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No.11085の一覧
[0] 迷宮恋姫【完結】 (真・恋姫無双 二次創作)[えいぼん](2010/05/31 20:54)
[1] 第一話[えいぼん](2009/09/21 00:53)
[2] 第二話[えいぼん](2009/09/21 01:05)
[3] 第三話[えいぼん](2010/01/24 20:05)
[4] 第四話[えいぼん](2009/09/26 05:36)
[5] 第五話[えいぼん](2009/08/25 00:08)
[6] 第六話[えいぼん](2010/02/20 07:16)
[7] 第七話[えいぼん](2009/09/15 21:39)
[8] 第八話[えいぼん](2009/09/15 21:40)
[9] 第九話[えいぼん](2009/08/25 00:05)
[10] 第十話[えいぼん](2010/02/20 07:16)
[11] 第十一話[えいぼん](2009/08/27 23:37)
[12] 第十二話[えいぼん](2009/08/26 21:34)
[13] 第十三話[えいぼん](2009/09/21 08:56)
[14] 第十四話[えいぼん](2009/08/29 02:46)
[15] 第十五話[えいぼん](2009/09/21 03:04)
[16] 第十六話[えいぼん](2009/09/19 15:52)
[17] 第十七話[えいぼん](2009/09/04 23:58)
[18] 第十八話[えいぼん](2010/02/20 07:17)
[19] 第十九話[えいぼん](2009/09/21 03:40)
[20] 第二十話[えいぼん](2009/09/21 03:47)
[21] 第二十一話[えいぼん](2009/09/19 15:52)
[22] 第二十二話[えいぼん](2010/05/20 18:53)
[23] 第二十三話[えいぼん](2009/09/07 22:44)
[24] 第二十四話[えいぼん](2009/09/20 22:40)
[25] 第二十五話[えいぼん](2009/09/20 22:40)
[26] 第二十六話[えいぼん](2009/09/20 22:40)
[27] 第二十七話[えいぼん](2009/10/03 08:55)
[28] 第二十八話[えいぼん](2009/09/20 22:41)
[29] 第二十九話[えいぼん](2009/09/20 22:41)
[30] 第三十話[えいぼん](2009/09/20 22:41)
[31] 第三十一話[えいぼん](2009/09/20 22:41)
[32] 第三十二話[えいぼん](2009/09/20 22:41)
[33] 第三十三話[えいぼん](2009/09/20 22:41)
[34] 第三十四話[えいぼん](2009/09/20 22:42)
[35] 第三十五話[えいぼん](2009/09/20 22:42)
[36] 第三十六話[えいぼん](2009/09/20 22:42)
[37] 第三十七話[えいぼん](2009/09/21 00:42)
[38] 第三十八話[えいぼん](2009/09/20 23:50)
[39] 第三十九話[えいぼん](2009/09/22 15:51)
[40] 第四十話[えいぼん](2009/09/22 18:12)
[41] 第四十一話[えいぼん](2010/05/14 19:23)
[42] 第四十二話[えいぼん](2009/09/27 16:52)
[43] 第四十三話[えいぼん](2010/02/20 14:39)
[44] 第四十四話[えいぼん](2009/09/27 13:39)
[45] 第四十五話[えいぼん](2010/05/14 19:22)
[46] 第四十六話[えいぼん](2009/09/27 13:39)
[47] 第四十七話[えいぼん](2010/02/20 14:57)
[48] 第四十八話[えいぼん](2010/05/14 19:06)
[49] 第四十九話[えいぼん](2009/09/30 21:32)
[50] 第五十話[えいぼん](2009/10/02 00:33)
[51] 第五十一話[えいぼん](2009/10/03 01:57)
[52] 第五十二話[えいぼん](2010/03/27 14:36)
[53] 中書き[えいぼん](2009/10/03 16:02)
[54] 閑話・天の章[えいぼん](2010/01/10 19:35)
[55] 閑話・地の章[えいぼん](2010/01/09 11:12)
[56] 閑話・人の章[えいぼん](2010/01/10 10:59)
[57] 第五十三話[えいぼん](2010/02/01 19:13)
[58] 第五十四話[えいぼん](2010/04/14 23:22)
[59] 第五十五話[えいぼん](2010/01/18 07:26)
[60] 第五十六話[えいぼん](2010/01/20 17:42)
[61] 第五十七話[えいぼん](2010/01/31 22:16)
[62] 第五十八話[えいぼん](2010/01/29 23:27)
[63] 第五十九話[えいぼん](2010/02/03 05:56)
[64] 第六十話[えいぼん](2010/02/20 07:29)
[65] 第六十一話[えいぼん](2010/02/20 07:30)
[66] 第六十二話[えいぼん](2010/04/13 21:38)
[67] 第六十三話[えいぼん](2010/02/20 07:32)
[68] 第六十四話[えいぼん](2010/04/13 21:39)
[69] 第六十五話[えいぼん](2010/04/13 21:39)
[70] 第六十六話[えいぼん](2010/04/13 21:39)
[71] 第六十七話[えいぼん](2010/04/13 21:39)
[72] 第六十八話[えいぼん](2010/03/27 14:39)
[73] 第六十九話(書き直し)[えいぼん](2010/04/13 21:40)
[74] ボツ話[えいぼん](2010/03/25 07:16)
[75] 第七十話[えいぼん](2010/04/13 21:40)
[76] 第七十一話[えいぼん](2010/04/13 21:40)
[77] 第七十二話[えいぼん](2010/04/13 21:40)
[78] 第七十三話[えいぼん](2010/04/13 21:40)
[79] 第七十四話[えいぼん](2010/04/13 21:41)
[80] 第七十五話[えいぼん](2010/04/13 21:41)
[81] 第七十六話[えいぼん](2010/04/13 21:41)
[82] 第七十七話[えいぼん](2010/04/13 21:41)
[83] 第七十八話[えいぼん](2010/04/13 21:42)
[84] 第七十九話[えいぼん](2010/04/13 21:42)
[85] 第八十話[えいぼん](2010/04/13 21:42)
[86] 第八十一話[えいぼん](2010/04/13 21:42)
[87] 中書き2(改訂)[えいぼん](2010/04/01 20:31)
[88] 第八十二話[えいぼん](2010/04/13 21:42)
[89] 第八十三話[えいぼん](2010/04/13 21:42)
[90] 第八十四話[えいぼん](2010/04/13 21:43)
[91] 第八十五話[えいぼん](2010/04/17 03:04)
[92] 第八十六話[えいぼん](2010/04/29 01:36)
[93] 第八十七話[えいぼん](2010/04/22 00:13)
[94] 第八十八話[えいぼん](2010/04/25 18:36)
[95] 第八十九話[えいぼん](2010/04/30 17:45)
[96] 第九十話[えいぼん](2010/04/30 17:51)
[97] 第九十一話[えいぼん](2010/05/05 13:47)
[98] 第九十二話[えいぼん](2010/05/07 07:39)
[99] 第九十三話[えいぼん](2010/05/30 13:16)
[100] 第九十四話[えいぼん](2010/05/16 08:27)
[101] 第九十五話[えいぼん](2010/05/16 08:31)
[102] 第九十六話[えいぼん](2010/05/18 07:11)
[103] 第九十七話[えいぼん](2010/05/22 07:52)
[104] 第九十八話[えいぼん](2010/05/31 22:26)
[105] 第九十九話[えいぼん](2010/05/30 13:59)
[106] 最終話[えいぼん](2010/05/31 22:24)
[107] 後書き[えいぼん](2010/05/31 20:56)
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[11085] 第八十三話
Name: えいぼん◆2edcbc16 ID:fd94314f 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/04/13 21:42
BF23のG討伐に成功した翌日には、早くもBF24への階段を発見した華琳達。

秋蘭の【千里眼】のサーチに引っかかった2匹のGは、意地の悪いことに固まって配置されていた。
そのまま動く気配を欠片も見せないGだったが、その事実は今の華琳達にとってそれほど問題とはならない。
なぜなら、華琳の武器スキル『生者必滅の理』があるからだ。

色々試した結果、この武器スキルはHP一定値以下のモンスターを死滅させる効果であることが判明していた。
そしてミニGのHP量が確実にこの一定値を下回っていることも、これまでの実績から分かっている。
つまり1匹目が自爆サインを出したら華琳が、2匹目は一刀と春蘭達が必殺技を使用すれば済む話なのである。

「とはいえ、実力的には厳しいんだよな。BF23のGでもかなり強かったしさ」
「確かにね。自爆してくれて、むしろ助かったくらいだわ」

実力的には、同じフロアのモンスター達より上位の存在であるG。
LV23の華琳達にとって、BF23のGは互角以上の存在であった。
対抗する戦術を確立していたこともあり、自爆攻撃をされた方が勝手にHPを減らす分だけ戦いやすかったのだ。
尤も今までは単体であったため、どちらにせよそれほど脅威でもなかったのだが。

しかし今回は階層が変わったことにより、Gは完全に格上の敵となっていた。
それに加えて、2体同時に戦う必要性が出てきたのである。

「今日か明日くらいには華琳達のLVも上がると思うし、戦うのはそれからにした方がいいかも」
「ふぅん。そんなことまでよく分かるわね。まぁ一刀がそう言うなら、信じてみようかしら。さて、そろそろ休憩は終わりにしましょう。皆、出立するわよ」

今回の探索で得た自分のEXPが約1200なので、華琳達は2400だろうという推測。
BF23を探索した昨日で800弱の取得量だったため、BF24なら倍くらいだろうという予測。
NEXT7000であろう華琳達の、だが結構前からずっとLV23だったことを考えて、その半分くらいだろうという仮定。

それらを合わせた大雑把な計算を予想外に信頼された一刀は、多分だぞ、確実じゃないからな、と念を押しながら華琳の後を追いかけるのであった。



既にBF24にまで至った今回の迷宮探索は、順調などという言葉では到底表現しきれない。
攻略ペースだけでなく、戦闘の安定度も抜群であった。

そのことは、秋蘭に対してセクハラ紛いの援護を行う一刀を見れば十分に理解出来るだろう。
戦闘中にも平時と変わらぬ態度の一刀、それはつまり彼の精神に余裕があることを示しているからだ。

もしこれがギリギリの探索だったとしたら、一刀も戦闘中は必死にならざるを得ない。
普通であれば、セクハラどころの騒ぎではないはずだ。
尤も、一か八かの賭けであった前回の雪蓮クランとのパーティの際にも、乙女達の柔肌を堪能しまくった一刀に常識が当て嵌まるかは疑問だが。

それはともかく、華琳クランの快進撃である。
やはりその根底には、雪蓮クランから譲り受けた地図の存在があるだろう。
階段の方向が大雑把に分かるだけでも、探索効率が大幅にアップするのは言うまでもない。

また華琳クランのパーティバランスの良さも、今回の躍進の要因である。

防1攻2補1魔2の鉄板編成である春蘭のチーム。
春蘭と季衣の有り余る攻撃力が、防御の要である流琉のフォローの役割まで果たしている。
攻防一体となった、王道の構成であろう。

全1攻3補1魔1の変則編成である華琳のチーム。
LVの低い凪達3人で1体の敵に当たらせ、華琳が他の敵の足止めに徹する。
華琳の能力に依存する形ではあるが、これもまた立派な戦術と言えよう。

それから華琳達の持つ強化装備も、忘れてはならない要素である。
探索前から武器を強化済であった華琳と春蘭。
BF22では、凪達の武器と桂花の猫耳フードが強化の対象であった。
そしてBF23で新たに手に入れた2枚の『銀の天使印』は、主に一刀と秋蘭の武器に対して使用されていた。

新・打神鞭:攻150、耐210/210、AGI+4、近接命中+4、物理回避+4

これといって特筆すべき性能こそないものの、攻撃力の底上げ自体が極めて大きい。
もはや誰も一刀を補助要員とは呼べないだろう。

凡庸なSTRの一刀ですら立派なアタッカーとなり得るような、規格外の武器強化による戦力の底上げ。
これが華琳達をして、BF24をも破竹の勢いで攻略せしめる要因となっていたのだ。



「その、一刀。……あまり触られると、困るのだ」
「ごめん」

BF24での夜営中。
寝ようとしていた一刀は、続き部屋で見張り番の秋蘭から呼び出しを受けた。
もちろん他のメンバーから離れ過ぎることは出来ないので、夜営用拠点と定めた小部屋の隅に、である。

「誤解のないように言っておくが、最初は目を瞑ろうと思っていたんだ。ボロボロになったお前の手は、私の代わりに傷ついたようなものだからな」
「いや、俺もちょっと調子に乗り過ぎたよ。ほんとにごめん」
「そういうことではない。……つまり、その、手元が狂ってしまうんだ」

てっきりセクハラを怒られるのだと思った一刀だったが、どうやら風向きは少し異なるようだ。
秋蘭は胸に触わられた当初、この程度であれば駄賃だと思って許そうとしていたらしい。
ところが一刀に何度も庇われている内に、秋蘭自身にも予想外の情動が生まれたのだと彼女は言う。

「わ、私は、自分で言うのもなんだが、幼い頃からしっかりしていた方でな。あまり人に守って貰った経験がない。だから、なんというか……」
「俺に触られるのが嫌だったって話じゃないのか?」
「違う! あ、その、お前の腕の中も悪くはないのだが、き、緊張してしまうんだ」

クールな印象しかない秋蘭が、顔を赤く染めて俯き、とぎれとぎれに一刀へ自分の気持ちを伝える。
それだけで、もう一刀は鼻血が出る寸前であった。

「じゃ、じゃあ、今のうちに少し慣れておく?」
「……あ、う、うむ」

ところで、今の見張り番は春蘭チームである。
いくら声が聞こえない程度に距離を取っていても、同じ室内でのやり取りなのだ。
当然その空気は、他のメンバーにも伝わっていた。

春蘭を除いた4人のアイコンタクト。
すぐさま先陣を切ったのは、季衣と流琉であった。

「兄ちゃん! えーと、ボ、ボク達もLV24になったし、明日はこのフロアのGを倒すんだよね?」
「もし次回もちゃんと『天使印』が出たら、私と季衣の武器強化に使わせて貰えるそうなんですよ!」

更に季衣達をフォローすべく、稟と風も動き出した。
別に稟達は一刀争奪戦に参加しているわけではないが、付き合いの長い季衣達から幾度となく相談されて知恵を貸していたのだ。
その際に稟達が立案した『一刀2人占め計画』を成就に導くためにも、これ以上のライバルは必要ないのである。

「おやおやー。秋蘭ちゃん、顔が赤くなっているのですよ」
「これはいけませんね。風邪かもしれません。春蘭殿、こちらに来て下さい」
「む、どうしたのだ、秋蘭。具合でも悪いのか?」
「いや、そうではない。体調は平気なんだ、姉者」

多少あくどいながらも、雰囲気の読めていない春蘭を引き込んでピンク色の空気を乱そうという作戦であった。
その策を成功させた稟達は、ほっと一息ついた。

「それにしても、まさかセクハラが恋の切っ掛けになるなんて、完全に予想外なのですよー」
「一刀殿も最近は日増しに魅力が上がって来ているし、私達も気をつけないと。ひょんなことで恋に落とされでもしたら、季衣達に申し訳ないもの」

などと言葉を交わす稟達。
そんな彼女達の会話を、一刀はしっかりと聞いていた。

「ひゃん! か、一刀殿、一体なにを?!」
「……ぐぅ。おおぅ、お尻を撫でられた心地良さで、ついウトウトと」
「ひょんなことって、こんな感じ? それともこっちか?」

そう、エロマシーン一刀は、稟達の態度を誘い受けだと判断したのである。
鍛え抜かれた手練手管で、稟達を官能の渦に叩き込もうとする一刀。
ここさえ乗り切れば、秋蘭や季衣達も交えて楽しい夜を過ごせそうだ。

「このまま迷宮内6Pも……いける?!」
「みょんなこと言うなっ!」

怒声と共に春蘭の握り拳が、一刀の頭に落とされた。
あまりの痛みに性欲も掻き消され、その場に蹲る一刀。

(春蘭も巻き込んで、7Pを目指さなかったのが敗因だった……)

頭上にひよこ達を飛ばしながら、ひとしきり反省する一刀なのであった。



「や、やっと海岸に着いたー! 兄ちゃん、ボクもう無理……」
「私も、もう一歩も動けません」
「大丈夫、俺もとっくに限界だ。しかし、本当によく辿り着けたな。未だに信じられないよ」

数日後、華琳達はBF25の海岸に到達していた。
つまり、僅か1度の迷宮探索で2階層も歩を進めたことになる。
大まかな地図があり、BF25からは一刀の誘導まであるとはいえ、この事実は華琳クランの優秀さをこれ以上なく表しているだろう。

但し、完全に華琳達の実力だけとも言い切れない。
今回は様々な要素が華琳達にとって追い風となっていたからだ。

まず凪がいるおかげで、ブースト香には困らなかったことが挙げられる。
生産に必要な『銀の短剣飾り』など、道中でいくらでもドロップしているからだ。
更に真桜や沙和がいるおかげで、すぐさま装備強化の恩恵に預かれたことも大きい。
凪達自身の戦闘能力も含め、彼女達がいなければ今回の華琳クランの躍進はありえなかったはずだ。

普通の感覚であれば、今回の探索における非常識なまでの成果に兜の緒を緩めてしまう所である。
しかし華琳は、そんな望外の幸運にも眉ひとつ動かさない。
華琳の次の一言からは、良くも悪くも現状で満足せずに先を見続ける彼女の気質が窺える。

「秋蘭、Gを探して頂戴」
「おいおい、まだ探索を続ける気なのか? もう水だって残り僅かなんだぞ」
「華琳様、見つけました。ここからはかなり距離があります。後、このフロアには1匹だけのようですが、どうも今までのGとは様子が違いますね」

秋蘭の【千里眼】により発見された敵は、その名も『Gキング』。
明らかに通常のGより強そうである。
王と名乗るからには、きっと外見からして違うのだろう。

もしかしたら、つぶれた肉饅みたいな見た目なのかもしれない。
もしかしたら、色が赤くなっていて色々と3倍なのかもしれない。
もしかしたら、ボーイッシュな女の子の姿なのかもしれない。

それに対してこちらの戦力はと言えば、一刀こそLV25になっているものの、他のメンバーは未だLV24である。
しかも海岸に辿り着いたことで、皆の緊張感が解けてしまっている。
ここから再び精神を戦闘状態に持って行くのは難しい。

どのみち時期尚早だと、華琳は今回の『Gキング』打倒を断念した。
そして一刀に食材を釣らせ、洛陽へ帰還することに決めたのだった。

「屋敷に帰ったら私が捌いてあげるから、美味しそうなのを釣りなさい」
「私もお料理頑張りますね、兄様!」
「了解。って、高級食材っぽいものばっかりだな。タイやヒラメ、アンコウにフグまでいるや。毒抜きなんて、出来るのか?」
「ふふん、一刀。私に不可能なことなんて、あると思っているの?」

怪しいと思ったものの、それを口に出す愚は犯さない一刀。
絶対に華琳が箸をつけた後で食べようと心の中で誓いながら、一刀はどんどんと魚達を釣り上げていった。
今回はこのまま洛陽に戻るからいいものの、今後ここでキャンプを張った時の食材に向いてないということは記憶しておかねばなるまい。

それはそれとしてBF25の目玉商品、レアポップ魚の登場である。

「よしっ、『キャビア』ゲットだぜっ!」

てっきりサメが釣れるのかと思って警戒していた一刀だったが、実際に釣り上げてみると『キャビア』は一抱えほどもある巨大な甲羅であった。
まるで缶詰のようになっているそれを割ると、恐らく中から黒い海の宝石が出て来るという寸法であろう。
宴会時のいいツマミになりそうだ。

「ところで一刀、海に敵はいないの?」
「……それっぽいのは、確かにいるけど。やめとこうぜ、みんな疲れてるしさ」
「どんな敵なのかしら、どんな攻撃をしてくるのかしら、どんなアイテムを落とすのかしら?」

覇神の加護を持つ華琳には、些か子供っぽいところもあった。
『好奇心は猫を殺す』という格言を強烈なビンタと共に華琳に伝えたい一刀だったが、もちろん実行には移せない。
パーティをG戦用のものに組み直した一刀は、しぶしぶ海中の敵を釣り上げた。

NAME:アトランティス

緑色の鱗を持つ魚人は、しかし凡百のモンスターとは全く違うことが一目で分かる姿形をしていた。

その顔を覆うのは、黒っぽいバイザー。
その手に握られた、流線型の銃。
その全身を包み込む、銀色のボディスーツ。

アトランティスの予想外の見た目に、あっけにとられた一刀。
そんな彼を、アトランティスの銃から放たれた熱光線が襲った。

「うわっちっ! げふっ」
「きゃ! 兄ちゃん、大丈夫?」
「か、かなりやばい。銃の正面に立つな、受け止めるな、絶対に避けろ……」

その熱光線は丈夫なはずの導衣を焼き切って一刀の腹部を穿ち、マントにまで穴を開けていた。
防御力無視の貫通攻撃は、痛みに鈍い一刀でなければ戦闘を継続することも難しかったであろう。
その一刀でさえもお代わりが来たらギブアップするような、悶絶する程の激痛であった。

「くっ、このっ!」
「姉者、援護する!」

秋蘭の撃った矢に気を取られたアトランティスに対し、春蘭が一気に距離を詰める。
迫力の一撃は狙い違わずアトランティスの銃を、その右腕ごと切り飛ばした。
しかし、油断するのはまだ早い。
なぜならアトランティスの腰には、銃がもう一丁ぶら下がっているからだ。

残った左手で銃を抜き放ち、そのまま春蘭の顔面に狙いを定めるアトランティス。
攻撃時に大きく踏み込み過ぎたのは、春蘭の気の緩みであったのか。
咄嗟の身動きがとれない春蘭に向かって、無慈悲な熱光線が放たれた。

しかし、春蘭だからこそ珍しいものの、攻撃の終了時に隙が出来るのは普通である。
熱光線の危険性を体で覚えた一刀が、それを警戒しないわけがない。
攻撃モーションに入った春蘭をフォローすべく、既に一刀は動いていたのだ。

「うおぉぉ!」

春蘭に飛びつき、彼女を押し倒す一刀。
熱光線が、彼の背中をマントごと削り取る。

だが一刀には、痛みで蹲っている暇などない。
最初の一撃が内臓を傷つけたのであろう、口から血を吐きながらも『新・打神鞭』を横薙ぎに振るう一刀。
アトランティスの足に先端が巻き付くや否や、一刀は力任せに鞭を引っ張る。
その攻撃によってバランスを崩されたアトランティス。
本来一刀の額を穿つはずだった一閃が、一刀の頬を削いで地面に穴を開けた。

その隙に死地を脱した春蘭が、アトランティスを追撃する。
左腕を狙い過ぎた春蘭の攻撃は簡単に避けられ、再び攻守が逆転したかに思えたその時。

背後から強襲した華琳の大鎌が、見事アトランティスの首を薙いだのであった。



≪-再生の滴-≫

「一刀殿、無茶をしすぎですよ」
「心配かけてごめんな、稟。それにしても、めちゃくちゃな強さだったな……」

独白する一刀に、華琳が言葉を返す。

「非常識な攻撃力の分だけ、随分と脆い敵だったわ。それが幸運だったわね」
「でもさ、華琳の加護スキルでも、頭部を狙われたら一発でアウトだったろ。出来ればもう戦いたくないよ」
「そうかしら。きちんと作戦を立てれば、LV上げには都合の良い敵じゃない?」
「事故死が怖すぎるだろ。ところで春蘭が弾き飛ばした銃はどうした? あれ、ちょっと撃ってみたいかも」
「残念だけど、塵になっちゃったわ。でもその代わり、ほら」

そう言って華琳が差し出したのは、見たことのない宝石であった。
どこまでも吸い込まれそうな深海を思わせる、ディープブルーの輝き。
その宝石が強烈な魔力を発していることは、近づいただけでも分かる。

「稟、【鑑定】を頼むわ」
「はい。……ふむ、これは『バミュータの宝玉』というアイテムですね。ある程度の持ち物を収納出来る機能があるようです」
「へぇ、ずいぶんと便利ね」

恐らく、ゲームにありがちな『これ以上、物を持てないようです』に対する救済アイテムなのであろう。
これに着替えや食料を入れておけば、荷物持ちに人員を割く必要がなくなる。
華琳の言うように、迷宮探索の大きな助けになりそうなアイテムである。

「ところで、同じように武器を収納出来る『伊吹瓢』の時は、どうして私の【鑑定】で判別出来なかったのでしょうかね」
「隠し性能とか、そんな感じじゃないか? こっちは収納ってより登録だしさ」
「ふむ、【鑑定】が万能でないのは知っていましたが……」
「凪達なら隠し性能にも気づけるみたいだし、彼女達は細かい数値がわからないらしいから、お互いに補完し合っていけば問題ないだろ」

そんな稟と一刀の会話は、華琳の行動によって中断された。
折角得た宝玉を、華琳は一刀に渡そうとしたのだ。

「一刀、受け取りなさい」
「え、なんで?」
「あの状況で戦闘を行ったのは、好奇心に負けた私の判断ミスだわ。それで危うく春蘭を失う所だった。これは、彼女を救ってくれたお礼よ」

華琳から与えられた宝玉を、しかし一刀はすぐに彼女へ返した。

「……いや、いいって。華琳の方が使う頻度も高いだろうしさ。そんなことより、さっさと帰って宴会しようぜ!」
「ふふ、この宝玉の価値が分かってて、あえて惚けてるのでしょう? いいわ、それならこれは借りておくわね」

一刀に宝玉を譲ろうという意図があったのは、華琳の指摘通りである。
今までの傾向から、海岸の敵はそのフロアより1ランク高い。
つまりいずれ華琳達が赴くであろうBF26以降には、アトランティス並の敵がうじゃうじゃいるということだ。

(この宝玉が、少しでも華琳達の助けになればいい……)

なにがあっても、命だけはきちんと持ち帰って来て欲しい。
そんな思いを込めながら、華琳に宝玉を手渡す一刀なのであった。



**********

NAME:一刀【加護神:呂尚】
LV:25
HP:567/399(+454)
MP:0/0
WG:80/100
EXP:143/8000
称号:四八マン
パーティメンバー:一刀、華琳、春蘭、秋蘭、桂花、稟、風
パーティ名称:華琳党
パーティ効果:HP2倍、MP2倍

STR:38(+11)
DEX:53(+22)
VIT:28(+3)
AGI:41(+12)
INT:27(+1)
MND:20(+1)
CHR:53(+18)

武器:新・打神鞭、眉目飛刀
防具:スパルタンバックラー、勾玉の額当て、大極道衣・改、ハイパワーグラブ、仙人下衣、六花布靴・改
アクセサリー:仁徳のペンダント、浄化の腰帯、杏黄のマント、回避の腕輪、グレイズの指輪、奇石のピアス

近接攻撃力:294(+39)
近接命中率:118(+14)
遠隔攻撃力:160(+15)
遠隔命中率:106(+18)
物理防御力:194
物理回避力:122(+24)

【武器スキル】
スコーピオンニードル:敵のダメージに比例した確率で、敵を死に至らしめる。
カラミティバインド:敵全体を、一定時間だけ行動不能にする。

【加護スキル】
魚釣り:魚が釣れる。
魚群探知:魚の居場所がわかる。
封神:HPが1割以下になった相手の加護神を封じる。

所持金:13貫


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