第九話 過去編に突入イゼルローン攻略の為の出征が間近に迫っていたある日。出征の準備がほぼ終了していた、俺(第11艦隊の司令官ペトルーシャ・イースト中将)は久しぶりに、ハイネセンにある彼の祖父母が住む自分の育った家を訪れた。訪れた目的は二つ、祖父母に出征の挨拶する為と俺の被保護者にプレゼントを渡す為だ。(前者は後者のついで)突然だが、俺には三人の扶養家族がいる。もちろん、俺は独身だし家族が殖えてしまう様な危険な行為には慎重な方だ。なのに何故、三人も被保護者がいるのかというと例の戦災孤児育英法。通称トラバース法の為である。(※トラバース法とは、戦災遺児を軍人の家庭で養育する法律で、 銀河帝国との戦闘状態から慢性的に生じる戦災遺児の救済と人的資源確保を目的として作られた法律である。)この法律のおかげで、15歳まで養育費が政府から出るが将来軍人または軍関係の仕事に就かないなら全額返しやがれ!!って感じの法律である。うん、最悪だな。金で無理やり縛って軍人にしてしまうとはこの法律考えたヤツは最低だ。俺は今は亡きトラバースさんに心の中で悪態をつき、玄関の呼び鈴を鳴らすと二人の被保護者に出会った経緯を思い出していた。 ------回想中------ 宇宙暦792年トラバース法により、俺の家(官舎の方)に被保護者が来る事になると通知を受けた次の日に、俺は俺の家にそいつ等を送り込んでくる張本人の毒舌家の友人のオフィスに押しかけた。「これは、通知は一体何だ?」「トラバース法だ。知らんのか?」「もちろん、知っているし俺の家に戦災孤児がやって来る事に問題は無い。俺が問題にしているのは何故、『女の子が三人』やって来るのかと言う事だ。」「えーっと、三人の内の二人は姉妹で、もう一人は姉妹の妹の方と同い年だし仲がいいからだ、引き離すのは可哀相だろうと言う事だろ?」「二人が姉妹だと言う事は、送られてきた資料を見ているから俺も知っている。俺が言いたいのは、人数の事ではなく、独身男の家に女の子を送ってくるヤツの気が知れないって事だ。」「お前なら大丈夫だろ?それに、二人も三人も同じ事だ。」ここで、俺絶句。反論を完全に封じられてしまった俺は渋々と家に帰った。非常に拙い事だ。俺はこれからの予定を頭の中で組み立てながら送られてきた資料に再び目を通した。 一人目 アメーク・アジャーニ(10歳) とても可愛らしい女の子、ユリアン・ミンツと同い年。 父親は戦死、母親は病死。他に身寄りは無い。 二人目 ベルナデッド・アジャーニ(8歳) アメークちゃんの妹。とても可愛らしい。 ここまでは、OKだ。だが、次が問題だ。 三人目 カーテローゼ・フォン・クロイツェル(8歳) 母親は帝国からの亡命者で現在入院中、父親は不明。 母親が以前同盟軍に所属していた為トラバース方が適用されたらしい。(実際はキャゼルヌが捻じ込んだ。) 「って、シェーンコップの娘じゃねえか!!!!」と言う事で先ほど、キャゼルヌに抗議に行ったのだがまさか、「原作キャラだから」とキャゼルヌに説明する訳にもいかず結局は現状を受け入れる事にして家全体の大掃除を始めた。俺にもプライドがある。汚れた家で迎えるなど俺には到底出来ない。その点、あんな状態でユリアンを家に迎えたヤンは凄いと思う。家全他の掃除を完了し、可憐な少女達には有害なデータの類に三重のプロテクトを掛け俺の寝室にある端末からしか操作できないように封印した。その後、オルタンスさん(キャゼルヌ婦人)に連絡を取った。(オルタンスさんと俺が知り合ったのは毒舌家の友人が結婚する少し前に 婚約者として俺に紹介してきた時以来の知り合いだ。 結婚式の時に俺は辺境勤務に行っていた為に出席は出来なかったが 時々、夕食などに呼ばれたりしている。 その度に、俺はオルタンスさんや嬢ちゃん達にご機嫌取りの品を渡すので 毒舌家さんは「俺には無いのか?」といつも文句を言ってくる。 蛇足 ※オルタンスさんの父親は元軍人で俺の上官だった事もある人だ。 一度、「娘を紹介してやる」との話しが在ったが俺がその後すぐに 転属になった為、お流れになった。)事の次第をオルタンスさんに説明し、毒舌家の横暴を必死に訴えた後に今後、色々と必要になる物があるので一緒に買い物に行ってもらう事になった。もちろん、キャゼルヌ家の嬢ちゃん達も一緒だ。今回我が家にやって来るのは女の子なのでキャゼルヌ家の嬢ちゃん達の意見は色々と参考になると思う。報酬代わりに後で甘い物を買ってあげなくては。洋服などの着替えは後で一緒に買いに行けば良いと言う事でとりあえず、必要になりそうな小物や日用品、後は歓迎パーティの準備の品を揃えるとその日はお開きになった。歓迎パーティには、キャゼルヌ一家にも出席してもらう事にした。それから、俺の祖父母も出席する。当日、歓迎パーティ用の料理を俺の婆さんとオルタンスさんに作って貰った。そして、何故か俺も手伝わされていた。毒舌家は俺の爺さんと話し込んでいた。(少しは手伝え。)出来上がった料理をテーブルに並べていると、俺の被保護者になる三人が我が家にやって来た。丁度、手の空いていたオルタンスさんと婆さんが玄関まで出迎えに俺は手に持っていた料理をテーブルに並べてから玄関に向かおうとしていたが三人を連れたオルタンスさん達が来る方が早かった。まず、アメーク・アジャーニ(姉)ちゃんを先頭にベルナデッド・アジャーニ(妹)、カリン(カーテローゼ・フォン・クロイツェル)ちゃんがオルタンスさんに連れられて部屋に入って来る。アメークちゃんは活発そうな感じだが、若干緊張している様だ。ベルナデッドちゃんは大人しそうな子で、お姉ちゃんの後ろに隠れる様にしている。カリンちゃんは、若干警戒している様だ。俺が三人を観察していると、三人はこれから自分達の保護者になる人物に自己紹介を始めた。「始めまして、アメーク・アジャーニです。ご迷惑をおかけすると思いますが、これからよろしくお願いします。」「・・はじめまして、・・ベルナデッド・アジャーニです。・・よろしく、おねがいします。」「カーテローゼ・フォン・クロイツェルです。これからお世話になります。」きちんと挨拶できるなんて偉いね、うん。・・・・・でも、そいつは違うから。君達が挨拶している奴は、俺の家にただ飯を喰いに来た革命家だから。って、いつの間にウチに忍び込んできやがった。お前の事は呼んでねえぞ。「ダスティは、ワシが呼んだ。」ジジイ、何勝手に呼んでんだ。俺の爺さんは、何かと革命家を可愛がるので困る。前に理由を聞いたら、アッテンボローの戦死した祖父は俺の爺さんの後輩だったそうだ。そんな事より、保護者はこっち、ペトルーシャのお兄ちゃんはこっちだよ。オルタンスさんに勘違いを指摘された三人は驚いて一斉にこちらを振り向き、更に驚いた顔をする。確かに、驚くだろう。これから、自分達の保護者になる人物は軍人でその人物の家に行ったら、唯一人軍服を着ている人物(自称革命家)いたのでその人物が自分達の保護者だと思い挨拶をしたら人違いだった。で、本物の保護者になる人物は「ヒヨコのエプロン」を付けて料理の乗っている皿を持った人物だった。これは、驚くだろう。誰だって驚く、俺だって驚く。俺は呆けている三人に自己紹介をすると、手に持ったままの皿を差し出し皿の上の料理を勧めた。恐る恐る料理に手を伸ばし、それを口に運ぶ三人。どうやら、掴みはOKな雰囲気だ。そして、三人の後ろでこちらを見ながらクスクスと笑っているオルタンスさんオルタンスさんに大きな借りが出来てしまった様だ。お陰でうまくやって行けそうだ。 ------回想終了------ってな感じでそれ以来、カリン達とはうまくやっている。だが、俺が長期の出征などで家を空ける時は祖父母の家に預かってもらっている。女の子達だけで家に置いておくのは不安だからな。特に、自称革命家が勝手に家に上がりこんで飯を食っているって事が今までに何度かあったので特に留守中は注意しなくてはいけない。「帰って来るならもっと早く帰って来い。三人とも、もう寝ているぞ。」玄関前で回想してたら、いつの間にかタケ○の爺様が玄関を開けて俺の前に立っていた。「誰が、タ○ダの爺様だ!!」「いやいや、出兵の準備に手間取っちゃって気付いたらこんな時間に、あ、これ三人に渡しておいてね。」俺は祖父母に軽く挨拶を済ませるとそのまま、軍港に向かった。過去編終了