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No.13222の一覧
[0] 【完結】GONG! ~超銀河英雄大戦【多重クロス】[行](2009/12/04 21:03)
[1] 第1話「さよりなオルタネイティブ」その1[行](2009/10/31 22:00)
[2] 第1話「さよりなオルタネイティブ」その2[行](2009/11/14 20:23)
[3] 第2話「機動戦艦さよりな」その1[行](2009/11/28 22:49)
[4] 第2話「機動戦艦さよりな」その2[行](2009/11/07 19:51)
[5] 第3話「魔法少女パラレルさより」その1[行](2009/11/14 20:18)
[6] 第3話「魔法少女パラレルさより」その2[行](2009/11/14 20:22)
[7] 第3話幕間[行](2009/11/17 21:01)
[8] 第4話「岡島さよりの憂鬱」その1[行](2009/11/22 13:44)
[9] 第4話「岡島さよりの憂鬱」その2[行](2009/11/22 13:52)
[10] 第5話「天元突破岡島さより」その1[行](2009/11/28 15:54)
[11] 第5話「天元突破岡島さより」その2[行](2009/11/28 16:04)
[12] 第6話「遙かなる地球の歌」その1[行](2009/11/29 13:22)
[13] 第6話「遙かなる地球の歌」その2[行](2009/11/30 22:45)
[14] 第6話エピローグ[行](2009/12/04 21:04)
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[13222] 第2話「機動戦艦さよりな」その1
Name: 行◆0e973d72 ID:d0f899f5 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/11/28 22:49


第2話「機動戦艦さよりな」その1






 香月夕呼はさよりとの約束をちゃんと守ってくれていた。宿泊先にはどこか見覚えのある、あるいは207Bの誰かが使ったのかも知れない個室をあてがわれた。ご飯は三食とも京塚曹長の勤め先のPXで食べており、評判通りかなり美味しい。服は霞とお揃いのオルタネイティブ4の黒い軍服を用意してもらった。さよりはこの機能的で格好良い軍服が大層気に入り、いつもこれを身にしている。黒い軍服を着て肩にフェレットを乗せた見慣れない少女の姿は、いろんな意味で基地内で注目の的だった。

 ただし夕呼が無償でさよりの衣食住を保証するわけもなく、さよりは横浜基地の研究者の研究活動に協力することを命じられていた。夕呼が反応炉に頼らないODL浄化装置を作成している間は何もやることがなかったので、さよりも特に異存はなかった。

 ゲームには夕呼以外の研究者が全く登場しなかったが現実には勿論そんなことはなく、因果律量子論の分野だけでも何人もの研究者が在籍している。

「しかしまあお前さん、とんでもない力を持っとるんじゃな」

 その第一人者が、この一ノ谷博士である。さよりにとっては、いくつかの平行世界で何人かの異世界同位体に会っている、割と馴染み深い人物である。だがまさかここで会うとは思ってもみなかったため、かなり意表を突かれた。

 さよりは霞など幾人かに、一ノ谷博士について訊ねた。それで判明したことは、彼が因果量子理論の最初の提唱者で、夕呼は彼の教え子であったこと。桜花作戦終結までは彼が横浜基地の副司令で、夕呼はその補佐であったこと。現在は基地の技術顧問であること、等である。

「そっか、そりゃそうかも」

 どれだけ香月夕呼が優秀でも、夕呼の年齢を考えれば基地の副司令の地位は現実的には高すぎる。対外的に収まりの良い人物を名目上の副司令に置いておいて、実際の指揮命令権は補佐の夕呼が握っていた、と見るのが妥当というものだろう。

 この数日間、さよりは一ノ谷博士等の学術的探求心を満足させるためのモルモットとして、あるいは好奇心を満たすための玩具となって過ごしていた。

 10月28日、夕呼は反応炉に頼らないODL浄化装置を完成させる。翌29日、あんまりな扱いに忍耐力がいい加減底をつきそうになった頃、霞がさよりを呼びに来た。

「ODL浄化作業が完了しました。問題がなければもうすぐ純夏さんが目覚めます」

「わたしも会いにいっていい?」

 霞の快諾を得、さよりは霞に連れられて地下19階へと向かった。

「それにしても、たった6日でODL浄化装置を完成させるなんて。ゲームの香月夕呼もびっくりだね」

「必要な部品や資材は全て手元に揃っていて、後は組み立てるだけだったそうです。元々研究のために必要そうなありとあらゆる資材が集められていましたから」

 夕呼が言うには「まるで、今手元にある資材だけで作ることを前提にしているような設計だったわ」とのことである。

 そしてやってきた地下19階。「脳みそシリンダールーム」のすぐ隣と見られる部屋の自動扉を、霞が開く。

「霞ちゃん!」

 少女が部屋の中から飛び出してきて、霞に抱きつく。霞と同じくオルタネイティブ4の制服を着た、赤っぽいロングヘアの少女――00ユニット、鑑純夏。

 現実の鑑純夏はかなりの美少女だった。外見だけなら、芸能界なら大して珍しくないくらいのレベルである。だが彼女の本領はその内面にあった。過酷な運命に耐え抜き、人類の存亡を懸けて戦った、その経験が少女に圧倒的な存在感を与えたようだった。

「純夏さん……良かったです」

「霞ちゃん、ありがとう助けてくれて。おかげで起きることが出来たよ」

 永遠と思えた別離をし、天佑の末に再会を果たした二人の少女は、今はもう言葉もなくただ涙を流した。今の二人にどんな言葉も必要なかった。

 さよりは二人から少し離れたところで佇んでいる。二人の再会にもらい泣きしそうになりながらも、いまいち居場所のない居心地の悪さを感じていた。とは言うものの、今の二人の間に割り込むような非道な真似がさよりに出来るわけがない。

「盛り上がってるところ悪いけど、邪魔するわよ」

 だが香月夕呼がそんなことに頓着するわけもないのだった。揶揄するような口調が、自然と二人を引き離す。

「夕呼先生」

「鑑、紹介するわね。彼女が岡島さより、あたし達の協力者よ」

 純夏はさよりの両手を両手で取って、上下に振り回した。

「初めましてありがとうございます! あなたのお話は色々と聞いてます!」

 純夏の言葉に、夕呼は怪訝そうな表情をした。夕呼は彼女のことを、まだ名前くらいしか説明していないはずなのに。

 純夏が真剣な表情になり、夕呼に向き直った。

「色々と積もる話はあるけれど、わたしからも先生に、みんなに大事なお話があります。それに、紹介したい人もいます」

 さより達の不思議そうな顔を置いておいて、純夏は三人を連れて部屋の中へと戻る。

「持ってきたわよ鑑」

 純夏の依頼で夕呼が取りに行ってきたのは、戦術機用の網膜投射式モニター・マイク・スピーカーのヘッドセットである。

「それじゃ、それを装着してください」

 椅子に座って楽な姿勢になったさより達が純夏の指示に従いヘッドセットを装着、電源を入れる。さよりの視界いっぱいにOSの起動画面が展開、続いて何もない白い空間が無限に広がった。

「うわぁ……」

 それは現実ではなく、コンピュータ上の仮想空間である。何もなかった空間に椅子が5つ現れ、さらにそれに座っている4人の人影。さよりと霞と純夏と夕呼である。霞達の姿はどう見てもCGには見えないので、実際の撮影画像と仮想空間のデータを組み合わせて処理しているのだろう。

「ここまで臨場感のある仮想空間を作り出すなんて、00ユニットの処理能力はさすがよね」

 夕呼はそう感嘆して見せた。だが、

「でも、ただ向かい合って話し合うだけならこんなの必要ないでしょう? 労力と能力の無駄遣いだわ」

 そう付け加えることも忘れない。純夏は「はい」と頷いた。

「この空間は、みんなにある人を紹介するためのものです」

 純夏はそう言い、空席になっている椅子に視線を送る。一同の視線がその空席に集中したその時、空席の少し後方に突然扉が出現し、圧搾空気が抜ける音とともにそれが横にスライドして開く。そして、そこから一人の女性が颯爽と姿を現し、










「わたしが機動戦艦ナデシコ艦長、ミスマル・ユリカですっ!! ブイッ!!」





 満面の笑みで一同にVサインを突き出すミスマル・ユリカに対し、夕呼達は夜の深海よりも重く静かな沈黙をもって答えた。

 ユリカは一同の反応が期待とは違っていたようで、「あれ?」と首をひねっている。

「あはは、ユリカさん……」

 何とか愛想笑いを浮かべる純夏に、ユリカが訊ねた。

「インパクトちょっと足りなかった?」

「そんなことはないです」

 純夏が即座に否定する。

「人間やっぱり第一印象は大事だからね。ナデシコの時は、これでみんなのハートをがっちりキャッチ!だったんたけど」

 そう言いながらユリカは一同を見回し、霞に目を留めた。

「あ、すごいルリちゃんぽい子がいる!」

 ニコニコしながら接近し「うわーそのウサ耳可愛らしいねー、あ動くんだ」と怒濤のように一方的に話しかけてくるユリカに対し、霞はフリーズしたように固まっている。どう対応して良いのか全く判らない様子である。

「なんでナデシコ……」

 一方さよりは、多分この場の誰にも共感されない頭痛を覚え、一人頭を抱えていた。ミスマル・ユリカの服装は白いマントとタイトスカートの軍服に軍帽という、ナデシコ艦長そのままの物である。背はすらりと高く、グラビア嬢並みのプロポーション。髪は黒く艶やかで長く、太陽のように温かで華やかな美女である。女性としてほぼパーフェクト、完璧超人と言ってもいいだろう――その言動に目を瞑れば。

「……で、鑑。何なのあれ」

 と氷点下の口調で問う夕呼に、純夏は言い訳がましく答える。

「えっとあの、ユリカさんはわたしが量子電導脳として起動したのを察知してて、以前から接触の機会を伺っていて」

「あ、もしかして」

 さよりは夕呼達の視線を集めたことを悟り、そこで言葉を途切れさせてしまう。ユリカは優しく微笑みながら、

「何かな?」

 とさよりの言葉を促す。さよりはそれに背中を押され、少しためらいながらもある推論を述べた。

「もしかしてあなたは……遺跡の演算ユニットに接続されたままのユリカさんですか?」

 だがユリカはその推論を否定した。

「ううん、ミスマル・ユリカは演算ユニットから無事に切り離された。軍にも復帰して、逃げた旦那さんもちゃんと捕まえてた。あの事件以降、遺跡は全てのボソンジャンプを禁止して消えちゃったからA級ジャンパーの肩書きも無意味になって、二人は市井で幸せに暮らしていけたわ」

 さよりにはユリカの笑みが儚げに見えた。

「それじゃあなたは……もしかして、遺跡そのもの」

「うん。大正解」

 ユリカは淡々と答えを述べる。

「ミスマル・ユリカが遺跡の演算ユニットに『人間翻訳機』として融合させられていた時、彼女と演算ユニットは一体だったわ。演算ユニットには彼女の記憶と人格の全データが残っている。それは彼女が演算ユニットから切り離されても消えたりはしないの。つまり、演算ユニットに残ったミスマル・ユリカの記憶と人格のコピー、それがわたし」

 どんなに計算能力が高くても演算ユニット自体は本当にただの演算器で意志を持たないが、演算ユニットの中の計算領域で再現されたミスマル・ユリカの人格には意志や想いがある(例えば「火星の後継者にこれ以上の好きにはさせない」とか、「テンカワ・アキトに幸せになってほしい」とか)。そしてその「ミスマル・ユリカ」は自分の想いを現実に変えるために遺跡の力の、全てではないがかなりの部分を自由に使うことが出来た。演算ユニットをボソンジャンプで木星の中心核付近に移動させた上で、全てのボソンジャンプを禁止したのもその一環である。そんな今の彼女を「遺跡の意志」「遺跡そのもの」と言ってもそれほど間違ってはいないだろう。

「……要するに、演算ユニットのキャッシュが自分を『ミスマル・ユリカ』だと思い込んでいるだけなんだけどね。でも、わたしが『遺跡』だっていうのが妥当だとしても、そんなのあんまり実感ないし」

 自嘲するかのようにそう言う彼女に対し、さよりは

「それで良いと思います」

 と自らの考えを述べた。「ミスマル・ユリカ」が目を見開く。

「あなたが自分を『ミスマル・ユリカ』だって言うんなら、わたし達はそれを受け入れます。あなたのことを『ミスマル・ユリカ』じゃないって否定できるのは、オリジナルの、人間のミスマル・ユリカだけです。でももし彼女がわたしの知識にある女性そのままなら、あなたのことを決して否定しないと思いますよ」

 ユリカは花が開いたような笑顔を見せた。

「ありがとう、さよりちゃん。そうだよね、どんな時でも『私らしく』がミスマル・ユリカの、ナデシコのモットーなんだし。遺跡だろうが何だろうが、わたしはわたしらしく、だよね?」

 その宣言に、さよりや純夏は微笑みながら同意した。

 夕呼は沈黙を保ったままさよりとユリカのやり取りに全神経を傾けている。自分が下手に口を挟むよりもさより達に任せた方がユリカの発言を促しやすい、不明な点は後で確認すればいい、との判断である。また、より自然な状態のユリカの口から出来る限りの情報を引き出したいとの思惑もあった。

「そー言えば遺跡の演算ユニットって、平行世界の全ての自分とつながってるって設定があったような。純夏さんと友達になったのもその関係?」

 さよりの推論をユリカは「うん、その通り」と肯定した。

「純夏ちゃんが00ユニットとして起動した時から、その気配は感じられたの。……要するに、同じ原理の通信機で似たような周波数使って平行世界間の通信をしてたから、こっちの通信にノイズが入っていたような感じかな。思ったよりも遠かったから見つけるのに時間は掛かったけど、純夏ちゃんの存在は特定できた。あとはいつ接触するか、だったんだけど、きっかけを掴めないままでいて結局そのまま桜花作戦を迎えちゃった」

 ユリカの説明を純夏が引き継ぐ。

「ユリカさんは随分前から00ユニットが起動不能になった時に備えて、わたしの記憶と人格のバックアップを進めていたんだそうです……わたしは全然気が付かなかったんですけど。桜花作戦後、予想通り00ユニットとしてのわたしは起動不能になりましたが、遺跡の演算ユニットの記憶領域にわたしの記憶と人格の全てがプールされました。ユリカさんはのその上で、00ユニットが再起動できるよう手を尽くしてくれたんです。さよりちゃんがこっちの世界に移動してきたのもその一環です」

「え?」

 ときょとんとするさよりに対し、ユリカが合掌して頭を下げる。

「ごめんね、どうしてもあなたの力が必要だったの。だから本当は封印されていたはずのあなたの力を解放して、あなたがこの世界に転移してくるよう促したの」

「いやまあ、そんなには気にしないですけど。最終的に帰れるのなら」

 さよりは1年間の放浪生活で培った図太さを発揮しそう答え、ユリカを安堵させた。

「ODL浄化装置の設計図を平行世界の果てから見つけてきたのもユリカさんなんです」

 純夏の言葉にさよりは「ああ、なるほど。道理で力を使った自覚もなしにあんな物取り寄せられたわけだ」と一人納得していた。一方ユリカは「あはは」と照れ笑いを浮かべている。

「わたしの力なんて大したものじゃないよ。純夏ちゃんがいなくちゃこの世界の人に話しかけることすら出来ないし。さよりちゃんが生身であれだけの力を持っている方がよっぽどとんでもないよ」

「わたしの力もそれほどのものじゃないと思うけど」

 とさよりは謙遜した。

「使おうと思った時に使えなかったり、自分じゃ上手く制御できないし。せいぜい『ケーキ食べたいな』って思ったらケーキが出てきたりとか、そういうところは便利だけど」

 その時「ぽんっ」と空気が抜けるような音がして、さより達の前にケーキとお茶のセットが出現した。

「……えーと、お腹もすいたし喉も渇いたからちょうど良いわ。休憩にしよ!」

 と純夏が懸命にフォローし、ユリカと霞がそれに同意する。夕呼はにやにやと笑い、さよりは一人赤面した。






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