やぁいらっしゃい、おやお客さん初めて見る顔だね。
へぇ、リオラドから来たのかい。ずいぶん遠くからこんな所まで来たもんだ…1人かい?
なるほど、メカニックとソルジャーを入れての3人かい。バランスの良い編成じゃないか。
ふむ…北西の補給所跡についてここで詳しく聞けるって聞いた?
余り人に言いふらすような事でもないんだけど…それでも聞きたいなら何か注文してからにしな。
おいおい何さその目は? 確かにナリはちっちゃいしボロい店だがこの町が出来てから続いてる老舗なんだ、味は保証するよ。
今日のオススメ? そうさね、丁度良いところに新鮮なのが手に入ったから鉄砲モツ煮込みなんてオススメだね。
それでいい? それじゃ少し待っておくれ。
…ああ、補給所跡についてだね? たく、若いのにせっかちなのは女に嫌われるよ。
まぁ私もあそこであった事は又聞きでしかないんだけど…あの頃からこの町にいるのは私かこの町の責任者くらいだからね。
まずは…そうさね、何から語ったらよいものか…。
荒れ果てた世界に転生(う)まれたけど(略 第二部 6話
『補給所の防人達』
突如として始まったモンスター達の侵攻。
その最初の一撃は、ハンター達の士気と戦力に決して少なくない打撃を与えていた。
「…クソ、数が多すぎる」
本来手で持って使うべきモノじゃない重機関銃のリロードを行いながら悪態を吐くバルデス。
空には夥しい数の偵察UFOに、喧騒を聞きつけてきたのか空飛ぶハイエナ。
地平線の向こうからは地獄のストーブに、グラマータイガー、プラズマタンク等が群をなして襲い掛かってくる。
ソレらに対抗すべく、先制攻撃の砲撃を受けて損傷を受けたクルマ達が慌てて駆けつけ防衛線を構築しているが。
動きに制限のかかる場所での防衛の負担は凄まじく、駆けつけて短時間だというのに撃破されるものが出てきている。
「どうするアニキ、俺達だけじゃ限界があるぜ?」
肩に担いだヘンテコなミサイルを車輌モンスターが固まる中心部へ撃ち込みながらロドリゲスがバルデスへ問いかける。
二人はソルジャーであり、ソルジャーとしての意地やプライドは当然持ち合わせている。
が、しかし同時にベテランでもある二人はソルジャーで出来る事の限界も熟知しており…。
「…今のままでは、いずれ踏み潰されるな」
遠くない未来絵図を、呟く。
その言葉にロドリゲスは落胆する事なく、やっぱそうなるよなと軽い調子で肩を竦めながらヘンテコなミサイルを再装填する。
「…案がないこともないが…」
「あるなら言ってくれよ! 何をすればいい?」
口数が多くないながらも、普段は何事も簡潔に述べる兄貴分の言葉に急かす様に続きを促すロドリゲス。
「…生き残れる目算は低いぞ?」
「どうせこのままだと死ぬんだ、だったら博打に出るのも悪かねぇ! だろ?お前ら!」
バルデスの言葉に豪快に笑いながら周囲のソルジャー、ハンター達に問いかけるロドリゲス。
愚痴やら悲鳴こそ口にしてたが状況を理解していた彼らは、口々にしょうがねぇな。とか生き残ったら奢ってくれよなどと言いつつ賛同を示す。
「……単純な作戦だ、足が速いクルマとソルジャーで突入し撹乱しながら砲撃をしているヤツを黙らせる」
手榴弾をプラズマタンクの砲身部へピンポイントに放り込み、爆散させながらプランを告げ始めるバルデス。
「…その間、タイルを張るなりして立て直した戦車連中でここを死守する。ソレだけだ」
「なるほどな……確かに博打だわ」
兄貴分の立てたシンプルながら危険なプランに相槌を打つロドリゲス。
しかしソレ以上の作戦が浮かぶかと言えばそうではなく、ソレは他の連中も同様で。
「オーケイ了解した、アニキの口ぶりだと俺は防衛側でいいんだな?」
「…ああ、頼む」
お前は人望があるからな、とバルデスは仏頂面に笑みを浮かべ。
アニキが無愛想すぎんだよ、とロドリゲスが笑いながら返す。
「死ぬなよ、アニキ」
「…お前達もな」
拳を突き合わせ、走り出すバルデスとソレを援護するロドリゲス。
そのままバルデスは急発進する軽トラの荷台に飛び乗り、小回りの利く車輌とソレらに同乗したソルジャーが一斉に敵の一団へ向かう。
無論自走砲軍や空飛ぶハイエナは見過ごすわけもなく、苛烈な攻撃を加えようとするが…。
「やらせっかよぉ!」
ロドリゲスの放つギターガンの銃弾が、ようやく駆けつけた重戦車の205mm口径の砲弾が今にも攻撃を開始しようとしていたモンスターを撃ち落し、破壊する。
・
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ひしゃげる鉄骨、燃えるテントだったもの。
愛犬に庇われ砲撃から辛くも逃れた少女が目にしたモノは、地獄さながらの光景だった。
「いたた…何、これ?」
耳鳴りに悩まされながらも周囲を見回し、一瞬で変わってしまった光景に絶句するアルト。
しかし、今この場で立ち止まる事は危険だと本能で察し。
ハスキーが咥えて持ってきてくれた愛用のボルトアクションライフルを手に持ち、大きな歪みがないのを確認して荒れ果てたキャンプ内を走り出す。
「行こう、ハスキー君!」
「ワォン!」
どこを目指したら良いかは解らないが、とにかくキャンプ地中央を目指す少女と大型犬。
途中痛みに呻くハンターやソルジャーに手持ちのカプセルやドリンクを渡しつつ…少女は違和感に気付く。
「……あれ?」
「ワォン?」
立ち止まり、周囲と空を見比べる少女。
主人の急な行動に愛犬は戸惑い、急かす様に吼える。
少女が感じた違和感、ソレは…。
砲弾が集中したと思われる地点とそうでない地点の差と、空に浮かんでいる偵察UFOの数のバラつきである。
そして、今も時折砲撃が飛んでくる地点には特に偵察UFOが多いことに少女は気付く。
「…っ! ハスキー君、あの空に飛んでるヤツ優先的に撃ち落して!」
「ワゥ!?」
キャンプ内を走り、北側へ向かうクルマ達を監視するかのようなUFOの群。
杞憂で済めばいいけど、と心の片隅で思いながら装填し…狙いを定めてUFOの下部にあるカメラのレンズ部分を狙撃し撃ち落し。
隣の愛犬も背に取り付けられたバルカン砲の射角を調整し、次々と偵察UFOを撃ち落してゆく。
「よし、行こう!」
「ワン!」
あらかた偵察UFOを撃ち落して中央へ走り出すアルトとハスキー。
その直後、少女達とクルマが通りすぎた場所に砲弾が着弾した。
「…やっぱり、か…!」
背後から聞こえてきた爆音と、背中に届いた爆風に言葉を漏らすアルト。
最近偵察UFOが増えてきている、という話は食事中のハンター達が交わす雑談で耳には入っていた。
ソレは、この時のための布石だったのだ。
やがて中央に位置する、砲撃の衝撃であちこち傷つきながらもしっかりと建っている建物が見え…。
そのまま転がり込むように中に飛び込むアルトとハスキー。
その中は…。
「状況は!?」
「北側から大量の車両型モンスターが襲来!それに釣られて空からもバイオニックが襲来してきています!」
「ハンター連中のクルマは!?」
「最初の砲撃で半数が大破、ないし自走不能! 走れるクルマは順次北に向かってます!」
「せめて最低限のタイルは貼らせな! じゃないと死体と棺桶量産するだけだよ!」
補給所の責任者であるターニャとトレーダー、情報伝達に来たハンターらが叫ぶような声で会議をしており。
今も誰かが出たり入ったりを繰り返していて、普段は気の良い連中も空気に呑まれて棒立ちしているアルトとハスキーを押し退けて建物を出入りする。
「ターニャさん! 大事な話があります!」
「…なんだい?」
我に返り、会議中に割ってはいるような形で少女は中央テーブルに近付きターニャへ話しかけ。
激しくやり取りをしていたターニャは会議を中断してアルトの言葉に耳を傾ける。
「UFOです。あのふよふよ浮いてるヤツが敵の砲撃を観測しているんです!」
「…根拠は?」
「砲撃の激しかった場所や、砲撃される直前の場所にあいつらがたくさん飛んでました!」
「…なるほど、確かにソレは大事な話だ。 急いでハンター連中に通達しな!」
「はい!」
アルトの言葉に最初は厳しい目を向けていたが、続けられた内容に納得し。
ターニャは脇に控えていた若いトレーダーへ指示を飛ばす。
「ボクも、すぐに防衛に参加…ぐぇ」
「まぁ待ちな」
言う事を言い、偵察UFOの迎撃に向かおうと反転し走り出そうとするアルト。
そんな少女の襟首を掴む中年女性。
「げほ、げほ……何するんですか!?」
「あそこは今ロドリゲスと中戦車以上の連中が防衛している、アンタのバギーだと無駄死にしかねないよ」
狙撃の腕は良くても年若く体力的にはソルジャーに劣り、愛車も戦力として数えるには厳しい現実を指摘する。
恐怖はあるが、それでも何かしようと思っていた気持ちを挫かれ項垂れる少女。
そして。
「アンタに依頼したい事は別にあるさね」
「…え?」
ターニャの言葉に顔を上げる。
「マッドのクルマを中心に戦えない重傷者や非戦闘員をサンタ・ポコへ送る護衛を頼みたいのさ。頼めるかい?」
「……了解しました!」
【あとがき】
なんかもう、ほんっとうにごめんなさい。大変お待たせしました。
書き直したりリターンズやり直したりしてたらごらんの有様です。
重ね重ね本当に申し訳ありませんでした。
バルデスとロドリゲスがかっこよすぎるかもしれませんが、彼らはまだ真っ当なソルジャーなので問題ありません。捏造フルスロットルですけど。
結果主人公の影が薄くなりましたが、そもそも戦闘に関してはお察し下さいだからしょうがないですよね。
なるべく次回は早く届けれるよう努力したいと思います。
閲覧、ありがとうございました。