<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

その他SS投稿掲示板


[広告]


No.12007の一覧
[0] 侵食する変態と幻想庭園 【東方Project】[真・妄想無双](2011/02/13 09:00)
[1] Act.1-1  伊達男と幻想庭園[真・妄想無双](2010/07/13 19:45)
[2] Act.1-2  [真・妄想無双](2010/07/13 19:46)
[3] Act.1-3  [真・妄想無双](2010/07/13 19:47)
[4] Act.1-4  [真・妄想無双](2010/07/13 19:48)
[5] Act.1-5  [真・妄想無双](2010/07/13 19:48)
[6] Act.2-1  名前の無い喫茶店[真・妄想無双](2010/07/13 19:49)
[7] Act.2-2  [真・妄想無双](2010/07/13 19:50)
[8] Act.2-3  [真・妄想無双](2010/07/13 19:50)
[9] Act.2-4  [真・妄想無双](2010/07/13 19:51)
[10] Act.2-5  [真・妄想無双](2010/07/13 19:51)
[11] Act.2-6  [真・妄想無双](2010/07/13 19:51)
[12] Act.3-1  咲夜からの招待状[真・妄想無双](2010/07/13 19:52)
[13] Act.3-2  [真・妄想無双](2010/07/13 19:53)
[14] Act.3-3  [真・妄想無双](2010/07/13 19:53)
[15] Act.3-4  [真・妄想無双](2010/07/13 19:54)
[16] Act4.-1  ロリータ咲夜爆誕[真・妄想無双](2011/02/13 09:11)
[17] Act.4-3[真・妄想無双](2011/07/14 03:38)
[22] Act.4-3[真・妄想無双](2011/07/14 03:36)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[12007] Act.2-4  
Name: 真・妄想無双◆fafeda7d ID:9f2446cc 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/07/13 19:51
妖夢が駆けて行って幾ばくかしてのことだ。弾幕ごっこで損壊した白玉楼の庭で、二人は対峙していた。

「甘いわ。 完熟林檎みたく甘すぎるわよ、紫」

油断、慢心することなく、幽々子は親友を見据えていた。激しい弾幕の攻防があったのにも関わらず、その顔には焦燥も、傷跡も見当たらない普段の“ぽややん”とした姿からは考えられない、威風堂々とした姿。冥界の管理者として何一つ恥じることない佇まい。

「今日は一歩も引けない理由がある。 だから、是が非でも負けるわけにはいかない」

彼女の周囲には、蝶が舞う。色鮮やかな、この世のもととは思えない幽玄の蝶が。儚くも力強く、荒々しくも優雅に、鮮烈にして華麗。この光景を目にすれば大抵のものが納得するだろう。幽々子の弾幕が、幻想郷で最も美しいと言われているのも頷ける、と。

対する紫は、幽々子同様に傷こそないものの、その表情には焦燥、困惑といった感情が見受けられる。戦う者のコンデイションとしては決して良くはないものだ。

「随分と調子がいいじゃない……。 問うわ、幽々子。 何が貴女を、そこまで駆り立たせるの?」

「答えを得たいと望むのなら、弾幕で語りなさい。 言葉では言い表せないものを語るのが、弾幕ごっこなのだから」

大真面目な表情で語る。幽々子の本気を察した紫は、頷く。

…………何があったのかは検討もつかないけど、嘗めてかかったら落とされるわね。 ならば、相応の手を打つべき。

懐から、己が必殺技を記録した、力を込めるだけで発動することが出来る札、スペルカードと呼ばれるものを取り出す。

【弾幕ごっこ】のルールを端的にいったら、相手を撃墜するか、決闘の初めに決めておいた枚数のスペルカードを全て攻略すれば勝利となる。

「カードの枚数はお互い、残り四枚。 そう決着までは遠くないわ。 貴女の覚悟に恥じないよう、私も相応の覚悟で挑ませてもらうわ」

その言葉に幽々子は笑みを見せ、

「行くわよ、親友」

「来なさい、親友」

最高の親友を迎え撃つ覚悟と共に、再度、激突した。


     ∫ ∫ ∫


場面は変わり、名前の無い喫茶店ではそれとなく平和で、それとなく日常的で、それとなくイカれた光景が広がっていた。

店主も店主ながら、その店を訪れる人種は少しばかり性格に問題のあるものばかりなせいだろうか。それとも、その店を訪れたものは“頭がおかしくなる”効果でも付与されているのだろうか。どちらにせよ、喫茶店という不特定多数の人物が訪れ、様々な価値観が入り混じる中、何故か“変態”というファクターが濃いことになっている。

特に、

普段は真面目で正義感が強い、真っ直ぐな彼女、魂魄 妖夢が

「店主! 約束通り、例のものをッ、紫様のくつ、くつしたを」

手に持っていたものをカウンターに叩きつけたのは、何か悪い夢のようだ。それに、靴下といっても大妖怪、八雲 紫の靴下だ。

周囲でも決して小さくない騒ぎが生じている。「馬鹿な……俺の最後の良心の妖夢ちゃんが」「妖怪の賢者から、大切なものを」「それも、靴下を」「奪ってきた、だと?」信じられないといって面持ちを浮かべながら。

射命丸と、魔理沙は上手く言葉に出来ない気持ちを抱えながら顔を見合わせて、店主の雪人はというと、

「まさか……本当に持ってくるとは思わなかった。 いやはや、実に愉快、愉快だ」

たった数日で、あの八雲 紫から靴下を奪ってこれるとは思わなかったのだろう。僅かに、目を見開きながら、心情を吐露した。

「店主。 先に言っておきますが、あの話が冗談だった、なんて話は通用しませんから」

「冗談だった、と言ったら?」

雪人の言葉に、妖夢は笑みを見せた。にこり、という言葉がしっくりくる笑みだ。ただし、瞳は笑っていなかったが。

「ご存知ですか? 血液には鉄分が多いから、刀の錆びにするっていうのよ?」

「落ち着きたまえ、サムライガール。 防御力が紙同然の私が、君に喧嘩を売るわけないだろう? だから、刀から手を放して茶でも飲みなさい」

「飄々とした笑顔が信用なりませんが、お茶を出してくださるというなら仕様がありませんね」

背負った二種類の刀、楼観剣と白楼剣を脇に置き、妖夢はカウンターに腰掛けた。魔理沙や射命丸から少し離れた位置だ。慌てていたので、視界に入っていなかったのだろう。

此処まで慌ててきたようだ。乱れた前髪を整え、差し出された茶に一口つけ、そこで一息つく。ふう、と。

彼女はこの時、目的地まで辿り着けたことで、冥界で妖怪大戦争が勃発していることを完全に失念していた。

「大妖怪の妖気を含んだ装飾品が必要だったとはいえ、少々の消耗は禁じえないか」

彼の魔法は【創造する魔法】という規格外のものであるが、創造するものの希少性が高ければ高いほど、具現化するのに力を食う。

菓子や武器、家具といったようなありふれたものは、大した力を消費しないので、多品種大量生産が可能だ。しかし、通常の菓子とは一線を画す、より高次元のものとなると、そうはいなかない。先程も述べたように、希少であるほど、在り得ないものであるほど、比例して魔力の消費は増大する。

能力と魔法によって、“幻想のような美味い菓子”という概念を付加した、この世には在りえない存在を創造することが果たして、紫の靴下と釣り合うのかは甚だ疑問である。

やれやれ、と少しばかり後悔しながらも、

「メニューだ。 好きなものを選ぶといい」

カウンターの下から取り出した【裏メニュー】を取り出し、妖夢に手渡す。通常の白いメニュー表とは違い、真っ黒な表紙だ。先程の紫の靴下の話やら、黒いメニュー表が珍しいのか視線が集まる。

「なぁ、店主。 妖夢が見てるのは何で黒いんだ?」

興味深そうに、魔理沙が問う。自分達に配られたものと違う、妖夢のものが気になったのだろう。

「気にするな、私の趣味だ」

飄々とした笑みを持って答える雪人に、魔理沙同様に耳を傾けていた者は、何だそりゃ、と首を傾げる。

要領を得ない答えに不満を覚えた彼女は、問う相手を変えることにした。

「なぁ、妖夢。 何で、黒いのが渡されたんだ?」

「おや、珍しいところで会うものですね。 今日はどうされたんです?」

「喫茶店に来るような理由は決まってるだろう。それよりそれは何なんだ?」

妖夢は胸を張り、

「勝者の特権です」

「意味わかんないぜ」

そう言うが、魔理沙には伝わらなかった。余計に気になった彼女は、隣から覗き込むように眺めることにした。すると、通常のものとは違う商品名が列挙されている。そして、商品名の隣には法外な値段が書かれているのに、思わず目を見開いた。

あまりに無茶苦茶過ぎる値段だ。余程の金持ちでもない限り、そこにあるものは生涯口にする機会などないだろう。

「あやや…………これ、悪徳詐欺か何かですか? どこぞの妖怪兎もびっくりだわ」

魔理沙同様に、それを覗き込んだ射命丸が呟く。呟く声には、純粋な驚きが浮かんでいた。

「いくら白玉楼でも、これは厳しいわね」

「おいおいおい。 妙に勝ち誇った笑みを浮かべている妖夢に問うぜ」

射命丸と魔理沙の会話を聞いていた妖夢の口元には、確かに勝利の笑みが浮かんでいた。優越感にも似た笑みだ。

「話の流れからすると、どうやらお前は、ここに載っている商品を手に入れることが出来るようだが……さっきの靴下といい、どういうことなんだ?」

「簡単です、これに載っている商品が欲しいのなら、素直にお金を払うか、それに代わる対価を払えばいいのですよ」

つまり、と前置きし、

「私の場合は、“紫様の靴下”という危険極まりない対価を払うことによって、商品を手にする権利を得たのです」

周囲から感嘆の声が漏れる。主に里人のものだ。というのも、何と言っても八雲 紫から靴下を奪ってきたことに心打たれたのだろう。

幻想郷の人間からしれみれば、八雲 紫という存在は妖怪の大ボスのようなイメージだ。

里人が“普通の妖怪”に対して抱く恐怖心が、外の人間が“ホオジロザメ級”の存在に抱く恐怖だとしよう。すると、八雲 紫という存在に抱く恐怖心は……映画に出てくるような、凶悪な【エイリ○ン】相当だろう。

気の弱いものならば、相対するだけで気を失っても不思議ではない。色々と恐怖を煽る噂も、拍車をかける一因となっている。

曰く、男を囲っている。

曰く、幼い子ども(ショタ)にしか興味がない。

曰く、冬眠する際に、外の人間を貯蔵する。

曰く、美貌を保つために、若い娘のエキスを吸収している。

何が真実で、何が嘘なのかわからない程に似たような噂が数多く存在している。そんな中で、普通に付き合える人間の方がおかしいのだ。

ましてや敵対行為など、とんでもない。逆らった瞬間に食われる、と里人達は本気で信じていた。まるで、一種の都市伝説である。

そうであるが故に、妖夢が彼女の靴下を盗ってきたという言葉に皆、驚いたのだ。

「後で、紫に半殺しにされそうな伏線だな」

「嫌なこと言わないで下さいよ!」

幽々子に、裏メニューのことを話した時に、このような状況になるのは目に見えていたはずだ。だが、そうはいっても後に折檻されることになると思うと、妖夢は思わず頭を抱えてしまう。

「落ち込むのは結構だが、それで何にするか決めたのかね? 剣士のお嬢さん」

ニヤニヤとした笑みを伴い雪人は、落ち込む妖夢に問う。こうなることを見越して、紫の靴下を持ってこい、とでも言ったのかもしれない。

「はぁ…………では、店主。 通常メニューの方にある“銅鑼衛門も大好き!! 美味しい銅鑼焼き”を20個と、“悪魔ギレッタの愛した羊羹”を10棹と、“うにゅー大福”を20個ほど、それと、裏メニューにある“C.C.桜餅”を五個程、持ち帰りでお願いします」

やはりどこか可笑しい商品名を、次々とあげていく。周囲の人は、そんな彼女を見て思った。一体どれだけ食うんだ、と。

魔理沙と射命丸も、同じ疑問を抱いたのだろう。僅かに、畏怖の感情を浮かべ、問いかける。女なのにそんなに食べて大丈夫なのか、という意味を込めて。

「…………それ一人で食べるんですか?」

「…………いくら半人半霊のお前でも、太るぜ?」

「ち、違うわよ!! どう考えても、私一人で食べきれる量じゃないでしょう! 店主からも言ってやって下さいよッ」

実際、それは主の分と、自身の食べる分を合計した数だ。別に、妖夢が一人で食べるわけがない。それを一人で食べると思われた彼女は、助けを求めるように声を発した。

その言葉に、雪人は頷く。

「天狗君に、魔法使い君。 察してやりなさい、女の子も偶には自棄食いしたくるなる時もある。 主に、失恋とか、失恋とか、失恋とかで」

その言葉に、二人は妙に優しい表情、そして生暖かい瞳で、妖夢の肩を叩いた。頑張れよ、という激励の意味を込めて。

「…………何か上手く言葉に出来ない感情が胸の奥で燻っています。 具体的に、すっきりしないものがあるなら叩き斬れ、という感じのこれは何でしょうね」

「それが失恋というものですよ」

「だな」

「うむ」

射命丸と、その言葉に同意の意味で頷く魔理沙と雪人に、

「本当に刀の錆びにしようかな……」

妖夢は、冗談とは思えない顔で告げる。色の無い瞳を見て、流石に拙いと思った雪人は、

「まぁ兎に角だ、オーダーの品を受け取りたまえ」

妖夢の口にした依頼の品を次々と具現化する雪人に、

…………こいつ、変態だけど実際にやってること無茶苦茶にも限度があるだろ。

魔理沙は目を見開いた。というのも、アリス同様に魔法使いである彼女をもってしても“魔力を基にして何かを編む、具現化”するという規格外な真似が信じられなかったからである。五年に一度、百年に一度、千年に一度などというレヴェルの才能ではない。天才という言葉すら生ぬるい。それぞれの魔法特性はあるだろうが、同じ魔法使いといえども、アリスや魔理沙が、雪人と同じ行為は一生かかっても不可能だろう。

「しかし、サムライガール。 Sクラス相当の裏商品、“C.C.桜餅”を五つとは人使いが荒い」

「その程度で音を上げていては、白玉楼ではやっていけませんよ。 主に、幽々子様の脈絡が無く、突発的な行動を支える的な意味で」

「確か、白玉楼とは冥界だったね。 冥界か……綺麗で貧乳、それでいて程よく淫乱な女性はいるかい?」

「変態店主を血の池地獄に沈めてくれそうな人なら、何人か知っていますが。 地獄も含めて宜しいのなら、閻魔様とか」

雪人は、頬を引き攣らせる。誰にでも苦手な相手はいるものだ。彼もまた、閻魔様という存在が苦手であった。

苦い表情を浮かべた彼は、逃避することにした。そのまま何事もなかったかのように菓子作りの作業に没頭することへ。

やがて通常商品を全て創造し終えた彼は、

「おいおい……店主。 さっきのも無茶苦茶だったけど、それは幾ら何でも度を越してる」

それまでの通常商品とは違うものを創り出した。先程までのものとは纏う力、存在そのものの格が明らかに一線を画す。込められた魔力は膨大だ。その辺の雑魚妖精と比較しても、その内包する力は、“C.C.桜餅”が圧倒している。

また、“C.C.桜餅”からは他を圧倒する王気が滲んでいた。薄っすらとオーラを浮かべるそれは、どこの概念武装かと疑いたくなるほどだ。

「なん、ですって?」

この世にオーラを発する菓子があるだろうか。否、ないだろう。

あまりの存在感に魔法使いの魔理沙だけでなく、周囲の人間の、畏怖という視線を一身に集めながら“C.C.桜餅”は光臨していた。

「サムライガール君は、お持ち帰り希望だったね」

「え、ええ」

奇妙な視線を向けられるのを大して気にもせずに、雪人は商品を袋に詰めていく。数が数だけに、二袋に分けて丁寧に入れている。

やがて袋に詰め終えた雪人は、

「“C.C.桜餅”の代金は要らないが、それ以外の商品のは支払ってもらうが構わないかね?」

「心配しないで下さい。 手持ちはそれなりにありますから」

素早く書き終えた伝票を、商品と共にも手渡す。その際、伝票を受け取った妖夢の白い手を取り、ところで、と雪人は前置きし、

「今度、逢引など如何かね?」

「結構です。 それでは、失礼します」

逢引の誘いの言葉を口にするが、笑顔の妖夢に、二の句も告げる間もなく一刀両断された。雪人の連続敗北記録が、更に更新された瞬間だった。

…………どうして、こんな変態店主が、あんな魔法を使えるんだ?

世の中は理不尽だと、店内にいたほとんどの人間が同意した瞬間であった。呆気なく軟派に失敗した雪人は、会計のために、ルーミアと呼びかけると、

「会計の練習だが、いつもよりも多くて大変だろうけど、頑張ってくれ」

オーダーを受けたり、商品を運んだり、トテトテ、と行ったり来たりしていたルーミアは首を傾げ、上目遣いで彼に問う。期待に満ちた瞳だ。

「上手にできたら、ご褒美くれる?」

ご褒美とは、S級商品ことを指していることは直ぐにわかった。おそらく、味を占めたのだろう。妖夢が注文した“C.C.桜餅”が通常の商品とは一線を画す存在であると、先日身を持って体験していただけに。

純粋な瞳に、

「仕様がない、仕様がない。 いつも頑張ってくれているからね、ご褒美くらいなんてことないさ」

告げる言葉と共に、頭を一撫ですると、少女は「やったー」と両腕を広げて、入り口にある会計に小走りで駆けて行った。その顔は喜色満面だ。余程、嬉しかったに違いない。駆けて行ったルーミアを眺めている雪人に、向けられる声があった。それは抑えきれない好奇心、興味を含んだ声だ。

「なぁ、店主。 妖夢が持って帰ったあの菓子は何なんだ? めさくさ興味があるんだけど」

「大妖怪の靴下の対価としては十分過ぎますね。 最初、何かの概念武装かと思いましたよ。 いやぁ、本当に興味深い」

そこで二人は頷き、

「是非、食べてみたいぜ」「是が非でも食べてみたいものね」

まるで食物連鎖の頂点に君臨する存在でいて、美食には目がない美食家ハンターのような笑みを見せた。「是が非でも食わせてもらう」と語っている二対の瞳に、

「なになに……」

先程、ルーミアから受け取ったオーダーを目にする。そして、

「天狗の君が、“真精気ウナゲリン”と“東方超美人”だね。 魔法の使い君のは、“乾坤一擲アン☆パンチ”と、お勧めの飲み物ね……“メルヘンで未元物質”でいいか」

あっと言う間に創り出したオーダーを「私達にも食べさせろー」と騒ぐ二人の前に置く。我慢してそれでも食べてろ、とでも言うかのように。


     ∫ ∫ ∫


それから数時間居座られ、例の商品を要求され続けた雪人は、条件付けで商品を提供する約束を結んだ。

「魔法使いの君は、風見 幽香君の装飾品だったら何でもいい。 それを持ってきてくれたら、商品を提供しよう」

「げッ……よりにもよって幽香かよ。 ルナティックな難易度だぜ」

魔理沙は、そう微妙な表情で告げる。なにせ、相手はあの戦闘狂の幽香なのだ。一苦労なんてものではない。

だが、それでも彼女は「やってやろうじゃないか」と男らしい笑みを持って、雪人の言葉を了承してみせた。後に、雪人は彼女を、こう評価する。実に愉快な魔法使いだ、と。

一方、射命丸の方はというと……。

「天狗の君はそうだな、鬼の角でも――」

「本気で無理です」

あまりの前途多難さに、思わず即答していた。


     ∫ ∫ ∫


その後、妖夢が白玉楼に帰還すると、半壊した庭が真っ先に視界に入り、それを修復するのが自分の仕事だと思うと軽く膝を折った。

辺りを捜索すると同士討ちになったのであろう幽々子と紫が、ボロボロになった姿で、縁側で茶を啜っていた。紫が靴下を履いていないのを意図的に、見ないようにしたいどころか、妖夢はそのまま逃げ出したかったが……。

「妖夢ー。 ちゃんとお使いに行ってきてくれたかしら?」

“ぽややん”とした雰囲気を纏う幽々子に見つかってしまう。紫様は怒っているかなぁ、と主の横に座る彼女に視線をやると、

「妖夢。 私ね、実はさっき面白い話を耳にしたのよ。 何でも、どこぞの変態店主に唆された庭師の話なんだけど」

思わず天を仰ぐ。どうしようもない程、空は澄んで青色だった。死ぬにはいい日だ。

「彼の能力と魔法をふんだんに使った幻想の菓子ですものね。 とっても美味しいものね。 それを、主に食べさせたいというのも頷けるわ」

ただ、と紫は綺麗な笑みを見せ、

「それって、靴下のことといい、私も食べる権利があるはずよね?」

「は、はい」

先生に怒られる子どものように萎縮してしまう妖夢に、紫はとても楽しそうに告げる。

「私ね…………普段は、あまり食べないんだけど、さっきまで幽々子と弾幕ごっこをしていたから、物凄くお腹が空いちゃったの。 だから、ついつい妖夢の楽しみにしていた御菓子を残さず食べてしまうかもしれないけど、よろしくて?」

思わず仰け反りそうになるのを自制し、

「か、構いませんよ」

幽々子の分とは別に購入していた自身の、確実に残らない菓子を思うと、どうしようもない澄んだ晴れの日なのに、視界が滲んだ。









 

――――――――――――――――――――――――――――――


“妖夢の憂鬱”編 END


前七、八を修正のためカットしました。また後に、修正したverを載せてみようと思います。


前を表示する / 次を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.023236036300659