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No.12397の一覧
[0] 伯爵令嬢ゼルマ・ローゼンハイム(ハーレムを作ろう続き)[shin](2009/11/07 17:44)
[1] 伯爵令嬢ゼルマ・ローゼンハイム(始まりは突然に)[shin](2009/10/04 01:49)
[2] 伯爵令嬢ゼルマ・ローゼンハイム(誰が悪いのか)[shin](2009/11/07 17:56)
[3] 伯爵令嬢ゼルマ・ローゼンハイム(リハーサルは華麗に)[shin](2009/11/07 17:56)
[4] 伯爵令嬢ゼルマ・ローゼンハイム(新たな仲間)[shin](2009/10/10 00:31)
[5] 伯爵令嬢ゼルマ・ローゼンハイム(東方辺境領)[shin](2009/10/14 01:19)
[6] 伯爵令嬢ゼルマ・ローゼンハイム(鉱山開発)[shin](2009/10/17 10:07)
[7] 伯爵令嬢ゼルマ・ローゼンハイム(ボーデ商会)[shin](2009/11/07 17:58)
[8] 伯爵令嬢ゼルマ・ローゼンハイム(お披露目)[shin](2009/11/07 17:59)
[9] 伯爵令嬢ゼルマ・ローゼンハイム(賢人会議)[shin](2009/11/07 17:42)
[10] 伯爵令嬢ゼルマ・ローゼンハイム(街道整備)[shin](2009/11/04 23:35)
[11] 伯爵令嬢ゼルマ・ローゼンハイム(賢人会議Ⅱ)[shin](2009/11/07 17:41)
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[12397] 伯爵令嬢ゼルマ・ローゼンハイム(誰が悪いのか)
Name: shin◆d2482f46 ID:993668df 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/11/07 17:56
最初にご主人さまが、事件に興味を持たれたのはアルベール伯爵自身がこの屋敷を襲撃に来てからだと伺った。

アルベール卿に水の秘薬を使い、どのような経緯か聞き出したとご主人さまから聞かされた。
私にすれば、今の立場に貶めた本人がどうしてこの屋敷を襲うのかと驚きが先に来たのだが、ご主人さまは違った。

何故横領する必要があったのか?
これが、一番気になる点だと言うのだ。

ブッフバルト公爵は、十二選帝侯の一人である。
その権力は、皇帝すらしのぐと言われる選帝侯の一人であるのだ。

それなのに、莫大な金額が必要となるのは如何にもおかしい。
大体、遊ぶ金欲しさの犯行ではないのは判る。

では、何故ブッフバルト卿がそのような大金を横領する必要があったのかが疑問だと言うのだ。



ご主人さまは、最初ヴェスターテ家の資料から事件を調べ始めた。
このヴェスターテ家の資料調査は簡単だった。

どこでどう捜し出したのか、ゼルマが爺と呼んでいた我が家の家令を見つけ出して来たのだ。




「お嬢様、こんなにお美しくおなりになられ、若い頃の奥様に瓜二つですぞ」
爺は私を見るや否、そう言って泣き崩れた。

でも、それからがいけない。
あろう事か、ご主人さまに喰って掛かるしまつ。

やれ、恐れ多くも伯爵令嬢になんと言う格好をさせているのだ。
高々男爵風情が、お嬢様を囲うなぞ、なんと不埒な。



「爺、爺、私は今のままで十分幸せだ」
おおっ、嘆かわしい!

お嬢様、お嬢様は騙されておるのです、この不埒も・・・
「爺、これ以上ご主人さまの悪口を言うのは許さん!」

「し、しかし…」



言葉に詰まった爺を、ご主人さまがどこかに連れて行ってしまう。

そして、連れ帰って来た時には全くの別人のようだった。



「お嬢様、事情は良く判りました。不肖ルーベルト、この命お嬢様の為に捧げましょう」
どうして、こんな急に態度が変わったのか訳が判らなかった。

ご主人さまが水の精霊に何かお願いしたのかと聞いても、そんな事やってないと言うばかり。
結局、理由が判ったのはかなり先になってからだった。



爺はそのまま、ヴィンドボナの屋敷の家令を務める事となり、私を助けてくれた。
ただ困ったことに、何かにつけて、私の依怙贔屓をしようとするのには閉口した。

とにかく、爺がいる事で当時の父上の交遊関係がかなり明らかになった。
アンが、爺から話を聞き、ご主人さまがその相手から情報を仕入れる。



ご主人さまが知りたがったのは、どうしてブッフバルド公爵は多額の現金が必要だったかである。

「過程はどうでも原因が判れば攻め易いからな」
そう言って笑うご主人さま、その姿は頼もしくもあり、逆に怖さも感じるものだった。





そう言った地道な捜査を続ける中、私自身は更に自らを鍛え上げて行った。
メイジに剣は要らないと良く言われるが、ご主人さまの勧めに従い剣も習った。

「剣も使えるメイジ、魔法しか使えないメイジ、さてどちらが強いでしょう?」
ご主人さまにそう言われると、納得するしかなかった。



不思議だったのは、剣にしろ肉体強化にしろ、一度正しい型が出来るとそれを二度と忘れない事だった。
その日の全力を尽くして、一つの高みに辿り着く。

そうすると、翌朝にはそれが当たり前のように出来るのだ。
ご主人さまに聞くと、それが水の精霊の加護だと教えてくれた。


一つの高みに達した時の身体の動きを精霊が覚えている。
そして、それを再び行なおうとすると、精霊が身体をその状態に持っていくのを支えてくれるのだ。

だから型を覚えろと剣の師匠には何度も注意された。



「自分の力だけでー、何かするんじゃないのよー」
「貴女の周りにいる精霊の力を感じるのー」

語尾を延ばすような言い方には、何時もながら苛立たされるが、アリサの指導は的確だった。
ハーフエルフと言うのは、これ程力強いものなのか。

では、エルフ本体は更に強大な存在なのか?
私の疑問に、アリサは笑いながら答えてくれた。


「エルフはねー、力に依存しすぎているのよねー」
アリサが言うには、彼女自身が強くなったのは、ご主人さまや八王子様にあってからだと言う。

自分より強大なものに出会い、それと対する事により始めて自分の至らなさに気づくモノだと言う。
ちなみに、八王子様と言うのは、龍だと言うことだ。

ゼルマ自身は、白いローブを身に纏い、不思議な話し方をする御仁と言う思いしか抱かなかったが。






ブッフバルト公爵が横領までして莫大な金額を必要とした理由は、あきれ果てるものだった。
それを纏め上げた資料を使って、アンが説明してくれた。


「こんな処で、ツェルプストー家が出てくるとは」
ご主人さまが、呆れたように言われたのだが理由は教えて貰えなかった。



とにかく、ブッフバルト公爵は、ヴィンドボナから南西に位置するアルトシュタット領を治めている。
それ故、アルトシュタット侯と呼ばれている。

そのアルトシュタット領から南西に下ると、ザールラント領が広がっている。

こちらは、アイレンドルフを中心とするザールラント侯が治めている。
そして、アルトシュタット侯であるブッフバルト公爵とザールラント侯との争いが、その全ての原因だった。




選帝侯同士は立場上同格と言う事になっているが、それぞれがお互い同士、主導権争いを繰り返しているのは言うまでも無い。
アルトシュタット侯ブッフバルト公爵は、ザールラント侯を自分の支配下に措きたいと常々画策していた。

特に、ザールラントは、陸路でのトリステインへの街道を占めており、領地の大きさに比べ裕福な領地である。
トリステイン王国トリスタニアから伸びる街道は、帝政ゲルマニアに入るとアイレンドルフに至る。

アイレンドルフはサールラント領の主要都市であり、それ故トリステインとゲルマニア間の交易で栄えている。
街道は、アイレンドルフを抜けると、北北東のアルトシュタットに通じている。

アルトシュタットから東北東に伸びる街道の先が、ヴィンドボナである。
ここで問題となるのは、この街道がアイレンドルフから一旦北に上がり、それから再び東に伸びている点であった。



ヴィンドボナが帝都として栄えるに連れ、トリステインからの各種輸入品は、ヴィンドボナを目指すようになる。
そうすると、アルトシュタットは単なる通過点でしか過ぎない。

輸出入を扱う商人にすれば、アルトシュタットに一旦寄るよりは、直接ザールラントから北東に上がる側道の方が便利なのである。
この結果、主要街道として整備されたアイレンドルフ-アルトシュタット-ヴィンドボナ間よりも、アイレンドルフ-ヴィンドボナ間の側道の利用者が増える傾向があった。



元々、トリステイン王国、ガリア王国に沿って発達した諸都市と、北海沿いに北上する諸都市の結束点として発展したアルトシュタットである。

大きな見方をすれば、帝都がヴィンドボナに定められた結果、この結束点の役割を帝都に取られた形なのだ。
そこに持って来て、アルトシュタットを通らない側道の方が栄え出すと、都市の衰退に繋がるのだ。



この事実を年々突きつけられていブッフバルト公爵にすれば面白い筈が無い。
何かと、ザールラント侯とぶつかるようになっていた。

そして、ブッフバルト公爵が採用した対応策が力による威圧である。
選帝侯としての立場をフルに活用し、公爵軍の増強を始めたのだ。



これにザールラント侯が応じれば、軍拡競争と言うチキンレースになるのだが、ザールラント侯は応じなかった。
と言うか、ありがたがった節がある。

で、何が起こったかと言うと、トリステイン王国との国境紛争が勃発する。
ご主人さまが驚かれた、アンハルツに領地を持つツェルプストー伯爵の登場である。

帝政ゲルマニアとの国境沿いに領地を持つトリステイン王国のヴァリエール公爵家と、ツェルプストー伯爵家との間で紛争が勃発した。
元々、両家は代々国境問題でぶつかり合う家柄らしいが、やはりこの時も同様の理由により始まったそうだ。



「国境問題? 女性問題の間違いじゃないのか?」
ご主人さまがアンに確認していたが、やはり国境問題だった。



このような国境紛争は、国家間の戦争まで発展するのを嫌う為、精々近隣の選帝侯直属の公爵軍が応援に回る程度である。
ちなみに、これらの公爵軍が直接戦闘に参入する事は殆ど無い。

あくまでも後詰として控えており、この場合だとヴァリエール家の軍勢が紛争地から更に内側に攻めてきた場合の為の軍なのだ。
で、この後詰としてブッフバルト公爵は異例とも言える3,000人の軍隊を送り出してきた。

勿論、軍事力によるザールラント侯への示威行為である。



これで、ザールラント侯が頭を下げればブッフバルト公爵も機嫌が良かったのだろうが、そうは行かなかった。
どういう訳か、後詰の筈のブッフバルト公爵軍が現地にて指定された待機地点は、アンハルツの近郊トリステイン王国寄り。

しかも、偶々紛争の当事者であるツェルプストー伯爵の軍勢は遥か離れた地点で、ヴァリエール公爵軍を索敵中。
間が悪い事に、トリステイン王国から帝政ゲルマニアに進行した肝心のヴァリエール公爵軍が先にこのブッフバルト公爵軍を見つけてしまう。

ヴァリエール公爵軍は、1,000人の軍勢で進行して来ていたが、敵の数の多さに一旦軍を下げ見張りを多数送り出す。
どうやら、後詰の軍だと確信したヴァリエール公爵軍は、明け方この軍に対して奇襲を敢行する。

まさか自分達が攻撃されようとは考えていなかったブッフバルト公爵軍は壊滅する。
急を知らされザールラント侯の軍勢が駆けつけた時には、ヴァリエール公爵軍は既に撤退した後だった。





「じゃあ、何か? ブッフバルト公爵が金を必要とした理由は、軍備拡張して揃えた三千の軍を一夜にして無くしたからと言うのか?」
ご主人さまが呆れたようにアンに問う。

「ですね~、ゼルマさんの家族の事件の前後にもう一度同じ規模の軍隊をブッフバルト公爵は揃えてますからね~」
アンの答えに、私もあきれ返ってしまう。

三千人もの軍隊を編成し、それを失ってしまい再び編成する。
壊滅した軍の中には貴族も当然含まれているだろうから、その保障も必要であろう。

このような紛争が発生したのは、ゼルマがまだ幼い頃だった為、父がどう言う立場だったのかは知らなかった。
しかし後で爺に確認すると、この紛争の時には父も大変だったらしかった。



「と言う事は、傾きかけたアルトシュタット領はあの事件の後立て直しに成功したと言う事か?」
ご主人さまが、アンに確認する。

公金横領にて、傾きかけた領地の経営を立て直したのだろうか?
それだと、余りにもあからさま過ぎないだろうか?



「いえ、そうでもないようですよ~、相変わらず領地経営は苦労しているとの事です~」
そんな情報あったかーと、アンにご主人さまが確認している。
ほらほら、これじゃないですか~と、資料を指差して説明するアン。

何だか、日増しにアンが賢くなって行く一方のような気がする。



「と言う事は、やはりあいつか」
「ハイ、そうです~、あいつです~」

「「ランマース商会」」
ご主人さまと、アンの声が見事に同期するのを私は呆れて見つめる。




修正…

何だか、日増しにアンが悪賢くなって行く一方のような気がする。






ランマース商会は、ゲルマニアの四大商人の一人である。
ご主人さまが穀物を売られ、最近偶にお見えになるボーテ様のボーテ商会と同様に穀物を主に取り扱っている。

ただ、その商売に関しては何かと黒い噂がついて回る商人であった。




公爵軍の拡充の為に、ブッフバルト公爵は領地の収穫を担保にランマース商会から資金を得ていた。
ランマース商会にすれば、領民に対する取立てが厳しくなろうが関係は無い。

元々、ブッフバルト公爵の領地であるアルトシュタットの経営は悪化していた。
そこに持って来て、無理な借金、しかも借りてまで整備した軍は一日で壊滅。

後は破産しか残されていない状況に追い込まれたブッフバルト公爵は、公金横領を思いつく。
ヴェスターテ伯爵家が公金横領の罪に問われている時点で、ランマース商会も気づいてよう。

しかしランマース商会にすれば、ブッフバルト公爵がどこから返済資金を調達しようが関係は無い。
そしてヴェスターテ家の犠牲で、借金は返済された。

だが、御家が犠牲になっても、ブッフバルト公爵は無理な借金を返しただけで、再び同じように借金を増やしている。
利益を得ているのは、アルトシュタットの小麦の売買を一手に握ったランマース商会だけだった。





「ゼルマ、これでお前の復讐の相手が誰だか決まったな」
ご主人さまとアンの手により、見事なまでに我が家にどのような災難が降りかかったのかは明らかにされた。

「はい、直接手を下したアルベルト伯爵、裏で画策したブッフバルト公爵、利益だけを得ているアンデルス・ランマースです」
私は、この三人に対して改めて復讐を誓う。


「では、その方法を検討しよう」
ご主人さまの言葉が、その時は本当にゼルマ自身を奮い立たすものだった。


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