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No.11085の一覧
[0] 迷宮恋姫【完結】 (真・恋姫無双 二次創作)[えいぼん](2010/05/31 20:54)
[1] 第一話[えいぼん](2009/09/21 00:53)
[2] 第二話[えいぼん](2009/09/21 01:05)
[3] 第三話[えいぼん](2010/01/24 20:05)
[4] 第四話[えいぼん](2009/09/26 05:36)
[5] 第五話[えいぼん](2009/08/25 00:08)
[6] 第六話[えいぼん](2010/02/20 07:16)
[7] 第七話[えいぼん](2009/09/15 21:39)
[8] 第八話[えいぼん](2009/09/15 21:40)
[9] 第九話[えいぼん](2009/08/25 00:05)
[10] 第十話[えいぼん](2010/02/20 07:16)
[11] 第十一話[えいぼん](2009/08/27 23:37)
[12] 第十二話[えいぼん](2009/08/26 21:34)
[13] 第十三話[えいぼん](2009/09/21 08:56)
[14] 第十四話[えいぼん](2009/08/29 02:46)
[15] 第十五話[えいぼん](2009/09/21 03:04)
[16] 第十六話[えいぼん](2009/09/19 15:52)
[17] 第十七話[えいぼん](2009/09/04 23:58)
[18] 第十八話[えいぼん](2010/02/20 07:17)
[19] 第十九話[えいぼん](2009/09/21 03:40)
[20] 第二十話[えいぼん](2009/09/21 03:47)
[21] 第二十一話[えいぼん](2009/09/19 15:52)
[22] 第二十二話[えいぼん](2010/05/20 18:53)
[23] 第二十三話[えいぼん](2009/09/07 22:44)
[24] 第二十四話[えいぼん](2009/09/20 22:40)
[25] 第二十五話[えいぼん](2009/09/20 22:40)
[26] 第二十六話[えいぼん](2009/09/20 22:40)
[27] 第二十七話[えいぼん](2009/10/03 08:55)
[28] 第二十八話[えいぼん](2009/09/20 22:41)
[29] 第二十九話[えいぼん](2009/09/20 22:41)
[30] 第三十話[えいぼん](2009/09/20 22:41)
[31] 第三十一話[えいぼん](2009/09/20 22:41)
[32] 第三十二話[えいぼん](2009/09/20 22:41)
[33] 第三十三話[えいぼん](2009/09/20 22:41)
[34] 第三十四話[えいぼん](2009/09/20 22:42)
[35] 第三十五話[えいぼん](2009/09/20 22:42)
[36] 第三十六話[えいぼん](2009/09/20 22:42)
[37] 第三十七話[えいぼん](2009/09/21 00:42)
[38] 第三十八話[えいぼん](2009/09/20 23:50)
[39] 第三十九話[えいぼん](2009/09/22 15:51)
[40] 第四十話[えいぼん](2009/09/22 18:12)
[41] 第四十一話[えいぼん](2010/05/14 19:23)
[42] 第四十二話[えいぼん](2009/09/27 16:52)
[43] 第四十三話[えいぼん](2010/02/20 14:39)
[44] 第四十四話[えいぼん](2009/09/27 13:39)
[45] 第四十五話[えいぼん](2010/05/14 19:22)
[46] 第四十六話[えいぼん](2009/09/27 13:39)
[47] 第四十七話[えいぼん](2010/02/20 14:57)
[48] 第四十八話[えいぼん](2010/05/14 19:06)
[49] 第四十九話[えいぼん](2009/09/30 21:32)
[50] 第五十話[えいぼん](2009/10/02 00:33)
[51] 第五十一話[えいぼん](2009/10/03 01:57)
[52] 第五十二話[えいぼん](2010/03/27 14:36)
[53] 中書き[えいぼん](2009/10/03 16:02)
[54] 閑話・天の章[えいぼん](2010/01/10 19:35)
[55] 閑話・地の章[えいぼん](2010/01/09 11:12)
[56] 閑話・人の章[えいぼん](2010/01/10 10:59)
[57] 第五十三話[えいぼん](2010/02/01 19:13)
[58] 第五十四話[えいぼん](2010/04/14 23:22)
[59] 第五十五話[えいぼん](2010/01/18 07:26)
[60] 第五十六話[えいぼん](2010/01/20 17:42)
[61] 第五十七話[えいぼん](2010/01/31 22:16)
[62] 第五十八話[えいぼん](2010/01/29 23:27)
[63] 第五十九話[えいぼん](2010/02/03 05:56)
[64] 第六十話[えいぼん](2010/02/20 07:29)
[65] 第六十一話[えいぼん](2010/02/20 07:30)
[66] 第六十二話[えいぼん](2010/04/13 21:38)
[67] 第六十三話[えいぼん](2010/02/20 07:32)
[68] 第六十四話[えいぼん](2010/04/13 21:39)
[69] 第六十五話[えいぼん](2010/04/13 21:39)
[70] 第六十六話[えいぼん](2010/04/13 21:39)
[71] 第六十七話[えいぼん](2010/04/13 21:39)
[72] 第六十八話[えいぼん](2010/03/27 14:39)
[73] 第六十九話(書き直し)[えいぼん](2010/04/13 21:40)
[74] ボツ話[えいぼん](2010/03/25 07:16)
[75] 第七十話[えいぼん](2010/04/13 21:40)
[76] 第七十一話[えいぼん](2010/04/13 21:40)
[77] 第七十二話[えいぼん](2010/04/13 21:40)
[78] 第七十三話[えいぼん](2010/04/13 21:40)
[79] 第七十四話[えいぼん](2010/04/13 21:41)
[80] 第七十五話[えいぼん](2010/04/13 21:41)
[81] 第七十六話[えいぼん](2010/04/13 21:41)
[82] 第七十七話[えいぼん](2010/04/13 21:41)
[83] 第七十八話[えいぼん](2010/04/13 21:42)
[84] 第七十九話[えいぼん](2010/04/13 21:42)
[85] 第八十話[えいぼん](2010/04/13 21:42)
[86] 第八十一話[えいぼん](2010/04/13 21:42)
[87] 中書き2(改訂)[えいぼん](2010/04/01 20:31)
[88] 第八十二話[えいぼん](2010/04/13 21:42)
[89] 第八十三話[えいぼん](2010/04/13 21:42)
[90] 第八十四話[えいぼん](2010/04/13 21:43)
[91] 第八十五話[えいぼん](2010/04/17 03:04)
[92] 第八十六話[えいぼん](2010/04/29 01:36)
[93] 第八十七話[えいぼん](2010/04/22 00:13)
[94] 第八十八話[えいぼん](2010/04/25 18:36)
[95] 第八十九話[えいぼん](2010/04/30 17:45)
[96] 第九十話[えいぼん](2010/04/30 17:51)
[97] 第九十一話[えいぼん](2010/05/05 13:47)
[98] 第九十二話[えいぼん](2010/05/07 07:39)
[99] 第九十三話[えいぼん](2010/05/30 13:16)
[100] 第九十四話[えいぼん](2010/05/16 08:27)
[101] 第九十五話[えいぼん](2010/05/16 08:31)
[102] 第九十六話[えいぼん](2010/05/18 07:11)
[103] 第九十七話[えいぼん](2010/05/22 07:52)
[104] 第九十八話[えいぼん](2010/05/31 22:26)
[105] 第九十九話[えいぼん](2010/05/30 13:59)
[106] 最終話[えいぼん](2010/05/31 22:24)
[107] 後書き[えいぼん](2010/05/31 20:56)
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[11085] 第八十七話
Name: えいぼん◆2edcbc16 ID:fd94314f 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/04/22 00:13
凪達が去ったため、新たなレスキュー隊員を補充しなければならない一刀。
だが残念ながら、斗詩や猪々子に凪達の代わりを務めることは出来ない。
どんな高級装備に身を包もうとも、彼女達では絶対的にLVが足りないからだ。

以前、華琳クランから『装備強化クエスト』の依頼を受けた時。
一刀自身の武器も大幅に強化された結果、気づいたことがあった。
それは、ステータス表示上の攻撃力や防御力だけが戦闘能力ではないことである。

確かに武器強化によって、戦闘が随分と楽になった。
一方でLVがアップした時も、武器強化に勝るとも劣らない戦闘力向上の効果があったのだ。
単純にステータスだけを比較すると、前者の方が圧倒的に加算されている。
しかし結果的に両者の差は、体感だとそれほどの開きを感じない。

この事実は、LV自体が戦闘力補正のパラメータであるということを示している。
つまり低LV者が最強装備で迷宮攻略をするよりも、高LV者が初期装備で迷宮攻略をする方が有利であるということだ。
尤も経験値テーブルの仕組みを考えると、前者はすぐにLVアップしてしまうため、実際に比べてみることは出来ないが。

システム上こういったLV依存方式のRPGは珍しくないが、今回の場合はそれがネックとなっていた。
かといって斗詩や猪々子を一刀だけでPLすることも出来ないし、やはりここは外部の力を借りるしか方法はなさそうだ。

一刀が頼った先、それはもちろん桃香クランである。
もともと一連の活動は桃香達との共同作戦なのだし、いくら策には直接的な関係のないレスキュー隊とはいえ、人のいい彼女達であれば否とは言うまい。
雪蓮達との同盟で忙しそうなのは誤算であったが、それでも桃香クランの人数の多さを考えれば、数人の融通くらいなんとでもなるというのが一刀の計算だった。

「じゃあ私がご主人様のお手伝いをするね。雪蓮さん達との探索だったら、愛紗ちゃんと朱里ちゃんがいれば……」
「駄目に決まってるでしょう、桃香様!」

乗り気だった桃香の色良い返事は、しかし愛紗よって即座に否定されてしまった。
雪蓮達との話は、紛いなりにも洛陽を代表する最有力クラン同士の合同探索なのである。
一刀の依頼とは規模が違い過ぎるし、愛紗の判断も当然であった。

もし桃香がいなければ、向こうに一方的に主導権を握られてしまうかもしれない。
また明確な決定権を持つ人間がいないと、クラン間で想定外の問題が起こった場合に困ってしまう。
桃香の言う通り、愛紗と朱里がいれば多少の調整はきくであろう。
だがあくまで他クランとのやり取りである以上、いつものようにナアナアで済ませるわけにはいかないのだ。

「でもご主人様の方だって、人の命を守る大切なことだもん! 私も協力したいの、お願い、愛紗ちゃん」
「そのお志は立派ですが、桃香様には果たさねばならない役割があるのです」
「無理に桃香じゃなくてもさ、他にこっちに協力してくれそうな子って、誰かいないのか?」
「ここにいるぞー! ……って、あれ?」

一刀の問い掛けにすかさず名乗りを上げたのは、興味なさげに話を聞いていたはずの蒲公英であった。
彼女の好奇心は、合同探索で未知の領域へと進むことにのみ向いていた。
にも関わらず手を挙げてしまったのは、おそらく条件反射のようなものだったのであろう。

「凄く助かるよ、ありがとう蒲公英」
「……まぁいっか。ご主人様のシーカースキルを盗むチャンスだもんね」
「桃香、最低でも後1人は欲しいんだけど……」
「うーん、他にご主人様に協力してくれる人、いないかな?」

そう桃香が尋ねても、各自は顔を見合わせるばかりで、積極的に応じるものは残念ながら1人もいなかった。
さもあろう、雪蓮達との合同探索がお互いの刺激となって、現在の彼女達は成長期とも言える状態なのである。
プレイヤースキル的な意味での上達、つまり戦闘技術の伸びに手ごたえを感じている今、それと比べて既に探索済みのBF16~20までを再び探索することには誰も魅力を感じなかったのだ。

「みんな気が進まないみたいだし、やっぱり私が行くよ。合同探索の方は、うちはサブリーダーの愛紗ちゃんに全権を委任しますって雪蓮さんに伝えれば、なんとかなると思うし」
「待って下さい! 桃香様が行かれるくらいなら、私が立候補します!」

そう言い放ったのは、焔耶であった。
いつかの探索時には焔耶から敵意を向けられていただけに、一刀は彼女の申し出を意外に感じた。
一刀と同じことを思ったのであろう、焔耶に向かって念押しをする桃香。

「焔耶ちゃん、本当にいいの?」
「お任せ下さい、桃香様!」
「げー、アンタも来るの? 筋肉女が一緒だと、暑苦しいなぁ」
「うるさいぞ、小悪魔娘! 桃香様のためなんだから、仕方ないだろ!」

ところが、一刀は知らなかったが蒲公英と焔耶は犬猿の仲なのである。
さすがにこの2人だけで一刀の元には行かせられないと、年長者らしく桔梗が彼女達のまとめ役を買って出てくれた。

こうして、新たなレスキュー隊が結成されたのであった。



絶体絶命。
一刀の目に映った光景を一言で表すならば、その表現が最も相応しい。

その場にいたのは、僅か数人。
団の首輪を身に付けていることから、彼等が団員であることは間違いない。
恐らく一方通行の迷路で小隊からはぐれてしまったのであろう。

そしてどういうわけか、全員が倒れ伏していたのだ。
わずかに痙攣して呻き声を上げているので、辛うじて息はあるようだった。

「あ、みぃつけたっと。すぅー、ここにあるぞーっ!」

蒲公英の発見したもの、それは痺れ罠である。
団員達は、多分これを踏んでしまったのだろう。

「蒲公英、迷宮内なんだぞ。あんまり大声出すなよ」
「だってこれをやらないと、加護スキルを使った気になれないんだもん」

そう、蒲公英の加護スキルは、周辺にあるトラップを発見する効果を持っていたのだ。
なんというか、実に地味である。
一刀など事前にその加護スキルの説明を聞いていたにも関わらず、その名称をすっかり忘れてしまっていたくらいだ。
蒲公英が大声を上げて自己主張したがるのも、無理はない。

しかし気持ちは分かるが、それは迷宮内では絶対にしてはならない行為であった。
なぜなら、蒲公英の声に惹かれてモンスターが寄って来てしまったからだ。

瞬く間に集まってきたのは、ガーゴイルの一団である。
このフロアでは魔術こそ使わないものの、頭上からの攻撃というのはLVの高い一刀達にとっても十分に脅威だと言える。
宙を舞う3匹のガーゴイルが、倒れ伏す団員達に襲い掛かろうと急降下してきた。

「おっと、そうはさせぬ!」

桔梗の声と共に火薬の弾ける音が鳴り響き、彼女の武器『豪天砲』から発射された鉄の杭がガーゴイルに炸裂する。
更に2発が撃ち出され、強制的に団員の傍から排除されるガーゴイル達。
どうやら当たる瞬間に拡散してしまう性質を持っているらしく、おかげで敵全体を上空へと押し戻すことに成功したのだが、その反面どうも威力に乏しいようだ。

「あんまり効いてないな……」
「ふっ、まぁ見ていて下され。ここからじゃ」

旋回しつつこちらの隙を窺うガーゴイルの群れに、桔梗が追撃ちを仕掛けた。
貫通力のない攻撃など、いくら撃っても無駄なんじゃないかと思う一刀。
しかしそれは、一刀の早合点であった。
なんと桔梗の放った鉄杭は、1匹目のどてっ腹を食い破って2匹目の下半身を砕き、更に3匹目の翼をも貫いたのだ。

まったく同じ武器から発射された攻撃なのに、どうしてこうも違う特性を持っているのか。
その答えは、桔梗の加護スキル【老公】にある。
桔梗は、自身の攻撃を『拡散』『貫通』『連射』と撃ち分けの出来る力を与えられていたのだ。

神話では燻し銀の活躍を伝えられる、いかにも厳顔らしい加護スキルだと言えよう。
なぜならこの加護スキルを活かすには、一瞬の戦況判断や属性ごとの照準調整などが必要不可欠であり、その名称の持つ響きと同じ老巧者でなければ難しいからである。
射手として熟練の腕を持つ桔梗に相応しい、匠の技巧を必要とするスキルなのだ。

一点突破の貫通属性であるにも関わらず、3匹共にダメージを与えられる軌道を読み切った桔梗。
その攻撃により地に落ちたガーゴイル達へと駆け寄り、自慢の大金棒を振り下ろす焔耶。

手負いのガーゴイル達に、その打撃を避ける術はないかのように思われた。
しかし翼を傷つけられたガーゴイルだけは、比較的ダメージが軽かったのであろう。
他の2匹とは違って焔耶の強攻撃をふわりと回避したガーゴイルが、無防備となった彼女を引き裂かんと襲い掛かった。

「スコーピオンニードル!」

だがそんな真似など、もちろん一刀が許すはずもない。
一刀の必殺技が、魔法生物であるガーゴイルの核を見事に貫いた。

ボロボロになって崩れるガーゴイルを見ながら、うっかり習慣になってしまった必殺技名を叫ぶ悪癖をどうにかしようと考える一刀なのであった。



ガーゴイルとの戦闘から僅かばかり遅れて一個小隊がはぐれた団員達を探しに来たことは、一刀達にとっては幸いであった。
団員達を地上まで送ってやらなくて済んだからだ。

今の一刀達にとって、その手間は出来るだけ避けたい所であった。
実はレスキュー以外にも、一刀達は比較的重要な目的を持っていたのだ。

「ご主人様、こっちこっち! ほら、あれだよ。すぅー、ここにムグゥ」

先程の戦闘に懲りず、またしても叫ぼうとした蒲公英の口を押さえた一刀。
彼女が発見したものは、なんと宝箱であった。
鍵を使わずに開けようとした場合、宝箱は罠が発動する仕組みになっている。
つまり蒲公英の加護スキルは、宝箱の発見にも役立つのだ。

「今度は焔耶の番だな。この鍵を使ってくれ」
「……ふんっ」

蒲公英がいれば仕掛けてある罠の種類まで判別出来るため、鍵なしで宝箱に挑戦しても高い確率で無事にアイテムをゲットすることが可能になる。
しかし、現状ではそれすらも無用なリスクと言えよう。
なぜなら一刀は、団員達から買い取った『銀の鍵』を余る程に所持していたからだ。

宝箱は、開けた者に相応しいアイテムが出やすいと言われている。
少なくとも今までの経験上、サイズ的にフィットする装備品が出ることは間違いない。
そのため一刀は、レスキュー隊員という貧乏くじを引かせてしまった焔耶達に宝箱を開けさせることで、便宜を図ることにしたのだ。

といっても鍵自体が私物ではないため、ケチくさい条件を付ける必要はあったが。
その条件とは、欲しいアイテムが出た場合は、通常の報酬と引き換えにそれを譲るという取り決めである。

尤もBF16~20の宝箱に高LV者の焔耶達が欲しがるアイテムなど、頻繁にポップするはずもない。
新たなレスキュー隊を結成してから今までのトレジャーハントにおける収獲は、蒲公英が今身に付けている可愛らしい小手くらいだ。
もちろん不要なアイテムは換金して団の財政に回せるため、そのことは大きな問題ではなかった。

「ちっ、武器か。私には『鈍砕骨』があるから、武器は不要だというのに……」
「運だよ、運。アンタ、日頃の行いでも悪いんじゃないの?」
「なんだと! 宝箱の中身も判別出来ない、肝心な所で役立たずな加護スキルの癖に!」
「蒲公英の加護スキルが役立たずなら、アンタのなんか害悪じゃない! 【反骨の相】だか知らないけど、味方攻撃時だけ威力が上昇とか、どんな加護よ!」
「ふん、お前みたいなブンブンと五月蠅い奴から桃香様をお守りすることが出来るじゃないか。なんだったら、今ここで試してもいいんだぞ!」
「言ったな! 今日こそアンタの生意気な態度を叩き直してやるんだから!」

ゴスッ!
と、2人の頭に落ちたのは、桔梗の鉄拳である。

(桔梗がいてくれて、本当に助かった……)

頭を抱えて悶絶する2人を叱り始める桔梗に感謝の念を送り、モンスターが乱入して彼女達の邪魔にならないよう周囲を警戒する一刀。
宝箱が沸いていたのは小部屋の中であったため、一刀達はそのまま小休止をとることにした。
しばらくして2人への説教が一段落ついた桔梗は、ところで、と一刀に話を振った。

「先程お館様が叫んでいた『スコーピオンニードル』とは、どのような技なのですかな?」
「あれはモンスターを一撃で倒せる技なんだ。失敗する可能性もあるんだけどさ。って、突然どうしたんだ?」
「いえいえ、ただ素晴らしい技術だと感心をしておったのですよ」
「ありがとう。改めて言われると、なんか照れるな。で、そういう桔梗さん達のは、どんな技なんだ?」
「残念ながら修練が足りず、未だ会得しておらぬのです。ですから蒲公英や焔耶も含めて、この機会にお館様からコツを学びたいと思っておりましての」

桃香のクランで必殺技が使えるのは、愛紗や星などの一握りである。
自分が役に立てるのであればと、一刀は言葉を尽くして武器スキルの感覚を説明した。

「えー、発想って言われても、難しいよぉ」
「というか、蒲公英の武器は槍だろ? それなら星の技が使えるんじゃないか? 翠だって似たような技を使ってたじゃないか」
「お姉様のなら何回か真似してみたことはあるんだけど、上手く行かなかったの」
「いや、季衣達もそうだったけど、多分練習じゃ無理だぞ。ぶっつけ本番で試してみな」

武器スキルの特性から考えても、おそらく槍であれば同種の技が使えるはずである。
そのため一刀は、蒲公英の必殺技については特に心配はしていなかった。

「参考になるか分からないけど、俺がボウガンを装備してた時は『ホーミングブラスト』って技を使っててさ。特徴は、敵を追尾して100%命中することなんだけど」
「ほほぉ。では儂も、次はそれを意識して撃ってみましょうかの」

桔梗に対しても、かつて似たような武器を使用していたので、それなりの助言が出来た一刀。
しかし焔耶にだけは、どうにもアドバイスのしようが無かった。

「同じ鈍器でも、季衣達の武器とは違い過ぎるしなぁ。『スイングアタック』も、焔耶の金棒じゃ振り回す鎖が付いてないし……」
「グズグズしてないで、私の分もさっさとアイデアを出せ!」
「うーん、そう言われてもなぁ。って、焔耶も考えろよ! なんで俺ばっかり悩んでんだ!」
「ずるいぞ! 桔梗様や小悪魔娘ばかり贔屓する気か!」

興奮して言いたい放題の焔耶に対し、ツッコミこそ入れるが一刀は決して怒らない。
上に立つ者が感情的になることは、迷宮探索では命取りの行為であるからだ。

(なんか焔耶が興奮するにつれ、胸のポッチも目立つようになってきたような……)

と、己の幸せ回路をフル活用して、自身の感情を巧みにコントロールする一刀。
これが最近身についてきた、彼のリーダーとしての処世術なのであろう。
ところが2人の会話を聞いていた蒲公英が、わざわざいらぬ波風を立てに来てしまう。

「へへぇんだ。脳筋女に想像力なんて、あるわけないもんねー」
「ふん、私だって少し頭を使えば……。そうだ、技の名前は桃香様にあやかって、『愛の桃香様スペシャルアタック』にしよう!」
「……ご主人様、考えさせるだけ無駄だって。こんな奴ほっといて、早く蒲公英の技を試しに行こうよ」
「なんだと! それならまずはお前に『ラブラブ桃香様デンジャラスアタック』を喰らわせてやる!」
「さっきと違うじゃん! しょうがないから、蒲公英の『影閃』でアンタの馬鹿を治してあげるよ!」

メゴスッ!



夕方頃に探索を切り上げた一刀は、宿に戻って頭を悩ませていた。
テーマはもちろん蒲公英と焔耶の不仲についてである。
このままでは一刀の精神衛生上もよくないし、なによりも仲違いしたままで攻略出来るほど迷宮探索は甘い物ではないのだ。
蒲公英と焔耶の険悪な関係が彼女達自身の命取りになる前に、そして桃香達の身をも巻き込む前に、これは早急に解決せねばならない問題だった。

彼女達の会話だけを聞いていると、いつも蒲公英から絡んでいるように見える。
しかし一刀は、桔梗こそ立てるものの自分や蒲公英の存在を無視しようとする焔耶の態度にこそ問題があると思っていた。
正直な話、蒲公英のいらつく気持ちが一刀には手に取るように分かっていたのだ。

仮にも自分から立候補したはずのレスキュー隊なのに、嫌々やっているという態度を取り繕う様子も見せない焔耶。
しかも戦闘中に連携を図ろうとする動きだって、彼女には皆無なのである。

今日のガーゴイル戦の時みたいに、たまたま焔耶の行動が状況にマッチしているならよいのだが、そうではない場面だって多々あった。
そんな彼女のフォローをやらされるのは毎回一刀か蒲公英であるのに、焔耶は感謝の言葉どころかこちらを一瞥すらしないのである。
せいぜい嫌みの1つ2つを言うくらいで焔耶のフォロー自体は決して放棄しない蒲公英を、むしろ一刀は褒めてやりたいくらいだった。

それにしても、と一刀は思う。
ひょっとして焔耶は、自分がフォローされていることを理解していないのではないのか、と。

考えれば考えるほど、それが的を得た答えのような気がしてきた一刀。
どうも焔耶は目先のことに捕らわれがちなタイプのように見えるし、思い込んだら融通のきかない性格のようでもある。
実際に今日行った戦闘でも、結局は焔耶だけが必殺技を習得することが出来なかった。
ノーヒントであったことを差し引いても、手掛かりさえ掴めなかったことを思えば、その事実は焔耶の頭の固さを証明していると言ってもよいだろう。

(脳味噌を柔らかく、か……)

自身の経験を振り返ると、一刀の態度に余裕が出来たのは祭との情事が切っ掛けであった。
思春期に少年から大人に変わるが如く、脱童貞によって生まれ変わった一刀。
その経験を、焔耶にも積ませてみてはどうだろうか?

なにやら不穏なことを考え出す一刀を止められる者は、残念ながら誰もいない。
とはいえ、さすがのエロゲ脳でも無理やりなのが許されるのはゲームの中だけという常識は辛うじて持っていた一刀。
それに焔耶は隠しているつもりでも、彼女が桃香を大好きなのは明らかなのだ。
焔耶の気持ちを踏みにじるような真似など、一刀に出来るはずもない。

(重要なのは、焔耶が桃香のどこに魅力を感じているかということなんだ……)

迷宮探索中にも自己主張の激しい焔耶のポッチをじっくりと観察し続けてきた一刀には、その答えがすぐにピンときた。
自分自身ですらターゲットとするような極度のおっぱいハンターであろう焔耶の気持ちを考えると、豊かな乳を持たない一刀が手を出すのは如何にもまずい。
ならば相手が女の子だったら、焔耶も文句はなかろう。
恋愛に関してはどこか故障している一刀の頭脳が、あっさりと短絡的な解答を弾き出したのであった。

この問題を解決するのは一日でも早い方がよいだろうと、さっそく桃香経由で焔耶を呼び出してもらう一刀。
3人で向かった先は、一刀が愛用している風俗店であった。

「それじゃ焔耶は2Pさんで。俺は今日はケロちゃんかな。桃香はどうする? 俺の奢りだから、遠慮しなくていいぞ」
「わ、私はまだ、こういう所は早いから。ご主人様と焔耶ちゃんで、楽しんで来てね」
「え? え?」
「はーい、2名様ご案内でーす! ゆっくりしていってね!」

こうしてミラクルフルーツライスシャワーの洗礼により己の殻を破った焔耶は、それをヒントに新たな必殺技を編み出したのであった。



**********

NAME:一刀【加護神:呂尚】
LV:25
HP:454/399(+55)
MP:30/0(+30)
WG:30/100
EXP:143/8000
称号:炎の妖精

STR:38(+11)
DEX:53(+22)
VIT:28(+3)
AGI:41(+12)
INT:27(+1)
MND:20(+1)
CHR:53(+18)

武器:新・打神鞭、眉目飛刀
防具:スパルタンバックラー、勾玉の額当て、大極道衣・改、ハイパワーグラブ、仙人下衣、六花布靴・改
アクセサリー:仁徳のペンダント、浄化の腰帯、杏黄のマント、回避の腕輪、グレイズの指輪、奇石のピアス、崑崙のピアス

近接攻撃力:294(+39)
近接命中率:118(+14)
遠隔攻撃力:160(+15)
遠隔命中率:106(+18)
物理防御力:194
物理回避力:122(+24)

【武器スキル】
スコーピオンニードル:敵のダメージに比例した確率で、敵を死に至らしめる。
カラミティバインド:敵全体を、一定時間だけ行動不能にする。

【魔術スキル】
覆水難収:相手の回復を一定時間だけ阻害する。<消費MP10>

【加護スキル】
魚釣り:魚が釣れる。
魚群探知:魚の居場所がわかる。
封神:HPが1割以下になった相手の加護神を封じる。

所持金:18貫


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