第二十一話 『バナナ』とか『濁った水』とか正直どうでもいい 出兵のしおりオヤツの金額は自由です。出来れば持てるだけ持って来て下さい。お弁当は基本的には此方で用意致します。ただし、場合によっては用意致しかねる事も御座いますので、各自で非常食を用意ください。人の食事を盗ってはいけません。嫌われます。目的地に着くまではオヤツや非常食を食べてはいけません。イゼルローン要塞に帰還するまでが出兵です。危険だと判断したらすぐに撤退しましょう。 作成者 作戦参謀代理 兼 第11艦隊司令官 ペトルーシャ・イースト中将「それじゃ、行って来ます。三人とも、体に気を付けて、ちゃんと歯を磨いて、火の元に気を付けて・・・えーと、後はアッテンボローにも気を付ける事。 留守中にアイツが来ても家に入れちゃ駄目。ちゃんと居留守を使って追い返す事。わかったね。」「提督は心配症ですね。判ってますよ。それでも、帰らない時はアッテンボローさんのお姉さんに連絡ですね。」「でも、アッテンボローさんも一緒に帝国領進攻に参加するんじゃ・・・。」「「「・・・・・。」」」そういえばそうだった。我が家の家訓は『男は飢えたケダモノ』、『アッテンボローは違う意味で飢えたケダモノ』だ。俺が家を留守にする時は、決まってこのやり取りをしている。今回の出兵は、かなり長引きそうなのでいつもの様に祖父母の家に三姉妹を預けるのでは無く、祖父母の方を俺の家に呼ぶ事にした。三姉妹にも学校があるからな。それはさて置き、今日は俺の第11艦隊がイゼルローン要塞に向って出発する日だ。各艦隊の集合場所がイゼルローン要塞の為、現地集合って事になる。他の艦隊も準備が出来次第に、集合場所に向って出発する筈だ。今回の目標『生きて帰ってくる事』、そんな事を考えながら俺は家を後にした。いつもと違うのは、お菓子や非常食などを詰め込んだ荷物を大量に持っている事だ。自由惑星同盟軍による帝国領への大規模な進攻が近い事を、フェザーン駐在弁務官のレムシャイド伯より知らされた銀河帝国は、帝国元帥ローエングラム伯ラインハルトに同盟軍迎撃の任に当たるべく勅命が下る。金髪「私は、これを機に同盟軍を徹底的に叩いて置くつもりだ。その為にはイゼルローン回廊の出口から出てくる敵を叩くのでは無く、帝国領内深く敵を誘い込むのが肝要だ。」赤毛「すると、敵の補給線が限界に達するまでは攻撃はかけないと。」金髪「その通りだ、限界点に達した所を全軍を持って一挙に討つ。」疾風「戦わずに引く訳ですか。」金髪「そうだ。不満か?」疾風「いえ、ただかなり時間がかかりそうですが?」妖眼「我々は構いませんが、門閥貴族達はどう思いますか?」金髪「奴らに余計な口を出させぬ為にもそんなに時間はかけぬ。あるのだ、それほど手間をかけずに同盟軍を飢えさせる手が。オーベルシュタイン説明をせよ。」義眼「はっ。諸提督方も承知しておられる様に、同盟軍は『解放軍』『護民軍』を自称しており、即ち奴らは占領地域の民衆に生活の保障を与える責務を負う事になる。」妖眼「つまり、敵軍の物資食料を民衆に吸い取らせようと云う事か。」疾風「まさかっ!!」義眼「そう、イゼルローンに近接する各星系から、駐留軍と供に食料物資を全て引き上げる。」金髪「民衆の間には、同盟の進攻を歓迎する風潮もあるようだ。しかし、これによって彼らの幻想も消える事になるだろう。」ラインハルトは、この『焦土作戦』に自信を持っていた。ただ一つ、気がかりな事は敵の作戦参謀にあの男がいる事だけだった。イゼルローンよ、私は帰ってきたぞ。・・・・と、云う事で帰ってきましたイゼルローン要塞。実際には叫んで無いけどね。俺の第11艦隊が一番乗りだった。一番乗りの特権かどうかは知らないが、要塞内への駐留許可が出たので第11艦隊は要塞内部に駐留した。他の艦隊がやって来るまで俺は、今作戦の司令部を設置したり、アーロカート技術大佐(昇進した)が色々と行った『帝国艦艇改造計画』の報告を受けたりしていた。「で、こちらが以前話していた戦艦『ヤマト』のアイディアを元に改造した帝国軍の戦艦です。要塞主砲には及びませんが、強力な主砲が使えます。 ・・・ただし、主砲を使うと艦も一緒に吹っ飛びますが・・・。」「つまり、使い捨て戦艦って事か?」「はい、現在十隻ほど改造が完了しており試運転も済んでおります。ただ、試運転時に主砲をぶっ放した二隻が吹っ飛びましたので、現在は八隻です。」「・・・他には、何かあるか?」「帝国軍の輸送艦から武装を外して改造した『高速輸送艦』や、装甲の厚い艦の装甲を更に厚くして武装を外した『装甲艦』などがあります。」「武装を外した?」「はい、ビームもミサイルやレールガン等の実弾を一発も発射できません。攻撃力は0です。・・・あ、装甲艦は体当たりで攻撃できるかも知れませんね。」「・・そうか、大変貴重な戦力になる。ご苦労だった。今日はもう休んでくれて構わない。」「はっ、ありがとう御座います。」アーロカート技術大佐は、俺に敬礼をすると退出して行った。うん、大丈夫だ。上手く使えば貴重な戦力になる筈だ。・・・・多分。当面の問題は、この改造艦の名前を如何するかと云う事だな。ワイゲ○ト艦じゃ不味いよね?こうして、イゼルローン要塞での俺の日々は過ぎていった。ウルリッヒ・ケスラー准将が帝国辺境より物資食料の引き上げをしながら幼馴染といちゃついている頃、イゼルローン要塞から帝国領出口付近まで同盟軍の大艦隊が集結していた。現在、要塞内に帝国領進攻作戦に参加する全提督達が集合し、出征式を行っている。ロボス元帥曰く『作戦参謀代理として訓示をたれろ。』との事だったので一応、今回の出兵に役立つ話をして置こうと思う。ウォルフガング・ミッターマイヤー対策の話だ。「作戦参謀代理のペトルーシャ・イーストです。私の方から難しい話はありません。 ただ、一つ為になる『昔話』をしてみようと思います。 『むかし、むかし、ある所に男が住んでおりました。男は大変足が早く、皆からは韋駄天の馳夫と呼ばれていました。 ある時、馳夫が町を歩いておると『泥棒!!泥棒!!』と叫び声が聞こえてきました。馳夫が声のする方に行ってみると、 如何にも泥棒と云う風体の男が馳夫のいきつけの店の店主に追いかけられていました。 『おい、馳夫。あの泥棒を捕まえてくれ。』『よし、来た。』 店主に頼まれた馳夫が泥棒を追いかける。泥棒の足の早さも中々だが馳夫の足の速さには敵わず、グングンと距離が詰まる。 そして、馳夫が泥棒に追い付き、抜き去った。そこで馳夫が泥棒に一言『どうだ。俺の方が早いだろ?』 ・・・ええ、お後がよろしい様で。」一同「( ゚д゚)ポカーン 」ロボス「(#^ω^)ビキビキ 」そんなこんなで出征式は終了し、各艦隊の提督達は自分達の艦隊に帰還し、帰還完了した艦隊から帝国領へ進攻して行った。第5艦隊、第7艦隊、第8艦隊、第9艦隊、第10艦隊、第12艦隊の合計6個艦隊が纏まって進攻し一つの星系を占領し、そこに駐留しながら帝国軍の反応をみる事になった。ちなみに、俺の第11艦隊とヤン提督の第13艦隊は要塞に残留し、後方支援の第3艦隊の到着を待つ事になった。(第11艦隊は要塞内部に駐留。第13艦隊は駐留用スペースが無いので要塞外待機。)同盟軍第5艦隊では、司令官のアレクサンドル・ビュコック提督と副官のファイフェル少佐の間にある会話が行われていた。ちなみに、この時のファイフェル少佐の手には例のしおりが握られていた。「・・・ビュコック提督、作戦参謀代理殿の訓示は一体なんだったのでしょうか?」「うーーん、恐らくは『目先の事に囚われて当初の目的を忘れるな』って事かな。(ボリボリッ)敵がいないからといって、 当初の作戦行動を無視し、無計画に進攻するなと言う事じゃろうて。(ボリボリッ)」「なるほど、流石は作戦参謀代理殿ですね。」持って来た煎餅をボリボリと齧りながら答えるビュコック提督。彼の副官は、何度かまだ目的地に着いてない事を指摘したのだが、その度に彼の上官は『煎餅はオヤツには入らない』との理屈を展開した為、やがてファイフェル少佐は考えるのを止めた。しばらくの間、作戦参謀代理の訓示に関してのやり取りが彼方此方で行われる事になったが、作戦参謀代理の真意を当てる事が出来た人物は当然ながら一人として存在していなかった。その為、作戦参謀代理の訓示に対して様々な憶測が飛び交った。ただ、全員に共通していた意見は作戦参謀代理は『相変わらずの変わり者だ』と云う事だった。金髪「・・・・・同盟軍の奴ら、来ないな。」赤毛「はい、ラインハルト様。」・・・・つづく。訓示については後ほどで・・・・。今回も難産でした。子供(作品)では無く別の物を出してしまったかも知れません。一応、前哨戦や撤退戦については、頭の中で出来ているのですがそこまで持っていくのが難しいです。タイトルは『銀習伝』で行きたいと思います。作者が習い立ての初心者なので、『習』の字が相応しいと思います。近日中にタイトルを変更いたします。