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No.12397の一覧
[0] 伯爵令嬢ゼルマ・ローゼンハイム(ハーレムを作ろう続き)[shin](2009/11/07 17:44)
[1] 伯爵令嬢ゼルマ・ローゼンハイム(始まりは突然に)[shin](2009/10/04 01:49)
[2] 伯爵令嬢ゼルマ・ローゼンハイム(誰が悪いのか)[shin](2009/11/07 17:56)
[3] 伯爵令嬢ゼルマ・ローゼンハイム(リハーサルは華麗に)[shin](2009/11/07 17:56)
[4] 伯爵令嬢ゼルマ・ローゼンハイム(新たな仲間)[shin](2009/10/10 00:31)
[5] 伯爵令嬢ゼルマ・ローゼンハイム(東方辺境領)[shin](2009/10/14 01:19)
[6] 伯爵令嬢ゼルマ・ローゼンハイム(鉱山開発)[shin](2009/10/17 10:07)
[7] 伯爵令嬢ゼルマ・ローゼンハイム(ボーデ商会)[shin](2009/11/07 17:58)
[8] 伯爵令嬢ゼルマ・ローゼンハイム(お披露目)[shin](2009/11/07 17:59)
[9] 伯爵令嬢ゼルマ・ローゼンハイム(賢人会議)[shin](2009/11/07 17:42)
[10] 伯爵令嬢ゼルマ・ローゼンハイム(街道整備)[shin](2009/11/04 23:35)
[11] 伯爵令嬢ゼルマ・ローゼンハイム(賢人会議Ⅱ)[shin](2009/11/07 17:41)
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[12397] 伯爵令嬢ゼルマ・ローゼンハイム(東方辺境領)
Name: shin◆d2482f46 ID:993668df 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/10/14 01:19
「おはようございます、お養父さま」
「おはよう、ゼルマ、それと別について来なくとも良いのに、アル」

ご主人さまが苦笑を浮かべながら、ローゼンハイム卿に挨拶を返している。
最近卿は何かにつけて、ご主人さまをからかう様になった。

アンから屋敷の現状を、詳しく聞き出したらしい。
「けしからんって言って、怒ってたよ~、でも半分以上嫉妬だね~」

あんな酷い男に大事な娘を渡せるかと私にも言って来る。
冗談と判るようになってからは、笑って聞き流せるようになった。

だけど最初の頃は私が、真剣に怒るのを見て楽しんでられたのだ。
本当に卿は意地が悪い。



「初めまして、ローゼンハイム卿、ヴィオラと申します、宜しくお願いします」
「初めまして、アマンダです。 よ、宜しくお願いします」
今日はヴィオラとアマンダも一緒なので、ご主人さまと掛け合いをしていた卿に紹介する。

「お養父さま、ヴィオラは東方辺境領出身です」
「おお、それは心強い、宜しく」

卿がヴィオラの手を取り甲に口付けをする。
ヴィオラは、真っ赤になっている。

あっ、ご主人さまがハンカチを出してヴィオラの甲を拭きだした。



き、貴様、貴族を嘗めるのか。
ええい、汚い口でうちのヴィオラの手を汚すな。

間に立たされたヴィオラが目を白黒させている。



「ハイハイ、お養父さま、アルバートもいい加減にして下さい」
さすがにヴィオラが可哀そうで、笑いながらも止めに入る。

全く、どこまで気が合うのか、放って置いたら一日中二人であんなやりとりばかりしているのだ。
ご主人さまはああいう性格だし、卿も不遇の生活が長かった為だろう、貴族や平民で差別する事もない。

おかげで、本当に楽しそうに、言い争いをしているのだ。



「ゼルマ、そうは言うが悪いのば、貴族を侮辱するアルバートだぞ」
「何をおっしゃいますか、お嬢様、騙されては行けません。
 平民のヴィオラに対して貴族の礼を以てする態度、絶対下心があるに決まってます」

また二人で、しかも今度は私を巻き込んで。
実に楽しそうな二人だったが、上空の影の登場で終わりを告げる。


「お二人とも、竜が参りましたわ」
ゼルマは、こちらに向かって飛んで来る竜を見つめながら二人に告げるのだった。




用意してあった竜舎から、調教師や、竜務員、調教助手達が走り出て来る。
彼らを雇ったは良いが、竜の到着が遅れていたのだ。

五頭の竜が綺麗にV字型の編隊飛行で、こちらに向かって飛んで来ている。
先頭の一頭が群を抜いて大きく、その他が小ぶりの竜である。



後ろの四頭は、一人~二人乗りの高い機動力を持つ風竜のようであった。
四頭は、先頭の竜を残したまま、順番に着陸して来る。

「ええっ、乗り手がいないぞ!」
驚愕の声が、待ち受ける調教助手や竜務員の口から零れた。

「早く、竜舎に誘導しろ!」
そう言われても、乗り手もいない竜に近寄って行く人間は誰もいない。

通常、竜は人を選ぶ。
気に入らなければ、普通の人間が太刀打ち出来る存在ではない。

それ故、乗り手もおらず、鞍も置かれていない風竜に近寄ろうとするのは危険極まりないのだ。



「はい! みんなこっちです」
アマンダが飛び出していって、風竜に指示を出す。

調教助手や竜務員があっけに取られて見守る中、四頭の風竜はアマンダの指示に従い竜舎に向かって歩いて行く。
アマンダがこちらに来たのは、この為だった。

龍の八王子様から、火の守りを与えられたせいなのか、アマンダに対してはどんな竜でも逆らおうとしない。
多分、アマンダの後ろに龍を見ているのだろう。




「ありゃ、あれは入らんぞ」
着陸場に他の竜がいなくなったのを見計らうように、一回り大きい竜が着陸して来る。

流石に大きい。
確かに、あの大きさでは竜舎に納まらない。

フワリと降り立つように、優雅に大きな竜が着地する。


「ほおー、凄いな、火竜だな、それも大きい!」
ローゼンハイム卿が、感嘆したように言う。

「今回の小旅行に、全員が乗れるようにお願いしましたので」
ご主人さまが得意げに、卿に告げている。

これから東方辺境領に向かうに当たって、あちらに詳しいヴィオラも含め四人での移動となる。
その為に、竜を使う事になったのだ。

それならば、こちらの屋敷にも連絡用の竜を何頭か雇おうと言う事になった。
ご主人さまが、八王子さん経由で交渉された結果、この五頭がやって来たのだ。

そう、雇ったのである。
八王子さん経由で、風竜と火竜の親分に交渉し、契約が纏まったそうだ。

その結果として、竜自らこちらに飛んで来たと言うとんでもない話だった。
大体、親分ってなんですかと、ゼルマも突っ込んだがご主人さまは笑うばかりだった。





「いやあ、本当に飛んで来ましたなあ」
調教師が汗を拭き々こちらに歩いて来た。

「ああ、間違いないだろ。 あの竜達は、自ら此処に働きに来ているのだ。
 くれぐれも、対等な目線での対応をお願いするよ」
ご主人さまが、調教師に念を押している。

まかり間違って、機嫌を損ねては大変な事になる。
一応、慣れるまで昼間はアマンダが通って来る事になっているが、一抹の不安は拭えない。

「大丈夫、アマンダがいるから」
ご主人さまが私の不安気な顔に気が付いたのか、そう言って来る。

「いや、そのアマンダが不安なんですが」
私の代わりに、ヴィオラが思っていた事を話してくれる。

ウンウンと頷く私に対して、聞こえてない振りをして離れないで下さい、ご主人さま…




火竜に四人用の座席を付けさせて貰い、出発の準備が出来る。

「お嬢様、くれぐれもお気を付けて」
いつの間にか、家令のルーベルトも出て来ている。

「大丈夫、アルバートもいるから」
それが一番不安なんですよとブツブツ呟いているのは、笑って聞き流す。

「じゃ、お嬢様お願いします」
私は、杖を取り出し術式を展開する。

竜の背中に並んだ座席に座る四人の周りに、風の障壁が形作られる。
高速で飛び抜ける竜の上でも安定出来るのは、この障壁があるからこそである。

「よーし、お願いするよ、ライトニング」
ご主人さまがそう言うと、火竜はフワリと浮き上がる。

徐々に高度を上げ、火竜は猛スピードで東に向かって飛び出したのだった。







「ほう凄いなこの竜は、アル、名前はライトニングと言うのか?」
卿が後ろを振り返りながら、ご主人さまに聞いている。

ちなみに、私と卿が前の座席、ヴィオラとご主人さまが後ろだ。

「ええ、本当の名前は我々では発音出来ないそうです。
 意味が『光るもの』と言う事で、ライトニングと呼ぶことにしました」


普通の風竜が一時間に40リーグから60リーグで巡航する。

それに対して、ライトニングは火竜にも関わらず、80リーグから100リーグは出せるそうだ。


「いくらなんでも、火竜としては破格の速さじゃないか、ライトニングは」
「ええ、これも雇う時の契約のせいですけどね」

契約の内容は、適当な食事、快適な寝床、そして火の精霊の守りだった。
ご主人さまが火の精霊と契約している以上、それは多分当然の内容なのだろう。

火竜が、更に火の精霊の守りを得るとどうなるかの見本が、ライトニングだった。
通常の火竜とは比較にならない速度と火力を誇る竜種になれる。

その事を考えると、百年の契約でもライトニングには問題ないのであろう。
ちなみに、館に残った風竜四頭も同じような契約を交わしている。

外観は風竜なのに、火のブレスが吐けると言うのはやはり魅力だったのだろうか?





目的地は、ヴィンドボナから東に400リーグ強のカーリッシュ。
ローゼンハイム卿の領地だ。

ライトニングの速度だと、4~5時間の飛行となる。
馬車だと無理をしても7日程度は掛かる日程が、この時間になるのだから大したものだ。

だけど、乗っている間は非常に退屈なのはどうしようも無い。
それと、途中で休息したくなるのは、生理現象も含め仕方ない事だと思う。



「あの、そろそろ一度休息を取りましょう」

「ああ、いい考えだ、流石、私の娘」
「関係ないだろそれ」
「お願いします」

それぞれが非常に判りやすい回答を返してくれる。
ご主人さまが、ライトニングに何か語りかけ、火竜の速度がゆっくりと落ちて行く。

森が切れて辺りに牧草地が広がり、見晴らしの良い丘の上にフワリと着地するライトニング。
全員が座席から降り、身体を伸ばす。

ヴィオラが竜の前に立ち、用意した火竜用のおやつを展開する。
勿論、全て指輪の中に収納したものだ。

指輪は荷馬車三台分位の容量があるから、今目の前に出来た小山は全体の三分の一位。
それでも、大きな火竜にすればおやつなのだろう。

大きな口を開けて、食べ始めているそれを見ていると何だか納得出来る。




「それじゃ、一時間程待っててくれよな」
ご主人さまがライトニングに言う。

私たちは、ご主人さまの周りに集まった。
ローゼンハイム卿がいるので、しがみ付けないのが少し残念。

術式を構築され、光に包まれるとそこは、ご主人さまのお屋敷だった。




「お帰りなさいませ」
早々にクリスが挨拶して来る。

「ただいま~」
ご主人さまがクリスの頭を撫でて、ホールの奥のソファに腰を降ろす。


「ほおー、これが君の屋敷か、中々良い建物だな」
呆れたようなもの言いで、ローゼンハイム卿が向かいに腰を降ろす。

全く忘れていたが、卿にとってこれが初めての転移なのだ。
私やご主人さまが転移で移動してくるのはご存知だが、実際に経験はなかったのだ。

こちらの屋敷を訪れるのも初めてと来れば、卿はご主人さまに色々質問を始めた。
それに煩そうにご主人さまが答えている。




「いらっしゃいませ」
グロリアが、入って来て挨拶をする。

その後ろには二人のメイドがワゴンを押して来た。
お昼代わりのサンドイッチが山ほど積まれている。

私はここのマスターメイドの一人なのだから、手伝うべきなんだろうか?
それとも、伯爵令嬢として振る舞うべきなのか?


「今日はお客さま」
迷っていると、グロリアが声を掛けてくれた。

有り難くそのアドバイスに従い腰を降ろす。
ヴィオラは素早くホールを出て行った。

ライトニングのおやつの補給だろう。
それに、私と違い、卿と親しい訳でも無いので、息抜きは必要だ。


私は覚悟を決めてソファに腰を降ろしサンドイッチを頂く事にした。




食事を済ませ、再び先程の丘まで転移。
ライトニングは気持ち良さそうに寝ていた。

私達に気付いたのか目を開き、身体を起こす。
眠気を覚ますように全身を震わす姿は、まるで犬のようだ。

但し、大きさを考えなければだ。
思わず、ライトニングに木の棒を遠くに投げて取ってこさす姿を想像してみる。

ちょっと凄い見物だと思う。
ヴィオラに話したら、面白がってケラケラ笑い出してしまった。


「おおい、行くぞ~」
ご主人さまとローゼンハイム卿が笑い合っている二人を怪訝そうに見ていた。

「は、はい、今行きます」
ヴィオラと二人で慌ててライトニングの背中に上がる。

暫らく二人とも笑いの発作が納まらず、大変だった。




二時間程の飛行の後、最初の目的地カーリッシュに到着した。
ヴィンドボナと東方辺境領の中心都市クラドノを結ぶ街道を、コニンで南に折れて150リーグ程入った所にあるローゼンハイム卿の領地である。

この辺りはまだまだ人間と亜人の交ざり合った地域であるので、卿の館も立派な城壁で覆われていた。
所々崩れ落ちており、今まで放置されていたのが歴然としている。

ただ、その崩れ落ちた城壁の一ヶ所で修復を始めている一団がいる。
ご主人さまはライトニングを誘導し、その一団の正面に着地させた。

一団から一人抜け出して、ライトニングから降りようとしていた私達の側に歩み寄る。
傭兵団のファイトさんだ。

「ようこそ、カーリッシュ城へ、アウフガング傭兵団コンラート・ファイトです」
そう言ってファイトさん、大げさに頭を下げて来る。

知ってるよ、お前に言ったんじゃない等の小声が聞こえて来るが聞こえない振りをするのが淑女の嗜みと言うものだ。



ふと、ローゼンハイム卿を見ると何も言わず城壁を見つめている。

「お養父さま?」
返事が返って来ない。

も一度呼び掛けようかと思ったが黙ったままの方が良いと思い、何も言わす横に並ぶ。




「三年…、三年掛かった…」
やがて、卿の口から言葉が零れる。

「ほら、あの入り口からこの辺りまでと外郭の土台作りが一年目、二年目で上部に取り掛かり完成したのが三年目だ」
私は頷くだけで何も言えない。

だって、卿の声は悲しみに満ちていたのだ。


「その間に館の整備、道の補修、亜人との戦闘…」
卿は、息を大きく吐き出す。

「色々あった…、苦しい事ばかりが思い出される」
確かに卿の声は苦々しそうだった。

「だけど、私はその苦しさから目を背けてしまったのだよ」



「お養父さま…」
何を言えば良いのか、ゼルマには思いつかない。


「確かにあんたは、逃げ出した」
はっと気が付くとご主人さまが後ろに立っていた。

「俺にはそれのどこが悪いのかさっぱり判らない」
ご主人さまが、私とは反対側に立って、ローゼンハイム卿を見る。

「人は何時でも、途中で投げ出すな、最後まで遣り遂げろって言うけどな」
ご主人さまの声は呆れたような響きがあった。

「でもな、それも程度問題だ。何でもかんでもやれば良いってもんじゃない」
ご主人さまは、辺りを見回しながら続ける。

「貴族の責任、誇り、そんなもんの為に、十分な支援も得られないまま無闇に続けるものか?」
そこで、ご主人さまは卿にほほ笑み掛ける。

そう、それは私達全員が大好きな笑顔だ。


「それに、例えどんな理由であれあんたは戻って来た。何年経とうが遅い事はない。
 またやれば良いんじゃないかと、思う訳ですよ」
最後は何時も照れたような言い回しになるのも、ご主人さまらしい。



「ありがとう…」
卿の声は、震えていたけど、そこには覚悟があると、少なくとも私は感じた。




ファイトさんと、段取りを打ち合せした後、再びライトニングに登り込み次の地点を目指す。

とにかく、ご主人さまの転移魔法は座標を登録する為に一度はその地を訪れる必要があるのだ。
だから、今回の旅で座標が確立すればご主人さまの転移が可能となる。

要所には固定ゲートを設ければ、私やローゼンハイム卿がこちらに転移するのも可能となるのだ。




カーリッシュから南西に一時間、大体百リーグ程離れた地点辺りまで飛んで来た。
東方辺境領でもこの辺りは最早、その領地の外に当たる。

この方角では、ローゼンハイム伯爵領が一番外側にあり、その向こうは未開拓地。
逆に言えば、人の手が及んでいない地域だ。

「多分この辺だと思うのだが…」
ご主人さまが、ぶつぶつ言いながら、ライトニングに指示を出す。

眼下の地形は、段々盛り上がり山まで行かないにしても、丘陵地帯が連なっている。
その中、ライトニングが指示されたらしい地点に向かってゆっくり下りて行く。

地上に降りると、ご主人さまが杖を振り術式を展開される。
どうやら、地底を探っているようだ。

暫くそうしていたが、首を振りも一度全員にライトニングに登り込み移動する。



「一体、何が眠っているのだね?」
「もう少し待って下さい、多分見つかると思いますので」

ご主人さまが、秘密めかして言わない。
私とヴィオラは聞いているが、本当かどうか眉唾ものの話だった。


二箇所目も何も無かったようで、流石にご主人さまも少し焦りが見られる。


更に、南に下がり再びライトニングは下降する。
降りると、二箇所と同じように杖を振るご主人さま。


だけど、今度は当たりらしい。

「あった…」
そう言うと両手を叩き、握りこぶしを向けて来る。


流石に、本当なら大変な事になる。
ドキドキしながら、ご主人さまの様子を伺う。


全員を少し下がらせ、ご主人さまが術式を構築し出す。
地底の目標当たりを探り、そこまでの土を必要な範囲だけ砂に変えて行くのだ。

そうして、目標物にレビテーションの魔法を掛け、浮き上がらす。
砂を潜るようにして、それが地底から上がってくるそうだ。

このやり方は、前にご主人さまが自分の領地で井戸を掘った時の応用だと教えてくれた。


直ぐに地面が盛り上がり、大きな石のような塊が地上に現れる。
ご主人さまは、慎重にその塊を地面に横たえた。

私とヴィオラは開いた口が塞がらない。
本当に、本当に地中から出てきたのだ。


「こ、これは?」
ローゼンハイム卿は、良く判らないまま聞いて来る。

でもご主人さまに聞いていた私には判る。
そして、この石の塊のどこを見れば良いのかも。

大きな石の塊の所々に、微かに光る部分。
それは、確かに銀色だった。



「これが、ローゼンハイム伯爵家の富の象徴です」
そう、これが見つかったからローゼンハイム卿はヴィンドボナで復活するのだ。


「銀鉱石です、多分この当たり一帯にかなりの埋蔵量が期待できるでしょうね」




まさかそれが、ご主人さまのあちらの世界での知識である事など、知りもしない私達は唖然としてその石の塊を見つめるだけだった。


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