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No.11085の一覧
[0] 迷宮恋姫【完結】 (真・恋姫無双 二次創作)[えいぼん](2010/05/31 20:54)
[1] 第一話[えいぼん](2009/09/21 00:53)
[2] 第二話[えいぼん](2009/09/21 01:05)
[3] 第三話[えいぼん](2010/01/24 20:05)
[4] 第四話[えいぼん](2009/09/26 05:36)
[5] 第五話[えいぼん](2009/08/25 00:08)
[6] 第六話[えいぼん](2010/02/20 07:16)
[7] 第七話[えいぼん](2009/09/15 21:39)
[8] 第八話[えいぼん](2009/09/15 21:40)
[9] 第九話[えいぼん](2009/08/25 00:05)
[10] 第十話[えいぼん](2010/02/20 07:16)
[11] 第十一話[えいぼん](2009/08/27 23:37)
[12] 第十二話[えいぼん](2009/08/26 21:34)
[13] 第十三話[えいぼん](2009/09/21 08:56)
[14] 第十四話[えいぼん](2009/08/29 02:46)
[15] 第十五話[えいぼん](2009/09/21 03:04)
[16] 第十六話[えいぼん](2009/09/19 15:52)
[17] 第十七話[えいぼん](2009/09/04 23:58)
[18] 第十八話[えいぼん](2010/02/20 07:17)
[19] 第十九話[えいぼん](2009/09/21 03:40)
[20] 第二十話[えいぼん](2009/09/21 03:47)
[21] 第二十一話[えいぼん](2009/09/19 15:52)
[22] 第二十二話[えいぼん](2010/05/20 18:53)
[23] 第二十三話[えいぼん](2009/09/07 22:44)
[24] 第二十四話[えいぼん](2009/09/20 22:40)
[25] 第二十五話[えいぼん](2009/09/20 22:40)
[26] 第二十六話[えいぼん](2009/09/20 22:40)
[27] 第二十七話[えいぼん](2009/10/03 08:55)
[28] 第二十八話[えいぼん](2009/09/20 22:41)
[29] 第二十九話[えいぼん](2009/09/20 22:41)
[30] 第三十話[えいぼん](2009/09/20 22:41)
[31] 第三十一話[えいぼん](2009/09/20 22:41)
[32] 第三十二話[えいぼん](2009/09/20 22:41)
[33] 第三十三話[えいぼん](2009/09/20 22:41)
[34] 第三十四話[えいぼん](2009/09/20 22:42)
[35] 第三十五話[えいぼん](2009/09/20 22:42)
[36] 第三十六話[えいぼん](2009/09/20 22:42)
[37] 第三十七話[えいぼん](2009/09/21 00:42)
[38] 第三十八話[えいぼん](2009/09/20 23:50)
[39] 第三十九話[えいぼん](2009/09/22 15:51)
[40] 第四十話[えいぼん](2009/09/22 18:12)
[41] 第四十一話[えいぼん](2010/05/14 19:23)
[42] 第四十二話[えいぼん](2009/09/27 16:52)
[43] 第四十三話[えいぼん](2010/02/20 14:39)
[44] 第四十四話[えいぼん](2009/09/27 13:39)
[45] 第四十五話[えいぼん](2010/05/14 19:22)
[46] 第四十六話[えいぼん](2009/09/27 13:39)
[47] 第四十七話[えいぼん](2010/02/20 14:57)
[48] 第四十八話[えいぼん](2010/05/14 19:06)
[49] 第四十九話[えいぼん](2009/09/30 21:32)
[50] 第五十話[えいぼん](2009/10/02 00:33)
[51] 第五十一話[えいぼん](2009/10/03 01:57)
[52] 第五十二話[えいぼん](2010/03/27 14:36)
[53] 中書き[えいぼん](2009/10/03 16:02)
[54] 閑話・天の章[えいぼん](2010/01/10 19:35)
[55] 閑話・地の章[えいぼん](2010/01/09 11:12)
[56] 閑話・人の章[えいぼん](2010/01/10 10:59)
[57] 第五十三話[えいぼん](2010/02/01 19:13)
[58] 第五十四話[えいぼん](2010/04/14 23:22)
[59] 第五十五話[えいぼん](2010/01/18 07:26)
[60] 第五十六話[えいぼん](2010/01/20 17:42)
[61] 第五十七話[えいぼん](2010/01/31 22:16)
[62] 第五十八話[えいぼん](2010/01/29 23:27)
[63] 第五十九話[えいぼん](2010/02/03 05:56)
[64] 第六十話[えいぼん](2010/02/20 07:29)
[65] 第六十一話[えいぼん](2010/02/20 07:30)
[66] 第六十二話[えいぼん](2010/04/13 21:38)
[67] 第六十三話[えいぼん](2010/02/20 07:32)
[68] 第六十四話[えいぼん](2010/04/13 21:39)
[69] 第六十五話[えいぼん](2010/04/13 21:39)
[70] 第六十六話[えいぼん](2010/04/13 21:39)
[71] 第六十七話[えいぼん](2010/04/13 21:39)
[72] 第六十八話[えいぼん](2010/03/27 14:39)
[73] 第六十九話(書き直し)[えいぼん](2010/04/13 21:40)
[74] ボツ話[えいぼん](2010/03/25 07:16)
[75] 第七十話[えいぼん](2010/04/13 21:40)
[76] 第七十一話[えいぼん](2010/04/13 21:40)
[77] 第七十二話[えいぼん](2010/04/13 21:40)
[78] 第七十三話[えいぼん](2010/04/13 21:40)
[79] 第七十四話[えいぼん](2010/04/13 21:41)
[80] 第七十五話[えいぼん](2010/04/13 21:41)
[81] 第七十六話[えいぼん](2010/04/13 21:41)
[82] 第七十七話[えいぼん](2010/04/13 21:41)
[83] 第七十八話[えいぼん](2010/04/13 21:42)
[84] 第七十九話[えいぼん](2010/04/13 21:42)
[85] 第八十話[えいぼん](2010/04/13 21:42)
[86] 第八十一話[えいぼん](2010/04/13 21:42)
[87] 中書き2(改訂)[えいぼん](2010/04/01 20:31)
[88] 第八十二話[えいぼん](2010/04/13 21:42)
[89] 第八十三話[えいぼん](2010/04/13 21:42)
[90] 第八十四話[えいぼん](2010/04/13 21:43)
[91] 第八十五話[えいぼん](2010/04/17 03:04)
[92] 第八十六話[えいぼん](2010/04/29 01:36)
[93] 第八十七話[えいぼん](2010/04/22 00:13)
[94] 第八十八話[えいぼん](2010/04/25 18:36)
[95] 第八十九話[えいぼん](2010/04/30 17:45)
[96] 第九十話[えいぼん](2010/04/30 17:51)
[97] 第九十一話[えいぼん](2010/05/05 13:47)
[98] 第九十二話[えいぼん](2010/05/07 07:39)
[99] 第九十三話[えいぼん](2010/05/30 13:16)
[100] 第九十四話[えいぼん](2010/05/16 08:27)
[101] 第九十五話[えいぼん](2010/05/16 08:31)
[102] 第九十六話[えいぼん](2010/05/18 07:11)
[103] 第九十七話[えいぼん](2010/05/22 07:52)
[104] 第九十八話[えいぼん](2010/05/31 22:26)
[105] 第九十九話[えいぼん](2010/05/30 13:59)
[106] 最終話[えいぼん](2010/05/31 22:24)
[107] 後書き[えいぼん](2010/05/31 20:56)
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[11085] 第七十三話
Name: えいぼん◆2edcbc16 ID:fd94314f 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/04/13 21:40
大神殿で祈りを捧げていた男達に、数日後の再訪を約束した一刀。
彼等は満足気に帰途につき、一刀と桃香達はようやく『贈物』を貰うことが出来た。

「へぇ、ご主人様の『贈物』は靴なんだ」
「この『ダッシュシューズ』もいい加減ボロボロだったし、丁度良かったよ」
「ここで問題でーす。私の家はどんなお店をしているでしょうか?」
「何言ってんだよ。靴屋だろ?」
「ピンポンピンポン。正解者には賞品として、靴のカスタムサービスをしちゃいまーす。というわけで、この靴は私が持って帰るね」
「へぇ、そりゃありがたいな。けど、本当にいいのか?」
「うん、もちろん。今回のお礼も兼ねて、是非やらせてよ」

材料費も全て持ってくれるという桃香の好意に、一刀は甘えることにした。
出来上がりは数日後になるとのことである。
大神官から受注した『性なる試練』のことは明日考えようと、一刀は桃香達と別れて宿へと帰った。

ところが、そこでも一刀は休息を取ることが出来なかった。
宿では凪達が、彼の帰りを今や遅しと待ち構えていたのである。

「ずっと待っとったんやで、隊長」
「隊長、聞いてなのー! みんな酷いのー!」
「自分達では、食べ物もまともに売って貰えないんです……」

聞く所によると、ダンジョンでの戦利品は正当な価格でギルドショップに引き取ってもらえたのだそうだ。
しかし食事や宿などでは、相当ふっかけられてしまったらしい。

凪達が亜人であることが、その理由である。
洛陽では珍しいが、未開な土地には様々な亜人が存在する。
そして明確に律令で決められてこそいないが、それら亜人は多くの人々にとって差別対象となっているのだ。

基本的に洛陽は、活気こそあるもののほのぼのとした雰囲気ではない。
それは奴隷制度の存在ひとつ取ってみても、明らかである。
個人単位ではいい奴も悪い奴もいるが、決して桃香達のようにボランティア活動をする空気ではないのだ。
すっかり桃香の影響を受けて、無辜な人々のために~などと考え始めていた一刀は、凪達の話によって冷水を浴びせられたような気分になった。

そもそも一刀は、完璧な善人などいないと知った上で、それでも人々の役に立とうとする桃香達とは考え方が根本的に異なる。
一刀が大切にしたいのは、人々などという記号ではなく、手を伸ばして届く範囲の仲間達なのである。
限界まで頑張っても、幼い子供達までだ。

そんな一刀にとって、洛陽市民とは比べるまでもなく凪達の方が大事である。
そして折角『珊瑚』の仕入れに協力することで洛陽市民に対して貢献した恩を、彼等は仇で返してきたようなものなのだ。
もっとも一刀は桃香達のために働いたのであり、洛陽の民を思っての行動ではなかったのだが。
それでもその話を聞いて、桃香クランの手伝いをしたことが馬鹿らしく思えてきた一刀だったのであった。

そんな一刀の感傷は置いといて、今は凪達の身に降りかかっている問題である。

「いくらうちらが街に不慣れやからって、ボッタクリくらい気づくっちゅーねん!」
「ボロボロの宿屋だったのに、1泊3貫もしたのー!」
「隊長、自分達をここに泊めて頂けないでしょうか?」

心情的にそうしてやりたいのは山々だが、それはそれで問題がある。

まず客として泊めるのは、現時点では無理だ。
なぜなら、彼女達は漢帝国クラン員ではないからである。
税の免除のために公宿として登録しているのがネックとなってしまうのだ。

では一刀の個人的な客としてならどうか。
数日間なら問題ないがそれ以上となると、金銭を対価に泊まっている月達や、労働を対価に住んでいる美以や子供達に不公平感を与えるであろう。

ならば従業員として雇えばいいのか。
他の選択に比べればマシな答えではあるが、彼女達の本業は冒険者である。
頻繁にまとまった休みが必要となるので、勤務体系に組み込むのが難しい。

それにどれを選んでも、根本的な解決とはなっていない。
一刀の宿を拠点に出来た所で、洛陽での買い物に困る現状は変わらないからだ。
趣味は日向ぼっこと昼寝という飼い猫気質の美以ならともかく、3人娘にとっては死活問題である。

「いざとなれば凪達を泊めるのも吝かではないけど、それだと応急対策にしかならないんだよな」
「せやな。うちらも街に出る度に変な目で見られるのは嫌やし」
「抜本的な解決策かぁ。……やっぱり、寄らば大樹の陰かな。影響力のあるクランに入れば、その辺はなんとでもなりそうだけど」
「知らない人達と一緒に戦うのは、色んな意味で怖いのー」
「隊長がリーダーなら、自分達も喜んで参加するんですが……」
「いや、俺にそんな影響力は……待てよ、それだ!」

この場合、重要なのは影響力の部分であり、クランではない。
そして今の一刀には、大神殿という強力なバックがあり、洛陽の迷える子羊達という信者達がいるのだ。

「明日から数日間、俺の依頼を手伝ってくれないか? そうすれば、全て解決するはずだ」

彼女達が大神殿により正式に認定された、『新性器の神』に仕える『性戦士』だということになれば。
そしてそのことが、迷える子羊達によって洛陽中に広まれば。

そうなれば、凪達が迫害されることもなくなるだろう。
この世界での大神殿の影響力から考えれば、まず間違いない。

「さすがですね、隊長。尊敬します!」
「たまたまだって。あんまり買い被らないでくれよ」
「でも、『性戦士』って何をすればいいのー?」
「そりゃあ『新性器の神』に仕えるんだから、……ナニかな?」
「まったく、隊長も好きモンやなぁ。まぁうちも嫌いやないから、ええけど」

こうして3人娘は、『性なる試練』クエスト中は一刀の部屋で『性戦士』としての修練を積むことになったのであった。



一般的には、無駄に広いと形容するのが相応しいであろう一刀のベッド。
だが複数プレイの多い彼は、その巨大ベッドを非常に重宝していた。
今も真桜と沙和は既にダウンして夢の中であり、そんな彼女達が横たわっているにも関わらず、凪との逢瀬に必要なスペースが十分に確保出来ている。

「はぁ、はぁ……。た、隊長、本当に、酷いです……」
「ごめんごめん。でも、凪が魅力的過ぎるのも悪いんだぞ」
「え、あ、そ、そんな……」
「ほら、ちょっと飲むか? 落ち着くぞ」

『伊吹瓢』を引き寄せ、凪に渡す一刀。
彼女は少しだけ口を付け、ふぅ、と深く息を吐いた。

「白ワインですか。まろやかで、凄く美味しいです」
「うん。飲みやすいしな」
「ところでこの瓢箪、使わないんですか?」
「ん? 十分に活用してるけど。そのワインだって、元は海水だし」
「そうではなく、アイテムとしてですよ」

凪が言うには、『伊吹瓢』は武器を飲みこませるアイテムなのだそうだ。
そうすることにより、それがいつでも取り出せるようになるという話である。
なんでも、「出ろ」と念じるだけで手の中にポップするらしい。
登録出来るのは1つのみであり、その際には武器に様々な影響が出る場合もあるとのことだ。

その話を聞いて真っ先に思い浮かんだのが、雪蓮から貰った『アサシンダガー』である。
基本的に近接武器を2つ以上装備出来ないため、いつもダガーは荷物の中に入れていた。
それは武器として致命的な扱いである。
とっさに使えなければ、持って行く意味がないからだ。

しかし、この『伊吹瓢』に収納出来るのであれば話は違うのかもしれない。
なぜなら『伊吹瓢』はアイテムであり、身に付けていてもステータスの装備品欄には表示されないからである。
逆に武器を飲みこませることで瓢箪が近接武器扱いになった場合でも、そんなには困らない。
いつも腰に下げている瓢箪を、荷物の中にしまえば済む話だ。

「出来るだけ愛着を持った武器で行った方がいいですよ。そんな武器なら、きっと隊長の気持ちに答えてくれます」
「なるほどなぁ」

絶対に使用するという意味で確実性のある『打神鞭』に対して使うことも考えた一刀だったが、凪の言葉が決め手となった。
早速ダガーを取って来て、瓢箪の口に近づける一刀。
すると、大きさ的には絶対に入らないはずのダガーが、見る見るうちに瓢箪に吸い込まれていった。

「じゃあ、呼び出してみて下さい」
「ああ」

一刀の意志に応じて手の中に現れたダガーは、かなりの変貌を遂げていた。

赤茶けた錆色は、シルバーの輝きを放ち。
禍々しかった形状は、流線型のフォルムとなり。
ずっしりとした重みは、今や羽のようである。

それ以前に、これはそもそもダガーではない。
明らかに投擲用の小刀であった。

「なんていうか、随分と変っちゃったなぁ」
「あの、すみません。余計な助言をしてしまったみたいで……」

余りの変化に面食らった一刀の様子を見て、凪は落ち込んだ。
いや、この表現は現在の状況に対しては不適当と言わざるを得ない。

正確には、凪“達”は落ち込んだ、と称するべきであろう。

「……なぁ、なんか小刀が泣いてるんだが」
「ずいぶんと詩的な表現ですね、隊長」
「違うって、本当に泣いてるんだよ」

小刀についている眉と目。
そのハの字型に下がった眉がしょんぼりさを表現し、目から溢れる滴ががっかり感を醸し出す。
一刀の良心を刺激する、なかなか感情表現が豊かな小刀である。

「あ、いや、別に俺は、変な意味じゃなくてだな」

濡れた瞳の小刀に対し、しどろもどろになる一刀。
先程の自分の言葉を必死にフォローする一刀の声が、段々と大きくなっていく。

「ううーん。隊長、うるさいのー」
「むー。明日もあるんやから、そろそろ静かにしてぇや」
「……ごめん」

起こしてしまった沙和と真桜に詫び、小刀に弁明するために部屋から出て行く一刀なのであった。



BF15でのマーマン戦について、特筆すべきことは全くない。
一刀はLV23に達しており、凪達だってLV20なのである。
彼らが4人掛かりでマーマン1体を相手にするのだから、ほとんどイジメのようなものだ。

最初は前衛4人で戦っていたのだが、それでは多過ぎて動きにくいため、一刀は昨日手に入れた投擲用の小刀での遠距離攻撃に専念していた。
その方が1対2を2組作るよりも、戦闘効率が高かったからである。
それだけ3人娘のコンビネーションは際立っていたと言える。
『打神鞭』による中距離からのフォローすら必要としないくらい、お互いが補完し合う完璧な連携であった。

その小刀だが、装備したところ『眉目飛刀』という名称であることが判明した。
正確には武器を登録した瓢箪を腰に身に付けることで、システム的には遠隔攻撃武器の装備と認識されるようである。
防具と異なり武器は装備を外すとステータスが消えてしまうため、性能は現時点ではわからない。
武器の秘めた能力などがわかる真桜でも、性能を数値的に表現することは出来ない。
機会を作って、稟に鑑定してもらうのが一番良いであろう。

ところで、今まで遠距離攻撃にボウガンしか使っていなかった一刀が、なぜいきなり投擲武器を使用出来るのだろうか。
そのことを語るには、プレイヤースキル面とシステム面の両方からの見解を示さねばならない。

まず『扱いやすさ』の面である。
最近短剣から鞭に持ち替えた時のように、近接戦闘における咄嗟の判断などは、いくらシステム的なスキル値が高くても実戦経験を積まねば話にならない。
従って、当然使い慣れた武器の方が扱いやすいと言える。

但し『武器を使用する』という一点のみを見れば、一刀にとってはボウガンでも投擲でもほとんど違いはない。
狙いを定めるのも同じだし、攻撃に移るのもAボタンを押すかBボタンを押すかの違いでしかなく、後は最適な動きになるよう体が勝手に補正してくれるからである。
つまり、遠距離武器は一刀にとって比較的持ち替えやすい武器なのだ。

そして肝心のシステム面だが、ここで昨晩の凪の助言を思い出して欲しい。
「愛着の強い武器を使用した方がいい」というのは精神論ではない。
システム的にも理に適っていることなのである。
『眉目飛刀』こそ初めて使用する一刀だったが、その原型たる『アサシンダガー』は使い慣れた武器なのだから。

それは『太公望の竿』を使い慣れていたことにより、『打神鞭』装備時にある程度のスキルが身についていたことと同様である。
『打神鞭』を使い始めた当初は、おそらく他の鞭・棍系武器を使用した場合には攻撃力が大幅にダウンしてしまったことだろう。
つまり、現時点での一刀は投擲武器スキルこそないが、『眉目飛刀』を使用する時のみ『アサシンダガー』装備時と同じだけのスキル補正を受けられるということになる。

もちろん今の一刀であれば、『打神鞭』を使用した経験が活きており、他の鞭・棍系の武器でもそれなりにスキル値が上がっているはずだ。
同じく『眉目飛刀』を使い続けていれば、他の投擲武器に対するスキルもそのうち身に付くと思われる。

強いて問題点を上げるとすれば、戦闘中の遠距離攻撃に一刀が慣れていないことだろう。
ボウガンの時には敵を釣る時しか使用していなかったため、遠距離攻撃すべきタイミング、つまり3人娘の動きとの連動が出来ていないのである。

通常であれば、その欠陥は致命的であろう。
なぜなら、誤って3人娘に攻撃が当たってしまう可能性が高いからだ。
しかしその問題も、『眉目飛刀』自身の特性が解決してくれた。

「きゃあ! び、びっくりしたなのー」
「隊長、いくら大丈夫やからって、こっちも怖いんやで? ちゃんと気ぃつけてや」
「沙和、真桜、余所見をするな。隊長に文句を言う前に、まず敵を倒そう」

一刀の手から放たれた『眉目飛刀』が沙和の頭に突き刺さるかと思われた瞬間、まるでそれが幻だったかのように忽然と姿を消したのだ。
元々『伊吹瓢』に登録された武器は、持ち主の意志によって出し入れ自在である。
だがこういう咄嗟の場合、確実に『戻れ』と念じることが出来るかというと、疑問符がつくであろう。
ところが目もあり感情もある『眉目飛刀』は、誤射した際には一刀の意志を汲んで確実に瓢箪の中へ戻ってくれるのだ。
さすがに自身の軌道を修正して敵に必中とまではいかないが、それでも十分過ぎる程の性能である。

こうして一刀も気兼ねなく投擲の練習が出来、彼等は大量の『真珠』を収拾していったのだった。



パーティメンバー全員が祭壇のテレポーターを使用可能なため、夜は宿に帰ることが出来る。

「3人共、お疲れ様。明日もまたよろしくってことで、乾杯!」
「「「かんぱーい!」」」

一刀の行きつけの店で、中華料理に舌鼓を打つ3人娘。
『迷宮解放クエ』の打ち上げにも使ったここなら、一刀の顔が利くのでボられる心配もない。

「それにしても、今日だけで『真珠』が約30個か」
「かなりハイペースでの戦闘でしたからね」
「後2日もやれば、依頼達成には十分だな」
「そしたらうちらも、大手を振って街を歩けるんやなぁ。隊長には感謝せんと。ああ、だからっちゅーて、報酬の分け前にも期待しとるで?」
「もちろん、ちゃんと4等分だよ。安心してくれ」
「さっすが隊長、公平なのー!」

3人の協力がなければ、これだけ効率的に『真珠』を得ることが出来なかったのだから、報酬の山分けは当然のことである。
それでもそんなことを口にする辺りに、彼女達が解放されてから数日間で受けた扱いの酷さを察せられる。
心の閊えが取れたのか、ニコニコしながら炒飯を頬張る沙和を見て、一刀はポケットの中にあるアイテムの存在を思い出した。
ダゴミンから貰った『深紅の珊瑚』である。

「ところで沙和ってさ、防具ならなんでも作れるのか? 装飾品とかでも大丈夫?」
「隊長のためなら、なんだって作るのー!」
「そしたらお願いがあるんだけど、これで髪飾りなんか作れないか? もちろん礼はするからさ」
「……それって、女性用ですよね、隊長」
「ああ。長い黒髪の、大人っぽい理知的な女性に似合うような感じで頼むよ」
「……隊長、いくらなんでも、それはデリカシーが無さ過ぎやで」
「いいの、凪ちゃん、真桜ちゃん。隊長の役に立てるなら、他の女性へのプレゼントでも、ちゃんと作るの……」

あっ。
と一刀が思った時には、既に遅かった。
一気にお通夜ムードとなった飲み会、落ち込む沙和と慰める凪や真桜。
もはや悪気がなかったでは済まされない状況である。

近いうちに彼女達への贈り物を用意して、この失態をフォローしようと考える一刀。
好感度の巻き返しを図ることが出来るのかどうか、それは今の段階ではわからない。
だが少なくとも本日の夜、彼女達の『性戦士』としての修練が休みになることだけは間違いなかったのであった。



デリカシーの無さで顰蹙を買ってしまったものの、それは別に根の深い問題ではない。
翌日からも効率を落とすことなく、『真珠』の収拾に励んだ一刀達。
僅か3日間で100近い『真珠』と、ほぼ同数の『黄銅の短剣飾り』、そして5個の『大真珠』が手に入った。

天和達との時と比べて全体的なドロップ率が半分近く減っていたが、『増ドロップ香』も『アイドルマスター』のパーティ効果も無しなのだから、当然である。
『真珠』に対する『大真珠』の割合も半分近く減っていたが、それもパーティ効果の一部だったのであろう。

これらを持って、一刀達は意気揚々と大神殿を訪れた。
彼等の帰りを待ちかねていた牙を失った男達は、お祭り騒ぎである。
大神官の『性戦士』認定により、亜人の3人娘に対しても女神の如く接する男達。
この分なら、洛陽中に『性戦士』の名が広まるのも時間の問題であろう。

残る問題は唯ひとつ、『大真珠』の扱いについてだけである。

「この大きさじゃ、さすがに埋め込むのは無理だろ?」
「うむ。いくら俺のゴッドウェイドーでも、物理的に不可能なことは覆せないな」
「これは買い取りしてくれないのー?」
「いや、『大真珠』にはこれだけ魔力が篭っているんだ。『真珠』では不可能な使い道があるやもしれん」
「ならば、煎じて飲むとかはどうでしょうか?」
「そりゃ勿体無いんとちゃうか?」

あーでもない、こーでもないと議論を交わす一刀達。
ところで一刀には、リアル世界での知識がある。
それは主にゲーム知識であったが、今まで色々な役に立ってくれた。
今回もその例に洩れず、この世界の住人には考えつかないようなアイデアが飛び出してきた。

「男に使えないなら、女の子に使えばいいんじゃないか?」
「む、それはどういうことだ?」
「つまり、……って感じでさ。真桜、なんとか作れないかな?」
「うちの手に掛かれば、そんなもん余裕や。振動機能なんかもオマケするで」
「なるほど、丹田を体内から刺激することにより身体を活性化させ、女性の美と健康を促進するのか。さすがは『新性器の神』、素晴らしい発想だ!」

こうして『性なる神器』が誕生し、それを最も有効活用出来る者として一刀に貸与された。
そしてこの宝具は、その時代ごとに大神殿に認定された『新性器の神』へと受け継がれていくことになるのであった。



**********

NAME:一刀【加護神:呂尚】
LV:23
HP:424/367(+57)
MP:0/0
WG:100/100
EXP:2438/7000
称号:新性器の神
パーティメンバー:一刀、凪、沙和、真桜
パーティ名称:チーム2軍
パーティ効果:近接命中率+10、物理回避力+10

STR:31(+6)
DEX:49(+19)
VIT:25(+2)
AGI:34(+7)
INT:25(+1)
MND:19(+1)
CHR:47(+13)

武器:打神鞭、眉目飛刀
防具:スパルタンバックラー、勾玉の額当て、大極道衣・改、鬼のミトン、仙人下衣、ダッシュシューズ
アクセサリー:猫の首輪、浄化の腰帯、覇者のマント、回避の腕輪、グレイズの指輪、奇石のピアス

近接攻撃力:232(+37)
近接命中率:116(+20)
遠隔攻撃力:151(+15)
遠隔命中率:108(+28)
物理防御力:159
物理回避力:109(+20)

【武器スキル】
スコーピオンニードル:敵のダメージに比例した確率で、敵を死に至らしめる。

【加護スキル】
魚釣り:魚が釣れる。
魚群探知:魚の居場所がわかる。
封神:HPが1割以下になった相手の加護神を封じる。

所持金:242貫


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