第四十一話 ゲシュタルト崩壊ペトルーシャ・イーストは犠牲になったのだ。古くから続く犠牲、その犠牲にな。そもそもは自由惑星同盟が生まれた時からある大きな犠牲。ペトルーシャ・イーストは犠牲になったのだ、その犠牲にペトルーシャ・イーストはなった。犠牲の犠牲にな。犠牲だ。ペトルーシャ・イーストは犠牲になったのだ、犠牲の犠牲にな。 後世の歴史家 プロフェッサー・クロコダイル「ただいま!!私は帰って来たぞ!!」・・・・・返事が無い、只の空き家のようだ。どうも、ペトルーシャ・イーストです。査問会に呼び出されてハイネセンの官舎に軟禁されていたのですが、結構アッサリと開放されました。なんか知らんがマスコミが俺の査問会の事を嗅ぎ付けて騒ぎ出し、ウィンザー議員を初めとする帝国侵攻作戦に賛成した最高評議会の議員達が辞職しました。『フォーク准将とウィンザー議員のただれた関係!?』なんて見出しのゴシップ誌もあったりする。なんて恐ろしい記事だ。結果をみるとウィンザー議員に他の議員たちが足を引っぱられた感じに見えなくも無い。そして、開放された俺は久しぶりの我が家に帰って来たのだが、見ての通り誰も居ない。あれ?書置き?『ちょっと、旅行行って来る。』・・・・・なぜじゃぁぁぁぁ!!この如何にもぶっきら棒で、大切な事が何も説明されて無い文章の書き方。俺の爺さん作だ。久しぶりに還って来た孫に対してこの仕打ち。悲しい、哀しい、悲しみが集う、俺もその一つ。お前が悲しませた者達の悲しみを知るがいい。無事にハイネセンの我が家に帰って来たが何もする事が無い。いや、無いと云うより出来ないが正しいのか?外にはマスコミが張っていて外出もままならない。他の提督達が帰ってくれば少しは俺へのマスコミ攻勢も和らぐハズだが諸提督方は現在イゼルローンからの帰還途中だし、しばらくは家から出られそうに無い。今思えば、これを懸念した爺さんが三姉妹達を連れ出したのかも知れないな。その点だけは感謝しても良い。そんな俺の所にシドニー・シトレ元帥からの呼び出しが掛かった。統合作戦本部ビルか、いつ見ても代わり映えしないな。まあ、ちょくちょく代わり映えしてたらそれはそれで問題だが。「シトレ元帥閣下、ペトルーシャ・イースト中将、出頭いたしました。」「うむ、楽にしてくれ。」「はっ。」「レベロから聞いたぞ。査問会では大暴れしたそうではないか。」「財務委員長からですか?本当はあんなに暴れるつもりは無かったのですが、諸悪の根源が目の前に居たのでついあんな事になってしまって。」諸悪の根源。つまりは、フォーク准将とウィンザー議員の事だ。「所で今日君を呼んだのは、これからの同盟軍内の人事について意見を聞こうと思ってな。」「人事ですか?失礼ですがシトレ元帥とロボス元帥の今後の進退についてお聞きしても宜しいでしょうか?」「先日の会戦の結果がどうであれ、私の退役は既に決まっている。ロボス元帥も退役せざるをえないだろう。」確かに。同盟軍はティアマト、アスターテ、アムリッツァと負け続けている。この辺で上層部が責任を取らないと示しがつかないってのがあるしな。「まず、イゼルローン要塞の司令官職について君の意見を聞きたい。」「イゼルローン要塞ですか、イゼルローン要塞司令官にはヤン・ウェンリー提督がよろしいかと思います。 イゼルローン駐留艦隊司令官ですがヤン・ウェンリー提督が兼任しても問題ないと思います。 ですが、もし駐留艦隊司令官を要塞司令官とは別に設ける場合ですが、駐留艦隊司令官は要塞司令官の指揮下とし、階級も要塞司令官より下の人物にした方が宜しいかと思います。 帝国軍では要塞司令官と駐留艦隊司令官が互いにいがみ合っていた様ですから、兼任か上下関係をつける事でその問題は解決するでしょう。」「なるほど、貴重な意見だ。次に君自身の進退についてだ。今回の事では君に色々と迷惑を掛けた。 私の最後の仕事として、多少の無理は通すつもりだ。何か望みはあるかね?・・・ただし、退職以外だ。」「退職以外ですか?」「ああ、そうだ。我が同盟軍の提督にはやたらと直ぐに退職したがる者がいるのでな。」「・・・なるほど、エルファシルの英雄殿ですか。ええっと、小官の人事の件は大変有り難いですが、その前に一つお伺いしても宜しいでしょうか。」「言って見給え。」「アンドリュー・フォーク准将の件です。彼の処遇はどうなるのでしょう。」「・・・現在の所、病気療養と予備役待遇に戻す事が決定している。」「再び予備役ですか、了解しました。それでは小官の件についてですが、今回の敗戦及び作戦立案の責任を取らせるという形で 二階級降格と左遷をして頂けませんか?」俺の提案を聞いたシトレ元帥の顔が驚愕に染まった。「私の聞き間違いかね?二階級降格と聞こえたのだが・・。」「いえ、聞き間違いではありません。」「何故かね?」「今回の事で確信しました、フォーク准将は危険です。彼を抑える為に必要な処置だと思ってください。」「つまり、作戦参謀『代理』の君を処罰する事により、作戦参謀だったフォーク准将を処罰する正当性を作りあげると言う事かね?」「はい、その通りです。」「だが、しかし・・・。」「小官なりに、二階級特進と二階級降格を天秤にかけた結果の判断です。」「取りあえず、二階級特進は置いて置くとして、君を降格という事はフォーク准将も二階級降格と云う事かね?」いや、置いておくのかよ。必死に悩んだんだぞ、ペトルーシャ・イースト元帥誕生の誘惑と戦って勝利した俺の精神はボロボロだ。「はい、アンドリューフォーク中佐の再誕です。」「・・・・そうか。所でフォーク中佐の左遷についてだが、何処の星流しにしたらいいと思うかね。」「『あそこ』しか無いでしょう?(ニヤリ)」「『あそこ』か。(ニヤリ)」「・・・正直の所、君には重要なポストを用意したいのだが・・・。」「大丈夫でしょう。ヤン提督やビュコック提督、ウランフ提督にボロディン提督など優秀な人材が沢山いますよ。 小官如きを重要なポストにつけたら、優秀な人材が就くポストが無くなってしまいますよ。」「帝国領への侵攻作戦の時といい、今回の事といい、君には苦労ばかりかけている。 本当に申し訳ないと思う。だが、私は謝らない。」「いや、そこは謝って下さい!!」つい、突っ込んでしまった。一応は猫を被ってやり過ごす積もりだったのに、シトレ元帥も『ニヤリ』と笑っている。最後の最後で、してやられた。いや、正確にはやられっぱなしが正しいな。士官学校時代からずっと。今日、正式な書類(俺の降格の書類)を受け取る為に統合作戦本部ビルへ呼び出された。書類を受け取るだけだと思って、気楽にエレベーターに乗り込んだが・・・次の瞬間、俺は自分の間の悪さと運命を呪った。「やあ、久しぶりだね。イースト君。」そこには、舞台俳優の様にさわやかな男が居た。「お久しぶりです。国防委員長閣下、いえ、今は最高評議会議長でしたね。」我等が敬愛すべき最高評議会議長のヨブ・トリューニヒト氏とエレベーターの中で出くわした。少し前にもこんな事があった気がする。「今回は大変な事になったね。所で新しい任地は決まったのかね?」「いえ、まだです。」「何処か希望はあるかい?念の為に聞いて置こうか。」「コレといった所はありませんが・・・。そうですね、出来ればハイネセンから離れた所が良いですね。 ただ、余り辺境な所もちょっと。」「なるほど、参考にして置くとしよう。」あー、緊張した。爺さんから今日帰るとの連絡があり、テレビを見ながら三姉妹の帰宅を待っていると玄関のドアが開くと同時に「「「ただいま!!」」」「おかえり。」元気なそうな三姉妹の声だ、それにしてもテンション高いな。「「「提督、お土産は?」」」行き成りそれかよ。まあ、いいけど。一応、お土産?も用意してあった。第11艦隊がフォルゲン星系を占領していた時に、そこの領主エスターライヒ伯爵さんの家の庭の土だ。その土を持って帰って来て瓶詰めにした。ちなみにビンはハイネセンに帰って来てから小物屋で買った。「銀河帝国の土だ。」「おおっ!!でかしたぞ。流石、我が孫じゃ!!」おい、爺さん自重しろ。「爺さん、俺にはお土産ないの?」「無い。」・・・・・その後、爺さんは異様なテンションで銀河帝国の土の瓶詰めを持って帰っていった。二度とくんな。「やっぱり、提督のお爺さんですね。提督とそっくりです。」ちょっと?アメちゃん、それってどういう意味ですか?そこの二人も、なに頷いてるの?・・・・つづく。 作者「次は何を書くか、ドラクエか恋姫か」黒猪「どの口が言うのか!!せめて、完結させてから考えろ!!」