触した妖怪を端から私達で利用していけばいい。
今回はその切欠を上手く作ることが出来た意味も込めて成功だと自負しているわ、サボりの御二人さん」

 私達の会話の途中で、何時の間に部屋に入ってきていたのか、パチュリー様が口を挟む。
 どうやら図書館の事後処理(巫女が暴れまわった為、本が一部ばらばらになった)に一区切りがついたのか、
その表情は少しばかり疲れ切った様相を呈してしまっている。こんなパチュリー様は久々に見た気がする。

「パチュリー様、本の整理の方は終わったんですか?」
「ええ、本当に好き勝手してくれたものだわ。あんの巫女、今度会ったら一発や二発くらい本の角で殴ってあげようかしら」
「止めてください、逆にボコボコにされるのがオチですから。あの巫女は正直人間を辞めてますもの」
「あら、それじゃ咲夜と一緒ね。スペルカードルール抜きでやったら貴女はアレに勝てるのかしら?」
「お戯れを。私はそんなに大人気ない人間に見えますか?」
「人間には見えないわね。私には立派な化物に見えるわ」

 幾らなんでも年頃の乙女に向ってそれは無いんじゃないだろうか。パチュリー様の言葉にくすくす笑っている美鈴が腹立たしかったので、
とりあえずナイフを一本投げておいた。案の定、人差し指と中指で簡単に挟み止められた。相も変わらず外見に似合わずに疾くて巧い。
悔しいけれど、『真剣』な美鈴相手にはまだまだ私の実力では届きそうにないわね。本当、私は良い姉、良い師に恵まれたものね。

「じゃれ合うのも良いけれど、レミィの迷惑にならないようにね」
「「当然です」」
「…貴女達、本当に仲が良いわよね」

 呆れかえるパチュリー様の溜息は室内に溶けて。私と美鈴のじゃれ合いは結局、フラン様から
『もうすぐお姉様が目覚めそうだ』という報告が告げられるまで続いていた。











~side フランドール~



「何をやってるんだか。まったくもう、お姉様は…」

 元気になったお姉様が、館の外で悲鳴を上げている姿をバルコニーから眺めて、私は思わず笑ってしまう。
 お姉様の様子が可笑しかったのは、どうやらパチェも同じようで、私の隣でクスクスと笑みを零している。
 元気になってくれたのは嬉しいけれど、早々に日光に当たって悲鳴をあげるなんて、本当にお姉様って人は。

「二か月ぶりの外出ですもの。気分が高揚してしまうのも仕方のないと言うものよ」
「それもそっか。…それで、貴女はどうしてさも当たり前のような顔をしてここに居るのかしら、八雲紫?」

 私の背後から降って湧いたように聞こえてきた声に、私は思わず呆れてしまう。最近、お姉様のお見舞いと称して何度も
こんな風に館に突然現れるコイツには正直少しばかり辟易している。何ともまあ遠慮を知らない奴だ、と。

「あら、私の大切な友人の快気祝いですもの。おめでとうの言葉の一つくらい差し上げるのが友の役割というもの」
「ならば、それは今現在館の外でコントを繰り広げているお姉様に告げてあげなさいよ」
「勿論、すぐに行きますわ。けれど、その前に貴女達に幾つか確認したいことがありまして」

 八雲紫の言葉に、パチュリーは幾許か表情を固くする。最近の私はそれほどでもないけれど、パチュリーはコイツを
微塵も信じていない。あわよくばお姉様に手を出そうとしているんじゃないかと疑っている。
 魔女たるもの、それくらいの用心深さが必要なのだろうけれど、私はそこまでコイツを敵視していない。八雲紫は他者を利用し、自身を利用されるのを
良しとする妖怪だ。自分の目的の為ならば、他者にとって都合良く踊ることも厭わない、本当の意味で『頭の良い』妖怪だ。誇りや妖怪の在り方の上に
胡坐をかかない、正真正銘の賢者。なればこそ、私達が利用できるうちはトコトンまで利用するだろう。そのうえで、私達を繋ぐ鎖となるお姉様には絶対に手出ししない。
 そんな私の胸の内を悟っているのか、八雲紫はクスリと小さく微笑みながら話を続ける。

「まず一つ。レミリア・スカーレットの本当の強さについて教えて頂戴。
私の認識するレミリア・スカーレットが真の姿で無いのなら、幾ら友とはいえ、この身を盾にして護ることなんて出来やしない」
「…へえ、意外。お前、本当にお姉様を護ってくれるんだ?」
「言ったでしょう?私はあの娘が気に入った、と。あれは幻想郷内で稀有な存在よ。本当に興味が尽きないわ。
…私の知るレミリアが本当のレミリアならば、ね」
「お前の知っているお姉様を言ってみなさいな。正誤はその後でしっかり判断してあげる」

 私の言葉を受け、八雲紫は少し考える仕草を見せたのち、私に促されるままに言葉を続けてゆく。

「レミリア・スカーレット。紅魔館の主にして、誇り高き吸血鬼。幾多の妖怪や妖精の頂点に立つ存在。
けれど、彼女の本当の姿は、そのような肩書に何一つ比肩しない、力を持たぬ面妖不可思議な吸血鬼。
妖力も魔力も無く、争い事を心底恐れ、本人はただただ平穏無事に生きることだけを望んでいる。
将来の夢はケーキ屋さんになって、良い人と結婚して幸せな家庭を築くこと。好きなことは漫画を読むこと。どうかしら?」
「馬鹿ね、一番大事なことが抜けているわ。お姉様は『誰からも愛される最高の吸血鬼』でしょう」

 一瞬目を丸くした八雲紫だが、笑みを零して私の言葉に同意する。ああ、実にその通りだと。
 八雲紫から視線を外し、私が館外に視線を向けると、そこにはお姉様が美鈴と話しをしている姿がある。外出する旨を告げているのだろう。

「お前の言ったことには一欠けらの間違いも無いよ。しかしよくもまあ調べ上げたものね。
幻想郷の管理者はストーカーが趣味かしら?どうせスキマを介してお姉様を覗いていたんでしょう」
「否定はしないわ。レミリア・スカーレットを把握することが私の急務だったもの。
まあ、予想以上のものが沢山見られて役得だったわよ。本当のあの娘の姿ったら、可愛くて可愛くてしょうがないんですものね。
あれなら貴女達が執着するのも理解出来るわ。まあ、貴女達がレミリアに熱心なのは別の理由でしょうけれど」
「今度は私達とお姉様の関係を探るつもり?ならば今度は命をベットする準備もお勧めするわ」
「天狗じゃあるまいし、そこまでデリカシーが無い訳では無いわ。とにかく、レミリアの実力が本当に『アレ』だというのは理解したから。
友の為に、私も時折はこの身を挺してあげるとしましょう」
「期待しない程度に期待してあげるわ、お姉様のオトモダチ」
「ついでに聞いておくけれど、その大切なお姉様に治癒魔術を使ってあげなかった訳は?
骨折程度ならその日のうちに治してあげられたでしょう?」
「その日のうちに治してなんかしまったら、お姉様は即座に紅魔館から飛び出して逃げていたでしょうよ。
時間を置いたからこそ、あんな風に前向きに頑張ってくれているのよ。心に深くトラウマを残した相手、博麗霊夢と自分から仲良くなろうってね」

 私の言葉に八雲紫は『成程』と苦笑交じりの納得をしていた。
 あんなに怖い目にあわせてしまったんだもの。お姉様がそんな風になるのは仕方のないことだ。だからこそ、今のお姉様の考えは本当に嬉しく思う。
 自分の命を護る為に、お姉様は幻想郷の鍵とも言える博麗霊夢と仲良くなろうとしている。それは本当に大きな意味を持つ筈だ。

「それで、他に訊きたいことは?」
「そうねえ…あと二つあったのだけれど、一つはもう構わないわ。貴女がレミリアを心から愛していることを理解出来たから。
もしレミリアを傀儡としているのだったら、私は本気で貴女を殺さなければならなかったわ」
「…良いわ、今回はお姉様を心配しての言葉だったから聞き逃してあげる。
何度も言うけれど、私達はお姉様のことだけを考えて生きているの。お姉様のいない世界になんて興味も無いし、どうでも良い。
お姉様がこの幻想郷で幸せを掴む為に、私達は生きるのよ。お姉様を人形にしたところで、私達の目的は叶わない」
「妖怪にしては本当に稀有な存在ね、貴女達は。今のご時世、力の無い妖怪を見下す妖怪なんてザラに居るでしょうに」
「力の有無で他者を判断するのは合理的だわ。けれど、それは獣のランク付けでしかない。あまりに原始的で獣臭いわね。
お姉様は確かに力が無いかもしれない。けれど、お姉様には私達の力がある。お姉様が足りない力は、私達で補えば良い。
さて、その場合貴女をはじめとする幻想郷の妖怪達はお姉様に勝てるかしら?」
「成程、確かに貴女の言う通りね。人脈人望もまた武器なり、か」

 八雲紫は楽しそうに微笑みながら、お姉様の傍へ行く為にその体を宙に浮かせる。どうやら近距離移動ではスキマを使わないらしい。
 ふよふよと前に出て、私達に背を向けたまま、八雲紫は最後の一つの疑問を問いかける。

「最後に一つだけ…貴女達、紅魔館は果たして幻想郷にとってどういう存在なのかしら?」
「悪よ。それもとびっきりの。ただ運命の神様は面白くてね、そんな穢れた存在のトップに無垢な女神様を降臨させてくれたらしいわ。
安心しなよ、八雲紫。お姉様が『この幻想郷で平穏無事に過ごしたい』と願う限り、私達はこの世界に害しやしない。
私達が幻想郷…ひいてはお前の敵に回るときは唯一つ、お前がお姉様を敵に回したときだけだよ」
「そう…充分な答えだわ。ならば私は明日の幻想郷の未来の為に、精々レミリアと仲良くするとしましょうか」

 私の回答に満足したのか、今度こそ八雲紫はお姉様の傍へと浮遊していった。
 八雲紫が背後からお姉様に抱きつく様子を眺めながら、私は笑みを零しながら口を開く。

「精々お姉様を必死で守り抜いて頂戴な。八雲紫、貴女は私達を上手く利用するつもりなんでしょうけれど、
私達はそれ以上に貴女を使いこなしてあげる。貴女の立場、お姉様への興味、その全てを貪り尽くすようにね」
「ふふっ…フランドール、貴女は悪巧みを考えているときは本当に表情が変わるのね。本当に姉とは鏡映しだわ」
「止めてよパチュリー。私が穢れきっているのはとうの昔から決まっていることなんだから。
私が汚れた分、お姉様が輝けばそれで良い。頑張って、お姉様。汚泥は全て私が引き受けてあげるから…」
「こらこら、私『達』でしょう?」
「…そうだね。私達、だったね。本当、パチュリーも馬鹿だよね」
「それはお互い様よ、フランドール・スカーレット。私達の歩む道は既にあの日から決まっているのだから」

 どちらからでもなく笑い合う私達は、一体何に対して笑っているのか。
 とりあえず今は、八雲紫と咲夜の間で奪い合い状態になって涙目になっているお姉様に対して、としておきましょう。
 今回はスタートを切ったばかり。賽は投げられ、最早後ろへは引き返せない。私達が取るべき行動は前進あるのみ。


 ――頑張りましょう、お姉様。私達もお姉様の幸せの為に、どんな事でもしてみせるから。







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