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No.12267の一覧
[0] 燐・恋姫無双【完結】[水虫](2010/09/28 06:20)
[1] 一幕・『新たな外史』一章[水虫](2009/12/08 06:04)
[2] 二章・『旅立ち』[水虫](2009/10/09 05:35)
[3] 三章・『旅の途中で(猫)』[水虫](2009/09/29 08:10)
[4] 四章・『そして再び、この場所へ』[水虫](2009/09/30 05:50)
[5] 五章・『天の御遣い』[水虫](2009/09/30 19:36)
[6] 六章・『月夜の下で』[水虫](2009/10/01 19:46)
[7] 七章・『仮初めの仲間』[水虫](2009/11/19 20:54)
[8] 八章・『最後の責任』[水虫](2009/10/03 11:16)
[9] 九章・『鳳凰の雛』[水虫](2009/10/04 15:27)
[10] 一幕・終章・『決起、北郷義勇軍』[水虫](2009/10/22 18:22)
[11] 二幕・『黄巾の乱』一章[水虫](2009/11/10 04:58)
[12] 二章・『翻る劉旗』[水虫](2009/10/08 16:53)
[13] 三章・『一刀と劉備』[水虫](2009/10/09 05:41)
[14] 四章・『戦う理由』[水虫](2009/10/09 14:34)
[15] 五章・『真夜中の訪問者』[水虫](2009/10/10 16:57)
[16] 六章・『誇りと信頼』[水虫](2009/10/11 20:08)
[17] 七章・『それぞれの葛藤』[水虫](2009/10/13 05:39)
[18] 八章・『尊きモノ』[水虫](2009/10/13 18:53)
[19] 九章・『三人の邂逅』[水虫](2009/10/15 04:58)
[20] 十章・『ご主人様』[水虫](2009/10/15 17:56)
[21] 十一章・『血盟』[水虫](2009/10/16 21:07)
[22] 十二章・『乱世の時流』[水虫](2009/10/18 00:07)
[23] 十三章・『一番のお友達』[水虫](2009/10/19 09:58)
[24] 十四章・『君主の戦い』[水虫](2009/10/20 16:02)
[25] 二幕・終章・『また会う日まで』[水虫](2009/10/22 18:23)
[26] 三幕・『一刀の選択』一章[水虫](2009/11/10 05:01)
[27] 二章・『張角の足跡』[水虫](2009/10/23 16:06)
[28] 三章・『王の語らい』[水虫](2010/01/09 07:10)
[29] 四章・『白装束の行方』[水虫](2009/10/25 16:02)
[30] 五章・『真実』[水虫](2009/10/26 08:48)
[31] 六章・『二人』[水虫](2009/10/27 21:49)
[32] 七章・『討伐の恩賞』[水虫](2009/10/28 17:55)
[33] 八章・『疑念と罪悪感』[水虫](2009/12/11 21:22)
[34] 九章・『乙女心』[水虫](2009/10/30 18:47)
[35] 十章・『迷子で子猫』[水虫](2009/11/01 04:35)
[36] 十一章・『武人の矜持』[水虫](2009/11/02 10:57)
[37] 十二章・『恋と恋』[水虫](2009/11/04 07:12)
[38] 十三章・『俺と一緒に』[水虫](2009/11/05 06:27)
[39] 三幕・終章・『地獄よりの使者』[水虫](2009/11/09 06:19)
[40] 四幕・『凶・恋姫無双』一章[水虫](2009/11/10 05:02)
[41] 二章・『暴君、始動』[水虫](2009/11/10 22:06)
[42] 三章・『あなたが信じた、私の道を』[水虫](2009/11/21 15:44)
[43] 四章・『撤退』[水虫](2009/11/19 05:42)
[44] 五章・『開門』[水虫](2009/11/15 06:06)
[45] 六章・『撃退』[水虫](2009/11/17 05:09)
[46] 七章・『瓦解』[水虫](2009/11/17 18:49)
[47] 八章・『昂揚と迷いと』[水虫](2009/11/19 06:02)
[48] 九章・『理想と現実』[水虫](2009/11/19 20:56)
[49] 十章・『届かぬ叫び』[水虫](2009/11/21 16:50)
[50] 十一章・『友軍の鎖』[水虫](2009/11/22 22:26)
[51] 十二章・『天下無双』[水虫](2009/11/24 07:33)
[52] 十三章・『高嶺の花』[水虫](2009/11/24 21:17)
[53] 十四章・『優しい道化』[水虫](2009/11/25 20:00)
[54] 十五章・『毒を以て』[水虫](2009/11/28 17:52)
[55] 四幕・終章・『不屈の志』[水虫](2009/11/28 20:11)
[56] 五幕・『西方の戦い』・一章[水虫](2009/11/29 19:58)
[57] 二章・『卑弥呼』[水虫](2009/11/30 18:03)
[58] 三章・『献帝』[水虫](2009/12/01 18:44)
[59] 四章・『不透明な溜め息』[水虫](2009/12/03 21:56)
[60] 五章・『日輪』[水虫](2009/12/05 18:17)
[61] 六章・『剣に宿る』[水虫](2009/12/07 06:40)
[62] 七章・『蝶は彷徨いて』[水虫](2009/12/08 06:12)
[63] 八章・『花に寄り添う』[水虫](2009/12/08 18:01)
[64] 九章・『かつての王都』[水虫](2009/12/10 07:15)
[65] 十章・『棺』[水虫](2010/01/14 19:39)
[66] 十一章・『交換条件』[水虫](2009/12/12 06:13)
[67] 十二章・『攻略不可能?』[水虫](2009/12/12 16:45)
[68] 十三章・『お姉さん』[水虫](2009/12/13 17:13)
[69] 十四章・『閻行』[水虫](2009/12/15 22:06)
[70] 前半終幕・『夢』[水虫](2009/12/16 22:16)
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[12267] 十二章・『恋と恋』
Name: 水虫◆70917372 ID:8985ce85 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/11/04 07:12
 
「…………」
 
 意識が沈んでいく。まるで深い水の底に引きずり込まれていくように。
 
 いや、それは比喩ではない。実際水に沈んでいるのだから。
 
 無様な。武人として育てられ、武人として生き、それこそが我が誇り。そんな私が、溺死て。
 
 情けなくて涙が出てくる。まだ一度も恋に勝ててもいないというのに。
 
 朦朧とした意識の中で、私は……深く沈んでいく体が、何かに支えられるのを感じていた。
 
「…………」
 
 沈んでいた意識が、ゆっくりと浮上する。何かが叫んでいる。誰かが呼んでいる。
 
 ……苦しい、苦しい。
 
 何かが、私の口を塞ぐ。そして、何かを私の中に吹き込んでくる。
 
 私には、それが命そのもののように感じられた。
 
「……ッ! げほっ! がはっ!」
 
 吹き込まれ、かき回された違和感の後、私は何かを吐き出した。
 
 その衝撃に、急速に意識が覚醒する。
 
「…………」
 
 うっすらと目を開く。目の前には、顔……北郷か。顔が近いぞ。
 
「私は、溺れ、て……」
 
 ぼんやり呟いて、ようやく溺れた事を思い出した。
 
 すると……
 
「よかった……。ホンットよかったぁ……!」
 
 北郷は私の上から退くどころか、その姿勢のまま脱力した。……泣いて、いる?
 
「……泣いて、いるのか?」
 
 思ったままの言葉を口にする。返事はない。
 
「…………」
 
 私が助かって、嬉しいのか。よく考えたら、私を助けたのも北郷に違いない。他にいないし。
 
「………はぅ」
 
 私は、どうしたというのだろうか?
 
 鼓動が早い、息が詰まるほどに。力が入らない、熱病にでも侵されたように。北郷の背中に、輝く虹輪が見える。泣き顔が、可愛い。
 
 ……考えられん事。今まで武人として力を磨き、それだけを誇りに生きてきた。
 
 私は女である前に武人、我が恋人は愛用の武器・『金剛爆斧』。そう思っていた。
 
 今までの人生で、そういう事を全く考えなかったわけではない。私よりも強い男……などとぼんやりと思っていた気がする。
 
 北郷は、私よりもずっと弱い。
 
 だが、よく考えたら……私が、自分より強い相手を認めるだろうか? そんな相手と寄り添う。そんな敗者に成り下がるのだろうか?
 
 いかん、どんどん考えが肯定的に……ん? 待て、北郷が私を助けた? つまり、あの時私の唇を塞いだのは……
 
「(……ぁぁ〜〜)」
 
 冷えきった体に、一気に熱が巡る。
 
 考えにくい事。今まで他人事のように感じてきた事。よりによって北郷に。
 
 それでも、私は知識としてなら“これ”を知っている。他に、説明出来る言葉を知らない。
 
 サラシを巻いただけの、濡れ鼠なこの身が少し恥ずかしい。
 
 やはり、と思うしかなかった。
 
「舞无だ」
 
 これは私の、初恋なのだと。
 
 
 
 
「っしゃぁああーー!!」
 
 今日は非番! 昨日は華雄……じゃなくて舞无の騒ぎで大変だったしな。
 
 死ぬ気で資料を持ってった時の、詠の……
 
『……あんた、明日は非番でいいわよ。その代わり趙雲にサボらないよう言っときなさいよ』
 
 という言葉にどれだけテンション上がった事か。テンション上がりすぎてなかなか寝付けなかったくらいだ。
 
「……って、何しよう?」
 
 元・現役高校生な俺としては、この世界で一人楽しむ娯楽なんて未だ無に等しい。でも皆忙しそうだし。
 
 街をぶらつく……って、それじゃいつもと同じじゃないか。
 
「あ」
 
 そう考える中、ナイスアイディアが浮かんだ。
 
 そうだそうだ、日頃から基本フリーダムにしてるあいつが居たじゃないか。
 
 結構街の見回りで会ってるけど、休日に会うのは久しぶり。いざ出ぱ……
 
「と、その前に星に一言釘差さないとな」
 
 っていうか、今から朝稽古じゃないか。
 
 微妙に上がったテンションを盛り下げつつ、俺は自室を後にした。
 
 
 
 
「ほら、言った側から……脇ぃ!」
 
「ぎゃふっ!」
 
 成長してないとか言うな。比較対象が不適切なんだよ。
 
 これでもダウンするまでの時間は伸びているはずだ。タイマーとか無いけどな! そして集中してる時の主観時間ほどアテにならんものも無……やめよ、ネガティブになるの。
 
「……大丈夫、伸びてる」
 
「……ありがと、恋」
 
 運良く鍛練の途中で恋と遭遇出来たのは幸運だった。恋ならいつものんびり、詠が恋の手綱を握れてない……って言うか、恋はこれでこそ恋なのだ。
 
 今日は恋の屋敷にお邪魔するプランである。
 
「だから、今度は恋が相手……」
 
 キャーー!!
 
「ふっ、良いではないか。敵は私一人ではない。妙な癖などつかれても困る」
 
「……星、お前俺を殺す気ですか?」
 
「まさか。殺すのは私ではないのでな」
 
 こっんの、メンマ!
 
「フンッ!」
 
「うわぁ! 方天画戟はやめて! ホントに死ぬ! 真っ二つになる!」
 
 俺に向けて戟を振るう恋は、その言葉に目をぱちくりとさせ、星を窺う。俺を窺え!
 
「恋! お前の好きにしろ」
 
「(……コクッ)」
 
 頷いたーー!?
 
 戟の風圧が前髪を薙ぐ。背筋が凍る。冷や汗が噴き出す。
 
 繰り出された突きを木刀で横に払って後ろに跳ぶ。
 
「恋とて、おぬしの身を案じて珍しく積極的になっているのだ。命懸けで応えてこそ男、というものだぞ?」
 
 言って、楽しそうに星は笑う。くそぅ、面白がりやがって。
 
「……一刀は、前に出る」
 
 ボソッと呟いて、恋は暴風のように戟を振り回し、次々に攻撃を仕掛けてくる。
 
 斬撃なのか刺突なのか、はたまた石突きなのか、ほとんど確認すら出来ない。
 
 これ、間合いに入った瞬間に死ぬんじゃ?
 
「でも、弱い……」
 
 恋は思った事を隠さず、素直に口に出すから、余計にグサッときた。
 
「このっ!」
 
 何とか捉えた。戟の柄を木刀で叩いて、横に泳がす。
 
 むしろ俺の手の方が痺れたけど、近づけば少なくともあの刃は食らわない。
 
 そう思って体当たり気味に前に飛び出して……
 
「ぐぁっ……!」
 
 頬に鈍い痛みを感じて、無理矢理後退させられる。食らったのは、恋の左拳。
 
 そういや、前の世界で星が、恋は体術を織り交ぜるのが得意とか言ってたような……
「っ!?」
 
 そんな悠長な考えに浸る余裕など当然のように無く、恋は方天画戟を振りかぶっていた。
 
「それじゃ……いつか斬られる」
 
 寂しそうに、悲しそうにそう呟く恋の声が聞こえて、俺は思わず庇うように木刀を構えて……
 
「………う」
 
 ポトッ、と、俺の木刀の柄から先が、綺麗に切り落とされていた。
 
 何ちゅう切れ味。いや、恋の腕がいいのか。
 
「だから守る」
 
 またも小さく呟いた恋の言葉は、しかし不思議なほど強く響いた。
 
「恋……」
 
 ガシャッと戟を無造作に放り出した恋は、俺の腫れた頬を撫でる。
 
「……痛い?」
 
「…………」
 
 さっきまで命の危機を感じていた自分を殴ってやりたくなる、その健気すぎる仕草。
 
「……全く、本当に罪な男だ」
 
 呆れたように、それでいて楽しそうに呟いた星が、ぽんっと水の入った竹筒を俺の頬に当てる。
 
 俺なんかより、星の方がよっぽど恋の事を理解してた、という事なのかも知れない。
 
 そんな、若干涙腺の弛むような空気をぶち砕くように……
 
「一刀ぉーー!」
 
 中庭に大声が響いた。びりびりと肌を震わす。
 
「ぬぅ……華雄か」
 
「……うるさい」
 
 星も恋も、頭を抱えてフラフラとよろめく。
 
 かくいう俺もちょっと耳が痛い。
 
「やはり居たか! 今の時間ならば鍛練していると思ったぞ」
 
「……朝から元気だな、舞无」
 
 っていうか、いきなりどうしたんだ。俺また何かしたのか?
 
「「……真名?」」
 
 その質問を俺が口に出す前に、星と恋がハモった。まあ、勘違いする気持ちはわかる。俺もしたし。
 
「ああ、華雄の真名、舞无って言うんだってさ」
 
 俺の時と同じ轍は踏まない。折れた木刀で地面に書きながら教えてみる。
 
「……舞无?」
 
 首を僅か傾げながら、恋が舞无に訊く。……可愛い。
 
「……そうだ。それが私の真の名前」
 
「舞无」
 
 舞无の言葉を聞いているのかいないのか、恋は確認するようにもう一度呟く。……そういえば、元々恋の事だけは真名で呼んでたもんな。
 
 そういや、俺さっき「一刀」って呼ばれたな。
 
「……いつからかな?」
 
 俺をジト目で睨む星。何が?
 
「華雄にはいつ手を出された?」
 
「すぐそっちに持ってくな!」
 
 地味に敬語になってるし!
 
 と、とりあえずさっさと用件済まして恋ん家に逃げよう。
 
「それで舞无、どうしたんだ? こんな朝から」
 
 正直、良い予感はしない。カナヅチの事を黙ってろと、また念を押しに来たとか?
 
 それにしては、両手に乗ってる物体がミスマッチだが。
 
「手遊びに朝食を作ったら余った! 食え!」
 
 そう、舞无の右手には炒飯が、左手には餃子の皿が乗っていた。
 
 しかし、そんな事より何より………
 
「「…………」」
 
「………?」
 
 あまりにも予想外の事態に、三者三様の沈黙。
 
 ……えーと、何だって?
 
「? ……何だ、朝稽古で腹が減っているだろうと思っていたのだが」
 
 いや、そこで舞无に不思議そうな顔されても。もしかして、自分の行動の不自然具合に気付いてないのか?
 
 いや、別にそれ自体はおかしくない。こいつの鈍さは半端ないし。ただ、何でこんな、部活の後輩マネージャーみたいな真似を?
 
「……もらう」
 
「あっ! こらっ、恋!」
 
 そんな俺の?にまるで頓着せず、恋は餃子を一つつまみ食う。
 
「ふむ、少々怖いが……」
 
「ああぁっ!」
 
 間髪入れずに、しかし恐る恐る、星がレンゲで炒飯を一掬い、食べる。
 
 いちいち狼狽える舞无が少し面白い。
 
「おぬしもどうだ? 一刀よ。てっきり武以外はからきしかと思っていたが、案外やるぞ?」
 
 何!? この瞬間、俺の一番の懸案事項が解消された。
 
 かつての愛紗のびっくり料理が味覚と脳裏をよぎったのだ。
 
「?? ……私は、料理など今日が初めてなのだが」
 
 さらにビックリ。初めてで星を納得させる料理を作るとは……予想外の才能だ。
 
 とにかく……
 
「あむっ……」
 
 俺も食ってみる。おぉ! これは確かに!
 
「イケるなぁ、これ!」
 
「ほ、本当か!?」
 
 うん、何か炒め方とか味付けとか、根本的な部分がしっかりしてる。
 
 これが初めてだっていうなら、練習重ねて工夫したら店に出せるぞ。
 
「ふっ……、嬉しいか? 華雄よ」
 
「うん!」
 
「「…………」」
 
「???」
 
 星の問いに、舞无が無邪気に応え、俺と恋が沈黙、満面の笑顔で頭に?を浮かべる舞无を、星がニヤニヤと見ている。
 
 自分の行動のギャップに気付かないあたりが、何とも………
 
「……可愛いな」
 
「俺もそう思う」
 
 星と、そう小声で確認し合った。
 
 
「……で、一体何をされたのかな? 北郷一刀殿」
 
 
 ……好奇心を織り交ぜた嫌みは忘れてなかったけど。
 
 
 
 
(あとがき)
 華雄の真名ですが、舞无(まな)と読みます。
 前回の感想で、そういうのが紛らわしいと思ったので、補足を。
 
 


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