翌朝。
先ほど能力ブースト香を使用した一刀と3姉妹は、BF15『帰らずの扉』の前で凪達を待っていた。
ここまでの移動については、特に触れることもなかろう。
加護なしとはいえ、LV22の一刀とLV16の3姉妹がBF11からの道中で苦戦するわけがないからだ。
時間にして半日以上は掛かる道のりだが、その疲労もBF15の海岸で1晩ぐっすり眠れば完全回復する程度である。
腰帯に挟んだ『銀の短剣飾り』を弄りながら、新たな加護神について考える一刀。
ちなみにこの短剣飾りは、華琳クランとの迷宮探索における日数延長分の報酬の一部である。
正規の報酬については中ボスとの戦いが終わった後で、ということになっていた。
それはともかく、新たな加護神である。
今までと同じく呂尚になるのか。
はたまた別の武将になるのか。
あるいは加護を受けられないのか。
正直に言えば、一刀は別の武将になってくれるのがベストだと考えていた。
釣りの人はもう嫌だという思いもなくはないが、それよりも彼は自己の方針を定める切っ掛けを求めていたのである。
いざと言う時のために、LV上げだけはしておきたい一刀。
だがBF21以降の攻略が今のままじゃ厳しいのは、彼自身が一番よく分かっている。
現状を打破するには、どこかのクランへ所属するしかない。
だが優柔不断の一刀には判断材料、いやむしろ決め手そのものが必要なのである。
もしも陥陣営・高順であれば、漢帝国クランへ加入しよう。
仮に勇将・徐晃だったら、華琳クランに入れて貰えばいい。
名将・太史慈を引き当てて、雪蓮クランと行動を共にするのも捨てがたい。
蜀漢最後の将・姜維というのも、桃香達に助力する美味しい役柄だ。
と、少々浮ついたことまで考えている一刀。
裏を返せば、彼はこのことについて真剣に考えたくなかったのである。
というのも、新たな加護を得られないかもという不安に押し潰されそうだったからだ。
【封神】を実際に行ってみた結果、能力値全体が彼の予想以上に低下していた。
数LV分は減っているパラメータは、このゲーム世界では容易に補えない類ものである。
如何に努力をしてもLV1では『モスバーラー』に勝てない、つまりはそういうことなのだ。
もしこのまま加護を得られなかったら。
これからの一刀にとってLV相当の階層は、人の数倍は死にやすい状態での戦闘を強いられることと同義になる。
しかも、それだけ無理を重ねたとしても成長率は並なのである。
彼が自身の未来に対して悲観的になるのも、無理はない。
「隊長、お待たせしました!」
「おはよーなの、隊長!」
「うちらの気合いは十分やで!」
「……おっし! それじゃ張り切っていくぞ!」
「「「おー!」」」
これからに対する不安はあったが、後悔だけはしていない。
希望に満ち溢れた凪達の顔を見て、そう思える自分に安堵する一刀だった。
『試練の部屋』は、湿原であった。
前回のジャングルといい、つくづく謎の部屋である。
「地和、この地面でも踊れるか?」
「あったり前じゃない! 『流し満貫シスターズ』を見縊らないでよね!」
「地和姉さん、それは昨日までの名前でしょ」
「ちぃちゃん、人和ちゃん! 私達『数え役萬シスターズ』の初ライブ、いっくよー!」
地和が生み出したリズムに、人和の奏でるメロディが重なる。
そして天和の口から紡がれるのは、勇壮な戦歌である。
一刀の心に高揚感を感じさせ、その不安を吹き飛ばした歌は、実は事前に彼が指定していたものとは異なっていた。
どことなくいつもと違う彼の様子に、天和達が独断で選曲を変更したのだ。
一刀を迷いから救った天和の歌声は、しかし敵をも惹きつけてしまう諸刃の剣である。
天和の美声に誘われて、巨大な鳥のモンスターが突進してきた。
流琉の加護スキル『仁王立ち』でもないと妨げるのは難しいと思われるような猛進は、しかし集中力の増した今の一刀にとって、あまりにぬる過ぎる突撃だった。
交互に動くその2本脚の揃った所を見計らい、自らの鞭で絡め取る一刀。
自らの巨体と勢いが仇となり、そのまま地に激突するモンスター。
一刀達と巨大怪鳥との戦いは、今まさに火蓋が切って落とされたのであった。
NAME:始祖ジェラ
その名の示す通り、鳥類の始祖と言われれば誰しもが納得出来るような見た目。
いや、鳥類というには少々無理があるかもしれない。
恐竜の一種と言うべきであろう巨体を震わせ、怒りの雄叫びを上げる始祖ジェラ。
だが一刀の心に恐怖はない。
3姉妹も怯える素振りを一切見せず、歌に集中している。
本来であれば、その3姉妹を守る位置に一刀はいるべきであろう。
しかし相手は巨体を誇る始祖ジェラである。
先程のように突進された場合、一刀に受け止めることは不可能に近い。
そして避けた場合に3姉妹まで攻撃が及んでしまう位置取りは、愚策以外の何物でもない。
従って一刀は、3姉妹の斜め前から中距離攻撃を加え続けた。
自分に向かってくる突進攻撃は素早く避け、3姉妹に対するものは最初の時のように動きを妨害して自滅させる。
彼女達の一刀に対する信頼があってこそ、成り立つ作戦である。
順調に敵のHPを減らし続ける一刀。
途中で撃ったスコーピオンニードルは不発であったが、それでもあっという間に始祖ジェラを黄色NAMEまで追い込んだ。
しかし中ボス戦は、ここからが本番と言っても過言ではない。
怒り狂った始祖ジェラは、今までと攻撃パターンを変えてきた。
「きゃっ!」
「あぐっ!」
「うっく!」
3姉妹に向けて、毒液を吐き出したのである。
単体攻撃であれば踊りの幻惑効果によってノーダメージである3姉妹も、全体攻撃や特殊攻撃には弱い。
HPをスリップさせながら、その場に崩れ落ちる3姉妹。
しかし、一刀は動けない。
彼が3姉妹の元へ走り寄ったが最後、始祖ジェラの突進の餌食となるのは目に見えているからだ。
だが、この場にいるのは一刀と3姉妹だけではない。
「こちらは自分達に任せて、隊長は敵を!」
「ちゅーてもうちらには、隊長が素振りしてるようにしか見えへんけどな」
「真桜ちゃん、それを言ったらお終いなのー」
敵が見えていないため、どこかお気楽な沙和と真桜だったが、敵を無視して自由に動けるのは彼女達しかいない。
彼女達は天和達に直接触れることこそ出来ないが、『銀の短剣飾り』を介在させれば話は別である。
状態異常から回復した天和達の様子を見て、一刀は歌を止めて避難するよう指示した。
「一刀! 私達『流し満貫シスターズ』を、見縊るなって言ったでしょ!」
「だから地和姉さん、それは昨日までの名前なのよ」
「ちぃちゃん、人和ちゃん! 『数え役萬シスターズ』の初ライブなんだから、毒液如きで負けるわけにはいかないよ!」
曲調をアップテンポに変え、辺り一帯が全て己のステージであるかのように縦横無尽に駆け回る3姉妹。
こうなると始祖ジェラも、ターゲットを絞ることが出来ない。
それでも時折は毒液を浴びてしまったが、その度にすぐさま凪達が駆け寄って『銀の短剣飾り』を3姉妹に突き刺した。
事前に短剣飾りの効果を教えてくれた稟。
貴重な短剣飾りを報酬だと言って手渡してくれた華琳。
2人の影からの助力がなければ、かなりの苦戦を強いられていたはずである。
3姉妹の歌の効果でAGIを上昇させた一刀の鞭が、始祖ジェラを更に追い詰めた。
そしてとうとう、敵のNAMEがレッドへと突入した。
それはつまり、始祖ジェラの120%全開MAX無双タイムの始まりを意味する。
一刀を見据えて、巨体を揺らめかせる始祖ジェラ。
まるで酔拳のようなその動きが、徐々に大きくなってくる。
幻惑されぬよう注意深く見守る一刀の目に、一段と大きく揺れる巨体が映ったその直後。
なんと地響きを立てて、始祖ジェラが地に横たわった。
そう、始祖ジェラは死んだふりをしたのだ!
「あ、あほかー!」
当然、NAMEの見える一刀が騙される訳もない。
自ら体勢を崩してしまった始祖ジェラは、そのままHPがゼロとなるまで彼の猛ラッシュを受け続けるはめになったのであった。
「♪あっはーはー、おっほっほー! これ、凄いよ! ちぃちゃん、人和ちゃん!」
「♪ぱやぱ、ぱぱやぱ、ぱやっぱやー! ホントだ! これなら『虹川』もいけるんじゃない?」
「♪てててて。……出来る、出来るわ!」
はしゃぎながら歌声を出す3姉妹の加護神は、賊将・張角を始めとする黄巾賊である。
だがそんなことは、彼女達にはどうでもいいらしい。
彼女達の目からは、突然現れたように見えたはずの凪達すら気にならない様子だった。
加護を受けたことによる身体能力アップで、今まで難しかった曲が演奏出来る。
それだけが、天和達にとって重要なことであったのだ。
「……これが、加護の力」
「やったの! 本当に解放されたなのー!」
「うちらを縛っとった枷が、弾け飛んだ感じやなぁ」
静かに自分の腕をさする、楽進の加護を受けた凪。
ぴょんぴょん飛び跳ねる、于禁の加護を受けた沙和。
ぼんやりと解放感に浸る、李典の加護を受けた真桜。
どの瞳にも、じんわりと涙が浮かんでいる。
そんな彼女達の様子に、つい貰い泣きしそうになる一刀だった。
「それじゃ皆の加護獲得と、凪、沙和、真桜の解放を祝って、乾杯!」
「「「「「「かんぱーい!」」」」」」
祭壇のテレポーターを使って地上へ出た一刀達は、そのまま宴会へと雪崩れ込んだ。
それは即ち、一刀にも加護神が得られたことを意味する。
そう、彼は再び呂尚の加護を受けていたのであった。
ラッキーなことに、『贈物』も再度ポップしていた。
前回の釣り竿と同様、戦闘の役には立たなそうなアイテムである。
真桜達に見て貰えれば、また封印とか進化とか言い出してくれるかもしれない。
だが今の彼女達に問うても、「そんなことよりおうどんたべたい」と返されるのが関の山であろう。
「すみません、もっと辛く出来ませんか?」
「はふはふっ、シャバのご飯は美味しいのー!」
「ぷはぁ、これが五臓六腑に染みるっちゅーやっちゃな!」
なぜなら凪達は、初めて味わう食事や酒に夢中になっていたからだ。
美以と同様、加護を受けたことによって食事や睡眠を感覚的に知った3人娘。
だがいくら事前知識があっても、実際に行ってみれば想像と異なるのは当然である。
「ちぃちゃん、人和ちゃん。食事がいつもより美味しく感じない?」
「確かにそうかも。それになんだか、いくらでも食べられそう」
「加護のお陰で、胃腸まで丈夫になったのかしら」
そして天和達も、凪達に負けず劣らずよく食べていた。
アイドル的には決して人様にお見せ出来ない姿である。
だが普段は節制している彼女達なのだから、今日くらいは思いっきり飲み食いして欲しい。
(それにしても、美味しそうに食べてるのはいいんだけど……)
今日は自分の奢りだなんて、言わなければ良かった。
手持ちの6貫で果たして足りるのかどうか、不安になる一刀なのであった。
物語であれば、凪達を迷宮から解放してハッピーエンドであろう。
しかし実際には、彼女達はこれからも生活をしていく必要がある。
一度手を差し伸べた以上、ここでお別れでは無責任が過ぎる。
せめて彼女達が糧を得る手段を、一緒に考えるくらいするべきだ。
そう思って、凪達の頭上に浮かぶパラメータを見やる一刀。
その表示はLV20、とすれば手っ取り早いのは冒険者となることである。
高LVの彼女達ならBF15辺りで適当に戦っていれば、普通に暮らせる金銭くらいなら余裕で得ることが出来るだろう。
更に加護神が曹操の配下武将であることは、凪達の選択肢を増やしてくれる。
彼女達が望むなら、華琳に紹介するのも吝かではない。
そして凪達がもし戦いを望まないのであれば。
その場合でも、一刀は彼女達にギルドへの就職を斡旋出来る。
短剣飾りをアイテムに変えられる凪。
防具の造形に詳しい沙和。
武器制作には自信のある真桜。
彼女達であれば、戦闘以外でいくらでも仕事はある。
もちろん一刀がどこかに紹介せずとも、なんとでもなるくらいの腕前を彼女達は持っている。
だがこう見えて一刀は、無駄に顔が広い。
彼の口添えは、少なくとも序盤での助けにはなるであろう。
それと同様の助力は、天和達に対しても可能である。
加護を受けるのが目標であった天和達は、今後迷宮に潜らないかもしれない。
それでも、アイドルとしての活動拠点やスポンサー探しの協力など、一刀に出来ることはいくらでもあるのだ。
一刀がそこまで考えをまとめた時、ようやく彼女達はデザートのキノコプリンを食べ終えた。
「それで天和達は、今後どうするんだ?」
「んー。私達はお陰様で加護を得られたけど……」
「ちぃ達と一緒に頑張ってきたファンの人達は、まだでしょ?」
「だからみんなが加護を受けるまでは、今のままLV上げを続けようかと思ってます」
加護を得て身体能力をアップさせたファン達と一緒に、いつかBF15で24時間ライブを行うのだ。
そう熱く語る3姉妹の思考についていけない一刀。
天和達のアイドル活動を遠くから生温かく見守っているよ、と彼女達と約束を交わした一刀は、続いて凪達に話を振った。
「自分達は、出来れば隊長と一緒に迷宮攻略をしたいです」
「うーん、そう来たかぁ……」
「『迷宮から解放され隊』改め『迷宮を制覇し隊』の結成なのー!」
「いや、それはちょっと待ってくれ、沙和」
「あれ? 隊長はもしかして、うちらと組むのは嫌なんか?」
「いや、真桜達が嫌ってわけじゃないんだけどさ」
はっきり言えば、迷宮攻略が嫌なのである。
LV上げも、アイテムトレジャーも、マップ埋めも、全てが大好物の一刀。
だがそれはあくまでゲームの話であり、命を賭けてまで行いたいとはさすがに思えない。
漢帝国クランとの迷宮探索で強さを得る必要性は確かに実感したが、それはあくまで保身のためである。
彼にとってLV上げは『転ばぬ先の杖』といったところであり、それ以上の意味を持たない。
そんな一刀の逡巡を察したのであろう、凪達は一刀への誘いを撤回した。
「隊長の気が進まないのであれば、しばらくは自分達3人で迷宮に潜ろうかと思います」
「ごめんな、凪。ところでさ、なんで迷宮に潜るんだ? 凪達だったら、命の危険を冒さなくても生活出来るだろ?」
「うちらを閉じ込めよった迷宮に、ひと泡吹かせんと気ぃが済まんねん!」
「もしよかったら華琳クラン、曹操の加護を受けた子なんだけど、そこのクランに紹介しようか? ほら、真桜達の加護神も魏のメンバーだし」
「今の所、隊長以外の人と組むつもりはないのー。まずは3人で色々チャレンジしてみるなのー!」
「そっか、くれぐれも気をつけてな。なんかあったら、頼ってくれていいからさ。その代わりと言ってはなんだけど、俺からもお願いがあるんだ」
当然、短剣飾りとのアイテム交換の件である。
これがあるのとないのでは、迷宮探索における死傷率が大幅に違ってくる。
どうせ凪達が冒険者として今後やっていくつもりなら、ギルドに登録しておく必要がある。
その顔合わせの際、アイテム交換もギルドを経由して行うシステムにするよう交渉すれば、多くの冒険者が利用出来るであろう。
なぜなら、ギルドは短剣飾りの販売こそしていないが、買い取りはしているからである。
それらをアイテムと交換して売り出せば、短剣飾りを所持していない冒険者でも購入出来る。
ルールを定めて買い占めにさえ気をつければ、必要な者が必要な分だけ得られるようになるはずだ。
「そのくらい、お安い御用ですよ」
「凪ちゃんだけ隊長からお願いされて、ずっるいのー!」
「隊長、うちも武器のメンテや改造くらいなら、いくらでもやるで?」
「ありがとうな。その時は頼むよ」
凪達に不利益とならないよう、ギルドときっちり交渉しなければと思う一刀なのであった。
『……桂花。それが貴方の遺言でいいのね?』
『元よりこの身は全て華琳様のもの。華琳様に誅されるのであれば、本望でございます』
『って、おい! 背中と手に感じる、この湿り気を帯びた暖かいものはなんだ?!』
『怖かったんだもの! ちょっとくらい仕方ないでしょ! どうせアンタ達の業界じゃご褒美なんだからいいじゃない!』
「という、夢をみた」(注:詳細は『ボツ話』を参照願います)
「なによそれ。私はそんなに狭量じゃないわ」
「ていうか、アンタ! 勝手に私にお漏らしさせてんじゃないわよ!」
翌朝、凪達をギルドに紹介した後、一刀は華琳の館を訪れていた。
彼の心に唯一ひっかかっていたものを解消するためである。
それは、凪達の加護神が曹操の配下武将であったことだ。
一刀という世界の異物が介入した結果、凪達は独立して迷宮探索を行うことになった。
もし彼がいなければ、イベントを発生させたのは恐らく華琳であっただろう。
それは凪達の加護神から考えれば明らかである。
つまり彼の行いは、華琳が本来持つはずだった戦力を奪ってしまったことに他ならない。
だがこのゲームの世界は、一方でどうしようもなくリアルなのである。
例えやり直しがきいたとしても、一刀は確実に今と同じ行動を取ると言い切れる。
華琳にとっては余計なことだったかもしれないが、それでも凪達を放っておける一刀ではないのだ。
別に一刀は、華琳にそのことを詫びに来た訳ではない。
仮に謝りに来たとしても、彼女は意にも介さないか怒りに震えるかであろう。
誇り高い彼女に対してそんな謝罪など、失礼であり無礼であり非礼であるからだ。
この場合、一刀はただ凪達の加護神が曹操配下の武将であることを伝えるだけでいい。
そうすれば華琳は、凪達に興味が沸けば交流を持つだろうし、彼女達が欲しければ誘うだろう。
いや、それすらも余計なことだった可能性もある。
この小さな覇王に惹かれ集う、そういう運命にあるからこそ彼女達の加護神は魏の諸将なのかもしれないからだ。
「まぁ、折角一刀が教えに来てくれたんだし、いずれは会ってみたいわね」
「いずれ? 良かったら、今すぐでも紹介出来るぞ?」
「まだ慌てるような時間じゃないわ。まず彼女達が洛陽で頭角を現してから。全てはそれからの話よ」
「ふーん、なかなか厳しいんだな」
「私のクランに加入出来る人材なんだったら、そのくらいは当然よ。ああ、貴方に対してはいつでも門戸を開いているわよ、一刀。そろそろ私に従う気にはならないかしら?」
「やめとくよ。俺はお前と、並び立つ存在になりたいんだ」
「ふふ、気概だけは買っておくわ。期待しているわよ、一刀」
華琳と会話を交わすと、不思議とモチベーションが上がる一刀。
良い気分のまま宿へと帰った一刀は、そこにありえないものを見た。
「お、お帰りなさい、ご主人様!」
「……桃香、なにやってんだ?」
「あ、あの、ここで働かせて下さい! ここで働きたいんです!」
(あんたも気まぐれに手え出して、人の仕事を取っちゃならね)
桃香の意外な申し出に、一刀は動揺の余り自分の手足が増えて伸びる錯覚を覚えたのであった。
**********
NAME:一刀【加護神:呂尚】
LV:22
HP:410/353(+57)
MP:0/0
WG:100/100
EXP:76/6500
称号:エアーズラバー
STR:29(+4)
DEX:46(+17)
VIT:25(+2)
AGI:34(+7)
INT:25(+1)
MND:19(+1)
CHR:45(+13)
武器:打神鞭
防具:スパルタンバックラー、勾玉の額当て、大極道衣・改、鬼のミトン、仙人下衣、ダッシュシューズ
アクセサリー:猫の首輪、浄化の腰帯、蝙蝠のマント、回避の腕輪、グレイズの指輪、奇石のピアス
近接攻撃力:213(+22)
近接命中率:112(+20)
物理防御力:151
物理回避力:109(+23)
【武器スキル】
スコーピオンニードル:敵のダメージに比例した確率で、敵を死に至らしめる。
【加護スキル】
魚釣り:魚が釣れる。
魚群探知:魚の居場所がわかる。
封神:HPが1割以下になった相手の加護神を封じる。
所持金:1貫